特許第6400868号(P6400868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6400868
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】ラメ糸及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/12 20060101AFI20180920BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20180920BHJP
   D06B 3/09 20060101ALI20180920BHJP
   D06P 1/00 20060101ALI20180920BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   D02G3/12
   D02G3/04
   D06B3/09
   D06P1/00 C
   D06P5/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-24371(P2018-24371)
(22)【出願日】2018年2月14日
【審査請求日】2018年3月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000235783
【氏名又は名称】尾池工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桑木 克寛
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−350811(JP,A)
【文献】 実開平05−019382(JP,U)
【文献】 特開平06−017334(JP,A)
【文献】 特開平07−258931(JP,A)
【文献】 実開昭57−034586(JP,U)
【文献】 特開平02−229261(JP,A)
【文献】 特開2006−176901(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0148118(US,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−1414518(KR,B1)
【文献】 特開平07−138857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00− 3/48
D02J 1/00−13/00
D06M 10/00−11/84
D06M 13/00−15/715
D06B 1/00−23/30
D06C 3/00−29/00
D06G 1/00− 5/00
D06H 1/00− 7/24
D06J 1/00− 1/12
D06P 1/00
D06P 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの片面に金属蒸着層と金属蒸着保護層を積層してなる金属蒸着フィルムをマイクロスリットして得られるスリットラメ糸と、他糸と、よりなる撚糸を、
巻き密度を0.2g/cm以上0.6g/cm以下とし、巻き形状肩部分を半径60mmから140mmの略チーズ形状(チーズ状)の撚糸巻きとし染色温度を90℃以上120℃以下として、平行プラスチック管の表面にチーズ状に巻き、
かかる状態で前記より糸をチーズ状に巻いた平行プラスチック管の内側と前記チーズ状に巻いた撚糸の外側とから交互に蛍光染液を循環させて前記撚糸をチーズ染色し、
且つ前記蛍光染液として、耐光性に優れた水溶性蛍光染料と、蛍光増白剤と、を加えることで、
得られた撚糸において前記金属蒸着層の腐食・脱落が生じず、得られた撚糸の耐光堅牢度が3級以上であること、
を特徴とする、ラメ糸。
【請求項2】
請求項に記載のラメ糸であって、
前記蛍光液に加える前記蛍光染料の量が0.0005%owf以上1.5%owf以下であり、
前記蛍光液に加える前記蛍光増白剤がアニオン系ポリエステル繊維用蛍光増白剤であり、かつ加える量が0.01%owf以上0.5%owf以下であること、
を特徴とする、ラメ糸。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載のラメ糸であって、
前記金属蒸着に用いる金属が 銀、アルミニウム、錫 であること、
を特徴とする、ラメ糸。
【請求項4】
請求項1ないし請求項の何れか1項に記載のラメ糸であって、
前記マイクロスリットが マイクロスリットの幅 1.00mm〜0.15mmであること、
を特徴とする、ラメ糸。
【請求項5】
請求項1ないし請求項の何れか1項に記載のラメ糸であって、
