特許第6400568号(P6400568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6400568
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】球状車輪及びこの車輪を実装した車両
(51)【国際特許分類】
   B60B 19/14 20060101AFI20180920BHJP
   B60B 19/00 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   B60B19/14
   B60B19/00 G
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-509413(P2015-509413)
(86)(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公表番号】特表2015-515941(P2015-515941A)
(43)【公表日】2015年6月4日
(86)【国際出願番号】EP2013058949
(87)【国際公開番号】WO2013164327
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2016年4月6日
(31)【優先権主張番号】1253981
(32)【優先日】2012年4月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311003754
【氏名又は名称】ソフトバンク・ロボティクス・ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】SOFTBANK ROBOTICS EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレール,バンサン
(72)【発明者】
【氏名】メゾニエ,ブリュノ
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−210576(JP,A)
【文献】 特開2010−202154(JP,A)
【文献】 米国特許第02812031(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 19/00
19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(11)を運動させるべく意図された球状車輪であって、その回転には、軸(14)を中心として回転可能なシャフト(12)によって動力供給される、車輪(10)であって、
2つのシェル(15、16)の表面が前記車輪(10)の球状表面に準拠すると共にその各々が面(17、18)によって境界が定められている2つのシェル(15、16)を有し、
前記シェル(15、16)は、各々、前記シャフト(12)との関係において回動接続部(19、20)によって関節接続されており、各々の前記回動接続部(19、20)の軸(21、22)は、各々の前記回動接続部(19、20)に関連するシェル(15、16)の前記面(17、18)に対して垂直であり、且つ、
前記2つのシェル(15、16)の境界を定める前記面(17、18)は、交差していることを特徴とする車輪。
【請求項2】
前記2つのシェル(15、16)の境界を定める前記面(17、18)は、前記シャフト(12)の前記軸(14)との交点(30)を有するまっすぐなラインに沿って交差していることを特徴とする請求項1に記載の車輪。
【請求項3】
各々のシェル(15、16)は、各々の前記回動接続部(19、20)に関連するシェル(15、16)の前記回動接続部(19、20)の継続部内において位置決めされると共に前記球状表面の転動を許容するローラー(28、29)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車輪。
【請求項4】
各々のシェル(15、16)は、剛性ベアリング構造(41、43)と、前記車輪(10)が走行するように意図された地面(25)上におけるグリップを許容するようにその特性が選択されている軟性材料の層(42、44)と、を有し、前記軟性材料の層(42、44)は、前記シェル(15、16)の前記球状表面を形成していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項5】
各々のシェル(15、16)内において、前記軟性材料の層(42、44)は、前記ローラー(28、29)の通過を許容するように中断されており、且つ、前記各々のシェル(15、16)は、前記ローラー(28、29)の通過を許容するべく中断されている領域内において前記軟性材料の層(42、44)のクリープを制限するように構成された閉じ込めリング(51、52)を有し、閉じ込めリングは、支持構造(41)において製造されると共にローラー(28)を取り囲むリブ(51、52)を有することを特徴とする請求項3を引用する請求項4に記載の車輪。
