【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る風車は、
複数の風車翼と、
前記複数の風車翼のピッチ角をそれぞれ制御するための複数の油圧アクチュエータと、
前記複数の油圧アクチュエータのための制御油が貯留された第1タンクと、
前記複数の油圧アクチュエータと前記第1タンクとの間に設けられ、前記制御油を圧送するための第1油圧ポンプと、
前記複数の油圧アクチュエータのそれぞれに対応して設けられ、前記油圧アクチュエータへの前記制御油の供給状態を制御するための複数のバルブと、
前記バルブの各々を制御するための制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の風車翼のピッチ油圧系統の暖機時、各々の前記風車翼について順に、該風車翼のピッチ角をフェザー側からファイン側に動かして前記フェザー側に戻す油入替え動作を該風車翼に対応する前記油圧アクチュエータに行わせるよう、該風車翼に対応する前記バルブを制御するように構成される。
【0008】
上記(1)の構成によれば、複数の風車翼について油入替え動作を油圧アクチュエータに行わせて、各々の風車翼のピッチ油圧系統内において制御油を流すことで、制御油の油温の均一化を図り、ピッチ油圧系統の暖機を適切に行うことができる。また、複数の風車翼のための油入替え動作を順に行うようにしたので、ピッチ油圧系統の暖機中において風車ロータに生じる空力トルクを低減することができ、風車ロータの意図せぬ回転を抑制できる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記制御部は、i番目(但し、i=1〜N−1であり、Nは前記風車翼の総数である。)の前記風車翼についてi番目の前記油圧アクチュエータに前記油入替え動作を行わせた後、(i+1)番目の前記風車翼について(i+1)番目の前記油圧アクチュエータに前記油入替え動作を行わせるよう、複数の前記バルブを制御するように構成される。
【0010】
上記(2)の構成によれば、i番目の風車翼についての油入替え動作の完了後に、(i+1)番目の風車翼の油入替え動作を行うことで、ピッチ油圧系統の暖機中において風車ロータに生じる空力トルクを確実に低減することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記バルブは、
前記油圧アクチュエータの各々と前記第1油圧ポンプとの間に設けられた比例弁と、
前記油圧アクチュエータの各々と前記第1タンクとの間に設けられた危急電磁弁と、
を含み、
前記制御部は、各々の前記風車翼について前記油圧アクチュエータに前記油入替え動作を行わせるとき、前記ピッチ角を前記フェザー側から前記ファイン側に動かすよう前記比例弁を開くように制御した後、前記ファイン側から前記フェザー側に前記ピッチ角を戻すよう前記危急電磁弁を開くように制御するように構成される。
【0012】
上記(3)の構成によれば、各風車翼の油入替え動作を実施する際、ピッチ角をファイン側に動かすときにピッチ油圧系統のうち比例弁を含む油圧ラインに制御油が流れ、ピッチ角をフェザー側に動かすときにピッチ油圧系統のうち危急電磁弁を含む油圧ラインに制御油が流れる。こうして、ピッチ油圧系統の広範囲な油圧ラインに制御油を流すことで、ピッチ油圧系統における制御油の油温を効果的に均一化し、ピッチ油圧系統の暖機を適切に行うことができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記風車は、
前記第1油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間に一端が接続され、前記第1油圧ポンプからの前記制御油を前記第1タンクに返送するためのバイパスラインと、
前記バイパスラインに設けられたバイパス弁と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1タンク内の前記制御油の温度が第1閾値未満であるとき、前記バイパス弁を開いて、前記第1油圧ポンプによって前記バイパスラインを含む循環流路内にて前記第1タンク内の前記制御油を循環させて、前記油圧アクチュエータ側に前記制御油を供給しないアンロード状態とし、
前記第1タンク内の前記制御油の前記温度が前記第1閾値以上であるとき、前記バイパス弁を閉じて、前記油圧アクチュエータ側に前記制御油を供給可能なオンロード状態とする
ように構成される。
【0014】
