(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動機構は、前記基板を処理する処理中、前記クランプピンの組ごとの回転用磁石を交互に前記ピン回転体の回転軸の軸方向に沿って移動させることを特徴とする請求項4に記載のスピン処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について
図1ないし
図8を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、第1の実施形態に係るスピン処理装置1は、ベースとなるベース体2と、上面が開口するカップ体3と、そのカップ体3内で回転する回転体4と、その回転体4を回転させる駆動モータ5と、回転体4を囲む環状の液受け部6と、各部を制御する制御部(例えば、マイクロコンピュータなど)7とを備えている。
【0013】
ベース体2は、板形状に形成されており、このベース体2の底面の中心部には、貫通孔2aが形成されている。また、このベース体2の周縁部には、排液を流出させるための複数の排出管(図示せず)が所定間隔で接続されている。
【0014】
カップ体3は、上面及び下面開口の筒状(環状)に形成されており、その内部に回転体4や液受け部6などを収容する。このカップ体3の上端部は、全周にわたって径方向内方に向かって傾斜するように形成されている。カップ体3は、例えばシリンダなどの昇降機構(図示せず)により昇降可能に構成されている。
【0015】
回転体4は、駆動モータ5からの動力を伝える円筒状の伝動体4aと、基板Wを把持する複数(例えば、六個)のクランプ部4bと、それらのクランプ部4bを保持する回転プレート4cと、各クランプ部4bにより基板Wをクランプするための回転機構4dと、各部を覆うカバー4eとを備えている。
【0016】
駆動モータ5は、筒状の固定子5aと、この固定子5a内に回転可能に挿入された筒状の回転子5bとにより構成されている。この駆動モータ5は、各クランプ部4bによりクランプ(把持)された基板Wを回転させる駆動源となるモータである。駆動モータ5は電気的に制御部7に接続されており、制御部7の制御に応じて駆動する。
【0017】
伝動体4aは、その中心軸である回転軸が駆動モータ5の回転軸に一致するように駆動モータ5の回転子5bに固定されており、その回転子5bと共に回転する。このため、伝動体4aは駆動モータ5によって回転することになる。
【0018】
ここで、伝動体4a及び回転子5bの内部空間には、回転しない固定状態の固定軸11が設けられている。この固定軸11の上部には、ノズルヘッド12が設けられており、このノズルヘッド12には、各クランプ部4bにより把持された基板Wの裏面に向けて処理液(例えば、薬液や純水など)を吐出するノズル12aが形成されている。このノズル12aには、処理液が流れる供給配管13が接続されている。なお、基板Wの表面に処理液(例えば、薬液や純水など)を供給するノズル(図示せず)も回転体4の上方に設けられている。
【0019】
各クランプ部4bは、
図1及び
図2に示すように、伝動体4aの回転軸を中心とする円周上に所定間隔、例えば等間隔で設置されている。これらのクランプ部4bを動作させることで、基板Wの中心を伝動体4aの回転軸の中心に位置付けるセンタリングを行って基板Wを把持するチャック機構が実現されている。
【0020】
クランプ部4bは、基板Wに接触するクランプピン21と、そのクランプピン21を保持して回転する回転板22と、その回転板22を保持して回転するピン回転体23とを備えている。クランプピン21は、逆テーパ状に形成されており、ピン回転体23の回転軸から一定距離偏心させて回転板22上に固定され、回転板22と一体になっている。このクランプピン21は、ピン回転体23の回転に応じて偏心回転することになる。ピン回転体23は、回転プレート4cが備える支持筒部24によって回転可能に保持されている。
【0021】
このクランプ部4bでは、ピン回転体23が、基板Wを把持するクランプ方向に回転すると、回転板22上のクランプピン21が偏心回転し、基板Wの外周面(端面)に当接する。他のクランプ部4bでも同じようにクランプピン21が基板Wの外周面に当接し、各クランプピン21は基板Wの中心を伝動体4aの回転軸の中心にセンタリングしつつ把持する。一方、ピン回転体23がクランプ方向の逆方向である開放方向に回転すると、回転板22上のクランプピン21が前述と逆方向に回転し、基板Wの外周面から離れる。他のクランプ部4bでも同じようにクランプピン21が基板Wの外周面から離れ、把持状態の基板Wが開放されることになる。
【0022】
