特許第6401045号(P6401045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6401045
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】ワーク加工機
(51)【国際特許分類】
   B23D 47/00 20060101AFI20180920BHJP
   B27B 5/38 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   B23D47/00 Z
   B23D47/00 D
   B27B5/38
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-260696(P2014-260696)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-120544(P2016-120544A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165398
【氏名又は名称】兼房株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】中野 貴雄
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−177601(JP,A)
【文献】 特開平07−156015(JP,A)
【文献】 実開昭59−059215(JP,U)
【文献】 実開昭52−146778(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第1123768(EP,A2)
【文献】 特開昭52−112189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 47/00
B27B 5/38
B28D 1/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(14a)の外周に加工部(14b)を設けた円盤状工具(14)を回転させて、ワーク(22)を加工するワーク加工機において、
前記円盤状工具(14)を軸方向の両側から表カバー(16)と裏カバー(18)とで覆うソーヘッド(20)と、
前記表カバー(16)に移動自在に配設された表アーム(30)および前記裏カバー(18)に移動自在に配設された裏アーム(32)と、
前記表アーム(30)に取付けられて円盤状工具(14)における基板(14a)の一側面に当接する表ガイド(24)および前記裏アーム(32)に取付けられて円盤状工具(14)における基板(14a)の他側面に当接する裏ガイド(26)と、
前記ソーヘッド(20)に設けられて冷風出口を該ソーヘッド(20)の内部に臨ませており、該冷風出口からの低温空気を前記ガイド(24,26)が前記基板(14a)に当接する領域(K)および周方向に対応する位置に吹き付け得るよう設定した冷却手段(34)とを備えている
ことを特徴とするワーク加工機。
【請求項2】
前記基板(14a)の厚みが1.2mm以下の前記円盤状工具(14)の外周に冷却媒体を供給して、該円盤状工具(14)の外周を冷却する外周冷却手段(36)を備えている請求項1記載のワーク加工機。
【請求項3】
前記ガイド(24,26)は、前記基板(14a)との当接面にセラミックスが設けられている請求項1または2記載のワーク加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する円盤状工具によってワークを加工するワーク加工機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属材料や木材等のワークを切削加工するワーク加工機では、基板(台金)の外周に鋸刃(加工部)が設けられた丸鋸に代表される円盤状工具が回転主軸に取付けられ、該回転主軸を回転駆動して円盤状工具を所定速度で回転したもとで、回転主軸とワークとを相対的に移動して円盤状工具でワークを切削加工(切断)するよう構成されている(例えば、特許文献1参照)。また、ワーク加工機では、円盤状工具を挟む軸方向両側に、該円盤状工具から離間して二対のガイドを配置し、該二対のガイドによって切削加工中の円盤状工具が軸方向へ大きく撓むのを抑制して切削精度の低下を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−40019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ワーク加工機では、ワークに対して円盤状工具が通過した後の切削幅を極力小さくすることで歩留まりを向上させると共に、切削屑の排出量を減少させて資源の有効利用を図ることが強く望まれている。