(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0014】
図1は、駆動素子の状態に基づき、診断回路に故障が発生しているか否かを確認するための手順を示すフローチャートである。
【0015】
まず、
図1に示すステップS10において、駆動素子の状態に基づき、診断回路が負荷の異常を診断する必要がある状態か否かを判定する。
【0016】
駆動素子が、診断回路による負荷の異常を診断する必要がある状態の場合(S10判定:Yes)、診断回路は負荷に異常が発生しているか否かを診断する。診断回路が負荷に異常が発生していることを検出しなかった場合には(ステップS21:No)、負荷の状態は正常と判定し、S10判定に戻る。診断回路が負荷に異常が発生していることを検出した場合には(ステップS21:Yes)、必要に応じて負荷駆動回路を発生している異常から保護するなどの動作を起動し、さらに異常の発生をマイクロコンピュータ等の主制御装置に通知する。主制御装置は異常が発生している箇所や発生している異常の種類などに応じて、車両を所定の動作に移行させる。
【0017】
駆動素子が、診断回路による負荷の異常を診断する必要がない状態の場合(S10判定:No)、診断回路は負荷に異常が発生しているか否かを診断する必要は無い。そのため、診断回路が診断をする必要が無い期間中に、負荷の異常状態時に発生する物理量に相当する擬似異常信号を診断回路に注入し、診断回路がそれを負荷の異常と検出できるか否かを確認することで、診断回路に故障があるか否かを確認する。擬似異常信号を診断回路に注入した結果、診断回路が負荷の異常を検出したことを示す信号を出力した場合(ステップS31:Yes)、診断回路に故障は発生していないと判定し、S10判定に戻る。一方、擬似異常信号を診断回路に注入した結果、診断回路が故障を検出したことを示す信号を出力しなかった場合(ステップS31:No)、診断回路に故障が発生していると判定し、マイクロコンピュータ等の主制御装置に診断回路に故障が発生していることを通知する。主制御装置は故障が発生している診断回路の箇所等に応じて、故障警告灯を点灯して運転者に通知するなど、車両を所定の動作に移行させる。
【0018】
以下、
図2を参照して具体例を説明する。
【0019】
図2は、診断回路として過電流検出によるバッテリショート検出機能を持った、ローサイドドライバ構成の負荷駆動回路を示している。
ローサイドドライバ構成の負荷駆動回路100は、
電源103と負荷101の下流に設けられた回路であって、
駆動素子MOSFET19aとそれを駆動するためのプリドライバ12a、
駆動素子MOSFET19aに流れる電流を診断するための電流検出抵抗18a、
電流検出抵抗18aの両端電圧を増幅する差動増幅回路14a、
バッテリショートによる過電流発生か否かのしきい値を決めるバッテリショートしきい値電圧生成回路13a、
差動増幅回路14aの出力電圧とバッテリショートしきい値電圧生成回路13aとの値を比較し過電流発生か否かを判定する比較回路11a、
バッテリショートによる過電流発生時に電流検出抵抗18aの両端に発生する電圧に相当する電圧を生成するバッテリショート擬似異常信号生成回路17a、
差動増幅回路14aに入力する信号を電流検出抵抗18aの両端電圧かバッテリショート擬似異常信号生成回路17aかを切替える信号切替回路15aと15b、
これらの動作を制御する制御回路10から成る。
【0020】
なお、図示しないが、駆動する負荷の特性により、駆動素子保護用のクランプダイオードや電流を還流させる還流ダイオードを負荷駆動回路に含めても良い。
【0021】
図2におけるバッテリショートを診断する診断回路は、電流検出抵抗18a、差動増幅回路14a、バッテリショートしきい値電圧生成回路13a、比較回路11aから成る。
【0022】
診断回路は、駆動素子MOSFET19aが導通状態のとき負荷101の異常によりバッテリショートが発生した場合、電流検出抵抗18aに大電流が流れ電流検出抵抗18aの両端電圧差が大きくなり、両端電圧の差を増幅している差動増幅回路14aの出力電圧が上昇し、それがバッテリショートしきい値電圧生成回路13aで生成された電圧を超えた時にバッテリショートによる過電流発生と判定し制御回路10に通知する。バッテリショート発生の通知を受けた制御回路10は、駆動素子MOSFET19aを非導通にして電流を停止させるための信号をプリドライバ12aに送信するなどの保護動作を開始する。
【0023】
一方で、駆動素子MOSFET19aが非導通状態の時には、負荷101の異常によりバッテリショートが発生した場合でも電流は流れないので、診断回路はバッテリショートによる過電流を診断する必要はない。
【0024】
つまり、負荷駆動制御のために駆動素子を導通状態と非導通状態でスイッチングしている場合には、駆動素子が診断回路による診断を必要としない状態の時に、診断回路の故障有無の確認を行えれば、車両制御のための負荷駆動に影響を与えることなく、診断回路に発生した故障が潜在故障となることを防げる。
【0025】
以下、
図3を参照して、バッテリショートを診断する診断回路に故障が発生しているか否かを確認するための動作手順を説明する。
【0026】
制御回路10は負荷駆動を制御する信号をプリドライバ12aに送信し、駆動素子MOSFET19aには
図3(a)に示す駆動素子MOSFET19aのゲート入力信号N15が入力される。
【0027】
ゲート入力信号N15がHighの期間中は駆動素子MOSFET19aが導通状態となり、
図3(b)に示す電流が電流検出抵抗18aに流れる。その際、電流検出抵抗18aでは電圧降下が発生し、電流検出抵抗18aの上流側信号N11aと下流側信号N11bの電圧の差は
図3(c)となる。制御回路10は、ゲート入力信号N15がHighの期間中は、信号切替回路15aと15bを制御して、電流検出抵抗18aの上流側信号N11aが信号切替回路15aの出力信号N13aに出力され、電流検出抵抗18aの下流側信号N11bが信号切替回路15bの出力信号N13bに出力されるように制御する。
【0028】
