(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6400725
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】関心領域を区分化するための画像処理機器及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20180920BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
A61B8/14ZDM
A61B6/03 360J
A61B6/03 360D
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-557640(P2016-557640)
(86)(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公表番号】特表2017-507754(P2017-507754A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2015054189
(87)【国際公開番号】WO2015139937
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2018年2月23日
(31)【優先権主張番号】14161050.1
(32)【優先日】2014年3月21日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ワチター‐ステール イリナ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイス ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ビュルガー クリスティアン
【審査官】
冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/072363(WO,A2)
【文献】
国際公開第2011/070464(WO,A2)
【文献】
国際公開第2002/073536(WO,A2)
【文献】
特表2009−519740(JP,A)
【文献】
特表2013−513409(JP,A)
【文献】
特開2002−329216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
A61B 6/00 − 6/14
A61B 5/055
G06T 7/00 − 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の多次元画像データ内の関心領域を区分化するための画像処理機器であって、
前記画像データ内の前記対象に対応する解剖学的構造の変形可能メッシュモデルを記憶するメモリと、
区分化される前記関心領域を含む前記対象の前記画像データのソースに前記画像処理機器を結合するインタフェースと、
前記インタフェースを介して前記画像データを受信し、前記変形可能メッシュモデルの要素の位置を、前記要素と前記対象の解剖学的特徴の既知の位置との間の距離及び前記画像データにおいて識別される前記解剖学的構造に適合させることにより、前記関心領域を区分化する処理ユニットであって、前記距離から導出されるバネエネルギを含むモデルエネルギを最小化するように前記変形可能メッシュモデルを適合させる、処理ユニットと
を含む、画像処理機器。
【請求項2】
前記処理ユニットが、前記画像データ及び前記画像データの視野内の既知の位置に基づいて前記変形可能メッシュモデルの要素の位置を適合させる、請求項1に記載の画像処理機器。
【請求項3】
前記処理ユニットが、前記画像データ及び前記画像データの連続した時間枠内の対応する位置に基づいて前記変形可能メッシュモデルの要素の位置を適合させる、請求項1に記載の画像処理機器。
【請求項4】
前記処理ユニットが、前記画像データ及び前記画像データの視野から導出されるベクトル又は面に基づいて前記変形可能メッシュモデルの要素の位置を適合させる、請求項1に記載の画像処理機器。
【請求項5】
前記対応する位置は、前記対象の対応する解剖学的特徴から知られている、請求項3に記載の画像処理機器。
【請求項6】
前記モデルエネルギが、関心領域内の対応する画像特徴に対する前記変形可能メッシュモデルの差異から導出される外部エネルギと、前記バネエネルギとを含む、請求項1に記載の画像処理機器。
【請求項7】
前記バネエネルギが重み因子によって重み付けされる、請求項6に記載の画像処理機器。
【請求項8】
前記処理ユニットが、対象の予期される形状に基づいて前記変形可能メッシュモデルを適合させる、請求項1に記載の画像処理機器。
