(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、前記センサ容量の充放電と前記充放電に対応して前記積分容量へ加算される電荷の極性を反転させる動作を所定回数繰り返す毎に、前記積分容量を短絡して初期化する、
容量検出回路。
請求項1に記載される容量検出回路を複数個備え、前記複数個の容量検出回路のそれぞれが、タッチパネル上に配置された複数のセンサ容量に接続可能とされる、タッチ検出回路。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0020】
〔1〕<センサ容量の充電時と放電時の両方で積分動作する容量検出回路>
本願において開示される代表的な実施の形態は、積分容量(Cs1)を備え、センサ容量(Cxy)に接続可能な容量検出回路(10)であって、以下のように構成される。
【0021】
前記センサ容量を充放電可能であり、前記センサ容量を充放電するために入出力する電荷を前記積分容量に累積的に加算可能である。充放電に伴う前記電荷の移動方向に応じて、前記積分容量へ加算される電荷の極性を反転させる。
【0022】
これにより、単位時間当たりの積分信号量を増加させることができ、容量検出動作期間を短縮し、検出精度を向上することができる。
【0023】
〔2〕<充電と放電の繰り返し>
項1において、前記センサ容量の充放電と前記充放電に対応して前記積分容量へ加算される電荷の極性を反転させる動作を所定回数繰り返す毎に、前記積分容量を短絡して初期化する。
【0024】
これにより、積分容量の初期化から次の初期化までに行われる充充電回数と放電回数の和を積分回数とすることができ、充電または放電の一方のみで積分を行う積分回路と比較して、積分信号量を倍増させることができる。
【0025】
〔3〕<Dual Edge type FIR+IIR>
項2において、スイッチトキャパシタで構成されるIIR(Infinite Impulse Response)フィルタ(14)をさらに備え、前記センサ容量の充放電と前記充放電に対応して前記積分容量へ加算される電荷の極性を反転させる動作を所定回数繰り返す毎に、前記積分容量が蓄積する電荷を前記IIRフィルタに供給し、前記積分容量を短絡して初期化する。
【0026】
これにより、前記積分容量を含む初段の回路を、正極方向の積分動作時と負極方向の積分動作時の両方でサンプリングを行うFIR(Finite Impulse Response)フィルタとして動作させることができる。FIRフィルタの単位時間当たりのサンプリング回数を従来よりも増やすことができるので、ノイズ抑圧特性を向上する周波数特性を持たせることができる。さらに後段に上述のように動作するIIRフィルタを設けることにより、FIRフィルタの零点とIIRフィルタの極を一致させ、より効果的なノイズ抑圧特性を持たせることができる。
【0027】
〔4〕<タッチ検出回路>
項1から項3のうちのいずれか1項に記載される容量検出回路を複数個(10_1〜10_n)備え、前記複数個の容量検出回路のそれぞれが、タッチパネル(1)上に配置された複数のセンサ容量に接続可能とされる、タッチ検出回路(3)を構成する。
【0028】
これにより、静電容量方式のタッチパネルにおけるセンサ容量の変化を検出するときに、検出動作期間を短縮し、検出精度を向上することができる。
【0029】
〔5〕<タッチコントローラIC>
項4に記載されるタッチ検出回路(3)は、単一半導体基板上に形成される、半導体集積回路(101,102)である。
【0030】
これにより、検出動作期間が短かく検出精度が高いタッチ検出回路(3)を備える、タッチパネルコントローラICが提供される。
【0031】
〔6〕<表示ドライバ内蔵タッチコントローラIC>
項5において、前記半導体集積回路(101,102)は、前記タッチパネルと重ね合せて構成される表示パネル(2)に接続されて前記表示パネルを駆動し制御可能な表示駆動回路(4)を、さらに前記半導体基板上に備える。
【0032】
これにより、表示パネル(2)とタッチパネル(1)が積層され一体として構成された表示・タッチパネルに接続される、表示パネルコントローラ(4)とタッチパネルコントローラ(3)とが集積されたIC(101,102)が提供され、表示駆動とタッチセンス制御を互いに連携させることが容易になる。特に、表示駆動とタッチ検出を時分割で行うために、タッチ検出期間が短縮された場合にも、タッチ検出精度を維持または向上することができる。
【0033】
〔7〕<センサ容量の充電時と放電時の両方で積分動作する容量検出回路>
本願において開示される代表的な実施の形態は、センサ容量(Cxy)に接続可能な容量検出回路(10)であって、以下のように構成される。
【0034】
第1演算増幅器(AMP1)と、前記第1演算増幅器の第1入力端子と出力端子との間に、接続方向を反転可能に接続される積分容量(Cs1)と、前記センサ容量と前記第1演算増幅器の前記第1入力端子との間に接続される入力スイッチ(S2)と備える。
【0035】
前記容量検出回路は、前記センサ容量を初期電位(Vcharge)に充電し、前記積分容量を短絡して初期化する、初期化期間(t0〜t1)を有し、前記初期化期間の後、前記入力スイッチを閉じる。
【0036】
前記容量検出回路は、前記第1演算増幅器の第2入力端子に前記初期電位よりも高い第1電位(VHSP+ΔV)を印加する第1期間(t3〜t5,t7〜t9,t11〜t13)と、前記第1演算増幅器の前記第2入力端子に前記初期電位よりも低い第2電位(VHSP)を印加し、且つ、前記積分容量の接続方向を前記第1期間と反転させる、第2期間(t5〜t7,t9〜t11,t13〜)とを、所定回数繰り返す。
【0037】
これにより、単位時間当たりの積分信号量を増加させることができ、容量検出動作期間を短縮し、検出精度を向上することができる。
【0038】