回転プレート4cは、伝動体4aの外周面に固定されて一体となっており、各クランプ部4bを保持して伝動体4aと共に回転する。この回転プレート4cが伝動体4aの回転によって伝動体4aと一緒に回転するため、各クランプ部4bも伝動体4aの回転軸を中心として回転することになる。なお、回転プレート4cが備える各支持筒部24は、円板状の回転プレート4cの外周側であって伝動体4aの回転軸を中心する円周上に等間隔に設けられている。
【0023】
回転機構4dは、伝動体4aの回転方向に沿って一つ置きに組となる三つ一組のクランプ部4bに対応する第1の回転機構31と、他の三つ一組のクランプ部4bに対応する第2の回転機構32とを備えている。クランプ部4bが六個の場合に、これらの第1の回転機構31及び第2の回転機構32は同じ構造である。
【0024】
第1の回転機構31は、各クランプ部4bの個々のピン回転体23の外周面にそれぞれ設けられたマグネットギア31aと、それらのマグネットギア31aに対応する複数の回転用磁石31bと、それらの回転用磁石31bを保持して上下する一組の上下アーム31cと、それらの上下アーム31cを一体とする上下リング31d(この実施の形態では三つの上下アーム31c)と、その上下リング31dをピン回転体23の回転軸の軸方向に沿って移動させる昇降機構31eとを備えている。
【0025】
マグネットギア31aは、
図3及び
図4に示すように、円筒状のマグネットギアであり、ピン回転体23の円筒表面にN極とS極の磁極がスパイラル(螺旋)状に交互に配置された構造になっている。このマグネットギア31aは、
図1及び
図2に示すように、ピン回転体23の下部側の外周面に固定されており、ピン回転体23と一体で回転する。特に、マグネットギア31aは、ピン回転体23の回転軸の軸方向(上下方向)にガタや遊びが無いように組み立てられている。
【0026】
回転用磁石31bは、
図3及び
図4に示すように、マグネットギア31aの表面の磁極と引き合う位置にマグネットギア31aの外周面に沿って複数(例えば四個)配置され、上下アーム31cに固定されている。これらの回転用磁石31bは、上下アーム31cに形成された貫通孔33の周縁部に等間隔で又は等間隔から少し角度をつけて配置されている。なお、この貫通孔33には、マグネットギア31a及びピン回転体23が挿入されている。このような回転用磁石31bは上下アーム31cごとに設けられている。
【0027】
ここで、各回転用磁石31bが
図3に示す矢印A1の方向に上昇すると、マグネットギア31aは
図3に示す矢印A2の方向に回転することになる。各回転用磁石31bは、マグネットギア31aの各磁極と引き合っているため、マグネットギア31aの各磁極と引き合った状態で上昇することになる。また、マグネットギア31aの各磁極はスパイラル状に配置されているため、各回転用磁石31bが矢印A1の方向に上昇すると、マグネットギア31aは矢印A2の方向に回転して互いの磁極が引き合った状態を維持することになる。この各回転用磁石31bの上昇によるマグネットギア31aの回転は、回転用磁石31bとマグネットギア31aとの間、すなわち磁極間距離の変化が無いため、一定の吸引力が維持されつつ実行される。なお、各回転用磁石31bが矢印A1の逆方向に下降すると、マグネットギア31aは矢印A2の逆方向に回転する。
【0028】
図1及び
図2に戻り、一組の上下アーム31cは、根元部分でリング状の部材である上下リング31dにつながっている。これらの上下アーム31cは、回転プレート4cに固定された上下軸34によってそれぞれ支持されており、それらの上下軸34に対してスライド可能に形成されている。各上下軸34は、伝動体4aの回転軸に対して平行となるように回転プレート4cに設置されており、上下アーム31cを伝動体4aの回転軸に垂直な状態に維持したまま上下方向に移動可能にしている。これらの上下軸34にはクランプバネ35が個別に設けられており、各クランプバネ35は回転プレート4cと上下アーム31cの間にそれぞれ位置し、各上下アーム31cを一定のバネ力で下方に押し付けている。
【0029】
上下リング31dは、一組の上下アーム31cを一体にして支持するリング状の部材であり、伝動体4aをリング内に通し、その伝動体4aの外周面に沿って伝動体4aの回転軸の軸方向(上下方向)に移動可能に設けられている。この上下リング31dによって三つの上下アーム31cは一体となり、同時に移動可能(昇降可能)になっている。
【0030】
昇降機構31eは、エアシリンダなどのシリンダ36と、そのシリンダ36により昇降するシリンダ軸37と、そのシリンダ軸37の先端部に取り付けられた昇降ローラ38とを有している。シリンダ36はベース体2に固定されている。また、昇降ローラ38は、上昇時に上下リング31dの下面に接触するようにシリンダ軸37の端部に設けられている。この昇降ローラ38が上昇して上下リング31dの下面に接触し、その上下リング31dを伝動体4aの回転軸の軸方向に押し上げることで、上下リング31dは伝動体4aの回転軸の軸方向に上昇する。