また、ワーク加工機を駆動するモータの電力削減や、切削加工時の騒音の低減も希求されており、これらは円盤状工具の厚みを薄くすることで達成し得る。しかしながら、円盤状工具の厚みを薄くすると、相対的に基板の剛性が大幅に低下して該基板が軸方向に撓み(挽き曲り)易くなってしまい、前記ガイドを円盤状工具に対して離間配置している従来のワーク加工機では、ワークの切削加工中に基板が軸方向に撓むのを規制することはできず、切削面の不良を来たしたり、円盤状工具が破損(座屈)し易くなる等の不都合を生ずる。そこで、円盤状工具の薄型化に伴い二対のガイドを円盤状工具に常に当接させることで、該円盤状工具の撓みを規制することが考えられる。しかしながら、円盤状工具にガイドを当接させると、回転中の円盤状工具とガイドとの摺接によって基板が発熱して高温となり、該基板が熱変形したり熱劣化により耐久性の低下を招く問題があり、現在の円盤状工具の厚みを、更に薄くするのは困難なのが現状である。
【0005】
すなわち本発明は、前記従来の技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、熱変形や耐久性の低下を抑制しつつ円盤状工具の薄型化を図り得るワーク加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係るワーク加工機は、
基板の外周に加工部を設けた円盤状工具を回転させて、ワークを加工するワーク加工機において、
前記円盤状工具を軸方向の両側から表カバーと裏カバーとで覆うソーヘッドと、
前記表カバーに移動自在に配設された表アームおよび前記裏カバーに移動自在に配設された裏アームと、
前記表アームに取付けられて円盤状工具における基板の一側面に当接する表ガイドおよび前記裏アームに取付けられて円盤状工具における基板の他側面に当接する裏ガイドと、
前記ソーヘッドに設けられて冷風出口を該ソーヘッドの内部に臨ませており、該冷風出口からの低温空気を前記ガイドが前記基板に当接する領域および周方向に対応する位置に吹き付け得るよう設定した冷却手段とを備えていることを要旨とする。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、二対のガイドで円盤状工具を常に当接状態で挟持するよう構成したので、円盤状工具の切削加工中の撓みを規制することができ、円盤状工具の薄型化を図り、加工精度を向上すると共に、歩留りを向上し得る。また、円盤状工具を冷却するよう構成したので、ガイドを円盤状工具に常に当接させていても基板の温度上昇を抑制することができ、熱変形を防止すると共に耐久性を向上し得る。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記基板の厚みが1.2mm以下の前記円盤状工具の外周に冷却媒体を供給して、該円盤状工具の外周を冷却する外周冷却手段を備えていることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、加工部を冷却することによって、該加工部の耐久性を向上することができる。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記ガイドは、前記基板との当接面にセラミックスが設けられていることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、円盤状工具とガイドとの接触抵抗による発熱を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るワーク加工機によれば、円盤状工具の熱変形や耐久性の低下を抑制しつつ該円盤状工具の薄型化を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係るワーク加工機のソーヘッドを破断して示す概略構成図である。
図2】実施例に係るワーク加工機の円盤状工具とガイドとの関係を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係るワーク加工機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0013】
図1に示す実施例のワーク加工機10は、図示しない駆動モータにより回転駆動される回転主軸12に、円盤状工具14が装着されて一体的に回転するよう構成される。この円盤状工具14は、図2に示す如く、円盤状の基板(台金)14aと、該基板14aの外周に設けられた加工部14bとを備え、基板14aの中心が回転主軸12に装着されている。円盤状工具14が丸鋸の場合、基板14aの外周には超硬合金、ダイヤモンド等の硬質材料からなる複数の刃が加工部14bとして設けられる。また、円盤状工具14が切断砥石の場合、基板14aの外周にはダイヤモンド砥粒、超硬砥粒等が接着された加工部14bが設けられる。なお、円盤状工具14は、丸鋸や切断砥石に限られるものでなく、回転にによって金属材料や木材等のワーク22を切削加工(切断)し得るものであればよい。
