特許第6401076号(P6401076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6401076
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】ハウジング構造および操舵装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/031 20120101AFI20180920BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20180920BHJP
   F16H 7/02 20060101ALI20180920BHJP
   F16H 57/035 20120101ALI20180920BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20180920BHJP
   F16H 57/029 20120101ALI20180920BHJP
【FI】
   F16H57/031
   B62D5/04
   F16H7/02 Z
   F16H57/035
   F16J15/10 T
   F16H57/029
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-32414(P2015-32414)
(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-156383(P2016-156383A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 太之
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−329913(JP,A)
【文献】 特開2007−006570(JP,A)
【文献】 特開平08−163846(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0090198(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/031
B62D 5/04
F16H 7/02
F16H 57/029
F16H 57/035
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材と、前記軸部材と同軸に設けられた第1回転伝達部材と、前記第1回転伝達部材に動力伝達可能に配置された第2回転伝達部材とを収容し、前記軸部材の軸心と非平行な合わせ面同士で組み合わされる第1ハウジングと第2ハウジングとを備え、
前記第1ハウジングは、該第1ハウジングの合わせ面よりも突出する第1ガイド部を有し、
前記第2ハウジングは、前記第1ガイド部に係合する第2ガイド部を有し、
前記第1ガイド部と前記第2ガイド部とは、前記軸心の円周方向に沿って係合し、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの前記軸心回りの相対回転をガイドし、
前記第1ガイド部は、前記軸心を中心に円弧状に突設されたガイドリブであり、
前記第2ガイド部は、前記軸心を中心に円弧状に形成され、前記ガイドリブの周面と摺接するガイド壁であることを特徴とするハウジング構造。
【請求項2】
軸部材と、前記軸部材と同軸に設けられた第1回転伝達部材と、前記第1回転伝達部材に動力伝達可能に配置された第2回転伝達部材とを収容し、前記軸部材の軸心と非平行な合わせ面同士で組み合わされる第1ハウジングと第2ハウジングとを備え、
前記第1ハウジングは、該第1ハウジングの合わせ面よりも突出する第1ガイド部を有し、
前記第2ハウジングは、前記第1ガイド部に係合する第2ガイド部を有し、
前記第1ガイド部と前記第2ガイド部とは、前記軸心の円周方向に沿って係合し、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの前記軸心回りの相対回転をガイドし、
前記第1回転伝達部材は、第1プーリであり、
前記第2回転伝達部材は、前記第1プーリとの間でベルトが掛け回される第2プーリであり、
前記軸心方向視して、前記第1ガイド部および前記第2ガイド部が前記ベルトの内側に配置されていることを特徴とするハウジング構造。
