(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術には、個々の撮影機器のレンズ歪のバラツキ等に起因する精度上の問題もあるが、そればかりでなく、対象平板の縁断面形状(対象平板面に垂直な面で切った縁付近の断面形状)の多様性に対応できず、その結果、敷物の外周輪郭を良好に画定できないという問題がある。
【0006】
即ち、対象平板の縁断面形状には、
図5(b)等に示すように種々の形状がある。このため、対象平板の縁断面形状に応じて、例えば、
(イ)敷物92の縁を、対象平板10の縁先端10conに合致させる(
図5(b)内2番目;参照);
(ロ)敷物93/95/95の縁を、対象平板10/10D/10Dの縁曲面が平板面に連なる境界部分に合致させる(
図5(b)内3番目,5番目,
図5(c);参照);
等の中から、見栄えや使用感等を考慮して、適切に決めなければならない。
つまり、敷物と対象平板との関係に於いて、良好な見栄えを得られる位置や、良好な使用感を得られる位置を、対象平板の縁域(縁先端〜縁曲面・平板面の境界部分)の部位の中から、適切に決めなければならない。
【0007】
しかし、特許文献1の技術の場合、対象平板の外周輪郭として検出される位置は、撮影画像に於ける対象平板の最外縁であり、この最外縁が、縁域(縁先端〜縁曲面・平板面の境界部分)の何れの位置になるかは、撮影角度等によってそれぞれ異なる。例えば、或る縁位置の直上から撮影した場合、当該或る縁位置に関しては縁先端が最外縁になると考えられる。即ち、縁先端が外周輪郭として検出される。しかし、その反対側の縁位置(平板中央部を挟み反対側の縁位置)では、直上からの撮影ではなくなり、斜め上方からの撮影となる結果、カメラから当該反対側の縁位置へ引いた接線が縁域に接する部位が、最外縁になる。即ち、カメラから引いた接線の接する部位が外周輪郭として検出される。
このように、同一平板の縁であっても、カメラに対する位置によって撮影角度が異なる結果、縁先端が外周輪郭の位置として検出されたり、カメラから引いた接線の接する部位が外周輪郭の位置として検出されたりするという不具合が生ずる。
【0008】
本発明は上述の事情に鑑みたものであり、敷物の外周輪郭とすべき位置を、見栄えや使用感等を考慮して、対象平板の縁域(縁先端〜縁曲面・平板面の境界部分)の中から適切に画定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構成を下記[A]〜[
E]に記す。なお、この項([課題を解決するための手段])と次項([発明の効果])に於いて、構成a〜構成
e内の各符号は理解を容易にするために付したものであり、本発明を符号の構成に限定する趣旨ではない。
[A]構成a
平板上の任意の位置に留め置かれる固定側装置と、前記平板の縁先端に沿って移動される移動側装置とから成り、
前記固定側装置が持つ一対の距離測定用の基準点の各々と、前記移動側装置が持つ距離測定用の測距端との間の距離を、前記固定側装置と前記移動側装置との間で送受信される信号に基づいてそれぞれ求める距離測定手段と、
前記固定側装置の両基準点間の距離、及び、前記距離測定手段により求めた前記固定側装置の各基準点と前記移動側装置の測距端との間の各距離に基づいて、前記固定側装置の両基準点から見た前記移動側装置の測距端の位置を、三辺測量の原理に基づいて求める位置特定手段と、
前記位置特定手段により求めた前記移動側装置の測距端の位置に基づいて、前記平板の輪郭線を求める輪郭線演算手段と、
を有することを特徴とする平板輪郭画定システム。
[B]構成b
平板上の任意の位置に留め置かれる固定側装置と、前記平板の縁先端に沿って移動される移動側装置とから成るシステムであって、
前記固定側装置は距離測定用の基準点とされる一対の信号端子を有し、
前記移動側装置は距離測定用の測距端とされる1個の信号端子を有し、
前記システムは、