【請求項9】
前記変形可能メッシュモデルが、頂点及びエッジを有する多角形を含む、請求項1に記載の画像処理機器。
【請求項10】
前記多角形の前記頂点の位置を調節することによって前記変形可能メッシュモデルが適合される、請求項9に記載の画像処理機器。
【請求項11】
対象の多次元画像データ内の関心領域を区分化するための方法であって、
前記画像データ内の前記対象に対応する解剖学的構造の変形可能メッシュモデルを記憶するステップと、
区分化される前記関心領域を含む前記対象の前記画像データのソースに画像処理機器を結合するステップと、
前記画像データを受信し、前記変形可能メッシュモデルの要素の位置を、前記要素と前記対象の解剖学的特徴の既知の位置との間の距離及び前記画像データにおいて識別される前記解剖学的構造に適合させることによって前記関心領域を区分化するステップであって、前記変形可能メッシュモデルを適合させることは、前記距離から導出されるバネエネルギを含むモデルエネルギを最小化するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
対象の多次元画像データ内の関心領域を区分化するためのコンピュータプログラムであって、
前記画像データ内の前記対象に対応する解剖学的構造の変形可能メッシュモデルを記憶するステップと、
区分化される前記関心領域を含む前記対象の前記画像データのソースに画像処理機器を結合するステップと、
前記画像データを受信し、前記コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるとき、前記変形可能メッシュモデルの要素の位置を、前記要素と前記対象の解剖学的特徴の既知の位置との間の距離及び前記画像データにおいて識別される前記解剖学的構造に適合させることによって前記関心領域を区分化するステップであって、前記変形可能メッシュモデルを適合させることは、前記距離から導出されるバネエネルギを含むモデルエネルギを最小化するステップと、
を、コンピュータに実行させるためのプログラム手段を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の多次元画像データ内の関心領域を区分化するための画像処理機器に関する。更に本発明は、対象の多次元画像データ内の関心領域を区分化するための方法に関する。本発明は更に、対象の多次元画像データ内の関心領域を区分化するためのコンピュータプログラムに関する。最後に本発明は、画像取得ユニットを含む医用画像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像処理分野では、超音波画像、MRT画像、コンピュータトモグラフィ画像等の医用画像に対して様々な処理作業が一般に行われる。画像処理の多くの応用における基本作業である1つの具体的な処理作業は、関心領域、例えば特定の臓器を区分化することである。区分化は、例えば治療パラメータの決定を改善するためのボリュームの定量化に基づく臓器の識別又は固有の診断に必要である。
【0003】
多くの臓器では、画像の区分化は変形可能モデルを使って成功裏に行うことができ、変形可能モデルは、区分化されている画像への適合中に不変のままであるトポロジを有するメッシュ構造に基づく。モデルベースの区分化は、骨、肝臓、ネスト構造を有する心臓等、単純な臓器から複雑な臓器へと多岐にわたって非常に効率的だと考えられている。変形可能メッシュを用いた画像を促進するための対応する方法を、例えば国際公開第2007/072363号から知ることができる。
【0004】
国際公開第2011/070464A2号は、ボリューム画像内で画像化された関心のある解剖学的構造の変形可能モデルを選択することによって実行される自動区分化のためのシステム及び方法を開示し、変形可能モデルは頂点及びエッジを含む複数の多角形で形成され、複数の多角形のそれぞれに対応する関心のある解剖学的構造の特徴点が検出され、変形可能モデルが関心のある解剖学的構造の境界にモーフィングするまで対応する特徴点に向けて頂点のそれぞれを動かすことによって変形可能モデルが適合される。
【0005】
国際公開第2006/029037A2号は、三次元画像内の候補となる解剖学的構造の壁の可変形状を定め、追跡するためのシステム及び方法を開示し、候補となる解剖学的構造の形状は複数のラベル付けされた3D目印点によって表わされ、画像フレーム内の可変形状の少なくとも1つの3D目印点が定められる。
【0006】
