(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乗降口の上縁に沿って設けられ、前記引戸が閉位置のときに、前記戸本体及び戸先弾性部材の車両幅方向の前記一方側の側面の上端部と対向して、前記引戸のうち少なくとも前記戸本体の車両幅方向の前記一方側の側面の上端部と接触する上部当接部を備えており、
前記戸本体の車両幅方向の前記一方側の側面の上端部及び前記上部当接部の互いに接触する部分の少なくとも一方は、弾性変形可能な上部圧縮部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の引戸構造。
前記上部ガイド機構は、前記アクチュエータの駆動により前記引戸を閉位置へと移動させるときに前記引戸が閉位置に至る直前で前記引戸を車両幅方向の車外側に案内することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉄道車両の引戸構造。
前記戸先弾性部材は、少なくとも前記下部当接部と向かい合う面が、車両幅方向に直交しており、前記引戸が閉位置のとき、前記戸先弾性部材の車両長手方向の全域が前記下部当接部に接触することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鉄道車両の引戸構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、クツズリ部に設けた下部レールに引戸の底部に形成された溝を係合させる構造では、通常時には下部レールと溝とが接触しないように、下部レールと溝との間には隙間を設けている。そのため、走行時に発生する騒音がこの隙間を通って車内に侵入してしまう。
【0006】
また、戸先ゴムの戸先側の端部が円弧状に形成されている場合には、たとえ戸先ゴムの下端と引戸本体の下端の高さを同じにしても、引戸の底部に溝を設けると、戸先ゴムの下端において戸先ゴム同士を突き合わせることができない。そのため、戸先ゴムの戸先側の端部が円弧状の場合には、戸先ゴムの下端の高さを下部レールより上方としている。その結果、走行時に発生する音が車内に侵入しやすくなってしまう。
【0007】
そこで、本発明では、走行時に発生する騒音が車内に侵入するのを防止することのできる鉄道車両の引戸構造を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の鉄道車両の引戸構造は、直動型アクチュエータによって駆動され、鉄道車両の長手方向に延びる側壁に形成された乗降口を開閉する両開きの2枚の引戸と、前記乗車口の上縁に沿って設けられ、前記両開きの2枚の引戸の上端部と係合し、前記アクチュエータの駆動により前記引戸を前記乗車口を閉じる閉位置へと移動させるときに、前記引戸を車両長手方向に案内すると共に、前記引戸が閉位置に至る直前で前記引戸を車両幅方向の一方側に案内する上部ガイド機構とを備える鉄道車両の引戸構造であって、前記引戸は、戸本体と、前記戸本体の戸先に鉛直方向に沿って取り付けられた戸先弾性部材とを有し、前記戸先弾性部材の下端の高さは、前記戸本体の下端の高さと同じであって、前記乗降口の下縁に沿って設けられ、前記引戸が閉位置のときに、前記戸本体及び前記戸先弾性部材の車両幅方向の前記一方側の側面の下端部と対向して、前記引戸のうち少なくとも前記戸本体の車両幅方向の前記一方側の側面の下端部と接触する下部当接部を備えており、前記戸本体の車両幅方向の前記一方側の側面の下端部及び前記下部当接部の互いに接触する部分の少なくとも一方は、弾性変形可能な下部圧縮部材で構成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によると、引戸が閉位置のときに、引戸のうち少なくとも戸本体の側面の下端部が、乗降口の下縁に沿って設けられた下部当接部に接触するため、走行時に発生する音が引戸の下端部と乗降口の下縁との間から車内に侵入するのを抑制できる。
また、引戸は閉位置に至る直前で上部ガイド機構によって車両幅方向の一方側に案内されるため、戸本体を下部当接部に押し付けることができる。
また、戸本体と下部当接部のいずれか一方は、互いに接触する部分の少なくとも一部が、弾性変形可能な下部圧縮部材で構成されているため、戸本体を下部当接部に押し付けてより確実に密着させることができる。その結果、走行音の侵入をより確実に抑制できる。
【0010】
本発明の鉄道車両の引戸構造は、前記乗降口の上縁に沿って設けられ、前記引戸が閉位置のときに、前記戸本体及び戸先弾性部材の車両幅方向の前記一方側の側面の上端部と対向して、前記引戸のうち少なくとも前記戸本体の車両幅方向の前記一方側の側面の上端部と接触する上部当接部を備えており、前記戸本体の車両幅方向の前記一方側の側面の上端部及び前記上部当接部の互いに接触する部分の少なくとも一方は、弾性変形可能な上部圧縮部材で構成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によると、引戸が閉位置のときに、引戸の少なくとも戸本体の側面の上端部が、乗降口の上縁に沿って設けられた上部当接部に接触するため、走行時に発生する音が引戸の上端部と乗降口の上縁との間から車内に侵入するのを抑制できる。
また、引戸は閉位置に至る直前で上部ガイド機構によって車両幅方向の一方側に案内されるため、戸本体を上部当接部に押し付けることができる。
また、戸本体と上部当接部のいずれか一方は、互いに接触する部分の少なくとも一部が、弾性変形可能な上部圧縮部材で構成されているため、戸本体を上部当接部に押し付けてより確実に密着させることができる。その結果、走行音の侵入をより確実に抑制できる。
【0012】
本発明の鉄道車両の引戸構造は、前記乗降口の側縁に沿って設けられ、前記引戸が閉位置のときに、前記戸本体の車両幅方向の前記一方側の側面の戸尻側端部と接触する側部当接部を備えており、前記戸本体の車両幅方向の前記一方側の側面の戸尻側端部及び前記側部当接部の互いに接触する部分の一方は、弾性変形可能な側部圧縮部材で構成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によると、引戸が閉位置のときに、戸本体の側面の戸尻側端部が、乗降口の側縁に沿って設けられた側部当接部に接触するため、走行時に発生する音が引戸の戸尻側端部と乗降口の側縁との間から車内に侵入するのを抑制できる。
また、引戸は閉位置に至る直前で上部ガイド機構によって車両幅方向の一方側に案内されるため、戸本体を側部当接部に押し付けることができる。