一方、ゲート入力信号N15がLowの期間中は駆動素子MOSFET19aが非導通状態となる。その際、バッテリショート擬似異常信号生成回路17aは、バッテリショートによる過電流が発生した場合に電流検出抵抗18aの上流側信号N11aと下流側信号N11bに発生する電圧に相当するレベルの電圧信号を生成し、それぞれバッテリショート擬似異常信号生成回路17aの上流側出力信号N12aと下流側出力信号N12bによって信号切替回路15aと15bに出力される。
図3(d)にバッテリショート擬似異常信号生成回路17aが生成する上流側出力信号N12aと下流側出力信号N12bの電圧差の波形を示す。制御回路10は、ゲート入力信号N15がLowの期間中は、信号切替回路15aと15bを制御して、バッテリショート擬似異常信号生成回路17aの上流側出力信号N12aが信号切替回路15aの出力信号N13aに出力され、バッテリショート擬似異常信号生成回路17aの下流側出力信号N12bが信号切替回路15bの出力信号N13bに出力されるように制御する。
【0029】
この制御の結果、差動増幅回路14aに入力される信号の電圧差を
図3(e)に示す。差動増幅回路14aは入力された波形を増幅して出力信号N16に出力する。差動増幅回路14aの出力信号N16の電圧波形を
図3(f)に示す。
【0030】
差動増幅回路14aの出力信号N16は、比較回路11aに入力され、バッテリショート判定のしきい値レベルを決定しているバッテリショートしきい値電圧生成回路13aが生成する電圧と比較される。バッテリショートしきい値電圧生成回路13aが生成し、出力する信号N17を
図3(h)に示す。比較回路11aは、差動増幅回路14aの出力電圧が、バッテリショートしきい値電圧生成回路13aの生成する電圧を超えた時に、バッテリショートによる過電流が発生した判定し、制御回路10に対して、出力信号N18にHighを出力する。
【0031】
バッテリショート擬似異常信号生成回路17aは、バッテリショートによる過電流発生時に電流検出抵抗18aの両端に発生する電圧に相当する電圧を生成しているため、差動増幅回路14a、比較回路11a、バッテリショートしきい値電圧生成回路13a、信号切替回路15aと15b、バッテリショート擬似異常信号生成回路17aに故障が発生していなければ、
図3(g)に示すとおり比較回路11aは制御回路10に対してHighを出力する。一方で、比較回路11aが制御回路10に対してHighを出力しなかった場合には、差動増幅回路14a、比較回路11a、バッテリショートしきい値電圧生成回路13a、信号切替回路15aと15b、バッテリショート擬似異常信号生成回路17aの少なくともひとつの回路に故障が発生していると判断する。
【0032】
以上より、駆動素子MOSFET19aが非導通状態にあるとき、バッテリショートによる過電流発生時に電流検出抵抗18aの両端に発生する電圧に相当する電圧を診断回路に注入し、診断回路が異常を検出するかを確認することで、診断回路に異常が発生しているか否かを判定することができる。
【0033】
なお、
図3(d)では、ゲート入力信号N15がLowの期間中に、1つの擬似異常信号を注入しているが、1つ以上の擬似異常信号を注入し、診断回路が1つ以上の異常を検出した時に、診断回路は正常と判定しても良い。
【0034】
また、
図4(d)に示すとおり、バッテリショート擬似異常信号生成回路17aが、バッテリショート検出すべきでは無いレベルの擬似異常信号P10とバッテリショート検出すべきレベルの擬似異常信号P11の少なくとも2種類の擬似異常信号を注入し、擬似異常信号P10注入時には比較回路11aは異常検出せず、擬似異常信号P11注入時には比較回路11aは異常検出することを確認することで、バッテリショート判定のためのしきい値は擬似異常信号P10の電圧レベルと擬似異常信号P11の電圧レベルとの間に存在していると判定することが可能である。
【0035】
さらに、
図4に示すとおり、周期T1と周期T2の連続する2つの周期で擬似異常信号を注入し、診断回路が連続する2つの周期で擬似異常信号による故障を検出した場合に、診断回路は正常と判定しても良い。擬似異常信号注入し、診断回路が故障を検出するための連続した周期は2つ以上であっても良い。
【0036】
駆動素子MOSFET19aが非導通状態の時に、バッテリショートによる過電流発生を示す信号を検出した場合には、擬似異常信号注入による異常検出であるので、制御回路10などによって異常検出はマスクされ、負荷駆動回路の動作には影響を与えないように制御する。
【実施例2】
【0037】
図5は実施例2に関するものであり、診断回路としてグランドショート検出機能と負荷オープン検出機能を持った、ローサイドドライバ構成の負荷駆動回路を示している。
【0038】
図5に示した負荷駆動回路におけるグランドショート検出手段は、駆動素子MOSFET19aが非導通状態の時に、負荷101の異常によりグランドショートが発生した場合、駆動素子MOSFET19aのドレイン信号N10aはグランド電位近傍となるため、駆動素子MOSFET19aのドレイン信号N10aの電位とグランドショートしきい値電圧生成回路13bが生成する電圧を比較回路11bが比較し、ドレイン信号N10aの電位がグランドショートしきい値電圧生成回路13bが生成する電圧を下回った場合に負荷がグランドショート状態であると判定する。
【0039】
一方、
図5に示した負荷駆動回路における負荷オープン検出手段は、駆動素子MOSFET19aが非導通状態の時に、ドレイン信号N10aの電位を所定の電位に移行させるために定電流源20aと20bがコンデンサ102の電荷を充放電させ、ドレイン信号N10aの電位と負荷オープンしきい値電圧生成回路13cが生成する電圧を比較回路11cが比較し、ドレイン信号N10aの電位が負荷オープンしきい値電圧生成回路13cが生成する電圧を超えた場合に負荷がオープン状態であると判定する。
【0040】
なお、図示しないが、駆動する負荷の特性により、駆動素子保護用のクランプダイオードや電流を還流させる還流ダイオードを負荷駆動回路に含めても良い。
【0041】
