(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。
【0014】
(実施形態)
図1は、本発明によるロックミシンの実施形態を示す要部斜視図である。
図2は、ルーパ糸通路Cの右端部付近の構成をスライド板支え14を透視した状態により示した斜視図である。
図3は、ルーパ糸通路Cのスライド板6付近の分解斜視図である。
図4は、ルーパ糸通路Cのスライド板支え14付近の分解斜視図である。
図5は、主軸固定機構D付近の分解斜視図である。
なお、
図1から
図5を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
また、理解を容易にするため、及び、説明の便宜上、
図1中に矢印により示した前(又は、手前)、後(又は、背、裏)、左、右、上、下の6つの向きを適宜用いて説明を行う。ただし、これらの向きは、発明の構成を限定するものではない。
【0015】
本実施形態では、2つのルーパ(上ルーパ1,下ルーパ2)を備えたロックミシンを例に挙げて説明する。ただし、本発明は、ルーパへの糸通しが1本又は3本以上ある場合であっても、利用可能である。
【0016】
本実施形態のロックミシンは、
図1中に示したルーパ部Aと、空気流路切換え機構Bと、ルーパ糸通路Cと、主軸固定機構Dとを主要な構成として有している。なお、ロックミシンには、この他に針やモータ等及び各種駆動機構を備えているが、詳細は省略する。
【0017】
ルーパ部Aは、空気流路切換え機構B及びルーパ糸通路Cを介して搬送される上ルーパ糸58及び下ルーパ糸59を受け取る中空構造の上ルーパ1と、下ルーパ2とを備えている。上ルーパ1及び下ルーパ2は、それぞれ、各ルーパ糸を受け容れる上ルーパ受口1a及び下ルーパ受口2aを有している。
上ルーパ受口1aは、管状部材1bを介して上ルーパ剣先1cまで通じている。下ルーパ受口2aは、管状部材2bを介して下ルーパ剣先2cまで通じている。ルーパ天秤3は、上ルーパ糸掛け3a、下ルーパ糸掛け3bを有している。上ルーパ1と下ルーパ2は、不図示のモータにより駆動される主軸28の回転により上下動する不図示の針と交差タイミングを取りながら往復運動を行う。
【0018】
空気流路切換え機構Bは、チューブ36に供給される圧縮空気の流路を切換えて、上ルーパ糸58の糸通しと下ルーパ糸59の糸通しとを切換える機構である。空気流路切換え機構Bは、分岐体44が、分岐台板50に対してねじ51により固定されて構成されており、その背面には、チューブ36が連結されており、圧縮空気供給装置(図示せず)において発生させた圧縮空気が空気流路切換え機構Bに供給される。
空気流路切換え機構Bの前面にはルーパ選択つまみ45が設けられ、このルーパ選択つまみ45が操作されることにより、糸通し作業の際、上ルーパ糸58と下ルーパ糸59のどちらを通すのかが設定される。
空気流路切換え機構Bの上面には、上ルーパ糸挿入穴48aと、下ルーパ糸挿入穴48bとが配置されている。
空気流路切換え機構Bは、下端に上ルーパ糸排出管54aと、下ルーパ糸排出管54bとを有しており、後述する上ルーパ導通管12及び下ルーパ導通管13の上端拡張部12b,13bと連結する。
また、空気流路切換え機構B32は、ねじ53によりミシン本体又はユニット台55に固定されている。
【0019】
スライド管4は、フランジ部4aによりスライド管ばね5を受けており、スライド板6のU溝6aにそのフランジ部4aを受け面にして挿入されている。スライド管4は、それぞれ一端4bが上ルーパ導通管12及び下ルーパ導通管13に摺動自在に嵌合している。また、スライド管4は、スライド板6の移動に従動して糸通し位置と縫い実施位置間を移動する。糸通し位置では、スライド管4の他端4cは、上ルーパ受口1a及び下ルーパ受口2aに接続された状態にある。縫い実施位置では、スライド管4の他端4cは、上ルーパ受口1a及び下ルーパ受口2aから離間した状態にある。