【請求項3】
前記第1ガイド部は、前記軸心回りの円周方向に間隔を空けて配置される複数のガイドピンであり、
前記第2ガイド部は、前記軸心を中心に円弧状に形成され、前記ガイドピンの周面と摺接するガイド壁であることを特徴とする請求項2に記載のハウジング構造。
【請求項4】
前記第1ガイド部は、前記軸心を通る直交線を挟んだ両側に配置されるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のハウジング構造。
【請求項5】
前記軸心方向視して、前記軸部材と前記第1回転伝達部材と前記第2回転伝達部材とを囲う合わせ面同士の間にシール部材が介設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のハウジング構造。
【請求項6】
前記軸部材は軸方向に移動して車輪を転舵させる転舵軸であり、前記第2回転伝達部材はモータに接続される駆動プーリであり、前記第1回転伝達部材は従動プーリであり、
前記第1ハウジングは車体に取り付けられる第1脚部を備え、
前記第2ハウジングは車体に取り付けられる第2脚部を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のハウジング構造を有する操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング構造および操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーステアリング装置の補助トルク機構として、モータの発生トルクをベルト伝達機構およびボールねじを介してラック軸に伝達するものがある(例えば特許文献1参照)。
ラック軸とベルト伝達機構とボールねじとは、ラック軸の延設方向つまり左右に分割されたハウジングの内部に収容されている。
【0003】
ラック軸は、左右に分割された各ハウジングにそれぞれ支持されるようになっている。したがって、ハウジング同士は、ラック軸が両ハウジングに対して正確に芯出しされるように精度良く組み合わされる必要がある。ハウジングを精度良く組み合わせる従来構造として、図9(a),(b)に示すものが挙げられる。図9(a)に示す構造は、一方のハウジング81の開口縁に形成した内嵌合部83に、他方のハウジング82の開口縁に形成した外嵌合部84を外嵌させる構造である。内嵌合部83と外嵌合部84との間には、ハウジング内への防水としてシール部材85が介設されている。
【0004】
図9(b)に示す構造は、ハウジング81の合わせ面87とハウジング82の合わせ面88との間に複数の位置決めピン86を介在させる構造である。合わせ面87と合わせ面88との間にはシール部材85が介設される。この構造によれば、図9(a)のように内嵌合部82と外嵌合部84との嵌合構造を要せず、合わせ面87と合わせ面88との突き合わせでハウジング81とハウジング82とを精度良く組み合わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−42268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図9(a)の構造では次のような問題がある。左右方向から見たハウジングの形状は、内部に収納されたベルト伝達機構の配置に合わせて略楕円形状を呈している。したがって、各ハウジング81,82の開口縁の全周にわたって形成される内嵌合部82,外嵌合部84も略楕円の環状に形成されることとなり、内嵌合部82および外嵌合部84の各嵌合面における研磨加工等の精度出しに手間がかかるという問題がある。
【0007】
また、図9(b)の構造では、ピン86をハウジング81またはハウジング82に取り付ける作業を要するため手間がかかりやすいという問題がある。さらに、ハウジング81のピン穴とハウジング82のピン穴との精密な位置出しが要求される。
【0008】