上記(4)の構成によれば、バイパス弁の開閉制御により、第1タンク内の制御油の温度に応じてピッチ油圧系統をアンロード状態とオンロード状態とで切り替えるようにしたので、ピッチ油圧系統の暖機を効率的に行うことができる。
具体的には、第1タンク内の制御油の温度が第1閾値未満の場合、ピッチ油圧系統をアンロード状態とし、バイパスラインを含む循環流路内で制御油を循環させて第1タンク内の制御油を昇温させる。一方、第1タンク内の制御油の温度が第1閾値以上の場合、第1タンク内の比較的高温の制御油を油圧アクチュエータを含むピッチ油圧系統の大部分に供給することで、ピッチ油圧系統における制御油の油温の均一化を図ることができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記風車は、前記第1タンク内の前記制御油を加熱するための第1ヒータをさらに備え、
前記制御部は、前記ピッチ油圧系統の暖機開始時に前記第1油圧ポンプが停止していた場合であって、前記第1タンク内の前記制御油の前記温度が前記第1閾値よりも小さい規定温度以下であるとき、前記第1油圧ポンプを停止させたまま、前記第1タンク内の前記制御油を加熱するよう前記第1ヒータを制御するように構成される。
【0016】
上記(5)の構成では、ピッチ油圧系統の暖機開始時に第1油圧ポンプが停止しており、且つ、第1タンク内の制御油の温度が規定温度以下の場合、第1油圧ポンプを停止させたまま、第1ヒータにより第1タンク内の制御油を昇温させるようになっている。これにより、例えば、温度低下により制御油の粘度又は性状が想定範囲を逸脱するような場合、いきなり第1油圧ポンプを稼働させるのではなく、第1ヒータにより制御油を昇温させることで、第1油圧ポンプの損傷を防止できる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記風車は、
前記第1油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間に一端が接続され、前記第1油圧ポンプからの前記制御油を前記第1タンクに返送するためのバイパスラインと、
前記バイパスラインに設けられたバイパス弁と、をさらに備え、
前記制御部は、
外気温が前記風車の運転可能温度域の下限値未満である期間が規定時間継続した場合、前記風車の運転を停止して前記風車翼の各々の前記ピッチ角を前記フェザー側に移行させるよう前記バルブを制御し、
前記外気温が前記風車の暖機開始温度以上である期間が規定時間継続する暖機開始条件を満たすまでの間、前記バイパス弁を開くアンロード状態のまま前記風車を待機させ、
前記暖機開始条件を満たした後、前記ピッチ油圧系統を含む前記風車の各部の暖機を行うように構成される。
【0018】
上記(6)の構成によれば、暖機開始条件を満たすまでの間、バイパス弁を開くアンロード状態において風車を待機させるようにしたので、バイパスラインを含む循環流路内で制御油を循環させて第1タンク内の制御油の温度低下を抑制できる。これにより、暖機開始条件を満たした後、ピッチ油圧系統の暖機を容易に行うことができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記風車は、
前記複数の風車翼を含む風車ロータとともに回転するように構成された主軸と、
前記主軸を回転可能に支持する主軸受と、
前記主軸受のための潤滑油が貯留された第2タンクと、
前記第2タンク内の前記潤滑油を加熱するための第2ヒータと、
前記第2タンク内の前記潤滑油を前記主軸受に供給するための第2油圧ポンプと、をさらに備え、
前記制御部は、前記暖機開始条件を満たした後、
前記第2タンク内の前記潤滑油の温度が第2閾値未満である場合、前記第2タンク内の前記潤滑油を加熱するよう前記第2ヒータを制御し、
前記第2タンク内の前記潤滑油の温度が第2閾値に到達したら、前記第2油圧ポンプを間欠的に稼働させる
ように構成される。
【0020】
上記(7)の構成によれば、暖機開始条件を満たした後、第2タンク内の潤滑油(主軸受用潤滑油)の温度が第2閾値に到達するまでの間、第2ヒータによる加熱を行うようにしたので、例えば、温度低下により潤滑油の粘度又は性状が想定範囲を逸脱するような場合、いきなり第2油圧ポンプを稼働させるのではなく、第2ヒータにより潤滑油を昇温させることで、第2油圧ポンプの損傷を防止したり、主軸受からの高粘度の潤滑油が戻り配管で詰まることによる潤滑油漏れを抑制したりすることができる。また、第2タンク内の潤滑油の温度が第2閾値に到達した後、第2油圧ポンプを間欠的に稼働させる(インチング運転)ので、主軸受からの高粘度の潤滑油の漏れを抑制することができる。こうして、主軸受の潤滑油系統の暖機を適切に行うことができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)又は(7)の構成において、