スライド管ばね5は、スライド管4に嵌合していて、スライド管4の糸通し位置移動時にスライド管4を上ルーパ受口1a、下ルーパ受口2aに加圧接触させる。
【0020】
スライド板(スライド部材)6は、2個のU溝6aに対応する向かい側に2個の丸穴6bを有している。スライド板6のU溝6aと丸穴6bとを含む部分は、ルーパ管支持板7の内側領域(後述の対向部に挟まれた領域)に配置されている。スライド板6は、スライド管4を保持して、スライド管4と共に糸通し位置と縫い実施位置との間で移動する。
【0021】
ルーパ管支持板7は、左右方向に延在する部分の両側に設けられた互いに対向する対向部がそれぞれ前方に立ち曲げられた形状(いわゆるコの字形状)に形成されている。ルーパ管支持板7は、これら対向部に通し穴7a、7bを有している。また、スライド板6には、この通し穴7a、7bに対応する丸穴6cが上述した2個の丸穴6bと同一面に形成されている。
【0022】
支持板軸8は、ルーパ管支持板7の通し穴7a、7b、及びその間に、スライド板6の丸穴6cを貫通しており、両端にE形止め輪9が止められることによりルーパ管支持板7に固定される。支持板軸8は、スライド板6の丸穴6cとルーパ管支持板7の通し穴7aとの間に支持板軸ばね10を保持する。ルーパ管支持板7は、ねじ11により不図示のミシン本体又はユニット台55に固定されるので、スライド板6は、支持板軸ばね10により常時、左方向に付勢される。
支持板軸ばね10は、スライド板6及びスライド管4を常時左方向に付勢しており、糸通し切換え時のスライド板6及びスライド管4の左方向への移動の駆動源となる。
【0023】
上ルーパ導通管12は、その直線部12aがルーパ管支持板7の右側面穴7c、及び、スライド板6の丸穴6bを貫通し、さらにスライド管ばね5、及び、スライド管4を貫通して、スライド管4と共にルーパ管支持板7の左側面穴7dまで貫通している。
下ルーパ導通管13は、その直線部13aがルーパ管支持板7の右側面穴7e、及び、スライド板6の丸穴6bを貫通し、さらにスライド管ばね5、及び、スライド管4を貫通して、スライド管4と共にルーパ管支持板7の左側面穴7fまで貫通している。
【0024】
スライド板6は、長穴6dと、異形長穴6hとを有している。
異形長穴6hは、スライド板6の移動の方向(左右方向)に沿って延在する長穴部6fと、長穴部6fに繋がって形成され、かつ、長穴部6fの幅よりも幅が広く形成された幅広穴部6eとを有している。
また、スライド板6は、その右側端部付近に、前側に突出したピン6gを有している。
【0025】
スライド板支え14は、ねじ22により不図示のミシン本体又はユニット台55に固定されている。スライド板支え14は、スライド板6と主軸固定外軸24とを保持しており、さらに、主軸固定作動軸16と、主軸固定作動腕20と、切換え制限腕19とを保持している。
スライド板支え14は、一端にE溝付きピン14aが配置され、他端にも同様にE溝付きピン14aが配置されている。スライド板支え14は、スライド板6の長穴6d及び長穴部6fのそれぞれにE溝付きピン14aが嵌合した状態でE形止め輪15により固定されることにより、スライド板6を摺動自在に保持している。
スライド板支え14は、そのほぼ中央に丸穴14bを有しており、この丸穴14bには、主軸固定外軸24が貫通している。スライド板支え14は、その右半分部に通し穴14c、14dを有している。通し穴14c、14dには、主軸固定作動軸16が貫通しており、主軸固定作動軸16は、E形止め輪17によりスライド板支え14に回転自在に設けられている。
【0026】
切換え制限腕(切換え制限部)19は、スライド板支え14の右側に設けられた略コの字形状内側において主軸固定作動軸16に固定されており、E形止め輪17との共働でスラスト方向のガタ詰めがなされて主軸固定作動腕20と一体的に回転自在に保持されている。
【0027】
