特許第6400965号(P6400965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オイレス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6400965-ダンパ 図000002
  • 特許6400965-ダンパ 図000003
  • 特許6400965-ダンパ 図000004
  • 特許6400965-ダンパ 図000005
  • 特許6400965-ダンパ 図000006
  • 特許6400965-ダンパ 図000007
  • 特許6400965-ダンパ 図000008
  • 特許6400965-ダンパ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6400965
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/08 20060101AFI20180920BHJP
   B60T 11/18 20060101ALI20180920BHJP
   B60T 7/06 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   F16F7/08
   B60T11/18
   B60T7/06 G
   B60T7/06 E
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-145948(P2014-145948)
(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公開番号】特開2016-23652(P2016-23652A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】堀田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】小堀 陽太
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−076852(JP,A)
【文献】 特開平09−133179(JP,A)
【文献】 特開平08−105481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T1/00−7/10
10/00−11/34
F16F7/00−7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心に対する傾斜面を有する移動部材が当該移動部材の軸心に沿って挿入され、前記傾斜面を前記軸心周りに囲む筒状のケースと、
前記移動部材を前記軸心の周りに囲む複数位置において前記移動部材の傾斜面と前記ケースの内壁面との間に配置され、前記移動部材の傾斜面に対向する摺動面で、当該移動部材の傾斜面を前記軸心に沿って往復移動可能に支持し、前記移動部材が前記軸心に沿って往復移動した場合に、前記傾斜面と前記摺動面とのすべり接触により、前記ケースの内壁面から離れる方向および前記ケースの内壁面に近づく方向に移動する複数のスライダと、
前記ケースの内壁面と前記複数のスライダとの間に介在し、前記移動部材の傾斜面に前記複数のスライダの摺動面を押し当てるように前記複数のスライダを付勢する第一の弾性体と、
前記ケースの内壁面と前記複数のスライダとの間に介在し、前記スライダの移動による当該スライダと前記ケースの内壁面とによる圧縮の開始タイミングが前記第一の弾性体とは異なる第二の弾性体と、を備え
ことを特徴とするダンパ。
【請求項2】
請求項記載のダンパであって、
前記第一および第二の弾性体として、前記移動部材の軸心周りに前記複数のスライダを囲む、互いに径の異なる2本のOリングを備えることを特徴とするダンパ。
【請求項3】
請求項記載のダンパであって、
前記複数のスライダのそれぞれの、前記ケースの内壁面との対向面には、前記ケースの内壁面との間隔が互いに異なる第一および第二の弾性体取付面が形成され、
前記第一および第二の弾性体は、ぞれぞれ、前記第一および第二の弾性体取付面と前記ケースの内壁面との間に配置されることを特徴とするダンパ。
【請求項4】
軸心に対する傾斜面を有する移動部材が当該移動部材の軸心に沿って挿入され、前記傾斜面を前記軸心周りに囲む筒状のケースと、
前記移動部材を前記軸心の周りに囲む複数位置において前記移動部材の傾斜面と前記ケースの内壁面との間に配置され、前記移動部材の傾斜面に対向する摺動面で、当該移動部材の傾斜面を前記軸心に沿って往復移動可能に支持し、前記移動部材が前記軸心に沿って往復移動した場合に、前記傾斜面と前記摺動面とのすべり接触により、前記ケースの内壁面から離れる方向および前記ケースの内壁面に近づく方向に移動する複数のスライダと、
前記ケースの内壁面と前記複数のスライダとの間に介在し、前記移動部材の傾斜面に前記複数のスライダの摺動面を押し当てるように前記複数のスライダを付勢する第一の弾性体と、を備え、
前記第一の弾性体は、
前記スライダごとにそれぞれ設けられ、前記ケースの内壁面との接触開始タイミングが異なる複数の突部を有する
ことを特徴とするダンパ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のダンパであって、
前記複数のスライダの摺動面は、前記移動部材の軸心に対して傾斜し、前記移動部材の傾斜面に面接触することを特徴とするダンパ。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか一項に記載のダンパであって、
前記移動部材を備えることを特徴とするダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒステリシス特性を有する直動型の摩擦機構に係り、例えばドライバのペダル踏み込みをアシストするブレーキアクチュエータのプッシュロッド等、直動しながら傾斜する移動部材の制動に好適なダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対のカムを含むダンパのヒステリシス特性を利用して、アクセルペダルの踏み込みに適度な負荷を与えるとともに、アクセルペダルをほぼ一定の位置に保持しているときのドライバの足にかかる負担を低減するアクセルペダルユニットが記載されている。
【0003】