【0031】
この昇降機構31eによって上下リング31dが伝動体4aの回転軸の軸方向に上昇すると、一組の上下アーム31c(三つの上下アーム31c)が回転軸の軸方向に沿って上昇するため、一組の上下アーム31cに固定されている各回転用磁石31bは、前述のように、各マグネットギア31aの個々の磁極と引き合った状態で上昇する。このとき、各マグネットギア31aは、各回転用磁石31bと引き合った状態を維持するために各回転用磁石31bの上昇に応じて回転する。このとき、マグネットギア31aと回転用磁石31bとの間、すなわち磁極間距離は変化しないため、一定の吸引力を維持しながらマグネットギア31aを回転させることが可能であり、一定速度で各クランプピン21を回転させることができる。
【0032】
ここで、マグネットギア31aと各回転用磁石31bとの吸引力は、上下アーム31cが縮んだクランプバネ35により下方向に押される力で下降することによって、各回転用磁石31bが下降してマグネットギア31aを回転させると共に、その下降する各回転用磁石31bとマグネットギア31aが互いに引き合って対向する状態(関係)を常に維持するように、磁石の数や配置などによって調整されている。これにより、マグネットギア31aは各回転用磁石31bの下降によって回転するが、マグネットギア31aと各回転用磁石31bが互いに引き合って対向する状態は常に維持されている。このため、クランプバネ35のバネ力により上下アーム31cが下降し、それに連れて各回転用磁石31bが下降していくことになる。このとき、上下アーム31cが下降するに連れてクランプバネ35は徐々に伸びていき、上下アーム31cを下方向に押す力が徐々に弱まる。やがて、そのクランプバネ35の下方向に押される力が、各回転用磁石31b及びマグネットギア31aの吸引力(各回転用磁石31bとマグネットギア31aが互いに引き合って対向する状態を常に維持する吸引力)に負けると上下アーム31cの下降は止まるように設定されている。このように上下アーム31cを下降させるクランプバネ35のバネ力をクランプ力(把持力)として用いることが可能となり、クランプバネ35の押し付け力をクランプピン21が基板Wを把持する力にすることができる。
【0033】
また、昇降機構31eにより上下リング31dを上昇させることによって、各クランプバネ35の力が作用している一組の上下アーム31cを上昇させることが可能である。その一組の上下アーム31cに固定されている各回転用磁石31bの上昇によって各マグネットギア31aが回転し、各クランプバネ35の力で基板Wをクランプしていた各クランプピン21を回転してクランプを開放することができる。なお、クランプバネ35が上下アーム31cを押し下げる力がクランプ力(把持力)となる。ここでは、昇降機構31eにより上下リング31dを上昇させることで、各クランプバネ35を縮めて一組の上下アーム31cを上昇させ、三つのクランプピン21を回転させてクランプを開放する。
【0034】
逆に、上下リング31dを下げると、一組の上下アーム31cが下降するため、各マグネットギア31aは逆回転して、基板Wの端部に各クランプピン21が接触する。それらのクランプピン21が基板Wをクランプすると、一組の上下アーム31cの下降は停止し、各クランプピン21は各クランプバネ35による圧力で基板Wに力をかけた状態で停止する。なお、昇降機構31eにより上下リング31dを下げると同時に、各クランプバネ35が伸びて一組の上下アーム31cを押し下げる力が働く。この力により各マグネットギア31aを回転させることで、三つのクランプピン21が偏心回転して基板Wに当接し、その基板Wを把持する。クランプピン21が基板Wに当接したとき、クランプバネ35は伸びきらないで途中で止まることになる。
【0035】
なお、シリンダ36は、一組の上下アーム31cの下降停止と関係なく一定量でシリンダ軸37を昇降させるため、上下リング31dと昇降ローラ38との間に隙間が発生した状態でシリンダ軸37が停止することになる。すなわち、シリンダ軸37の最下降時には、昇降ローラ38は上下リング31dに接触せずにその上下リング31dの下面から離れている。これにより、回転体4の回転時、上下リング31dは昇降ローラ38に接触せずに回転することが可能となり、スムーズな回転を実現することができる。また、回転体4の回転時に、上下リング31dの下面に昇降ローラ38を接触させて上下リング31dを上昇させることも可能である。このため、回転体4の回転中あるいは停止中を問わず、各クランプピン21を開閉することができる。
