(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6400596
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】給気冷却器のためのフラットチューブおよび対応する給気冷却器
(51)【国際特許分類】
F28F 19/00 20060101AFI20180920BHJP
F28F 1/40 20060101ALI20180920BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20180920BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20180920BHJP
F28F 3/06 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
F28F19/00 541
F28F1/40 N
F28F21/08 B
F28F21/08 A
F28D9/02
F28F3/06 Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-548538(P2015-548538)
(86)(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公表番号】特表2016-500436(P2016-500436A)
(43)【公表日】2016年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2013077244
(87)【国際公開番号】WO2014096105
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年8月13日
(31)【優先権主張番号】1262265
(32)【優先日】2012年12月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス、バレ
【審査官】
伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−300381(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0041556(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0175617(US,A1)
【文献】
特開2007−303812(JP,A)
【文献】
特開2001−116490(JP,A)
【文献】
特開昭55−068595(JP,A)
【文献】
特開2009−068083(JP,A)
【文献】
特開2007−053307(JP,A)
【文献】
特開2009−058167(JP,A)
【文献】
特開平06−272069(JP,A)
【文献】
特開昭55−140098(JP,A)
【文献】
特開2002−168591(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第2925663(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 19/00
F28D 9/02
F28F 1/40
F28F 3/06
F28F 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換プレート(1)を形成するようにプレス加工された少なくとも1つの金属板から製造された給気熱交換器のフラットチューブ(100)であって、
当該プレス加工は、流体入口(3a)と流体出口(3b)とが、伝熱流体が循環する回路によって連結されることを可能にし、
前記回路は、湾曲部によって連結された少なくとも2つの直線経路であって、第1方向に延びるとともに、互いに隣り合う2つの前記直線経路の間にリブが配置された少なくとも2つの直線経路を含み、前記回路は、内部に配置されるとともに、前記フラットチューブ(100)の材料に対して30mV以上の電位差を生み出す材料から作製された、少なくとも1つの金属インサート(51)を備え、
前記フラットチューブ(100)は、プレス加工された金属板から製造されるとともに、互いに組み立てられた、2つの交換プレート(1)の組立体によって形成され、各交換プレート(1)のプレス加工された面は、互いに対向し、
前記湾曲部の内側に配置された丸みを帯びた前記リブの端部の前記第1方向に直交する第2方向の寸法は、前記リブの前記第2方向の寸法よりも大きい、ことを特徴とするフラットチューブ(100)。
【請求項2】