また、戸本体と側部当接部のいずれか一方は、互いに接触する部分の少なくとも一部が、弾性変形可能な側部圧縮部材で構成されているため、戸本体を側部当接部に押し付けてより確実に密着させることができる。その結果、走行音の侵入をより確実に抑制できる。
【0014】
本発明の鉄道車両の引戸構造では、前記上部ガイド機構は、前記アクチュエータの駆動により前記引戸を閉位置へと移動させるときに前記引戸が閉位置に至る直前で前記引戸を車両幅方向の車外側に案内することが好ましい。
【0015】
引戸が閉位置に至る直前で車内側に案内されるように上部ガイド機構が構成されている場合、閉位置の引戸を車内側から押圧すると、引戸が開く方向に動くため、引戸をより強固に閉じる必要がある。一方、上述の構成では、上部ガイド機構は、引戸が閉位置に至る直前で車外側に案内されるように構成されているため、閉位置の引戸を車内側から押したとき、さらに引戸が閉まる方向に移動する。したがって、引戸をより強固に閉じるための特別な構造を考慮する必要がない。
また、引戸を閉位置に至る直前で車内側に移動させる場合であって、引戸が車両構体の車外側に配置される場合には、引戸が車内の乗客から押されたときに引戸を受け止めるものが必要になり、引戸構造が複雑になる。また、引戸を閉位置に至る直前で車内側に移動させる場合であって、引戸が車両構体の車内側に配置される場合には、引戸が車内の乗客から押されたときにその押圧力を内装材によって受けることになる。一方、引戸を閉位置に至る直前で車外側に移動させる場合には、引戸は車両構体の車内側に配置されるため、引戸が車内の乗客から受ける押圧力は、車両構体によって受けることができる。
【0016】
本発明の鉄道車両の引戸構造では、前記戸先弾性部材は、少なくとも前記下部当接部と向かい合う面が、車両幅方向に直交しており、前記引戸が閉位置のとき、前記戸先弾性部材の車両長手方向の全域が前記下部当接部に接触することが好ましい。
【0017】
この構成によると、引戸が閉位置のときに、戸本体の下端部だけでなく戸先弾性部材の下端部も、乗降口の下縁に沿って設けられた下部当接部に接触するため、走行時に発生する音が引戸の下端部と乗降口の下縁との間から車内に侵入するのをより抑制できる。
また、戸先弾性部材は弾性変形可能であるため、戸先弾性部材を下部当接部に押し付けてより確実に密着させることができる。その結果、走行音の侵入をより確実に抑制できる。
【0018】
本発明の鉄道車両の引戸構造は、前記乗降口の下縁に沿って設けられ、前記両開きの2枚の引戸の下端部と係合し、前記アクチュエータの駆動により前記引戸を閉位置へと移動させるときに、前記引戸を車両長手方向に案内すると共に、前記引戸が閉位置に至る直前で前記引戸を車両幅方向の前記一方側に案内する下部ガイド機構を備えることが好ましい。
【0019】
この構成によると、引戸の上端部と係合する上部ガイド機構だけでなく、引戸の下端部と係合する下部ガイド機構によっても、開閉時に引戸を案内するようになっている。そのため、引戸の開閉時に引戸の車両構体への干渉を防止できると共に、引戸が乗客に押された場合の開閉不良を防止できる。
【0020】
本発明の鉄道車両の引戸構造では、前記引戸は、前記戸本体の底部に設けられ、下方に突出する摺動部材を有し、前記摺動部材の車両幅方向両面は、それぞれ、車両長手方向に延びる平面と、前記乗車口の車両長手方向中央部に近づくほど前記車両幅方向の前記一方側に向かうように傾斜する傾斜面とが車両長手方向に連結された形状であって、前記下部ガイド機構は、車両長手方向に沿って延び、前記引戸を開閉する際に前記摺動部材の2つの前記平面がそれぞれ摺動可能な2つの直線ガイド面と、前記2つの直線ガイド面よりも前記乗降口の車両長手方向中央部に近い位置に設けられ、前記乗車口の車両長手方向中央部に近づくほど前記車両幅方向の前記一方側に向かうように傾斜し、前記引戸を閉位置に移動させるときに前記引戸が閉位置に至る直前から閉位置まで、前記摺動部材の2つの前記傾斜面がそれぞれ摺動可能な2つの傾斜ガイド面とを有することが好ましい。
【0021】
この構成によると、引戸を開位置から閉位置へと移動させる際、まず、引戸の底部に設けられた摺動部材の車両幅方向両側の2つの平面が、下部ガイド機構の2つの直線ガイド面と摺動する。その後、閉位置に至る直前から閉位置まで、摺動部材の車両幅方向両側の2つの傾斜面が、下部ガイド機構の2つの傾斜ガイド面と摺動する。したがって、引戸の摺動部材は2つの直線ガイド面又は2つの傾斜ガイド面に挟まれて車両幅方向の移動が規制される。そのため、開閉時の引戸の車両幅方向のガタつきを防止できる。また、引戸が閉位置のときに車内の乗客に押されたり風圧を受けることによる引戸の車両幅方向のガタつきを防止できる。
また、引戸が閉位置のときに、摺動部材が下部ガイド機構の2つの傾斜ガイド面で挟まれるため、戸本体の下端部を下部当接部に押し付けることができる。したがって、戸本体を側部当接部により確実に密着させることができ、走行音の侵入をより確実に防止できる。
【0022】
本発明の鉄道車両の引戸構造では、前記摺動部材は、前記戸本体の底部の戸先近傍に設けられていることが好ましい。
【0023】
本発明の鉄道車両の引戸構造では、前記2つの傾斜ガイド面の少なくとも一方は、前記引戸が閉位置のときに前記摺動部材の前記傾斜面と接触する部分が弾性部材で構成されていることが好ましい。
【0024】
この構成によると、引戸を閉位置に移動させたときに、摺動部材の傾斜面が弾性部材と接触するため、例えば金属などの硬質な部材同士が接触したときの音の発生を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の引戸構造100が適用された鉄道車両について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、鉄道車両の車両構体の車両長手方向に延びる側壁1に形成された乗降口1aは、両開きの2枚の引戸3a、3bによって開閉される。なお、
図1は、閉位置にある引戸3a、3bを実線で表示し、開位置にある引戸3aを二点鎖線で表示している。引戸3a、3bが開位置にあるとき、
図13に示すように引戸3a、3bは車両構体の側壁1と内装材2(
図1及び後述する
図2、3、5では省略)との間に形成された戸袋空間に収容される。
【0027】