前記他糸が ポリエステル糸、ナイロン糸、レーヨン糸、綿糸、キュプラ糸の何れかであること、
を特徴とする、ラメ糸。
【請求項6】
請求項1ないし請求項の何れか1項に記載のラメ糸であって、
前記のカバーリングの方法が丸撚、蛇腹、タスキ、羽衣、の何れかであること、
を特徴とする、ラメ糸。
【請求項7】
基材フィルムの片面に
真空蒸着法により金属蒸着層を積層し、
さらにその表面に金属蒸着保護層を塗布してなる金属蒸着フィルム製造工程と、
前記金属蒸着フィルムをマイクロスリットすることでラメ糸を得るスリットラメ糸製造工程と、
得られた前記スリットラメ糸と他糸とを撚り合わせて撚糸を得る撚糸工程と、
得られた撚糸を、巻き密度を0.2g/cm以上0.6g/cm以下とし、巻き形状肩部分を半径60mmから140mmの略チーズ形状(チーズ状)の撚糸巻きとし染色温度を90℃以上120℃以下として、平行プラスチック管の表面にチーズ状に巻き、かかる状態で前記平行プラスチック管の内側と前記チーズ状に巻かれた撚糸の外側とから交互に蛍光染液を循環させ、その結果前記撚糸の耐光堅牢度が3級以上となるように染色されてなる、チーズ染色を実行するチーズ染色工程と、
よりなり、
前記チーズ染色を実行する際に用いる蛍光染液として、
耐光性に優れた水溶性蛍光染料と、蛍光増白剤と、を加えたこと、
を特徴とする、ラメ糸の製造方法。
【請求項8】
請求項に記載のラメ糸の製造方法であって、
前記蛍光液に加える前記蛍光染料の量が0.0005%owf以上1.5%owf以下であり、
前記蛍光液に加える前記蛍光増白剤がアニオン系ポリエステル繊維用蛍光増白剤であり、かつ加える量が0.01%owf以上0.5%owf以下であること、
を特徴とする、ラメ糸の製造方法。
【請求項9】
請求項又は請求項記載のラメ糸の製造方法であって、
前記金属蒸着に用いる金属が 銀、アルミニウム、錫 であること、
を特徴とする、ラメ糸の製造方法。
【請求項10】
請求項ないし請求項の何れか1項に記載のラメ糸の製造方法であって、
前記マイクロスリットが マイクロスリットの幅 1.00mm〜0.15mmであること、
を特徴とする、ラメ糸の製造方法。
【請求項11】
請求項ないし請求項10の何れか1項に記載のラメ糸の製造方法であって、
前記他糸が ポリエステル糸、ナイロン糸、レーヨン糸、綿糸、キュプラ糸の何れかであること、
を特徴とする、ラメ糸の製造方法。
【請求項12】
請求項ないし請求項11の何れか1項に記載のラメ糸の製造方法であって、
前記のカバーリングの方法が丸撚、蛇腹、タスキ、羽衣、の何れかであること、
を特徴とする、ラメ糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属蒸着フィルムをマイクロスリットして得られるスリットラメ糸と、その他の糸と、を用いてなる撚糸及びその製造方法に関するものであって、具体的には、スリットラメ糸を構成する金属蒸着層の腐食・剥離が生じない、耐光堅牢度に優れ且つ染色ムラも無く鮮やかな蛍光発色性を有したラメ糸及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高級感やきらびやかさ、華やかさを呈するいわゆる金銀糸は、特に女性向けファッション用ファブリックに多用されてきた。その他にも、カーテンやシートなど、インテリアに用いられる繊維製品などでも多用されてきた。
【0003】
そのような金銀糸であっても、金はその価格面からなかなか実用される場面は限られてくる一方、銀は比較的多くの場面で銀糸として使用されてきた歴史をもっている。そこで、昨今では高分子樹脂フィルムに銀を蒸着して得られる銀蒸着フィルムをマイクロスリットしたものを用いてスリット糸とした銀糸がよく利用されるようになってきた。
【0004】
例えば特許文献1に見られるように、金銀糸用フィルムのスリット糸およびマルチフィラメントをランダムに撚り合わせた撚糸などが金銀糸として用いられている。ここに開示されたような金銀糸であれば、落ち着いた金属光沢を呈し、また優れた柔軟性を呈する、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−217738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1に記載された金銀糸に限らず、金銀糸用フィルムのスリット糸を用いた金銀糸では、従来より蒸着された銀が空気等と触れて腐食し変色することで、当初は得られていた金属光沢が失われるという現象が普遍的に見られており問題であった。
【0007】
