(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6400916
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/211 20140101AFI20180920BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20180920BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20180920BHJP
B23K 15/00 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
B23K26/211
B23K26/21 G
B23K26/21 W
B23K26/073
B23K15/00 501B
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-21735(P2014-21735)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-147237(P2015-147237A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海読 一正
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
(72)【発明者】
【氏名】今村 美速
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−510727(JP,A)
【文献】
特開2008−240979(JP,A)
【文献】
特開2011−173146(JP,A)
【文献】
特開平9−155548(JP,A)
【文献】
特開平11−90632(JP,A)
【文献】
特開平10−314933(JP,A)
【文献】
特開2010−94730(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0197135(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
B23K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料からなる第1部材と、前記第1部材と同種又は異種の金属材料からなる第2部材の少なくとも一方の溶接位置にエンボス状の凹部を形成する工程と、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方の凹部に溶加材を配置する工程と、
前記溶加材を配置する工程の前又は前記溶加材を配置する工程の後に、前記第1部材と前記第2部材とを重ね合わせて前記溶加材を挟み込んで重ね継手を形成する工程と、
前記第1部材と前記第2部材と前記溶加材に、前記第1部材側または前記第2部材側から前記溶加材が配置された凹部を照射位置として高エネルギービームを照射して、前記第1部材と前記第2部材と前記溶加材を、前記凹部が溶融金属となるように溶融させて、前記第1部材と前記第2部材とを溶接する工程と、
を有する接合体の製造方法。
【請求項2】
前記第1部材及び前記第2部材のいずれか一方又は両方を所定形状に成形する工程を有する請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
前記成形する工程の前又は前記成形する工程の後で、前記第1部材及び前記第2部材のうち少なくとも一方に前記凹部を形成する請求項2に記載の接合体の製造方法。
【請求項4】
前記成形する工程において、前記第1部材及び前記第2部材のうち少なくとも一方に前記凹部を形成する請求項2に記載の接合体の製造方法。
【請求項5】
前記高エネルギービーム溶接は、電子ビーム溶接又はレーザ溶接である請求項1〜4のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項6】
前記高エネルギービーム溶接はレーザ溶接であり、レーザをデフォーカス状態で照射する請求項5に記載の接合体の製造方法。
【請求項7】
前記高エネルギービーム溶接はレーザ溶接であり、リモート溶接を行う請求項5又は6に記載の接合体の製造方法。
【請求項8】
前記高エネルギービーム溶接はレーザ溶接であり、レーザ光を螺旋状、渦巻き状、円形状又は同心円状に照射する請求項5〜7のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高エネルギービーム溶接による接合体の製造方法
に関する。より詳しくは、電子ビーム溶接やレーザ溶接などの高エネルギービーム溶接により同種又は異種金属接合体を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム溶接やレーザ溶接などの高エネルギービーム溶接は、溶け込みが深く、溶接熱影響が非常に少ないことから、特に、自動車、鉄道車両及び船舶などの輸送機分野において注目されている。一方、高エネルギービーム溶接は、施工において溶接金属の凝固収縮量が大きい場合は、割れなどの溶接欠陥が発生することがあり、被溶接材に適合した溶接条件を設定する必要がある。
【0003】
そこで、従来、高エネルギービーム溶接を行う際には、レーザ光照射部にワイヤ状の溶加材を連続的に供給しながら溶接したり、溶融金属部を急激に冷やさないように冷却速度を制御したりすることにより、溶接欠陥の発生を防止している(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−225664号公報