前記固定側装置の各基準点の各々と前記移動側装置の測距端との間の距離を、前記固定側装置と前記移動側装置との間で送受信される信号に基づいてそれぞれ求める距離測定手段と、
前記固定側装置の両基準点間の距離、及び、前記距離測定手段により求めた前記固定側装置の各基準点と前記移動側装置の測距端との間の各距離に基づいて、前記固定側装置の両基準点から見た前記移動側装置の測距端の位置を、三辺測量の原理に基づいて求める位置特定手段と、
前記位置特定手段により求めた前記移動側装置の測距端の位置に基づいて、前記平板の輪郭線を求める輪郭線演算手段と、
を有することを特徴とする平板輪郭画定システム。
[C]構成c
平板10上の任意の位置に留め置かれる固定側装置21,22と、前記平板10の縁先端10conに当接されて該縁先端10conに沿って移動される移動側装置30とから成るシステムであって、
前記固定側装置21,22は、前記移動側装置30との間で信号を送受信するとともに距離測定の基準点とされる一対の信号端子210m,220mを有し、
前記移動側装置30は、前記固定側装置21,22との間で信号を送受信するとともに前記固定側装置21,22の一対の各信号端子210m,220mとの間の距離測定用の測距端300とされる1個の信号端子300mを有し、
前記システムは、
前記固定側装置21,22の各基準点210,220mの各々と前記移動側装置30の測距端300(300m)との間の距離d210,d220を、前記固定側装置30と前記移動側装置21,22との間で送受信される距離測定用の信号に基づいてそれぞれ求める距離測定手段と、
前記固定側装置21,22の両基準点210m,220m間の距離、及び、前記距離測定手段により求めた前記固定側装置21,22の各基準点210m/220mと前記移動側装置30の測距端300(300m)との間の各距離d210,d220に基づいて、前記固定側装置21,22の両基準点210m,220mから見た前記移動側装置30の測距端300(300m)の位置を、三辺測量の原理に基づいて求める位置特定手段と、
前記位置特定手段により求めた前記移動側装置30の測距端300(300m)の位置に基づいて、前記平板10の輪郭位置T00を求める輪郭位置演算手段と、
を有することを特徴とする平板輪郭画定システム。
[D]構成d
構成a
〜構成cの何れかに於いて、
前記固定側装置21,22は、第1の固定側装置21と第2の固定側装置22の2体から成り、距離測定の基準
点は、前記第1及び第2の固定側装置21,22にそれぞれ1個ずつ搭載されている、
ことを特徴とする平板輪郭画定システム。
[E]構成e
構成
dに於いて、
前記システムは、さらに、前記第1及び第2の固定側装置21,22の両基準点210m,220m間の距離d0を、該第1及び第2の固定側装置21,22の間で送受信され
る信号に基づいて求める固定側距離測定手段を有する、
ことを特徴とする平板輪郭画定システム。
【0010】
上記[A]〜[
E]に記載の本発明に於ける移動側装置の構成例を、下記[1]〜[10]に、平板輪郭画定装置として記す。
[1]構成例1
対象平板10の縁に於いて当該装置を位置決めするための位置決め部材と、
前記位置決め部材と一体化され、当該装置が対象平板10の縁に位置決めされた状態で対象平板10の面上に位置する横部材301と、
前記横部材301に設けられ、位置決めされた縁位置から任意の距離t0だけ変移した対象平板面上の位置T0を指定するための位置指定手段と、
前記指定された位置T0に応じて当該装置内の位置としての輪郭位置T00を規定する輪郭位置規定手段と、
を有することを特徴とする平板輪郭画定装置。
【0011】
[2]構成例2
構成例1に於いて、
前記位置決め部材は、位置決めされた縁位置の縁先端10conに当接可能な当接部を有し、位置決めされた状態で鉛直方向を向く縦部材302であり、
前記横部材301は、前記縦部材302と直交方向に設けられ、対象平板10の面上にて密接被支持可能な部材であり、