一般的に金銀糸用フィルムに色づけしてカラーラメ糸を作る場合、染料を溶かしたコーティング樹脂をグラビア印刷機により金属蒸着フィルムに着色する、という手法が行われている。この手法と同様の手法によって蛍光発色性を有するラメ糸を作成した場合、利用出来る着色料たる蛍光染料が限定され、またそれらを用いたとしても耐光堅牢度が非常に悪く、即ち3級以上のものが得られないという問題があった。さらに蛍光色を呈することが出来たとしても、鮮やかな蛍光発色性を得ることができないという問題があった。
【0008】
さらにまた、昨今では単純な金属光沢に留まらず、金属蒸着フィルムをスリットした糸を用いた撚糸にあって、チーズ染色でカラーラメ糸を作る場合、染色ムラが発生し易く均一に染色が出来ない問題点や、チーズ染色時の工程が金属蒸着層にダメージを与えてしまい、所望通りの発色や金属光沢を呈するスリット糸を得られないこと、ひいてはそれを用いた表情豊かで耐光堅牢度に優れた蛍光発色ラメ糸を得ることが困難である、という問題があった。
【0009】
そこで本願発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は金属蒸着フィルムをマイクロスリットして得られるスリットラメ糸を用いたラメ糸であって、耐堅牢度に優れ且つ染めムラも無く鮮やかな蛍光発色性を有したラメ糸、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載のラメ糸は、基材フィルムの片面に金属蒸着層と金属蒸着保護層を積層してなる金属蒸着フィルムをマイクロスリットして得られるスリットラメ糸と、他糸と、よりなる撚糸を、巻き密度を0.2g/cm以上0.6g/cm以下とし、巻き形状肩部分を半径60mmから140mmの略チーズ形状(チーズ状)の撚糸巻きとし、チーズ染色温度を90℃以上120℃以下として、平行プラスチック管の表面にチーズ状に巻き、かかる状態で前記撚糸をチーズ状に巻いた平行プラスチック管の内側と前記チーズ状に巻いた撚糸の外側とから交互に蛍光染液を循環させて前記撚糸をチーズ染色し、且つ前記蛍光染液として、耐光性に優れた水溶性蛍光染料と、蛍光増白剤と、を加えることで、得られた撚糸において前記金属蒸着層の腐食・脱落が生じず、得られた撚糸の耐光堅牢度が3級以上であること、を特徴とする。
【0011】
本願発明の請求項に記載のラメ糸は、請求項に記載のラメ糸であって、前記蛍光液に加える前記蛍光染料の量が0.0005%owf以上1.5%owf以下であり、前記蛍光液に加える前記蛍光増白剤がアニオン系ポリエステル繊維用蛍光増白剤であり、かつ加える量が0.01%owf以上0.5%owf以下であること、を特徴とする。
【0012】
本願発明の請求項に記載のラメ糸は、請求項1又は請求項に記載のラメ糸であって、前記金属蒸着に用いる金属が 銀、アルミニウム、錫 であること、を特徴とする。
【0013】
本願発明の請求項に記載のラメ糸は、請求項1ないし請求項の何れか1項に記載のラメ糸であって、前記マイクロスリットが マイクロスリットの幅 1.00mm〜0.15mmであること、を特徴とする。
【0014】
本願発明の請求項に記載のラメ糸は、請求項1ないし請求項の何れか1項に記載のラメ糸であって、前記他糸が ポリエステル糸、ナイロン糸、レーヨン糸、綿糸、キュプラ糸の何れかであること、を特徴とする。
【0015】
本願発明の請求項に記載のラメ糸は、請求項1ないし請求項の何れか1項に記載のラメ糸であって、前記のカバーリングの方法が丸撚、蛇腹、タスキ、羽衣、の何れかであること、を特徴とする。
【0016】
本願発明の請求項に記載のラメ糸の製造方法は、基材フィルムの片面に、真空蒸着法により金属蒸着層を積層し、さらにその表面に金属蒸着保護層を塗布してなる金属蒸着フィルム製造工程と、前記金属蒸着フィルムをマイクロスリットすることでラメ糸を得るスリットラメ糸製造工程と、得られた前記スリットラメ糸と他糸とを撚り合わせて撚糸を得る撚糸工程と、得られた撚糸を、巻き密度を0.2g/cm以上0.6g/cm以下とし、巻き形状肩部分を半径60mmから140mmの略チーズ形状(チーズ状)の撚糸巻きとし、染色温度を90℃以上120℃以下として平行プラスチック管の表面にチーズ状に巻き、かかる状態で前記平行プラスチック管の内側と前記チーズ状に巻かれた撚糸の外側とから交互に蛍光染液を循環させ、その結果前記撚糸の耐堅牢度が3級以上となるように染色されてなる、チーズ染色を実行するチーズ染色工程と、よりなり、前記チーズ染色を実行する際に用いる蛍光染液として、耐光性に優れた水溶性蛍光染料と、蛍光増白剤と、を加えたこと、を特徴とする。
【0017】
本願発明の請求項に記載のラメ糸の製造方法は、請求項に記載のラメ糸の製造方法であって、前記蛍光液に加える前記蛍光染料の量が0.0005%owf以上1.5%owf以下であり、前記蛍光液に加える前記蛍光増白剤がアニオン系ポリエステル繊維用蛍光増白剤であり、かつ加える量が0.01%owf以上0.5%owf以下であること、を特徴とする。