両開きの2枚の引戸3a、3bは、1つの開閉機構4によって開閉駆動される。本実施形態の開閉機構4は、引戸3a、3bを開位置から閉位置へと移動させる際に、引戸3a、3bを車両長手方向に移動させつつ、閉位置に至る直前で引戸3a、3bを車両幅方向の車外側に移動させる。また、開閉機構4は、引戸3a、3bを閉位置から開位置へと移動させる際に、引戸3a、3bを車両長手方向に移動させつつ車両幅方向の車内側に移動させた後、車両長手方向に移動させる。開閉機構4は、乗降口1aより上方に配置されている。開閉機構4は、駆動機構5と、2つの上部ガイド機構6とを有する。
【0028】
駆動機構5は、引戸3a、3bの上端部に連結されている。駆動機構5の駆動源は、1本のエアシリンダ51(直動型アクチュエータ)のみであり、このエアシリンダ51の駆動により、引戸3a、3bが同時に車両長手方向の逆向きに移動する。駆動機構5の具体的な構成は、従来の両開きの引戸構造の駆動機構と同じであるため特に詳細な説明は省略する。駆動機構5は、エアシリンダ51のピストンロッド51aに係合し、ピストンロッド51aの伸縮により回転するピニオンギア52と、このピニオンギア52に噛合するラックギア53と、ラックギア53に噛合し、ピニオンギア52の回転により回転するピニオンギア54と、ピニオンギア54に噛合し、エアシリンダ51の作動時にピストンロッド51aと逆向きに移動するラックギア55とを備える。ピストンロッド51aは引戸3aの上端部の戸尻近傍に連結機構56を介して連結されており、ラックギア55は引戸3bの上端部の戸尻近傍に連結機構57を介して連結されている。
【0029】
連結機構56は、ピストンロッド51aと引戸3aとを車両幅方向に相対移動可能に連結している。
図2に示すように、連結機構56は、ピストンロッド51aに固定され、車両幅方向に突出する2つの突起56bを有するプレート56aと、引戸3aに固定され、プレート56aの突起56bが車両幅方向に移動可能に挿通される孔を有するスライドプレート56cとを備える。突起56bの先端には、スライドプレート56cが突起56bから外れるのを防止するための抜け止め56dが設けられている。なお、ラックギア55と引戸3bとを連結する連結機構57も連結機構56とほぼ同様の構成であるため、具体的な説明は省略する。
【0030】
2つの上部ガイド機構6は、駆動機構5より下方に位置している。2つの上部ガイド機構6の構成及び配置位置は、乗降口1aの車両長手方向中央部を通る直線を中心として対称である。上部ガイド機構6は、乗降口1aの上縁に沿って直線状に延びる上レール61及びガイド板62、63と、引戸(3aまたは3b)の上端部の戸先近傍と戸尻近傍にそれぞれ連結された吊金具64、65とを有する。
【0031】
図1に示すように、上レール61は、車両長手方向に関して、閉位置の引戸3aの戸先近傍の位置から、開位置の引戸3aの戸尻の位置まで延びている。
図2(b)及び
図3(b)に示すように、上レール61は、車両長手方向に直交する断面形状がL字状に形成されており、車両構体の側壁1の車内側の面に固定されている。上レール61は、鉛直方向に略直交するレール本体61aを有する。
【0032】
図1に示すように、ガイド板62は、上レール61のレール本体61aより上方に配置されている。ガイド板62は、車両長手方向に関して、閉位置の引戸3aの戸先近傍の位置から、開位置の引戸3aの戸先近傍の位置まで延びている。
図3(b)に示すように、ガイド板62は、金具を介して車両構体の側壁1に固定されており、鉛直方向に略直交するように配置される。
【0033】
ガイド板62の下面には、ガイド溝62aが形成されている。
図4に示すように、ガイド溝62aは、その大部分が車両長手方向に沿って直線状に延びており、乗降口1aの長手方向中央部に近い方の端部において車外側に屈曲している。
【0034】
図1に示すように、ガイド板63は、鉛直方向に関して、ガイド板62と上レール61のレール本体61aとの間に配置されている。ガイド板63は、車両長手方向に関して、閉位置の引戸3aの戸尻の位置から、開位置の引戸3aの戸尻の位置まで延びている。
図2に示すように、ガイド板63は、金具を介して車両構体の側壁1に固定されており、鉛直方向に略直交するように配置される。
【0035】
ガイド板63の上面には、ガイド溝63aが形成されている。
図4に示すように、ガイド溝63aは、ガイド溝62aと同様に、その大部分が車両長手方向に沿って直線状に延びており、乗降口1aの長手方向中央部に近い方の端部において車外側に屈曲している。
【0036】
図3に示すように、吊金具64は、引戸3aの上端部の戸先近傍に連結された支持部材66と、支持部材66に対して車両幅方向の軸回りに回転可能に支持された荷重ローラ67と、支持部材66に対して鉛直方向の軸回りに回転可能に支持された2つのガイドローラ68とを有する。支持部材66は、ピン69を介して引戸3aに連結されており、引戸3aに対して鉛直方向の軸回りに回転可能となっている。支持部材66の上端部は、水平に延びている。2つのガイドローラ68は、支持部材66の上端部の上方に車両長手方向に並んで配置されている。
【0037】
荷重ローラ67は、上レール61のレール本体61aの上面に配置される。駆動機構5によって引戸3a、3bを移動させる際、荷重ローラ67は上レール61のレール本体61a上を転がり接触する。2つのガイドローラ68は、ガイド板62のガイド溝62aに嵌め込まれている。駆動機構5によって引戸3aを移動させる際、ガイドローラ68はガイド溝62aの側面に対して転がり接触する。
【0038】
図2に示すように、吊金具65は、引戸3aの上端部の戸尻近傍に連結された支持部材70と、支持部材70に対して車両幅方向の軸回りに回転可能に支持された荷重ローラ71と、支持部材70に対して鉛直方向の軸回りに回転可能に支持された2つのガイドローラ72とを有する。支持部材70は、ピン73を介して引戸3aに連結されており、引戸3aに対して鉛直方向の軸回りに回転可能となっている。支持部材70の上端部は、水平に延びている。2つのガイドローラ72は、支持部材70の上端部の下方に車両長手方向に並んで配置されている。
【0039】
荷重ローラ71は、上レール61のレール本体61aの上面に載せられている。駆動機構5によって引戸3a、3bを移動させる際、荷重ローラ71は上レール61のレール本体61a上を転がり接触する。また、2つのガイドローラ72は、ガイド板63のガイド溝63aに嵌め込まれている。駆動機構5によって引戸3aを移動させる際、ガイドローラ72はガイド溝63aの側面に対して転がり接触する。