【0036】
第2の回転機構32は、各クランプ部4bの個々のピン回転体23の外周面にそれぞれ設けられたマグネットギア32aと、それらのマグネットギア32aに対応する回転用の複数の回転用磁石32bと、それらの回転用磁石32bを保持して上下する一組の上下アーム32c(この実施の形態では三つの上下アーム32c)と、それらの上下アームを一体とする上下リング32dと、その上下リング32dをピン回転体23の回転軸に沿って移動させる昇降機構32eとを備えている。この第2の回転機構32は第1の回転機構31と同じ機構であるため、各部の説明は省略する。
【0037】
なお、第1の回転機構31における一組の上下アーム31c及び上下リング31dは保持部として機能し、この保持部と昇降機構31eが、各回転用磁石31bをピン回転体23の回転軸の軸方向に沿って移動させる移動機構として機能する。同様に、第2の回転機構32における一組の上下アーム32c及び上下リング32dは保持部として機能し、この保持部と昇降機構32eが、各回転用磁石32bをピン回転体23の回転軸の軸方向に沿って移動させる移動機構として機能する。
【0038】
ここで、前述の第1の回転機構31や第2の回転機構32において、マグネットギア31a又は32aによるピン回転体23の回転が可能であれば、スパイラル状の磁極の帯は一本であっても、さらに、回転用磁石31bは一つであっても良く、それらの数は特に限定されるものではない。ただし、ピン回転体23の回転の安定性を向上させるためには、スパイラル状の磁極と回転用磁石31bとの組み合わせ数を増やすことが望ましい。
【0039】
カバー4eは、下面開口のケース状に形成されており、伝動体4aの回転と共に回転する前述の各部を覆って乱流の発生を防止する。このカバー4eには、ノズルヘッド12のノズル12aから吐出された処理液を上部に通過させるための開口部41と、各クランプ部4bの個々の回転板22が挿入される複数の貫通孔42とが形成されている。
【0040】
液受け部6は、環状の可動液受け部(第1の液受け部)6aと、環状の固定液受け部(第2の液受け部)6bとを具備している。これらの可動液受け部6a及び固定液受け部6bは、回転体4の外周にその回転体4の回転軸、すなわち伝動体4aの回転軸を中心として回転体4を囲むようにそれぞれ設けられている。
【0041】
可動液受け部6aは、環状の内壁51と、環状の外壁52と、それらの上端部をつなぐ環状の上面壁53とにより構成されている。この可動液受け部6aの上端部は、全周にわたって径方向内方に向かって傾斜するように形成されている。なお、環状の内壁51と環状の外壁52との間には、所定間隔の環状の空間が存在している。
【0042】
この可動液受け部6aは、例えばシリンダなどの昇降機構(図示せず)により昇降可能に構成されている。このため、可動液受け部6aは、その上端部が回転体4上の基板Wの高さよりも高い位置であって回転体4側の面(内面)が基板Wからの液体を受け取る液受け位置(
図1参照)と、その上端部が回転体4上の基板Wの高さよりも低い位置であって固定液受け部6bへの液の流入を防止する閉蓋位置とに移動することが可能である。したがって、処理液を回収する場合には、可動液受け部6aが液受け位置に上昇し、回転体4上の基板Wからの液を受け取って固定液受け部6bの中に流すことになる。
【0043】
固定液受け部6bは、環状の内壁61と、環状の外壁62と、それらの下端部をつなぐ環状の底面壁63とにより構成されている。この底面壁63には、処理液を回収するための複数の回収配管63aが周方向に所定間隔で接続されている。なお、環状の内壁61と環状の外壁62との間には、所定間隔の環状の空間が存在している。
【0044】
この固定液受け部6bは、環状の内壁61と環状の外壁62との間に可動液受け部6aの内壁51及びカバー4eの外周壁が位置するように設けられており、可動液受け部6aの内面によって受けた液体を収容することが可能になっている。したがって、固定液受け部6bは、可動液受け部6aの内面に当たった液を二つの環状壁である内壁61及び外壁62の間の空間に収容することができる。
【0045】
また、固定液受け部6bは、可動液受け部6aが閉蓋位置まで下降すると、その可動液受け部6aが固定液受け部6bの開口を塞ぐ蓋となる構造になっている。なお、可動液受け部6aが閉蓋位置まで下降した場合には、その可動液受け部6aにより固定液受け部6bの開口が塞がれ、固定液受け部6bの内部に液が流れ込むことが防止される。特に、環状の外壁62が可動液受け部6aの外壁52によって覆われ、固定液受け部6bへの液の流れ込みが確実に抑えられるので、液混合を防ぐことが可能となる。
【0046】
次に、前述のスピン処理装置1のスピン処理動作について説明する。