また、従来、次のような問題もある。一般に、ハウジング81,82にはそれぞれ、車体側の脚座に対し、ボルトで締結固定するための脚部が形成されている。図10は、ハウジング81に第1脚部91が形成され、ハウジング82に第2脚部92が形成された例を示している。ここで、車体側の2つの脚座(図示せず)の間に、製造誤差や組み立て誤差等に起因して位置ずれが生じることが考えられる。この場合、例えば第1脚部91を一方の脚座に取り付けたとき、第2脚部92と他方の脚座との位置が合わず、第2脚部92を他方の脚座に取り付けることが困難になるおそれがある。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、分割されたハウジング同士の係合箇所の加工が容易であり、組み付けの際にハウジング同士を軸部材の軸心回りに相対回転可能なハウジング構造およびこれを有する操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、軸部材と、前記軸部材と同軸に設けられた第1回転伝達部材と、前記第1回転伝達部材に動力伝達可能に配置された第2回転伝達部材とを収容し、前記軸部材の軸心と非平行な合わせ面同士で組み合わされる第1ハウジングと第2ハウジングとを備え、前記第1ハウジングは、該第1ハウジングの合わせ面よりも突出する第1ガイド部を有し、前記第2ハウジングは、前記第1ガイド部に係合する第2ガイド部を有し、前記第1ガイド部と前記第2ガイド部とは、前記軸心の円周方向に沿って係合し、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの前記軸心回りの相対回転をガイドし、前記第1ガイド部は、前記軸心を中心に円弧状に突設されたガイドリブであり、
前記第2ガイド部は、前記軸心を中心に円弧状に形成され、前記ガイドリブの周面と摺接するガイド壁であることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1ガイド部と第2ガイド部とが軸心の円周方向に沿って係合する構成のため、楕円の研磨加工を要せず、係合箇所の加工が容易となる。
第1ハウジングと第2ハウジングとにそれぞれ、外部の脚座に取り付けられる脚部が形成されている場合、第1ハウジングと第2ハウジングとを軸心を中心に相対回転させることで、脚部の位置を脚座の位置に合わせることができる。
第1ハウジングと第2ハウジングとは、軸心を回転中心に回転するので、軸部材が第1ハウジングと第2ハウジングの両方に支持されている場合、第1ハウジング側の軸部材の支持部と第2ハウジング側の軸部材の支持部との間に軸ずれは生じ難い。
【0012】
本発明は、前記軸部材は軸方向に移動して車輪を転舵させる転舵軸であり、前記第2回転伝達部材はモータに接続される駆動プーリであり、前記第1回転伝達部材は従動プーリであり、前記第1ハウジングは車体に取り付けられる第1脚部を備え、前記第2ハウジングは車体に取り付けられる第2脚部を備えている操舵装置に適用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分割されたハウジング同士の係合箇所の加工が容易であり、組み付けの際にハウジング同士を軸部材の軸心回りに相対回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】操舵装置の一例を示す概略構成図である。
図2】第1実施形態のハウジング構造の断面図である。
図3】ラック軸の軸心方向から見た第1ハウジングの側面図である。
図4】ラック軸の軸心方向から見た第2ハウジングの側面図である。
図5】第1ハウジングおよび第2ハウジングの外観斜視図である。
図6】ラック軸の軸心方向から見た第1ガイド部と第2ガイド部の作用説明図である。
図7】第2実施形態において、ラック軸の軸心方向から見た第1ガイド部と第2ガイド部の作用説明図である。
図8】第3実施形態において、ラック軸の軸心方向から見た第1ガイド部と第2ガイド部の作用説明図である。
図9】(a),(b)はそれぞれハウジング構造の第1従来例、第2従来例の断面図である。
図10】脚部が形成されたハウジングの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1において、操舵装置50は、左右方向に延びるラック軸59を有するステアリング機構50Aと、ラック軸59の一端側に配置された補助トルク機構50Bと、を備えるラックアシスト型の装置である。
【0016】