モデルベースの区分化は、一般に臓器の高信頼且つ正確な識別及び区分化を可能にするが、心臓の左心室の尖部、肝臓の先端、脳室の角等の一部の解剖学的構造は医用画像内での検出が大抵の場合難しく、そのためこれらの特徴を区分化することは魅力的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、改善された信頼性及び精度を有する、対象の多次元画像データ内の関心領域を区分化するための画像処理機器及び対応する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、対象の多次元画像データ内の関心領域を区分化するための画像処理機器であって、
− 区分化される関心領域を含む対象の画像データを得るためのインタフェースと、
− 画像データ内の対象に対応する解剖学的構造の変形可能モデルを選択するための選択ユニットと、
− 対象の画像データ及び追加の解剖学的情報に基づいて変形可能モデルを適合させることにより、関心領域を区分化するための処理ユニットと
を含む、画像処理機器が提供される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、対象の多次元画像データ内の関心領域を区分化するための方法であって、
− 区分化される関心領域を含む対象の画像データを得るステップと、
− 画像データ内の対象に対応する解剖学的構造の変形可能モデルを選択するステップと、
− 画像データに変形可能モデルを適用することによって関心領域を区分化するステップと、
− 対象の画像データ及び追加の解剖学的情報に基づいて変形可能モデルを適合させるステップと
を含む、方法が提供される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、対象の多次元画像データ内の関心領域を区分化するためのコンピュータプログラムであって、
− 区分化される関心領域を含む対象の画像データを得るステップと、
− 画像データ内の対象に対応する解剖学的構造の変形可能モデルを選択するステップと、
− 画像データに変形可能モデルを適用することによって関心領域を区分化するステップと、
− 前述のコンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるとき、対象の画像データ及び追加の解剖学的情報に基づいて変形可能モデルを適合させるステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム手段を含む、コンピュータプログラムが提供される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、医用画像を取得するための画像取得ユニットと、画像取得ユニットによって取得される対象の多次元画像データ内の関心領域を区分化するための本発明による画像処理機器とを含む、医用画像システムが提供される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態が従属請求項の中で定められている。特許請求の範囲に記載の方法は、特許請求の範囲に記載の装置及び従属請求項に定められるのと同様の及び/又は同一の好ましい実施形態を有することが理解されるべきである。
【0013】
本発明は、解剖学的構造の変形可能モデルを画像データに適用し、画像データ内の対象の既知の解剖学的情報に基づいて変形可能モデルを調節する概念に基づく。つまり、選択された変形可能モデルの区分化を改善するために、区分化される対象の既知の解剖学的特徴を使用して変形可能モデルを調節する。区分化がより高信頼且つより正確になり、複雑な構造及び画像データ内で粗末に検出可能な構造が区分化され得るように、対象の既知の解剖学的特徴によって追加のパラメータが適合に利用され得る。
【0014】
好ましい実施形態では、処理ユニットが、対象の解剖学的特徴の既知の位置及び画像データに基づいて変形可能モデルの要素の位置を適合させるように設計される。これは変形可能モデルを既知の位置に調節する実現性であり、これにより不確実性が低減し、より高信頼且つより正確な区分化が実現され得る。
【0015】
好ましい実施形態では、処理ユニットが、画像データ及び画像データの視野内の既知の位置に基づいて変形可能モデルの要素の位置を適合させるように設計される。画像データの視野は区分化のための追加のパラメータとして利用され得るエッジ条件を通常含むので、これは既知の位置を低い技術的労力で区分化に追加する実現性である。
【0016】
好ましい実施形態では、処理ユニットが、画像データ及び画像データの連続した時間枠内の対応する位置に基づいて変形可能モデルの要素の位置を適合させるように設計される。これは、解剖学的構造の既知の運動又は既知の安定性から導出可能な対象の解剖学的特徴を利用する実現性であり、これにより区分化の信頼性及び精度を高めるために追加のパラメータが使用され得る。好ましくは、対応する位置は解剖学的構造であり、かかる構造は通常は経時的に安定しており、そのためそれぞれの解剖学的構造を相関することができ、変形可能モデルがしかるべく適合され得る。