〔8〕<Dual Edge type FIR+IIR+積分器>
項7において、前記容量検出回路は、前記第1演算増幅器の出力にサンプルホールド回路を介して接続されるIIRフィルタ(14)を、さらに備える。
【0039】
前記容量検出回路は、前記第1期間と前記第2期間とを前記所定回数繰り返す毎に前記初期化期間を設け、前記初期化期間に前記第1演算増幅器の出力を、前記サンプルホールド回路を介して前記IIRフィルタに転送する。
【0040】
これにより、項3と同様に、前記第1演算回路と前記積分容量による初段の回路を、正極方向の積分動作時と負極方向の積分動作時の両方でサンプリングを行うFIRフィルタとして動作させることができ、ノイズ抑圧特性を向上することができる。後段のIIRフィルタと組み合わせることにより、ノイズ抑圧特性をさらに向上させることができる。
【0041】
〔9〕<タッチ検出回路>
項7または項8に記載される容量検出回路を複数個(10_1〜10_n)備え、前記複数個の容量検出回路のそれぞれが、タッチパネル(1)上に配置された複数のセンサ容量に接続可能とされる、タッチ検出回路(3)を構成する。
【0042】
これにより、静電容量方式のタッチパネルにおけるセンサ容量の変化を検出するときに、タッチ検出動作期間を短縮し、検出精度を向上することができる。
【0043】
〔10〕<タッチコントローラIC>
項8において、前記半導体集積回路(101,102)は、前記タッチパネルと重ね合せて構成される表示パネル(2)に接続されて前記表示パネルを駆動し制御可能な表示駆動回路(4)を、さらに前記半導体基板上に備える。
【0044】
これにより、検出動作期間が短かく検出精度が高いタッチ検出回路を備える、タッチパネルコントローラICが提供される。
【0045】
〔11〕<表示ドライバ内蔵タッチコントローラIC>
項10において、前記半導体集積回路(101,102)は、前記タッチパネルと重ね合せて構成される表示パネル(2)に接続されて前記表示パネルを駆動し制御可能な表示駆動回路(4)を、さらに前記半導体基板上に備える。
【0046】
これにより、表示パネルとタッチパネルが積層され一体として構成された表示・タッチパネルに接続される集積されたICが提供され、表示駆動とタッチセンス制御を互いに連携させることが容易になる。特に、表示駆動とタッチ検出を時分割で行うために、タッチ検出期間が短縮された場合にも、検出精度を維持または向上することができる。
【0047】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0048】
〔実施形態1〕
図1には本発明が適用される表示及び入力装置100の全体的な構成が例示される。同図に示される表示及び入力装置100は本発明に係る電子機器の一例であり、例えばPDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話機などの携帯端末の一部を構成し、タッチパネル(TP)1、表示パネル(DP)2、タッチパネルコントローラ(TPC)3、表示パネルコントローラ(DPC)4、サブプロセッサ(SMPU)5、及びホストプロセッサ(HMPU)6を備える。タッチパネルコントローラ3及び表示パネルコントローラ4、更に必要に応じてサブプロセッサ5を含めて、1個の半導体チップ上に形成し、又は例えばマルチチップモジュールとして1個のパッケージに搭載して、単一の半導体装置(IC)101または102として実現することができる。半導体装置(IC)101または102は、特に制限されないが、例えば公知のCMOSFET(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)LSI(Large Scale Integrated circuit)の製造技術を用いて、シリコンなどの単一半導体基板上に形成される。タッチパネルコントローラ3及び表示パネルコントローラ4を1チップのIC101として実装することにより、表示パネル2とタッチパネル1が積層され一体として構成された、例えばインセルタイプの表示・タッチパネルに接続されるときに、表示駆動とタッチセンス制御を互いに連携させることが容易になる。また、さらにサブプロセッサ(SMPU)5が同一チップ102に集積されることにより、表示駆動とタッチセンス制御を互いに連携させることがさらに容易になり、外付けされるホストプロセッサ(HMPU)6の負担を軽減することができる。
【0049】
タッチパネル1には、複数のセンサ容量が形成されている。タッチパネルコントローラ3は、各センサ容量における容量成分の変動に応じた検出データを得る。サブシステム用のマイクロプロセッサであるサブプロセッサ(SMPU)5はタッチパネル1の駆動を制御し、タッチパネルコントローラ3が取得した検出データから、タッチの状態や座標を検出する処理を行う。例えば、検出データに対してディジタルフィルタ演算を行い、これによってノイズが除去されたデータから、容量値の2次元的な分布の重心を算出する演算を行い、タッチ座標を算出する。要するに、どの位置のセンサ容量で容量値が変化したか、即ち、タッチパネル1のどの位置に指が近接したか(タッチされたか、接触イベントが発生したか)を示すために、接触イベントが発生した座標を演算する。
【0050】
タッチパネル1は透過性(透光性)の電極や誘電体膜を用いて構成され、例えば表示パネル2の表示面に重ね合せて配置される。タッチパネル1と表示パネル2は、一体として実装されたインセルタイプでも、個別に製造されて重ね合せて実装されたオンセルタイプでも良いし、タッチパネル1と上面に設置されるカバーガラスとが一体化されたカバーガラス一体構成であってもよい。
【0051】