【請求項6】
前記閉じ込めリング(51、52)は、各々のシェル(15、16)の前記閉じ込めリング(51、52)に対応する回動接続部の軸を中心とした截頭円錐形の形状を有し、前記截頭円錐形の形状は、各々の前記回動接続部(19、20)に関連するシェル(15、16)の前記球状表面に向かう方向においてテーパー化されていることを特徴とする請求項5に記載の車輪。
【請求項7】
各々のシェル(15、16)は、前記軟性材料の層(42、44)内に配置される1つ以上の剛性リブ(55)を有し、ローラー(28、29)の近傍において、リブ(55)は、軟性材料の層(42、44)の厚さに等しい高さを有し、シェル(15、16)の境界を定めている面(17、18)の近傍においては、リブ(55)は、軟性材料の層(42、44)の厚さとの関係において、ゼロでない非常に小さな高さを有することを特徴とする請求項5又は6に記載の車輪。
【請求項8】
前記軟性材料の層(42、44)には、前記車輪(10)のグリップを改善するべく、溝が形成されていることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載の車輪。
【請求項9】
溝の表面密度は、各々の前記回動接続部(19、20)に関連するシェル(15、16)の前記面(17、18)から離れる距離に伴って増大することを特徴とする請求項8に記載の車輪。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の少なくとも3つの車輪(10)を有し、且つ、少なくとも2つの車輪(10)の前記シャフト(12)の前記軸(14)が、1つの且つ同一の面内に位置していないことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を運動させるべく意図された球状車輪と、この車輪を実装した車両と、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の方法においては、4つの車輪を有する車両は、それらの車両が方向を変更できるようにする方向性車輪を装備している。これらの車輪は、回動接続部によって車両に接続されており、且つ、方向性車輪の場合には、回転の更なる自由度が追加されている。方向性車輪が駆動された際には、ユニバーサルジョイントが、回動接続部の軸の向きの変更を同時に許容しつつ、車輪の駆動を許容する。このタイプの構成は、小さな回転半径の実現を許容しない。換言すれば、停止した状態において、その場で車両を回転させることができない。
【0003】
又、それ自体で回動する能力を各々が有する球状車輪を有する車両を生成する試みも実行されている。このような実施形態の一例が日本国特許出願公開第2007−210576号明細書に記述されている。この特許文献は、2つの半球を有する車輪について記述している。この車輪は、2つの半球を支持する支持部の回転を駆動する水平駆動シャフトによって作動している。2つの半球は、各々、回動接続部を介して支持部上に取り付けられている。2つの回動接続部は、アライメントされている。これらが共通に有している軸は、駆動シャフトの回転軸に対して垂直である。ロボットなどの車両は、日本国特許出願公開第2007−210576号明細書に記述されているように、4つの車輪を装備することができる。この場合には、4つの車輪の駆動シャフトの軸は、互いに垂直に構成される。従って、車輪は、ペアとしてアライメントされている。第1のペアの2つの車輪を駆動することにより、車両は、この車輪のペアが共通に有している軸に対して垂直の方向に運動することができる。車輪の第2のペアの場合には、半球は、その回動接続部を中心として自由に回転する。第2のペアの車輪を駆動することにより、垂直方向におけるロボットの運動が実現される。当然のことながら、これらを組み合わせた運動も可能である。この結果、車両は、任意のどのような方向においても運動することが可能であり、且つ、場合によっては、スピンすることもできる。
【0004】
この実施形態は、欠点を有している。具体的には、車輪の駆動シャフトが、2つの半球の間に位置した車輪の赤道面を介して車両に進入している。赤道面は、地球の球体からの類推によって規定される。この面は、地球の北半球と南半球に例えることが可能な2つの半球を分離している。駆動シャフトは、特定の剛性を有していなければならず、この特定の剛性は、それに対して最小直径が課せられることを意味している。従って、2つの半球は、少なくとも、この直径だけ、離れている。しかし、実際には、半球が駆動シャフトと擦れることを防止するべく、機能的クリアランスをシャフトの直径に追加する必要がある。この結果、これにより、面によって各々境界が定められた2つの半球が得られる。2つの半球の面は、平行であり、且つ、駆動シャフトの剛性を損なうリスクなしには低減することができない所定の距離だけ離隔して位置決めされている。
