(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記荷重値の値が上記所定値よりも大きい上限荷重閾値を上回る場合、前記シリンダーの縮小の制限を解除することを特徴とする請求項3に記載の義足膝継手。
前記制御部は、前記シリンダーの縮小が制限された状態で、前記ソケットに対する前記義足膝継手の伸展側の回転モーメントが所定のモーメント閾値を上回る場合、前記シリンダーの縮小の制限を自動的に解除することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の義足膝継手。
前記制御部は、一定時間内に、前記膝角度値が所定の膝角度変化上限閾値を上回った状態と、前記膝角度値が所定の膝角度変化下限閾値を下回った状態との両方を経た場合に、前記シリンダーの縮小を自動的に制限することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の義足膝継手。
義足使用者の大腿部に対応するソケットと、足部とを連結する義足膝継手の制御方法であって、前記義足膝継手は、前記ソケットに接続される膝部と、前記膝部に連結され、前記膝部の動作を制限または補助するシリンダーと、前記膝部の角度である膝角度値を直接的又は間接的に検出する膝角度センサとを備えた、義足膝継手の制御方法であって、
前記膝角度センサによって検出された前記膝角度値に基づいて膝角速度値を算出する工程と、
前記膝角速度値が伸展方向および屈曲方向のいずれにおいても所定値以下となる場合、前記膝部が膝静止状態にあると判定し、前記膝静止状態にある時間が一定時間T1以上継続した場合、歩行状態とは異なると判断して、前記シリンダーの縮小を自動的に制限する工程とを備えたことを特徴とする義足膝継手の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、義足膝継手を用いる義足使用者が、中腰の膝を軽く曲げた状態で静止する姿勢をとろうとする場合がある。このとき、義足使用者は、体重を健脚側で支持したり、股関節を伸展したりすることによって、一瞬であれば膝を任意の角度で曲げて義足膝継手を静止させることができる。しかしながら、義足使用者にとって、中腰の膝を軽く曲げた状態で長時間姿勢を維持することは負担が大きい。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、義足使用者が中腰の膝を軽く曲げた状態で静止しようという意思にあわせてシリンダーの縮小を制限することが可能な、義足膝継手およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による義足膝継手は、義足使用者の大腿部に対応するソケットと、足部とを連結する義足膝継手であって、前記ソケットに接続される膝部と、前記膝部に連結され、前記膝部の動作を制限または補助するシリンダーと、前記膝部の角度である膝角度値を直接的又は間接的に検出する膝角度センサと、前記膝角度センサに接続され、前記シリンダーの駆動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記膝角度センサによって検出された前記膝角度値に基づいて膝角速度値を算出し、前記制御部は、前記膝角速度値に基づいて前記膝部が膝静止状態にあるか否かを判定し、前記膝静止状態にある時間に基づいて、前記シリンダーの縮小を自動的に制限することを特徴とする。
【0008】
本発明による義足膝継手において、前記制御部は、前記膝角度値が所定値よりも膝屈曲側にあることを条件に、前記シリンダーの縮小を制限してもよい。
【0009】
本発明による義足膝継手において、前記足部に対する前記義足膝継手の荷重値を直接的又は間接的に検出する荷重センサを更に備え、前記制御部は、前記荷重センサから得た前記荷重値が所定値よりも大きいことを条件に、前記シリンダーの縮小を制限してもよい。
【0010】
本発明による義足膝継手において、前記制御部は、前記荷重値の値が上記所定値よりも大きい上限荷重閾値を上回る場合、前記シリンダーの縮小の制限を解除してもよい。
【0011】
本発明による義足膝継手において、前記制御部は、前記膝静止状態が一定時間T
1以上継続した場合に、前記シリンダーの縮小を自動的に制限してもよい。
【0012】
本発明による義足膝継手において、前記制御部は、前記シリンダーの縮小が制限された状態で、前記荷重値が所定値に満たない状態、または前記膝角度値の膝伸展側への変化が一定時間T