ホストプロセッサ(HMPU)6は表示データを生成し、表示パネルコントローラ4はホストプロセッサ6から受け取った表示データを表示パネル2に表示するための表示制御・表示駆動を行う。ホストプロセッサ6は、接触イベントが発生したときの座標のデータをサブプロセッサ5から取得し、表示パネル2における座標のデータと表示パネルコントローラ4に与えて表示させた表示画面との関係から、タッチパネル1の操作による入力を解析する。
【0052】
特に制限されないが、ホストプロセッサ6には夫々図示を省略する、通信制御ユニット、画像処理ユニット、音声処理ユニット、及びその他アクセラレータなどが内蔵され、或いは外付けされることによって、例えば携帯端末が構成される。
【0053】
図2にはタッチパネル1の電極構成が例示される。タッチパネル1上には複数のセンサ電極が形成されている。例えば、タッチパネル1の横方向に形成された多数の駆動電極(Y電極)Y1〜Ym(Y電極YMとも記す)と、縦方向に形成された多数の検出電極(X電極)X1〜Xn(X電極XNとも記す)とが相互に電気的に絶縁されて構成され、X電極とY電極の交差部にはセンサ容量が形成される。自己容量方式では、一方の電極の電位を所定の電位に固定し、他方の電極から見たセンサ容量の容量値を計測することによって、そのセンサ容量についてのタッチ・非タッチの判断を行ない、または容量値の2次元的な分布からタッチ座標の算出を行う。特に制限されないが、さらに、Y電極の電位を固定してX電極からみたセンサ容量のタッチ・非タッチ検出を行い、逆にX電極の電位を固定してY電極からみたセンサ容量のタッチ・非タッチ検出を行うことにより、2次元的なセンサ容量に対するタッチ・非タッチの判断を行うこともできる。また、タッチパネル1を上記のように構成すれば、相互容量方式でのタッチ・非タッチ検出を組合せて実施することができる。
図2には、電極形状が菱形のタッチパネル1が示されるが、電極形状は格子型等他の形状でもよい。また、Y電極を備えず、複数のX電極端子X1〜Xnに1:1で対応付けられ配線された、検出電極(X電極)パッドが、タッチパネル1内に分散して配置されてもよい。
【0054】
図3には表示パネル2の電極構成が例示される。同図に示される表示パネル2の表示サイズは例えばVGAである480RGB×640の規模とされる。表示パネル2は横方向に形成された走査電極としてのゲート電極G1〜G640と縦方向に形成された信号電極としてのドレイン電極D1〜D1440とが配置され、その交点部分には選択端子が対応する走査電極に接続され、入力端子が対応する信号電極に接続された多数の表示セルが配置される。ゲート電極G1〜G640は、例えばその配列順に表示パネルコントローラ4から走査パルスが印加されて駆動(走査駆動)される。ドレイン電極D1〜D1440にはゲート電極の走査駆動に同期して走査駆動ラインの階調データが供給される。表示パネル2の表示サイズは、図示された上記表示サイズに制限されず、任意である。
【0055】
図4にはタッチパネルコントローラ3の全体的な構成が例示される。タッチパネルコントローラ3は駆動回路(YDRV)300、タッチ検出回路(SENS)301、サンプルホールド回路(SH)302、セレクタ(SLCT)303、アナログ/ディジタル変換回路(ADC、以後AD変換回路と略す)304、RAM(Random Access Memory)305、バスインタフェース回路(BIF)306、及び制御回路としてのシーケンス制御回路(SQENC)308を有する。シーケンス制御回路(SQENC)308は、制御シーケンスをプログラマブルに設定することを可能とする、制御レジスタ(CREG)320を備えて構成されると好適である。制御レジスタ(CREG)320は、不揮発性の記憶素子で構成されても良いし、揮発性の記憶素子で構成され、サブプロセッサ(SMPU)5等によって初期化或いは適宜変更する(書き換える)ことが可能なように構成されても良い。
【0056】
駆動回路300は、相互容量方式のタッチ検出を行うときにY電極Y1〜Ymを駆動するために設けられている。自己容量方式のタッチ検出のみの場合には、省略されてもよい。
【0057】
タッチ検出回路301は、X電極X1〜Xnに接続されるセンサ容量の容量値を計測して、その容量値に対応する電圧Vout1〜Voutnを出力する。出力電圧Vout1〜Voutnは、サンプルホールド回路302に保持され、保持された出力電圧はセレクタ303で選択され、選択された出力電圧はAD変換回路304でディジタルの検出データDoutに変換される。変換された検出データはRAM305に蓄積される。RAM305に蓄積された検出データはバスインタフェース回路306を介してサブプロセッサ5に供給され、タッチ座標の演算に供される。
【0058】
シーケンス制御回路308は制御信号Csig1〜Csig6を用いて駆動回路300、タッチ検出回路301、サンプルホールド回路302、セレクタ303、AD変換回路304及びバスインタフェース回路306の動作を制御し、また、制御信号Csig7によってRAM305のアクセス制御を行う。シーケンス制御回路308には、例えば、外部から垂直同期信号Vsyncや水平同期信号Hsyncがタイミングの基準信号として入力され、別途入力されまたは内部で生成されるクロックCLKに同期したシーケンス制御を行う。垂直同期信号Vsyncや水平同期信号Hsyncは、表示パネルコントローラ4による表示駆動の動作と、タッチパネルコントローラ3によるタッチ検出動作の間のタイミング制御を行う場合に使用されると好適である。
【0059】
図5にはタッチパネル1の簡略な等価回路とタッチ検出回路301の一例が示される。タッチ検出回路301には、X電極X1〜Xnのそれぞれに対応する端子X1〜Xnに接続される、検出回路10_1〜10_nと充電回路20_1〜20_nとが含まれる。タッチパネル1の電極とセンサ容量の構成には、種々の変形例があるが、