前記インサート(51)は、0.7〜1.5%の比率で亜鉛を含有する金属合金で作製されていることを特徴とする請求項1に記載のフラットチューブ(100)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記交換プレート(1)は、3000系アルミニウム合金で作製されていることを特徴とする請求項2に記載のフラットチューブ(100)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の少なくとも1つのフラットチューブ(100)を備えたことを特徴とする給気熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、より具体的には自動車の分野で使用される給気熱交換器の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両の分野では、第1の流体が循環する同一のフラットチューブのスタックを備えた熱交換器を使用することは、知られた慣例となっている。各フラットチューブは、一般に、所定のパターンに皿状体を形成するためにプレス加工された2つの板状金属プレートから形成されており、それらの凹面が互いに対向するように配設されている。2つのプレートは、流体密封の態様で共に結合され、第1の流体が流体入口から流体出口へと循環し得るフラットチューブが形成されている。各々がフラットチューブの一端に位置付けられ、より一般には、各々がプレートの反対側の面に位置付けられている。
【0003】
フラットチューブは、入口ライザーを形成するために共に結合された各フラットチューブの流体入口と、互いの頂部上に積み重ねられている。同様に、各フラットチューブの流体出口は、出口ライザーを形成するために共に結合されている。各フラットチューブの間には、第2の流体の通路のための間隙が残されている。2つの流体間での熱の交換は、第1の流体がフラットチューブを通過するとともに、第2の流体が当該フラットチューブの間を通過するようにして行われる。
【0004】
そのような熱交換機は、通常、自動車両の内部の空調のための冷媒回路内の蒸発器として使用され、この冷媒は、大気である第1の流体および第2の流体を構成する。または、この熱交換器は、自動車両のキャビンを加熱するための伝熱流体回路内のヒータとして使用され、この伝熱流体は、第1の流体および大気である第2の流体を構成する。
【0005】
それにもかかわらず、そのような交換器は、熱パラメータがかなり特殊な給気吸気回路(a charge air intake circuit)に使用するためには不適切であるとわかり得る。特に、燃焼シリンダーに入る前、圧縮されて加熱された吸気は、自己発火のリスクを低減するために、熱交換器の手段によって十分に冷却されている必要があり、これは、従来の熱交換器では、効果的に達成することができないものである。一般的に、効率を高めるために、給気交換器のこのタイプは、例えば、給気である第2の流体を冷却するために、第1の流体として、水のような液体を使用する。
【0006】
第1の流体としての液体の使用は、具体的には、腐食を介して損傷する傾向にあるといった、交換器の耐久性の低減という不利益を有している。
【0007】
このように、本発明の目的の1つは、従来技術の不利益を少なくとも部分的に是正し、改善された給気熱交換器を提案することである。
【発明の概要】
【0008】
それ故に、本発明は、交換プレートを形成するようにプレス加工された少なくとも1つの金属板から製造された給気熱交換器のフラットチューブに関し、当該プレス加工は、流体入口と流体出口とが、伝熱流体が循環する回路によって連結されることを可能にし、当該回路は、内部に配置されるとともに、フラットチューブの材料に対して30mV以上の電位差を生み出す材料から作製された、少なくとも1つの金属インサートを含んでいる。
【0009】
本発明の一態様によれば、フラットチューブは、プレス加工された金属板から製造されるとともに、互いに組み立てられた、2つの熱交換プレートの組立体によって形成され、各交換プレートのプレス加工された面は、互いに対向している。
【0010】
本発明の他の態様によれば、インサートは、0.7〜1.5%の比率で亜鉛を含有する金属合金で作製されている。
【0011】
本発明の他の態様によれば、少なくとも1つの交換プレートは、3000系アルミニウム合金で作製されており、インサートは、6815アルミニウム合金または6807アルミニウム合金で作製されている。
【0012】
また、本発明は、上述された少なくとも1つのフラットチューブを備えている給気熱交換器に関する。
【0013】
本発明のさらなる特徴および利点は、例示された非限定的な実施例によって与えられる以下の説明を解釈することからより一層明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図2は、本発明によるフラットチューブの横断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
個々の図では、同一の要素に、同様の符号を付している。
【0016】
図1に示されているように、熱交換器のフラットチューブ100用の交換プレート1は、プレス加工された金属板から製造され得る。交換プレートは、流体入口3aと流体出口3bとを備えている。交換プレート1のプレス加工は、流体入口3aと流体出口3bとの間を流れる流体のための流れ回路を画定するリブ7とともに空洞を形成する。
【0017】
リブ7は、流れ回路に、流体入口3aと流体出口3bとの間での第1の伝熱流体の循環のための流路を与えている。この循環流路は、湾曲部9によって連結された少なくとも2つの直線通路5を含んでいる。この循環流路は、流れ回路の長さを増加させることが可能であり、それ故に、第1の伝熱流体が内部を流れる時間を増加させる。それによって、交換プレート1の反対側の面上を循環する第2の流体に対して熱の伝達をし得る時間の長さが増加する。第1の伝熱流体のこの流れを促進するために、リブ7は、丸みを帯びた端部11を有し得る。
