(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の如き構造であっても全く問題がないわけではなく、例えば下水道管路の場合、地震の影響や地盤沈下の影響を受けて本管51と取付管52との接続部位53に於ける止水部分、或いは管自体にひび割れが生じ、該ひび割れから本管51に地下水が浸入する虞がある。
【0005】
例えば下水道管路の本管51や該本管51に接続した取付管52は、経時的に内周面の劣化や接続部位53の劣化、或いは各管自体の劣化による割れが生じ、劣化した部分から地下水が浸入することがある。このような場合、
図6(b)に示すように、本管51や取付管52の内周面にライニング材54を敷設して更生するのが一般的である。
【0006】
しかし、ライニング材54は本管51や取付管52の内周面を補修するものの、該ライニング材54の外周面側にある本管51や取付管52自体、及び両管の接続部位53自体は劣化した状態を維持する。このため、地下水がライニング材54と各管51、52との隙間を伝って本管51内に浸入する虞がある。
【0007】
特に、下水道管路の場合、地下水が本管に浸入することによって最終処分場の負担を大きくしてしまうという問題が生じる。また、地下水と共に周辺の土砂も本管に侵入することとなり、この結果、管路の周辺に空洞が形成されて路面陥没の原因となるという問題も生じる。
【0008】
本発明の目的は、本管に対する取付管の接続部位から本管への地下水の浸透を防ぐことができる取付管の開口部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る取付管の開口部構造は、曲面状の壁面又は平面状の壁面に開口する取付管の開口部の構造であって、曲面状の壁面又は平面状の壁面を含む壁面に対応する形状に形成されたフランジと、該フランジから突設され前記壁面に開口する取付管に挿入されて水を流通させるボスと、を有するフランジ部材を有し、前記フランジ部材
を構成するボスの外周面が弾性を有しており、該外周面を圧縮させた状態のボスを前記壁面に開口する取付管の内部に挿入すると共に
該外周面を圧縮させた状態を保持して該取付管の内周面に接触させ、且つ前記壁面と接触する面に止水材を設けたフランジを前記壁面に接触させて該壁面との間に形成された隙間を遮蔽するものである。
【0010】
上記取付管の開口部構造に於いて、
前記フランジ部材を構成するフランジの前記壁面と接触する面に設けた止水材は、水の作用によって膨潤する水膨潤性の止水材であることが好ましい。
【0011】
また、上記
何れかの取付管の開口部構造に於いて、
前記フランジ部材を構成するフランジの前記壁面と接触する面にはリング状の突起が形成されていることが好ましい。
【0012】
また、
本発明に係る他の取付管の開口部構造は、曲面状の壁面又は平面状の壁面に開口する取付管の開口部の構造であって、曲面状の壁面又は平面状の壁面を含む壁面に対応する形状に形成されたフランジと、該フランジから突設され前記壁面に開口する取付管に挿入されて水を流通させるボスと、を有するフランジ部材を有し、
前記フランジ部材を構成するボスの内周面には突起が形成され、且つ壁面に開口する前記取付管の内径よりも小さい外径を有し、且つ軸方向に沿って該ボスの径方向への変形を許容するための複数のスリットが形成されており、該ボスを前記取付管に挿入した後、円筒状の拡径部材を挿入して前記突起と圧接させることで、該ボスを拡径させて前記取付管の内周面に圧接させ、且つ前記壁面と接触する面に止水材を設けたフランジを前記壁面に接触させて該壁面との間に形成された隙間を遮蔽するものである。
【0013】
上
記取付管の開口部構造に於いて、前記フランジ部材を構成するボスの外周面には前記取付管の内周面と接触する突起が形成されていることが好ましい。
【0014】
また、上記何れかの取付管の開口部構造に於いて、前記フランジ部材を構成するボスに形成されたスリットに止水材が充填されていることが好ましい。