このアクセルペダルユニットにおいては、アクセルペダルアームの回転が、リンク部材等からなる伝達機構を介してダンパの回転軸に伝達され、これにより、アクセルペダルアームの双方向の回転が制動される。具体的には、リンク部材の回転によりダンパの回転軸が回転するように、リンク部材の一端がダンパの回転軸に固定される。一方、アクセルペダルアームには、アクセルペダルアームの回転軸を挟んでアクセルペダルの反対側の端部に係合部材が固定され、この係合部材がリンク部材にスライド可能に保持される。これにより、アクセルペダルアームが回転すると、リンク部材を介して、アクセルペダルアームの回転方向に応じた回転方向にダンパの回転軸が回転し、ダンパのヒステリシス特性により、アクセルペダルの踏み込み時には適度な負荷が与えられ、アクセルペダルの復帰時には負荷が軽減する(段落0071〜0084、図13図19等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−12052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動車のブレーキ等において、ペダル踏み込み時にはドライバの足に適度な負荷が与えられる一方でペダル保持中にはドライバの足にかかる負荷が低減するというペダル操作感を実現しようとすれば、上記従来のアクセルペダルユニットのダンパと同様なダンパを組み込んだ特別なブレーキペダルユニットを自動車に搭載する必要がある。例えば、ドライバのペダル踏み込みをアシストするブレーキアクチュエータのプッシュロッド側から、要求されるペダル操作感に応じたヒステリシス特性を有する負荷をブレーキペダルアームに与えることができれば、任意に選択した汎用のブレーキペダルアームをプッシュロッドに連結するだけで、要求されるペダル操作感を安定に実現することができる。
【0006】
ところが、上記従来のアクセルペダルユニットに組み込まれたダンパは、アクセルペダルアームの双方向の回転を制動するものであるため、ブレーキアクチュエータのプッシュロッドのような直動部材の制動にそのまま適用することは困難である。また、ブレーキペダルアームにクレビスジョイントで連結されたプッシュロッドには軸振れ(ブレーキシリンダの軸心に対して傾斜する方向の振動)が発生するため、このようなプッシュロッドを制動するダンパには、プッシュロッドの軸振れを吸収しつつ、要求されたペダル操作感に応じたヒステリシス特性を安定に発揮することが求められる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸心に沿って往復移動する移動部材の軸振れを吸収しつつ、この移動部材を、ヒステリシス特性を有する負荷で制動するダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、軸心に沿って往復移動する移動部材に、軸心に対する傾斜面を形成し、この傾斜面を、移動部材の軸心から離れる方向および移動部材の軸心に近づく方向に移動可能なスライダの摺動面で支持するとともに、移動部材の軸心に対するスライダの変位量に応じた弾性力で、このスライダを、移動部材の軸心に向かう方向に付勢する弾性体を設けることにより、このスライダが、移動部材の傾斜面に追従して、移動部材の軸心から離れる方向または移動部材の軸心に近づく方向に移動するようにする。
【0009】
例えば、本発明に係るダンパの一態様は、
軸心に対する傾斜面を有する移動部材が当該移動部材の軸心に沿って挿入され、前記傾斜面を前記軸心周りに囲む筒状のケースと、
前記移動部材を前記軸心の周りに囲む複数位置において前記移動部材の傾斜面と前記ケースの内壁面との間に配置され、前記移動部材の傾斜面に対向する摺動面で、当該移動部材の傾斜面を前記軸心に沿って往復移動可能に支持し、前記移動部材が前記軸心に沿って往復移動した場合に、前記傾斜面と前記摺動面とのすべり接触により、前記ケースの内壁面から離れる方向および前記ケースの内壁面に近づく方向に移動する複数のスライダと、
前記ケースの内壁面と前記複数のスライダとの間に介在し、前記移動部材の傾斜面に前記複数のスライダの摺動面を押し当てるように前記複数のスライダを付勢する第一の弾性体と、
前記ケースの内壁面と前記複数のスライダとの間に介在し、前記スライダの移動による当該スライダと前記ケースの内壁面とによる圧縮の開始タイミングが前記第一の弾性体とは異なる第二の弾性体と、を備える。
また、本発明に係るダンパの他の態様は、
軸心に対する傾斜面を有する移動部材が当該移動部材の軸心に沿って挿入され、前記傾斜面を前記軸心周りに囲む筒状のケースと、
前記移動部材を前記軸心の周りに囲む複数位置において前記移動部材の傾斜面と前記ケースの内壁面との間に配置され、前記移動部材の傾斜面に対向する摺動面で、当該移動部材の傾斜面を前記軸心に沿って往復移動可能に支持し、前記移動部材が前記軸心に沿って往復移動した場合に、前記傾斜面と前記摺動面とのすべり接触により、前記ケースの内壁面から離れる方向および前記ケースの内壁面に近づく方向に移動する複数のスライダと、
前記ケースの内壁面と前記複数のスライダとの間に介在し、前記移動部材の傾斜面に前記複数のスライダの摺動面を押し当てるように前記複数のスライダを付勢する第一の弾性体と、を備え、
前記第一の弾性体は、
前記スライダごとにそれぞれ設けられ、前記ケースの内壁面との接触開始タイミングが異なる複数の突部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、移動部材の傾斜面が、移動部材の軸心から離れる方向および移動部材の軸心に近づく方向に移動可能なスライダの摺動面で支持され、かつ、スライダが、移動部材の軸心に対する変位量に応じた弾性力で移動部材の傾斜面に押し当てられているため、移動部材の軸振れを弾性力で吸収することができるとともに、移動部材が、移動部材の傾斜面とスライダの摺動面との間に生じる摩擦力により、移動部材の往路と復路とにおいて大きさの異なる制動力(ヒステリシス特性を有する負荷)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係るダンパ100が組み込まれた電動ブレーキアクチュエータのプッシュロッド4にブレーキペダルが取り付けられている状態を説明するための図である。