【0047】
このスピン処理動作は、
図5に示すように、各クランプピン21上に基板Wを置く工程と、
図6に示すように、処理前に全てのクランプピン21により基板Wをクランプする工程と、
図7に示すように、処理中に一組のクランプピン21によるクランプを開放する工程と、
図8に示すように、処理中に他の一組のクランプピン21によるクランプを開放する工程と、
図5に示すように、処理後に全てのクランプピン21によるクランプを開放する工程とを有している。
【0048】
図5に示すように、各クランプピン21上に基板Wを置く工程では、全てのクランプ部4bの各クランプピン21による基板Wのクランプが開放されている。この状態で、ロボットハンドを有するロボット装置などの搬送機構(図示せず)によって基板Wが各クランプピン21の傾斜面上に載置される。このとき、上下リング31dは昇降機構31eの昇降ローラ38の上昇によって上昇しており、さらに、上下リング32dは昇降機構32eの昇降ローラ38の上昇によって上昇しており、二組の上下アーム31c及び32cが回転軸の軸方向に沿って上昇している。このため、二組の上下アーム31c及び32cに固定されている各回転用磁石31b及び32bも上昇しており、この上昇に応じて各マグネットギア31a及び32aが所定量回転しており、各ピン回転体23及び各回転板22の回転に応じて各クランプピン21が回転して基板Wのクランプを開放する位置で停止している。
【0049】
次いで、
図6に示すように、処理前に全てのクランプピン21により基板Wをクランプする工程では、前述の
図5の状態から、上下リング31dが昇降機構31eの昇降ローラ38の下降により下降し、さらに、上下リング32dが昇降機構32eの昇降ローラ38の下降により下降し、二組の上下アーム31c及び32cが回転軸の軸方向に沿って下降する。これに応じて、二組の上下アーム31c及び32cに固定されている各回転用磁石31bも下降し、この下降に応じて各マグネットギア31a及び32aが回転し、さらに、各ピン回転体23及び各回転板22の回転に応じて全てのクランプピン21が回転し、各クランプバネ35のクランプ力によって基板Wをクランプして停止する。なお、昇降機構31e及び32eにより上下リング31d及び32dを下げると同時に、各クランプバネ35が伸びて二組の上下アーム31c及び32cを押し下げる力が働く。この力により各マグネットギア31aを回転させることで、六つのクランプピン21が偏心回転して基板Wに当接し、その基板Wを把持する。クランプピン21が基板Wに当接したとき、クランプバネ35は伸びきらないで途中で止まることになる。
【0050】
このとき、全てのクランプピン21は偏心回転して基板Wの外周面に当接して基板Wを把持することになるが、上下リング31dと32dの下降に伴い、各上下リング31d、32dと一体の一組の上下アーム31c、32cは水平状態を保ちながら同期して下降することから、それぞれの組に対応するクランクピン(この実施の形態では三つのクランプピン)21も同期して回転する。これにより、各クランプピン21は、基板Wの中心を回転軸の中心にセンタリングしつつ把持することになる(全てのクランプピン21によるセンタリング)。なお、基板Wを把持するにあたり、昇降機構31eと32eを同期させて同時に作動させるようにしても良いし、両者の作動開始時期に時間差を設けるようにしても良い。
【0051】
次に、
図7に示すように、処理中に一組のクランプピン21によるクランプを開放する工程では、前述の
図6の状態から、上下リング31dが昇降機構31eの昇降ローラ38の上昇により上昇し、一組の上下アーム31cが回転軸の軸方向に沿って上昇する。これに応じて、一組の上下アーム31cに固定されている各回転用磁石31bも上昇し、この上昇に応じて各マグネットギア31aが所定量回転し、さらに、各ピン回転体23及び各回転板22の回転に応じて各クランプピン21が回転して基板Wのクランプを開放する位置で停止する。このようにして、一組のクランプピン21によるクランプが開放されると、駆動モータ5により回転体4が回転し、回転する基板Wの上面及び下面の両面に対して処理液(例えば、薬液や純水など)の供給が開始される。ただし、一組のクランプピン21によるクランプの開放のタイミングは様々であり、一組のクランプピン21によるクランプを基板Wの回転前に開放しても、基板Wの回転が安定した後に開放しても良い。
【0052】
ここで、処理液の供給時には、基板Wの上下面に供給された処理液は、回転により発生する遠心力及び気流によって基板Wの径方向外方へ流れ、その外周縁から飛散する。このとき、可動液受け部6aの移動(昇降)によって、処理液を回収する回収流路とその処理液を排出する排出流路とを切り替えることが可能である。液流路が回収流路である場合、すなわち、可動液受け部6aが液受け位置に上昇し、処理液を回収する場合には(