【0005】
車輪の赤道面が、水平であると仮定されている地面との関係において垂直方向の位置にある際には、地面上における車輪の押圧に不連続性が出現する。更に詳しくは、車輪が駆動された際に、車輪の赤道面は、各々の車輪の回転に伴って、地面との接触状態となり、この結果、地面の圧力が一方の半球から他方の半球に、且つ、従って、一方の半球の面から多少の半球の面に、切り替わることになる。この不連続性が生じた際には常に、グリップの喪失が発生することになり、車輪の球状特性が一時的に失われ、且つ、高速においては、各々の不連続性に伴って、雑音が発生することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−210576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、不連続性に伴う欠点が低減された球状車輪を提供することを目的としている。換言すれば、本発明は、不連続性の増大を伴うことなしに、相対的に大きな直径の駆動シャフトを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明の1つの主題は、車両を運動させるべく意図された球状車輪であって、この車輪の回転には、軸を中心として回転可能なシャフトによって動力が供給されており、その表面が車輪の球状表面に準拠すると共にその各々が面によって境界が定められた2つのシェルを有し、且つ、シェルは、各々、シャフトとの関係において回動接続部によって関節接続されており、各々の回動接続部の軸は、関連するシャフトの面に対して垂直であり、且つ、2つのシェルの境界を定めている面は、交差していることを特徴としている。
【0009】
換言すれば、2つの回動接続部の軸は、アライメントされていない。
【0010】
本発明の別の主題は、本発明による少なくとも3つの車輪を有する車両である。少なくとも2つの車輪のシャフトの軸は、アライメントされていない。
【0011】
添付図面に示されている、一例として付与された一実施形態に関する詳細な説明を参照することにより、本発明について更に十分に理解することが可能であり、且つ、その他の利点が明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の原理を実装した球状車輪を示す。
図2】本発明の原理を実装した球状車輪を示す。
図3】本発明による車輪に属するシェルの開口角度を最適化する方式を示す曲線を示す。
図4】本発明による車輪に属するシェルの開口角度を最適化する方式を示す曲線を示す。
図5】車輪の実施形態の第1代替形態を示す。
図6】車輪の実施形態の第1代替形態を示す。
図7】車輪の実施形態の第2代替形態を示す。
図8】車輪の実施形態の第2代替形態を示す。
図9】車輪表面のいくつかの形状を示す。
図10】車輪表面のいくつかの形状を示す。
図11】車輪表面のいくつかの形状を示す。
図12】いくつかの車輪を装備した車両の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
わかり易くするべく、様々な図面において、同一の要素には、同一の参照符号が付与されている。
【0014】
図1及び図2は、車両11を運動させるべく意図された球状車輪10を示している。図1は、側面図において示されており、且つ、図2は、斜視図において示されている。車輪10の回転は、シャフト12によって動力供給されている。車両11は、そのボディの形態において示されており、且つ、シャフト12は、回動接続部13により、このボディに接続されている。シャフト12の回転の軸には、参照符号14が付与されている。
【0015】
本発明によれば、車輪10は、その表面が車輪10の球状表面に準拠した2つのシェル15及び16を有する。シェル15は、面17によって境界が定められており、且つ、シェル16は、面18によって境界が定められている。シェル15及び16は、各々、シャフト12との関係において、各々、回動接続部19及び20により、関節接続されている。回動接続部19の軸21は、シェル15の面17に対して垂直であり、且つ、回動接続部20の軸22は、シェル16の面18に対して垂直である。2つの回動接続部19及び20は、それらの個々のシェルの内部に配置されており、且つ、後程詳述することとする。
【0016】
異なるシェル15及び16を製造することも可能であるが、有利には、これらは、同一であり、且つ、シャフト12との関係において対称的に構成されている。換言すれば、面17及び18は、シャフト12の軸14との交点30を有するまっすぐなラインに沿って、交差している。この構成においては、2つの回動接続部19及び20の軸21及び22は、交差しており、且つ、それらの間に非ゼロの角度を生成している。
【0017】