グランドショートと負荷オープンのいずれの異常状態が発生しても、駆動素子MOSFET19aが導通状態のときはドレイン信号N10aの電位はグランド電位近傍になるため、異常状態の検出を行うことはできない。つまり駆動素子MOSFET19aが導通状態の時には、負荷101の異常により負荷オープンまたはグランドショートの診断をする必要はないため、この期間中に擬似異常信号をグランドショートと負荷オープンを診断する診断回路に注入することで、負荷駆動制御に影響を与えることなく、診断回路に故障が発生しているか否かを判定することができる。
【0042】
具体的には、駆動素子MOSFET19aが非導通の期間中は、制御回路10は信号切替回路15cと15dを制御して、ドレイン信号N10aを比較回路11bと11cに接続する。この期間中はドレイン信号N10aの電位を比較回路11bと11cで、それぞれの異常検出のためのしきい値電圧を決定しているグランドショートしきい値電圧生成回路13bの生成電圧と負荷オープンしきい値電圧生成回路13cの生成電圧と比較することで、グランドショート異常と負荷オープン異常の診断をしている。
【0043】
一方、駆動素子MOSFET19aが導通の期間中は、制御回路10は信号切替回路15cと15dを制御して、グランドショート発生時にドレイン信号N10aに発生する電圧に相当する電圧を生成するグランドショート擬似異常信号生成回路17bの生成電圧を比較回路11bに接続し、負荷オープン発生時にドレイン信号N10aに発生する電圧に相当する電圧を生成する負荷オープン擬似異常信号生成回路17cの生成電圧を比較回路11cに接続する。
【0044】
比較回路11bは、グランドショート擬似異常信号生成回路17bの生成電圧とグランドショートしきい値電圧生成回路13bの生成電圧を比較し、グランドショート擬似異常信号生成回路17bの生成電圧がグランドショートしきい値電圧生成回路13bの生成電圧を下回った場合に異常検出を制御回路10に通知する。グランドショート擬似異常信号生成回路17bの生成電圧は、グランドショートが発生した時にドレイン信号N10aに発生する電圧に相当する電圧を生成しているので、比較回路11bが異常を検出した場合には、診断回路は正常であると判定できる。一方、比較回路11bが異常を検出しなかった場合には、診断回路に故障が発生していると判定する。
【0045】
同様に、比較回路11cは、負荷オープン擬似異常信号生成回路17cの生成電圧と負荷オープンしきい値電圧生成回路13cの生成電圧を比較し、負荷オープン擬似異常信号生成回路17cの生成電圧が負荷オープンしきい値電圧生成回路13cの生成電圧を上回った場合に異常検出を制御回路10に通知する。負荷オープン擬似異常信号生成回路17cの生成電圧は、負荷オープンが発生した時にドレイン信号N10aに発生する電圧に相当する電圧を生成しているので、比較回路11cが異常を検出した場合には、診断回路は正常であると判定できる。一方、比較回路11cが異常を検出しなかった場合には、診断回路に故障が発生していると判定する。
【0046】
なお、擬似異常信号の診断回路への注入は、駆動素子MOSFET19a制御信号の1周期内の導通期間中に、1つ以上の擬似異常信号を注入し、診断回路が1つ以上の異常を検出した時に、診断回路は正常と判定しても良い。
【0047】
また、実施例1の
図4(d)と同様、グランドショート擬似異常信号生成回路17bと負荷オープン擬似異常信号生成回路17cが、異常検出すべきでは無いレベルの擬似異常信号と異常検出すべきレベルの擬似異常信号の少なくとも2種類の擬似異常信号を生成することで、異常検出のためのしきい値は2種類の擬似異常信号レベルの間に存在していると判定することが可能である。
【0048】
さらに、実施例1の
図4と同様、連続する1つ以上の周期で擬似異常信号を注入し、診断回路が連続する1つ以上の周期で擬似異常信号による故障を検出した場合に、診断回路は正常と判定しても良い。
【0049】
駆動素子MOSFET19aが導通状態の時に異常を示す信号を検出した場合には、擬似異常信号注入による異常検出であるので、制御回路10などによって異常検出はマスクされ、負荷駆動回路の動作には影響を与えないように制御する。
【実施例3】
【0050】
図6は実施例3に関するものであり、診断回路としてバッテリショート検出機能と負荷オープン検出機能とグランドショート検出機能を持った、ハイサイドドライバ構成の負荷駆動回路を示している。
【0051】
図6に示した負荷駆動回路におけるバッテリショート検出手段は、駆動素子MOSFET19bが非導通状態の時に、負荷101の異常によりバッテリショートが発生した場合、駆動素子MOSFET19bのソース信号N10bはバッテリ電位近傍となるため、ソース信号N10bの電位とバッテリショートしきい値電圧生成回路13dが出力する電圧を比較回路11dが比較し、ソース信号N10bの電位がバッテリショートしきい値電圧生成回路13dが出力する電圧を超えた場合に負荷がバッテリショート状態であると判定する。
【0052】
また、
図6に示した負荷駆動回路における負荷オープン検出手段は、駆動素子MOSFET19bが非導通状態の時に、ソース信号N10bの電位を所定の電位に移行させるために定電流源20aと20bがコンデンサ102の電荷を充放電させ、ソース信号N10bの電位と負荷オープンしきい値電圧生成回路13cが生成する電圧を比較回路11eが比較し、ソース信号N10bの電位が負荷オープンしきい値電圧生成回路13cが出力する電圧を超えた場合に負荷がオープン状態であると判定する。
【0053】
さらに、
図6に示した負荷駆動回路における過電流検出によるグランドショート検出手段は、駆動素子MOSFET19bが導通状態の時に、負荷101の異常によりグランドショートが発生した場合、電流検出抵抗18bに大電流が流れ電流検出抵抗18bの両端電圧差が大きくなり、両端電圧の差を増幅している差動増幅回路14bの出力電圧が上昇し、差動増幅回路14bの出力電圧とグランドショートしきい値電圧生成回路13fが生成する電圧を比較回路11fが比較し、差動増幅回路14bの出力電圧がグランドショートしきい値電圧生成回路13fが生成する電圧を超えた場合にグランドショート状態であると判定する。