切換え制限腕19の上方に延びた腕には、ピン19aが配置されている。ピン19aは、スライド板支え14の右端にある円弧形長穴14eに揺動自在に嵌合している。この円弧形長穴14eとピン19aとの嵌合により、切換え制限腕19の揺動範囲が規制されている。
また、切換え制限腕19は、手前側に延びるピン19bを有している。このピン19bには、後述する切換え連動腕62の腕62c,62dが係合可能となっている。
【0028】
主軸固定作動軸16の左端には、主軸固定作動腕(主軸固定作動腕部)20が固定されている。主軸固定作動腕20は、主軸固定作動軸16を介して切換え制限腕19と一体的に揺動運動を行う。主軸固定作動腕20の一端には、ピン20aが配置されており、スライド板支え14の小穴14fとの間に主軸固定作動ばね21が掛けられている。主軸固定作動ばね21は、主軸固定作動腕20の揺動動作により中立点を越えて両極方向に交互に付勢を行う。また、主軸固定作動腕20の一端には、長穴状に形成された軸ピン係合部20bが設けられている。この軸ピン係合部20bには、後述の固定内軸ピン27が係合している。主軸固定作動腕20は、軸ピン係合部20bが固定内軸ピン27を押すことにより主軸固定内軸26及び主軸固定外軸24を前後動させる。
【0029】
主軸固定作動腕20は、主軸固定作動ばね21の作用により、中立点を越えて手前側と奥側に交互に付勢されるようになっている。また、主軸固定作動腕20は、スライド板支え14の円弧形長穴14eと切換え制限腕19のピン19aの嵌合により、主軸固定作動腕20の揺動範囲が規制されている。
なお、本実施形態では、上述したように、主軸固定作動軸16と、切換え制限腕19と、主軸固定作動腕20とにより所定範囲内で揺動可能に設けられた揺動レバー部を形成している。しかし、これらの一部又は全部を一体化して揺動レバー部を構成するようにしてもよい。
【0030】
ユニット台55には、切換え軸55aが前方に向けて延在して設けられている。なお、切換え軸55aは、ミシン本体等に設けられていてもよい。切換え軸55aには連動腕受け61が挿入されてねじ61cにより固定されており、そのさらに手前に切換え連動腕62が回転自在に挿入されている。
【0031】
連動腕受け61には、後方に凹んで形成された凹部61a,61bが回転方向に並んで形成されている。
切換え連動腕62は、ボス部62aと、腕62b,62c,62dと、球状突起62eとを有している。
ボス部62aは、中空の略棒状に形成されており、この中空部分に切換え軸55aが貫通しており、切換え連動腕62の手前に座金63とE形止め輪66を設けて、連動腕受け61とE形止め輪66とにより切換え連動腕62を挟んで切換え連動腕62の軸方向の動きを規制している。
腕部(スライド部材係合部)62bは、ボス部62aから上方に延在して設けられている。腕62bは、その先端の右端部がスライド板6のピン6gに当接可能となっている。後述の糸通し切換えつまみ64が前方から見て時計回り方向に回転させられると、糸通し切換えつまみ64と共に切換え連動腕62が回転して腕62bがピン6gを押し、スライド板6を右側へ移動させることができる。
【0032】
腕部(切換え係合部)62cは、腕62bの上方から右側へ向けて延在して設けられている。
腕62d(切換え係合部)は、腕62bの上方から右側へ向けて延在して設けられている。
腕62cと腕62dとに挟まれた略V字形状の空間には、切換え制限腕19のピン19bが挿入されており、糸通し切換えつまみ64の回転方向に応じて、腕62c又は腕62dがピン19bと係合する。
球状突起62eは、ボス部62aから下方に延在している部分から、後方に向けて突出して形成されている。球状突起62eが連動腕受け61の凹部61a,61bに嵌まり込むことにより、切換え連動腕62の回転位置を仮保持することができる。
【0033】
糸通し切換えつまみ(切換え操作部)64は、切換え連動腕62のボス部62aに嵌合して、ねじ65を用いて切換え連動腕62に対して固定されている。よって、糸通し切換えつまみ64を左右に揺動(所定範囲内で回転)操作することにより切換え連動腕62も糸通し切換えつまみ64と一体的に揺動(所定範囲内で回転)可能となる。