図2図2(A)は、プッシュロッド4を支持したダンパ100の、ブレーキペダル踏み込み前における軸方向断面図であり、図2(B)は、図2(A)のA−A断面図であり、図2(C)は、ブレーキペダル踏み込み前のダンパ100における、ケース10とスライダ2との位置関係を説明するための図である。
図3図3(A)は、プッシュロッド4の正面図であり、図3(B)および図3(C)は、図3(A)のB−B断面図およびC−C断面図であり、図4(D)は、プッシュロッド4の右側側面図である。
図4図4(A)は、スライダ2の組合せ状態の外観を示した斜視図であり、図4(B)は、スライダ2の外観図であり、図4(C)、図4(D)、図4(E)、図4(F)および図4(G)は、スライダ2の平面図、左側面図、正面図、右側面図および底面図である。
図5図5(A)は、ブレーキペダル踏み込み時のダンパ100の断面図であり、図5(B)は、図5(A)のD−D断面図であり、図5(C)は、ブレーキペダル踏み込み時におけるケース10とスライダ2との位置関係を説明するための図である。
図6図6(A)、図6(B)および図6(C)は、ダンパ100の他の構造例を説明するための図である。
図7図7(A)および図7(B)は、ダンパ100の他の構造例を説明するための図である。
図8図8(A)は、弾性体3としてブロック状のゴム31が装着された複数のスライダ2Aを放射状に配置した状態を示した図であり、図8(B)は、スライダ2Aの外観図であり、図8(C)、図8(D)、図8(E)、図8(F)および図8(G)は、スライダ2Aの平面図、左側面図、正面図、右側面図および底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態では、ブレーキペダルの踏み込みをアシストする電動ブレーキアクチュエータに組み込まれるダンパ100を一例に挙げる。
【0013】
図1は、本実施の形態に係るダンパ100が組み込まれた電動ブレーキアクチュエータのプッシュロッド4にブレーキペダルが取り付けられている状態の概略を示している。また、図2(A)は、プッシュロッド4を支持したダンパ100の、ブレーキペダル踏み込み前における軸方向断面図であり、図2(B)は、図2(A)のA−A断面図である。
【0014】
図示するように、本実施の形態に係るダンパ100は、ブレーキペダルが受けた踏力をブレーキシリンダ内のピストンに伝達するプッシュロッド4をその軸心Oに沿って往復移動可能に支持する直動型のダンパであり、プッシュロッド4を挿入するためのロッド挿入口12、13を有するハウジング1と、ハウジング1の内周面(ケース10の内壁面104)から離れる方向およびハウジング1の内周面に近づく方向に移動可能にハウジング1の内部(円筒室)105に放射状に配置され、プッシュロッド4の側面441〜446を支持する複数のスライダ2と、ハウジング1の内周面(ケース10の内壁面104)と各スライダ2の外側面26aとの間に介在し、ハウジング1の軸心(プッシュロッド4の軸心)Oに向けてハウジング1の径方向(ケース10の径方向)に複数のスライダ2を付勢する弾性体3と、を備えている。なお、弾性体3は、ハウジング1の軸心Oに向けて例えばハウジング1の径方向(ケース10の径方向)にスライダ2を付勢できるものであればよいが、本実施の形態においては、弾性体3として2本のOリング30を備える場合を例示している。
【0015】
このような構造を有するダンパ100を電動ブレーキアクチュエータに組み込むことにより、ブレーキペダルアーム60にクレビスジョイント61で連結されたプッシュロッド4に生じる軸振れ(軸心Oに対して傾斜する方向の振動)を吸収しつつ、ブレーキペダルの踏み込み量に応じて軸心Oに沿って往復移動するプッシュロッド4を、要求されるペダル操作感に応じたヒステリシス特性を有する制動力で制動することができる。以下、制動対象のプッシュロッド4と、これを支持するダンパ100の構成部品1〜3とについて詳細に説明する。
【0016】
まず、制動対象のプッシュロッド4について説明する。
【0017】
図3(A)は、プッシュロッド4の正面図であり、図3(B)および図3(C)は、図3(A)のB−B断面図およびC−C断面図である。
【0018】
図示するように、プッシュロッド4には、軸心Oに沿って一方の端面41側から順に、電動ブレーキアクチュエータのブレーキシリンダ内のピストンを駆動するピストン駆動部43、ダンパ100のスライダ2で摺動可能に支持される側面441〜446を有するテーパ付きシャフト部44、およびブレーキペダルアーム60が連結されるペダルアーム連結部45、が形成されている。
【0019】
ピストン駆動部43は、ブレーキシリンダ内のピストン後端面に向けてハウジング1のロッド挿入口102からハウジング1の外部(円筒室105の外)に突き出している。ブレーキペダルの踏み込み力によってプッシュロッド4がブレーキシリンダに向かって移動(前進)すると、このピストン駆動部43の先端面(プッシュロッド4の一方の端面)41がピストンの後端面に突き当てられてピストンがブレーキシリンダ内で前進する。なお、このピストン駆動部43は、ブレーキシリンダ内のピストン後端面への突き当てに適した任意の形状(例えば円柱形状)を有していればよい。
【0020】
テーパ付きシャフト部44は、ハウジング1のロッド挿入口102、112を介してハウジング内部(円筒室105)に挿入され、所定長さの一部区間が、軸心O周りに配置されたハウジング1の内周面(ケース10の内周面)104により囲まれている。このテーパ付きシャフト部44は、プッシュロッド4の最大ストロークよりも軸心O方向に長い、いわゆる錐台形状を有している。本実施の形態では、一例として、六角形状の断面形状を有する角錐台状のテーパ付きシャフト部44が形成されたプッシュロッド4を用いている。このような錐台形状のテーパ付きシャフト部44において、それぞれの側面441〜446は、ピストン駆動部43に近づくにしたがい軸心Oとの間隔Dが狭くなるように、軸心Oに沿った方向に対して傾斜している。後述するように、ハウジング1の円筒室105において、複数のスライダ2は、2本のOリング30の弾性力によりテーパ付きシャフト部44の側面441〜446に1つずつ押し当てられているため、プッシュロッド4がその軸心Oに沿って往復移動すると、これらの側面441〜446とすべり接触しながら、プッシュロッド4の軸心Oから離れる方向(ケース10の内壁面104に近づく方向)およびプッシュロッド4の軸心Oに近づく方向(ケース10の内壁面104から離れる方向)に往復移動する。
【0021】