【0014】
前記ワーク加工機10は、図1に示す如く、表カバー16と裏カバー18とからなるソーヘッド20を備え、該ソーヘッド20の表カバー16と裏カバー18とで円盤状工具14を軸方向の両側から覆うよう構成される。円盤状工具14は、一部がソーヘッド20から外部に突出しており、該突出部において丸棒等のワーク22を切削加工するよう構成される。なお、円盤状工具14におけるソーヘッド20からの突出部を、以後切削領域(ワーク22を切断するのに必要な領域)と指称する場合がある。すなわち、実施例のワーク加工機10では、円盤状工具14におけるワーク22の切削加工に供される切削領域外の大部分は、収容部としてのソーヘッド20に内部画成された収容室に収容されている。また、ワーク加工機10は、円盤状工具14が装着されている回転主軸12およびソーヘッド20を、図示しない保持手段に保持されているワーク22に対して近接・離間移動し得るよう構成されており、円盤状工具14をワーク22に近接する方向に回転主軸12およびソーヘッド20を移動することで、該円盤状工具14の切削領域においてワーク22が切削加工されるようになっている。実施例では、円盤状工具14の切削領域は、前記ソーヘッド20の下側に突出するよう構成されて、該ソーヘッド20の下側にワーク22の切削加工位置が設定されている。
【0015】
前記ソーヘッド20には、円盤状工具14の基板14aを軸方向の両側から挟持する一対のガイド24,26が設けられる。実施例では、一対のガイド24,26からなるガイド手段28が、周方向に離間して2組設けられている(図2参照)。各ガイド手段28は、図1に示す如く、表カバー16に移動自在に配設された表アーム30に取付けられた表ガイド24と、裏カバー18に移動自在に配設された裏アーム32に取付けられた裏ガイド26とからなり、両ガイド24,26が円盤状工具14における基板14aの対向する側面に当接して、円盤状工具14の軸方向への撓み(挽き曲り)を規制するよう構成される。2組のガイド手段28,28は、円盤状工具14における切削領域の近傍に位置すると共に、ソーヘッド20の内部に配設された図示しない移動機構によって相互に近接・離間移動自在に支持されている。そして、両ガイド手段28,28は、円盤状工具14によるワーク22の切削加工の進行に伴って相互に近接する閉位置から相互に離間する開位置に移動することで、該ガイド手段28,28が切削領域の近傍を常に当接支持し得るよう構成されている。
【0016】
前記各ガイド24,26は、板状の部材であって、一方の板面を円盤状工具14における基板14aの側面に当接する位置に位置決めされている。各ガイド24,26は、基板14aに対して軽接触状態で当接して、円盤状工具14の回転を阻害することなく軸方向への撓みを規制し得るよう構成される。また、各ガイド24,26は、セラミックスを材質として形成されており、該ガイド24,26と基板14aとの接触抵抗を小さく抑えるようになっている。なお、セラミックスとしては、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素等が好適に用いられる。
【0017】
前記ソーヘッド20には、図1に示す如く、円盤状工具14の基板14aに冷却媒体を供給して該基板14aを冷却する冷却手段34が設けられている。実施例では、冷却手段34としてボルテックスチューブが用いられている。このボルテックスチューブの構造について簡単に説明すると、ボルテックスチューブは先端部(一端部)に渦発生部を有し、該渦発生部に流入する常温の圧縮空気によって先端側(一端部側)から基端側(他端部側)へ移動する旋回暖気流を発生させると共に、該旋回暖気流の中心側に基端側から先端側へ移動する旋回冷気流を発生させるよう構成されている。そして、ボルテックスチューブの基端側に設けた温風出口からは、渦発生部に流入させた常温の空気よりも温度上昇した高温空気が吹き出される一方で、ボルテックスチューブの先端側に設けた冷風出口からは、渦発生部に流入させた常温の空気よりも温度低下した低温空気が吹き出されるようになっている。実施例では、ボルテックスチューブの冷風出口がソーヘッド20の内部に臨むように構成されて、該冷風出口からソーヘッド20内の円盤状工具14における基板14aに冷却媒体としての低温空気を吹き付けることによって、該円盤状工具14を冷却するよう構成されている。また、基板14aに対する低温空気の吹き付け部位は、具体的には前記ガイド24,26による基板14aの当接領域K(図2において一点鎖線で示した2重円の間の領域)と周方向に対応する位置に設定されて、基板14aにおけるガイド24,26との当接領域を積極的に冷却し得るよう構成されている。