図5では1個のセンサ容量Cxyが1個の端子(X1〜Xn)を介して、1組の検出回路10と充電回路20に接続されるものとして図示される。これは、1個の検出回路の動作が、電気的に1個のセンサ容量を対象とした計測動作であることを、模式的に示すものであって、実際には、センサ容量は複数の電極の合成容量であってよく、または、選択回路などが追加されて複数のセンサ容量から1個ずつ順次選択されて計測対象とされる構成であってもよい。検出回路10_1〜10_nの出力Vout1〜Voutnは、サンプルホールド回路(SH)302に転送され電圧値として保持される。セレクタ(SLCT)303は、サンプルホールド回路(SH)302に保持される電圧値を、制御信号Csig4に基づいて順次選択して、AD変換回路304に入力する。AD変換回路304は、サンプルホールド回路(SH)302に保持される電圧値をディジタル値Doutに順次変換して出力する。
【0060】
タッチ検出回路301の構成と動作について、さらに詳しく説明する。
【0061】
図6は
、タッチ検出回路(容量検出回路)の構成を例示する回路図である。1個のセンサ容量Cxyを検出対象とする回路のみが示される。タッチ検出回路301のうち、検出対象である1個のセンサ容量Cxyに、端子Xn(X1〜Xnのうちのいずれか)を介してそれぞれ接続される、検出回路10と充電回路20とによって構成される。
図6には、タッチ検出回路301の出力VOUT1が入力され保持される、サンプルホールド回路302内の回路と、保持される電圧を選択してAD変換回路304に供給するセレクタ303内の回路とが、合せて示されている。
【0062】
検出回路10は、例えば図示されるような積分回路11であり、入力される電荷を累積加算して出力する。即ち、積分回路11である検出回路10は、正極側入力(+)であるVIGが初期化電圧VHSPに固定され仮想接地電位がVIG=VHSPとされた演算増幅器AMP1と、演算増幅器AMP1の負極側入力(−)と出力端子との間に接続された積分容量Cs1と、積分容量Cs1に並列接続され積分容量Cs1を短絡して放電、初期化することができるスイッチS1と、積分回路11の入力である演算増幅器AMP1の負極側入力(−)と端子Xnとの接続をオン/オフ制御することができるスイッチS2とを含んで構成される。
【0063】
充電回路20は、電圧源であるVSLFと、その電圧源VSLFと端子Xnとの接続をオン/オフ制御するスイッチS7とを含んで構成される。電圧源VSLFは、演算増幅器AMP2によるボルテージフォロワアンプによって、初期化電圧VHSPよりも高電位の充電電圧Vchargeを供給している。
【0064】
サンプルホールド回路302は、検出回路10_1〜10_nの出力Vout1〜Voutnを保持するn個のサンプルホールド回路を含んで構成されるが、
図6にはそのうちの1個のみが示される。サンプルホールド回路302は、スイッチS4とサンプルホールド容量Cshと演算増幅器AMP4とを含んで構成される。スイッチS4を介して入力される検出回路10の出力VOUT1は、サンプルホールド容量Cshに保持され、演算増幅器AMP4で構成されるボルテージフォロワアンプから出力される。
【0065】
セレクタ303は、サンプルホールド回路302に保持されて出力される出力電圧Vout1〜Voutnから、1個の出力電圧を選択して順次AD変換回路304に供給するため、n個のスイッチS6_RX1〜S6_RXnを含んで構成される。
図6には、このうちの2個のスイッチS6_RX1とS6_RXnのみが示される。
【0066】
図7は、
図6のタッチ検出回路の動作を例示するタイミングチャートである。横軸に時刻(Time)を取り、縦軸方向には上から、クロックclk、垂直同期信号Vsync、スイッチS7,S1,S2を制御する信号がディジタル波形で示され、さらに検出対象のセンサ容量Cxyが接続される端子Xnの電位と出力Voutの電圧とが、アナログ波形で示される。スイッチS7,S1,S2を制御する信号は、正論理であり、ハイのとき各スイッチは閉じられ(オンされ)、ロウのとき各スイッチは開かれる(オフされる)ものとして示される。
【0067】
時刻t0〜t1の期間は、充電回路20によってセンサ容量Cxyを充電する充電期間であり、同時に積分回路11の初期化も行われる。例えば垂直同期信号Vsyncが変化する時刻t0において、スイッチS7を閉じることにより、端子Xnを介してセンサ容量Cxyが初期化電圧VHSPよりも高電位の充電電圧Vchargeに充電される。同じ時刻t0に、積分回路11への入力であるスイッチS2は開かれて端子Xnからの入力が遮断され、スイッチS1が閉じられることにより、積分容量Cs1が短絡・放電されて初期化され、出力VOUT1は初期化電圧VHSPに初期化される。時刻t1には、スイッチS7が開かれてセンサ容量Cxyの充電が終わり、スイッチS1が開かれて積分容量Cs1の短絡・放電が終わり積分回路11の初期化が終わる。
【0068】
その後時刻t2〜t3の期間にスイッチS2が閉じられて、センサ容量Cxyが検出回路10である積分回路11の入力端子に接続される。センサ容量Cxyは、初期化電圧VHSPよりも高電位の充電電圧Vchargeに充電されており、積分回路11の入力は、演算増幅器AMP1の正極側入力と同じ初期化電圧VHSPに仮想接地されているので、電荷(Vcharge−VHSP)×Cxyが、積分回路11に入力され(流れ込み)、入力された電荷量が積分容量Cs1に蓄積される。時刻t2〜t3の期間には、センサ容量Cxyの電位である端子Xnの電位は、VchargeからVHSPに徐々に低下し、これに伴って積分回路11の出力VOUT1は初期化電圧のVHSPから上昇する。
【0069】
その後時刻t4〜t5の期間(2度目の充電期間)に再び、スイッチS7が閉じられて、端子Xnを介してセンサ容量Cxyが充電電圧Vchargeに充電される。時刻t0〜t1の期間とは異なり、スイッチS1は開かれたままであり、初期化は行われない。この間スイッチS2は開かれており、積分回路11の出力VOUT1は時刻t2から同じ電圧が維持される。
【0070】
