特許第6400947号(P6400947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6400947グリッド同様のコントラスト強調のためのX線撮像システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6400947
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】グリッド同様のコントラスト強調のためのX線撮像システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20180920BHJP
【FI】
   A61B6/00 350M
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-114913(P2014-114913)
(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公開番号】特開2015-223492(P2015-223492A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年5月25日
(31)【優先権主張番号】EP14170057.5
(32)【優先日】2014年5月27日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】62/003163
(32)【優先日】2014年5月27日
(33)【優先権主張国】US
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開者 コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ 刊行物 Philips SkyFlow 頒布日 平成25年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ メントルプ
(72)【発明者】
【氏名】サーシャ アンドレアス ヨッケル
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−インゴ マーク
(72)【発明者】
【氏名】ベルンド メンサー
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0119139(US,A1)
【文献】 特表2008−502395(JP,A)
【文献】 特開2006−068038(JP,A)
【文献】 特開2015−043959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 −6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象を通過したX線放射線から導き出されたX線撮影画像を処理する方法であって、
前記X線撮影画像に基づいて、前記X線撮影画像に存在する散乱信号を算定する算定ステップと、
前記算定された散乱信号に基づいて、前記対象を通過した前記X線放射線から散乱防止装置によって除去可能である散乱放射線を示す散乱除去信号を計算する計算ステップであって、前記散乱除去信号は、当該散乱防止装置を用いて前もって取得された較正データを使用して較正される、ステップと、
前記散乱除去信号に基づいて前記X線撮影画像を補正する補正ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法を実施するX線撮像システム。
【請求項3】
前記散乱防止装置が散乱防止グリッドである、請求項2に記載のX線撮像システム。
【請求項4】
前記X線撮像システムは、前記計算ステップの一部として、ユーザの手作業のインタラクションによって、前記散乱防止装置の品質を特定するステップを実施するように構成される、請求項2又は3に記載のX線撮像システム。
【請求項5】
前記X線撮像システムが、前記算定ステップの一部として、データベースから、前記X線撮影画像の個々の局所的な特性に関して典型的な散乱カーネルを取り出し、その後、前記散乱信号を算定するために前記散乱カーネルを重ね合わせるカーネルステップを実施するように構成される、請求項2乃至のいずれか1項に記載のX線撮像システム。
【請求項6】
前記X線撮像システムは、前記X線撮影画像の個々の局所的な特性が、前記X線撮影画像の個々の局所的な信号及び前記個々の局所的な信号の個々の局所的な空間勾配を含むように、前記カーネルステップを実施するように構成される、請求項に記載のX線撮像システム。
【請求項7】
前記X線撮像システムが、モンテカルロシミュレーションによって前もって生成された散乱カーネルを使用して、前記カーネルステップを実施するように構成される、請求項又はに記載のX線撮像システム。