2以上継続した場合に、前記シリンダーの縮小の制限を自動的に解除してもよい。
【0013】
本発明による義足膝継手において、前記制御部は、前記シリンダーの縮小が制限された状態で、前記荷重値が所定値に満たない状態、または前記膝角度値の膝伸展側への変化が一定時間T
2以上継続した場合に、前記シリンダーの縮小の制限を自動的に解除し、前記時間T
1と前記時間T
2との間でT
1>T
2の関係にあってもよい。
【0014】
本発明による義足膝継手において、前記制御部は、前記シリンダーの縮小が制限された状態で、前記ソケットに対する前記義足膝継手の伸展側の回転モーメントが所定のモーメント閾値を上回る場合、前記シリンダーの縮小の制限を自動的に解除してもよい。
【0015】
本発明による義足膝継手において、前記制御部は、一定時間内に、前記膝角度値が所定の膝角度変化上限閾値を上回った状態と、前記膝角度値が所定の膝角度変化下限閾値を下回った状態との両方を経た場合に、前記シリンダーの縮小を自動的に制限してもよい。
【0016】
本発明による義足膝継手は、義足使用者の大腿部に対応するソケットと、足部とを連結する義足膝継手であって、前記ソケットに接続される膝部と、前記膝部に連結され、前記膝部の動作を制限または補助するシリンダーと、前記膝部の角度の時間変化である膝角速度値を直接的又は間接的に検出する膝角速度センサと、前記膝角速度センサに接続され、前記シリンダーの駆動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記膝角速度センサによって検出された前記膝角速度値に基づいて前記膝部が膝静止状態にあるか否かを判定し、前記膝静止状態にある時間に基づいて、前記シリンダーの縮小を自動的に制限することを特徴とする。
【0017】
本発明による義足膝継手は、義足使用者の大腿部に対応するソケットと、足部とを連結する義足膝継手であって、前記ソケットに接続される膝部と、前記膝部に連結され、前記膝部の動作を制限または補助するシリンダーと、前記膝部の角度である膝角度値を直接的又は間接的に検出する膝角度センサと、前記膝角度センサに接続され、前記シリンダーの駆動を制御する制御部と、前記足部に対する前記義足膝継手の荷重値を直接的又は間接的に検出する荷重センサとを備え、前記制御部は、前記シリンダーの縮小が制限された状態で、前記荷重センサから得た前記荷重値が所定値に満たない状態、または前記膝角度値の膝伸展側への変化が一定時間以上継続した場合に、前記シリンダーの縮小の制限を自動的に解除することを特徴とする。
【0018】
本発明による義足膝継手の制御方法は、義足使用者の大腿部に対応するソケットと、足部とを連結する義足膝継手の制御方法であって、前記義足膝継手は、前記ソケットに接続される膝部と、前記膝部に連結され、前記膝部の動作を制限または補助するシリンダーと、前記膝部の角度である膝角度値を直接的又は間接的に検出する膝角度センサとを備えた、義足膝継手の制御方法であって、前記膝角度センサによって検出された前記膝角度値に基づいて膝角速度値を算出する工程と、前記膝角速度値に基づいて前記膝部が膝静止状態にあるか否かを判定し、前記膝静止状態にある時間に基づいて、前記シリンダーの縮小を自動的に制限する工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な構成で、義足使用者が中腰の膝を軽く曲げた状態で静止しようという意思にあわせてシリンダーの縮小を制限することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0022】
[大腿義足の構成]
図1は、本実施の形態による義足膝継手を備えた大腿義足の全体的な構成を示す正面図であり、
図2は、当該大腿義足を示す概略構成図である。
【0023】
図1に示すように、大腿義足10は、大腿部に対応するプラスチック製のソケット11と、ソケット11の下端に回転可能に連結され、下腿部に相当する義足膝継手20と、義足膝継手20の下端に連結された足部12とを備えている。
【0024】
[義足膝継手の構成]
図2に示すように、義足膝継手20は、フレーム21と、フレーム21に対して回動可能に設けられ、ソケット11に接続される膝部22と、膝部22に連結され、膝部22の回転動作を制限または補助するシリンダー30と、シリンダー30を駆動させるための駆動機構40とを備えている。
【0025】