その後時刻t6〜t7の期間(2度目の積分期間)に再び、スイッチS2が閉じられて、センサ容量Cxyから電荷が積分回路11に入力され、積分容量Cs1に累積的に加算される。そのため、積分回路11の出力電圧VOUT1は、入力された電荷の分だけさらに上昇する。
【0071】
それ以降、時刻t8〜t9、t12〜t13の3度目と4度目等の充電期間と、時刻t10〜t11、t14〜の3度目と4度目等の積分期間とを、所定の回数繰り返すことにより、電荷(Vcharge−VHSP)×Cxyが、その所定回数だけ積分容量Cs1に累積的に加算、即ち積分される。
【0072】
図示は省略されているが、所定回数の積分が完了した後、出力電圧VOUT1は、スイッチS4が閉じられることによってサンプルホールド回路302のサンプルホールド容量Cshに転送される。その後、時刻t0〜t1と同様に、スイッチS1が閉じられて積分容量Cs1が短絡・放電されて初期化され、次の容量検出に移る。
【0073】
図8は、実施形態1のタッチ検出回路(容量検出回路)の構成を例示する回路図である。
図6に示され
るタッチ検出回路(容量検出回路)と同様に、1個のセンサ容量Cxyを検出対象とする回路のみが示される。タッチ検出回路301のうち、検出対象である1個のセンサ容量Cxyに、端子Xn(X1〜Xnのうちのいずれか)を介してそれぞれ接続される、検出回路10と充電回路20とによって構成される。
図8にも、タッチ検出回路301の出力VOUT1が入力され保持される、サンプルホールド回路302内の回路と、保持される電圧を選択してAD変換回路304に供給するセレクタ303内の回路とが、合せて示されている。
【0074】
検出回路10は、例えば図示されるような両エッジ型積分回路12であり、積分容量Cs1を備え、入力される電荷を、積分容量Cs1に絶対値的に累積加算して出力する。即ち、両エッジ型積分回路12である検出回路10は、入力スイッチS2と、演算増幅器AMP1と、積分容量Cs1と、スイッチS1とCFA1とCFA2とCFB1とCFB2と、スイッチS5と演算増幅器AMP3によるボルテージフォロワアンプとを含んで構成される。入力スイッチS2は、演算増幅器AMP1の負極側入力(−)と端子Xnとの接続をオン/オフ制御する。積分容量Cs1は、演算増幅器AMP1の負極側入力(−)と出力端子との間に接続されて、積分回路を構成しており、並列接続されるスイッチS1によって短絡・放電され初期化され、また、スイッチCFA1とCFA2とCFB1とCFB2によって、演算増幅器AMP1への接続極性を反転することができるように構成されている。即ち、スイッチCFA1とCFA2を閉じ、スイッチCFB1とCFB2とを開いたときと、逆に、スイッチCFA1とCFA2を開き、スイッチCFB1とCFB2とを閉じたときとでは、演算増幅器AMP1に対する積分容量Cs1の接続極性が互いに反転する。スイッチS5と演算増幅器AMP3によるボルテージフォロワアンプは、演算増幅器AMP1の正極側入力端子に印加する電圧を、初期化電圧VHSPと電位VHSP+ΔVとの間で切替える。演算増幅器AMP1の仮想接地電位VIGが、初期化電圧VHSPと電位VHSP+ΔVとの間で切替えられることとなる。
【0075】
充電回路20は、
図6に示される
構成と同様に、電圧源であるVSLFと、その電圧源VSLFと端子Xnとの接続をオン/オフ制御するスイッチS7とを含んで構成される。電圧源VSLFは、演算増幅器AMP2によるボルテージフォロワアンプによって、初期化電圧VHSPよりも高電位の充電電圧Vchargeを供給する。
【0076】
検出回路10の後段の、サンプルホールド回路302、セレクタ303及びAD変換回路304については、
図6に示される
構成と同様であるので、説明を省略する。
【0077】
本実施形態1のタッチ検出回路の動作について説明する。
【0078】
図9は、
図8のタッチ検出回路の動作を例示するタイミングチャートである。
図7と同様に、横軸は時刻(Time)であり、縦軸方向には上から、クロックclk、垂直同期信号Vsync、スイッチS7,S1,S2,CFA1とCFA2,CFB1とCFB2を制御する信号がディジタル波形で示され、さらに両エッジ型積分回路12の演算増幅器AMP1の仮想接地電位VIGと、センサ容量Cxyに接続される端子Xnの電位と、出力VOUT1の電圧とが、アナログ波形で示される。スイッチS7,S1,S2,CFA1とCFA2,CFB1とCFB2を制御する信号は、正論理であり、ハイのとき各スイッチは閉じられ(オンされ)、ロウのとき各スイッチは開かれる(オフされる)ものとして示される。言うまでもないが、負論理に変更することは容易である。
【0079】
時刻t0〜t1の期間は、充電回路20によってセンサ容量Cxyを充電する充電期間であり、同時に両エッジ型積分回路12の初期化も行われる。例えば、垂直同期信号Vsyncが変化する時刻t0において、スイッチS7を閉じることにより、端子Xnを介してセンサ容量Cxyが初期化電圧VHSPよりも高電位の充電電圧Vchargeに充電される。同じく時刻t0に、両エッジ型積分回路12への入力スイッチS2は開かれて入力が遮断され、スイッチS1が閉じられることにより、積分容量Cs1が短絡・放電されて初期化され、出力VOUT1は初期化電圧VHSPに初期化される。時刻t1には、スイッチS7が開かれてセンサ容量Cxyの充電が終わり、スイッチS1が開かれて積分回路12の初期化が終わる。
【0080】
その後時刻t1〜t2の期間にスイッチS2が閉じられて、センサ容量Cxyが検出回路10である両エッジ型積分回路12の入力端子に接続される。この期間には、演算増幅器AMP1の正極側入力には、初期化電圧VHSPが印加されている。センサ容量Cxyは、初期化電圧VHSPよりも高電位の充電電圧Vchargeに充電されており、両エッジ型積分回路12の入力は初期化電圧VHSPに仮想接地されているので、センサ容量Cxyの電位である端子Xnの電位は、Vchargeから仮想接地電位であるVHSPに向かって徐々に低下する(センサ容量Cxyの放電)。このとき、センサ容量Cxyを放電するための電荷(Vcharge−VHSP)×Cxyが、両エッジ型積分回路12に入力され、積分容量Cs1に蓄積される。これに伴って、両エッジ型積分回路12の出力VOUT1は上昇する。