ステアリング機構50Aは、運転者が操作するステアリングホイール51と、ステアリングホイール51と一体で回転するステアリング軸52と、ステアリング軸52と自在継手53を介して連結される上部連結軸54と、上部連結軸54と自在継手55を介して連結される下部連結軸56と、下部連結軸56とトーションバー57を介して連結され、下部にピニオンが形成されたピニオン軸58と、ピニオンに噛合するラック歯が形成され、両端にタイロッド60を介して左右の前輪61が連結されるラック軸59と、を備えている。運転手がステアリングホイール51を回転させると、ラック軸59が左方又は右方へ移動し、前輪61が操舵される。
【0017】
補助トルク機構50Bは、モータ11と、ベルト伝達機構12と、ボールねじ13とを備えている。補助トルク機構50Bは、ステアリングホイール51に加えられたトルクが図示しないトルクセンサで検出され、その検出したトルクに応じて図示しない制御装置によりモータ11が駆動制御される。これにより、モータ11の発生トルクは、ベルト伝達機構12およびボールねじ13を介して、ラック軸59に、ステアリングホイール51に加えられた運転者の操作力に対する補助力として伝達される。
【0018】
以下、ベルト伝達機構12とボールねじ13とラック軸59とを収容するハウジングに本発明を適用した実施形態について説明する。
【0019】
「第1実施形態」
図2において、ハウジング1は、ラック軸(転舵軸、軸部材)59と、ラック軸59と同軸に設けられた第1プーリとしての従動プーリ16(第1回転伝達部材)と、従動プーリ16に動力伝達可能に配置された第2プーリとしての駆動プーリ14(第2回転伝達部材)と、ベルト15と、ボールねじ13とを収容する筺体部材である。ハウジング1は、ラック軸59の軸心Oと非平行な合わせ面4,5同士で組み合わされる第1ハウジング2と第2ハウジング3とを備えている。本実施形態では、第1ハウジング2の合わせ面4および第2ハウジング3の合わせ面5は軸心Oと直交する平面として形成されている。
【0020】
「ベルト伝達機構12」
ベルト伝達機構12は、駆動プーリ14と、ベルト15と,従動プーリ16とを備えて構成されている。従動プーリ16は駆動プーリ14よりも大径のプーリである。第1ハウジング2の上部の右外面には、プーリホルダ21を介して前記したモータ11が取り付けられている。プーリホルダ21は図示しないボルトにより第1ハウジング2に固定されている。駆動プーリ14はモータ11の出力軸11Aに軸着されて一対の軸受22,23を介してプーリホルダ21に支持されている。従動プーリ16はボールねじ13のナット19に軸着されている。駆動プーリ14と従動プーリ16との間にはベルト15が掛け回されている。
【0021】
「ボールねじ13」
ボールねじ13は、ラック軸59と同軸に一体に取り付けられたねじ軸17と、ボール18と、ナット19とを備えて構成されている。ナット19は、軸受24を介して第2ハウジング3に支持されている。軸受24の外輪は、左右方向から環状のスペーサ25,26に挟持され、さらに、スペーサ25の右側に固定リング27が当接している。これにより、第2ハウジング3に対する軸受24の左右方向の位置決めがなされる。軸受24の内輪はナット19に外嵌されている。軸受24の内輪の左側には、ナット19の左端部に螺合した固定ナット28が当接している。これにより、軸受24に対するナット19の左右方向の位置決めがなされる。
【0022】
以上により、モータ11が駆動すると、ベルト伝達機構12を介して従動プーリ16が回転し、従動プーリ16が軸着されたナット19が回転することでボールねじ13の送りねじ作用によりねじ軸17(ラック軸59)が軸O方向に移動する。
【0023】
「第1ハウジング2」
図2図3図5を参照して説明すると、第1ハウジング2は、駆動プーリ14とベルト15と従動プーリ16とボールねじ13とを収容する動力伝達機構収容部29と、動力伝達機構収容部29から右方に延設され、ラック軸59が挿通する筒状の軸部材収容部30と、を備えている。ラック軸59は、図示しない軸受部材により軸部材収容部30に支持されている。動力伝達機構収容部29は軸心O方向に沿って形成されている。動力伝達機構収容部29の右端には端壁31が形成され、左端には開口部32が形成されている。開口部32周りの動力伝達機構収容部29の左端面は合わせ面4を構成する。端壁31には、軸部材収容部30に連通する開口部31Aと、プーリホルダ21を通すための開口部31Bとが形成されている。
【0024】