【0015】
また、上記何れかの開口部構造に於いて、前記フランジ部材を構成するフランジの前記壁面と接触する面に設けた止水材は、水の作用によって膨潤する水膨潤性の止水材であることが好ましい。
【0016】
更に、上記何れかの取付管の開口部構造に於いて、前記フランジ部材を構成するフランジの前記壁面と接触する面にはリング状の突起が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る取付管の開口部構造では、フランジ部材のボスを取付管に挿入すると共にフランジを壁面に接触させて壁面との間の隙間を遮蔽することで、取付管と壁との接続部位或いは取付管の劣化部位からの水の浸透を防ぐことができる。特に、フランジが、曲面状の壁面或いは平面状の壁面に応じた形状に形成されているため、壁面を有する部材が円筒管や角管であっても適用することができる。
【0018】
また、ボスの外周面が弾性を有しており、該外周面を圧縮させた状態のボスを取付管に挿入すると共に外周面を圧縮させた状態を保持して取付管の内周面に接触させることで、フランジ部材の取付管に対する取付状態を自己保持することができる。また、フランジの壁面と接触する面に止水材を設けので、該フランジを壁面に接触させて該壁面との間に形成された隙間を遮蔽して止水することができる。
【0019】
また、ボスが取付管の内径よりも小さい外径を有し、且つ軸方向に沿って該ボスの径方向への変形を許容するための複数のスリットを形成することで、容易に径方向への変形を実現できる。このため、ボスを取付管に挿入した後、円筒状の拡径部材を圧入することで、ボスを拡径させて取付管の内周面に圧接させてフランジ部材の取付管に対する取付状態を自己保持することができる。また、フランジの壁面と接触する面に止水材を設けので、該フランジを壁面に接触させて該壁面との間に形成された隙間を遮蔽して止水することができる。
【0020】
また、ボスの内周面に突起を形成することで、該ボスを前記取付管に挿入した後、円筒状の拡径部材を挿入して前記突起と圧接させることで、該ボスを拡径させて前記取付管の内周面に圧接させることができる。このため、ボスを拡径させてフランジ部材の取付管に対する取付状態を自己保持することができる。
【0021】
また、ボスの外周面に取付管の内周面と接触する突起を形成することで、該ボスが拡径したとき、突起を取付管の内周面に対し集中的に圧接させることができる。
【0022】
また、ボスに形成されたスリットに止水材を充填することで、取付管に流れる水がボスのスリットを介して反対面側に浸入することがない。
【0023】
また、フランジの壁面と接触する面に設けた止水材を水の作用によって膨潤する水膨潤性止水材とすることで、取付管の劣化部位から水が壁面側に浸透した場合、浸透した水の作用によって止水材が膨潤する。このため、フランジと壁面との隙間を確実に遮蔽して水の浸透を防ぐことができる。
【0024】
更に、フランジの壁面と接触する面にリング状の突起を形成することで、該フランジを壁面に接触させたとき、突起を壁面に対し確実に接触させて隙間を遮蔽することができる。特に、フランジに膨潤性の止水材が設けられているような場合、膨潤した止水材が突起によって確実に壁面との隙間を遮蔽し、確実に水の浸入を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る取付管の開口部構造について説明する。本発明に係る開口部構造は、下水道管路や上水道管路或いは農業用水管路等の本管に接続された取付管或いは枝管が、本管の内周面(以下「壁面」ともいう)に開口した部位の構造に関するものである。特に、本管と取付管の接続部位から地下水が浸入したとしても、この地下水の本管内への浸透を防止し得るようにしたものである。
【0027】