【0054】
なお、図示しないが、駆動する負荷の特性により、駆動素子保護用のクランプダイオードや電流を還流させる還流ダイオードを負荷駆動回路に含めても良い。
【0055】
バッテリショートまたは負荷オープンの異常状態が発生していても、駆動素子MOSFET19bが導通状態のときはソース信号N10bの電位はグランド電位近傍になるため、ソース信号N10bの電位を利用して異常状態の検出を行うことはできない。つまり駆動素子MOSFET19bが導通状態の時には、負荷101の異常によりバッテリショートおよび負荷オープンの診断をする必要はないため、この期間中に擬似異常信号をバッテリショートおよび負荷オープンを診断する診断回路に注入することで、負荷駆動制御に影響を与えることなく、診断回路に故障が発生しているか否かを判定することができる。
【0056】
具体的には、バッテリショートと負荷オープンに関しては、駆動素子MOSFET19bが非導通の期間中は、制御回路10は信号切替回路15eと15fを制御して、ソース信号N10bを比較回路11dと11eに接続する。この期間中はソース信号N10bの電位を比較回路11dと11eで、それぞれの異常検出のためのしきい値電圧を決定しているバッテリショートしきい値電圧生成回路13dの生成電圧と負荷オープンしきい値電圧生成回路13eの生成電圧と比較することで、バッテリショート異常と負荷オープン異常の診断をしている。
【0057】
一方、バッテリショートと負荷オープンに関する、駆動素子MOSFET19bが導通の期間中は、制御回路10は信号切替回路15eと15fを制御して、バッテリショート発生時にソース信号N10bに発生する電圧に相当する電圧を生成するバッテリショート擬似異常信号生成回路17dの生成電圧を比較回路11dに接続し、負荷オープン発生時にソース信号N10bに発生する電圧に相当する電圧を生成する負荷オープン擬似異常信号生成回路17eの生成電圧を比較回路11eに接続する。
【0058】
比較回路11dは、バッテリショート擬似異常信号生成回路17dの生成電圧とバッテリショートしきい値電圧生成回路13dの生成電圧を比較し、バッテリショート擬似異常信号生成回路17dの生成電圧がバッテリショートしきい値電圧生成回路13dの生成電圧を上回った場合にバッテリショート検出を制御回路10に通知する。バッテリショート擬似異常信号生成回路17dの生成電圧は、バッテリショートが発生した時にソース信号N10bに発生する電圧に相当する電圧を生成しているので、比較回路11dが異常を検出した場合には、診断回路は正常であると判定できる。一方、比較回路11dが異常を検出しなかった場合には、診断回路に故障が発生していると判定する。
【0059】
同様に、比較回路11eは、負荷オープン擬似異常信号生成回路17eの生成電圧と負荷オープンしきい値電圧生成回路13eの生成電圧を比較し、負荷オープン擬似異常信号生成回路17eの生成電圧が負荷オープンしきい値電圧生成回路13eの生成電圧を上回った場合に異常検出を制御回路10に通知する。負荷オープン擬似異常信号生成回路17eの生成電圧は、負荷オープンが発生した時にソース信号N10bに発生する電圧に相当する電圧を生成しているので、比較回路11eが異常を検出した場合には、診断回路は正常であると判定できる。一方、比較回路11eが異常を検出しなかった場合には、診断回路に故障が発生していると判定する。
【0060】
グランドショートに関しては、グランドショートの異常状態が発生していても、駆動素子MOSFET19bが非導通状態のときは電流が流れないため、電流検出抵抗18bを利用してのグランドショート異常の検出を行うことはできない。つまり駆動素子MOSFET19bが非導通状態の時には、負荷101の異常によりグランドショートの診断をする必要はなくなるため、擬似異常信号をグランドショートを診断する診断回路に注入することで、負荷駆動制御に影響を与えることなく、診断回路に故障が発生しているか否かを判定することができる。
【0061】
具体的には、駆動素子MOSFET19bが導通の期間中は、制御回路10は信号切替回路15gと15hを制御して、電流検出抵抗18bの上流側信号と下流側信号を差動増幅回路14bに接続する。グランドショートにより、電流検出抵抗18bに大電流が流れ電流検出抵抗18bの両端電圧差が大きくなり、両端電圧の差を増幅している差動増幅回路14bの出力電圧が上昇し、それがグランドショートしきい値電圧生成回路13fで生成された電圧を超えた時にグランドショートによる過電流発生と判定し制御回路10に通知する。グランドショート発生の通知を受けた制御回路10は、駆動素子MOSFET19bを非導通にして電流を停止させるための信号をプリドライバ12bに送信する。
【0062】
一方、駆動素子MOSFET19bが非導通の期間中は、制御回路10は信号切替回路15gと15hを制御して、グランドショートによる過電流が発生した場合に電流検出抵抗18bの上流側と下流側に発生する電圧に相当する電圧を生成するグランドショート擬似異常信号生成回路17fの生成電圧を差動増幅回路14bに接続する。
【0063】
比較回路11fは、差動増幅回路14bで増幅されたグランドショート擬似異常信号生成回路17fの生成電圧と、グランドショートしきい値電圧生成回路13fの生成電圧を比較し、差動増幅回路14bで増幅されたグランドショート擬似異常信号生成回路17fの生成電圧がグランドショートしきい値電圧生成回路13fの生成電圧を上回った場合に異常検出を制御回路10に通知する。グランドショート擬似異常信号生成回路17fの生成電圧は、グランドショートが発生した時に電流検出抵抗18bの上流側と下流側に発生する電圧に相当する電圧を生成しているので、比較回路11fが異常を検出した場合には診断回路は正常であると判定できる。一方、比較回路11fが異常を検出しなかった場合には、診断回路に故障が発生していると判定する。
【0064】