【0017】
好ましい実施形態では、対応する位置は、対象の対応する解剖学的特徴から知られている。これは異なる時間枠の解剖学的特徴を相関させる実現性であり、これにより時間に依存する特徴が区分化を改善するために更なるパラメータとして追加され得る。
【0018】
好ましい実施形態では、処理ユニットが、画像データ及び画像データの視野から導出されるベクトル又は面に基づいて変形可能モデルの要素の位置を適合させるように設計される。これは3つの次元の全てにおいて位置が知られていない場合に外部の情報を含める実現性である。
【0019】
好ましい実施形態では、処理ユニットが、要素の位置と既知の位置との間の距離、又は対応する位置間の距離に基づいて要素の位置を適合させるように設計される。変形可能モデル内で距離が容易に計算され得るので、これは変形可能モデルを適合させる技術的労力を減らす実現性である。
【0020】
好ましい実施形態では、変形可能モデルは、距離から導出されるバネエネルギを含むモデルエネルギを最小化するように適合される。
【0021】
好ましい実施形態では、モデルエネルギが、関心領域内の対応する画像特徴に対する変形可能モデルの差異から導出される外部エネルギと、バネエネルギとを含む。これは異なる情報源からの情報を組み合わせる実現性であり、これにより変形可能モデルの形状の全体的な改善が達成される。
【0022】
好ましい実施形態では、バネエネルギが重み因子によって重み付けされる。これは全体的なモデルエネルギ内のバネエネルギを調節する実現性であり、これによりモデルエネルギ内の様々なエネルギ間のバランスが達成され得る。
【0023】
好ましい実施形態では、処理ユニットが、対象の予期される形状に更に基づいて変形可能モデルを適合させるように設計される。区分化される関心領域を含む医用画像に変形可能モデルが適合されるので、これは区分化を改善する実現性である。
【0024】
好ましい実施形態では、変形可能モデルが頂点及びエッジを有する多角形を含むメッシュによって形成される。これは高分解能で区分化を達成する実現性であり、これにより解剖学的構造の診断が改善され得る。
【0025】
好ましい実施形態では、メッシュの頂点の位置を調節することによって変形可能モデルが適合される。これは低い技術的労力で変形可能モデルを適合させる実現性である。
【0026】
上記のように、本発明は、区分化を導くための画像データ又は解剖学的構造若しくは特徴の取得に関する外部の知識を使用することにより、モデルベースの区分化の信頼性及び精度を改善する概念に基づく。概して、解剖学的特徴は解剖学的構造の位置、解剖学的距離、又は解剖学的点であり、それらは経時的に横方向に安定しているため、区分化の不確実性を減らし、モデルの信頼性及び精度を改善するために更なる既知のパラメータが追加され得る。外部の既知のパラメータはバネエネルギとして組み込まれ、バネエネルギは、変形可能モデルの点及び画像データ内の対応する点の距離から導出され、そのため要素を段階的に動かすことによって変形可能モデルが適合され得る。
【0027】
モデル適合の全体的な収束は、外部のモデルエネルギ、内部のモデルエネルギ、及びバネエネルギから形成されるモデルエネルギを最小化することによって達成され得る。従って、最適な区分化が達成され得るように関連する全ての適合方法が検討され得る。
【0028】
本発明のこれらの及び他の態様が以下に記載の実施形態から明らかになり、かかる実施形態に関して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】患者の身体のボリュームを走査するために使用されている医用画像システムの概略図を示す。
【
図2】関心領域を区分化するための多角形及び頂点を含む変形可能モデルの概略図を示す。
【
図3】モデルの適合を説明するための変形可能モデルの断面図を示す。
【
図4】使用分野における外部の知識に基づいて変形可能モデルを適合させる一実施形態を示す。
【
図5a】外部の知識に基づいて改善された区分化の例を示す。
【
図5b】外部の知識に基づいて改善された区分化の例を示す。
【