本発明に於いて、曲面状の壁面、平面状の壁面は、取付管が開口する相手側の壁面の形状であり、これらの壁面を有する部材の全体形状を限定するものではない。例えば、曲面状の壁面を有する部材としてはコンクリート管に代表される円筒管があるが、一部(例えば底部及び側部)が角型で、一部(天井面)が曲面であるような管であっても良い。同様に、平面状の壁面を有する部材としてはボックスカルバートに代表される角形管があるが、前述した一部が角形で一部が曲面であるような管であっても良い。
【0028】
また、「フランジを壁面に接触させて壁面との間に形成された隙間を遮蔽する」とは、必ずしもフランジが壁面に密着して遮蔽することに限定するものではなく、少なくとも地下水が本管に浸入する虞のある隙間を遮蔽することが可能であれば良い。また、フランジが単独で壁面との隙間を遮蔽することに限定するものでもなく、フランジに設けた止水材によって遮蔽することでも良い。
【0029】
また、「取付管」は、必ずしも曲面状の壁面、平面状の壁面を構成する部材(例えば円筒管や角型管等の部材)とは別構造の部材である必要はない。即ち、本管と該本管部分から分岐した枝管とが一体的に構成されている場合、該枝管も取付管の範囲に入るものとする。
【0030】
本発明では、壁面と取付管との間を遮蔽するために、フランジとボスを有するフランジ部材を用いている。そして、フランジ部材のボスを取付管に挿入すると共に、フランジを壁面に接触させて壁面との間に形成された隙間を遮蔽することで、地下水の壁面への浸透を防いでいる。特に、フランジが、曲面状の壁面或いは平面状の壁面に対向した形状を有するため、ボスを取付管に挿入させたとき、該フランジを壁面に隙間なく接触させることが可能となる。
【0031】
また、ボスを取付管に挿入したフランジ部材の固定方法については限定するものではないが、ボスの取付管の内周面に対する接触摩擦により、自己保持して挿入状態を保持し得ることが好ましい。特に、ボスの内部は取付管を流通する水が流れるため、該ボスには流水からの力が作用することとなる。このため、フランジ部材はボスに作用する力に対抗して取付管の内部への挿入状態を保持することが必要となる。
【0032】
ボスを取付管に挿入したフランジ部材を固定する場合、ボスの外周面と取付管の内周面、又は壁面とフランジの該壁面と対向する面を接着する方法がある。また、ボスの外径を取付管の内径よりも僅かに大きく形成しておき、該ボスを取付管に圧入する方法がある。これらの方法は何れも採用することが可能である。
【0033】
特に、以下説明する第1実施例に係る取付管の開口部構造に用いるフランジ部材は、ボスの外周面が弾性を有して構成されている。このフランジ部材では、ボスの外周面を圧縮させた状態で取付管の内部に挿入すると共に圧縮状態を保持させることで、該ボスの弾発力によって取付管の内周面に圧接させて自己保持することが可能である。
【0034】
また、第2実施例に係る取付管の開口部構造に用いるフランジ部材は、ボスに複数のスリットを形成することで径方向への変形を許容させるように構成されている。このフランジ部材では、予め径を取付管の内径よりも小さくした状態のボスを該取付管に挿入した後、拡径することで、該ボスを取付管の内周面に圧接させて自己保持することが可能である。
【0035】
フランジ部材を構成するフランジの外径寸法は特に限定するものではないが、本管に取付管を接続する際に該本管に形成した取付管を取り付けるための孔の径よりも充分に大きいことが必要である。このようなフランジを本管の内周面に接触させることで、該壁面との間に形成された隙間を遮蔽することが可能となる。
【0036】
また、フランジの壁面と接触する面に設けた止水材は長期的に止水性を保持し得るものであれば良く、材質を限定するものではない。しかし、フランジと壁面との間に水が浸透したとき、この水の作用によって膨潤する膨潤性の止水材であることが好ましい。このような止水材の場合、フランジ部材のボスを取付管に挿入して取り付ける際には膨潤していないため、取付作業の進行に支障をきたすことなく、円滑な作業を実現することが可能となる。
【0037】