ペダルアーム連結部45は、ピストン駆動部43とは反対側に向かってハウジング1のロッド挿入口14からハウジング1の外部(円筒室105の外部)に突き出している。このペダルアーム連結部45は、例えば円柱形状を有しており、その端面(プッシュロッド4の他方の端面)42には、ブレーキペダルアーム60を回転自在に保持するクレビスジョイント61を固定するためのネジ穴451が形成されている。例えば、クレビスジョイント61にナット64で固定されたボルト63をこのネジ穴451にねじ込み、さらにこのボルト63とナット65とを締結することにより、ブレーキペダルアーム60がプッシュロッド4に回転自在に連結される(図1参照)。これにより、ブレーキペダルアーム60が回転軸62周りに双方向に回転すると、ブレーキペダルアーム60に連動して、プッシュロッド4がその軸心Oに沿って往復移動する。
【0022】
つぎに、ダンパ100の構成部品1〜3の詳細についてそれぞれ説明する。
【0023】
図2に示したように、ハウジング1は、複数のスライダ2および2本のOリング30を収容するケース10と、ケース10の開口部103をふさぐカバー11と、を備えている。
【0024】
ケース10は、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の、長さ方向における一部区間を囲むように、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の軸心O方向長さLよりも短い底付き円筒形状を有しており、その開口部103の内周にはネジ部106が形成されている。一方、カバー11は円板形状を有しており、その外周面110には、ケース10の開口部103の内周に形成されたネジ部106に締結されるネジ部111が形成されている。ケース10の開口部103にカバー11を装着して、カバー11の外周面110のネジ部111とケース10の開口部103のネジ部106とを締結することにより、カバー11の裏面(ケース10側に向けられる面)113と、ケース10の底面101および円柱面状の内壁面104とに囲まれた室(円筒室)105が形成されている。複数のスライダ2は、この円筒室105に収容され、後述するように、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44を囲むように、この円筒室105の軸心O周りにほぼ等角度間隔で配置される。
【0025】
また、ケース10の底面101の中央領域には、円筒室105の軸心Oが通過する位置に、ハウジング1の一方のロッド挿入口12となる貫通穴として、プッシュロッド4のピストン駆動部43の外径R1よりも大きな内径を有する貫通穴102が形成されている。同様に、カバー11の中央領域にも、円筒室105の軸心Oが通過する位置に、ハウジング1の他方のロッド挿入口13として、ペダルアーム連結部45の外径R2よりも大きな内径を有する貫通穴112が形成されている。
【0026】
図4(A)は、スライダ2の組合せ状態の外観を示した斜視図、図4(B)は、スライダ2の外観図、図4(C)、図4(D)、図4(E)、図4(F)および図4(G)は、スライダ2の平面図、左側面図、正面図、右側面図および底面図である。
【0027】
ハウジング1の円筒室105には、テーパ付きシャフト部44の側面441〜446と同数(本実施の形態では6つ)のスライダ2が収容されている。これらのスライダ2は、プッシュロッド4の軸心O周りにほぼ等角度おきに放射状に配置されており、ダンパ100の初期状態においては、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446の初期位置(プッシュロッド4に対するスライダ2の相対的な移動可能範囲の一方の限界位置、例えば図3(A)におけるスライダ2の位置)にそれぞれ1つずつ位置付けられている。
【0028】
それぞれのスライダ2には、自身が位置付けられたテーパ付きシャフト部44の側面441〜446との対向面として、プッシュロッド4の軸心O(ハウジング1の円筒室105の軸心)に対してこの側面441〜446とほぼ同角度傾斜した平坦な摺動面21が形成されている。これらの摺動面21は、対向するテーパ付きシャフト部44の側面441〜446に面接触して、プッシュロッド4を軸心Oに沿って往復移動可能に支持している。
【0029】
6つのスライダ2の摺動面21でハウジング1の円筒室105の軸心Oを囲むように6つのスライダ2を放射状に組み合わせた場合、これらの6つのスライダ2は、ケース10の内径R4よりも小さな外径R5を有する円筒体29を構成する。つまり、それぞれのスライダ2は、このような円筒体29をハウジング1の円筒室105の軸心O周りにほぼ等角度間隔で6つに切断したブロック形状を有している。
【0030】
6つのスライダ2がこのような円筒体29を構成するように、これらのスライダ2をハウジング1の円筒室105に放射状に配置した場合、それぞれのスライダ2が有する円柱面状の凸面(隣り合うスライダ2の凸面と連続して円筒体29の外周面291を形成する凸面)26aとケース10の内壁面104との間には、ケース10の内径R4と円筒体29の外径R5との差分に応じた隙間D(図2(C)参照)が形成される。なお、以下においては、スライダ2の凸面26aをスライダ2の外側面26aと呼び、この外側面26aに隣接し、かつ、6つのスライダ2を放射状に配置したときに、隣り合うスライダ2と接触する、ハウジング1の円筒室105の径方向に延びた平坦面(円筒体29を放射状の6つに切断したときの切断面に相当する面)27、28をスライダ2の側面27、28と呼ぶ。
【0031】
ハウジング1の円筒室105において、このような6つのスライダ2は、それぞれ、外側面26aとケース10の内壁面104との隙間Dに相当する距離を、ハウジング1の円筒室105の軸心Oに近づく方向およびハウジング1の円筒室105の軸心Oから離れる方向(例えばケース10の径方向)に個別に往復移動することができる。後述するように、ハウジング1の円筒室105において、2本のOリング30が、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44を囲むように放射状に配置された6つのスライダ2の外側面26aの2本の溝22a、22b(円筒体29の外周面291の2本の溝22A、22B)にそれぞれ収容され、それぞれのスライダ2の摺動面21をテーパ付きシャフト部44の側面441〜446に押し当てるように6つのスライダ2をプッシュロッド4の軸心Oに向けて付勢している。このため、プッシュロッド4がその軸心Oに沿って往復移動すると、6つのスライダ2は、それぞれの摺動面21をプッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446とすべり接触させながら、ハウジング1の円筒室105の軸心Oに近づく方向およびハウジング1の円筒室105の軸心Oから離れる方向(例えばケース10の径方向)に往復移動する。