前記位置指定手段は、前記任意の距離t0の変移の基準位置を前記縦部材302の当接部の位置とする、
ことを特徴とする平板輪郭画定装置。
[3]構成例3
構成例2に於いて、
前記横部材301は対象平板10の面上での滑らかな移動を可能とする平板上滑動手段を有し、
前記縦部材302は対象平板10の縁先端10conに沿う滑らかな移動を可能とする縁先端滑動手段を有する、
ことを特徴とする平板輪郭画定装置。
[4]構成例4
構成例3に於いて、
前記平板上滑動手段は前記横部材301に設けられた転動部材305であり、
前記縁先端滑動手段は前記縦部材302に設けられた転動部材306である、
ことを特徴とする平板輪郭画定装置。
[5]構成例5
構成例1〜構成例4の何れかに於いて、
前記位置指定手段は、対象平板10の任意の位置を指示可能な指示針303と、該指示針303を前記横部材301に沿って移動可能とする針支持機構304とを有する、
ことを特徴とする平板輪郭画定装置。
【0012】
[6]構成例6
構成例1〜構成例5の何れかに於いて、
さらに、前記規定された輪郭位置T00に基づいて決められる表出位置W1を対象平板10上のシートに描くための筆記具303aを有する、
ことを特徴とする平板輪郭画定装置。
[7]構成例7
構成例6に於いて、
前記表出位置W1は、前記規定された輪郭位置T00から反縁方向へ所定距離twだけ変移した位置として決められる、
ことを特徴とする平板輪郭画定装置。
【0013】
[8]構成例8
構成例1〜構成例5の何れかに於いて、
前記横部材301は、所定の定位置D21(D22)を一端とする距離測定に於いて他端となるべき測距端300を有し、
さらに、前記定位置D21(D22)と測距端300との間の距離測定に用いられる測距用手段307,308と、
前記規定された輪郭位置T00と測距端300との位置関係に基づいて、当該輪郭位置T00の画定に必要な補正情報を生成する補正情報演算手段308と、を有する、
ことを特徴とする平板輪郭画定装置。
[9]構成例9
構成例8に於いて、
前記測距端300には、前記定位置D21(D22)を規定する所定の送受相手装置21(22)との間で信号を送受信するための信号端子300mが設けられており、
さらに、前記測距用手段307,308を用いる距離測定用の情報及び前記生成された補正情報を前記信号端子300mを介して前記送受相手装置21(22)と送受信するための情報制御手段307,308を有する、
ことを特徴とする平板輪郭画定装置。
[10]構成例10
構成例8又は構成例9に於いて、
前記測距端300は、前記位置指定手段により指定される位置T0の直上となるように設けられており、
前記輪郭位置規定手段は、前記前記位置指定手段により指定される位置T0の直上を輪郭位置T00として規定する、
ことを特徴とする平板輪郭画定装置。
【発明の効果】
【0014】
構成aは、平板上の任意の位置に留め置かれる固定側装置と、前記平板の縁先端に沿って移動される移動側装置とから成り、前記固定側装置が持つ一対の距離測定用の基準点の各々と、前記移動側装置が持つ距離測定用の測距端との間の距離を、前記固定側装置と前記移動側装置との間で送受信される信号に基づいてそれぞれ求める距離測定手段と、前記固定側装置の両基準点間の距離、及び、前記距離測定手段により求めた前記固定側装置の各基準点と前記移動側装置の測距端との間の各距離に基づいて、前記固定側装置の両基準点から見た前記移動側装置の測距端の位置を、三辺測量の原理に基づいて求める位置特定手段と、前記位置特定手段により求めた前記移動側装置の測距端の位置に基づいて、前記平板の輪郭線を求める輪郭線演算手段と、を有することを特徴とする平板輪郭画定システムであるため、対象平板の輪郭形状を容易且つ簡単に画定できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
(1)システムの概要