図1参照)、基板Wの端部から飛散した液は可動液受け部6aの内面に当たり、その内面に沿って流れて固定液受け部6bにより収容され、その後、各回収配管63aから回収される。一方、液流路が排出流路である場合、すなわち、可動液受け部6aが閉蓋位置に下降し、処理液を排出する場合には、基板Wの端部から飛散した液はカップ体3の内周面に当たり、カップ体3からベース体2につながる流路を流れ、その後、各排出管から排出される。
【0053】
その後、
図8に示すように、処理中に他の一組のクランプピン21によるクランプを開放する工程では、前述の
図7の状態から、上下リング31dが昇降機構31eの昇降ローラ38の下降により下降し、一組の上下アーム31cが回転軸の軸方向に沿って下降する。これに応じて、一組の上下アーム31cに固定されている各回転用磁石31bも下降し、この下降に応じて各マグネットギア31aが回転し、さらに、各ピン回転体23及び各回転板22の回転に応じて各クランプピン21が回転し、各クランプバネ35のクランプ力によって基板Wをクランプして停止する。なお、昇降機構31eにより上下リング31dを下げると同時に、各クランプバネ35が伸びて一組の上下アーム31cを押し下げる力が働く。この力により各マグネットギア31aを回転させることで、三つのクランプピン21が偏心回転して基板Wに当接し、その基板Wを把持する。クランプピン21が基板Wに当接したとき、クランプバネ35は伸びきらないで途中で止まることになる。
【0054】
次に、上下リング32dが昇降機構32eの昇降ローラ38の上昇により上昇し、一組の上下アーム32cが回転軸の軸方向に沿って上昇する。これに応じて、一組の上下アーム32cに固定されている各回転用磁石32bも上昇し、この上昇に応じて各マグネットギア32aが所定量回転し、さらに、各ピン回転体23及び各回転板22の回転に応じて各クランプピン21が回転して基板Wのクランプを開放する位置で停止する。このようにして、前述と異なる他の一組のクランプピン21によるクランプが開放されるが、この間も、駆動モータ5により回転体4が回転しており、回転する基板Wの上面及び下面の両面(表裏)に対する処理液の供給は継続されている。
【0055】
全ての液処理と純水によるリンス処理が終了すると、処理液の供給が停止され、
図6に示すように、再度、全てのクランクピン21により基板Wをクランプする。つまり、前述の
図8の状態から、上下リング32dが昇降機構32eの昇降ローラ38の下降により下降し、一組の上下アーム32cが回転軸の軸方向に沿って下降する。これに応じて、一組の上下アーム32cに固定されている各回転用磁石32bも下降し、この下降に応じて各マグネットギア32aが回転し、さらに、各ピン回転体23及び各回転板22の回転に応じてクランプピン21が回転し、各クランプバネ35のクランプ力によって基板Wをクランプして停止する。なお、昇降機構32eにより上下リング32dを下げると同時に、クランプバネ35が伸びて一組の上下アーム32cを押し下げる力が働く。この力により各マグネットギア32aを回転させることで、三つのクランプピン21が偏心回転して基板Wに当接し、その基板Wを把持する。クランプピン21が基板Wに当接したとき、クランプバネ35は伸びきらないで途中で止まることになる。
【0056】
その後、回転体4は液供給時よりも速い速度で回転する(振り切り乾燥)。所定の乾燥処理時間が経過すると、前述の
図6の状態を維持させながら基板Wの回転を停止させる。基板Wの回転が停止したら、最後に
図5に示すように、全てのクランプピン21による基板Wのクランプを開放する。この開放工程では、上下リング31dは昇降機構31eの昇降ローラ38の上昇により上昇し、さらに、上下リング32dは昇降機構32eの昇降ローラ38の上昇によって上昇し、二組の上下アーム31c及び32cが回転軸の軸方向に沿って上昇する。これに応じて、二組の上下アーム31c及び32cに固定されている各回転用磁石31b及び32bも上昇し、この上昇に応じて各マグネットギア31a及び32aが所定量回転し、さらに、各ピン回転体23及び各回転板22の回転に応じて各クランプピン21が回転して基板Wのクランプを開放する位置で停止する。このようにして、全てのクランプピン21によるクランプが開放される。その開放後、各クランプピン21の傾斜面上の基板Wが前述の搬送機構によって搬送される。
【0057】
