(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6400975
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】弁ローテータを備えるガス交換弁
(51)【国際特許分類】
F01L 1/32 20060101AFI20180920BHJP
F01L 3/08 20060101ALI20180920BHJP
F01L 3/10 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
F01L1/32 Z
F01L3/08 C
F01L3/10 C
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-161097(P2014-161097)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-34551(P2015-34551A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2017年1月23日
(31)【優先権主張番号】10 2013 013 229.0
(32)【優先日】2013年8月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・クーダ
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート・ヴァレンタ
【審査官】
首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−228808(JP,A)
【文献】
実開昭59−102909(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第03304878(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第02944899(DE,A1)
【文献】
特開2013−044246(JP,A)
【文献】
実開昭52−102505(JP,U)
【文献】
特公昭46−036849(JP,B1)
【文献】
実開昭58−122714(JP,U)
【文献】
実開昭58−158103(JP,U)
【文献】
特開昭58−192911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/32
F01L 3/08 − 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のガス交換弁(10)であって、シリンダヘッド(14)の領域内に構成された弁座、前記ガス交換弁を開くために少なくとも一つの弁ばね(12,13)のばね力に対抗して前記弁座から持ち上げ可能であり、前記ガス交換弁を閉じるために前記弁ばね(12,13)又は各弁ばね(12,13)のばね力により前記弁座に押し付け可能である、弁棒(11)に係合している弁体、前記弁棒(11)のための弁案内(15)、及び、前記シリンダヘッド(14)と前記弁ばね(12,13)又は各弁ばね(12,13)との間において下に位置する弁ローテータ(16)、を備えるガス交換弁(10)において、
前記弁ローテータ(16)と前記シリンダヘッド(14)との間にギャップ(20)が設けられて前記弁ローテータ(16)が浮かせた状態で構成されており、
前記弁ローテータ(16)が、浮かせた状態で前記弁案内(15)に構成され、
前記弁ローテータ(16)が円錐座(21)を介して前記弁案内(15)に固定されることを特徴とするガス交換弁。
【請求項2】
前記弁ローテータ(15)が前記弁案内(15)に摩擦結合的に係合することを特徴とする、請求項1に記載のガス交換弁。
【請求項3】
前記弁ローテータ(16)が、座面(22)が円錐台状であるリセスを有することを特徴とする、請求項1または2に記載のガス交換弁。
【請求項4】
前記弁ローテータ(16)のために前記弁案内(15)が、座面(23)が円錐台状であるカラー状突起を有し、前記弁ローテータ(16)の前記座面(22)が、前記弁案内(15)の前記カラー状突起の、対応する前記座面(23)に載っていることを特徴とする、請求項3に記載のガス交換弁。
【請求項5】