図1に示すように、システムは、一対の固定側装置21,22と、1個の平板輪郭画定装置(移動側装置)30とによって構成される。一対の固定側装置21,22は、平板10上の任意の位置にそれぞれ載置され、以後、それぞれの位置に留め置かれる。移動側装置30は、その縦部材302の当接部を平板10の縁先端10conに当接され、平板10の縁に沿って周回するように、ユーザによって移動される。
【0019】
(2)移動側装置
移動側装置30は、縦部材302と、該縦部材302と一体に構成された横部材301とを有する。横部材301は、縦部材302と直交する方向に延びるように設けられており、縦部材302の当接部が平板10の縁先端10conに当接された状態で、横部材301は平板10の上面に密接・支持されることができる。つまり、横部材301を平板10の上に置き、縦部材302の当接部を平板10の縁先端10conに当接させると、移動側装置30は平板10に対して位置決めされる。このとき、移動側装置30は、平板10上に配置された一対の固定側装置21,22に対しても位置決めされている。
【0020】
図4に示すように、移動側装置30は、指示針303と、該指示針303を横部材301に沿って移動可能に支持する針支持機構304とを有する。即ち、横部材301には横部材301と同方向に延びるガイド304gが設けられており、該ガイド304gに、指示針303を支持するスライダ304sが、摺動自在に設けられている。このガイド304gとスライダ304sによって針支持機構304が構成され、これにより、指示針303の横部材301に沿う移動が可能とされている。
【0021】
移動側装置30の当接部が平板10の縁先端に当接されて位置決めされた状態では、
図2に示すように、指示針303は、位置決めされた縁の縁先端から任意の距離t0だけ平板10の内側方向へ入った位置T0を、指示することができる。つまり、ユーザは、指示針303を操作してガイド304gの案内で平板内側方向へ任意の距離t0移動させることにより、当接部から距離t0だけ平板内側方向へ入った位置T0を、指示針303に指示させることができる。ここで、平板内側方向とは、望ましくは、当該位置決めされた縁先端の接線方向に直交する方向である。言い換えれば、ユーザが手操作で移動側装置30を移動させて位置決めするとき、横部材301が、縁先端の接線方向に直交する方向を向くように位置決めすることが望まれる。
【0022】
移動側装置30に姿勢規制部材(不図示)を設け、位置決めされた状態に於いて横部材301が縁先端又は縁先端の接線方向と直交する方向(法線方向)を正確に向くように構成してもよい。その場合には、上述の平板内側方向は、当該位置決めされた縁先端の接線方向に直交する方向になる。この姿勢規制部材を備えた構成に於いて、指示針303を固定(距離t0に固定)した状態で、移動側装置30を平板10の縁先端に沿って移動させると、指示針303が指示する位置T0の軌跡(輪郭)は、平板10の縁先端曲線を、距離t0だけ平板内側方向へ移動させた曲線となる。つまり、平板10の縁先端に沿う曲線となる。なお、姿勢規制部材が無い構成の場合でも、指示針303により指示される位置T0が縁先端に十分に近いため、距離t0は、平板10のサイズとの相対的比較に於いて十分に小さくなり、結果、近似的には、同様に、平板10の縁先端に沿う曲線となる。
【0023】
移動側装置30に、
図4に示すように筆記具303aを設けてもよい。
図4には、ガイド304gに摺動自在に設けたスライダ304sにより指示針303を支持し、該指示針303と一体化された取付具303b,303cを介して筆記具303aを支持する構成が例示されている。筆記具303aとしては、鉛筆や、ボーペン、或いは、製図用のペン等、型紙用紙に線を描くことができる筆記具であれば用いることができる。
【0024】