このようなスピン処理工程では、各クランプピン21によるクランプ時及びそのクランプ開放時、マグネットギア31aと回転用磁石31bとの間の距離やマグネットギア32bと回転用磁石32bとの間の距離、すなわち磁極間の距離の変化が無いため、磁極間の吸引力は一定に維持されながら、各マグネットギア31a又は32aは回転する。このため、一定速度で各クランプピン21を回転させることが可能となり、各クランプピンの回転を均一にしてクランプ時の基板位置が所定位置からずれることを抑止し、正確なセンタリングを行うことができる。
【0058】
また、二組の上下アーム31c及び32cを個別(組ごと)に下降させることによって、一本ずつ間を開けた三本のクランプピン21を同期させ、各クランプピン21上の基板Wを中央に位置決めしながら把持することが可能になっている。六本のクランプピン21は三つで一組となり、二つの三爪クランプとして機能する。また、逆に、二組の上下アーム31c及び32cのどちらかの一組を上昇させることによって、一本ずつ間を開けた三本のクランプピン21を開くことができる。このため、基板Wの回転中であっても、クランプピン21の半数を把持から開放、開放から把持と交互に変更することが可能である。基板Wの回転中には必ず一定の把持力で基板Wを把持していなければならないため、片方のクランプピン21群で基板Wを把持し、他方のクランプピン21群を開放することで、クランプピン21との基板Wの接触部分に処理液を回り込ませて、基板Wの処理残りの発生を防止することができる。
【0059】
また、基板回転機構外から、クランプピン21を開閉する機構を実現することができ、さらに、直動を回転に変換する機構を非接触で実現することができる。すなわち、基板Wの回転中でも、非回転側からクランプピン21の開閉を行うことができる簡略な機構であり、かつ、基板Wのクランプを開放するとき、クランプピン21が確実に基板Wから離れ、基板Wをクランプするとき、基板Wの中心を回転中心にセンタリングする機能を維持することが可能である機構を実現することができる。
【0060】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、マグネットギア31a(又は32a)と回転用磁石31b(又は32b)を用いて各クランプピン21を回転させることによって、マグネット式によるピン回転が実現されるので、ダストの発生を抑止することができる。さらに、ピン回転時、マグネットギア31a(又は32a)と回転用磁石31b(又は32b)との離間距離、すなわち磁極間距離が一定に保たれるため、各クランプピン21の回転を均一にすることが可能となり、クランプ時の基板位置のズレを抑止することができる。
【0061】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について
図9及び
図10を参照して説明する。
【0062】
第2の実施形態は基本的に第1の実施形態と同様である。このため、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点(回転用磁石31bの構造)について説明し、第1の実施形態で説明した部分と同一部分は同一符号で示し、その説明も省略する。
【0063】
図9に示すように、第2の実施形態に係るスピン処理装置1では、回転用磁石31bが各上下アーム31cの先端部にそれぞれ設けられており、回転用磁石32bが各上下アーム32cの先端部にそれぞれ設けられている。これらの回転用磁石31b及び32bは同じ構造であるため、回転用磁石32bの説明は省略する。なお、各上下アーム31c及び32cは、第1の実施形態に係る貫通孔33を有していない。
【0064】
図10に示すように、回転用磁石31bは、N極とS極の磁極が交互に配置され、縦に複数の磁極が並ぶ平面磁石である。この平面磁石は、複数(例えば四個)の磁極が、マグネットギア31aの螺旋状の磁極(傾斜磁極)と平行な平面上にその磁極の傾斜に合わせて斜めにして配置された板状の構造になっている。
【0065】
ここで、平面磁石が
図10に示す矢印A1の方向に上昇すると、マグネットギア31aは
図10に示す矢印A2の方向に回転することになる。平面磁石は、マグネットギア31aの各磁極と引き合っているため、マグネットギア31aの各磁極と引き合った状態で上昇することになる。また、マグネットギア31aの各磁極はスパイラル状に配置されているため、平面磁石が矢印A1の方向に上昇すると、マグネットギア31aは矢印A2の方向に回転して互いの磁極が引き合った状態を維持することになる。この平面磁石の上昇によるマグネットギア31aの回転は、平面磁石とマグネットギア31aとの間、すなわち磁極間距離の変化が無いため、一定の吸引力が維持されつつ実行される。なお、平面磁石が矢印A1の逆方向に下降すると、マグネットギア31aは矢印A2の逆方向に回転する。