【請求項8】
前記X線撮像システムが、前記X線撮影画像の解像度より低い解像度で前記算定ステップを実施するように構成される、請求項2乃至のいずれか1項に記載のX線撮像システム。
【請求項9】
前記X線撮像システムは、前記算定された散乱信号の解像度を、前記X線撮影画像の解像度に等しいレベルに増大させるステップを実施するように構成される、請求項に記載のX線撮像システム。
【請求項10】
前記X線撮像システムが、セグメント化を通じて、コントラスト強調が特に望ましい解剖学的領域を特定するステップを実施するように構成される、請求項2乃至のいずれか1項に記載のX線撮像システム。
【請求項11】
前記X線撮像システムは、前記補正ステップの一部として、前記X線撮影画像から前記算定された散乱信号を減算するステップを実施するように構成される、請求項2乃至10のいずれか1項に記載のX線撮像システム。
【請求項12】
前記X線撮像システムは、前記補正ステップの一部として、前記算定された散乱信号を取り入れるために、散乱信号フラクションを前記X線撮影画像に乗じるステップを実施するように構成される、請求項2乃至10のいずれか1項に記載のX線撮像システム。
【請求項13】
請求項1に記載の方法の各ステップをコンピュータに実施させるための、コンピュータ可読媒体に記憶されたコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象を通過したX線放射線から導き出されたX線撮影画像を処理する方法、かかる方法を実施するX線撮像システム、及びコンピュータ可読媒体に記憶され、コンピュータ上でランするとき前記方法を実施するように構成されたコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線放射線が、イメージングされるべき患者のような対象を透過するとき、散乱放射線が生成される。散乱放射線は、X線画像のコントラストの低下を引き起こす。例えば散乱防止グリッドのような散乱防止装置は、非散乱放射線が通過することを許しつつ、散乱放射線を減衰させる品質を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、散乱防止装置が、散乱放射線によってもたらされるコントラスト低下を防止するために、一般に用いられている。しかしながら、散乱防止装置の使用及び特に散乱防止グリッドの使用は、臨床ワークフローにおいて、いくつかの要求及びゆえに制限を課す。
【0004】
ゆえに、臨床ワークフローの制限を回避しながら、コントラスト強調を提供するX線撮影画像の処理方法が必要とされている。
【0005】
本発明の目的は、独立請求項の主題により解決され、他の実施形態は、従属請求項に盛り込まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の以下に記述される見地は、本発明によるX線撮像システム及びコンピュータプログラムにも適用されることに留意されるべきである。
【0007】
本発明の第1の見地によれば、対象を通過したX線放射線から導き出されたX線撮影画像を処理する方法が提供される。このような方法は、X線撮影画像に基づいて、前記X線撮影画像に存在する散乱信号を算定するステップと、算定された散乱信号に基づいて、対象を通過したX線放射線から基準散乱防止装置によって除去可能である散乱放射線を示す散乱除去信号を計算するステップと、散乱除去信号に基づいてX線撮影画像を補正するステップと、を含む。
【0008】
本発明による方法は、算定された散乱信号に基づいて、散乱除去信号を計算するステップを含む。この散乱除去信号は、対象を通過したX線放射線から基準散乱防止装置によって除去可能である散乱放射線を示し、すなわち、基準散乱防止装置が物理的に用いられる場合にそのようなX線放射線から除去されるであろう散乱放射線を示す。それゆえ、本発明による方法は、基準散乱防止装置を物理的に用いることなしに基準散乱防止装置のコントラスト強調効果を実現できる。従って、本発明による方法は、散乱防止装置及びより顕著には散乱防止グリッドを用いることに付随するワークフローの制限を、有利に且つ効果的に回避する。このようなワークフローの制限は、例えば、X線ビームに対する散乱防止装置の適切な位置及びアライメントに関連する。結果として、本発明は、特に、固定のジオメトリが存在しないベッドサイド胸部X線撮像のようなフリーなX線曝露において、有用なアプリケーションを与える。同様に、本発明は、散乱防止装置の重み及びかさが障害となる集中ケアユニットのワークフローを改善する。
【0009】
この文脈において、散乱防止装置は、散乱防止グリッド、エアギャップ技術、及び/又はスロットスキャンシステムを包含する。