平板10上に型紙用紙を敷き、筆記具303aを装着した移動側装置30を、先述の如く指示針303を固定(距離t0に固定)した状態で、平板10の縁先端に沿って移動させると、型紙用紙上には、平板10の縁先端に沿う曲線が、筆記具303aによって描かれる。筆記具303aの位置(指示針303に対する相対位置)を調整可能に構成してもよい。調整可能に構成した場合には、その位置を適切に設定することにより、型紙用紙上に、指示針303が指示する位置T0の軌跡(輪郭線)に沿い且つ適切に設定された所望の間隔を保つ曲線を描くことができる。例えば、指示針303の位置T0より平板内側方向へ更に距離twだけ入った位置W1に筆記具303aを設定した場合は、平板10の縁先端曲線に沿い且つ縁先端曲線と距離「t0+tw」の間隔を保つ曲線を、型紙用紙上に描くことができる。
【0025】
したがって、指示針303の指示する平板10上の位置T0が、縁先端に近すぎて平坦面を外れて曲面を成す部位であるため、その上に敷いた型紙用紙上に輪郭線を良好に描けない場合には、平板10の縁先端曲線に沿い且つ縁先端曲線と距離「t0+tw」の間隔を保つ曲線を型紙に描いた後、型紙を平坦な平面上に置き直して、当該曲線を外側へ距離twだけ拡げた曲線を描く等することにより、樹脂シート裁断用の所望の輪郭の型紙を得ることができる。
【0026】
この移動側装置30には、当該装置を平板10の縁先端に沿って滑らかに移動させることができるように、縦部材302に、軸306aによって正逆回転可能に軸支された転動部材(ローラ)306が設けられており、横部材301にも、軸305aによって正逆回転可能に軸支された転動部材(ローラ)305が設けられている。移動側装置30の横部材301を平板10の上面に押し当てつつ且つ縦部材302を平板10の縁先端に押し当てつつ平板10の縁先端に沿って移動させるとき、転動部材(ローラ)306は転動しつつ平板10の縁先端に接触し続けるのであるが、この接触部位が当接部である。
【0027】
(3)固定側装置との連携
図1に示すシステムでは、相互間の距離が既知の一対の固定側装置21,22を基準点とし、該2つの基準点から移動側装置30までの距離をそれぞれ測定して求め、三辺測量の原理を用いて、一対の固定側装置21,22から見た移動側装置30の位置を確定している。測定する距離は、固定側装置21の信号端子210m〜移動側装置30の信号端子300m間の距離d210、及び、固定側装置22の信号端子220m〜移動側装置30の信号端子300m間の距離d220である。したがって、三辺測量の原理により確定される位置は信号端子300mの位置であり、これは、指示針303が指示する位置T0とは異なる。指定位置T0(輪郭位置T00)を確定するためには、固定側装置21の信号端子210m〜輪郭位置T00間の距離d21、及び、固定側装置22の信号端子220m〜輪郭位置T00間の距離d22を求めることが望まれる。本システムでは、上記の距離d210,d220を測定で求め、これらを、輪郭位置T00〜信号端子300m間の距離t2(
図2参照)を用いて適切に補正する。なお、移動側装置30に於いて、指示針303と同一とみなせる位置に信号端子300mを設けてもよい。その構成では、補正は不要となり、距離d21,d22を測定で求めることができる。
【0028】
補正に用いる輪郭位置T0〜信号端子300m間の距離t2は、
図2に示すように、当接部〜信号端子300m間の距離t3から、当接部〜輪郭位置T00間の距離t0を減算した値である。ここで、距離t3は、当接部〜信号端子300m間の距離、即ち、移動側装置30上で固定された部位間の距離であり、既定(既知)である。したがって、距離t0が分かれば、距離t2を求めることができる。
【0029】
一方、先述のように、移動側装置30の指示針303は、平板10上の所望の位置を指示する部材である。この指示針303が平板10上の或る位置T0を指示しているとき、移動側装置30内に於ける指示針303の位置を輪郭位置T00として規定し、この位置T00に対応する距離(当接部からの距離)t0を検出して、移動側装置30が持つ制御部(CPU等)308(