シリンダー30の周囲には、シリンダー30の伸縮量に基づいて、膝部22の角度である膝角度値を検出する膝角度センサ60が配置されている。この膝角度センサ60は、制御部50に接続されている。なお、膝角度値は、ソケット11の軸に対する義足膝継手20の軸がなす角度である。例えば義足使用者が直立している場合、膝角度値は0°となり、ソケット11の軸に対して義足膝継手20の軸が一直線上となる。一方、例えば義足使用者が着席している場合、膝角度値が90°となり、ソケット11の軸に対して義足膝継手20の軸が直交する。フレーム21の下端には、足部12に対する義足膝継手20の荷重値(鉛直荷重)を検出する荷重センサ70が設けられている。荷重センサ70は、制御部50に接続されている。
【0026】
制御部50は、膝角度センサ60および荷重センサ70から出力される信号に基づき、駆動機構40の動作を制御することによってシリンダー30の駆動を制御する。制御部50には、駆動機構40および制御部50などの各種部品に電力を供給する電池55が接続されている。
【0027】
なお、駆動機構40、制御部50および電池55は、
図2においてフレーム21の外側に示しているが、実際にはフレーム21またはシリンダー30に取り付けられている。
【0028】
シリンダー30は、油を作動流体とし、抗力を発生することで膝部22の動作を制限または補助するもの(油圧シリンダー)である。シリンダー30は、ソケット11とフレーム21とを回動可能に連結している支持点23(
図1参照)の近くに設けられた上部支持点31と、フレーム21の一部に連結された下部支持点32とを有している。これにより、シリンダー30は、ひざの屈曲時にシリンダー長が小となる縮小行程となり、ひざの伸展時にシリンダー長が大となる伸展行程となる。ここで、シリンダー長とは、シリンダー30の上部支持点31と下部支持点32との間の長さをいう。
【0029】
次に、
図3を参照して、シリンダー30および駆動機構40の動作機構について説明する。シリンダー30は、シリンダーチューブ33と、シリンダーチューブ33に対して移動可能であるピストンロッド34と、シリンダーチューブ33に移動可能に収納されてピストンロッド34が固定されたピストン35とを有している。シリンダーチューブ33の内部は、ピストン35を介して第1キャビティ36と第2キャビティ37とに分割されている。第1キャビティ36および第2キャビティ37には、作動流体である油が充填されている。
【0030】
駆動機構40は、油圧によりシリンダー30の駆動を制御するための機構である。この駆動機構40は、シリンダー30にそれぞれ接続された伸展側油圧回路41と、屈曲側油圧回路42とを有している。伸展側油圧回路41および屈曲側油圧回路42はともに、シリンダー30の第1キャビティ36および第2キャビティ37に連通している。伸展側油圧回路41には、伸展側バルブ43と、伸展側逆止弁44とが設けられている。伸展側油圧回路41は、第1キャビティ36から第2キャビティ37に向けて油を流すことができるが、第2キャビティ37から第1キャビティ36に向けて油を流すことはできないようになっている。屈曲側油圧回路42には、屈曲側バルブ45と、屈曲側逆止弁46とが設けられている。屈曲側油圧回路42は、第2キャビティ37から第1キャビティ36に向けて油を流すことができるが、第1キャビティ36から第2キャビティ37に向けて油を流すことはできないようになっている。伸展側バルブ43および屈曲側バルブ45は、それぞれ制御部50に接続されており、制御部50に制御されることで、全開、全閉およびその中間の状態(一部開)をとることができるようになっている。
【0031】
図4(a)(膝屈曲時)に示すように、膝が屈曲された場合、ピストンロッド34が縮退し、ピストン35が引込側に移動する。これにより、第2キャビティ37からの油が、屈曲側バルブ45および屈曲側逆止弁46を介して屈曲側油圧回路42から第1キャビティ36に流入する。このとき、屈曲側バルブ45を閉とすることで、油が屈曲側油圧回路42を流れないようにし、ピストンロッド34の縮退を制限することができる。この場合、シリンダー30は膝の屈曲側の動きを制限される。
【0032】
一方、
図4(b)(膝伸展時)に示すように、膝が伸展された場合、ピストンロッド34が伸長し、ピストン35が押出側に移動する。これにより、第1キャビティ36からの油が、伸展側逆止弁44および伸展側バルブ43を介して伸展側油圧回路41から第2キャビティ37に流入する。このとき、伸展側バルブ43を閉とすることで、油が伸展側油圧回路41を流れないようにし、ピストンロッド34の伸長を制限することができる。この場合、シリンダー30は膝の伸展側の動きを制限される。