【0010】
更に、本発明による方法は、ハイパス周波数フィルタによるX線撮影画像の処理を通じて、画像コントラストを増大させる場合に得られるアーチファクトを有利に防ぐ。例えば、アーチファクトになりうる低線量領域における信号対雑音比の低下が、本発明により効果的に回避される。
【0011】
本発明の第2の見地によれば、X線撮像システムが、本発明による方法を実施する目的で提供される。
【0012】
本発明によるX線撮像システムの好適な実施形態において、X線撮像システムは、散乱除去を計算するステップを実施する際に基準散乱防止グリッドを使用するように構成される。
【0013】
本発明によるX線撮像システムの別の好適な実施形態において、X線撮像システムは、散乱除去信号を計算するステップを実施する際に、基準散乱防止装置により前もって取得された較正データを使用するように構成される。この実施形態は、有利には、散乱除去信号を計算する正確さを高める。
【0014】
本発明によるX線撮像システムの別の好適な実施形態において、X線撮像システムは、散乱除去信号を計算するステップの一部として、ユーザの手作業のンタラクションによって、基準散乱防止装置の品質を特定するステップを実施するように構成される。例えば、X線撮像システムは、複数の基準散乱防止装置から、目下の臨床アプリケーションと整合する品質を有する基準散乱防止グリッドのような特定の基準散乱防止装置を、ユーザインタフェースを通じて選択するようにユーザに提示することができる。更に、X線撮像システムは、その後、このような基準散乱防止グリッドの選択度及び/又はコントラスト改善度を特定するようにユーザに提示してもよい。この実施形態は、臨床上の柔軟性を増大する利点を有する。代替として、X線撮像システムは、目下の臨床アプリケーションに依存して、基準散乱防止装置のタイプ及びその特性を自動的に選択してもよい。
【0015】
本発明によるX線撮像システムの別の好適な実施形態において、X線撮像システムは、X線撮影画像に基づいて散乱信号を算定するステップの一部として、データベースから、X線撮影画像の個々の局所的な特性に関連して典型的な散乱カーネルを取り出し、散乱信号を算定するために前記散乱カーネルを重ね合わせるステップを実施するように構成される。
【0016】
本発明によるX線撮像システムの別の好適な実施形態において、X線撮像システムは、データベースから典型的な散乱カーネルを取り出すステップを実施する際、X線撮影画像の個々の局所的な信号及び前記個々の局所的な信号の個々の局所的な空間勾配を使用するように構成される。例えば、このような局所的な信号は、ピクセルごとに決定されることができる。X線撮影画像の個々の局所的な信号及びその局所的な空間勾配は、球体に基づく散乱モデリングの用途に特に適している。X線撮影画像の個々の局所的な信号及びその局所的な空間勾配は、ユニークであり、身体部位ごとに、画像ごとに、患者ごとに、及びより一般的にはピクセルごとに異なる。従って、この実施形態は、患者及び領域に特化した散乱補正を有利に可能にする。例えば、コントラスト強調は、痩せた患者よりも肥満の患者の場合に一層強くなる。同様に、患者胸部のX線撮影画像に関して、コントラスト強調は、例えば縦隔及び腹部のような散乱フラクションが高い領域の場合はより強くなり、散乱フラクションがあまり高くない領域(例えば肺)の場合は強くならない。
【0017】
本発明によるX線撮像システムの別の好適な実施形態において、X線撮像システムは、データベースから典型的な散乱カーネルを取り出すステップを実施する際、モンテカルロシミュレーションにより前もって生成された散乱カーネルを使用するように構成される。モンテカルロシミュレーションは、正確な数値近似のための正確な方法であることが分かっている。散乱算定の目的で、管電圧のレンジに依存する材料レベルのレンジにおけるX線の通過のモンテカルロシミュレーションが、用いられることが可能である。この目的に特に適した材料は水である。しかしながら、モンテカルロシミュレーションは、多くの計算努力を必要とする。臨床ワークフローがこのような計算コストによって妨げられないという点で、この実施形態は有利である。すなわち、この実施形態は、前もってこのような計算努力を行い、上述のデータベースに結果を記憶しておき、その後、データベースにアクセスすることによりそれらの結果を再利用することを効果的に提案する。
【0018】
本発明によるX線撮像システムの別の好適な実施形態において、X線撮像システムは、X線撮影画像の解像度より低い解像度を使用して散乱を算定するステップを実施するように構成される。この実施形態は、正確さを損なうことなく、計算時間を短縮するという利点を有する。すなわち、算定された散乱信号は、スムーズに変わり、低周波数成分により支配される。従って、算定は、画像の解像度よりも低い解像度で良好に実現可能である。