動力伝達機構収容部29は、図3に示すように、軸心O方向視して非円形を呈している。具体的には、動力伝達機構収容部29は、軸心O周りに略半円形状に形成され従動プーリ16およびボールねじ13を収容する大径部33と、大径部33の上部後方側に略半円形状に形成され駆動プーリ14を収容する小径部34と、大径部33と小径部34とにかけて形成される直線形状の一対の中間部35と、を備えた形状からなる。小径部34は大径部33よりも小径に形成されているため、中間部35同士の対向間隔は大径部33側から小径部34側に向かうにしたがい狭くなっている。したがって、合わせ面4は、上部後方に向かうにしたがい幅狭となる一対の直線部を有する略楕円形状(オーバル形状)の平面として形成されている。
【0025】
動力伝達機構収容部29の外面には、雌ねじ孔36が形成されたボルト取付座37が複数形成されている。また、上方に位置する中間部35の外面には、車体の脚座(図示せず)にあてがわれてボルト(図示せず)により第1ハウジング2を車体に締結固定するための第1脚部38が形成されている。
【0026】
「第2ハウジング3」
図2図4図5を参照して説明すると、第2ハウジング3の形状は概ね第1ハウジング2と対称形をなしている。すなわち、第2ハウジング3は、駆動プーリ14とベルト15と従動プーリ16とボールねじ13とを収容する動力伝達機構収容部39と、動力伝達機構収容部39から左方に延設され、ラック軸59が挿通する筒状の軸部材収容部40と、を備えている。動力伝達機構収容部39は軸心O方向に沿って形成されている。動力伝達機構収容部39の左端には端壁41が形成され、右端には開口部42が形成されている。開口部42周りの動力伝達機構収容部39の右端面は合わせ面5を構成する。端壁41には、軸部材収容部40に連通する開口部41Aが形成されている。また、端壁41にはキャップ41Bが取り付けられている。
【0027】
動力伝達機構収容部39は、軸心O周りに略半円形状に形成され従動プーリ16およびボールねじ13を収容する大径部43と、大径部43の上部後方側に略半円形状に形成され駆動プーリ14を収容する小径部44と、大径部43と小径部44とにかけて形成される直線形状の一対の中間部45と、を備えた形状からなる。小径部44は大径部43よりも小径に形成されているため、中間部45同士の対向間隔は大径部43側から小径部44側に向かうにしたがい狭くなっている。したがって、合わせ面5は、上部後方に向かうにしたがい幅狭となる一対の直線部を有する略楕円形状(オーバル形状)の平面として形成されている。
【0028】
合わせ面5には、全周にわたって矩形状のシール溝49が形成されている。このシール溝49にはOリング等のシール部材20が嵌合されている。シール部材20は、合わせ面4に密着することによりハウジング1の防水、防塵機能等を担う。
【0029】
動力伝達機構収容部39の外面には、第1ハウジング2のボルト取付座37の位置に合わせて、貫通孔46が形成されたボルト取付座47が複数形成されている。貫通孔46は、第1ハウジング2と第2ハウジング3との相対回転を許容する程度に大きめに形成されている。第1ハウジング2と第2ハウジング3とは、図5に示すように、ボルト71が貫通孔46を貫通して雌ねじ孔36に螺合することで、互いに締結固定される。軸部材収容部40には、車体の脚座(図示せず)にあてがわれてボルト(図示せず)により第2ハウジング3を車体に締結固定するための第2脚部48が形成されている。
【0030】
「第1ガイド部6、第2ガイド部7」
図2図6を参照して、第1ハウジング2は、第1ハウジング2の合わせ面4よりも第2ハウジング3側に突出する第1ガイド部6を有している。第2ハウジング3は、第1ガイド部6に係合する第2ガイド部7を有している。第1ガイド部6と第2ガイド部7とは、軸心Oの円周方向に沿って係合し、第1ハウジング2と第2ハウジング3との軸心O回りの相対回転をガイドする。「軸心Oの円周方向に沿って係合し」とは、第1ガイド部6と第2ガイド部7との係合箇所(摺接箇所)が、軸心Oを中心とする円周上に連続的に存在するか、あるいは間隔を空けて存在することを意味する。
【0031】
本実施形態では、第1ガイド部6は、軸心Oを中心に円弧状に突設された板状のガイドリブ8である。第2ガイド部7は、軸心Oを中心に円弧状に形成され、ガイドリブ8の周面(外周面8A)と摺接するガイド壁9である。