【0033】
再度
図2を参照すると、膝角度センサ60は、例えばピストンロッド34に収納された図示しない磁石と、シリンダーチューブ33に対して固定されていて上記磁石の位置を検出する図示しない磁気センサとを有している。この膝角度センサ60は、ピストンロッド34の伸縮位置に基づき膝角度値を検出し、この膝角度値を制御部50に対して送信するようになっている。膝角度センサ60は、直接的に膝角度値を検出するものに限らず、間接的に膝角度値を検出するものであっても良い。例えば、制御部50が、膝角度センサ60によって検出されたピストンロッド34の伸縮位置を数値変換することにより、膝角度値を求めるようになっていても良い。
【0034】
荷重センサ70は、例えばソケット11と足部12との間に設けられたひずみセンサである。この場合、荷重センサ70は、ソケット11に設けられ、外力を受ける図示しないセンサーブロックと、センサーブロックに取り付けられた図示しないひずみセンサとを有している。そしてひずみセンサがセンサーブロックに生じたひずみを検知することにより、荷重センサ70は足部12に対する義足膝継手20の荷重値を検出する。荷重センサ70は、この荷重値を制御部50に対して送信する。なお、荷重は、直接的に荷重値を検出するものに限らず、間接的に荷重値を検出するものであっても良い。例えば、制御部50が、荷重センサ70によって検出されたひずみ値を数値変換することにより、荷重値を求めても良い。
【0035】
制御部(コンピューター)50は、例えばMCU(Micro Control Unit)である。制御部50は、膝角度センサ60によって検出された膝角度値に基づいて膝角速度値を算出する。制御部50は、膝角度センサ60および荷重センサ70から出力される信号に基づき、駆動機構40の動作を制御することによってシリンダー30の駆動を制御する。
【0036】
具体的には、制御部50は、膝角度センサ60によって検出された膝部22の膝角度値に基づいて膝角速度値を算出する。膝角速度値は、膝角度値の時間変化であり、単位時間あたりの膝角度の変化量をいう。この場合、制御部50は、このようにして求めた膝角速度値と、膝角度センサ60から得た膝角度値と、荷重センサ70から得た荷重値とに基づいて膝部22が膝静止状態にあるか否かを判定する。ここで、膝静止状態とは、通常の歩行状態とは異なり、義足使用者が中腰の膝を軽く曲げ、すなわち義足膝継手20を大腿部に対して軽く折り曲げて、静止しようとしている状態をいう。
【0037】
そして制御部50は、膝静止状態にある時間に基づき、例えば一定時間以上膝部22が膝静止状態にある場合、シリンダー30の縮小を自動的に制限(セーフティロック)する。すなわち、義足使用者が、一定時間膝静止状態を維持した場合、義足使用者が義足膝継手20を大腿部に対して静止しようとする意思があるものとみなし、シリンダー30の縮小を制限する。このときシリンダーチューブ33に対するピストンロッド34の移動が制限される。これにより、膝部22の角度が固定され、義足膝継手20をソケット11(大腿部)に対して固定することができるので、義足使用者は、疲れることなく膝を軽く曲げた中腰の姿勢を保つことができる。
【0038】
[本実施の形態の作用]
次に、このように制御部50がシリンダー30の縮小を制限する際の作用(義足膝継手20の制御方法)について、更に説明する。
【0039】
まず、膝角度センサ60は、膝部22の膝角度値を連続的ないし断続的に検出し、これを信号として制御部50に送信する。制御部50は、膝角度センサ60によって検出された膝角度値に基づいて膝部22の膝角速度値を算出する。この場合、制御部50は、例えば膝角度値を微分することにより膝角速度値を求めても良い。また、荷重センサ70は、足部12に対する義足膝継手20の荷重値(鉛直荷重)を連続的ないし断続的に検出し、これを信号として制御部50に送信する。制御部50は、このようにして得られた膝角速度値、膝角度値および荷重値を時系列に沿って記憶する。
【0040】
続いて、義足使用者が中腰で膝を軽く曲げて静止した場合を想定する。このとき、膝角度値がほぼ一定の値となるため、膝角速度値の変化は通常の歩行時よりも小さくなる。このように、膝角速度値が伸展方向および屈曲方向のいずれにおいても所定値(閾値A)以下となる条件を条件Aとする。例えば、膝角速度値が1°/50ms以下の状態を条件Aとしてもよい。
【0041】