【0040】
このようにガイドローラ68、72とガイド溝62a、63aとが係合していることにより、駆動機構5によって引戸3aを閉位置へと移動させる際、引戸3aは、車両長手方向に案内されると共に、閉位置に至る直前で車外側に案内される。
【0041】
また、引戸構造100は、引戸3a、3bの下端部とそれぞれ係合して、引戸3a、3bを案内する2つの下部ガイド機構12を有する。2つの下部ガイド機構12は、乗降口1aの車両長手方向中央部を通る直線を中心として対称に構成されている。下部ガイド機構12は、戸尻側ガイド機構12aと、戸先側ガイド機構12bとを有する。
【0042】
図6及び
図11に示すように、戸尻側ガイド機構12aは、引戸3a、3bの戸尻の下端近傍に連結されたローラ支持具13と、このローラ支持具13に対して鉛直方向の軸回りに回転可能に支持されたガイドローラ14と、戸袋空間内に配置された戸袋レール15とを有する。
【0043】
図6及び
図8(a)に示すように、ローラ支持具13は、車両幅方向から見てL字状の板部材である。ローラ支持具13は、鉛直方向に対して垂直で、且つ、引戸3a、3bの車外側の側面よりも車外側に突出した部分を有する。この部分の上方にガイドローラ14が配置されている。
【0044】
図示は省略するが。戸袋レール15は、車両構体の側壁1の車内側の面に固定されている。戸袋レール15は、その大部分が車両長手方向に沿って直線状に延びており、乗降口1aに近い方向の端部において車外側に屈曲している。
図6及び
図12に示すように、戸袋レール15は、下向きに開口した溝を有する。この溝に、ガイドローラ14が嵌め込まれている。戸袋レール15の溝の溝幅と、ガイドローラ14の直径はほぼ同じである。引戸3a、3bの開閉時には、ガイドローラ14は戸袋レール15の溝の側面に対して転がり接触する。
【0045】
戸先側ガイド機構12bは、乗降口1aの下縁を画定するクツズリ部9に設けられている。戸先側ガイド機構12bについて説明する前に、引戸3a、3bの詳細な構成について説明する。
【0046】
図7に示すように、引戸3a、3bは、それぞれ、戸本体31と、戸本体31の戸先に設けられた戸先弾性部材32と、戸本体31の底部に設けられた摺動部材33とを有する。戸本体31は、その車外側の側面の下端部に下部圧縮部材34を有する。下部圧縮部材34及び摺動部材33の詳細については後述する。
【0047】
戸先弾性部材32は、例えばゴムやシリコンなどの弾性変形可能な弾性体で形成されている。
図8に示すように、戸先弾性部材32の下端の高さは、戸本体31の下端の高さと同じである。また、
図1に示すように、戸先弾性部材32の上端の高さは、戸本体31の上端の高さと同じである。
図7及び
図9に示すように、戸先弾性部材32の下端部には、車外側に突出する突出部32aが形成されている。戸先弾性部材32の車外側の面は、鉛直方向全域にわたって、車両幅方向に対して直交している。
図9及び
図10(a)に示すように、突出部32aの先端は、車両幅方向に関して、下部圧縮部材34の車外側の先端(後述する突出部34aの先端)とほぼ同じ位置にある。また、戸先弾性部材32の上端部の車外側の面は、戸本体31の上端部の車外側の面とほぼ面一である。また、戸先弾性部材32は、弾性変形しやすいように鉛直方向に貫通する孔が形成されている。
【0048】
図10等に示すように、戸本体31の底部には、車両長手方向の全域にわたって溝35が形成されている。溝35の両側壁の先端の高さ(つまり、戸本体31の両側面の下端の高さ)は互いに異なっている。戸本体31の車内側の側面の下端の高さは、戸本体31の車外側の側面の下端の高さより高く、押圧部材21の弾性部材22の上端の高さよりも高い。
【0049】
摺動部材33は、戸本体31の溝35の戸先近傍に嵌め込まれている。摺動部材33は、金属で形成されている。摺動部材33は、戸本体31の下端より下方に突出している。
【0050】
図9等に示すように、摺動部材33の車外側の面のうち戸本体31の車外側の側面よりも下方の部分(すなわち溝35から外部に露出している部分)は、第1平面33aと、この第1平面33aの戸尻側の端部につながっている第1傾斜面33bとで構成されている。第1平面33a及び第1傾斜面33bは、水平方向に対して略直交している。第1平面33aは、車両長手方向に延びている。第1傾斜面33bは、乗降口1aの車両長手方向中央部に近づくほど車外側に向かうように車両長手方向に対して傾斜している。
【0051】
摺動部材33の車内側の面のうち戸本体31の車内側の側面よりも下方の部分(すなわち溝35から外部に露出している部分)は、第2平面33cと、この第2平面33cの戸先側の端部につながっている第2傾斜面33dとで構成されている。第2平面33c及び第2傾斜面33dは、水平方向に対して略直交している。第2平面33cは、第1平面33aと平行に延びている。第2傾斜面33dは、第1傾斜面33bと同様に、乗降口1aの車両長手方向中央部に近づくほど車外側に向かうように車両長手方向に対して傾斜している。
【0052】
図9等に示すように、クツズリ部9は、床板10と、2本のレール部材20と、押圧部材21とで構成されている。
図10等に示すように、床板10には、車両長手方向に沿って直線状に延びる凹部11が形成されている。床板10の車内側の端部は、車内の床板(図示省略)とほぼ同じ高さに位置している。
【0053】
図11に示すように、凹部11の車両長手方向の端部は、車両長手方向に関して乗降口1aの外側に位置している。凹部11内には、戸本体31及び戸先弾性部材32の下端部が配置される。凹部11の車幅方向の両側面の上端の高さは、ほぼ同じであって、床板10の車内側の端部の高さ(車内の床板の高さ)より若干高い。凹部11の底面は、車内の床板(図示省略)の上面より下方に位置している。
【0054】
2本のレール部材20と押圧部材21は、凹部11内に設置されている。押圧部材21は、乗降口1aの車両長手方向中央部(凹部11の車両長手方向中央部)に配置されている。2本のレール部材20は、車両長手方向に関して押圧部材21の両側に配置されている。
【0055】
図8に示すように、レール部材20は、凹部11の車両長手方向の一端から乗降口1aの車両長手方向中央部の近傍まで車両長手方向に延びている。レール部材20は金属で形成されている。
図10(c)及び