そして、取付管の劣化部位から水が浸透したとき、この浸透した水と反応して膨潤してフランジと壁面との間に隙間が形成されていても、この隙間を遮蔽することが可能となる。従って、壁面が劣化して表面に凹凸が生じているような場合であって、フランジとの間に凹凸に応じた隙間が形成されている場合、確実にこの隙間を遮蔽することが可能となり、止水性を確保することが可能となる。
【0038】
また、フランジの壁面と接触する面に形成するリング状の突起の高さは特に限定するものではなく、ボスを取付管に挿入してフランジ部材を取り付ける際に、頂部が壁面に接触して隙間を遮蔽し得る高さであれば良い。また、突起を形成するリングの直径も特に限定するものではないが、取付管を取り付けるために本管に形成された取付孔の直径よりも大きいことが必要である。
【0039】
次に、第1実施例に係る取付管の開口部構造について
図1、
図2(a)、
図3を用いて説明する。本実施例では、取付管2は下水道管路を構成する本管1に接続された取付管として構成されている。このため、取付管2は曲面状の壁面に開口することとなり、本管1の管軸方向の断面は
図1に示す図となり、管軸に対し直交する方向の断面は
図2(a)に示す図となる。
【0040】
また、取付管2が、
図2(b)に示すように、角管9に形成された取付穴9aに挿通されて平面状の壁面に開口する場合には、取付管の開口構造の断面図は
図1と同様となる。
【0041】
図に於いて、本管1はコンクリート管からなる円筒管として構成されている。また、本管1に接続される取付管2もコンクリート管或いは塩化ビニルに代表される合成樹脂管からなる円筒管として構成されている。本管1の所定位置には取付管2の外径に対応させた径を有する取付穴1aが形成され、該取付穴1aに取付管2の開口端2a側が挿入されている。
【0042】
本管1に形成された取付穴1aの径は取付管2の外径よりも僅かに大きいため、該取付穴1aに取付管2を挿入したとき、両者の間には隙間3が形成される。この隙間3は、極めて小さい寸法であるが、隙間であることを強調するために各図では大きく記載されている。しかし、寸法が小さくとも隙間であることに変わりはなく、地下水が流通する水道としては充分な寸法である。このため、隙間3には止水性を有する充填材4が充填され、この充填材4により、取付管2が本管1に対し安定した状態で取り付けられると共に、本管1に対する隙間3を介する地下水の浸透を防いでいる。
【0043】
取付管2の本管1に対する開口端2aにフランジ部材Aが挿入されている。フランジ部材Aは、
図3に示すように、本管1の内周面の形状に対応した形状に形成されたフランジ11と、フランジ11から突設されたボス12と、有して構成されている。特に、フランジ部材Aは、下水道管路の本管1内で作業することを考慮して取扱い性が良好であることが好ましい。このため、フランジ部材Aは、塩化ビニル或いはポリエチレン等の合成樹脂によって構成されている。
【0044】
フランジ部材Aを構成するフランジ11は、本管1に形成された取付穴1aの直径よりも充分に大きい外径を有している。特に、フランジ11は、地下水の浸透を防ぐために本管1の内周面(壁面)1bに接触して隙間を遮蔽するために有利な外径や厚さで形成されることが好ましい。
【0045】
また、フランジ11は、取付管2が開口する壁面の形状に対応した形状を有している。即ち、
図2(a)に示すように取付管2が曲面状の壁面に開口する場合には、フランジ11は該壁面の曲面と同様の曲面状に形成され、
図2(b)に示すように取付管2が平面状の壁面に開口する場合には、フランジ11も平面状に形成されている。
【0046】
フランジ部材Aは、フランジ11の壁面1bと接触する面である接触面11aが壁面1bに接触したとき、取付管2と壁面1bとの間に形成された隙間を遮蔽し得るように構成されている。例えば、壁面1bが劣化に伴って生じた凹凸面であるような場合、平面状の接触面11aが接触しても確実に隙間を遮蔽し得ない虞がある。
【0047】