車輪10は、図1及び図2において25という参照符号が付与されている地面に沿って走行するべく意図されている。2つのシェルのうちの1つのシェル15又は16が地面25との接触状態にある。シャフト12が車輪10を駆動している際に、車輪は、車輪10の球状表面の円26に沿って、地面25との接触を維持する。この運動の際に、車両は、軸14と円26を含む面の間の交点27において、軸14に対して垂直である速度ベクトルを有する。点26に適用された車両11の速度ベクトルが軸14に対して垂直ではない際に、地面との接触状態にあるシェルは、その回動接続部を中心とした自由回転を開始する。
【0018】
換言すれば、地面との接触状態にあるシェルには、軸14を中心とした駆動第1回転と、その回動接続部の軸を中心とした第2回転と、という2つの運動が付与されることになる。2つの回転は、当然のことながら、点26における車両の速度ベクトルの方向に応じて、合成されてもよい。
【0019】
車輪10の動作の際に、図1においてはシェル16である地面25との接触状態にあるシェルが、その面18を水平状態において有する際に、特異点が出現する。この構成においては、車両が、点27において適用された軸14に対して垂直ではないベクトルを有する場合には、シェル16は、その回動接続部を中心として回転することができず、従って、地面25に沿ってスリップすることになる。このスリップを防止するべく、各々のシェル15及び16は、関連するシェルの回動接続部の継続部内において位置決めされると共に球状表面における転動を許容するローラーを有する。更に詳しくは、シェル15は、ローラー28を装備しており、且つ、シェル16は、ローラー29を装備している。ローラー28及び29は、軸14に対して垂直である軸を中心として回転するべく単一の自由度を有してもよい。この回転運動は、車輪が特異点構成においてスリップすることを防止するために十分なものである。ローラーは、各々、車輪10の球状表面に準拠した転動のラインを有する。
【0020】
又、対応する回動接続部の軸上に位置した地点を中心として回転するべく、各々のローラー28及び29に、2つの自由度を付与することもできる。ローラーは、依然として、関連する回動接続部の継続部内に位置すると共に車輪10の球状表面とアライメントされたその走行表面の点を有する。このローラーは、ハウジング内の自由回転球に例えることができるが、1つの自由度を有するローラーよりも位置決めが容易である。
【0021】
車輪10が回転するのに伴って、それを含む面が軸14に対して垂直である円26の点上において地面25との接触が実現されることが早期に観察されている。更には、面17及び18が、シャフト12の軸14との交点30を有するまっすぐなラインに沿って交差している例においては、円26における面17及び18の間に距離yと、球状表面との間の面17及び18の交差において面17及び18を分離している距離dと、を定義することが可能であり、この交差は、点30から最も遠いものである。この距離dは、シャフトの最大可能直径を表している。実際には、シャフト12とシェル15及び16の間の擦れを回避するべく、シャフト12とシェル15及び16の間には、機能的クリアランスが設けられる。この結果、説明を簡単にするべく、距離dをシャフト12の直径に例えることとする。交差するように面17及び18のレイアウトを選択するという事実は、所与の距離yにおいて、シャフト12の直径dを増大させることが可能であり、これにより、シャフトの剛性を増大させることができることを、或いは、この代わりに、所与の直径dにおいて、車輪10の走行における不連続性を形成する距離yが低減されることを、意味していることが観察されよう。これは、従来技術との関連において記述されているものと同一の不連続性である。
【0022】
図3及び図4は、2つの面17及び18の間に形成された角度の最適化の曲線を示している。水平表面であると見なされている地面25との関係における軸14の傾斜の角度αが規定されている。この角度αは、円26と、地面26の面に対して垂直である球体の半径、即ち、垂直である半径の間に存在している。
【0023】
図示の例においては、面18は、図1に示されているように、ここでは、水平であるものとして示されている地面25に対して平行な位置を採用しうるものと仮定されている。従って、シェル16に属する回動接続部20の軸22は、図1の構成においては、球体の垂直半径である。従って、2つの面17及び18の開口角度は、2αという値を有する。この仮定は、本発明を実装するために必須のものではない。但し、これは、ローラーによって処理される特異点におけるスリップを制限する。
【0024】
2つの曲線は、距離yの値を付与する。第1曲線32は、y1と表記された距離が交点30の位置の関数として変化する方式を示している。この計算に関与するパラメータは、角度α、球体の半径r、及び距離dである。曲線は、無限大に位置した交点において、即ち、従来技術に従って、始まっている。