図10(d)に示すように、レール部材20は、凹部11の車外側の側面に沿って配置されている。レール部材20の上端の高さは、凹部11の車外側の側面の上端の高さよりも低い。レール部材20は、車両長手方向に直交する断面形状が略四角形状である。
図9等に示すように、レール部材20の幅(車両幅方向の長さ)は、押圧部材21に近い方の端部において先端に向かうにつれて小さくなっており、その他の部分では一定である。
【0056】
レール部材20の車内側の面は、直線ガイド面20aと、傾斜ガイド面20bで構成されている。直線ガイド面20a及び傾斜ガイド面20bは、水平方向に対して略直交している。直線ガイド面20aは、車両長手方向に沿って直線状に延びている。傾斜ガイド面20bは、直線ガイド面20aの押圧部材21に近い方の端部とつながっており、乗降口1aの車両長手方向中央部に近づくほど車外側に向かうように車両長手方向に対して傾斜している。
【0057】
図10(a)及び
図10(b)に示すように、押圧部材21は、凹部11の車内側の側面に沿って配置されている。
図9等に示すように、押圧部材21は、上方から見て、車外側に先細りの略台形状に形成されている。押圧部材21は、例えばゴムやシリコンで形成された弾性変形可能な弾性部材22と、弾性部材22よりも硬質であって、例えば金属等で形成された硬質部材23とからなる。硬質部材23は、凹部11の車内側の側面に沿って配置されており、弾性部材22は、硬質部材23より車外側に配置されている。硬質部材23の上端の高さは、凹部11の車内側の側面の上端の高さとほぼ同じであって、弾性部材22の上端の高さは、硬質部材23の上端の高さよりも若干低い。
【0058】
押圧部材21の車両長手方向両側には、傾斜ガイド面21aが形成されている。傾斜ガイド面21aは、押圧部材21の車両長手方向中央部に近づくほど車外側に向かうように車両長手方向に対して傾斜している。傾斜ガイド面21aは、硬質部材23で形成された部分と、弾性部材22で形成された部分とを有する。傾斜ガイド面21aは、レール部材20の傾斜ガイド面20bと略平行である。また、傾斜ガイド面21aは、水平方向に対して略直交している。
【0059】
凹部11の車内側の側面のうち、車両長手方向に関して押圧部材21が配置されていない領域を直線ガイド面11aとする。凹部11の直線ガイド面11aと、レール部材20の直線ガイド面20aと、レール部材20の傾斜ガイド面20bと、押圧部材21の傾斜ガイド面21aとによって、戸尻側ガイド機構12bが構成されている。
【0060】
凹部11の直線ガイド面11aとレール部材20の直線ガイド面20aの離間距離は、摺動部材の第1平面33aと第2平面33cの離間距離(車両幅方向の離間距離)とほぼ同じである。また、傾斜ガイド面20b、21aの傾斜方向に直交する方向に関して、レール部材20の傾斜ガイド面20bと押圧部材21の傾斜ガイド面21aの離間距離D(
図13参照)は、第1傾斜面33bと第2傾斜面33dの最大離間距離とほぼ同じである(
図9参照)。
【0061】
図13に示すように、引戸3a、3bが開位置のとき、引戸3a、3bの摺動部材33は、凹部11の車両長手方向端部に位置しており、摺動部材33の第1平面33a及び第2平面33cは、凹部11の直線ガイド面11aとレール部材20の直線ガイド面20aに接している。
【0062】
エアシリンダ51の駆動により引戸3aを開位置から閉位置へと移動させるときには、まず、
図14及び
図15に示すように、引戸3a、3bの摺動部材33の第1平面33a及び第2平面33cが、直線ガイド面11a、20aに対して摺動する。そして、引戸3a、3bが閉位置に至る直前で、引戸3a、3bの摺動部材33の第1傾斜面33b及び第2傾斜面33dが、レール部材20の傾斜ガイド面20bと押圧部材21の傾斜ガイド面21aに接触し、その後、
図9及び
図10に示すように、引戸3a、3bが閉位置になるまで、第1傾斜面33b及び第2傾斜面33dは、傾斜ガイド面20b及び傾斜ガイド面21aに対して摺動する。
【0063】
このように、引戸3a、3bを開位置から閉位置へと移動させる際には、引戸3a、3bは、上述した上部ガイド機構6だけでなく、下部ガイド機構12(戸尻側ガイド機構12a及び戸先側ガイド機構12b)によっても、車両長手方向に案内されると共に、閉位置に至る直前で車外側に案内される。
【0064】
また、戸本体31は、その車外側の側面の下端部に下部圧縮部材34を有する。
図8(a)に示すように、下部圧縮部材34は、戸本体31の戸先から戸尻まで車両長手方向に延びている。下部圧縮部材34は、例えばゴムやシリコンなどの弾性変形可能な弾性体で形成されている。下部圧縮部材34の車両長手方向に直交する断面形状は、車両長手方向にわたって一定である。
図10(b)等に示すように、下部圧縮部材34の下端部には、車外側に向かって突出する突出部34aが形成されている。下部圧縮部材34の突出部34aは、鉛直方向に関して、凹部11の車外側の側面の上端より下方で、且つ、レール部材20より上方に位置している。
【0065】
凹部11の車外側の側面のうち、レール部材20より上方の部分を当接面11b(下部当接部)とする。当接面11bは、下部圧縮部材34の突出部34aと対向する。下部圧縮部材34の突出部34aは、引戸3a、3bが開位置のときに、凹部11の当接面11bに対して車両幅方向に離間し(
図13、
図14、
図15参照)、引戸3a、3bが閉位置のときに、凹部11の当接面11bと接触する(
図10参照)。
【0066】
図1に示すように、車両構体の側壁1の車内側の面には、乗降口1aの上縁に沿って直線状に延びる上部圧縮部材7が設けられている。上部圧縮部材7は、例えばゴムやシリコンなどの弾性変形可能な弾性体で形成されている。上部圧縮部材7は、引戸3a、3bの上端部と対向する高さに配置されている。上部圧縮部材7は、閉位置の引戸3aの戸尻近傍の位置から引戸3bの戸尻近傍の位置まで車両長手方向に延びている。
【0067】
上部圧縮部材7の車両長手方向に直交する断面形状は、車両長手方向にわたって一定である。
図3(b)及び
図5に示すように、上部圧縮部材7の下端部には、引戸3a、3b側(車内側)に向かって突出する突出部7aが形成されている。突出部7aの内部には、弾性変形しやすくするために車両長手方向に貫通する孔が形成されている。
【0068】
上部圧縮部材7の突出部7aは、引戸3a、3bが開位置のときに、戸本体31及び戸先弾性部材32の車外側の側面に対して車両幅方向に離間し(
図3参照)、引戸3a、3bが閉位置のときに、戸本体31及び戸先弾性部材32の車外側の側面と接触する(