前記風車は、
前記複数の風車翼を含む風車ロータの回転数を増速させるための増速機と、
前記増速機の内部に設けられたタンク部に貯留された潤滑油を、前記タンク部に接続される循環配管を介して循環させるための第3油圧ポンプと、
前記タンク部又は前記循環配管内の前記潤滑油を加熱するための第3ヒータと、をさらに備え、
前記制御部は、前記暖機開始条件を満たした後、
前記タンク部又は前記循環配管内の前記潤滑油を規定時間加熱するよう前記第3ヒータを制御する
ように構成される。
【0022】
上記(8)の構成によれば、暖機開始条件を満たした後、第3ヒータにより、タンク部又は循環配管内の潤滑油(増速機用潤滑油)を昇温させることで、増速機の潤滑油系統の暖機を適切に行うことができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(6)乃至(8)の何れかの構成において、
前記風車は、
前記複数の風車翼を含む風車ロータとともに回転するように構成された主軸と、
前記主軸を回転可能に支持する主軸受と、
前記主軸受のための潤滑油が貯留された第2タンクと、
前記第2タンク内の前記潤滑油を前記主軸受に供給するための第2油圧ポンプと、
前記風車ロータの回転数を増速させるための増速機と、
前記増速機の内部に設けられたタンク部に貯留された潤滑油を、前記タンク部に接続される循環配管を介して循環させるための第3油圧ポンプと、をさらに備え、
前記制御部は、前記風車の各部の暖機を行うとき、前記第1油圧ポンプ、前記第2油圧ポンプおよび前記第3油圧ポンプのうち、前記暖機開始条件を満たしたときに稼働中であったポンプについて運転を継続させるように構成される。
【0024】
上記(9)の構成によれば、風車各部の暖機を行う際、暖機開始条件を満たした時点で稼働中であったポンプの運転をそのまま継続させるようにしたので、暖機を速やかに行うことができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(6)乃至(9)の何れかの構成において、
前記風車は、
前記複数の風車翼を含む風車ロータを回転可能に支持するナセルと、
前記ナセルを旋回させるためのヨー駆動部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記風車の運転中、前記ナセルを風向に追従して旋回させるように前記ヨー駆動部を制御し、
前記アンロード状態のまま前記風車を待機させるとき、前記ヨー駆動部による前記ナセルの風向追従を行わない
ように構成される。
【0026】
上記(10)の構成によれば、風車の運転中はヨー駆動部によりナセルを風向に追従させることで風車の運転効率を向上させるとともに、アンロード状態での風車の待機中はヨー駆動部によるナセルの風向追従を行わないことで、省エネルギーを実現できる。
【0027】
(11)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る風車の制御装置は、
上記(1)乃至(10)の何れかの構成の風車のための制御装置であって、
前記風車の複数の風車翼のピッチ油圧系統の暖機時、各々の前記風車翼について順に、該風車翼のピッチ角をフェザー側からファイン側に動かして前記フェザー側に戻す油入替え動作を該風車翼に対応する前記油圧アクチュエータに行わせるよう、該風車翼に対応する前記バルブを制御するように構成される。
【0028】
上記(11)の構成によれば、複数の風車翼について油入替え動作を油圧アクチュエータに行わせて、各々の風車翼のピッチ油圧系統内において制御油を流すことで、制御油の油温の均一化を図り、ピッチ油圧系統の暖機を適切に行うことができる。また、複数の風車翼のための油入替え動作を順に行うようにしたので、ピッチ油圧系統の暖機中において風車ロータに生じる空力トルクを低減することができ、風車ロータの意図せぬ回転を抑制できる。
【0029】
(12)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る風車の制御方法は、
複数の風車翼と、
前記複数の風車翼のピッチ角をそれぞれ制御するための複数の油圧アクチュエータと、
前記複数の油圧アクチュエータのための制御油が貯留された第1タンクと、