内燃機関のガス交換弁(10)のための弁ローテータ(16)であって、シリンダヘッド(14)と少なくとも一つの弁ばね(12,13)との間において下に位置している弁ローテータ(16)において、前記弁ローテータ(16)は、前記弁ローテータ(16)と前記シリンダヘッド(14)との間にギャップ(20)を設けることにより浮かせた状態で構成されており、当該弁ローテータが、請求項1から4のいずれか一項に記載のように構成されていることを特徴とする弁ローテータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のおいて書きに記載の弁ローテータを備える、内燃機関のガス交換弁に関する。本発明はまた、請求項7のおいて書きに記載の、内燃機関のガス交換弁用の弁ローテータに関する。
【背景技術】
【0002】
弁ローテータを備えるガス交換弁を持つ内燃機関は、実用において、よく知られている。弁体の不均一な加熱や、ゆがみを防止し、かつ、弁体及び弁座に燃焼残渣の付着が形成されるのを回避するために、弁ローテータにより各行程において、ガス交換弁の弁体をガス交換弁の弁座に対して回転させることができる。
【0003】
内燃機関の、弁ローテータを備えるガス交換弁は、特許文献1より知られている。そこでは、シリンダヘッドの領域に形成された弁座を持つガス交換弁が知られており、ガス交換弁の弁体は、ガス交換弁を開く際には2つのばね要素のばね力に対抗して弁座から持ち上げられ、また、ガス交換弁を閉じる際には2つのばね要素のばね力により弁座に押し付けられる。弁座と協働する弁体はバルブディスクとも呼ばれ、弁案内の中に案内された弁棒に固定されている。この従来技術においては、弁ローテータはガス交換弁の弁ばねとシリンダヘッドとの間に位置しており、弁ローテータはシリンダヘッド上に立った状態で実施されている。
【0004】
特許文献1によるとガス交換弁の弁ローテータは、シリンダヘッドのオイルサンプ内に立った状態にあり、それにより弁ローテータは、シリンダヘッドのオイルサンプ内に集まる汚れにより、より多くの摩耗を受ける。さらに、弁棒と弁案内との間の摩擦を高める弁棒の汚れが原因で、弁案内がシリンダヘッドから抜ける危険もある。
【0005】
従来技術における上記の短所を簡単かつ高信頼的に回避できるような、弁ローテータを備える新規のガス交換弁、及び、相応の弁ローテータが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第1475978号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑みて本発明の課題は、新規の弁ローテータを備えるガス交換弁、及び、新規の弁ローテータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載のガス交換弁により解決される。本発明によると弁ローテータは、弁ローテータとシリンダヘッドとの間にギャップを設けることにより浮かせた状態で構成されている。
【0009】
本発明によると弁ローテータとシリンダヘッドとの間にギャップを設けることにより、弁ローテータは浮かせた状態で構成されている。それにより弁ローテータをシリンダヘッドのオイルサンプ内に立たせることが回避できる。それにより、汚れが弁ローテータの領域に集まることが回避される。汚れた潤滑油は排出することができる。それにより本発明のガス交換弁が受ける摩耗はより少なくなる。さらに、弁棒の汚れが原因で弁案内がシリンダヘッドから抜ける危険も回避される。
【0010】
望ましくは、浮かせた状態の弁ローテータは弁案内に構成されている。弁ローテータを浮かせた状態で弁案内に構成する実施形態は簡単であり、そのため望ましい。
【0011】
好適な発展形によると弁ローテータは弁案内に摩擦結合的に係合している。弁ローテータが弁案内に摩擦結合的に係合すると、弁棒の汚れが原因で弁案内がシリンダヘッドから抜けることが簡単かつ高信頼的に回避できる。
【0012】
望ましくは弁ローテータは、円錐座を介して弁案内に固定される。円錐座を介して弁ローテータを弁案内に固定することは簡単であり、そのため望ましい。
【0013】
本発明の望ましい発展形は従属請求項及び以下の説明から理解できる。本発明の実施形例を図を用いて詳しく説明するが、これに限定されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の弁ローテータの領域における本発明のガス交換弁の図式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、内燃機関の、弁ローテータを備えるガス交換弁、及び、そのようなガス交換弁のための弁ローテータに関する。
【0016】
図1は、本発明の弁ローテータの領域における、本発明のガス交換弁の図式的な断面図であり、ガス交換弁10のうち弁棒11が図示されており、弁棒11には、バルブディスクとも呼ばれる、図示されない弁体が係合している。
【0017】