図5参照)。上部圧縮部材7は、本発明の上部当接部を構成している。
【0069】
図1及び
図8に示すように、車両構体の側壁1の車内側の面には、乗降口1aの両側縁に沿って直線状に延びる2つの側部圧縮部材8が設けられている。2つの側部圧縮部材8の形状及び配置位置は、乗降口1aの車両長手方向中央部を通る直線を中心として対称である。
【0070】
側部圧縮部材8は、上部圧縮部材7と同様に、例えばゴムやシリコンなどの弾性変形可能な弾性体で形成されている。側部圧縮部材8は、閉位置の戸本体31の戸先近傍と対向する位置に配置されている。側部圧縮部材8は、戸本体31の上端の高さから後述する下部圧縮部材34の上端の高さまで鉛直方向に延びている。
【0071】
側部圧縮部材8の鉛直方向に直交する断面形状は、鉛直方向にわたって一定である。
図11に示すように、側部圧縮部材8の鉛直方向に直交する断面形状は、上部圧縮部材7の車両長手方向に直交する断面形状とほぼ同じである。側部圧縮部材8は、車両幅方向に関して乗降口1aに近い方の端部に、引戸3a、3b側(車内側)に向かって突出する突出部8aを有する。
【0072】
図3(b)及び
図5に示すように、側部圧縮部材8の突出部8aの突出先端は、車両幅方向に関して、上部圧縮部材7の突出部7aの突出先端と同じ位置にある。したがって、側部圧縮部材8の突出部8aは、引戸3a、3bが開位置のときに、戸本体31の車外側の側面に対して車両幅方向に離間し(
図3及び
図13参照)、引戸3a、3bが閉位置のときに、戸本体31の車外側の側面と接触する(
図5、
図11、
図12参照)。側部圧縮部材8は、本発明の側部当接部を構成している。
【0073】
引戸3aが閉位置のときには、
図9、
図10、
図11及び
図12に示すように、引戸3a、3bの車外側の側面の下端部の車両長手方向全域(つまり、戸本体31の下部圧縮部材34の突出部34aと戸先弾性部材32の突出部32a)が、凹部11の当接面11bに押し付けられる。また、
図5に示すように、戸本体31の車外側の側面の上端部の車両長手方向のほぼ全域と、戸先弾性部材32の車外側の側面の上端部の車両長手方向の全域が、上部圧縮部材7の突出部7aに押し付けられる。また、
図5、
図11及び
図12に示すように、戸本体31の車外側の側面の戸尻側の端部の鉛直方向のほぼ全域が、側部圧縮部材8の突出部8aに押し付けられる。
【0074】
以上説明した本実施形態の鉄道車両の引戸構造100は、以下の特徴を有する。
【0075】
本実施形態では、引戸3a、3bが閉位置のときに、戸本体31の側面の下端部が、乗降口1aの下縁に沿って設けられた当接面11b(下部当接部)に接触するため、走行時に発生する音が引戸3a、3bの下端部と乗降口1aの下縁との間から車内に侵入するのを抑制できる。
また、引戸3a、3bは閉位置に至る直前で上部ガイド機構6と下部ガイド機構12とによって車外側に案内されるため、戸本体31を当接面11bに押し付けることができる。
また、戸本体31の当接面11bと接触する部分は、弾性変形可能な下部圧縮部材34で構成されているため、戸本体31を下部当接部に押し付けてより確実に密着させることができる。その結果、走行音の侵入をより確実に抑制できる。
【0076】
また、本実施形態では、戸先弾性部材32の当接面11bと向かい合う面(突出部32aの先端面)が、車両幅方向に直交しており、引戸3a、3bが閉位置のとき、戸先弾性部材32の突出部32aが当接面11bに接触する。そのため、走行時に発生する音が引戸3a、3bの下端部と乗降口1aの下縁との間から車内に侵入するのをより抑制できる。
また、戸先弾性部材32は、弾性体で構成されているため、戸先弾性部材32を下部当接部材に押し付けてより確実に密着させることができる。その結果、走行音の侵入をより確実に抑制できる。
【0077】
また、本実施形態では、引戸3a、3bが閉位置のときに、戸本体31の側面の上端部が、乗降口1aの上縁に沿って設けられた上部圧縮部材7(上部当接部)に接触するため、走行時に発生する音が引戸3a、3bの上端部と乗降口1aの上縁との間から車内に侵入するのを抑制できる。
また、引戸3a、3bは閉位置に至る直前で上部ガイド機構6と下部ガイド機構12とによって車外側に案内されるため、戸本体31を上部圧縮部材7(上部当接部)に押し付けることができる。
また、戸本体31と接触する上部圧縮部材7は弾性変形可能であるため、戸本体31を上部圧縮部材7に押し付けてより確実に密着させることができる。その結果、走行音の侵入をより確実に抑制できる。
【0078】
また、本実施形態では、引戸3a、3bが閉位置のとき、戸先弾性部材32の車内側の面の上端部が、上部圧縮部材7と接触するため、走行時に発生する音が引戸3a、3bの上端部と乗降口1aの上縁との間から車内に侵入するのをより抑制できる。
【0079】
また、本実施形態では、引戸3a、3bが閉位置のときに、戸本体31の側面の戸尻側端部が、乗降口1aの側縁に沿って設けられた側部圧縮部材8(側部当接部)に接触するため、走行時に発生する音が引戸3a、3bの戸尻側端部と乗降口1aの側縁との間から車内に侵入するのを抑制できる。
また、引戸3a、3bは閉位置に至る直前で上部ガイド機構6と下部ガイド機構12とによって車外側に案内されるため、戸本体31を側部圧縮部材8(側部当接部)に押し付けることができる。
戸本体31と接触する側部圧縮部材8は弾性変形可能であるため、戸本体31を側部圧縮部材8に押し付けてより確実に密着させることができる。その結果、走行音の侵入をより確実に抑制できる。
【0080】
仮に、引戸が閉位置に至る直前で車内側に案内されるように構成されている場合、閉位置の引戸を車内側から押圧すると、引戸が開く方向に動くため、引戸をより強固に閉じる必要がある。一方、本実施形態では、引戸3a、3bが閉位置に至る直前で車外側に案内されるように構成されているため、閉位置の引戸3a、3bを車内側から押したとき、さらに引戸3a、3bが閉まる方向に移動する。したがって、引戸3a、3bをより強固に閉じるための特別な構造を考慮する必要がない。
【0081】
また、引戸を閉位置に至る直前で車内側に移動させる場合であって、引戸が車両構体の車外側に配置される場合には、引戸が車内の乗客から押されたときに引戸を受け止めるものが必要になり、引戸構造が複雑になる。また、引戸を閉位置に至る直前で車内側に移動させる場合であって、引戸が車両構体の車内側に配置される場合には、引戸が車内の乗客から押されたときにその押圧力を内装材によって受けることになる。一方、本実施形態では、引戸3a、3bは車両構体の車内側に配置されるため、引戸3a、3bが車内の乗客から受ける押圧力は、車両構体によって受けることができる。