【0032】
また、それぞれのスライダ2の外側面26aには、2本の溝22a、22bが、ケース10の内壁面104の周方向に沿って形成されている。これらの溝22a、22bは、スライダ2の両側の側面27、28において開口しており、6つのスライダ2を放射状に組み合わせると、互いに隣り合うスライダ2の外側面26aの溝22a、22bが相互に連結する。このため、6つのスライダ2により構成される円筒体29の外周面291には周方向の2本の溝22A、22Bが形成される。2本のOリング30は、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44を囲むように6つのスライダ2が放射状に配置されたときに形成されるこれらの溝22A、22Bの内部にそれぞれはめ込まれている。
【0033】
2本のOリング30は、それぞれ、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446の初期位置に配置されたスライダ2の外側面26aの溝22a、22bの溝底221a、221bとケース10の内壁面104との間隔よりも大きな線径を有している。このため、2本のOリング30は、ダンパ100の初期状態において、それぞれのスライダ2の外側面26aの溝22a、22bから突き出し、それぞれの溝22a、22bの溝底221a、221bとケース10の内壁面104との間で圧縮(プリロード)されており、プッシュロッド4が前進すると、それぞれのスライダ2の外側面26aの溝22a、22bの溝底221a、221bとケース10の内壁面104とによってさらに圧縮される。これにより、6つのスライダ2は、プッシュロッド4の軸心Oから離れる方向への変位量に応じた弾性力でプッシュロッド4の軸心Oに向けて付勢される。
【0034】
このようなダンパ100は、例えば、以下の手順によりプッシュロッド4に組み付けられて、電動ブレーキアクチュエータに組み込まれる。
【0035】
テーパ付きシャフト部44の側面441〜446にスライダ2の摺動面21が接触するように、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446にそれぞれ1つずつスライダ2を配置する。ここで、それぞれのスライダ2がテーパ付きシャフト部44の側面441〜446上の例えば初期位置に位置するように、プッシュロッド4に対するスライダ2の位置を調整しておく。これにより、6つのスライダ2が、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44を囲む円筒体29(図4(A))を構成したら、この円筒体29の外周面291の2本の溝22A、22BにそれぞれOリング30をはめ込む。これにより、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44と6つのスライダ2とが2本のOリング30によって束ねられるため、それらを一体として取り扱うことが可能となる。
【0036】
プッシュロッド4のピストン駆動部43がケース10の外部に突き出すように、ケース10の内側からケース10の底面101の貫通穴102にプッシュロッド4を挿入しながら、ケース10の底面101にすべてのスライダ2の底面25が接触するまで、2本のOリング30が装着された円筒体29をケース10内に圧入する。ケース10の内壁面104と円筒体29の外周面291の溝22A、22Bの溝底221A、221B(各スライダ2の溝22a、22bの溝底221a、221b)との間隔がOリング30の線径よりも狭いため、円筒体29の外周面291の2本の溝22A、22Bにはめ込まれたOリング30は、それぞれの溝22A、22Bの溝底221A、221Bとケース10の内壁面104とよってわずかに圧縮(プリロード)される。なお、ケース10の内壁面104とそれぞれのスライダ2の外側面26aとの間には、ケース10の内径R4と円筒体29の外径R5との差分の1/2に相当する隙間Dが形成されている。
【0037】
その後、プッシュロッド4のペダルアーム連結部45がカバー11の表面114側に突き出すように、カバー11の貫通穴112にプッシュロッド4を挿入しながら、カバー11をケース10の開口部103に装着して、カバー11の裏面113が複数のスライダ2の上面24に接触するまでカバー11の外周面110のネジ部111をケース10の開口部103のネジ部106に締結する。これにより、ハウジング1の円筒室105に封入された6つのスライダ2は、カバー11の裏面113とケース10の底面101との間に挟み込まれるため(図2(A)参照)、プッシュロッド4の軸心Oに沿った方向への移動が制限される。
【0038】
このようにしてプッシュロッド4にダンパ100を組み付けた後、このダンパ100を、プッシュロッド4のピストン駆動部43の先端面41がブレーキシリンダ内のピストン後端面に対向するように、電動ブレーキアクチュエータの例えばハウジングに固定する。これにより、プッシュロッド4をその軸心Oに沿って往復移動可能に支持したダンパ100が電動ブレーキアクチュエータに組み込まれる。
【0039】
つぎに、電動ブレーキアクチュエータに組み込まれたダンパ100の動作について説明する。図5は、ブレーキペダル踏み込み中のダンパ100の状態を説明するための図であり、図5(A)は、ブレーキペダル踏み込み時におけるダンパ100の断面図、図5(B)は、図5(A)のD−D断面図、図5(C)は、ブレーキペダル踏み込み時におけるケース10とスライダ2との位置関係を示した図である。
【0040】