【0018】
本願発明の請求項に記載のラメ糸の製造方法は、請求項又は請求項記載のラメ糸の製造方法であって、前記金属蒸着に用いる金属が 銀、アルミニウム、錫 であること、を特徴とする。
【0019】
本願発明の請求項10に記載のラメ糸の製造方法は、請求項ないし請求項の何れか1項に記載のラメ糸の製造方法であって、前記マイクロスリットが マイクロスリットの幅 1.00mm〜0.15mmであること、を特徴とする。
【0020】
本願発明の請求項11に記載のラメ糸の製造方法は、請求項ないし請求項10の何れか1項に記載のラメ糸の製造方法であって、前記他糸が ポリエステル糸、ナイロン糸、レーヨン糸、綿糸、キュプラ糸の何れかであること、を特徴とする。
【0021】
本願発明の請求項12に記載のラメ糸の製造方法は、請求項ないし請求項11の何れか1項に記載のラメ糸の製造方法であって、前記のカバーリングの方法が丸撚、蛇腹、タスキ、羽衣、の何れかであること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
従来であれば商品全体にわたり均一に蛍光発色を呈するラメ糸を得ることが出来なかったところ、本願発明にかかるラメ糸であれば、蛍光色が斑状であったり不均等な蛍光色となってしまっていた、即ち色むらを生じることの無い安定した蛍光発色を呈し、なおかつ耐光堅牢度に優れたラメ糸とすることが出来る。また本願発明にかかるラメ糸の製造方法であれば、そのようなラメ糸を得られるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずしもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
本願発明にかかるラメ糸に関して、第1の実施の形態として説明する。
【0025】
本実施の形態にかかるラメ糸は、基材フィルムの片面に金属蒸着層と金属蒸着保護層を積層してなる金属蒸着フィルムをマイクロスリットして得られるスリットラメ糸と、他糸と、よりなる撚糸を、巻き密度を0.2g/cm以上0.6g/cm以下とし、巻き形状肩部分を半径60mmから140mmの略チーズ形状(チーズ状)の撚糸巻きとし、染色温度を90℃以上120℃以下として、平行プラスチック管の表面にチーズ状に巻き、かかる状態で前記撚糸をチーズ状に巻いた平行プラスチック管の内側と前記チーズ状に巻いた撚糸の外側とから交互に蛍光染液を循環させて前記撚糸をチーズ染色することで、得られた撚糸において前記金属蒸着層の腐食・脱落が生じず、得られた撚糸の耐光堅牢度が3級以上であること、を特徴とするものである。
【0026】
以下、説明をする。
まず撚糸を得る為に、スリットラメ糸を準備する。
スリットラメ糸は、前記の通り基材フィルムの表面に金属蒸着層、金属蒸着保護層、をこの順に積層してなる金属蒸着フィルムをマイクロスリットすることにより得られる。さらに、基材フィルムの表面に積層する金属蒸着層の密着を上げたものや、金属蒸着層を保護するために基材フィルムにアンダーコート層を設けたもの、金属蒸着保護層の上に基材フィルムを貼り合わせたいわゆる2Ply構成にした金属蒸着フィルムをマイクロスリットしたものを使用することも考えられるが、それらを用いた場合も同様なので、ここでは基材フィルムの表面に金属蒸着層、金属蒸着保護層をこの順に積層してなる金属蒸着フィルムを用いることを念頭に説明をする。
【0027】
本実施の形態で用いる基材フィルムは特段の制限を設けるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムや、ナイロン(Ny)フィルム、複合ナイロンフィルムなどの、金属蒸着フィルムを得る際に用いられるプラスチックフィルムであれば良い。本実施の形態ではPETフィルムを用いる。またその厚みも従来公知の物で良く、例えば4μm以上25μm以下のものであれば本実施の形態にかかるスリットラメ糸を製造するのに扱いやすく好適であると言え、以下本実施の形態では基材フィルムはPETフィルムの厚みは12μmとする。
【0028】
次に基材フィルムの表面に金属蒸着層を積層する。
ここで蒸着して積層する金属は特段の制限は設けないものの、本実施の形態の目的であるラメ糸を得る為に、例えば金属光沢及び白度の点で優れているアルミニウムや銀を用いることが好ましく、その他にも錫、インジウム、チタン、クロム、及びこれらの合金、といった金属を蒸着することが好適である。またそれらの金属は従来周知の手法により基材となるフィルムの表面に積層される。本実施の形態では銀蒸着層を設けたものについて説明を行うこととする。尚、アルミニウム蒸着層の場合でも同様であることを予め断っておく。