【特許文献2】特表2008−501527号公報
【特許文献3】特開2011−67830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワイヤ状の溶加材を供給しながら溶接する方法は、溶接部にレーザ光を照射するための機構とは別に、ワイヤを供給するための機構が必要となるため、装置が煩雑化するという問題点がある。また、この溶接方法は、ワイヤ供給機構の構造上、レーザ光の照射速度と同等レベルまでワイヤ供給速度を上げることができず、溶接速度がワイヤ供給速度に依存するため、溶接速度を向上させることが難しい。
【0006】
同様に、溶接金属の冷却条件を制御する方法も、別途、溶融金属部の冷却速度を遅らせるための設備が必要となるため、装置が煩雑化すると共に、溶接速度の向上が難しいという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、装置を煩雑化せずに、溶接速度を高速化することが可能な接合体の製造方法
を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る接合体の製造方法は、金属材料からなる第1部材と、前記第1部材と同種又は異種の金属材料からなる第2部材の少なくとも一方の溶接位置にエンボス状の凹部を形成する工程と、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方の凹部に溶加材を配置する工程と、前記溶加材を配置する工程の前又は前記溶加材を配置する工程の後に、前記第1部材と前記第2部材とを重ね合わせて前記溶加材を挟み込んで重ね継手を形成する工程と、前記第1部材と前記第2部材と前記溶加材に、前記第1部材側または前記第2部材側から前記溶加材が配置された凹部を照射位置として高エネルギービームを照射して
、前記第1部材と前記第2部材
と前記溶加材を
、前記凹部が溶融金属となるように溶融させ
て、前記第1部材と前記第2部材とを溶接する工程と、を有する。
本発明の接合体の製造方法は、前記第1部材及び前記第2部材のいずれか一方又は両方を所定形状に成形する工程を有していてもよい。
その場合、前記成形する工程の前又は前記成形する工程の後で、前記第1部材及び前記第2部材のうち少なくとも一方に前記凹部を形成することができる。
又は、前記成形する工程において、前記第1部材及び前記第2部材のうち少なくとも一方に前記凹部を形成することもできる。
本発明の接合体の製造方法において、前記高エネルギービーム溶接は、例えば電子ビーム溶接又はレーザ溶接である。
そして、例えば前記高エネルギービーム溶接がレーザ溶接である場合、レーザをデフォーカス状態で照射することができる。
また、前記高エネルギービーム溶接がレーザ溶接である場合、リモート溶接を行ってもよい。
更に、前記高エネルギービーム溶接がレーザ溶接である場合は、レーザ光を螺旋状、渦巻き状、円形状又は同心円状に照射することができる。なお、ここでいう円形状は、真円状に限定されるものではなく、略円形状や楕円形状も含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被接合部材の溶接位置に溶加材が配置されているため、装置を煩雑化することなく、高速で高エネルギービーム溶接することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態の接合体の製造方法を示すフローチャート図である。
【
図2】A及びBは凹部形成方法を模式的に示す斜視図である。
【
図3】A〜Cは溶加材配置方法を模式的に示す断面図である。
【
図4】A〜Fは溶加材3の形態例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】A〜Cは重ね継手の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図6】A〜Cは溶接方法を模式的に示す断面図である。
【
図7】A〜Cは他の溶接方法を模式的に示す断面図である。
【
図8】ミラー・スキャン法によるリモート溶接方法の概要を示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態の第1変形例の接合体の製造方法を示すフローチャート図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る接合体の製造方法で形成される重ね継手の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係る接合体の製造方法について説明する。
図1は本実施形態の接合体の製造方法を示すフローチャート図である。
図1に示すように、本実施形態の接合体の製造方法では、凹部形成工程(ステップS1)と、溶加材配置工程(ステップS2)と、重ね継手形成工程(ステップS3)と、溶接工程(ステップS4)とを行う。
【0014】
[ステップS1:凹部形成工程]
図2A及び
図2Bは凹部形成方法を模式的に示す斜視図である。
図2A及び
図2Bに示すように、凹部形成工程では、金属材料からなる第1部材1及び第2部材2の少なくとも一方の溶接位置に、凹部4を形成する。凹部4の形状は、特に限定されるものではないが、例えば
図2Bに示すエンボス状の他、ビード状とすることもできる。
【0015】