また、義足使用者が中腰で膝を軽く曲げて静止したとき、膝部22の角度(ソケット11の軸に対して義足膝継手20の軸がなす角度)は一定以上となるため、膝角度値は所定値以上となり、所定値よりも膝屈曲側の値となる。このように、膝角度値が当該所定値(閾値B)以上となる条件を条件Bとする。例えば、膝角度値が15°以上の状態を条件Bとしてもよい。
【0042】
また、義足使用者が中腰で膝を軽く曲げて静止したとき、義足膝継手20から足部12に対して鉛直方向に荷重が加わるため、このときの荷重値は所定値以上となる。このように、荷重値が当該所定値(下限荷重閾値、閾値C)以上となる条件を条件Cとする。例えば、荷重値が100N以上の状態を条件Cとしてもよい。
【0043】
上述した条件A、条件Bおよび条件Cを全て満たしたとき、制御部50は、膝部22が膝静止状態にあると判定する。そしてこの膝静止状態が一定時間T
1以上継続した場合、制御部50は、シリンダー30の縮小を自動的に制限する。T
1としては、例えば1秒〜3秒としても良く、この時間は適宜調整可能となっている。
【0044】
このとき制御部50は、駆動機構40を制御し、屈曲側バルブ45を閉とする。これにより、屈曲側油圧回路42を油が流れないようになり、シリンダー30の縮小は、膝の屈曲側に自動的に制限される。このとき、義足使用者が力を加えても、膝部22の角度はこれ以上大きくならないので、義足使用者の体重によって膝がこれ以上曲がることがない。このため、義足使用者は、膝静止状態を維持し、中腰の膝を軽く曲げた姿勢を楽に保つことができる。
【0045】
一方、制御部50は、駆動機構40を制御し、伸展側バルブ43が開の状態を維持する。すなわち、シリンダー30の動きは、膝の伸展側には制限されない。したがって、義足使用者は、自らの意思に従って、例えば膝を伸ばすことにより膝静止状態を解除して、シリンダー30の縮小の制限を解除することができる。
【0046】
次に、シリンダー30の縮小が制限された状態にある場合に、シリンダー30の縮小の制限を解除する際の作用について説明する。
【0047】
例えば、義足使用者が、中腰の状態から直立した状態に移行し、膝を伸ばして膝静止状態を解除しようとすることが考えられる。この場合、膝角度値は伸展方向に小さくなるため、膝角速度値の変化は膝静止状態のときよりも大きくなる。すなわち、膝角速度値が伸展方向において所定値(閾値A)を上回る。このとき、上記条件Aが満たされなくなる。例えば上述した例では、膝角速度値が1°/50msを上回った場合、条件Aが満たされなくなる。
【0048】
また、義足使用者が、中腰の状態から直立した状態に移行すると、膝部22の角度は小さくなるため、膝角度値は膝伸展側へ変化し、所定値(閾値B)未満となる。この場合、上記条件Bが満たされなくなる。例えば上述した例では、膝角度値が15°未満となった場合、条件Bが満たされなくなる。
【0049】
あるいは、義足使用者が健脚側に体重を加えて義足側を地面から浮かせたり、義足使用者が椅子に着席したりすることにより、膝静止状態を解除しようとすることも考えられる。この場合、義足膝継手20から足部12に加わる鉛直方向の荷重が減少するため、荷重値は所定値(閾値C)を下回り、上記条件Cが満たされなくなる。例えば上述した例では、荷重値が100N未満となった場合、条件Cが満たされなくなる。
【0050】
このように、条件A、条件Bおよび条件Cのうち、少なくとも1つの条件が満たされなくなった場合、制御部50は、膝部22の膝静止状態が生じなくなったと判定する。そしてこの膝静止状態が一定時間T
2以上継続的に生じなかった場合に、制御部50は、シリンダー30の縮小の制限を自動的に解除する。例えば、制御部50は、荷重値が所定値に満たない状態(荷重値が閾値C未満の状態)、または膝角度値の膝伸展側への変化(膝角度値が閾値B未満の状態)が一定時間T
2以上継続した場合に、シリンダー30の縮小の制限を自動的に解除しても良い。T
2としては、例えば0.1秒〜0.3秒であり、適宜調整可能になっている。
【0051】
なお、上述したシリンダー30の縮小を制限するのに必要な時間T
1と、シリンダー30の縮小の制限を解除するのに必要な時間T
2との間で、T
1>T
2の関係にあることが好ましい。すなわち、T
1を一定値以上の値にすることにより、義足使用者が階段を下りるときなど、通常の動作時にシリンダー30の縮小が制限されてしまうことを確実に防止し、安全性を高めることができる。一方、T
2を一定値以下の値にすることで、必要以上に待たなくてもシリンダー30の縮小の制限を解除することができ、使用時の快適性を高めることができる。このため、T
1>T
2となる関係を満たすことにより、安全性と快適性とを両立させることができる。