【0029】
蒸着の手法としては、高周波誘導加熱法、抵抗加熱法、電子ビーム加熱法のいずれの手法を用いて蒸着をおこなってもよいが、一般的に高周波誘導加熱法が用いられる。蒸着されて得られる金属蒸着層の厚みは20nmから100nmであることが好ましい。20nm未満であると充分な金属光沢が得られず、100nmを超えると蒸着を行う時に熱ダメージが強くなってしまい熱ジワが発生しやすくなり経済性も悪い。尚、本実施の形態における金属蒸着層は高周波加熱法で厚みは50nmの蒸着層であるものとする。
【0030】
PETフィルムに銀を蒸着により積層すると、その次に、さらにその表面に金属蒸着保護層を積層する。
【0031】
ここで用いる金属蒸着保護層とは、これも従来周知のものであってよく、例えばアクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂の単独、又はこれらの混合物からなる樹脂が用いられる。又、上記樹脂は有機重合体、共重合体を主成分とした可塑剤、安定剤、紫外線吸収剤などの添加剤を含むものであってもよい。
【0032】
金属蒸着保護層の積層の方法は、前記の樹脂を溶剤にて希釈した塗料を前記蒸着金属層の上に、グラビアコーティング法、リバースコーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法などの通常のコーティング法により塗布、乾燥して形成される。
【0033】
金属蒸着保護層の厚さは、0.1μmから3μmの範囲から適宜選択される。厚さが0.1μm未満では金属蒸着層を保護するといった効果が充分に発揮できず、一方3μmを超えても乾燥速度が遅くなり非効率的で経済的にも好ましくない。尚、本実施の形態における銀蒸着層の保護層としては、エポキシメラミン樹脂をグラビアコーティング法により厚みを1μmの金属蒸着保護層であるものとする。
【0034】
以上のようにして金属蒸着フィルムを得る。
そして次にこれをマイクロスリットするのであるが、これもまた従来周知の手法でマイクロスリットを実行すれば良い。
【0035】
本実施の形態では、その幅は0.15mm以上1mm以下であることが好ましい。0.15mm未満であるとスリット糸の幅が細すぎて折角の蛍光発色ラメ糸としての加飾性が弱くなり好ましくない。また、1mmより太くなると糸としての風合いが悪くなり衣料用途としては肌触りが悪くなり好ましくない。また、後述するように、このマイクロスリットして得られてなるスリットラメ糸を他の糸と撚り合わせて撚糸を作るのに適した幅であるからであって、本実施の形態ではこの幅を0.38mmとする。
【0036】
このようにして得られたスリットラメ糸を他糸と撚り合わせて撚糸を得る。
この際、用いられる「他糸」として、特段限定するものではないが、例えばポリエステル糸、ナイロン糸、レーヨン糸、綿糸、キュプラ糸、等であれば好適であり、モノフィラメンよりマルチフィラメントの方が、チーズ染色液が均一に行きわたり染色ムラが発生しにくいため好ましい。スリットラメ糸は扁平糸であるためスリットラメ糸単体でチーズ染色を行っても染色液が浸透せず染色ムラが発生する。そこで、スリットラメ糸と他糸と撚り合わせることで染色液が均一に行きわたり染色ムラを抑えることが可能となる。
【0037】
他糸の糸太さとしては10デニールから500デニールが好ましい。本実施の形態では糸太さを150デニールでマルチフィラメント24本のレーヨン芯を用いる。
【0038】
撚り方も特段限定するものではなく、従来周知の丸撚、蛇腹、タスキ、羽衣、と称される手法であればよく、チーズ染色液が均一に行きわたり染色ムラが発生しにくい点から丸撚若しくはタスキの好ましい。染色液の本実施の形態では丸撚の撚り方を用いて撚糸を得ることとする。
【0039】
次に、以上のようにして得られた撚糸を染色して、本実施の形態にかかるラメ糸を得る。そこでこの染色に関して説明する。
【0040】
本実施の形態における撚糸の染色方法として、いわゆるチーズ染色法を採用する。これはいわゆるパッケージ染色の一種で、糸をチーズの状態に巻いてこれを染色する手法のことである。具体的には、並行プラスチック管の表面に撚糸をいわゆるゴーダチーズのような外観状に巻き、その状態で並行プラスチック管の内側・外側から、交互に染液をポンプで循環させ、均一に染料が糸に染着するようにした手法のことである。そして一般には染色時に加圧されることが多く、またチーズ状に巻かれた撚糸の硬さを調整することで様々な染色が行われる。チーズ染色を用いることで、例えば他の手法に比べて、バルキー性はやや低下するものの、染色の能率が向上する、という利点を有する。
【0041】