また、第1部材1及び第2部材2に形成する凹部4の数は、溶接予定箇所の数に応じて適宜設定することができる。また、凹部4大きさ及び深さも、特に限定されるものではなく、溶加材3のサイズや溶接条件などに応じて適宜選択することができる。
【0016】
なお、第1部材1と第2部材2とは、同種の金属材料で形成されていてもよく、異種の金属材料で形成されていてもよい。また、第1部材1と第2部材2とが同種の金属材料で形成されている場合、これらは同一組成の金属材料であってもよく、同種であるが組成が異なる金属材料であってもよい。
【0017】
[ステップS2:溶加材配置工程]
図3A〜Cは溶加材配置方法を模式的に示す断面図である。
図3A〜
図3Cに示すように、溶加材配置工程では、第1部材1及び第2部材2の少なくとも一方の各凹部4に、それぞれ溶加材3を配置する。ここで、
図3には、各凹部4に溶加材3を1個ずつ配置する例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、凹部4に複数の溶加材3を配置してもよい。
【0018】
また、溶加材3の大きさ及び形状も、特に限定されるものではなく、照射されるビームの径及びパワーなどの溶接条件に応じて適宜選択することができる。
図4A〜Fは溶加材3の形態例を模式的に示す図である。本実施形態の被接合部材10では、
図4Aに示す円盤状の溶加材3aの他、
図4Bに示すような平板状の溶加材3b、
図4Cに示すような棒状又はワイヤ状の溶加材3cなどの使用することができる。また、
図4D〜Fに示すような溶加材3d〜3fの内部にフラックス8が充填されていてもよい。
【0019】
更に、溶加材3,3a〜3fや併用されるフラックス8の成分組成も、特に限定されるものではなく、第1部材1や第2部材2の材質などに応じて適宜設定することができる。例えば、第1部材1及び第2部材2がアルミニウム又はアルミニウム合金である場合、溶加材3,3a〜3fには、例えばJIS Z3232に規定されているA4043やA4047などのいわゆるA4000系合金(Al−Cu合金)材を使用することができる。また、フラックス8は、KF、AlF
3及びK
3AlF
6などのフッ素系化合物を主成分とするものが好ましく、これらの成分に加えて、CsF、CsAlF
4及びCsKAlFなどのセシウム化合物を含有するものがより好ましい。
【0020】
[ステップS3:重ね継手形成工程]
重ね継手形成工程では、第1部材1と第2部材2とを重ね合わせて重ね継手を形成する。
図5A〜Cは重ね継手の構成例を模式的に示す断面図である。本実施形態の接合体の製造方法では、第1部材1及び第2部材2のいずれか一方の凹部4に溶加材3が配置されていればよく、例えば
図5Aに示すように、凹部4に溶加材3が配置された第1部部材1に、凹部が形成されていない第2部材2を重ねることができる。
【0021】
また、
図5Bに示すように、第2部材2の凹部4に、溶加材3が配置された第1部部材1の凹部4を重ね合わせてもよい。更に、
図5Cに示すように、凹部4に溶加材3が配置された第1部部材1に、凹部が形成された第2部材2を、それぞれの凹部4で溶加材3を挟み込むように重ね合わせることもできる。
【0022】
[ステップS4:溶接工程]
溶接工程では、第1部材1と第2部材2とを高エネルギービーム溶接する。
図6及び
図7は溶接方法を模式的に示す断面図である。例えば
図5Aに示す重ね継ぎ手を溶接する場合は、
図6A〜Cに示すように、第2部材2側に高エネルギービーム5を照射し、第2部材2、溶加材3及び第1部材1を溶融させて(溶融金属6)、第2部材2から第1部材1にかけて溶接金属7が形成された接合体を得る。又は、
図7A〜Cに示すように、第1部材1側に高エネルギービーム5を照射し、第1部材1、溶加材3及び第2部材2を溶融させて(溶融金属6)、第1部材1から第2部材2にかけて溶接金属7を形成してもよい。
【0023】
ここで、高エネルギービーム溶接としては、例えば電子ビーム溶接やレーザ溶接を適用することができる。そして、レーザ溶接の場合、例えばレーザをデフォーカス状態で照射してもよい。これにより、ポロシティ及び割れの発生を低減することができる。
【0024】
また、レーザ溶接では、溶接予定箇所にレーザ光を螺旋状、渦巻き状、円形状又は同心円状に照射することもできる。ここでいう「円形状」には、真円状だけでなく、略円形状や楕円形状も含まれる。このようにレーザ光の照射位置を移動しながら溶接すると、溶接部における温度勾配を小さくすることができるため、凝固収縮量が少なくなり、割れの発生を更に低減することが可能となる。この場合、溶接方向は、右回り及び左回りのいずれでもよく、また、溶接開始位置も内側及び外側のいずれでもよい。
【0025】
更に、レーザ溶接の場合は、リモート溶接を適用することもできる。リモート溶接法は、焦点距離の長い集光光学系を用いて溶接する方法であり、ミラー・スキャン法とロボット・スキャン法がある。
図8はミラー・スキャン法によるリモート溶接方法の概要を示す図である。
図8に示すように、ミラー・スキャン法では、レーザ発振器40から出射されたレーザ光Lは、光ファイバーケーブル41を介してレーザ加工ヘッド50に導入される。
【0026】
レーザ加工ヘッド50の光学系は、例えば、凹レンズ51、集光レンズ52及びミラー53などで構成されており、導入されたレーザ光Lは、凹レンズ51で拡大され、集光レンズ52で集光された後、ミラー53で反射されて、溶接予定箇所に照射される。このミラー・スキャン法では、ミラー53の向きを調整することにより、レーザ照射位置を変更することができるため、高速でレーザ照射することが可能となる。
【0027】