図6】関心領域を区分化するための方法の流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、一実施形態による医用画像システム10、具体的には医用三次元(3D)超音波画像システム10の概略図を示す。医用画像システム10は、解剖学的部位、具体的には患者12の解剖学的部位のボリュームを調べるために利用される。医用画像システム10は、超音波を送受信するための多数のトランスデューサ要素を有する少なくとも1つのトランスデューサアレイを有する超音波プローブ14を含む。トランスデューサ要素は、とりわけ多次元画像データを提供するために好ましくは二次元アレイ状に配置される。
【0031】
3D超音波走査は、標的ボリューム又は関心領域15として指定され得る患者12内の特定のボリューム又は対象を照射する超音波を放つことを概して含む。これは超音波を複数の異なる角度で放つことによって達成され得る。次いで、反射波を受信して処理することにより、1組のボリュームデータが得られる。1組のボリュームデータは、患者12内の関心領域15の表現である。
【0032】
医用画像システム10は、医用画像システム10によって画像を提供するための画像処理機器16を含む。画像処理機器16は、超音波プローブ14のトランスデューサアレイによって受信される超音波ビームのエコーから画像を形成する画像処理を制御する。画像処理機器16は制御ユニット18を含み、制御ユニット18は、超音波プローブ14のトランスデューサアレイによる画像データの取得を制御し、画像データを受信するためのインタフェース18として働く。制御ユニット18は選択ユニット20に接続され、選択ユニット20は、画像データの関心領域15内の対象に対応する解剖学的構造の変形可能モデルを選択し、選択ユニット20から受信される変形可能モデルを画像データに適用することによって関心領域15内の対象を区分化するために、選択された変形可能モデル及び画像データを処理ユニット22に与える。関心領域15内の対象を区分化した後、関心領域15の区分化画像及び超音波画像が重ね合わせられ、表示画面24上に表示され得る。更に、画像の取得、区分化、並びに/又は超音波画像及び区分化結果の表示を制御するために、入力装置26が表示ユニット24又は画像処理機器16に接続されて設けられても良い。
【0033】
代替的実施形態では、画像処理機器16によって区分化され、表示ユニット24上で表示され得る患者の身体12の対応する医用画像を提供するために、医用画像システム10がMR装置、CT装置、又はX線装置に接続される。
【0034】
図2は、解剖学的構造の面及びその空間的配列を表す変形可能モデル30を示す。変形可能モデル30は、選択ユニット20によって選択され、例えば画像処理機器16のメモリからロードされる。次いで、選択された変形可能モデル30及びインタフェース18から受信される画像データが処理ユニット22に与えられ、画像データ内で識別される解剖学的構造に変形可能モデルを適合させる。
【0035】
変形可能モデル30は、隣接する3つの頂点、及びエッジによって互いに接続されるモデルの面によって形成される三角形を含むメッシュから形成される。このメッシュは解剖学的構造の面を形成する。代替的実施形態では、解剖学的構造の面がメッシュの三角形に取って代わる多角形によって画定され得る。
【0036】
変形可能モデル30は、平均メッシュ又は形状モデルを形成する初期空間形状を含み、以下で説明されるように画像データの関心領域内の解剖学的構造に適合される。変形可能モデル30を画像データの関心領域15内の解剖学的構造に適合させるために、画像データのパターン検出が行われ、対応する位置がそれに応じて相関される。
【0037】
図3は、変形可能モデル30の断面図を示す。変形可能モデル30は、複数の三角形T
1〜T
5を含む。三角形Tは、エッジによって互いに接続される頂点vによって形成される。各三角形Tは、三角形の中心c
1〜c
5を含む。
【0038】
画像データのパターン検出が行われた後、変形可能モデル30が画像データ内の検出済みの解剖学的構造に適合され、所謂全体エネルギ関数
E=E
ext+αE
int
が最小化されるように三角形Tの位置が調節される。E
extは、概してパターン検出によって画像データ内で検出される解剖学的構造の対応する位置に頂点及び三角形Tを移動する外部エネルギであり、E
intは変形可能モデルの元の位置に、即ち平均メッシュ又は形状モデルに頂点及び三角形Tを移動する内部エネルギである。
【0039】
外部エネルギは
【数1】
によって計算され、
【数2】
はパターン検出によって見つかる目標点であり、
【数3】
はそれぞれの三角形Tから目標点
【数4】
への方向であり、c
iは目標点
【数5】
に調節される三角形T
iの中心である。三角形Tのそれぞれについて和が形成され、重み因子w
iによってそれぞれ重み付けされる。外部エネルギE
extの最小化によるリジッド・オブ・アフィン・ウェイ(rigid of affine way)によってモデルが適合される場合、それはモデル30のパラメータ適合とも呼ばれる。