【0081】
時刻t2にスイッチCFA1とCFA2を開き(オフし)、スイッチCFB1とCFB2を閉じ(オンし)て、積分容量Cs1の接続極性を反転させる。これに伴って、両エッジ型積分回路12の出力VOUT1は、初期化電圧VHSPよりも低い電位へ降下する。このとき、積分容量Cs1に保持されている電荷の量は、極性反転によって変化しないので、極性反転前のVOUT1の電位をVHSP+ΔV1とすると、極性反転後のVOUT1の電位はVHSP−ΔV1となる。即ち、積分容量Cs1に保持されている電荷の量は、その絶対値が保持されたまま極性が反転されたのと同等の状態になる。この電位変化は、容量の充放電を伴わないので、理論的には瞬時に発生する。なお、積分容量Cs1の極性反転に伴って、両エッジ型積分回路12の入力端子であるXnの電位が瞬間的に上昇するが、仮想接地レベルであるVHSPに戻って安定化される。
【0082】
時刻t3には、演算増幅器AMP1の正極側入力端子の電位、即ち仮想接地電位VIGは、スイッチS5を切替えることにより、初期化電圧VHSPから、VHSP+ΔVに変化される。このとき、初期化電圧VHSPがセンサ容量Cxyの充電電圧Vchargeよりも低い電位とされたのに対し、VHSP+ΔVはVchargeよりも高い電位とされる。時刻t3〜t4の期間には、センサ容量Cxyの電位である端子Xnの電位は、VHSPからVHSP+ΔVに徐々に上昇する(センサ容量Cxyの充電)。このとき、演算増幅器AMP1の負極側入力端子は、仮想接地レベルである正極側入力端子の電位に等しくなるように変化するから、センサ容量Cxyに向かってこれを充電するための電荷が流入する。これに伴って、センサ容量Cxyを充電するための電荷は、積分容量Cs1に累積的に加算(積分)され、両エッジ型積分回路12の出力VOUT1は、積分された電荷に相当する電位差だけ、VHSP−ΔV1からさらに降下する。この時の出力VOUT1の電位をVHSP−ΔV1−ΔV2とする。
【0083】
その後時刻t4にスイッチCFA1とCFA2を閉じ、スイッチCFB1とCFB2を開いて、積分容量Cs1の接続極性を再び反転させる。これに伴って、両エッジ型積分回路12の出力VOUT1は、初期化電圧VHSPよりも高い電位へ反転する。このとき、積分容量Cs1に保持されている電荷の量は、極性反転によって変化しないので、極性反転前のVOUT1の電位VHSP−ΔV1−ΔV2は、極性反転後にVHSP+ΔV1+ΔV2となる。即ち、時刻t1〜t2の期間にセンサ容量Cxyを放電するために、センサ容量Cxyから両エッジ型積分回路12に流入する電荷と、時刻t3〜t4の期間にセンサ容量Cxyを充電するために、両エッジ型積分回路12からセンサ容量Cxyへ注入される電荷とは、移動方向が逆であるが、その電荷量の絶対値が積分容量Cs1に累積的に加算(積分)される。なお、時刻t4では、積分容量Cs1の極性反転に伴って、両エッジ型積分回路12の入力端子であるXnの電位が瞬間的に降下するが、仮想接地レベルであるVHSP+ΔVに戻って安定化される。
【0084】
以上説明したように、本実施形態1に係る両エッジ型積分回路12は、センサ容量Cxyを充放電可能であり、センサ容量Cxyを充放電するために入出力する電荷を積分容量Cshに累積的に加算可能であって、充放電に伴う電荷の移動方向に応じて、積分容量Cshへ加算される電荷の極性を反転させることができる。
【0085】
図7に示した
動作では、時刻t2〜t3のセンサ容量Cxyの放電期間には、放電によって積分回路11に流入する電荷が積分容量Cshに加算されるが、時刻t4〜t5の充電期間には充電によって積分回路11から電荷が流出しないように、入力スイッチS2によって積分回路11が分離されているため、積分回路11の出力VOUT1は変化しない。センサ容量Cxyの充放電1回当たり、積分は1回のみ行われていることになる。これに対して本実施形態1に係る両エッジ型積分回路12では、センサ容量Cxyを放電する電荷と充電する電荷の両方の絶対値をそれぞれ加算するので、センサ容量Cxyの充放電1回当たり、2回の積分(加算)を行う事ができる。したがって、単位時間当たりの積分信号量を倍増させることができ、検出動作期間を短縮し、検出精度を向上することができる。
【0086】
時刻t4以降、時刻t5、t7、t9、t11、t23において、スイッチS5を制御して両エッジ型積分回路12の仮想接地電位VIGをVHSPとVHSP+ΔVとの間で交互に変化させることにより、センサ容量Cxyに対する充電と放電を繰り返す。それに伴って、時刻t4、t6、t8、t10、t12において、スイッチCFA1とCFA2とCFB1とCFB2を制御して、積分容量Cs1の接続極性を繰り返し反転させる。時刻t5〜t6、t9〜t10、t13〜の各放電期間にセンサ容量Cxyを放電するために、センサ容量Cxyから両エッジ型積分回路12に流入する電荷と、時刻t7〜t8、t11〜12の各充電期間にセンサ容量Cxyを充電するために、両エッジ型積分回路12からセンサ容量Cxyへ注入される電荷とは、移動方向が逆であるが、その移動方向に応じて積分容量Cs1の接続極性も反転されるため、その電荷量の絶対値が積分容量Cs1に累積的に加算(積分)される。
【0087】
図示は省略されているが、所定回数の積分が完了した後、出力電圧VOUT1は、スイッチS4が閉じられることによってサンプルホールド回路302のサンプルホールド容量Cshに転送されて出力される。その後、時刻t0〜t1と同様に、スイッチS1が閉じられて積分容量Cs1が短絡・放電されて初期化され、次の容量検出に移る。