このため、本実施例では、フランジ11の接触面11aにリング状の突起11bを形成している。突起11bは、取付孔1aの直径よりも大きい径を有するリング状に連続した形成されたリブとして構成されている。突起11bの断面形状は特に限定するものではなく、例えば三角形或いは台形等の形状であって良い。特に、壁面1bが凹凸を有する面である場合でも、フランジ部材Aを取付管2に取り付けたとき、突起11bの頂部が壁面1bの凹凸に沿って変形して遮蔽することが可能である。
【0048】
フランジ部材Aのボス12は外周面が弾性を有している。ボス12の外周面の弾性は、フランジ部材Aを取付管2に取り付けたとき、自己保持するのに必要な程度であることが好ましい。このため、ボス12自体を弾性体によって構成しても良く、或いは充分な剛性を有する芯を形成して外周面に弾性を有する材をコーティング或いはライニングして構成しても良い。
【0049】
ボス12自体を弾性体とする場合、コルクやゴムを利用して構成することが可能である。また、ボス12の外周面の弾性は、外力の作用によって体積が減少し、減少した体積が元の体積に復帰する際に、外部に力を作用させるようなものであることが好ましい。このような物質としては、合成樹脂の発泡体がある。
【0050】
ボス12の外周面が弾性を有することによって、取付管2の内部に挿入したとき該ボス12の外周面が取付管2の内周面に圧接することで、フランジ部材Aの取付管2に対する自己保持が可能となる。また、ボス12の外周面が取付管2の内周面に圧接することによって、両面の間に隙間が生じることがなく、止水性を保持することが可能となる。このように自己保持性或いは止水性を発揮するためには、ボス12の外周面をゴムによって形成しておくことが好ましく、水の作用によって膨潤する水膨潤ゴムであるとより好ましい。
【0051】
本実施例では、フランジ部材Aを構成するボス12は、フランジ11と共に成形された芯材12aの外周面に止水性を有する水膨潤ゴムからなる弾性体12bをライニングし、自由状態に於ける外径が取付管2の内径よりも大きくなるように構成している。尚、自由状態に於けるボス12の外径は、取付管2の内径や、弾性体12bの弾力性等の条件に応じて適宜設定している。
【0052】
また、フランジ部材Aを構成するボス12は取付管2に挿入されるため、自由端側の外周面にはテーパ部12dを設けておくことが好ましい。
【0053】
上記の如く構成されたフランジ部材Aは、ボス12に設けた弾性体12bを強制的に縮径させて外径を取付管2の内径よりも小さくし、この状態で開口端2aから取付管2に挿入される。そして、フランジ11が本管1の内周面(壁面)1bに接触したとき、ボス12に対する強制的な圧縮を解除し、これに伴って弾性体12bが取付管2の内周面2bに圧接することで、フランジ部材Aが取付管2に自己保持されている。
【0054】
従って、本管1に形成された取付穴1aの内周面と、取付管2の外周面との間に形成された隙間3はフランジ部材Aのフランジ11によって覆われ、且つ接触面11aが壁面1bに接触することで遮蔽されることとなる。このため、地震や地盤沈下等により隙間3に充填された充填材4にひび割れが生じ、このひび割れを介して地下水が隙間3に浸透した場合でも、本管1への浸入を防ぐことが可能である。
【0055】
また、地震や地盤沈下或いは経年による劣化により、取付管2の本管1の外周面の近傍に割れ等の損傷が生じた場合、取付管2の内周面に二点鎖線で示すライニング材6を敷設して更生することが行われる。このような場合、取付管2に生じた損傷部分はそのままの状態で存在することとなり、地下水が浸透する虞があり、浸透した水は取付管2とライニング材6との隙間7から開口端2a方向に流れる。
【0056】
しかし、取付管2の開口端2aはフランジ部材Aのフランジ11によって覆われ、且つ接触面11aが壁面1bに接触することで該壁面1bとの間に形成された隙間が遮蔽されることとなる。このため、隙間7はフランジ11によって覆われることとなり、該隙間7から水が浸透しても、この水の本管1への浸入を防ぐことが可能である。