【0032】
ガイドリブ8は、第1ガイドリブ8Aと、第2ガイドリブ8Bとで構成されている。ガイドリブ8Aは、大径部33における合わせ面4に突設されている。第1ガイドリブ8Aは大径部33の円周方向の略全長にわたって形成されており、軸心Oを中心とする形成範囲の角度θ(図3)は180度よりも大きい。つまり、第1ガイドリブ8Aは、軸心Oを通る任意の直交線73(図6)を挟んだ両側(一方側の180度の範囲と他方側の180度の範囲)に必ず配置されるように形成されている。第2ガイドリブ8Bは、駆動プーリ14と従動プーリ16とに掛け回されたベルト15の内側に位置するように、端壁31に突設されている。第1ガイドリブ8Aの外周面と第2ガイドリブ8Bの外周面とは、軸心Oを中心とする同一の円周線72上に位置している。第1ガイドリブ8Aの外周面は後記する第1ガイド壁9Aの内周面と係合して摺接し、第2ガイドリブ8Bの外周面は後記する第2ガイド壁9Bの内周面と係合して摺接する。
【0033】
ガイド壁9は、第1ガイド壁9Aと、第2ガイド壁9Bとで構成されている。第1ガイド壁9Aは、大径部43の内周壁である。第2ガイド壁9Bは、駆動プーリ14と従動プーリ16とに掛け回されたベルト15の内側に位置するように、端壁41に突設されている。第1ガイド壁9Aの内周面と第2ガイド壁9Bの内周面とは、軸心Oを中心とする同一の円周線72上に位置している。
【0034】
「作用」
ハウジング1の組み合わせ時には、第1ハウジング2の合わせ面4と第2ハウジング3の合わせ面5とが突き合わされて、第1ハウジング2と第2ハウジング3とがボルト71により締結固定される。このとき、例えば仮締めしておく。勿論、本締めして後の脚部と脚座との調整時に緩めるようにしてもよい。組み合わされた第1ハウジング2と第2ハウジング3とは、図6に示すように、第1ガイドリブ8Aの外周面が第1ガイド壁9Aの内周面と係合し、第2ガイドリブ8Bの外周面が第2ガイド壁9Bの内周面と係合した状態となる。
【0035】
ハウジング1の車体への取り付け時、作業者は第1ハウジング2の第1脚部38と第2ハウジング3の第2脚部48とをそれぞれ車体側の脚座にあてがって、ボルトにより車体に固定する。そして、例えば2つの脚座の間に製造誤差や組み立て誤差等に起因して位置ずれ(軸心Oを中心とする位相ずれ)が存在し、第1脚部38および第2脚部48の内の一方が脚座の位置と合わない場合、作業者は第1ハウジング2と第2ハウジング3とを相対回転させる。第1ハウジング2と第2ハウジング3とは、第1ガイドリブ8Aの外周面が第1ガイド壁9Aの内周面と摺接し、第2ガイドリブ8Bの外周面が第2ガイド壁9Bの内周面と摺接することで、軸心Oを回転中心として相対回転する。これにより、第1脚部38と第2脚部48の双方を脚座の位置に合わせることができる。第1ハウジング2と第2ハウジング3とは、軸心Oを回転中心に回転するため、第1ハウジング2側のラック軸59の支持部(図示しない軸受部材)と第2ハウジング3側のラック軸59の支持部(軸受24)との間に軸ずれが生じ難い。
【0036】
その後、作業者はボルト71を本締めして第1ハウジング2と第2ハウジング3とを締結固定する。ハウジング1の内部は、合わせ面4と合わせ面5との間に介設されたシール部材20により密閉される。
【0037】
以上のように、第1ガイド部6と第2ガイド部7とが、軸心Oの円周方向に沿って係合し、第1ハウジング2と第2ハウジング3との軸心O回りの相対回転をガイドする構成とすれば、次のような効果が奏される。従来の図9(a)の構造では、内嵌合部82,外嵌合部84を略楕円の環状に形成するため、内嵌合部82および外嵌合部84の各嵌合面における研磨加工等の精度出しに手間がかかるという問題があった。
これに対し、本発明は、第1ガイド部6と第2ガイド部7とが軸心Oの円周方向に沿って係合する構成のため、楕円の研磨加工を要せず、係合箇所の加工が容易となる。
【0038】
また、本実施形態のように、第1ハウジング2と第2ハウジング3とにそれぞれ、外部の脚座に取り付けられる脚部(第1脚部38、第2脚部48)が形成されている場合、第1ハウジング2と第2ハウジング3とを軸心Oを中心に相対回転させることで、脚部の位置を脚座の位置に合わせることができる。