ミシン完成状態では、切換え連動腕62までが正面カバー56(
図7c参照)内の内部構造となり、糸通し切換えつまみ64は、使用者が操作するための外部部品となる。
【0034】
ルーパ糸通路Cの左端には、ルーパ天秤案内23が配置されている。ルーパ天秤案内23には、ルーパ管支持板7の左側面穴7d、7fに対応する位置に2個の丸穴23a、23bが形成されている。
ルーパ天秤案内23は、ねじ57により不図示のミシン本体又はユニット台55に固定されている。
【0035】
スライド板支え14の丸穴14bに嵌合した主軸固定外軸(第1の軸)24は、内径部が空洞であり、その空洞部に固定内軸ばね(軸ばね)25と、主軸固定内軸(第2の軸)26とが挿入されている。よって、主軸固定内軸26は、主軸固定外軸24の軸線方向に沿って相対的に移動可能になっている。主軸固定内軸26は、後述の固定内軸ピン27を介して主軸固定作動腕20の揺動により前後動する。また、固定内軸ばね25は、主軸固定外軸24と主軸固定内軸26とを互いに離れる向きに付勢する。これにより、固定内軸ばね25は、主軸固定外軸24の中間位置維持の付勢部材として機能する。
【0036】
また、主軸固定外軸24の側面長穴(係合部)24aを通して固定内軸ピン(軸ピン)27が主軸固定内軸26の手前側先端に、側方へ突出するようにして固定されている。固定内軸ピン27は、主軸固定作動腕20の揺動を主軸固定内軸26に伝達する機能を有している。固定内軸ピン27は、主軸固定外軸24の側面長穴24aが形成されている範囲内で前後方向に移動可能であり、それに伴い主軸固定内軸26も主軸固定外軸24内を移動する。側面長穴24aは、固定内軸ピン27と係合して主軸固定外軸24を主軸固定板29側へ移動させる力を受ける係合部としての機能も有している。
【0037】
主軸固定外軸24の軸中心線上には、主軸28に固定された主軸固定板29が配置されている。主軸固定板29の外周には、主軸固定外軸24の一端24dと嵌合可能な切欠き29aが所定の位相(糸通し位相に相当)に配置されている。主軸固定外軸24が最後位置(係合位置)になると、主軸固定外軸24一端24dが切欠き29aと係合して主軸28を糸通し位相に固定する。
【0038】
主軸固定外軸24の手前側先端には、モータスイッチキャップ(識別部材)30がねじ31により固定されている。モータスイッチキャップ30は、主軸固定外軸24と一体的に前後動する。
モータスイッチキャップ30は、腕を下方に延ばした先端にスイッチ接触面30aを有している。
モータスイッチキャップ30の下部には、マイクロスイッチ(スイッチ)32が配置されている。マイクロスイッチ32は、スイッチ取付板33にねじ34により固定されている。また、スイッチ取付板33は、ミシン本体又はユニット台55にねじ35により固定されている。
本実施形態の不図示の回路上では、主軸固定外軸24が主軸固定板29から完全に離れた退避位置となる最前位置、すなわち、モータスイッチキャップ30が最前位置の場合にのみモータ駆動回路がONになる構成となっている。この状態は、スライド板6及びスライド管4が右に移動した状態であり縫い実施可能状態に相当する。
【0039】
また、主軸固定外軸24は、スライド板6の長穴部6f及び幅広穴部6eとそれぞれ係合する小径部24b及び大径部24cを備えている。主軸固定外軸24は、小径部24b及び大径部24cと長穴部6f及び幅広穴部6eとの係合によって、スライド板6の位置を糸通し位置及び縫い実施位置のそれぞれに維持する。
【0040】
上述した構成により、主軸固定外軸24は、その一端が主軸固定板29の切欠き29aと嵌合して、主軸28を所定位相に固定する。また、主軸固定外軸24は、その他端がスライド板6の異形長穴6hと嵌合して、スライド板6を糸通し位置と縫い実施位置に個々に維持する。さらに、主軸固定外軸24は、内径穴部に固定内軸ばね25と、主軸固定内軸26と、固定内軸ピン27とを収めて、主軸固定外軸24のユニットを構成する。