【0019】
米国特許第8,000,435B2号明細書は、散乱カーネルの生成を開示しており、その内容は参照によって本願明細書に盛り込まれるものとする。
【0020】
本発明によるX線撮像システムの別の好適な実施形態において、X線撮像システムは、算定された散乱信号の解像度を、X線撮影画像の解像度に等しいレベルに増大させるステップを実施するように構成される。この実施形態は、算定され較正された散乱信号に基づいて、散乱に関してX線撮影画像を補正することを有利に改善する。
【0021】
本発明によるX線撮像システムの別の好適な実施形態において、X線撮像システムは、セグメント化を通じて、コントラスト強調が特に望まれる解剖学的領域を特定するステップを実施するように構成される。このようなセグメント化は、ユーザインタフェースを通じてユーザの手作業のインタラクションにより起動されることができる。代替として、セグメント化が自動的に実施されることもできる。このような手作業の又は自動的なセグメント化の効果は、局所的に高いコントラスト強調に向けて、基準散乱防止装置の品質を局所的に適応させることにある。例えば、基準散乱防止グリッドに関して、このようなセグメント化は、局所的に、選択度及び/又はコントラスト改善度を増加させる。この実施形態は、ノイズに関して他の解剖学的領域に否定的な影響を及ぼすことなく、臨床的に最も関心の高い解剖学的領域について最適なコントラスト強調を得るという利点を有する。
【0022】
本発明によるX線撮像システムの別の好適な実施形態において、X線撮像システムは、散乱除去信号に基づいてX線撮影画像を補正するステップを実施する際に、算定された散乱信号をX線撮影画像から減算するステップを実施するように構成される。この実施形態は、それがエッジアーチファクトを最小にするという点で有利である。
【0023】
本発明によるX線撮像システムの別の好適な実施形態において、X線撮像システムは、散乱除去信号に基づいてX線撮影画像を補正するステップを実施する際、算定された散乱信号を取り入れるために、散乱信号フラクションをX線撮影画像に乗じるステップを実施するように構成される。
【0024】
本発明の第3の見地によれば、コンピュータ可読媒体に記憶され、コンピュータ上でランする際に上述の方法を実施するように構成されるコンピュータプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による方法を概略的に示す図。
図2】本発明によるシステムを概略的に示す図。
図3】本発明によるX線撮像システムの実施形態により実施可能な方法を概略的に示す図。
図4】本発明によるX線撮像システムの実施形態により実施可能な別の方法を概略的に示す図。
図5】本発明によるX線撮像システムの実施形態により実施可能な較正ステップの実験的検証の結果を示す図。
図6】本発明によるX線撮像システムの実施形態により実行可能な方法の実験的検証の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、さまざまな図面にわたり使用される等しい参照数字は同一の特徴を示す。
【0027】
図1を参照して、本発明による方法100が概略的に示されている。対象を通過したX線放射線から導き出されたX線撮影画像を処理するこのような方法100は、X線撮影画像に基づいて、前記X線撮影画像に存在する散乱信号を算定するステップ104と、算定された散乱信号に基づいて、対象を通過したX線放射線から基準散乱防止装置によって除去可能である散乱放射線を示す散乱除去信号を計算するステップ106と、散乱除去信号に基づいてX線撮影画像を補正するステップ110と、を含む。
【0028】
図2を参照して、方法100を実施するための本発明のX線撮像システム202が、概略的に示されている。例示のX線撮像システム202は、方法100を実施するためのコントローラ204を有する。代替として、プロセッサ(図示せず)が、この目的で使用されることができる。X線撮像システム202は、それ自体当業者に知られている、イメージングされるべき対象207へ向けてX線放射線206aを出すX線管206を有することができる。X線撮像システム202は更に、それ自体当業者に知られている、対象207を通過したX線放射線206bを検出するX線検出器208を有する。コントローラ204は、X線管206及びX線検出器208の両方から離れたところに配置されることができる。別の例において、X線撮像システム202は、ユーザの手作業によるインタラクションのためのユーザインタフェース210を有する。
【0029】