【0066】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、前述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、マグネットギア31a(又は32a)と平面磁石としての回転用磁石31b(又は32b)を用いて各クランプピン21を回転させることによって、マグネット式によるピン回転が実現されるので、ダストの発生を抑止することができる。さらに、ピン回転時、マグネットギア31a(又は32a)と回転用磁石31b(又は32b)との離間距離、すなわち磁極間距離が一定に保たれるため、各クランプピン21の回転を均一にすることが可能となり、クランプ時の基板位置のズレを抑止することができる。
【0067】
なお、前述の第1又は第2の実施形態においては、基板把持力は磁力又はバネ力(クランプバネ35が上下アーム31c、32cを押し下げる力)によって決まり、把持位置は上下アーム31c又は32cの停止高さで決まる。このため、上下アーム31c又は32cの高さ位置を検出することで、基板Wのクランプが正しく行われているか否かを確認することも可能である。基板Wが正しくクランプされたことが確認できた場合に限り、半数のクランプピン21を開放する動作を許可すれば、解放時の把持力不足による基板ズレなどのトラブル発生を防ぐことができる。したがって、上下アーム31c又は32cあるいは上下リング31d又は32dの高さを検出するセンサと、そのセンサにより検出された高さに応じて各クランプピン21による基板Wの把持が正常であるか否かを判断する判断部(制御部7)とを設けることによって、基板Wのクランプが不十分である状態で処理を実行して発生する不具合を防止することができる。
【0068】
また、前述の第1又は第2の実施形態においては、基板Wとして、円形のウェーハのような円板状の基板に対して処理を行っているが、基板Wの形状は限定されるものではなく、例えば、基板Wとして、液晶パネルのような矩形板状のガラス基板に対して処理を行っても良い。この場合にも、少なくとも三本のクランプピン21が必要であるが、基板Wの把持の安定性向上のためには、四本のクランプピン21を設けることが好ましい。また、四本のクランプピン21を二組設けた場合には、前述と同様に、処理中に組ごとに交互に基板Wを把持することも可能である。
【0069】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について
図11を参照して説明する。
【0070】
第3の実施形態は基本的に第1の実施形態と同様である。このため、第3の実施形態では、第1の実施形態との相違点(アーム移動機構)について説明し、第1の実施形態で説明した部分と同一部分は同一符号で示し、その説明も省略する。
【0071】
図11に示すように、第3の実施形態に係るスピン処理装置1は、上下アーム31c又は32cの1本または2本のクランプピン(チャックピン)21の上下アーム(移動上下アーム101)を他の上下アームと平行に独立して上下することができる構成(アーム移動機構)にされている。移動上下アーム101は、上下リング32dに固定したスライド軸102に沿って独立して平行に移動できるようにバネ103により押し付けられている。また、マグネットギア32aには、一体で回転する回転ストッパ軸104が固定されており、クランプピン21が把持する基板Wをセンタ位置の近くで位置決めできるように、固定ストッパ軸105が配置されている。これらの回転ストッパ軸104及び固定ストッパ軸105が移動上下アーム101を位置決めして停止させる機構として機能する。
【0072】
このような構成を追加することにより、マグネットギア32aは、クランプピン21を回転させて、回転ストッパ軸104が固定ストッパ軸105に当たるまで移動させることができる。ストッパが当たると、マグネットギア32aの回転が停止するため、移動上下アーム101の下降も停止する。それでも、他の上下アームは下降して、マグネットギア32aを回転させるため、基板Wは停止したクランプピン21で決まった位置に他のクランプピン21で押し付けられることになる。この機構を追加することで、決まった位置に基板Wを位置決めすることができる。なお、このような機構は、基板Wに対して対向しない1から2本のクランプピン21に設置することが可能である。
【0073】
以上説明したように、第3の実施形態によれば、前述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第3の実施形態に係る機構の追加によって、より正確に基板Wを位置決めすることが可能となり、クランプ時の基板位置のズレを確実に抑止することができる。
【0074】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。