図3参照)に入力する。これにより、制御部308は、輪郭位置T00〜信号端子300m間の距離t2を演算で求めることができる。なお、輪郭位置T00(距離t0)を検出する手法としては、例えば、距離t0を電気抵抗値として検出する手法等の公知の手法を用いることができる。
【0030】
上述の機能、即ち、一対の固定側装置21,22から見た輪郭位置T00を確定する機能を実現するため、
図3に示すように、移動側装置30は、制御部308、位置設定部309、送受信部307を有する。また、固定側装置21は、制御部2108、演算部2108a、送受信部2107,2107’、距離値設定部2109を有し、固定側装置22は、制御部2208、送受信部2207,2207’、距離値設定部2209を有する。これら各部の機能の詳細は、以下のシステムの手順の項で述べる。
【0031】
(4)システムの手順1(
図6)
移動側装置30と、第1の固定側装置21と、第2の固定側装置22とから成る、
図1及び
図3のシステムで実行される手順を、
図6を参照して説明する。
図6では、移動側装置30に於いてユーザにより位置指定のための入力操作が行われる毎に、固定側装置21,22から見た入力操作時点での輪郭位置T00が確定されて、何れか1以上の装置21/22/30の所定の記憶装置(不図示)に蓄積される。
【0032】
第1の固定側装置21と第2の固定側装置22が平板10上に配置され、何れかの装置21/22/30に於いて距離測定を指示するための所定の操作入力が成されると、第1の固定側装置21と第2の固定側装置22の間の距離d0が測定される(S101)。この距離d0は、後述の距離d210や距離d220と同様に、例えば、第1及び第2の固定側装置21,22の信号端子210m,220mの間で、同期信号(無線信号)と超音波信号を送受信し、その到達時間差に基づいて求めることができる。なお、第1の固定側装置21と第2の固定側装置22を一体の装置として構成し、信号端子210mと信号端子220mの間隔を固定して距離d0を固定値とし、第1及び/又は第2の固定側装置21,22の記憶装置に予め保持しておくように構成してもよい。
【0033】
ステップS112では、移動側装置30での位置指定操作が待機される。位置指定操作とは、移動側装置30に於いて、ユーザが指示針303で平板上10の所望の位置T0を指示した後に行われる当該指示を確定するための所定の入力操作である。
【0034】
位置指定操作が検出されると(S112でYES)、ステップS121へ進む。
ステップS121は、平板10上の位置として指定した指定位置T0に応じて、移動側装置30内の位置としての輪郭位置T00を規定するステップである。即ち、位置指定操作が検出されたとき、指示針303は平板10上の位置(所望の位置)T0を指示しており、移動側装置30のガイド304gとの関係では、指示針303はガイド304g内の位置T00に在るとしたとき、これを、輪郭位置T00とする(S121)。
【0035】
また、ステップS121では、当接部と輪郭位置T00の間の距離t0、即ち、当接部を基準位置としたときの当接部から輪郭位置T00までの距離t0を検出する。前述のように、移動側装置30は、ガイド304gに於ける指示針303の相対的な位置を当接部からの距離として検出する機能を有しており(
図3の位置設定部309;参照)、この機能により、当接部から輪郭位置T00までの距離t0を検出する。
【0036】
次に、ステップS123へ進む。ステップS123では、当接部から輪郭位置T00までの距離t0と、当接部から測距端300までの距離t3から、輪郭位置T00から測距端300までの距離t2を算出する。測距端300とは、固定側装置21,22との距離測定に於ける、移動側装置30の側の端部であり、この例では、同期信号(無線信号)や超音波信号を送受信する信号端子300mに合致する。当接部から測距端300までの距離t3は定数であり、予め、制御部308にて保持しているものとする。
【0037】