ダンパ100の初期状態においては、ハウジング1の円筒室105において、6つのスライダ2は、それぞれ初期位置に位置付けられ、プリロードされた2本のOリング30によってプッシュロッド4の軸心Oに向けて付勢されている(図2(A)および図2(B)参照)。ここで、ドライバがブレーキペダルを踏み込み、ブレーキペダルアーム60が回転軸62周りに所定の方向に回転すると、図5(A)に示すように、プッシュロッド4は、ブレーキペダルアーム60に連動して初期位置から、不図示のブレーキシリンダに向かう方向αに移動する。なお、以下においては、ブレーキシリンダ(不図示)に向かう方向αへの移動を前進、ブレーキシリンダ(不図示)から遠ざかる方向(方向αの逆方向)βへの移動を後退と呼ぶ。
【0041】
このとき、図5(B)に示すように、2本のOリングによってプッシュロッド4の軸心Oに向けて付勢されている6つのスライダ2は、それぞれ、前進中のプッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の各側面441〜446上で摺動面21をすべり接触させながら、プッシュロッド4の軸心Oから離れる方向(ケース10の内壁面104に近づく方向)にスライドする。これにより、図5(C)に示すように、それぞれのスライダ2の外側面26aとケース10の内壁面104との間の隙間Dが徐々に狭くなってゆき、それぞれのスライダ2の外側面26aの溝22a、22bの溝底221a、221bとケース10の内壁面104によって2本のOリング30がさらに圧縮される。このため、それぞれのスライダ2の摺動面21が、2本のOリング30の弾性力によって、より強くプッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446に押し付けられ、摺動中の摺動面21と側面441〜446と間の摩擦力が徐々に増大する。すなわち、プッシュロッド4の前進とともに、プッシュロッド4の前進を妨げる摩擦力が徐々に増大する。このような摩擦抵抗により発生する制動力でプッシュロッド4が制動されるため、ブレーキペダルを踏み込むドライバの足(プッシュロッド4の駆動源)には、ブレーキペダルの踏み込み量に応じた適度な負荷が与えられる。
【0042】
この間、回転軸62周りに回転するブレーキペダルアーム60にクレビスジョイント61で連結されたプッシュロッド4に軸振れ(軸心Oに対して傾斜する方向の振動)が発生しても、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446を支持している6つのスライダ2が、プッシュロッド4の姿勢に応じて適宜、2本のOリングを圧縮しながら、ケース10の内壁面104に向かって例えばケース10の径方向にスライドする。このため、プッシュロッド4の軸振れが2本のOリング30の弾性力によって吸収され、プッシュロッド4を適正な姿勢でその軸心Oに沿って案内することができる。
【0043】
ここで、ドライバがブレーキペダルの踏み込み動作を一旦停止すると、プッシュロッド4の前進が停止し、それぞれのスライダ2の摺動面21とプッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446との間に、今度は、2本のOリング30の復元を妨げる方向の摩擦力が生じる。このため、ブレーキペダルを一定の位置で保持するドライバの足にかかる負荷が急激に減少する。
【0044】
ドライバがブレーキペダルの踏み込み力を緩めることでブレーキペダルアーム60が逆方向に回転すると、プッシュロッド4が後退する。このとき、6つのスライダ2は、それぞれのスライダ2の外側面26aの溝22a、22bの溝底221a、221bとケース10の内壁面104との間で圧縮された2本のOリング30に付勢され、後退中のプッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の各側面441〜446上で摺動面21をすべり接触させながら、プッシュロッド4の軸心Oに近づく方向(ケース10の内壁面104から離れる方向)に移動する。
【0045】
これにより、図2(C)に示したように、それぞれのスライダ2の外側面26aとケース10の内壁面104との間の隙間Dが徐々に広がり、それぞれのスライダ2の外側面26aの溝22a、22bの溝底221a、221bとケース10の内壁面104との間の2本のOリング30が初期状態に徐々に復元してゆくため、それぞれのスライダ2の摺動面21とプッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446との間等の摩擦力がさらに徐々に減少する。すなわち、プッシュロッド4の後退とともに、プッシュロッド4の後退を妨げる摩擦力が徐々に減少する。このような摩擦抵抗により発生する制動力で後退中のプッシュロッド4が制動されるため、ブレーキペダルは、ドライバの足の動きにあわせてスムーズに初期位置に復帰する。
【0046】
この間、ブレーキペダルの踏み込み時と同様に、ブレーキペダルアーム60にクレビスジョイント61で連結されたプッシュロッド4に軸振れが発生する可能性があるが、2本のOリング30の弾性力によってプッシュロッド4の軸振れが吸収されるため、プッシュロッド4を適正な姿勢でその軸心Oに沿って案内することができる。
【0047】
以上説明したとおり、本実施の形態に係るダンパ100によれば、軸心Oに沿って往復移動するプッシュロッド4の側面(プッシュロッド4の軸心Oに対する傾斜面)441〜446が、プッシュロッド4の軸心Oに向かう方向にOリング30で付勢された複数のスライダ2によって弾性支持されているため、プッシュロッド2の軸触れをOリング30の弾性力で吸収することができる。
【0048】
また、スライダ2の外側面26aとケース10の内壁面104との間に介在するOリング30が、スライダ2の摺動面21を、ケース10の内壁面104に対する変位量(プッシュロッド4の軸心Oから離れる方向への変位量)に応じた弾性力で付勢している状態において、プッシュロッド4の往路では、プッシュロッド4が、ケース10の内壁面104に向かう方向(プッシュロッド4の軸心Oから離れる方向)にスライダ2をスライドさせながら移動し、プッシュロッド4の復路では、スライダ2が、ケース10の内壁面104から離れる方向(プッシュロッド4の軸心Oに近づく方向)に移動する。このため、テーパ付きシャフト部44の側面441〜446とスライダ2の摺動面21との間の摩擦力により、プッシュロッド4にその軸心Oに沿った所定方向の力を与える駆動源(ドライバの足)に対して、一ストロークの往路と復路とにおいて大きさの異なる反力(ヒステリシス特性を有する負荷)を与えることができる。したがって、例えばブレーキペダルアームが連結されるプッシュロッド4にダンパ100を取り付けた場合、ブレーキペダルの踏み込み中には、ドライバの足に、ブレーキペダルの踏み込み量に応じた適度な負荷を安定して与えることができるとともに、ブレーキペダルを一定の位置に保持している間には、ドライバの足にかかる負荷を低減することができる。