【0057】
フランジ部材Aを取付管2に挿入する際に、フランジ11の接触面11aに止水材8を設けておくことが好ましい。前述したように、フランジ部材Aを取付管2に挿入する際に、ボス12の外周面12cが取付管2の内周面2bに圧接してフランジ部材Aが自己保持されるため、両面12c、2bの間に隙間が生じることがない。また、ボス12の弾性体12bが水膨潤ゴムによって構成されるため、ボス12の外周面12cに止水材を設ける必要はない。
【0058】
例えば、取付管2に流通する水がボス12の外周面12cと取付管2の内周面2bとの間に作用したとき、弾性体12bを構成する水膨潤ゴムが膨潤して水の浸透を防ぐことが可能となる。
【0059】
止水材8としては、浸透した水を止水することが可能であれば良く、材質等を限定するものではない。しかし、フランジ部材Aを取付管2に取り付ける際の作業のし易さや経時的な性能の確保等を考慮すると、止水材8としては水の作用によって膨潤する水膨潤性を有するものであることが好ましい。例えば、水の作用によって膨潤する水膨潤性の止水材としては、水膨潤ゴムからなる止水材8や、水膨潤性を有するフェルトを圧縮させた水膨潤フェルトからなる止水材8がある。
【0060】
水膨潤フェルトからなる止水材8は、水の作用で膨潤する水膨潤繊維(例えばポリアクリル酸系の繊維)と、膨潤することのない非膨潤繊維(例えばポリエチレンテレフタレート系の繊維)と、を予め設定された比率で配合した材料によって構成されている。そして、この水膨潤フェルトを、通常の状態よりも圧縮させてフランジ部材Aのフランジ11の接触面11aに設けて止水材8としている。このため、フランジ部材Aを取付管2に取り付けた初期の状態では、止水材8を構成する水膨潤フェルトは繊維間に空隙が形成されている。しかし、止水材8に水圧が作用したとき、水膨潤繊維が膨潤して空隙を埋めることで高い止水性を発揮する。
【0061】
フランジ11の接触面11aに止水材を設ける場合、本管1の内周面1bに生じている凹凸を吸収し得るように水膨潤フェルトからなる止水材8を用いることが好ましい。しかし、フランジ11の接触面11aに水膨潤ゴムからなる止水材8を用いることも可能である。
【0062】
上記の如く、フランジ部材Aを構成するフランジ11に止水材8を設けておくことで、フランジ部材Aを取付管2に挿入したとき、フランジ11の接触面11aと本管1の内周面1bとの間に止水材8からなる止水層を形成することが可能となる。特に、フランジ11の接触面11aに設けた止水材8は突起11bの表面にも設けられることとなる。
【0063】
また、取付穴1aの隙間3に充填された充填材4に生じたひび割れや、取付管2とライニング材6の間の隙間7から地下水が浸透した場合、浸透した水の作用によってフランジ11の接触面11a及び突起11bに設けた止水材8が膨潤する。膨潤した止水材8は、本管1の内周面1bに生じている凹凸を遮蔽し、確実に水の本管1への浸入を防ぐことが可能である。
【0064】
次に、第2実施例に係る取付管の開口部構造について
図4、
図5により説明する。尚、図に於いて、前述の実施例と同一の部分、又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
前述の第1実施例と同様に、取付管2の本管1に対する開口端2aにフランジ部材Bが挿入されている。フランジ部材Bは、
図5に示すように、本管1の内周面の形状に対応した形状に形成されたフランジ16と、フランジ16から突設されたボス17と、有して構成されている。
【0066】
フランジ部材Bを構成するボス17には複数のスリット18が形成されており、該スリット18が形成されることで剛性が低下し、径方向への変形を許容し得るように構成されている。スリット18は、ボス17の長手方向に複数形成されているものの、各スリット18はボス17の自由端、及びフランジ16側の端部にまで形成されることはない。また、スリット18の数や寸法は限定するものではなく、フランジ部材Bの原料や肉厚等の条件に応じて適宜設定することが好ましい。