本実施形態の接合体の製造方法は、前述したリモート溶接を適用することにより、溶接速度を更に向上させることができる。なお、リモート溶接の場合も、レーザ光を、溶加材や溶接部材に、デフォーカス状態で照射することができ、また、螺旋状、渦巻き状、円形状及び同心円状に照射することもできる。
【0028】
本実施形態の接合体の製造方法では、溶接位置に溶加材を配置しているため、溶接時に溶加材ワイヤを供給したり、溶融金属部の冷却速度を制御しなくても、溶接欠陥の発生を防止することができる。また、リモート溶接などの高速で高エネルギービームを照射することが可能な手法を利用することにより、高速で高エネルギービーム溶接することが可能となる。
【0029】
更に、溶接位置に凹部を設け、この凹部内に溶加材を配置しているため、溶加材を溶接位置に安定してかつ精度よく配置することができる。そして、本実施形態の接合体の製造方法は、溶加材3又は溶加材3が配置された凹部4をターゲットポインターとして利用することができるため、溶接開始時に行うビーム照射位置の設定が容易になる。
【0030】
(第1の実施形態の第1変形例)
次に、本発明の第1の実施形態の第1変形例に係る接合体の製造方法について説明する。
図9は本変形例の接合体の製造方法を示すフローチャート図である。前述した第1の実施形態の接合体の製造方法では、第1部材1又は第2部材2の凹部4に溶加材3を配置した後で、重ね継手を形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図7に示すように、重ね継手形成工程(ステップS12)の後で、溶加材配置工程(ステップS13)を行ってもよい。
【0031】
本変形例の接合体の製造方法は、
図5Bに示すような構成の重ね継手を形成する場合に有効である。そして、本変形例の接合体の製造方法においても、溶接位置に溶加材を配置しているため、装置を煩雑化せずに、溶接速度を高速化することが可能であり、更に、第1部材又は第2部材の凹部内に溶加材を配置しているため、溶加材を安定してかつ精度よく配置することができる。
【0032】
(第1の実施形態の第2変形例)
次に、本発明の第1の実施形態の第2変形例に係る接合体の製造方法について説明する。
図10は本変形例の接合体の製造方法で形成される重ね継手の分解斜視図である。本変形例の接合体の製造方法においては、前述した各工程に加えて、第1部材及び第2部材のいずれか一方又は両方を所定形状に成形する工程を行う。
【0033】
この成形工程は、前述した凹部形成工程の前に行っても、凹部形成工程の後に行ってもよい。又は、成形工程と凹部形成工程を同時に、即ち、第1部材及び第2部材を所定形状に形成する際に、併せて凹部を形成してもよい。これにより、製造工程を簡略化することができる。本変形例の接合体の製造方法においても、
図10に示すように、第1部材21及び第2部材21のうち少なくとも一方の凹部4に溶加材3を配置した後、重ね継手を形成し、溶接を行う。
【0034】
なお、本変形例における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。また、前述した第1の実施形態及びその変形例の接合体の製造方法では、溶加材3を配置する前、又は溶加材3の配置後溶接前に、第1部材1及び第2部材のいずれか一方又は両方に、フラックスを塗布することができる。その際、フラックスの塗布方法は、特に限定されるものではなく、スプレーや刷毛塗りなど、一般に用いられている方法を適用することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る被接合部材について説明する。本実施形態の被接合部材は、高エネルギービーム溶接に用いられるものであり、金属材料からなる第1部材には溶接位置に凹部が形成されており、この凹部内に、1又は2個以上の溶加材が配置されている。この溶加材の成分組成は、特に限定されるものではなく、被溶接部材の材質などに応じて適宜設定することができ、内部にフラックスが充填されていてもよい。
【0036】
本実施形態の被接合部材は、第1部材の少なくとも一部に、第2部材が重ね合わされ、重ね継手となっていてもよい。この場合、第1部材と第2部材とは、同種の金属材料で形成されていてもよく、異種の金属材料で形成されていてもよい。また、第1部材と第2部材とが同種の金属材料で形成されている場合、これらは同一組成の金属材料であってもよく、同種であるが組成が異なる金属材料であってもよい。更に、第1部材及び第2部材のいずれか一方又は両方が、各種形状に成形されていてもよい。
【0037】
以上詳述したように、本実施形態の被接合部材は、溶接位置に溶加材が配置されているため、ワイヤ供給機構や溶融金属部の冷却速度を制御するための装置を設けなくても、溶接欠陥の発生を防止することができる。
【0038】
また、本実施形態の被接合部材は、ワイヤ供給機構や溶融金属部の冷却速度制御が不要であるため、例えば、リモート溶接などの高速で高エネルギービームを照射することが可能な手法を利用することにより、高速で高エネルギービーム溶接することが可能となる。更に、本実施形態の被接合部材は、溶加材又は溶加材が配置された凹部がターゲットポインターとして機能するため、従来品に比べて、溶接開始時に行うビーム照射位置の設定が容易である。
【符号の説明】
【0039】
1、21 第1部材
2、22 第2部材
3、3a〜3f 溶加材
4 凹部
5 ビーム
6 溶融金属
7 溶接金属
8 フラックス
40 レーザ発振器
41 光ファイバーケーブル
50 レーザ加工ヘッド
51 凹レンズ
52 集光レンズ
53 ミラー
L レーザ光