【0082】
また、本実施形態では、車両構体の車内側に配置される引戸3a、3bを閉位置に至る直前で車外側に移動させるため、車両構体の車内側に配置される引戸を閉位置に至る直前で車内側に移動させる場合に比べて、車内空間を広く確保できる。
【0083】
また、引戸を閉位置に至る直前で車内側に移動させて、引戸の側面の戸尻側端部を内装材に接触させる場合、乗降口の側縁と引戸の側面の戸尻側端部との間に隙間が生じるため、走行時に生じる音が戸袋空間内に侵入する。戸袋空間内に侵入した音は、内装材の隙間から車内に侵入しやすい。また、戸袋空間内に侵入した音によって内装材が振動して、振動放射音が車内に広がる恐れがある。一方、本実施形態では、引戸3a、3bが閉位置のときに、引戸3a、3bの側面の戸尻側端部が乗降口の縁部に設けられた側部圧縮部材8に接触するため、戸袋空間内に走行音が侵入することを防止できる。
【0084】
また、引戸を閉位置に至る直前で車内側に移動させて、引戸の側面の戸尻側端部を内装材に接触させる場合、乗降口の側縁と引戸の側面の戸尻側端部との隙間から、戸袋空間内に風、雨水、雪などが侵入しやすい。一方、本実施形態では、引戸3a、3bの側面の戸尻側端部が乗降口1aの縁部に設けられた側部圧縮部材8に接触するため、戸袋空間に風等が侵入するのを防止できる。
【0085】
また、本実施形態では、引戸3a、3bの上端部と係合する上部ガイド機構6だけでなく、引戸3a、3bの下端部と係合する下部ガイド機構12によっても、開閉時に引戸3a、3bを案内するようになっている。そのため、引戸3a、3bの開閉時に引戸3a、3bの車両構体への干渉を防止できると共に、引戸3a、3bが乗客に押された場合の開閉不良を防止できる。
【0086】
また、本実施形態では、引戸3a、3bの摺動部材33は、2つの直線ガイド面11a、20a又は2つの傾斜ガイド面20b、21aに挟まれて車両幅方向の移動が規制される。そのため、開閉時の引戸3a、3bの車両幅方向のガタつきを防止できる。また、引戸3a、3bが閉位置のときに車内の乗客に押されたり風圧を受けることによる引戸3a、3bの車両幅方向のガタつきを防止できる。
また、引戸3a、3bが閉位置のときに、摺動部材33が戸先側ガイド機構12bの2つの傾斜ガイド面20b、21aで挟まれるため、戸本体31の下端部を下部当接部に押し付けることができる。したがって、戸本体31を側部当接部により確実に密着させることができ、走行音の侵入をより確実に防止できる。
【0087】
また、本実施形態では、ガイドローラ68、72と、ガイド板62、63のガイド溝62a、63aとの係合によって、引戸3a、3bの上部の戸先側端部および戸尻側端部が拘束されている。また、ガイドローラ14と戸袋レール15との係合によって、引戸3a、3bの下部の戸尻側端部が拘束されている。そのため、摺動部材33を戸本体31の底部の戸先近傍に設けて、引戸3a、3bの下部の戸先側端部を拘束していることにより、引戸3a、3bのガタつきをより確実に防止できる。
【0088】
また、本実施形態では、押圧部材21の傾斜ガイド面21aのうち、引戸3a、3bが閉位置のときに摺動部材33の第2傾斜面33dと接触する部分は、弾性部材22で構成されている。そのため、引戸3a、3bを閉位置に移動させたときに、例えば金属などの硬質な部材同士が接触したときの音の発生を防止できる。
【0089】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0090】
上記実施形態では、戸先弾性部材32は略直方体状であって、戸先弾性部材32の戸先は凹凸のない平坦状に形成されているが、一方の戸先弾性部材32の戸先面に凸部を形成し、他方の戸先弾性部材32の戸先面にこの凸部が嵌合可能な凹部を形成してもよい。
【0091】
上記実施形態では、戸先弾性部材32は、鉛直方向の全域にわたって車外側の面が車両幅方向に直交しており、引戸3a、3bが閉位置のとき、戸先弾性部材32の車両長手方向の全域が下部当接部に接触するようになっているが、戸先弾性部材32は、その下端が戸本体31の下端と同じ高さであれば、上記実施形態以外の構成であってもよい。
【0092】
例えば、戸先弾性部材32は、下端部(詳細には当接面11bと同じ高さの領域)と、上端部(上部圧縮部材7と同じ高さの領域)だけが、上記実施形態と同様の形状であって、それ以外の部分は戸先側の端部が円弧状に形成されていてもよい。この変更例では、引戸3a、3bが閉位置のとき、上記実施形態と同様に、戸先弾性部材32の下端部と上端部を、凹部11の当接面11bと車両構体の側壁1に接触させることができる。
また、例えば、戸先弾性部材32は、鉛直方向の全域にわたって戸先側の端部が円弧状に形成されていてもよい。
【0093】
上記実施形態では、戸本体31に下部圧縮部材34が設けられているが、戸本体31に下部圧縮部材34を設ける代わりに、凹部11の当接面11bに下部圧縮部材を取り付けて、引戸が閉位置のときにこの下部圧縮部材と戸本体31の側面の下端部とを接触させてもよい。この場合、下部圧縮部材が、本発明の下部当接部を構成する。また、戸本体31と凹部11の当接面11bの両方に下部圧縮部材を設けてもよい。但し、戸本体31にのみ下部圧縮部材を設けた方が、乗客に踏まれることによる破損がないため好ましい。
【0094】
上記実施形態では、車両構体の側壁1に上部圧縮部材7が設けられているが、車両構体の側壁1に上部圧縮部材7を設ける代わりに、戸本体31の側面の上端部に上部圧縮部材を設けて、引戸が閉位置のときに戸本体31の上部圧縮部材と車両構体の側壁1とを接触させてもよい。この場合、車両構体の側壁1が、本発明の上部当接部を構成する。また、車両構体の側壁1と戸本体31の側面の両方に上部圧縮部材を設けてもよい。
【0095】
上部圧縮部材7は設けなくてもよい。また、上部圧縮部材7を配置する代わりに、従来の引戸構造で用いられているモケット織物からなる風止め部材を配置してもよい。
【0096】
上記実施形態では、車両構体の側壁1に側部圧縮部材8が設けられているが、車両構体の側壁1に側部圧縮部材8を設ける代わりに、戸本体31の側面の戸尻側端部に側部圧縮部材を設けて、引戸3a、3bが閉位置のときに戸本体31の側部圧縮部材と車両構体の側壁1とを接触させてもよい。この場合、車両構体の側壁1が、本発明の側部当接部を構成する。また、車両構体の側壁1と戸本体31の側面の両方に側部圧縮部材を設けてもよい。