次に、ステップS141へ進み、移動側装置30の測距端300と、固定側装置21の信号端子210mとの間の距離d210を求める。ここでは、移動側装置30の信号端子300mから同期信号(無線信号)と超音波信号を同時に送信して、固定側装置21の信号端子210mでの受信時刻の差に基づいて求める。同期信号(無線信号)と超音波信号を用いる距離測定方法は周知であるため、これ以上の説明は割愛する。
同様にして、移動側装置30の測距端300(信号端子300m)と、固定側装置22の信号端子220mとの間の距離d220を求める。
なお、同期信号(無線信号)と超音波信号の送信を固定側装置21,22から行い、移動側装置30にて受信するように構成してもよい。
また、同期信号(無線信号)と超音波信号による距離測定に代えて、赤外線信号による距離測定や、レーザによる距離測定等の公知の距離測定手法を用いてもよい。
【0038】
次に、ステップS143へ進み、固定側装置21,22から見た移動側装置30の信号端子300m(測距端300)の位置を、三辺測量の原理で確定する。即ち、ステップS101で検出して保持している固定側装置21,22間の距離d0と、ステップS141で算出した固定側装置21の信号端子210mと移動側装置30の信号端子300m間の距離d210、及び、固定側装置22の信号端子220mと移動側装置30の信号端子300m間の距離d220から、固定側装置21,22を基準とする信号端子300m(測距端300)の位置を確定する。
【0039】
次に、ステップS145へ進み、固定側装置21,22から見た移動側装置30の信号端子300m(測距端300)の位置に、ステップS123で算出した当接部〜輪郭位置T00間の距離t2に基づく補正を施す。これにより、固定側装置21,22を基準として見た輪郭位置T00が確定される。その後、上記距離t2をクリアする。この輪郭位置T00は、移動側装置30が当該の位置に在る時の平板10上の指定位置T0でもある。したがって、移動側装置30を平板10の縁先端に沿って移動させ、適宜の位置間隔で停止させて上記の手順を繰り返すことにより、固定側装置21,22から見た移動側装置30の輪郭位置T00、つまり、平板10上の指定位置T0を蓄積することができる。言い換えれば、多数の指定位置T0を繋ぐ線としての輪郭線を得ることができる。
【0040】
平板10の縁先端曲線に沿って周回する輪郭線が得られると(S151でYES)、
図6の手順は終了する。輪郭線が得られたか否かは、移動側装置30を扱うユーザが判断してもよく、或いは、固定側装置21等に、指定位置T0を繋ぐ線により閉曲線が描かれ得るか否かをチェックする等の機能を設けて判断するようにしてもよい。
【0041】
ステップS145の補正、即ち、当接部〜輪郭位置T00間の距離t2に基づいて輪郭位置T00を確定するための補正を、
図9を参照して説明する。
上述のように、
図6のステップS141〜S143では、固定側装置21,22の信号端子210m,220mを基準として見た移動側装置30の測距端300(信号端子300m)の位置を確定している。しかし、この位置は、指示針303により指定した位置T0(輪郭位置T00)とは異なり、位置T0(輪郭位置T00)から距離t2だけ離れた位置である。このため、補正が必要となる。なお、移動側装置30に於いて指示針303と同一とみなせる位置に信号端子300mを設けた構成の場合、即ち、「t2≒0」とした構成の場合に補正が不要であることは、先述の通りである。
【0042】
図1(a)に示すように、移動側装置30は、平板10の縁先端10conに沿って平板10を周回する。
図9に於いて、固定側装置21,22の信号端子210m,220mを三角形の底辺の両端とし、移動側装置30の信号端子300mを頂点としたとき、両底角が鋭角を成す範囲では、概ね、三角形を頂点の方向へ延ばし拡げるようにして、輪郭位置T00を決めることができる。即ち、両底角を拡げるように、また、両辺の長さ(距離d210,d220)を延ばすようにして、信号端子300mから距離t2だけ離れた位置(半径t2の円r上の位置)を決め、輪郭位置T00とすることができる。距離d21は信号端子210m〜輪郭位置T00間の距離であり、距離d22は信号端子220m〜輪郭位置T00間の距離である。