【0088】
以上のように、センサ容量Cxyの充放電とこの充放電に対応して積分容量Cs1へ加算される電荷の極性を反転させる動作を所定の回数だけ繰り返す毎に、積分容量Cs1を短絡して初期化する。
【0089】
これにより、積分容量Cs1の初期化から次の初期化までに行われる充電回数と放電回数の和を積分回数とすることができ、充電または放電の一方のみで積分を行う積分回路11と比較して、積分信号量を倍増させることができる。
【0090】
以上説明したように、両エッジ型積分回路12は、タッチパネルコントローラ(TPC)3のタッチ検出回路(SENS)301に搭載されることにより、タッチ検出の検出時間を短縮し、検出精度を向上することができる。このようなタッチパネルコントローラ(TPC)3は、例えば表示パネル2とインセルタイプで一体的に構成されたタッチパネル1と接続され、表示駆動とタッチ検出が時分割される表示及び入力装置100に好適に適用される。時分割のためにタッチ検出に割り当てられる時間が短くなるのに対し、上述のように単位時間当たりの積分信号量を増加させ、タッチ検出の検出時間を短縮し、検出精度を向上することができるからである。このとき、タッチパネルコントローラ(TPC)3を、例えばシリコンなどの半導体基板上に形成されて、タッチコントローラICとして提供され、或いは、さらに表示パネルコントローラ(DPC)4も同一半導体チップ上に集積されてもよい。これにより、表示駆動とタッチセンス制御を互いに連携させることが容易になる。
【0091】
なお、本実施形態1に係る両エッジ型積分回路12を用いた容量検出回路は、タッチパネルコントローラ(TPC)3のタッチ検出回路(SENS)301に搭載される以外に、広く一般の容量検出回路として実施することができる。
【0092】
〔実施形態2〕
図10は、実施形態2のタッチ検出回路(容量検出回路)の構成を例示する回路図である。容量検出回路10は、
図8に示される両エッジ型積分回路12と同一構成でFIRフィルタとして機能する両エッジ型FIRフィルタ13に加えて、IIRフィルタ14と積分回路15とをさらに備える。両エッジ型FIRフィルタ13の出力VOUT1は次段のIIRフィルタ14と、スイッチS41とサンプルホールド容量Csh1から成るサンプルホールド回路を介して接続され、IIRフィルタ14の出力VOUT2は次段の積分回路15と、スイッチS43とサンプルホールド容量Csh2から成るサンプルホールド回路を介して接続されている。積分回路15の出力VOUT3は、
図8に示されるのと同様に、サンプルホールド回路302に入力され、セレクタ(SLCT)303を介して、AD変換回路304に入力される。
【0093】
両エッジ型FIRフィルタ13は前述の両エッジ型積分回路12と同一構成であるので、回路構成についての説明は省略する。初期化から次の初期化までの期間に入力される電荷を積分するので、全てのタップ係数が1であり、前記積分の回数をタップ数とするFIRフィルタとして機能する。
【0094】
IIRフィルタ14は、演算増幅器AMP5と、2個の積分容量Cs2aとCs2bと、スイッチS42,S12,S13,CF1及びCF2よりなる。演算増幅器AMP5は正極側入力(+)が初期化電圧VHSPに固定され、負極側入力(−)と出力端子の間に積分容量Cs2aが接続されている。スイッチS42は入力スイッチであり、サンプルホールド容量Csh1に保持された電圧値を、演算増幅器AMP5の負極側入力端子に入力する。2個の積分容量Cs2aとCs2bは、スイッチCF1とCF2を介して並列接続されており、演算増幅器AMP5によって構成される積分回路の積分容量は、スイッチCF1とCF2が開かれて(オフされて)いるときはCs2aのみであり、スイッチCF1とCF2を閉じる(オンする)ことによりそれらの和(Cs2a+Cs2b)になる。スイッチS12は積分容量Cs2bに並列接続され、閉じられることにより、積分容量Cs2bを短絡して放電し初期化する。スイッチCF1とCF2が共に閉じられているときには、積分容量Cs2bとCs2aの両方を短絡して放電し初期化する。即ち、積分容量Cs2a+Cs2bは、容量値の一部(Cs2bのみ)または全部(Cs2a+Cs2b)が、スイッチCF1とCF2とS12の制御によって放電可能に構成されている。積分容量Cs2aとCs2bの容量値は、例えばレジスタ設定により変更することができるように構成されると好適である。積分容量Cs2aとCs2bの容量値によって、IIRフィルタの周波数特性が規定されるからである。スイッチS13は、CF2を介して演算増幅器AMP5の出力端子と初期化電圧VHSPとの間に接続され、スイッチCF2と共に閉じられることにより、演算増幅器AMP5の出力端子をVHSPに初期化する。
【0095】
積分回路15は、演算増幅器AMP6と、積分容量Cs3と、スイッチS44及びS14よりなる。演算増幅器AMP6は正極側入力(+)が初期化電圧VHSPに固定され、負極側入力(−)と出力端子の間に積分容量Cs3が接続されている。スイッチS44は入力スイッチであり、サンプルホールド容量Csh2に保持された電圧値を、演算増幅器AMP6の負極側入力端子に入力する。スイッチS14は積分容量Cs3に並列接続され、閉じられることにより、積分容量Cs3を短絡して放電し初期化する。
【0096】
本実施形態2のタッチ検出回路の動作について説明する。
【0097】
図11は、
図10のタッチ検出回路の動作を例示するタイミングチャートである。