図1を参照して、方法100により処理されるX線撮影画像は、クリーンな生画像データを含む。特定の例において、X線撮像システム202は、生画像データを生成するステップ101と、その後、このような生画像データを前処理するステップ102であって、すなわち、X線撮影画像を構成するクリーンな生画像データを生成するために、検出器関連のアーチファクトを補正するステップと、を実施するように構成される。X線撮像システム200は、線形又は対数データ空間において、ステップ101及び102を実施するように構成されることができる。
【0030】
一例において、X線撮像システム202は、ステップ106を実施する際に基準散乱防止グリッドを使用するように構成される。ここで、X線撮像システムは、いかなるタイプの基準散乱防止グリッドを用いることもできる。より具体的には、このような基準散乱防止グリッドは、2〜12のレンジの選択度及び/又は1.1〜4.4のレンジのコントラスト改善度を有することができる。これらの量は、通常、それぞれΣ及びKと示され、例えばIEC標準60627に規定されている。
【0031】
別の例において、X線撮像システム202は、基準散乱防止装置により前もって取得された較正データを使用して、ステップ106を実施するように構成される。図4を参照して、このような較正データの実験的な検証の結果が、基準散乱防止装置が選択度5.6及びコントラスト改善度3.4をもつ基準散乱防止グリッドである場合の例について示されている。
【0032】
特定の例において、X線撮像システム202は、ユーザの手作業のインタラクションによって、基準散乱防止装置の品質を特定するステップ106aを実施するように構成される。例えば、X線撮像システム202は、ユーザが、ユーザインタフェース210を通じて、基準散乱防止装置として例えば基準散乱防止グリッドを選択し、その後、このような基準散乱防止グリッドに関連付けられる選択度の値及び/又はコントラスト改善度を選択することを可能にすることができる。
【0033】
別の特定の例示のステップにおいて、X線撮像システム202は、ステップ104の一部として、データベースから、X線撮影画像の個々の局所的な特性に関連して典型的な散乱カーネルを取り出し、その後、散乱信号を算定するために前記散乱カーネルを重ね合わせるステップ104aを実施するように構成される。他の例において、X線撮像システム202は、X線撮影画像の個々の局所的な特性がX線撮影画像の個々の局所的な信号及び前記個々の局所的な信号の個々の局所的な空間勾配を含むように、ステップ104aを実施するように構成される。別の例において、X線撮像システム202は、モンテカルロシミュレーションを使用して、前もって、すなわち方法100の実行の前に、生成されたこのような散乱カーネルを使用してステップ104aを実施するように構成される。
【0034】
他の例において、X線撮像システム202は、X線撮影画像の解像度より低い解像度でステップ106を実施するように構成される。代替として、X線撮像システム202は、フル解像度でステップ106を実施するように構成される。他の特定の例において、X線撮像システム202は、算定された散乱信号の解像度を、画像の解像度に等しいレベルにまで増大させるステップ108を実施するように構成される。
【0035】
別の例において、X線撮像システム202は、セグメント化を通じて、コントラスト強調が特に望まれる解剖学的領域を特定するステップ103を実施するように構成される。X線撮像システム202は、手動で起動されることができるステップ103を、例えばユーザインタフェース201を通じて又は自動的に実施することができる。
【0036】
任意に、X線撮像システム202は、補正されたX線撮影画像、すなわちX線撮像システムのさまざまな実施形態によって取得可能なX線撮影画像を表示するステップ112を実施するように構成される。
【0037】
図3を参照して、別の例において、X線撮像システム202は、ステップ110の一部として、算定された散乱信号をX線撮影画像から減算するステップ110aを実施するように構成される。例えば、散乱信号がゼロである場合、ステップ110a及びゆえにステップ110は、X線撮影画像にいかなる変化も与えない。この特定の例において、X線撮像システム202は、好適には、線形データ空間において、減算を実施するように構成される。X線撮影画像が、対数データ空間において利用できる場合、X線撮像システム202は、減算の前に線形データ空間への変換を実施することができ、このような減算の後、X線撮像システム202は、対数データ空間に戻すように変換を実施することができる。
【0038】