【0041】
上述した構成を有する本実施形態のロックミシンでは、上ルーパ1及び下ルーパ2は、それぞれ上ルーパ糸及び下ルーパ糸を保持して針に保持された針糸(不図示)と共に互いに交差しながら縫目を形成していく。
ルーパ糸通路Cは、主軸固定機構D及び空気流路切換え機構Bをそれぞれ連結している。主軸固定外軸24がミシン本体又はユニット台55を貫通して主軸28に固定した主軸固定板29の切欠き29aと嵌合したとき、ルーパ糸通路Cは、ルーパ選択つまみ45により設定された上ルーパ1又は下ルーパ2にチューブ36を介して送られる圧縮空気により各ルーパ糸を送り込む。空気流路切換え機構Bの末端にある上ルーパ糸排出管54a,下ルーパ糸排出管54bは、ルーパ糸通路C側の入口である上ルーパ導通管12の上端拡張部12b及び下ルーパ導通管13の上端拡張部13bと結合して圧縮空気を流通させている。
主軸固定外軸24と主軸固定板29の切欠き29aとが出会う位相は、ルーパ部Aにおいて上ルーパ受口1aと下ルーパ受口2aとが水平線上に一致して、スライド管4の延長線上に達するタイミングとなるように設定されている。
【0042】
糸通し状態と縫い実施状態との設定は、主軸固定外軸24を主軸固定板29側に押し込んで切欠き29aと嵌合させるか、手前側に引き出して切欠き29aとの嵌合を解除させるかによるものであり、糸通し切換えつまみ64の揺動操作(所定範囲内における回転操作)と不図示のはずみ車(主軸と同期して回転)の操作により設定できる。
【0043】
糸通し状態に設定する場合は、糸通し切換えつまみ64を反時計回りに操作した後、はずみ車を手回しすることにより、設定が可能である。糸通し切換えつまみ64を反時計回りに操作することで、切換え制限腕19及び主軸固定作動腕20は、ミシン右側面から見て時計回りに回動し、主軸固定外軸24を奥側(後方)へ付勢することになる。
はずみ車を回して主軸固定板29の切欠き29aが主軸固定外軸24の位置に一致したとき、主軸固定作動ばね21の付勢により主軸固定外軸24が切欠き29aに突入することで嵌合が成立する。
【0044】
縫い実施状態に設定する場合は、糸通し切換えつまみ64を時計回りに操作する。これにより、切換え制限腕19及び主軸固定作動腕20は、ミシン右側面から見て反時計回りに回動して主軸固定外軸24を手前側へ付勢することになる。このとき、切換え連動腕62によりスライド板6も右方向に引き戻されるので、スライド板6の異形長穴6hは、嵌合していた主軸固定外軸24の小径部24bを横に滑って幅広穴部6eに達し、主軸固定外軸24の外径と一致して、主軸固定外軸24が手前側に押し出される。その結果、主軸固定板29の切欠き29aと主軸固定外軸24との嵌合は解除され、縫い実施状態に切換わる。
【0045】
次に、本実施形態のロックミシンにおける糸通し状態と縫い実施可能状態との切換え動作について詳細に説明する。
図6Aは、縫い実施可能状態における糸通し切換えつまみ64とスライド板6とスライド管4との位置を示す図である。
図6Bは、縫い実施可能状態における切換え制限腕19の状態を示す図である。
図6Cは、縫い実施可能状態における主軸固定作動腕20と主軸固定外軸24と主軸固定内軸26との関係を示す図である。
図6Dは、縫い実施可能状態におけるモータスイッチキャップ30とマイクロスイッチ32との関係を示す図である。
【0046】
縫い実施可能状態では、糸通し切換えつまみ64が時計回りに回動した状態であり、切換え連動腕62の腕62cが切換え制限腕19のピン19bを押し下げることにより、切換え制限腕19及び主軸固定作動腕20は、ミシン右側面から見て反時計回りに回動することになる。
他方で、切換え連動腕62の腕62bは、スライド板6のピン6gを右方向へ押すこととなり、スライド板6は、右方向へ移動させられる。