【0052】
シリンダー30の縮小の制限を解除する際、制御部50は、駆動機構40を制御し、屈曲側バルブ45を開とする。これにより、第2キャビティ37に貯留されていた油が屈曲側油圧回路42に流動可能となり、シリンダー30のピストンロッド34を円滑に伸長することができる。このため、義足使用者は、膝静止状態を解除し、通常の動作に円滑に戻ることができる。
【0053】
なお、上記においては、制御部50がシリンダー30の縮小を制限する条件として条件A(膝角速度値)、条件B(膝角度値)および条件C(荷重値)を挙げたが、必ずしもこれらの条件全てを満たさなくても良い。例えば条件Aのみを満たした場合にシリンダー30の縮小を制限するようにしても良い。
【0054】
一方、条件Aに加えて条件Bを満たしたときにシリンダー30の縮小を制限するようにした場合、脚を伸ばして直立している状態で不必要にシリンダー30の縮小が制限されることを確実に防止することができる。また、膝角度値の閾値Bを、立脚相から遊脚相に移るための膝角度の閾値(概ね10°前後)よりも大きく設定することにより、シリンダー30の縮小が不必要に制限されてしまい、立脚相から遊脚相への移行を阻害されることを防止することができる。
【0055】
また、条件Aに加えて条件Cを満たしたときにシリンダー30の縮小を制限するようにした場合、義足使用者が座っている場合や階段を下りている場合等、不必要にシリンダー30の縮小が制限されることを確実に防止することができる。また、義足使用者が車に乗っている場合など、膝を伸ばせない状態でも、シリンダー30の縮小の制限を解除することができる。
【0056】
また、上述した条件A(膝角速度値)、条件B(膝角度値)および条件C(荷重値)のほか、下記各条件(条件D、条件E、条件F)の少なくとも1つを満たした場合に、シリンダー30の縮小を制限し、またはシリンダー30の縮小の制限を解除するようにしても良い。
【0057】
上記において、制御部50は、荷重値が所定値(閾値C)以上となった場合に(条件C)、膝静止状態が生じていると判定し、所定値(閾値C)を下回った場合に、膝静止状態が生じていないと判定する場合を例にとって説明した。しかしながら、これに加え、制御部50は、荷重値が閾値Cよりも大きい所定値(上限荷重閾値、閾値D)以下となった場合に(条件D)、膝静止状態が生じていると判定し、所定値(閾値D)を上回った場合に、膝静止状態が生じていないと判定してシリンダー30の縮小の制限を解除しても良い。すなわち制御部50は、荷重値が閾値Cと閾値Dとの間にある場合に、膝静止状態が生じていると判定し、荷重値が閾値Cと閾値Dとの間にない場合に、膝静止状態が生じていないと判定しても良い。これにより、例えば義足使用者が階段を下っている場合等、義足側に体重の大半が乗り、かつ膝を屈曲しなければならない状態で、不必要にシリンダー30の縮小が制限されてしまい、義足使用者が膝を屈曲できずに転倒あるいは転落してしまうリスクを低減することができる。
【0058】
また、制御部50は、シリンダー30の縮小が制限された状態で、ソケット11に対する義足膝継手20の伸展側の回転モーメントが所定のモーメント閾値(閾値E)を上回る場合、シリンダー30の縮小の制限を自動的に解除するようにしてもよい(条件E)。この場合、義足使用者が階段を下る際、不必要にシリンダー30の縮小が制限されてしまい、膝を屈曲できずに転倒あるいは転落してしまうリスクを低減することができる。また、このようにシリンダー30の縮小の制限を解除する方法が更に追加されることにより、義足使用者が階段を下る際などに不意にシリンダー30の縮小が制限された場合であっても、これを自然に解除することができる。また、義足使用者が坂道を下る途中で、シリンダー30の縮小が制限された状態から歩行を開始したときに、シリンダー30の縮小の制限を解除するための特別な動作をすることなく、スムーズに遊脚相へ移行することができる。なお、ソケット11に対する義足膝継手20の回転モーメントは、荷重センサ70から送られてきた荷重値に基づいて、制御部50が演算を行うことにより算出することができる。
【0059】
また、制御部50は、条件A、条件Bおよび条件Cのほか、義足使用者が短い一定の時間内に大腿義足10の膝屈曲と膝伸展の繰り返しを1回以上行った場合に、シリンダー30の縮小を自動的に制限するようにしてもよい。より詳細には、制御部50は、一定時間(例えば1秒〜3秒)内に、膝角度値が所定の膝角度変化上限閾値(閾値F1)を上回った状態と、膝角度値が所定の膝角度変化下限閾値(閾値F2、ただしF1>F2)を下回った状態との両方を経た場合に(条件F)、シリンダー30の縮小を自動的に制限するようにしてもよい。これにより、制御部50がシリンダー30の縮小を自動的に制限する条件(例えば、条件A、条件Bおよび条件Cの全てを満たす状態が一定時間T