図4を参照して、別の特定の例において、X線撮像システム202は、ステップ110の一部として、X線撮影画像で散乱信号を除算することにより、散乱信号フラクション(散乱信号の割合)を生成するステップ110bを実施するように構成される。この特定の例において、X線撮像システム202は更に、ステップ110の一部として、散乱信号フラクションを100%(又は1)から減算するステップ110cを実施するように構成される。この特定の例のX線撮像システム202は、ステップ110の一部として、ステップ110cの結果をX線撮影画像に乗じるステップ110dを実施するように構成される。例えば、散乱信号フラクションがゼロである場合、ステップ110は、X線撮影画像にいかなる変化も与えない。この特定の例において、X線撮像システム202は、好適には、線形データ空間において乗算を実施するように構成される。X線撮影画像が、対数データ空間で利用できる場合、X線撮像システム202は、乗算の前に線形データ空間への変換を実施することができ、このような乗算の後、X線撮像システム202は、対数データ空間へ戻すように変換を実施することができる。
【0039】
図5は、較正データの実験的検証を示しており、較正データは、X線撮像システム202の特定の例において、ステップ106を実施するために用いられることが可能である。より具体的には、図5は、いくつかの水位に関する管電圧の関数として、コントラスト改善度(contrast improvement factor、CIF)を示す。「グリッド」により示される塗りつぶされた記号は、基準散乱防止グリッドが物理的に取り付けられた場合の測定に関し、「方法」により示される中空の記号は、X線撮像システム202の一実施形態が方法100を実施する場合の測定に関する。この特定の例において、基準散乱防止装置は、方法100において、及び基準散乱防止グリッドが物理的に取り付けられた測定の両方において、選択度5.6及びコントラスト改善度3.4を有する。CIFの決定のために、X線画像は、水の上部のアルミニウムディスクにより生成されるコントラストステップにおいて、生成される。2つの関心領域(以下ROIと記載する関心領域)が、このような画像において規定される。ROIは、平均ピクセル値レベルを有し、アルミニウムディスクの減衰領域の外側にある。ROIは、平均ピクセル値レベルを有し、前記領域内にある。コントラストCは、C=(レベル−レベル)/レベルに従う。基準散乱防止グリッドが取り付けられた測定の場合、CIFは、CGrid/Cと規定されるCIFGridとして示され、ここで、Cは、基準散乱防止グリッドを用いずに又はX線撮像システム202の一実施形態が方法100を実施することなく、得られる基準コントラストを示す。同様に、測定が、方法100を実施するX線撮像システム202の実施形態を用いる場合、CIFは、CMethod/Cと規定されるCIFMethodとして示される。明らかに、考えられるすべての管電圧及び水位について、較正データは非常に正確である。
【0040】
図6は、京都化学(日本、京都)による胸部ファントム及びより詳しくは多用途の胸部ファントム「ラングマン」を使用した方法100の実験的検証を示す。ここでも、測定は、基準散乱防止グリッドが物理的に取り付けられた場合と、X線撮像システム202が方法100を実施する実施形態を用いた場合の測定とにより、実施された。このような測定は、それぞれ「グリッド」及び「方法」と称される。この特定の例において、基準散乱防止グリッドは、選択度5.6及びコントラスト改善度3.4を有する。複数の胸部プレートが、異なるサイズの患者を模倣するために使用された。アルミニウムディスクが、図4に関して説明したようなコントラストステップを生成する目的で、肺、心臓後、及び腹部の領域に位置付けられた。上述の領域は、別々に実験的に分析された。図6を参照されたい。X線撮像システム202が方法100を実施する実施形態によって得られたCIFレベルと、基準散乱防止グリッドを物理的に用いることにより得られたCIFレベルとの間の一致は、非常に強い。
【0041】
本発明は、図面及び上述の記述において詳しく図示され記述されているが、このような図示及び記述は、説明的又は例示的なものと考えられるべきであり、制限的なものではない。本発明は、開示された実施形態に制限されない。開示された実施形態に対する他の変更が、図面、開示及び添付の請求項の検討に基づき、当業者が請求項に記載の本発明を実施することにより理解され達成されることができる。請求項において、「含む、有する」という語は、他の構成要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を除外しない。単一のプロセッサ又はコントローラ又は他のユニットが、請求項に列挙されるいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。請求項における参照符号は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6