本実施の形態では、撚糸の巻き密度を0.2g/cm以上0.6g/cm以下とすることが好適である。0.2g/cm未満の場合は染色時に液流により糸が動きひどい場合は糸が縺れて解除できなくなる。0.6g/cmを超えると巻きが硬く、染色液が充分行きわたらず糸に染色ムラが発生する。巻き形状肩部分を半径60mmから140mmの略球面状とした略チーズ形状(チーズ状)の撚糸巻きとする。この際、巻き形状の肩部分の大きさは種々考えられるが、この部分がある程度小さい方がムラ無く染めるのに好適であるため、その肩部分の半径を本願発明では上述の範囲内とし、本実施の形態では100mmとしている。染色温度を90℃以上120℃以下として、平行プラスチック管の内側とチーズ状に巻いた撚糸の外側とから交互に蛍光染液を循環させて撚糸をチーズ染色する。
【0042】
以上の通りとすることで、得られた撚糸において染めムラも無く、金属蒸着層の腐食・脱落が生じず金属光沢を維持した、得られた撚糸の耐光堅牢度が3級以上である蛍光発色が付与されたラメ糸を得る事が出来る。
【0043】
さらに説明を続ける。
本実施の形態にかかるラメ糸は蛍光発色が付与されたものであることを目的としている。よって、チーズ状に巻いた糸に対し蛍光液を用いてこれを染める必要がある。ここで用いる蛍光液には、本実施の形態では耐性に優れた水溶性蛍光染料と、蛍光増白剤と、を加える。より具体的には、蛍光液に加える水溶性蛍光染料の量が0.0005%owf以上1.5%owf以下であることが好ましく、また蛍光液に加える蛍光増白剤としてはアニオン系ポリエステル繊維用蛍光増白剤を用いることが好ましく、かつ加える量が0.01%owf以上0.5%owf以下であることが好適である。
それ以外に、一般的に用いられる均染剤、緩染剤、浸透剤、濃染剤及び柔軟剤等の助剤を適宜使用してもよい。
【0044】
特にアニオン系ポリエステル繊維用蛍光増白剤を加えることで、良好な染着性と優れた増白効果を呈することが可能となるうえに、耐光・耐熱・昇華堅牢度について蛍光染料単独で染色したものより更にラメ糸の発色性及び堅牢度について向上させる効果がある。
【0045】
そしてこのように準備された蛍光液を用いてチーズ染色を行うのであるが、これはハメ込式チーズ染色機又はスピンドル式チーズ染色機を用いて染色される。
ポリエステル糸をチーズ染色機で染色する場合、通常は染料の温度が130℃以上150℃以下の範囲内に昇温した後、30分ほどをかけて染色処理されるが、スリットラメ糸をこの条件で染色すると金属蒸着層が腐食したり、金属蒸着層が動いて金属光沢が消失し、美麗な染色糸が得ることができない。
【0046】
そこで、本実施の形態では、染色の温度を90℃以上120℃以下の範囲内にすることにより、金属蒸着層の光沢を維持することができ、且つ、アニオン系ポリエステル繊維用蛍光増白剤を蛍光染料と合わせて使用することにより、低温でも蛍光発色性を増した鮮やかな色彩を有し、且つこの蛍光増白剤を用いることによりラメ糸の堅牢度も向上させることができ、優れた蛍光発色ラメ糸が得ることが出来る。
【0047】
このようにして得られた本実施の形態にかかるラメ糸であれば、得られたラメ糸は染めムラも無く美麗な蛍光色を呈するのみならず、耐堅牢度が3級以上、という優れた商品を得ることが出来るのである。
【0048】
また各々の段階において前述した工程を経たラメ糸の製造方法を用いれば、上述した優れた蛍光発色性を有するラメ糸を得る事が出来るのである。
【実施例】
【0049】
以下、本実施の形態をさらに詳細に説明するため、具体例を示しながら本願発明を説明するが、必ずしもこれらの事例に限定されるものではないことを予め断っておく。
【0050】
<実施例1>
・ 厚み12μmのPETフィルムを基材フィルムとして用いる。
・ 高周波加熱法によりPETフィルムの表面に50nmの厚みを有する銀蒸着層を設ける。
・ 銀蒸着層の上に、エポキシメラミン樹脂をグラビアコーティング法により厚み1μmとした金属蒸着保護層を設け、金属蒸着フィルム(A)を得る。
・ 金属蒸着フィルム(A)を0.38mmにマイクロスリットして糸とする。
・ 他方、糸太さが150デニールのマルチフィラメント24本よりなるレーヨン糸を用意する。これら2つの糸を丸撚して撚糸を得る。
・ この撚糸を穴が空いた平行プラスチック管に
巻き密度を0.4g/cm
巻き形状肩部分の半径を100mmとした略チーズ状の外観を有する巻糸とする。
・ 蛍光染料の量が1.0%owfとアニオン系ポリエステル繊維用蛍光増白剤0.1%owfの染色液に、染色温度を115℃、染色時間を30分に設定し、平行プラスチック管の内側とチーズ状に巻いた撚糸の外側とから交互に蛍光染液を循環させて撚糸をチーズ染色し、蛍光発色を呈するラメ糸を得る。(ラメ糸A)
【0051】