【0018】
前記ソーヘッド20には、図1,図2に示す如く、円盤状工具14の外周(加工部14b)に冷却媒体を供給して該円盤状工具14の外周を冷却する外周冷却手段36が設けられている。実施例では、外周冷却手段36として、前記冷却手段34と同じボルテックスチューブが用いられている。
【0019】
ここで、前記ボルテックスチューブでは、温風出口からの高温空気の排出量を圧力弁等の排出量調節手段で調節したり、または渦発生部に流入する圧縮空気の圧力を調節することで、冷風出口から吹き出される低温空気の温度を任意に設定することができる。すなわち、円盤状工具14の基板14aおよび加工部14bに、該円盤状工具14を切削加工に適した温度に維持するために適切な温度とした低温空気を吹き付けることで切削加工を円滑に行い得るようになっている。なお、円盤状工具14の基板14aおよび加工部14bに吹き付けられる低温空気の温度は、切削加工中における基板14aの温度を、常温以下の均一な温度にするのが好適である。円盤状工具14における外周と内周の温度差が高いと熱座屈が発生するため、基板14aの厚みが0.8mmの場合は、外周と内周の温度差が5℃以内が好ましい。例えば、常温が25℃で金属製のワーク22を切削加工する場合は、外周と内周の温度が20℃〜25℃の範囲が好適であり、木製のワーク22を切削加工する場合も、外周と内周の温度が20℃〜25℃の範囲が好適である。
【0020】
〔実施例の作用〕
次に、前述のように構成された実施例のワーク加工機10の作用について説明する。
【0021】
前記ワーク22の切削加工に際して回転する円盤状工具14は、前記切削領域の近傍において、基板14aが周方向に離間する2組のガイド手段28,28の夫々の一対のガイド24,26で軸方向の両側から挟持されているので、該円盤状工具14の軸方向への撓みは規制される。すなわち、円盤状工具14の厚みを薄くしても該円盤状工具14が軸方向に撓まないので、ワーク22の切削面の不良発生を防止し得ると共に、円盤状工具14の破損(座屈)を防止し得る。また、円盤状工具14は、前記冷却手段34,36から吹き付けられる低温空気により冷却されるので、前記ガイド24,26が基板14aに当接していても、基板14aが発熱するのは抑えられる。なお、円盤状工具14の加工部14bには、前記外周冷却手段36から低温空気が直接吹き付けられるので、ワーク22の切削加工による加工部14bの発熱を抑えて該加工部14bの耐久性の低下を抑制し得る。従って、回転中の円盤状工具14が熱変形したり熱劣化により耐久性が低下するのを防止することができる。また、ガイド24,26を、スチールや超硬合金に比べてすべり性が高いセラミックスとしたので、基板14aとガイド24,26との摩擦による発熱を小さくすることができる。更に、実施例のワーク加工機10では、円盤状工具14を覆っているソーヘッド20の内部に低温空気(冷却媒体)を吹き込んでいるので、該ソーヘッド20の内部全体が温度低下して円盤状工具14の広い領域を冷却することができ、発熱抑制効果は高い。また、実施例のワーク加工機10では、ソーヘッド20の下側に切削加工位置を設定しているので、ソーヘッド20の内部に吹き込まれた低温空気が切削加工位置まで行き渡り易く、切削領域の温度上昇を好適に抑えることができる。
【0022】
すなわち、実施例のワーク加工機10では、切削加工中の円盤状工具14(基板14a)を、切削領域の近傍において2組のガイド手段28,28の夫々の一対のガイド24,26で常に当接するように挟持すると共に、該円盤状工具14を低温空気(冷却媒体)で冷却するよう構成したので、円盤状工具14の熱変形や耐久性の低下を抑制しつつ、該円盤状工具14の厚みを薄くすることができる。これによって、ワーク22の歩留まりの向上、切削屑の排出量の減少、電力削減および騒音の低減という、円盤状工具14の薄型化による効果が得られる。すなわち、円盤状工具14における基板14aの厚みは、従来では1.25mmが限界であったものが、1.2mm以下としても円盤状工具14が熱変形等することなくワーク22を安定して切削加工し得ることができるようになる。なお、実施例のワーク加工機10によれば、円盤状工具14における基板14aの厚みを0.8mmとしても、該円盤状工具14が熱変形等することなくワーク22を安定して切削加工し得ることが後述する実験によって検証された。
【0023】
実施例のワーク加工機10は、冷却手段34,36として、機械的駆動部のないボルテックスチューブを用いているので、ランニングコストを低廉に抑えることができる。また、冷却媒体として低温空気を用いているので、円盤状工具14やソーヘッド20の内部を汚すこともなく、メンテナンス性に優れている。