【0040】
内部エネルギは公式
【数6】
によって計算され、vは適合される変形可能モデル30の頂点であり、mは最初に与えられ又は選択される形状モデル又は平均メッシュの頂点である。変形可能モデル30の全ての頂点にわたって和が形成され、隣接する頂点v
jまでの距離のそれぞれが求められる。外部エネルギ及び内部エネルギを最小化することによってモデルが自由に変形される場合、それは変形可能モデル30の変形適合とも呼ばれる。
【0041】
全体エネルギEを最小化することは区分化をもたらし、区分化は平均メッシュとパターン検出によって画像データ内で求められる検出済みの目標点との間の中間である。変形可能モデル30の適合についてのこの手順は欧州特許第1251462B1号の中でも説明されている。
【0042】
本発明によれば、変形可能モデル30は、変形適合及びパラメータ適合の区分化を改善するために、解剖学的構造の既知の特徴に基づいても適合される。
【0043】
解剖学的構造の解剖学的特徴は、知られており識別され得る、画像データ内の特定の点、位置、又は距離とすることができる。これは例えば心尖とすることができ、その位置は一般に知られており、その胸郭の皮膚までの距離は良く知られており、超音波プローブ14の位置によって画像データから導出され得る。或いは、解剖学的構造の解剖学的特徴は、超音波プローブ14の位置に対する視野から導出される面とすることができ、又は画像データの異なる時間枠における対応する点若しくは位置が相関され得るように、経時的に安定していることが分かっている解剖学的構造、例えば心尖であり得る。概して、変形可能モデルに関する解剖学的特徴から追加のバネエネルギが計算され、全体エネルギEの関数に含められる。
【0044】
画像データ内の特定の解剖学的構造が識別され又は決定される場合、追加のバネエネルギが三角形Tの特定の中心cを選択点
【数7】
まで引っ張ることができる。知られている解剖学的構造の選択は、画像処理機器16によって自動で行われても良く、又は利用者によって手動で行われても良い。特定の選択点に対して形成されるバネエネルギは公式
【数8】
によって計算することができ、c
jは三角形Tのそれぞれの中心であり、
【数9】
は画像データ内の選択された対応する点であり、w
jは重み因子である。
図3には選択点
【数10】
が概略的に示されており、バネエネルギE
Sが第1の三角形T
1の中心c
1を選択点
【数11】
まで動かす。従って、バネエネルギE
Sは、全体エネルギの公式内の3つのエネルギに重み付けするための重み因子w
jによって重み付けされる、三角形の中心cと対応する選択された解剖学的構造
【数12】
との差に基づいて計算される。
【0045】
図4では、医用画像システム10の視野内の面への変形可能モデル30の要素の適合を説明するために、視野及び変形可能モデル30の概略図が示されている。
図4では、医用画像システム10、具体的には超音波プローブ14の視野が32によって全体的に示されている。
【0046】
図4に示されているように、区分化される対象の解剖学的構造は患者12の心臓である。具体的には、心尖の区分化は困難であり、本発明によれば、超音波プローブ14の先端までの尖部の距離はおおよそ分かっている。超音波プローブ14の尖部までの距離が分かっているのは、超音波プローブ14が患者12の皮膚に位置し、皮膚までの尖部の解剖学的距離がおおよそ分かっているからである。この場合、変形可能モデル30を適合させるために尖部の既知の距離が使用され得る。目標点
【数13】
が超音波プローブ14の位置から特定の距離にある面34として組み込まれ、面34に対する変形可能モデル30の尖部位置の三角形の中心c
jの方向
【数14】
が決定される。これらの情報に基づき、変形可能モデル30を適合させるためにバネエネルギE
Sが求められ得る。面34に対するバネエネルギは、公式
【数15】
によって計算することができ、
【数16】
は面34に対する方向であり、c
jは適合される変形可能モデル30の三角形の中心であり、
【数17】
は解剖学的構造が実際に位置する目標点である。そのように求められるバネエネルギE
Sは、変形可能モデル30の尖部c
jを面34まで引っ張る。この場合、中心スライス内の視野の錐台を表現する2本の境界射線36、38の交点として超音波プローブ14の位置が推定される。
【0047】
更なる実施形態では、画像データの異なる時間枠における変形可能モデル30の特定の要素の位置が使用される。特定の解剖学的構造、具体的には心尖は心臓周期の間空間的に安定しており、そのため変形可能モデル30を適合させるために、画像データの異なる時間枠における変形可能モデル30内の尖部の位置が使用され得る。