<実施例2>
・ 厚み12μmのPETフィルムを基材フィルムとして用いる。
・ 高周波加熱法によりPETフィルムの表面に50nmの厚みを有するアルミニウム蒸着層を設ける。
・ アルミニウム蒸着層の上に、エポキシメラミン樹脂をグラビアコーティング法により厚み1μmとした金属蒸着保護層を設け、金属蒸着フィルム(B)を得る。
・ 金属蒸着フィルム(B)を0.38mmにマイクロスリットして糸とする。
・ 他方、糸太さが150デニールのマルチフィラメント24本よりなるレーヨン糸を用意する。これら2つの糸を丸撚して撚糸を得る。
・ この撚糸を穴が空いた平行プラスチック管に
巻き密度を0.4g/cm
巻き形状肩部分の半径を100mmとした略チーズ状の外観を有する巻糸とする。
・ 蛍光染料の量が1.0%owfとアニオン系ポリエステル繊維用蛍光増白剤0.1%owfの染色液に、染色温度を115℃、染色時間を30分に設定し、平行プラスチック管の内側とチーズ状に巻いた撚糸の外側とから交互に蛍光染液を循環させて撚糸をチーズ染色し、蛍光発色を呈するラメ糸を得る。(ラメ糸B)
【0052】
<実施例3>
・ 厚み6μmのPETフィルムを基材フィルムとして用いる。
・基材フィルムの上に、ポリエステル樹脂をグラビアコーティング法により厚み1μmのアンダーコート層を設ける。
・ アンダーコート層の上に、高周波加熱法により50nmの厚みを有する銀蒸着層を設ける。
・ 銀蒸着層の上に、エポキシメラミン樹脂をグラビアコーティング法により厚み1μmとした金属蒸着保護層を設ける。
・金属蒸着保護層同士が内側になるようにポリエステル接着剤で貼り合わせ2ply構成にした金属蒸着フィルム(C)を得る。
・ 金属蒸着フィルム(C)を0.38mmにマイクロスリットして糸とする。
・ 他方、糸太さが150デニールのマルチフィラメント24本よりなるレーヨン糸を用意する。これら2つの糸を丸撚して撚糸を得る。
・ この撚糸を穴が空いた平行プラスチック管に
巻き密度を0.4g/cm
巻き形状肩部分の半径を100mmとした略チーズ状の外観を有する巻糸とする。
・ 蛍光染料の量が1.0%owfとアニオン系ポリエステル繊維用蛍光増白剤0.1%owfの染色液に、染色温度を115℃、染色時間を30分に設定し、平行プラスチック管の内側とチーズ状に巻いた撚糸の外側とから交互に蛍光染液を循環させて撚糸をチーズ染色し、蛍光発色を呈するラメ糸を得る。(ラメ糸C)
【0053】
<比較例1>
・ 厚み12μmのPETフィルムを基材フィルムとして用いる。
・ 高周波加熱法によりPETフィルムの表面に50nmの厚みを有する銀蒸着層を設ける。
・ 銀蒸着層の上に、エポキシメラミン樹脂に対し蛍光塗料1.0%重量部を溶解して得られた塗料をグラビアコーティング法により厚みが1μmとなるようにこれを塗布し蛍光発色を呈する金属蒸着フィルム(W)を得る。
・ 金属蒸着フィルム(W)を0.38mmにマイクロスリットして糸とする。
・ 他方、糸太さが150デニールのマルチフィラメント24本よりなるレーヨン糸を用意する。これら2つの糸を丸撚して撚糸を得る。(ラメ糸W)
【0054】
<比較例2>
・ 厚み12μmのPETフィルムを基材フィルムとして用いる。
・ 高周波加熱法によりPETフィルムの表面に50nmの厚みを有する銀蒸着層を設ける。
・ 銀蒸着層の上に、エポキシメラミン樹脂をグラビアコーティング法により厚みが1μmとなるように塗布し金属蒸着保護層を設け、金属蒸着フィルム(X)を得る。
・ 金属蒸着フィルム(X)を0.38mmにマイクロスリットして糸とする。
・ 他方、糸太さが150デニールのマルチフィラメント24本よりなるレーヨン糸を用意する。これら2つの糸を丸撚して撚糸を得る。
・ この撚糸を穴が空いた平行プラスチック管に
巻き密度を0.9g/cm
巻き形状肩部分の半径を100mmとした略チーズ状の外観を有する巻糸とする。
・ 蛍光染料の量が1.0%owfとアニオン系ポリエステル繊維用蛍光増白剤0.1%owfの染色液に、染色温度を115℃、染色時間を30分に設定し、平行プラスチック管の内側とチーズ状に巻いた撚糸の外側とから交互に蛍光染液を循環させて撚糸をチーズ染色し、蛍光発色を呈するラメ糸を得る。(ラメ糸X)
【0055】
<比較例3>
・ 厚み12μmのPETフィルムを基材フィルムとして用いる。
・ 高周波加熱法によりPETフィルムの表面に50nmの厚みを有する銀蒸着層を設ける。
・ 銀蒸着層の上に、エポキシメラミン樹脂をグラビアコーティング法により厚みが1μmとなるように塗布し金属蒸着保護層を設け、金属蒸着フィルム(Y)を得る。
・ 金属蒸着フィルム(Y)を0.38mmにマイクロスリットして糸とする。