第1ハウジング2と第2ハウジング3とは、軸心Oを回転中心に回転するので、軸部材(ラック軸59)が第1ハウジング2と第2ハウジング3の両方に支持されている場合、第1ハウジング2側のラック軸59の支持部と第2ハウジング3側のラック軸59の支持部との間に軸ずれが生じ難い。
【0039】
また、本発明は、第1回転伝達部材が第1プーリ(従動プーリ16)であり、第2回転伝達部材が第1プーリとの間でベルト15が掛け回される第2プーリ(駆動プーリ)である場合に容易に実施可能である。この場合、軸心O方向視して、第1ガイド部6および第2ガイド部7をベルト15の内側に配置できるので、第1ガイド部6および第2ガイド部7のレイアウト設計の自由度が広がる。
【0040】
さらに、第1ガイド部6を、軸心Oを中心に円弧状に突設されたガイドリブ8とし、第2ガイド部7を、軸心Oを中心に円弧状に形成され、ガイドリブ8の周面と摺接するガイド壁9とすれば、第1ガイド部6および第2ガイド部7を簡単な構造にできる。
【0041】
本実施形態のように、第1ガイド部6を、軸心Oを通る任意の直交線73を挟んだ両側に配置されるように形成すれば、軸心Oの径方向における第1ガイド部6と第2ガイド部7との位置ずれは生じない。したがって、第1ハウジング2と第2ハウジング3との組み合わせ作業が一層容易となる。
【0042】
「第2実施形態」
図7を参照して、第2実施形態を説明する。第2実施形態は、第1ガイド部6を、軸心O回りの円周方向に間隔を空けて配置される複数のガイドピン10とし、第2ガイド部7を、軸心Oを中心に円弧状に形成され、ガイドピン10の周面と摺接するガイド壁9とした形態である。ガイドピン10は端壁31(図3)に突設されている。ガイドピン10は第1ハウジング2と一体成形であってもよいし、別部材であってもよい。
【0043】
図7では、ガイドピン10を円周方向に5つ配置した例を示している。4つのガイドピン10は第1ガイド壁9A(図4も参照)と摺接し、残り1つのガイドピン10は第2ガイド壁9Bと摺接する。各ガイドピン10とガイド壁9との係合箇所(摺接箇所)は、円周線72上に位置している。5つのガイドピン10は、軸心Oを通る任意の直交線73を挟んだ両側に配置される関係である。したがって、軸心Oの径方向における第1ガイド部6と第2ガイド部7との位置ずれは生じない。
【0044】
この第2実施形態によっても、第1ハウジング2と第2ハウジング3とは、ガイドピン10が第1ガイド壁9Aの内周面または第2ガイド壁9Bの内周面と摺接することで、軸心Oを回転中心として相対回転する。これにより、第1実施形態と同様、第1脚部38と第2脚部48の双方を車体の脚座の位置に合わせることができる。
【0045】
「第3実施形態」
図8を参照して、第3実施形態を説明する。第3実施形態は、第1ガイド部6を、第2ガイド部7との間で軸心Oの径方向に挟む第3ガイド部74を設けた形態である。図8では、第1ガイド部6を、第1実施形態と同様の第1ガイドリブ8Aとし、第3ガイド部74を、その外周面が第1ガイドリブ8Aの内周面と摺接する円弧状のガイドリブとした場合を示している。第3ガイド部74は、端壁41(図4)に突設されている。
【0046】
この第3実施形態によれば、第1ガイド部6が、第2ガイド部7と第3ガイド部74とによって軸心Oの径方向に挟まれる。そのため、第1ガイド部6を、軸心Oを通る任意の直交線73を挟んだ一方側のみに配置しても、軸心Oの径方向における第1ガイド部6と第2ガイド部7との位置ずれは生じない。
【0047】
<変形例>
上述した実施形態では、第1回転伝達部材および第2回転伝達部材をプーリとしたが、第1回転伝達部材および第2回転伝達部材はギヤであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ハウジング
2 第1ハウジング
3 第2ハウジング
4 合わせ面(第1ハウジング側)
5 合わせ面(第2ハウジング側)
6 第1ガイド部
7 第2ガイド部
8 ガイドリブ
9 ガイド壁
10 ガイドピン
14 駆動プーリ(第2回転伝達部材、第2プーリ)
15 ベルト
16 従動プーリ(第1回転伝達部材、第1プーリ)
20 シール部材
38 第1脚部
48 第2脚部
50 操舵装置
59 ラック軸(転舵軸、軸部材)
73 直交線
O 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10