【0043】
両底角の一方が鈍角を成す範囲では、概ね、鈍角が緩和される(角度が小さくなる)ように三角形を頂点の方向へ延ばし拡げるようにして、輪郭位置T00を決めることができる。即ち、鋭角の底角を拡げ、且つ、鈍角の底角を狭めるようにして、信号端子300mから距離t2だけ離れた位置(半径t2の円r上の位置)を決め、その位置を輪郭位置T00とすることができる。距離d21’は信号端子210m〜輪郭位置T00間の距離であり、距離d22’は信号端子220m〜輪郭位置T00間の距離である。
なお、上記補正では、両底角が鋭角の場合、及び、両底角の一方が鈍角を成す場合の何れも、平板10のサイズと比較して、距離t2が十分に小さいものとする。
【0044】
(5)システムの手順2(
図7)
図1及び
図3のシステムで実行される手順であって、
図6とは若干異なる手順を、
図7を参照して説明する。なお、
図6と同じ処理については同じステップ番号で示し、説明は省略する。
【0045】
図7では、平板10上の位置T0が指定される毎に(S111でYES)、当接部〜輪郭位置T00間の距離t0が検出されて(S121)、輪郭位置T00〜信号端子300m間の距離t2が求められる。平板10上の位置T0の指定は、例えば、所定時間間隔で行われるように構成してもよく、或いは、平板10の縁先端に沿って周回される移動側装置30の停止毎に行われるように構成してもよい。
【0046】
また、
図7では、輪郭位置T00の決定タイミング毎に(S131でTES)、輪郭位置T00〜信号端子300m間の距離t2を保持していることを条件として(S133でYES)、信号端子210m〜信号端子300m間の距離d210、及び、信号端子220m〜信号端子300m間の距離が求められ(S141)、3辺測量の原理により固定側装置21,22から見た信号端子300mの位置が確定され(S143)、輪郭位置T00〜信号端子300m間の距離t2に基づく補正により輪郭位置T00が決められて、蓄積される(S145)。
【0047】
(6)移動側装置,固定側装置の処理(
図8)
図8は、
図1及び
図3のシステムで実行される
図6の手順を、移動側装置30と一対の固定側装置21,22に分配して示すフローチャートである。
図8では、
図6のステップS141の処理(距離d210,d220を求める処理)が、移動側装置30のステップS124mと、固定側装置21のステップS124f〜S142f、及び、固定側装置22での同様の処理に分配されている。
なお、
図8は例示であり、処理を
図8とは異なるように分配して、同様の機能を実現するように構成できることは勿論である。
【0048】
(7)その他
上記では、固定側装置21,22についての機構の説明は省略しているが、上述の機能を奏し得る機構であれば、どのような機構であってもよい。例えば、移動側装置30との送受信用の端子を備えたスマートフォン等に上述の機能を奏するアプリケーションを搭載することで、固定側装置21,22を構成してもよい。
【0049】
また、上記では、固定側装置21,22を、何れも平板10上に配置しているが、平板10と同一平面上であれば、平板10を外れた位置に配置してもよい。
図1(a)内に仮想線(2点鎖線)で示す固定側装置22は、その例である。
【0050】
また、上記では、固定側装置21,22と移動側装置30での処理を、これらの装置で完結させているが、例えば、処理(機能)の一部を、インターネット等を介して遠隔地で実行可能に構成してもよい。処理(機能)の一部としては、
図3の固定側装置21の演算部2108aの機能の一部又は全部を例示できる。遠隔地としては、例えば、樹脂シートを裁断する工場等を挙げることができる。