【0097】
側部圧縮部材8は設けなくてもよい。また、側部圧縮部材8を配置する代わりに、従来の引戸構造で用いられているモケット織物からなる風止め部材を配置してもよい。
【0098】
上記実施形態では、床板10に凹部11が形成されており、この凹部11の両側面が、直線ガイド面11aと当接面11b(下部当接部)を構成している。そして、凹部11内に、直線ガイド面20a及び傾斜ガイド面20bを有するレール部材20と、傾斜ガイド面21aを有する押圧部材21とが配置されているが、床板10に凹部11を設けずに戸先側ガイド機構12bを構成してもよい。
例えば
図16に示すように、平坦状の床板210に、下部圧縮部材34と接触する下部当接部材214と、直線ガイド面213aを構成するレール部材213とを配置し、この下部当接部材214とレール部材213との間に、上記実施形態のレール部材20と押圧部材21を配置してもよい。なお、
図16(a)は
図9のC−C線断面図に対応する図であって、
図16(b)は
図9のD−D線断面図に対応する図である。
【0099】
上記実施形態では、摺動部材33は、戸本体31の底部に形成された溝35の戸先近傍に嵌め込まれているが、摺動部材33は、戸本体31の底部であれば、戸先近傍以外の位置に配置されていてもよい。また、1つの戸本体31に対して、2つ以上の摺動部材33が車両長手方向に並んで設けられていてもよい。但し、この場合、引戸が閉位置に至る直前で各摺動部材が車外側に案内されるように下部ガイド機構を構成する必要がある。摺動部材を引戸の戸尻近傍と戸先近傍に設ける場合、戸尻ガイド機構12aは設けなくても良い。
【0100】
上記実施形態では、戸本体31の底部に摺動部材33が設けられており、引戸3a、3bの開閉時には、この摺動部材33の平面33a、33c及び傾斜面33b、33dが、直線ガイド面11a、20a及び傾斜ガイド面20b、21aと摺動するようになっているが、戸本体31の底部に、鉛直方向の軸回りに回転可能なガイドローラを設けて、引戸3a、3bの開閉時に、このガイドローラを直線ガイド面11a、20a及び傾斜ガイド面20b、21aに対して転がり接触させてもよい。
【0101】
上記実施形態では、摺動部材33の第1平面33aと第2平面33cの離間距離(車両幅方向の離間距離)は、凹部11の直線ガイド面11aとレール部材20の直線ガイド面20aの離間距離とほぼ同じであるが、直線ガイド面11aと直線ガイド面20aの離間距離よりも小さくてもよい。この変更例によると、直線ガイド面11a、20aによって、摺動部材33の車両幅方向の動きを完全に規制することはできないものの、引戸3a、3bの開閉時に引戸3a、3bの車両構体又は内装材への干渉を防止できると共に、引戸3a、3bが乗客に押された場合の開閉不良を防止することができる。
【0102】
上記実施形態では、傾斜ガイド面20b、21aの傾斜方向に直交する方向に関して、摺動部材33の第1傾斜面33bと第2傾斜面33dの最大離間距離は、傾斜ガイド面20bと傾斜ガイド面21aの離間距離D(
図13参照)とほぼ同じであるが(
図9参照)、傾斜ガイド面20bと傾斜ガイド面21aの離間距離よりも小さくてもよい。この変更例によると、傾斜ガイド面20b、21aによって、摺動部材33の車両幅方向の動きを完全に規制することはできないものの、引戸3a、3bの開閉時に引戸3a、3bの車両構体又は内装材への干渉を防止できると共に、引戸3a、3bが乗客に押された場合の開閉不良を防止することができる。
【0103】
戸先側ガイド機構12bは設けなくてもよい。つまり、摺動部材33、レール部材20、及び押圧部材21を設けなくてもよい。この変更例では、例えば
図17に示すように、床板310に凹部311を形成し、引戸303bが閉位置のときに、この凹部311の車外側の側面311a(下部当接部)に戸本体331の下部圧縮部材34を接触させてもよい。また例えば
図18に示すように、平坦状の床板410に下部当接部材413を配置し、引戸303bが閉位置のときに、下部当接部材413に戸本体431の下部圧縮部材34を接触させてもよい。
【0104】
戸尻側ガイド機構12a、戸先側ガイド機構12bのいずれか一方だけを設けてもよい。また、戸尻側ガイド機構12a、戸先側ガイド機構12bの両方を設けなくてもよい。
【0105】
上記実施形態では、押圧部材21は、弾性部材22と硬質部材23で形成されているが、押圧部材21は、ゴムなどの弾性材料だけ、又は、金属などの硬質材料だけで形成されていてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、レール部材20は、全て金属で形成されているが、引戸3a、3bが閉位置のときに摺動部材33が接する部分(傾斜ガイド面20bの少なくとも一部分)が、弾性変形可能な弾性体で形成され、その他の部分が金属で形成されていてもよい。この変更例では、押圧部材21が金属だけで形成されていても、金属同士が接触したときの音の発生を防止できる。
【0107】
上記実施形態では、引戸3a、3bは閉位置に至る直前で車外側に移動するようになっているが、車内側に移動するようになっていてもよい。この変更例では、下部圧縮部材34は戸本体31の車内側の側面に設けられ、レール部材20は凹部11の車内側の側面に沿って配置され、押圧部材21は凹部11の車外側の側面に沿って配置される。また、この変更例では、凹部11の車内側の側面の上端部が、下部圧縮部材34と接触する当接面(下部当接部)を構成し、凹部11の車外側の側面が、摺動部材と摺動する直線ガイド面を構成する。また、この変更例では、側部圧縮部材8は、戸袋空間を構成する内装材2に取り付けられ、上部圧縮部材7は、乗降口1aの上方に位置する内装材(図示せず)に取り付けられる。
【0108】
上部ガイド機構6は、乗降口1aの上縁に沿って設けられ、2枚の引戸3a、3bの上端部と係合し、エアシリンダ51の駆動により引戸3a、3bを閉位置へと移動させるときに、引戸3a、3bを車両長手方向に案内すると共に、引戸3a、3bが閉位置に至る直前で引戸3a、3bを車両幅方向の一方側に案内する構成であれば、上記実施形態以外の構成であってもよい。
【0109】
駆動機構5は、上記実施形態と同様に引戸3a、3bを開閉できるものであれば、上記実施形態以外の構成であってもよい。