【0049】
なお、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0050】
例えば、本実施の形態においては、自動車の電動ブレーキアクチュエータに組み込まれるダンパ100を例に挙げたが、本発明に係るダンパは、軸心に沿って往復移動する移動部材の軸触れを吸収しつつ、この移動部品の往復移動を、ヒステリシス特性を有する制動力で制動することが有用な用途に適用可能である。例えば、自動車の電動ブレーキアクチュエータに限らず、楽器、ゲーム機、各種装置等、ユーザの操作を受け付ける操作部に連結される直動部材を有する様々な機器に組み込むことができる。
【0051】
また、上記の実施の形態においては、制動対象部材であるプッシュロッド4に、軸心Oに対する側面(移動方向に対する傾斜面)441〜446を設け、この側面441〜446をスライダ2の摺動部21で直接支持しているが、移動方向に対する傾斜面を制動対象部材に設けることができない場合等には、複数のスライダ2により往復移動可能に支持される移動部材として、制動対象部材の移動方向に対する傾斜面が形成された部材を準備し、この移動部材に制動対象部材を保持させてもよい。例えば、プッシュロッドがその軸心方向に挿入される挿入口を有する筒状のカラー部材を設け、このカラー部材に、制動対象部材の軸心に対する傾斜面を形成しておき、このカラー部材の傾斜面をスライダ2の摺動面21で支持してもよい。これにより、カラー部材は、スライダ2の摺動面21と傾斜面とをすべり接触させながら、制動対象部材とともに制動対象部材の軸心に沿って往復移動する。
【0052】
また、本実施の形態においては、6つのスライダ2とケース10とによって2本のOリング30が同様に圧縮されるが、ダンパ100の組み込み対象機器によっては、2本のOリング30の圧縮開始タイミングをずらしてもよい。例えば、図6(A)に示すように、それぞれのスライダ2の外側面26aに形成される2本の溝22a、22bのうち、いずれか一方の溝(例えば溝22b)を他方の溝(例えば溝22a)より深くしてもよい。このように2本の溝22a、22bの深さを変えた場合、プッシュロッド4が、操作部に連動して、初期位置からの前進を開始すると、ケース10の内壁面104とスライダ2の外側面26aとの間隔Dが徐々に狭くなり、まず、浅い溝22aにはめ込まれたOリング30のみが、ケース10の内壁面104と溝底(弾性体取付面)221aとの間で圧縮され始める。これにより、上述の場合と同様、プッシュロッド4の前進とともに、プッシュロッド4の前進を妨げる摩擦力が徐々に増大するため、操作部を操作するユーザの手足等には、操作部の操作量に応じた適度な負荷が与えられる。さらに操作部が操作されると、図6(B)に示すように、深い溝22bにはめ込まれたOリング30がケース10の内壁面104に接触し、図6(C)に示すように、浅い溝22aにはめ込まれたOリング30だけでなく、深い溝22bにはめ込まれたOリング30も、ケース10の内壁面104と溝底(弾性体取付面)221bとの間で圧縮される。
【0053】
このような構成によれば、操作部を操作するユーザの手足等に適度な負荷を与えつつ、操作部が所定位置まで操作されたタイミング(プッシュロッド4がその軸心Oに沿って所定量変位したタイミング)で、ユーザの手足等にかかる負荷を急激に増大させることができる。このため、ユーザに、操作部が所定の位置まで操作されたこと等を通知する触覚的なシグナルを与えることができる。
【0054】
または、図7(A)に示すように、互いに線径の異なる2本のOリング30、30Aを用い、プッシュロッド4がその軸心Oに沿って所定量変位したタイミングで、線径の小さな一方のOリング30Aをケース10Aの内壁面104Aに接触させてもよいし、図7(B)に示すように、内壁面104Aに段差Hが形成されたケース10Aを用い、プッシュロッド4がその軸心Oに沿って所定量変位したタイミングで一方のOリング30をケース10Aの内壁面104Aに接触させてもよい。いずれの場合においても、2本の溝22a、22bの深さを変えた上述の場合と同様に、2本のOリングの圧縮開始タイミングをずらすことができるため、操作部が所定位置まで操作されたタイミング(プッシュロッド4がその軸心Oに沿って所定量変位したタイミング)で、ユーザの手足等にかかる負荷を急激に増大させることができる。
【0055】
または、例えば、摩擦係数の異なる材質で形成された複数のテーパ付き部材を軸心O方向に連結することによってプッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44または上述のカラー部材を作成してもよいし、摩擦係数の異なる材質で形成された複数のシート状部材を、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446または上述のカラー部材の傾斜面に軸心O方向に並ぶように配置してもよい。これにより、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446またはカラー部材の傾斜面において、摩擦係数が異なる複数の区間が軸心O方向に連続するため、操作部が所定位置まで操作されたタイミング(プッシュロッド4がその軸心O方向に所定量変位したタイミング)で、ユーザの手足等にかかる負荷を急激に増大させることができる。また、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446または上述のカラー部材の傾斜面に表面処理を施すことによって、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446またはカラー部材の傾斜面に、摩擦係数が異なる複数の区間が軸心O方向に連続して含まれるようにしてもよい。
【0056】