【0048】
この場合、異なる時間枠が一緒に区分化され、変形可能モデル30の対応する要素の距離に基づいて、具体的には画像データの異なる時間枠間の三角形の中心c
jの距離に基づいてバネエネルギが計算される。変形可能モデル30を適合させるための、この時間に依存するバネエネルギは公式
【数18】
によって計算され、c
j,t1及びc
j,t2は異なる時間枠t1及びt2の三角形の中心c
jであり、w
jは重み因子である。異なる時間枠t1及びt2における三角形の中心c
jの位置が大きく異なる場合、時間に依存するバネエネルギE
Sは高く、バネエネルギE
Sを減らすために変形可能モデル30のそれぞれの三角形がしかるべく適合される。
【0049】
変形可能モデルを適合させて区分化を改善するために、空間的に安定した解剖学的構造だけが使用され得るのではなく、区分化される対象の一般的な解剖学的挙動が追加の構成として使用され得るように、周期内の解剖学的構造の既知の運動も使用され得ることが理解されるべきである。
【0050】
適合中に最小化される変形可能モデルの全体エネルギEは、公式
E=E
ext+αE
int+E
S
によって計算され得る。
【0051】
追加のバネエネルギ及び対象の解剖学的特徴に関する追加情報は、視野32の区分化、具体的には心尖の区分化を改善することができる。かかる改善は、超音波プローブ14から受信される画像データ内で尖部が見えない場合にとりわけ有用である。その結果生じる、追加の解剖学的情報に基づいて改善された心臓の区分化が
図5a、
図5bに示されている。追加の解剖学的情報がボリューム、とりわけ拡張終期及び収縮末期画像内の左心室の定量化を改善することができ、そのため全体的な診断の信頼性が改善され得ることが示されている。
【0052】
図6は、患者12の多次元画像データ内の関心領域を区分化するための方法を示す概略的流れ図を示す。この方法は40によって全体的に示されている。
【0053】
方法40は、ステップ42で図示される、超音波プローブ14によって画像データを取得し、画像処理機器16のインタフェース18によって画像データを受信することで始まる。画像データの受信後、ステップ44に図示されているように、区分化される関心領域15内の対象の解剖学的構造に対応する変形可能モデル30が選択ユニット20によって選択される。変形可能モデル30は、処理機器16のメモリから選択される。ステップ44での選択後、ステップ46に図示されているように、変形可能モデル30を画像データに適用することによって関心領域15が区分化される。ステップ48に図示されているように、画像データ内の対象の既知の特徴に基づいて変形可能モデル30が最後に適合される。
【0054】
ステップ48で、上記のように全体エネルギEを最小化するために、パターン検出によって求められる画像の特徴及び最初に選択された変形可能モデルの平均メッシュに基づき、変形可能モデル30が更に適合され得る。
【0055】
画像処理機器16はコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムとして形成されても良く、方法40はコンピュータプログラムによって実行され得ることが理解されるべきである。
【0056】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体や固体媒体等の適切な(非一時的)媒体上に記憶/分散され得るが、インターネットや他の有線又は無線通信システムを介して等、他の形で分散されても良い。更に、様々な実施形態は、命令を実行するコンピュータ、任意の装置、若しくはシステムによって使用されるための又はそれらに関連するプログラムコードを提供する、コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ可読媒体からアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形を取り得る。本開示では、コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ可読媒体は概して、命令実行装置によって使用されるための又は命令実行装置に関連するプログラムを含み、記憶し、伝達し、伝搬し、又は搬送することができる任意の有形機器とすることができる。
【0057】