【0018】
図1に示された例では、交換プレート1は、4つの相互に平行な通路5と、当該通路5の間を連結する3つの湾曲部9と、を含んでいる。
【0019】
図1に示すように、少なくとも1つの湾曲部9は突起91を有し得る。これらの突起91は、例えば、プレス加工によって製造され、少なくとも1つの熱交換プレート1の一体的な部分として形成され得る。またはそれらは、当業者に知られた手段を使用して、少なくとも1つの湾曲部9の内側に取り付けられて固定された要素であり得る。
【0020】
フラットチューブ100は、一般に、2つの交換プレート1を互いに組み立てることにより作製され、回路の通路5および湾曲9と、2つの交換プレート1の各々のリブ7とは、互いに対向し、当該フラットチューブ100の循環流路を形成している。交換プレート1は、例えば、ろう付けを使用して、流体密封の態様で組み立てられており、フラットチューブ100に沿って通過する伝熱流体の漏れを防止している。そのようなフラットチューブ100は、比較的細長く、例えば、循環流路は1mm〜3mmの高さを有し得る。
【0021】
フラットチューブ100の他の具体化の方法は、交換プレート1を、交換プレート1の外縁上およびリブ7上に存在する平坦プレートで、流れ回路を覆うように組み立て得る。
【0022】
図2に示すように、フラットチューブ100の内側では、回路は、第1の伝熱流体の循環をかき乱して乱流を生み出すように意図された少なくとも1つのインサート51を備えている。このことにより、第1の伝熱流体と接触する領域が増加し、当該第1の流体とフラットチューブ100との間での交換が増加する。
【0023】
少なくとも1つのインサート51は、フラットチューブ100の材料に対して30mV以上の電位差を生み出す金属材料から作製されている。この電位差は、当該インサートが、フラットチューブ100の材料に優先して腐食させられる犠牲陽極となることを可能にし、それによってフラットチューブは、長い時間、腐食に耐える高い能力を獲得する。
【0024】
インサート51が効果的な犠牲陽極となるために、当該インサートは、0.7〜1.5%の比率で亜鉛を含有する金属合金で作製されている。
【0025】
フラットチューブ100が、3000系アルミニウム合金、例えば、3003アルミニウム合金または3916アルミニウム合金で作製された交換プレート1から作製されており、最適な比率の亜鉛を含有した6815アルミニウム合金または6807アルミニウム合金で作製されたインサートを備えていることを着想し得る。
【0026】
インサート51は、第1の伝熱流体の流れの方向に垂直な波形の形状を有し得て、各波形の端部は、フラットチューブ100の壁と接触している。また、インサート51は、フラットチューブ100に沿って伝熱流体が循環する方向に平行であって、伝熱流体が循環する方向に垂直な、互いからオフセットされた一連の波形区域を有し得る。それ故に、第1の伝熱流体は、各区域の波形の間を通過し、流体とフラットチューブ100の壁との間で接触および交換のための領域が増加し、一の波形の区域から他の区域を通過するにつれて、第1の伝熱流体はかき乱され、温度が均一化され得るとともに、フラットチューブ100との熱交換の高い効率を保証する。
【0027】
勿論、当該インサート51は、それとは別に、正方形の波形状、ジグザグ形状または規則的なルーバー形状のような、接触領域の増加を可能にするとともに、流体が均一化されることを可能にする他の外形を有し得る。
【0028】
また、フラットチューブ100を含む熱交換器は、それらの流体入口3aと流体出口3bにおいて共に結合されたフラットチューブ100のスタックを備えており、各フラットチューブ100は離間し、第2の流体が当該フラットチューブ100の間を通過することを可能にしている。フラットチューブ100は、流体入口3aと流体出口3bにおいて共に結合されており、全てのフラットチューブ100の全ての流体入口を共にグループ化する流体入口ライザーを形成しているとともに、全てのフラットチューブ100の全ての流体出口を共にグループ化する流体出口ライザーを形成している。フラットチューブ100を通じて循環する第1の伝熱流体と、当該フラットチューブ100の間を通過する第2の流体との間での熱の交換を促進するために、2つのフラットチューブ100の間の間隙において、フラットチューブ100の各面上に設けられたフィンのような摂動装置102が加えられ得る。
【0029】
フラットチューブ100の通路5内にインサート51として取り付けられた部品の使用は、フラットチューブが、例えば、ろう付けによって、2つのフラットチューブ100の間の間隙に、摂動装置102をより一層容易に取り付けるための平らな壁を有することを可能にする。
【0030】
このようにして、フラットチューブ100の材料に対して30mV以上の電位差を生み出すとともに、犠牲陽極として振る舞う材料から作製された金属インサート51によって、フラットチューブ100が、腐食、とりわけ第1の流体による腐食に対して高い抵抗を有し、それ故に長寿命化することが明らかに理解され得る。