【0024】
また、実施例のワーク加工機10では、各ガイド手段28における一対のガイド24,26で円盤状工具14の基板14aを挟持しているので、図示しない振動手段でガイド24,26に振動を与えることで、円盤状工具14を意図的に振動させてワーク22を切削加工することができる。すなわち、ワーク22の材質に応じて円盤状工具14を振動させたり振動させないことを選択して切削加工を行うことができる。
【0025】
〔実験例〕
次に、円盤状工具の基板を冷却することによる効果を検証した。
外径285mm、刃厚(加工部の厚み)1.0mm、基板厚み0.8mmの円盤状工具としての丸鋸における切削領域の近傍を、超硬合金製の一対のガイドからなる2組のガイド手段で挟持した状態で一般炭素鋼(S10C)を材質とする直径70mmの円柱状ワークを切断する際に、丸鋸を冷却する場合と冷却しない場合の該丸鋸の温度変化および状態を調べた。また、丸鋸の冷却は、ボルテックスチューブから吹き出される−10℃(外気温度差−40℃)の低温空気を丸鋸の基板に吹き付けて行い、丸鋸の切削加工時の回転数を187rpmとした。なお、ワークを切削加工する前の丸鋸の外周温度は29℃であった。
【0026】
丸鋸に低温空気を吹き付けた状態での切削加工では、ワークを10回連続して切断した後の丸鋸の外周温度は28℃であった。そして、丸鋸の発熱による熱座屈や熱変形が原因とみられる挽き曲りが発生することなく、各ワークの切断面(切削面)の状態が良好で全てのワークを安定して切断できた。これに対し、丸鋸を冷却しない切削加工では、ワークを3回連続して切断した後の丸鋸の外周温度は35℃であった。そして、発熱による熱座屈や熱変形が原因とみられる挽き曲りが発生して、その後のワークの切断が困難となった。
【0027】
すなわち、切削加工中の円盤状工具を、二対のガイドで常に当接するように挟持すると共に、該円盤状工具を冷却媒体で冷却することで、厚みの薄い円盤状工具が熱変形等することなくワークを安定して切削加工し得る結果が得られた。
【0028】
〔変更例〕
本発明は、前述した実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
(1) 実施例では、円盤状工具を冷却する冷却媒体として空気を挙げたが、ミストや液体窒素等の液体であってもよく、冷却手段としては、これらの冷却媒体を円盤状工具の基板に供給し得るものであればよい。
(2) また、アルゴン、ヘリウム、酸素、水素、窒素、メタン、フロン、空気、水蒸気、あるいはこれらの混合物からなるプラズマ用ガスから生成されたプラズマを冷却媒体として用いることができる。プラズマを冷却媒体として用いる場合、プラズマを生成するガスの種類、ガスの流量、プラズマを生成する際に印加するエネルギーの量、プラズマを生成する方法、プラズマ発生室の雰囲気、プラズマ用ガスの温度等、各種の条件を変えることによって生成されるプラズマの温度を調節することができるので、円盤状工具の冷却に適した温度のプラズマを基板に供給することで安定した切削加工を図り得る。
(3) 実施例では、ボルテックスチューブにより低温空気を生成して円盤状工具の基板に供給するよう構成したが、半導体素子に電流を流すことで得られるペルチェ効果を利用した冷却装置や蒸気圧圧縮式の冷凍サイクルを行う冷媒回路を備えた冷却装置で生成した低温空気を基板に供給する手段を冷却手段として採用し得る。また、冷却液体としての液体窒素を基板に吹き付け等によって直接供給したり、液体窒素を用いた冷却器を通して熱交換した空気を基板に供給する等、冷却手段としては公知の各種手段を用いることができる。
(4) 実施例では、円盤状工具の基板におけるソーヘッド(収容部)に収容されている部位に冷却媒体を吹き付ける(供給する)よう構成したが、基板とガイドとの当接部に冷却媒体を直接吹き付ける構成を採用し得る。
(5) 実施例では、円盤状工具の基板(ガイドとの当接領域)と外周との夫々に冷却媒体を吹き付けるよう構成したが、円盤状工具の外周に冷却媒体を供給する外周冷却手段は必要に応じて設ければよい。
(6) ガイド自体をセラミックスとするのに代えて、ガイドの円盤状工具との当接面にセラミックスをコーティングする構成を採用し得る。
(7) ワーク加工機は、金属に限らず、木材、木質材質、樹脂または非鉄金属の切削加工に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0029】
14 円盤状工具
14a 基板
14b 加工部
16 表カバー
18 裏カバー
20 ソーヘッド
22 ワーク
24 表ガイド(ガイド)
26 裏ガイド(ガイド)
28 ガイド手段
30 表アーム
32 裏アーム
34 冷却手段
36 外周冷却手段
K 当接領域(領域)
図1
図2