なお、擬似異常信号の診断回路への注入は、駆動素子MOSFET19b制御信号の1周期内の導通期間中に、1つ以上の擬似異常信号を注入し、診断回路が1つ以上の異常を検出した時に、診断回路は正常と判定しても良い。
【0065】
なお、実施例1の
図4(d)にしたのと同様、バッテリショート擬似異常信号生成回路17d、負荷オープン擬似異常信号生成回路17e、グランドショート擬似異常信号生成回路17fが、異常検出すべきでは無いレベルの擬似異常信号と異常検出すべきレベルの擬似異常信号の少なくとも2種類の擬似異常信号を注入することで、異常検出のためのしきい値は2種類の擬似異常信号レベルの間に存在していると判定することが可能である。
【0066】
さらに、実施例1の
図4と同様、連続する1つ以上の周期で擬似異常信号を注入し、診断回路が連続する1つ以上の周期で擬似異常信号による故障を検出した場合に、診断回路は正常と判定しても良い。
【0067】
擬似異常信号注入により異常が検出された場合には、制御回路10などによって異常検出はマスクされ、負荷駆動回路の動作には影響を与えないように制御する。
【実施例4】
【0068】
図7は実施例4に関するものであり、診断回路として過電流検出によるバッテリショート検出機能とグランドショート検出機能を持った、ハイサイド側駆動素子MOSFET19cとローサイド側駆動素子MOSFET19dから成るハーフブリッジ構成の負荷駆動回路を示している。
【0069】
図7に示した負荷駆動回路の負荷駆動素子は、ハイサイド側駆動素子MOSFET19cを導通かつローサイド側駆動素子MOSFET19dを非導通にして電源103から負荷101に電流を流すことと、ハイサイド側駆動素子MOSFET19cを非導通でかつローサイド側駆動素子MOSFET19dを導通にして負荷101に蓄えられたエネルギによる還流電流を流す動作をする。つまりハイサイド側駆動素子MOSFET19cとローサイド側駆動素子MOSFET19dは同時に導通状態になることなく負荷101を駆動する。
【0070】
図7に示した負荷駆動回路におけるグランドショート検出手段は、ハイサイド側駆動素子MOSFET19cが導通状態でローサイド側駆動素子MOSFET19dが非導通状態の時に、負荷101の異常によりグランドショートが発生した場合、電流検出抵抗18cに大電流が流れ電流検出抵抗18cの両端電圧差が大きくなり、両端電圧の差を増幅している差動増幅回路14cの出力電圧が上昇し、差動増幅回路14cの出力電圧とグランドショートしきい値電圧生成回路13gが生成する電圧を比較回路11gが比較し、差動増幅回路14cの出力電圧がグランドショートしきい値電圧生成回路13gが生成する電圧を超えた場合にグランドショートによる過電流状態であると判定する。
【0071】
また、
図7に示した負荷駆動回路におけるバッテリショート検出手段は、ハイサイド側駆動素子MOSFET19cが非導通状態でローサイド側駆動素子MOSFET19dが導通状態の時に、負荷101の異常によりバッテリショートが発生した場合、電流検出抵抗18dに大電流が流れ電流検出抵抗18dの両端電圧差が大きくなり、両端電圧の差を増幅している差動増幅回路14dの出力電圧が上昇し、差動増幅回路14dの出力電圧とバッテリショートしきい値電圧生成回路13hが生成する電圧を比較回路11hが比較し、差動増幅回路14dの出力電圧がバッテリショートしきい値電圧生成回路13hが生成する電圧を超えた場合にバッテリショートによる過電流状態であると判定する。
【0072】
さらに、図示しないが、
図7に示した負荷駆動回路における負荷オープン検出手段は、駆動素子MOSFET19dが非導通状態で駆動素子MOSFET19cが導通状態の時に、電流検出抵抗18cに流れる電流が所定の電流値を下回った場合に負荷オープン状態であると判定することも可能である。
【0073】
負荷の異常によりグランドショートが発生した場合、ハイサイド側駆動素子MOSFET19cが非導通状態のときは電流検出抵抗18cに電流が流れないため、過電流によるグランドショートの検出を行うことはできない。つまりハイサイド側駆動素子MOSFET19cが非導通状態の時には、負荷101の異常によるグランドショートの診断をする必要はないため、この期間中に擬似異常信号をグランドショートを診断する診断回路に注入することで、負荷駆動制御に影響を与えることなく、診断回路に故障が発生しているか否かを判定することができる。
【0074】
具体的には、駆動素子MOSFET19cが導通の期間中は、制御回路10は信号切替回路15iと15jを制御して、電流検出抵抗18cの上流側信号と下流側信号を差動増幅回路14cに接続する。グランドショートにより、電流検出抵抗18cに大電流が流れ電流検出抵抗18cの両端電圧差が大きくなり、両端電圧の差を増幅している差動増幅回路14cの出力電圧が上昇し、それがグランドショートしきい値電圧生成回路13gで生成された電圧を超えると、グランドショートによる過電流発生と判定し制御回路10に通知する。グランドショート発生の通知を受けた制御回路10は、ハイサイド側駆動素子MOSFET19bを非導通にして電流を停止させるための信号をプリドライバ12cに送信する。
【0075】
一方、ハイサイド側駆動素子MOSFET19cが非導通の期間中は、制御回路10は信号切替回路15iと15jを制御して、グランドショートによる過電流が発生した場合に電流検出抵抗18cの上流側と下流側に発生する電圧に相当する電圧を生成するグランドショート擬似異常信号生成回路17eの生成電圧を差動増幅回路14cに接続する。
【0076】
比較回路11gは、差動増幅回路14cで増幅されたグランドショート擬似異常信号生成回路17eの生成電圧と、グランドショートしきい値電圧生成回路13gの生成電圧を比較し、差動増幅回路14cで増幅されたグランドショート擬似異常信号生成回路17eの生成電圧がグランドショートしきい値電圧生成回路13gの生成電圧を上回った場合に異常検出を制御回路10に通知する。グランドショート擬似異常信号生成回路17eの生成電圧は、グランドショートが発生した時に電流検出抵抗18cの上流側と下流側に発生する電圧に相当する電圧を生成しているので、比較回路11gが異常を検出した場合には診断回路は正常であると判定できる。一方、比較回路11gが異常を検出しなかった場合には、診断回路に故障が発生していると判定する。