【0025】
一般的な式は、次式のとおりである。
【数1】
【0026】
d=10mm及びr=70mmという数値が付与されている。距離yは、交点30が車輪10に近接するように運動するのに伴って、減少することが判明している。
【0027】
第2曲線33は、yと表記された距離が、交点30が球体の表面において位置した際に2つの面17及び18の開口角度の関数として変化する方式を表している。
【0028】
一般的な式は、次式のとおりである。
=2r(1−sinα)tanα (2)
【0029】
d=10mm及びr=70mmという同一の数値が維持されている。2つの曲線32及び33は、同一の基準フレームにおいて描かれている。図2は、0から90°に変化する角度αの関数として2つの曲線32及び33を示している。大きな値の角度αには、あまり関心がない。これは、その車輪の軸14が過剰に鋭く傾斜した際には、車両に動力を供給することが困難であると思われるためである。本質的な関心の対象は、10°未満の角度αの値である。図4には、曲線32及び33のこの部分が、拡大図において示されている。
【0030】
2つの曲線32及び33は、交点35を有しており、この交点35は、選択された数値において、2°の角度αと、4.84mmのy距離値と、を付与している。実際には、交点35を超えて延在する第1曲線32の部分は、実現不能であり、その理由は、点30が、球体の内側に位置することになるからである。同様に、交点35の前に位置している第2曲線33の部分も、実現不能であり、その理由は、シェル15及び16がシャフト12と干渉することになるからである。従って、最良の値は、交点35に位置している。この値は、理論的なものである。点30の近傍において、シェル15及び16の間に、且つ、距離dにおいて、シェルとシャフト12の間に、機能的クリアランスを設ける必要がある。
【0031】
図5は、一方において、シェル15の場合に、回動接続部19の軸21及びローラー28の軸を、そして、その一方で、シェル16の場合には、回動接続部20の軸22及びローラー29の軸を、収容する車輪10の例示用の実施形態を断面において示している。
【0032】
車輪10は、シャフト12に対して固定された支持部40を有する。シェル15は、剛性ベアリング構造41と、軟性材料の層42と、を有する。同様に、シェル16も、剛性ベアリング構造43と、軟性材料の層44と、を有する。軟性材料の層42、44は、走行するように意図された地面25上におけるグリップを許容するように選択された特性を有する。層42及び44は、シェル15及び16の球状表面を形成している。層42及び44は、例えば、ゴム又はシリコーンから製造されている。
【0033】
回動接続部19が支持部40と剛性ベアリング構造41を接続している。回動接続部20が支持部40と剛性ベアリング構造43を接続している。図示の例においては、回動接続部19及び20の各々は、一方において、接続部19用の参照符号46及び47と、他方において、接続部20用の参照符号48及び49と、という2つのベアリングから形成されている。当然のことながら、車輪10の望ましい剛性に従って、シェル当たりに異なる数のベアリングを使用することもできる。この実施形態においては、ベアリングは、支持部40と、対応するベアリング構造の間に介在しているスペーサ片によって形成されている。スペーサ片は、例えば、小さな摩擦係数を得ることができるようにする材料から製造されている。例えば、ポリテトラフルオロエチレンを使用してもよい。ベアリングのその他の実施形態が可能である。例えば、回動接続部19及び20の回転における抵抗性のトルクを制限するべく、転がりベアリングを使用することができる。
【0034】
各々のシェル15及び16ごとに、軟性材料の対応する層は、ローラーの通過を許容するべく中断されている。有利には、各々のシェルは、中断されている領域内における層のクリープを制限するように構成された閉じ込めリングを有する。軟性材料の層は、特に、車両11の重量の結果として、地面25上における車輪10の圧力に伴ってクリープが発生しやすい。ローラーの周りのクリープを制限することにより、ローラーと軟性材料の層の間の擦れのリスクを伴うことなしに、中断の寸法を低減することができる。このような擦れは、その回動接続部を中心としたシェルの回転を妨げる可能性があろう。従って、軟性材料の層のエッジをローラーに更に近接させることにより、圧力が軟性材料の層とローラーの間において切り替わる地面25上における車輪10の押圧の不連続性を制限することができる。
【0035】