【0067】
上記の如く構成されたボス17は径方向への変形が可能である。このため、ボス17の外径を取付管2の内径よりも小さくしておき、取付管2に挿入した後、拡径することでフランジ部材Bの取付管2に対する挿入状態を保持することが可能である。
【0068】
即ち、内周面17aに周方向に沿って複数の突起19aを形成すると共に外径が取付管2の内径よりも小さいボス17を形成し、ボス17に内径よりも大きい外径を有するパイプ状の拡径部材20を用意する。そして、拡径部材20をボス17の内部に挿入して該ボス17を拡径することで、外周面17bを取付管2の内周面2bに圧接させ、これにより、フランジ部材Bの取付管2に対する挿入状態を保持することが可能である。
【0069】
特に、本実施例では、ボス17の外周面17bにも該周面に沿って複数の突起19bを形成することで、ボス17の拡径に伴う力を突起19bに集中させて効果的な圧接状態を実現し得るように構成されている。
【0070】
ボス17の各突起19a、19bは夫々スリット18を横断する方向に形成されると共に、互いに内外周面17a、17bに於ける対向する位置に形成されている。このため、拡径部材20によるボス17の拡径の際には、突起19aに作用する力が直接突起19bに伝えられることとなる。
【0071】
尚、ボス17の外周面17bに形成される突起19bの外径は、取付管2の内径よりも僅かに大きくとも、略等しくとも、小さくとも良い。即ち、ボス17が径方向の変形を許容するため、突起19bの外径が取付管2の内径よりも僅かに大きくとも、取付管2への挿入は可能であり、ボス17に拡径部材20を挿入することで、突起19bの取付管2に対する圧接状態を保持することが可能である。従って、突起19a、19bの厚さ、拡径部材20の外径、を設定することによって、フランジ部材Bの取付管2に対する挿入状態を良好に保持することが可能となる。
【0072】
ボス17に形成されたスリット18には止水材21が充填されている。止水材21の材質を特に限定するものではなく、フランジ部材Bを取付管2に挿入した後、ボス17と取付管2との隙間部分に浸入する水がフランジ16側に浸透するのを防ぐことが可能であれば良い。
【0073】
上記の如く構成されたフランジ部材Bは、ボス17が開口端2aから取付管2に挿入される。そして、フランジ16を本管1の内周面1bに接触させ、この状態で、ボス17に拡径部材20を挿入する。挿入された拡径部材20がボス17の突起19aに接触して該ボス17を拡径させ、これに伴って、突起19bが取付管2の内周面2bに圧接することで、フランジ部材Bは取付管2に保持される。
【0074】
従って、前述した第1実施例と同様に、本管1に形成された取付穴1aの内周面と、取付管2の外周面との間に形成された隙間3はフランジ部材Bのフランジ16によって覆われることとなる。また、本管1の内周面1bとフランジ16との間に形成された隙間は、該フランジ16、特に、接触面16aに形成されたリング状の突起16bによって遮蔽されることとなる。このため、隙間3に充填された充填材4に生じたひび割れ、或いは取付管2の内周面を更生したライニング材との間に生じた隙間からの水の本管1への浸入を防ぐことが可能である。
【0075】
特に、フランジ材Bを取付管2に挿入する際に、フランジ16のリング状の突起16bを含む接触面16aに、止水材8を設けておくことが好ましい。フランジ部材Bを構成するフランジ16に止水材8を設けておくことで、フランジ部材Bを取付管2に挿入したとき、フランジ16の接触面16aと本管1の内周面1bとの間に止水材層を形成することが可能となる。このため、本管1に形成された取付穴1aの隙間3に充填された充填材4に生じたひび割れ部分や、取付管2とライニング材の間の隙間から地下水が浸透しても、浸透した水の本管1への浸入を防ぐことが可能である。