【0077】
同様に、負荷の異常によりバッテリショートが発生した場合、ローサイド側駆動素子MOSFET19dが非導通状態のときは電流検出抵抗18dに電流が流れないため、過電流によるバッテリショートの検出を行うことはできない。つまりローサイド側駆動素子MOSFET19dが非導通状態の時には、負荷101の異常によるバッテリショートの診断をする必要はないため、この期間中に擬似異常信号をバッテリショートを診断する診断回路に注入することで、負荷駆動制御に影響を与えることなく、診断回路に故障が発生しているか否かを判定することができる。
【0078】
ここで、ローサイド側駆動素子MOSFET19dが導通状態のときにバッテリショートが発生すると、電流はローサイド側駆動素子MOSFET19dのドレイン側からソース側に流れる。一方、負荷101に蓄えられたエネルギによる還流電流を流す場合には、還流電流はソース側からドレイン側に流れる。負荷101の抵抗成分またはインダクタンス成分のドリフトの影響などにより還流電流が増加し、還流電流による過電流発生の可能性もある。つまり、電流検出抵抗18dには両方向から電流が流れるため、電流検出抵抗18dを備えた過電流診断回路は、どちらの流れの過電流も検出可能な構成とする。
【0079】
具体的には、駆動素子MOSFET19dが導通の期間中は、制御回路10は信号切替回路15kと15mを制御して、電流検出抵抗18dの上流側信号(ここでは駆動素子MOSFET19dドレイン側)と下流側信号(ここでは駆動素子MOSFET19dソース側)を差動増幅回路14dに接続する。バッテリショートにより、電流検出抵抗18dに大電流が流れ電流検出抵抗18dの両端電圧差が大きくなり、両端電圧の差を増幅している差動増幅回路14dの出力電圧が上昇し、それがバッテリショートしきい値電圧生成回路13hで生成された電圧を超えた時にバッテリショートによる過電流発生と判定し、制御回路10に通知する。グランドショート発生の通知を受けた制御回路10は、ローサイド側駆動素子MOSFET19dを非導通にして電流を停止させるための信号を、プリドライバ12dに送信する。
【0080】
一方、駆動素子MOSFET19dが非導通の期間中は、制御回路10は信号切替回路15kと15mを制御して、バッテリショートによる過電流が発生した場合に電流検出抵抗18dの上流側と下流側に発生する電圧に相当する電圧を生成するバッテリショート擬似異常信号生成回路17fの生成電圧を差動増幅回路14dに接続する。
【0081】
比較回路11hは、差動増幅回路14dで増幅されたバッテリショート擬似異常信号生成回路17fの生成電圧と、バッテリショートしきい値電圧生成回路13hの生成電圧を比較し、差動増幅回路14dで増幅されたバッテリショート擬似異常信号生成回路17fの生成電圧がバッテリショートしきい値電圧生成回路13hの生成電圧を上回った場合に異常検出を制御回路10に通知する。バッテリショート擬似異常信号生成回路17fの生成電圧は、バッテリショートが発生した時に電流検出抵抗18dの上流側と下流側に発生する電圧に相当する電圧を生成しているので、比較回路11hが異常を検出した場合には診断回路は正常であると判定できる。一方、比較回路11hが異常を検出しなかった場合には、診断回路に故障が発生していると判定する。
【0082】
電流検出抵抗18dの両方向に流れる過電流異常を判定するため、バッテリショート擬似異常信号生成回路17fは少なくとも2種類(駆動素子MOSFET19dのドレインからソースに流れる過電流とソースからドレインに流れる過電流)の擬似異常信号を生成し、差動増幅回路14dは必要があればバイアス回路などを備え、比較回路11hは必要があれば2つの異なるしきい値電圧生成回路を備えた2つの比較回路構成とする。
【0083】
ここで、先述したとおり、図示しないが
図7に示した負荷駆動回路における負荷オープン検出手段は、ハイサイド側駆動素子MOSFET19cが導通状態でローサイド側駆動素子MOSFET19dが非導通状態の時に、電流検出抵抗18cに流れる電流が所定の電流値を下回った場合に負荷オープン状態であると判定することも可能である。つまり、ハイサイド側駆動素子MOSFET19cが非導通状態でローサイド側駆動素子MOSFET19dが導通状態の時に、負荷オープン発生時に電流検出抵抗18dに発生する電圧に相当する擬似異常電圧を、負荷オープン検出手段に注入することで、負荷オープンを診断する診断回路に故障が発生しているか否かの判定をする。
【0084】
なお、擬似異常信号の診断回路への注入は、駆動素子MOSFET19cとdの制御信号の1周期内の導通期間中に、1つ以上の擬似異常信号を注入し、診断回路が1つ以上の異常を検出した時に、診断回路は正常と判定しても良い。
【0085】
また、実施例1の
図4(d)にしたのと同様、バッテリショート擬似異常信号生成回路17f、グランドショート擬似異常信号生成回路17eが、異常検出すべきでは無いレベルの擬似異常信号と異常検出すべきレベルの擬似異常信号の少なくとも2種類の擬似異常信号を注入することで、異常検出のためのしきい値は2種類の擬似異常信号レベルの間に存在していると判定することが可能である。
【0086】
さらに、実施例1の
図4と同様、連続する1つ以上の周期で擬似異常信号を注入し、診断回路が連続する1つ以上の周期で擬似異常信号による故障を検出した場合に、診断回路は正常と判定しても良い。
【0087】
擬似異常信号注入により異常が検出された場合には、制御回路10などによって異常検出はマスクされ、負荷駆動回路の動作には影響を与えないように制御する。
【実施例5】
【0088】
図8は実施例5に関するものであり、診断回路として過電流検出によるバッテリショート検出機能を持った、ローサイドドライバ構成の負荷駆動回路を示している。
【0089】
図8に示した負荷駆動回路100は、
電源103と負荷101の下流に設けられた回路であって、
駆動素子MOSFET19eとそれを駆動するためのプリドライバ12a、