図9と同様に、横軸は時刻(Time)であり、縦軸方向には上から、スイッチS7,S1,S2,CFA1とCFA2,CFB1とCFB2を制御する信号がディジタル波形で示され、両エッジ型FIRフィルタ13の演算増幅器AMP1の仮想接地電位VIGと、センサ容量Cxyに接続される端子Xnの電位と、出力VOUT1の電圧とがアナログ波形で示され、さらに、スイッチS41,S42,S12,S13,CF1,CF2,S43,S44,S14及びS4を制御する信号がディジタル波形で示される。各スイッチを制御する信号は、正論理であり、ハイのとき各スイッチは閉じられ(オンされ)、ロウのとき各スイッチは開かれる(オフされる)ものとして示される。言うまでもないが、負論理に変更することは容易である。横軸は紙面の制約から時刻が間引いて表記される。
【0098】
時刻t0〜t1の期間は、充電回路20によってセンサ容量Cxyを充電する充電期間であり、同時に両エッジ型FIRフィルタ13とIIRフィルタ14の初期化も行われる。時刻t0において、端子Xnを介してセンサ容量Cxyが初期化電圧VHSPよりも高電位の充電電圧Vchargeに充電される。同じ時刻t0に、両エッジ型FIRフィルタ13への入力スイッチS2は開かれて入力が遮断され、スイッチS1が閉じられることにより、積分容量Cs1が短絡・放電されて初期化され、出力VOUT1は初期化電圧VHSPに初期化される。時刻t1には、スイッチS7が開かれてセンサ容量Cxyの充電が終わり、スイッチS1が開かれてFIRフィルタ13の初期化が終わる。IIRフィルタ14においても、スイッチCF1とCF2を閉じて積分容量Cs2aとCs2bを並列接続された状態にし、スイッチS12を閉じることにより、積分容量Cs2aとCs2bの両方を短絡・放電して初期化する。
【0099】
時刻t1〜t8の期間は、スイッチS2が閉じられて、センサ容量Cxyが両エッジ型FIRフィルタ13の入力端子に接続される。この期間には、
図9の時刻t1以降と同様に、両エッジ型FIRフィルタ13の演算増幅器AMP1の仮想接地電位VIGは、VHSPとVHSP+ΔVとの間で繰り返し変化され、これに合わせてスイッチCFA1とCFA2,CFB1とCFB2を制御することにより、積分容量Cs1の接続極性が反転される。センサ容量Cxyに接続される端子Xnの電圧が示すように、時刻t1〜t2、t3〜t4、t5〜t6、t7〜t8は放電期間であり、時刻t2〜t3、t4〜t5、t6〜t7は充電期間である。両エッジ型FIRフィルタ13とセンサ容量Cxyとの間の電荷の移動方向は、上記放電と充電の繰り返しに合せて反転するが、積分容量もこれに合わせて反転されるため、その電荷量の絶対値が積分容量Cs1に累積的に加算(積分)され、両エッジ型FIRフィルタ13の出力VOUT1の振幅(絶対値)は、累積的に上昇する。
【0100】
時刻t1〜t8の期間にスイッチS41が閉じられており、出力VOUT1はサンプルホールド容量Csh1にサンプリングされている時刻t8でスイッチS41が開かれてホールドされ、同時にIIRフィルタ14の入力スイッチS42が閉じられることにより、両エッジ型FIRフィルタ13の出力VOUT1がIIRフィルタ14に入力される。時刻t8〜t9の期間は、スイッチCF1とCF2が閉じられており、積分容量Cs2aとCs2bは並列接続されているため、入力されたVOUT1に対応する電荷がCs2a+Cs2bに蓄積される。時刻t9〜t16の期間には、スイッチCF1とCF2は開かれて積分容量Cs2aとCs2bは分離され、スイッチS12が閉じられることにより、積分容量Cs2bに蓄積されている電荷が短絡・放電されて捨てられ、積分容量Cs2aに蓄積されている電荷のみが残る。時刻t16〜t17の期間に再びスイッチCF1とCF2が閉じられて積分容量Cs2aとCs2bが並列接続され、入力されたVOUT1に対応する電荷がCs2a+Cs2bに累積的に蓄積される。今回入力されたFIRフィルタの出力が、前回入力されたFIRフィルタの出力のCs2a/(Cs2a+Cs2b)と加算され、IIRフィルタとして動作する。
【0101】
IIRフィルタ14の出力は、時刻t8〜t9、t16〜t17、t24〜t25の各期間に、スイッチS43が閉じられることにより、サンプルホールド容量Csh2に保持され、時刻t9〜t16、t17〜t24、t25〜t32にスイッチS44が閉じられることにより、順次積分回路15に入力され、積分容量Cs3に累積的に加算(積分)されて、出力VOUT3として出力される。出力されたVOUT3は時刻t10、t18、t26などのタイミングで、
図8に示されるのと同様に、サンプルホールド回路302に転送され、セレクタ(SLCT)303を介して、AD変換回路304に入力される。
【0102】
以上のように、積分容量Cs1を含む初段の回路を、センサ容量Cxyの放電に伴う正極方向の積分動作時と、充電に伴う負極方向の積分動作時の両方でサンプリングを行うFIRフィルタとして動作させることができる。FIRフィルタの単位時間当たりのサンプリング回数を従来よりも増やすことができるので、ノイズ抑圧特性を向上する周波数特性を持たせることができる。さらに後段に上述のように動作するIIRフィルタ14を設けることにより、例えばFIRフィルタ13の零点とIIRフィルタ14の極を一致させるなど、両者の周波数特性を適切に組み合わせることによって、より効果的なノイズ抑圧特性を持たせることができる。
【0103】
なお、本実施形態2に係る両エッジ型FIRフィルタ13を用いた容量検出回路は、タッチパネルコントローラ(TPC)3のタッチ検出回路(SENS)301に搭載される以外に、広く一般の容量検出回路として実施することができる。
【0104】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0105】
例えば、各実施形態に示した積分回数、制御タイミングなどは、一例であって、種々変更可能である。また、タッチパネルの電極構造には制限されない他、表示パネル(DP)2は、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、その他如何なる方式の表示パネルであっても良い。また、液晶表示パネルの場合、非晶質シリコンタイプでも、低温ポリシリコンタイプでも良い。