ガス交換弁10の図示されない弁体は、やはり図示されないガス交換弁10の弁座と協働しており、つまり、ガス交換弁10を開くために弁体は少なくとも一つの弁ばね12,13のばね力に対抗して弁座から持ち上げ可能であり、また、ガス交換弁10を閉じるために弁体は当該の弁ばね12,13又はそれぞれの弁ばね12,13のばね力により弁座に押し付け可能である。
【0018】
図示された実施例においてはガス交換弁10はそのような2つの弁ばね12,13、つまり、内側弁ばね12及び外側弁ばね13を有している。弁ばねはただ一つとすることもできる。
【0019】
ガス交換弁10の図示されない弁体と協働する、ガス交換弁10の図示されない弁座は、シリンダヘッド14の領域内に構成されており、図示されない弁体が取り付けられている弁棒11は、ガス交換弁10の弁案内15の中に案内されている。
【0020】
ガス交換弁10は、
図1では図式的にのみ図示されている弁ローテータ16を有しており、弁ローテータ16は、シリンダヘッド14と弁ばね12,13との間において下に位置している。
【0021】
そのような弁ローテータの機能は、本書が関係する当業者にとっては周知である。
【0022】
弁ローテータ16は第1スプリングリテーナ17を有しており、この第1スプリングリテーナ17には、両方の弁ばね12,13の下端である第1の端が支えられており、弁ばね12,13の上端である第2の端は、クランプ装置19を介して弁棒11に固定された第2のスプリングリテーナ18に支えられている。
【0023】
本発明によるガス交換弁10又はガス交換弁10の弁ローテータ16は、弁ローテータ16とシリンダヘッド14との間にギャップ20を設けることにより弁ローテータ16を浮かせた状態で構成するように構成されている。
【0024】
それにより、弁ローテータ16がシリンダヘッド14のオイルサンプ内に立てられるのではなく、ギャップ20を介してシリンダヘッド14と弁ローテータ16との間に十分なオイル循環が保証され、そのオイル循環を介して汚れが排出され得ることが保証される。それにより、弁ローテータ16が受ける摩耗が、従来技術に比較してより少なくなることが保証される。
【0025】
図示された、本発明の望ましい実施形態において、ガス交換弁10の弁ローテータ16は浮かせた状態で、弁棒11のための弁案内15に構成されており、弁ローテータ16は弁案内15に摩擦結合的に係合する。
【0026】
本発明のこの好適な発展形はとりわけ、弁棒11のための弁案内15が、弁棒11に堆積する汚れが原因で、つまり弁棒11と弁案内15との間の摩擦が原因で、シリンダヘッド14から抜けることを簡単に回避し得るという長所がある。
【0027】
望ましくは、弁ローテータ16は円錐座21を介して弁案内15に固定されている。弁ローテータ16は、座面22が円錐台状である中央リセスを有しており、弁案内15は、座面23がやはり円錐台状であるカラー状突起を有する。弁ローテータ16の座面22は、対応する、弁案内15のカラー状突起の座面23に載っている。それにより、弁ローテータ16とシリンダヘッド14との間にギャップ20が設けられて弁ローテータ16が弁案内15に摩擦結合的に固定されることが特別な態様で保証される。
【0028】
下に位置する弁ローテータ16を浮かせた状態で実施することにより、従来技術の短所が回避される。弁ローテータ16が、とりわけ円錐座21を介して、又は、代替的に適切な幾何学的実施形態を介して、弁案内15に摩擦結合的に固定されることにより、両方の弁ばね12,13は弁ローテータ16を介して弁案内15に作用し、弁案内15がシリンダヘッド14から抜ける可能性を回避する。弁ローテータ16を浮かせた状態で実施することにより弁ローテータ16とシリンダヘッド14との間にギャップ20が設けられ、このギャップ20を介して十分な潤滑油交換を保証することができ、それにより、弁ローテータ16とシリンダヘッド14との間に汚れがたまることが回避される。
【0029】
潤滑油交換を支援するために、場合によっては弁ローテータ16内に少なくとも一つの、図示されないボアを設けることができる。また、潤滑油交換をさらに支援するためにシリンダヘッド14内に少なくとも一つの、図示されない排出路を設けることができる。しかしながら、弁ローテータ16内にそのようなボアがなくても、また、シリンダヘッド14内にそのような排出路がなくても、弁ローテータ16を浮かせた状態で実施することによりギャップ20の領域において十分な潤滑油交換を保証し得る。
【符号の説明】
【0030】
10 ガス交換弁
11 弁棒
12 弁ばね
13 弁ばね
14 シリンダヘッド
15 弁案内
16 弁ローテータ
17 スプリングリテーナ
18 スプリングリテーナ
19 クランプ装置
20 ギャップ
21 円錐座
22 座面
23 座面