駆動素子MOSFET19eに流れる電流をモニタするための電流検出抵抗18e、
電流検出抵抗18eで電圧に変換した信号を増幅するために所定のゲインとその所定のゲインよりも高いゲインの少なくとも2種類のゲインを持ち、それら2種類のゲインが変更可能な差動増幅回路23、
バッテリショートによる過電流発生か否かのしきい値を決めるバッテリショートしきい値電圧生成回路13i、
ゲイン変更可能な差動増幅回路23の出力電圧とバッテリショートしきい値電圧生成回路13iとの値を比較し過電流発生か否かを判定する比較回路11i、
負荷駆動制御のために駆動素子MOSFET19eを制御する駆動制御回路21、
駆動制御回路21とは別に設けられ、バッテリショート検出回路に異常が発生しているか否かを確認するために駆動素子MOSFET19eを制御する診断用駆動制御回路22、プリドライバ12aに接続する信号を駆動制御回路21と診断用駆動制御回路22とを切替える信号切替回路15n、
これらの動作を制御する制御回路10から成る。
【0090】
なお、図示しないが、駆動する負荷の特性により、駆動素子保護用のクランプダイオードや電流を還流させる還流ダイオードを負荷駆動回路に含めても良い。
【0091】
図8におけるバッテリショートを診断する診断回路は、電流検出抵抗18e、ゲイン変更可能な差動増幅回路23、バッテリショートしきい値電圧生成回路13i、比較回路11iから成る。
【0092】
バッテリショートを診断する診断回路は、駆動素子MOSFET19eが導通状態のとき負荷101の異常によりバッテリショートが発生した場合、電流検出抵抗18eに大電流が流れ電流検出抵抗18eの両端電圧差が大きくなり、両端電圧の差を増幅している差動増幅回路23の出力電圧が上昇し、それがバッテリショートしきい値電圧生成回路13iで決められた電圧を超えた時にバッテリショートによる過電流発生と判定し、制御回路10に通知する。バッテリショート発生の通知を受けた制御回路10は、駆動素子MOSFET19eを非導通にして電流を停止させるための信号を、プリドライバ12eに送信する。
【0093】
一方で、駆動素子MOSFET19eが非導通状態の時には、負荷101の異常によりバッテリショートが発生した場合でも電流は流れないので、診断回路はバッテリショートの診断をする必要はない。
【0094】
つまり、負荷駆動制御のために駆動素子を導通状態と非導通状態でスイッチングしている場合には、駆動素子が診断回路による診断を必要としない状態の時に、診断回路の故障有無の確認を行えれば、車両制御のための負荷駆動に影響を与えることなく、診断回路に発生した故障が潜在故障となることを防げる。
【0095】
以下、
図9を参照して実施例5の動作を説明する。
【0096】
図9(a)は、負荷駆動のために駆動素子MOSFET19eを制御するための駆動制御回路21の出力信号N101を示している。
【0097】
図9(b)は、診断用駆動制御回路22の出力信号N102を示している。診断用駆動制御回路22は、駆動制御回路21がLow出力をして駆動素子MOSFET19eが非導通状態のときに、後で示す条件を満たす周波数とデューティの特性を持った信号を生成し、出力信号N102を出力する。
【0098】
制御回路10は、負荷駆動制御のために、駆動素子MOSFET19eを導通させるべき状態か非導通とするべき状態を確認し、その状態に応じて信号切替回路15nを切替える。信号切替回路15nは、駆動素子MOSFET19eが導通となるべき状態のときは駆動制御回路21の出力をプリドライバ12eに出力し、駆動素子MOSFET19eが非導通となるべき状態のときは診断用駆動制御回路22の出力をプリドライバ12eに出力する。
【0099】
プリドライバ12eに接続される信号切替回路15nの出力信号N103は、信号切替回路15nの制御により
図9(c)となり、駆動素子MOSFET19eは
図9(c)の波形のタイミングで駆動される。
【0100】
ここで、差動増幅回路23のゲインは、
図9(d)に示すとおり、駆動素子MOSFET19eを導通させるべき状態のときには負荷駆動制御に必要な所定のゲインに設定し、駆動素子MOSFET19eを非導通にさせるべき状態のときには、前述の所定のゲインよりも高いゲインに設定する。なお、所定のゲインからより高いゲインに変更する際は、負荷に蓄えられたエネルギの放電電流などにより過電流の誤検出が発生するのを防止するため、切替えタイミングに遅延時間を設けている。
【0101】
次に、
図9(e)に電流検出抵抗18eに流れる電流を示す。駆動制御回路21がHighを出力して駆動素子MOSFET19eが導通している時には、負荷を駆動させるのに十分な電流を流す必要があるため、それに必要な期間Highを出力する。一方、駆動制御回路21がLowを出力している期間中で、診断用駆動制御回路22が駆動素子MOSFET19eを制御するときは、負荷を駆動させない電流量以下となるように周波数とデューティを設定する。
【0102】
診断用駆動制御回路22が駆動素子MOSFET19eを制御する期間は、負荷制御上は駆動素子MOSFET19eを非導通にしなければならない期間中であるが、この期間中に周波数とデューティの調整により負荷を駆動させない電流量以下の電流を流し、この電流を擬似異常信号として過電流検出によりバッテリショートを診断する診断回路に注入することで、診断回路に故障が発生しているか否かを確認する。診断用駆動制御回路22は、この期間中に流れる負過電流が負荷駆動制御に影響を与えないために、負荷を駆動させない電流量以下かつ所望の電流量となるように、出力信号の周波数とデューティに調整する。
【0103】
ゲイン変更可能な差動増幅回路23の持つ所定のゲインよりも高いゲインは、診断用駆動制御回路22の制御による負荷電流が、擬似異常信号として利用できるような値に設定する。つまり、診断用駆動制御回路22の制御による負荷電流が電流検出抵抗18eで電圧に変換され、差動増幅回路23がその電圧を増幅した結果、差動増幅回路23の出力がバッテリショートしきい値電圧生成回路13iの生成電圧を超える電圧となるようにそのゲインを設定する。