この結果、スライド板6の幅広穴部6eは、主軸固定外軸24と一致する位置に移動し、主軸固定作動腕20の回動により固定内軸ピン27を介して手前向きに付勢された主軸固定外軸24は、ミシン手前側に押し出される。よって主軸固定外軸24は、主軸固定板29の切欠き29aとの嵌合を解除されて主軸28は、回転可能となる。
【0047】
糸通し切換えつまみ64を固定している切換え連動腕62は、一端の球状突起62eと連動腕受け61の凹部61aが一致することにより、縫い実施可能状態の位置に糸通し切換えつまみ64を安定的に維持している。
【0048】
主軸固定外軸24が手前に出てきているので、主軸固定外軸24にねじ止めされたモータスイッチキャップ30のボス部30bは、ミシンの正面カバー56に設けた識別窓56aからその表面を覗かせる状態になる。これにより、利用者は、ミシンが駆動可能な状態(縫い実施可能状態)であることを認識できる。
主軸固定外軸24に伴いモータスイッチキャップ30も手前に出ているので、マイクロスイッチ32のボタン32aは押されることなくモータ駆動電源がONの状態となり、ミシンは駆動可能である。
【0049】
また、縫い実施可能状態では、スライド板6は、最右端に位置しており、支持板軸ばね10により左方向へ付勢されているが、主軸固定外軸24の大径部とスライド板6の幅広穴部6eが嵌合しているので、スライド板6の左方向への移動が規制されている。また、これに伴い、スライド管4も最右位置に保持される。すなわち、各スライド管4は、上ルーパ受口1a、下ルーパ受口2aとの嵌合位置から離れ、縫い実施状態に保持されている。
【0050】
図7Aは、糸通し切換えつまみ64を反時計回りに回動している状態における糸通し切換えつまみ64とスライド板6とスライド管4との位置を示す図である。
図7Bは、糸通し切換えつまみ64を反時計回りに回動している状態における切換え制限腕19の状態を示す図である。
図7Cは、糸通し切換えつまみ64を反時計回りに回動している状態における主軸固定作動腕20と主軸固定外軸24と主軸固定内軸26との関係を示す図である。
図7Dは、糸通し切換えつまみ64を反時計回りに回動している状態におけるモータスイッチキャップ30とマイクロスイッチ32との関係を示す図である。
【0051】
糸通し切換えつまみ64を反時計回りに回動することにより、切換え制限腕19のピン19bが切換え連動腕62の腕62dにより押し上げられて、切換え制限腕19及び主軸固定作動腕20は、ミシン右側面から見て時計回りに回動する。このとき、主軸固定板29の切欠き29aが主軸固定外軸24と嵌合する位相に達してないので、主軸固定外軸24は主軸固定板29の外周に当たって停止している。ただし、主軸固定作動ばね21の働きにより主軸固定作動腕20及び固定内軸ピン27を介して主軸固定外軸24は、主軸固定板29の軸心方向に常時付勢されている。
【0052】
このとき、モータスイッチキャップ30のスイッチ接触面30aは、マイクロスイッチ32のボタン32aを押した状態、すなわち、モータ駆動電源がOFFの状態である。この状態では、フットコントローラを踏んでモータを駆動しようとしても、モータは動作しない。
【0053】
スライド板6は、支持板軸ばね10により左方向へ付勢されているが、幅広穴部6eが主軸固定外軸24の大径と嵌合しているので、依然として左方向に移動することができない。よって、スライド板6及びスライド管4は、縫い実施可能状態と同様に最右位置に維持される。
【0054】
図8Aは、糸通し状態への切換え完了状態における糸通し切換えつまみ64とスライド板6とスライド管4との位置を示す図である。
図8Bは、糸通し状態への切換え完了状態における切換え制限腕19の状態を示す図である。
図8Cは、糸通し状態への切換え完了状態における主軸固定作動腕20と主軸固定外軸24と主軸固定内軸26との関係を示す図である。
図8Dは、糸通し状態への切換え完了状態におけるモータスイッチキャップ30とマイクロスイッチ32との関係を示す図である。