シェル15の場合には、閉じ込めリングは、例えば、ベアリング構造41内において製造されると共にローラー28を取り囲むリブ51を有する。同様に、シェル16の場合にも、ベアリング構造43内に製造されたリブ52がローラー29を取り囲んでいる。図6は、リブ52の領域内における車輪10の部分拡大図である。ベアリング構造41及び43は、成形によって生成されてもよく、リブ51及び52は、ベアリング構造と共に成形される。閉じ込めリング51及び52は、図5に示されているように、個々の回動接続部の軸を中心とした円筒形の形状であってもよい。但し、有利には、閉じ込めリング51及び52は、個々の回動接続部の軸を中心とした載頭円錐形の形状であり、載頭円錐形の形状は、図6に示されているように、関連するシェルの球状表面に向かう方向においてテーパー化されている。この結果、中断の寸法を更に低減することが可能であり、即ち、軟性材料の層のエッジとローラーの間の距離を更に制限することができる。閉じ込めリングは、シェルの内部から実行しうるローラーの取付けを妨げない。
【0036】
有利には、各々のシェル15及び16は、軟性材料の層内に配置されると共に層の柔軟性が関連するシェルの面までの距離の関数として変化するように構成された1つ以上の剛性リブ55を有する。リブ55は、有利には、関連するシェルのベアリング構造内において製造されている。図7及び図8は、リブ55の配置の一例を示している。図7は、斜視図において車輪10を示しており、且つ、図8は、図5と同様の方法により、断面において車輪10を示している。図7は、シェル15及び16の各々の上部におけるリブ55の例示用の1つの分布を示している。リブ55は、地球の表面上における経線の方式によって分布しており、ローラーは、極に位置し、面17及び18は、地球の表面の緯線を表している。図7において、8つのリブ55が、シェル15及び16の各々の上部に配置されている。当然のことながら、その他の数の溝も可能である。図8においては、リブ55を側面図において観察することができる。ローラーの近傍において、リブ55は、軟性材料の層42又は44の厚さに実質的に等しい高さを有している。地面との間の接触が1つのリブを介して又は2つのリブ55の間において発生した際に車輪10が同一のグリップレベルを維持するべく、リブ55と軟性材料の層のわずかなオーバーラップを計画してもよい。シェル15の場合には、面17であり、且つ、シェル16の場合には、面18であるシェルの境界を定めている面の近傍においては、リブ55は、軟性材料の層の厚さとの関係において、ゼロでない場合にも、非常に小さな高さを有している。このリブ55の高さの変化は、軟性材料の層の柔軟性の適合を許容している。
【0037】
閉じ込めリングとリブ55の両方を有する車輪10を製造することができる。
【0038】
有利には、地面25上における車輪10のグリップを改善するべく、軟性材料の層には、溝が形成されている。溝のレイアウトの様々な例が図9図11に示されている。これらの溝は、様々なタイプの地面上における相対的に良好なグリップを許容する。本発明は、有利には、屋内において使用しうるロボット用に実装される。溝は、絨毯、大理石、寄木張り、コンクリート、カーペットなどのタイプの床仕上材におけるロボットの多機能性を改善するトレッドパターンを形成する。溝は、すべての方向に延在する鋭いエッジを有する。実際に、1つの回動接続部しか有していない既知の車輪とは異なり、本発明による球状車輪は、その球状表面の中心を中心として回転するべく、2つの自由度を伴って回転することができる。従って、溝の設計において特定の方向を選択しないほうが有利である。
【0039】
有利には、溝の表面密度は、関連するシェル15又は16の面17又は18から離れる距離に伴って増大する。この密度の増大は、図9図11において明瞭に可視状態にある。溝は、面17又は18の近傍よりも、対応するローラーの通過のための軟性材料の層の中断の近傍において、離隔幅が狭くなっている。この配置により、軟性材料の層とローラーの間におけるスリップを伴わない遷移の保証を改善することができる。従って、この結果、遷移の近傍における軟性材料の層と地面の間の車輪の擦れのリスクが制限されることになる。このような擦れは、そのローラーのうちの1つのローラー上への車輪を介した接触からの通過を許容しないか又はこれを遅延させることになろう。
【0040】
又、溝は、車輪10が湿潤状態の地面上において使用される際の排水をも許容する。
【0041】
図12は、本発明による3つの車輪10を装備した車両11を示している。この車両は、例えば、ロボットである。又、本発明は、3つを上回る数の車輪を有する車両において実装されてもよい。例えば、4つの車輪を有する車両の場合には、反対側の車輪の軸は、水平の地面との関係において1つの且つ同一の垂直面内に位置し、これにより、車輪の2つのペアを形成している。車輪の2つのペアの軸を含む面は、垂直である。更に大まかに言えば、少なくとも2つの車輪のシャフトの軸は、1つの且つ同一の面内に位置してはおらず、且つ、この結果、車両は、その車輪10が適切な制御を通じて地面25上に維持された状態において、すべての方向に運動することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12