・ 他方、糸太さが150デニールのマルチフィラメント24本よりなるレーヨン糸を用意する。これら2つの糸を丸撚して撚糸を得る。
・ この撚糸を穴が空いた平行プラスチック管に
巻き密度を0.4g/cm
巻き形状肩部分の半径を100mmとした略チーズ状の外観を有する巻糸とする。
・ 蛍光染料の量が1.0%owfとアニオン系ポリエステル繊維用蛍光増白剤0.1%owfの染色液に、染色温度を145℃、染色時間を30分に設定し、平行プラスチック管の内側とチーズ状に巻いた撚糸の外側とから交互に蛍光染液を循環させて撚糸をチーズ染色し、蛍光発色を呈するラメ糸を得る。(ラメ糸Y)
【0056】
<比較例4>
・ 厚み12μmのPETフィルムを基材フィルムとして用いる。
・ 高周波加熱法によりPTEフィルムの表面に50nmの厚みを有する銀蒸着層を設ける。
・ 銀蒸着層の上に、エポキシメラミン樹脂をグラビアコーティング法により厚みが1μmとなるように塗布し金属蒸着保護層を設け、金属蒸着フィルム(Z)を得る。
・ 金属蒸着フィルム(Z)を0.38mmにマイクロスリットして糸とする。
・ 他方、糸太さが150デニールのマルチフィラメント24本よりなるレーヨン糸を用意する。これら2つの糸を丸撚して撚糸を得る。
・ この撚糸を穴が空いた平行プラスチック管に
巻き密度を0.4g/cm
巻き形状肩部分の半径を100mmとした略チーズ状の外観を有する巻糸とする。
・ 蛍光染料の量が1.0%owfのみの染色液に、染色温度を115℃、染色時間を30分に設定し、平行プラスチック管の内側とチーズ状に巻いた撚糸の外側とから交互に蛍光染液を循環させて撚糸をチーズ染色し、蛍光発色を呈するラメ糸を得る。(ラメ糸Z)
【0057】
<発明の評価>
(1)耐光性の評価
実施例、比較例で得られたラメ糸A〜C、W〜Zを
ISO規格 ISO 105−B02(JIS規格 L 0843)に準じて耐光堅牢度について比較を行った。
* 耐光性
実施例1(ラメ糸A) → ○(4級)
実施例2(ラメ糸B) → ○(4級)
実施例3(ラメ糸C) → ○(4級)
比較例1(ラメ糸W) → ×(1級以下)
比較例2(ラメ糸X) → ○(4級)
比較例3(ラメ糸Y) → ○(4級)
比較例4(ラメ糸Z) → △(2級)
【0058】
(2)外観の評価
実施例、比較例で得られたラメ糸A〜C、W〜Zを、目視にて染色ムラ、蛍光発色性及び金属光沢の項目について外観品位の比較を行った。
染色ムラ 蛍光発色性 金属光沢
実施例1(ラメ糸A) ○(ムラ無し) ◎(良好) ◎(光沢良好)
実施例2(ラメ糸B) ○(ムラ無し) ○(良好) ○(光沢良好)
実施例3(ラメ糸C) ○(ムラ無し) ◎(良好) ◎(光沢良好)
比較例1(ラメ糸W) ○(ムラ無し) ×(鈍い) △(光沢やや劣る)
比較例2(ラメ糸X) ×(ムラ有り) ○(良好) ○(光沢良好)
比較例3(ラメ糸Y) ○(ムラ無し) ○(良好) ×(金属光沢消失)
比較例4(ラメ糸Z) ○(ムラ無し) △(若干鈍い) ◎(光沢良好)
【0059】
以上の通り、本願発明に準じて製造されたラメ糸A〜Cであれば蛍光ムラもなく蛍光発色性、金属光沢も良好なラメ糸を得ることが出来るのに対し、本願発明にて示された条件にそぐわない条件で得られたラメ糸であれば、蛍光ムラ、蛍光発色性、金属光沢のいずれかにおいて致命的な欠点が生じることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
昨今アパレル業界等において独自の意匠性を呈するために広く用いられるようになってきた蛍光発色を呈するラメ糸であるが、本願発明に係るラメ糸であれば、そのような市場要求に十分応えられるだけのハイレベルを維持した商品を提供でき、また本願発明に係るラメ糸の製造方法を用いれば、かようなラメ糸を安定的に供給できるようになる。
【要約】
【課題】 金属蒸着フィルムをマイクロスリットして得られるスリットラメ糸を用いたラメ糸であって、耐光堅牢度に優れたラメ糸、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 基材フィルムに金属蒸着層と金属蒸着保護層を積層してなる金属蒸着フィルムをマイクロスリットして得られるラメ糸と、他糸と、よりなる撚糸を、巻き密度を0.2g/cm以上0.6g/cm以下とし、巻き形状肩部分を半径60mmから140mmの略チーズ形状(チーズ状)の撚糸巻きとし染色温度を90℃以上120℃以下として、平行プラスチック管の表面にチーズ状に巻き、かかる状態で平行プラスチック管の内側とチーズ状に巻いた撚糸の外側とから交互に蛍光染液を循環させて撚糸をチーズ染色することで、得られた撚糸において金属蒸着層の腐食・脱落が生じず、得られた撚糸の耐光堅牢度が3級以上であること、を特徴とするラメ糸とした。
【選択図】 なし