【0055】
図7Aから
図7Dに示した糸通し切換えつまみ64を反時計回りに回動している状態からはずみ車(図示せず)を手前側に手動で回転させると、主軸28の回転に伴い主軸固定板29が回転して、主軸固定板29の切欠き29aが、主軸固定外軸24が待機する位相に達する。その瞬間に、主軸固定板29の軸心方向に付勢されていた主軸固定外軸24は、切欠き29aに突入して、主軸固定外軸24と切欠き29aとが嵌合する。主軸固定外軸24は、引き続き主軸固定作動ばね21の働きにより主軸固定板29の軸心方向に付勢されているので、両者の嵌合は継続される。
【0056】
このとき、モータスイッチキャップ30のスイッチ接触面30aは、マイクロスイッチ32のボタン32aを押した状態を継続しており、モータ駆動電源がOFFの状態を維持している。
【0057】
主軸固定外軸24が後方に進んだことにより、主軸固定外軸24の小径部24bとスライド板6の長穴部6fが一致するので、スライド板6は、支持板軸ばね10の付勢により左方向に移動する。これに伴い、2本のスライド管4も左方向に移動してスライド管4の左端は、ルーパ天秤案内23の丸穴23a,23bを貫通し、ルーパ天秤3の上ルーパ糸掛け3a,下ルーパ糸掛け3bを貫通し、上ルーパ受口1a,下ルーパ受口2aにそれぞれ達して嵌合する。
【0058】
糸通し切換えつまみ64を固定している切換え連動腕62は、一端の球状突起62eと連動腕受け61の凹部61bが一致することにより、糸通し状態の位置に糸通し切換えつまみ64を安定的に維持している。
【0059】
以上説明したように、本実施形態のロックミシンでは、糸通し状態と縫い実施可能状態との切換えを、糸通し切換えつまみ64の揺動操作に集約することにより、片手による操作が可能であるだけではなく、従来と比較して操作が必要な部材を減らした。よって、本実施形態のロックミシンでは、糸通し状態と縫い実施可能状態との切換を簡単に行うことができる。
また、糸通し状態と縫い実施可能状態を一見して識別できる識別窓56a及びそれと連動するモータ駆動可否の安全装置(モータスイッチキャップ30、マイクロスイッチ32)を付加したので、本実施形態のロックミシンは、安全性が高く、かつ、使い勝手が向上している。
【0060】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
【0061】
(1)本実施形態において、第1の軸としての主軸固定外軸24と、第2の軸としての主軸固定内軸26との関係は、第1の軸側が外側にあり、第2の軸側が内側にある例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、第1の軸側が内側にあり、第2の軸側が外側にあるように構成してもよい。また、一方の軸の内部に他方の軸が挿入される形態に限らず、軸線方向において双方が相対的に移動可能に構成できればよく、レール状の案内部を形成する等、どのような形態であってもよい。
【0062】
(2)本実施形態において、軸ピンとしての固定内軸ピン27が、第2の軸としての主軸固定内軸26に設けられている例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、軸ピンは、揺動レバー部側に設けられていてもよい。その場合、軸ピンが円弧状に移動しても第2の軸を移動させることができる長穴形状等を第2の軸に設けるとよい。
【0063】
(3)本実施形態において、切換え制限腕19のピン19bが切換え連動腕62の腕62c,62dと係合するように構成されている例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、切換え制限腕19側に2つの腕を設け、連動腕62側に1つのピンを設ける等、これらを係合させる形態は、適宜変更可能である。
【0064】
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。