1以上継続すること)を満たさない場合であっても、義足使用者の意思に基づいてシリンダー30の縮小を制限することが可能となる。とりわけ、中腰で膝を軽く曲げて静止することが難しい義足使用者であっても、必要に応じてシリンダー30の縮小を制限させることができる。
【0060】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態によれば、制御部50は、膝角速度値に基づいて膝部22が膝静止状態にあるか否かを判定し、膝静止状態にある時間に基づいて、シリンダー30の縮小を自動的に制限するようになっている。これにより、義足使用者が中腰の膝を軽く曲げた状態で静止しようという意思にあわせて、シリンダー30の縮小を制限することができる。シリンダー30の縮小を制限した後は、義足使用者が特に力を使わなくても静止状態を維持することができる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、制御部50は、膝角速度値に加えて、膝角度値に基づいて膝部22が膝静止状態にあるか否かを判定する。これにより、義足使用者が脚を伸ばして直立している状態にあるとき、不必要にシリンダー30の縮小が制限される不具合を確実に防止することができる。
【0062】
また、本実施の形態によれば、制御部50は、膝角速度値に加えて、荷重値に基づいて膝部22が膝静止状態にあるか否かを判定する。これにより、義足使用者が座っている場合や階段を下りている場合等、不必要にシリンダー30の縮小が制限される不具合を確実に防止することができる。
【0063】
さらに、本実施の形態によれば、シリンダー30の縮小を自動的に制限したり、シリンダー30の縮小の制限を自動的に解除したりするための構成が簡単である。とりわけ、少数のセンサ(例えば膝角度センサ60および荷重センサ70の2つのセンサ)を用いて上記構成を実現することができるので、多くのセンサを用いる場合と比較して、制御が簡単であり、コストの上昇を抑えることができる。また、義足膝継手20を構成するシステムが簡単なので、信頼性を向上させることができる。
【0064】
[変形例]
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施することができる。
【0065】
上述した膝部22の機構は、単節リンク機構のほか、四節リンク機構等の多節リンク機構であっても良い。
【0066】
上記において、シリンダー30は、油圧を用いた流体シリンダーである場合を例にとって説明したが、これに限らず、例えば空気などの気体を用いた流体シリンダーや、電動式シリンダーであっても良い。
【0067】
また、上記において、制御部50が屈曲側バルブ45を閉とすることによりシリンダー30の縮小を制限する場合を例にとって説明した。しかしながら、これに限らず、シリンダー30の可動部(ピストンロッド34、ピストン35等)を物理的にロックすることにより、シリンダー30の縮小を制限するようにしても良い。
【0068】
また、上記において、膝角度センサ60は、ピストンロッド34に収納された磁石と、シリンダーチューブ33に対して固定されていて磁気センサとを有するものを例にとって説明した。しかしながら、これに限らず、膝角度センサ60としては、ピストンロッド34に磁気センサが収納され、シリンダーチューブ33に磁石が固定されているものであっても良い。あるいは、膝角度センサ60は、ロータリーエンコーダ等、膝角度値を直接的に検出するものであっても良い。
【0069】
さらに、上記において、制御部50が、膝角度センサ60によって検出された膝角度値に基づいて膝角速度値を算出する場合を例にとって説明した。しかしながら、これに限らず、膝角度センサ60に代えて、膝角速度値を直接的又は間接的に検出する図示しない膝角速度センサを設けても良い。このような膝角速度センサとしては、例えばジャイロセンサ等を挙げることができる。この場合、制御部50は、膝角速度センサに接続されており、膝角速度センサによって検出された膝角速度値に基づいて、膝部22が膝静止状態にあるか否かを判定する。そして、制御部50は、上記と同様に、膝静止状態にある時間に基づいて、シリンダー30の縮小を自動的に制限するようにしてもよい。