更に、様々な実施形態は、命令を実行するコンピュータ、任意の装置、若しくはシステムによって使用されるための又はそれらに関連するプログラムコードを提供する、コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ可読媒体からアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形を取り得る。本開示では、コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ可読媒体は概して、命令実行装置によって使用されるための又は命令実行装置に関連するプログラムを含み、記憶し、伝達し、伝搬し、又は搬送することができる任意の有形装置又は機器とすることができる。
【0058】
本開示の実施形態がソフトウェアによって制御されるデータ処理装置によって少なくとも部分的に実施されると記載されている限り、光ディスク、磁気ディスク、半導体メモリ等、かかるソフトウェアを保持する非一時的機械可読媒体も本開示の実施形態を表すと見なされることが理解されよう。
【0059】
コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ可読媒体は、例えばこれだけに限定されないが、電子媒体、磁気媒体、光媒体、電磁媒体、赤外線媒体、半導体システム、又は伝搬媒体とすることができる。コンピュータ可読媒体の非限定的な例は、半導体メモリや固体メモリ、磁気テープ、脱着可能なフロッピディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)、ハードディスク、及び光ディスクを含む。光ディスクは、コンパクトディスク−読取専用メモリ(CD−ROM)、コンパクトディスク−リード/ライト(CD−R/W)、及びDVDを含み得る。
【0060】
更に、コンピュータ使用可能媒体又はコンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読プログラムコード又はコンピュータ使用可能プログラムコードを含み又は記憶することができ、そのためコンピュータ可読プログラムコード又はコンピュータ使用可能プログラムコードがコンピュータ上で実行されるとき、そのコンピュータ可読プログラムコード又はコンピュータ使用可能プログラムコードの実行が、通信リンクを介して別のコンピュータ可読プログラムコード又はコンピュータ使用可能プログラムコードをコンピュータに伝送させる。この通信リンクは、例えばこれだけに限定されないが物理媒体や無線媒体である媒体を使用することができる。
【0061】
コンピュータ可読プログラムコード又はコンピュータ使用可能プログラムコードを記憶し且つ/又は実行するのに適したデータ処理システム又はデータ処理装置は、システムバス等の通信構造によってメモリ要素に直接又は間接的に結合される1個又は複数個のプロセッサを含む。メモリ要素は、プログラムコードの実際の実行中に使用されるローカルメモリ、大容量記憶域、及びコードの実行中に大容量記憶域からコードが取得され得る回数を減らすために少なくとも一部のコンピュータ可読プログラムコード又はコンピュータ使用可能プログラムコードの一時的記憶域を提供するキャッシュメモリを含み得る。
【0062】
入出力、即ちI/O装置は、システムに直接又は介在するI/Oコントローラを介して結合され得る。これらの装置は、例えばこれだけに限定されないが、キーボード、タッチスクリーンディスプレイ、及びポインティングデバイスを含み得る。データ処理システムが、介在する私設網又は公衆網を介して他のデータ処理システム、リモートプリンタ、又は記憶装置に結合されることを可能にするために、様々な通信アダプタがシステムに結合されても良い。非限定的な例はモデムやネットワークアダプタであり、これらは現在入手可能な種類の通信アダプタのごく一部である。
【0063】
本発明が図面及び上記の説明の中で図示され詳細に説明されてきたが、かかる説明図及び説明は、制限的ではなく説明的又は例示的と見なされるべきであり、本発明は開示された実施形態に限定されない。図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、特許請求の範囲に記載の本発明を実施する際、開示された実施形態に対する他の改変形態が当業者によって理解され実践され得る。
【0064】
特許請求の範囲では、「含む」という用語は他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数形を排除しない。特許請求の範囲に挙げられる幾つかのアイテムの機能を単一の要素又は他のユニットが果たし得る。或る手段が互いに異なる従属項の中で引用されるという単なる事実は、それらの手段の組合せを有利に使用できないことを示すものではない。
【0065】
特許請求の範囲の中の如何なる参照記号も範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。