また、本実施の形態においては、六角形状の断面形状を有する角錐台状のテーパ付きシャフト部44をプッシュロッド4に設けているが、六角形状以外の多角形状の断面形状を有する角錐台状のテーパ付きシャフト部44をプッシュロッド4に設けてもよい。または、円錐台状、軸心Oに対して傾斜した側面を少なくとも一面有する柱状等のテーパ付きシャフト部44をプッシュロッド4に設けてもよい。この場合、プッシュロッド4の軸心O周りにテーパ付きシャフト部44の支持位置を複数定め、テーパ付きシャフト部44の支持位置と同数のスライダ2に設ければよい。そして、スライダ2のうち、軸心Oに対して傾斜した側面を支持対象とする少なくとも1つのスライダ2には、軸心Oに対して支持対象の側面とほぼ等角度傾斜した摺動面21が形成されていることが好ましい。
【0057】
以上においては、いずれの場合においても、6つのスライダ2の外側面26aとケース10、10Aの内壁面104、104Aとの間に介在させる弾性体3として2本のOリングを用いているが、必ずしも、このようにする必要はない。スライダ2を適正な姿勢で弾性支持しながら、ケース10の内壁面104に対するスライダ2の変位に応じた弾性力でスライダ2の摺動面21をテーパ付きプッシュロッド4の側面441〜446に押し当てることができれば、6つのスライダ2の外側面26aとケース10の内壁面104との間に介在させるOリングの本数および配置位置は適宜に変更である。また、Oリング30の代わりに、それぞれのスライダ2とケース10との間に1つずつ、スライダ2の外側面26aとケース10の内壁面104との間隔の方向(例えばケース10の径方向)に弾性変形する他の弾性体(バネ、ゴム等)を配置してもよい。
【0058】
図8(A)は、弾性体3としてブロック状のゴム31が装着された複数のスライダ2Aを放射状に配置した状態を示した図、図8(B)は、スライダ2Aの外観図であり、図8(C)、図8(D)、図8(E)、図8(F)および図8(G)は、スライダ2Aの平面図、左側面図、正面図、右側面図および底面図である。
【0059】
スライダ2Aは、上述のスライダ2と同様、テーパ付きシャフト部44の側面441〜446と同数(本実施の形態では6つ)準備され、ダンパ100の初期状態において、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446の初期位置にそれぞれ1つずつ位置付けられている。図示するように、それぞれのスライダ2Aは、自身が位置付けられたテーパ付きシャフト部44の側面441〜446とほぼ等角度傾斜した摺動面21が形成された上述のスライダ2と同様なブロック形状において、円柱面状の凸面(スライダ2の外側面26aに対応する凸面)に、ケース10の内壁面104の周方向に沿って1本の溝23が形成された形状を有している。すなわち、それぞれのスライダ2Aは、ケース10の内壁面104側に開いたコ字形状を有し、カバー11の裏面113に接触する上面24、ケース10の底面101に接触する底面25、および、上面24と底面25との間をつなぐ摺動面21が形成されている。
【0060】
ゴム31は、円筒体の軸心周りにほぼ等角度間隔で6つに切断した円弧型のブロック形状を有している。それぞれのゴム31は、スライダ2Aの溝23にはめ込まれてハウジング1の円筒室105に収容される。ゴム31は、プッシュロッド4のテーパ付きシャフト部44の側面441〜446の初期位置に配置されたスライダ2Aの溝23の溝底231とケース10の内壁面104との間隔よりも大きな厚さをケース10の径方向に有している。このため、ダンパ100の初期状態において、ゴム31は、それぞれのスライダ2Aの溝23からケース10の内壁面104に向かって突き出し、この溝23の溝底231とケース10の内壁面104との間で圧縮(プリロード)されている。このため、ブレーキシリンダに向かってプッシュロッド4が前進すると、それぞれのスライダ2Aの溝23の溝底231とケース10の内壁面104とによってさらに圧縮される。なお、ゴム31の外側面(ケース10の内壁面104との対向面)33に、例えば、ケース10の内壁面104との接触タイミングが異なる複数の凸部32を形成し、操作部が所定位置まで操作されたタイミング(プッシュロッド4がその軸心Oに沿って所定量変位したタイミング)で、ユーザの手足等にかかる負荷が急激に増大するようにしてもよい。
【0061】
図8(A)〜(G)にはコ形状のスライダ2Aを示したが、スライダ2Aは、ゴム31をはめ込むための凹部を有していればよく、必ずしもコ形状である必要はない。例えば、図4に示したスライダ2Aの外側面26aに、2本の溝22a、22bの代わりに、摺動面21には到達しない穴を形成し、この穴の形状に応じた形状のゴムをこの穴にはめ込んでもよい。このようにすることにより、ハウジング1の円筒室105において隣り合うスライダ2Aのゴム31同士の接触を防止することができるため、それぞれのスライダ2Aが、ケース10の内壁面104から離れる方向およびケース10の内壁面104に近づく方向にスムーズに移動することができる。
【0062】
また、上記の実施の形態においては、円筒形状のケース10を用いているが、ケース10の形状は、円筒形状に限られるものではなく、プッシュロッド4の傾斜面を支持する複数のスライダ2を、ケース10の内壁面に近づく方向およびケース10の内壁面から離れる方向に移動可能に収容し、かつ、それぞれのスライダ2とケース10の内壁面との間に弾性体3と介在させることが可能な筒形状であればよい。
【符号の説明】
【0063】
1:ハウジング、 2、2A:スライダ、 3:弾性体、 4:プッシュロッド、 10、10A:ケース、 11:カバー、 12、13:ロッド挿入口、 21:スライダの摺動面、 22a、22b:スライダの溝、 23:溝、 24:スライダの上面、 26a:スライダの外側面、 27、28:スライダの側面、 29:円筒体、 30、30A:Oリング、 31:ゴム、 41、42:プッシュロッドの端面、 43:ピストン駆動部、 44:テーパ付きシャフト部、 45:ペダルアーム連結部、 60:ブレーキペダルアーム、 61:クレビスジョイント、 62:ブレーキペダルアームの回転軸、 63:ボルト、 64、65:ナット、 101:ケースの底面、 102:ロッド挿入口、 103:ケースの開口部、 104,104A:ケースの内壁面、 105:円筒室、 106:ネジ部、 110:カバーの外周面、 111:カバー外周のネジ部、 112:ロッド挿入口、113:カバーの裏面、 114:カバーの表面、 22A、22B:スライダの溝の溝底
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8