【0104】
差動増幅回路23のゲイン切替の結果、差動増幅回路23の出力波形を
図9(f)に示す。
図9(h)は、バッテリショートしきい値電圧生成回路13iの生成電圧を示す。差動増幅回路23の所定のゲインよりも高いゲインは、負荷を駆動させない電流量以下の電流が流れたときに、差動増幅回路23の出力電圧がバッテリショートしきい値電圧生成回路13iの生成電圧を超えるように設定しているため、比較回路11eは過電流の発生を検出し、制御回路10に通知する。
図9(g)に比較回路11eの出力波形を示す。一方、比較回路11eが故障を検出しなかった場合には、電流検出抵抗18e、ゲイン変更可能な差動増幅回路23、バッテリショートしきい値電圧生成回路13i、比較回路11iから成る診断回路の少なくとも1箇所に故障が発生していると判定する。
【0105】
以上より、駆動素子MOSFET19eが非導通期間中に、診断用の駆動信号でMOSFET19eを制御し、その時に流れる負過電流を擬似異常信号としてバッテリショート診断回路に注入することで、電流検出抵抗まで含めた診断が可能となる。
【0106】
なお、擬似異常信号の診断回路への注入は、駆動素子MOSFET19eの制御信号の1周期内の導通期間中に、1つ以上の擬似異常信号を注入し、診断回路が1つ以上の異常を検出した時に、診断回路は正常と判定しても良い。
【0107】
また、実施例1の
図4(d)にしたのと同様、診断用駆動制御回路22が、異常検出すべきでは無いレベルの電流と異常検出すべきレベルの電流の少なくとも2種類の擬似異常信号を注入することで、異常検出のためのしきい値は2種類の擬似異常信号レベルの間に存在していると判定することが可能である。
【0108】
さらに、実施例1の
図4と同様、連続する1つ以上の周期で擬似異常信号を注入し、診断回路が連続する1つ以上の周期で擬似異常信号による故障を検出した場合に、診断回路は正常と判定しても良い。
【0109】
擬似異常信号注入により異常が検出された場合には、制御回路10などによって異常検出はマスクされ、負荷駆動回路の動作には影響を与えないように制御する。
【実施例6】
【0110】
図示しないが、実施例1から5で記載した、診断回路が診断をする必要がない状態の時に、診断回路に擬似異常信号を注入して診断回路に故障が発生しているか否かを確認する方法は、スイッチングレギュレータの過電流を検出する機能にも応用可能である。
【0111】
スイッチングレギュレータのスイッチング素子は導通状態と非導通状態を繰り返し、導通状態の時には過電流の診断をしているが、非導通状態の時には電流が流れていないので過電流を診断する必要は無い。この状態の時に過電流時に発生する信号に相当する擬似異常信号を、過電流を診断する診断回路に注入することで、過電流診断機能に故障が発生しているか否かを判定することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
10 : 制御回路
11a〜11i : 比較回路
12a〜12e : プリドライバ
13a : バッテリショートしきい値電圧生成回路(ローサイドドライバ構成)
13b : グランドショートしきい値電圧生成回路(ローサイドドライバ構成)
13c : 負荷オープンしきい値電圧生成回路(ローサイドドライバ構成)
13d : バッテリショートしきい値電圧生成回路(ハイサイドドライバ構成)
13e : 負荷オープンしきい値電圧生成回路(ハイサイドドライバ構成)
13f : グランドショートしきい値電圧生成回路(ハイサイドドライバ構成)
13g : グランドショートしきい値電圧生成回路(ハーフブリッジ構成)
13h : バッテリショートしきい値電圧生成回路(ハーフブリッジ構成)
14a〜14d : 差動増幅回路
15a〜15n : 信号切替回路
17a : バッテリショート擬似異常信号生成回路(ローサイドドライバ構成)
17b : グランドショート擬似異常信号生成(ローサイドドライバ構成)
17c : 負荷オープン擬似異常信号生成(ローサイドドライバ構成)
17d : バッテリショート擬似異常信号生成(ハイサイドドライバ構成)
17e : 負荷オープン擬似異常信号生成(ハイサイドドライバ構成)
17f : グランドショート擬似異常信号生成回路(ハイサイドドライバ構成)
17e : グランドショート擬似異常信号生成回路(ハーフブリッジ構成)
17g : バッテリショート擬似異常信号生成回路(ハーフブリッジ構成)
18a〜18e : 電流検出抵抗
19a〜19e : 駆動素子MOSFET
20a、20b : 定電流源
21 : 駆動制御回路
22 : 診断用駆動制御回路
23 : ゲイン変更可能な差動増幅回路
100 : 負荷駆動回路
101 : 負荷
102 : コンデンサ
103、104 : 電源
N10a : 駆動素子MOSFET19aのドレイン信号(ローサイド構成)
N10b : 駆動素子MOSFET19bのソース信号(ハイサイド構成)
N11a : 電流検出抵抗18aの上流側信号
N11b : 電流検出抵抗18aの下流側信号
N12a : バッテリショート擬似異常信号生成回路17aの上流側出力信号
N12b : バッテリショート擬似異常信号生成回路17aの下流側出力信号
N13a : 信号切替回路15aの出力信号
N13b : 信号切替回路15bの出力信号
N14 : 信号切替回路15aと15bの切替信号
N15 : 駆動素子MOSFET19aのゲート入力信号
N16 : 差動増幅回路14aの出力信号
N17 : バッテリショートしきい値電圧生成回路13aの出力信号
N18 : 比較回路11aの出力信号
N101 : 駆動制御回路21の出力信号
N102 : 診断用駆動制御回路22の出力信号
N103 : 信号切替回路15gの出力信号
N104 : ゲイン変更可能な差動増幅回路23の出力信号
N105 : バッテリショートしきい値電圧生成回路13iの出力信号
N106 : 比較回路11aの出力信号
P10 : 過電流検出すべきでは無いレベルの擬似異常信号
P11 : 過電流検出すべきレベルの擬似異常信号