前記複数の油圧アクチュエータと前記第1タンクとの間に設けられ、前記制御油を圧送するための第1油圧ポンプと、
前記複数の油圧アクチュエータのそれぞれに対応して設けられ、前記油圧アクチュエータへの前記制御油の供給状態を制御するための複数のバルブと、を含む風車の制御方法であって、
前記複数の風車翼のピッチ油圧系統の暖機時、各々の前記風車翼について順に、該風車翼のピッチ角をフェザー側からファイン側に動かして前記フェザー側に戻す油入替え動作を該風車翼に対応する前記油圧アクチュエータに行わせるよう、該風車翼に対応する前記バルブを制御するステップを備えることを特徴とする。
【0030】
上記(12)の方法によれば、複数の風車翼について油入替え動作を油圧アクチュエータに行わせて、各々の風車翼のピッチ油圧系統内において制御油を流すことで、制御油の油温の均一化を図り、ピッチ油圧系統の暖機を適切に行うことができる。また、複数の風車翼のための油入替え動作を順に行うようにしたので、ピッチ油圧系統の暖機中において風車ロータに生じる空力トルクを低減することができ、風車ロータの意図せぬ回転を抑制できる。
【0031】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の方法において、
前記バルブを制御するステップでは、
i番目(但し、i=1〜N−1であり、Nは前記風車翼の総数である。)の前記風車翼についてi番目の前記油圧アクチュエータに前記油入替え動作を行わせた後、
(i+1)番目の前記風車翼について(i+1)番目の前記油圧アクチュエータに前記油入替え動作を行わせるよう、複数の前記バルブを制御する。
【0032】
上記(13)の方法によれば、i番目の風車翼についての油入替え動作の完了後に、(i+1)番目の風車翼の油入替え動作を行うことで、ピッチ油圧系統の暖機中において風車ロータに生じる空力トルクを確実に低減することができる。
【0033】
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)又は(13)の方法において、
前記バルブは、
前記油圧アクチュエータの各々と前記第1油圧ポンプとの間に設けられた比例弁と、
前記油圧アクチュエータの各々と前記第1タンクとの間に設けられた危急電磁弁と、
を含み、
前記バルブを制御するステップでは、
各々の前記風車翼について前記油圧アクチュエータに前記油入替え動作を行わせるとき、前記ピッチ角を前記フェザー側から前記ファイン側に動かすよう前記比例弁を開くように制御した後、
前記ファイン側から前記フェザー側に前記ピッチ角を戻すよう前記危急電磁弁を開くように制御する。
【0034】
上記(14)の方法によれば、各風車翼の油入替え動作を実施する際、ピッチ角をファイン側に動かすときにピッチ油圧系統のうち比例弁を含む油圧ラインに制御油が流れ、ピッチ角をフェザー側に動かすときにピッチ油圧系統のうち危急電磁弁を含む油圧ラインに制御油が流れる。こうして、ピッチ油圧系統の広範囲な油圧ラインに制御油を流すことで、ピッチ油圧系統における制御油の油温を効果的に均一化し、ピッチ油圧系統の暖機を適切に行うことができる。
【0035】
(15)幾つかの実施形態では、上記(12)乃至(14)の何れかの方法において、
前記風車は、
前記第1油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間に一端が接続され、前記第1油圧ポンプからの前記制御油を前記第1タンクに返送するためのバイパスラインと、
前記バイパスラインに設けられたバイパス弁と、
をさらに含み、
外気温が前記風車の運転可能温度域の下限値以下である期間が規定時間継続した場合、前記風車の運転を停止して前記風車翼の各々の前記ピッチ角を前記フェザー側に移行させるよう前記バルブを制御するステップと、
前記外気温が前記風車の暖機開始温度以上である期間が規定時間継続する暖機開始条件を満たすまでの間、前記バイパス弁を開くアンロード状態のまま前記風車を待機させるステップと、
前記暖機開始条件を満たした後、前記ピッチ油圧系統を含む前記風車の各部の暖機を行うステップと、をさらに備える。
【0036】
上記(15)の方法によれば、暖機開始条件を満たすまでの間、バイパス弁を開くアンロード状態において風車を待機させるようにしたので、バイパスラインを含む循環流路内で制御油を循環させて第1タンク内の制御油の温度低下を抑制できる。これにより、暖機開始条件を満たした後、ピッチ油圧系統の暖機を容易に行うことができる。