特許第6401535号(P6401535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6401535基礎の構築に用いられるプレキャストコンクリート部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6401535
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】基礎の構築に用いられるプレキャストコンクリート部材
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20181001BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   E02D27/01 102A
   E02D27/01 101C
   E04B1/16 K
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-153630(P2014-153630)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-30952(P2016-30952A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正美
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−077616(JP,A)
【文献】 特開2006−342601(JP,A)
【文献】 特開2013−007242(JP,A)
【文献】 特開平08−041899(JP,A)
【文献】 米国特許第05433049(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造の床板及び該床板上の基礎梁からなる基礎を構築するために用いられるプレキャストコンクリート部材であって、
前記プレキャストコンクリート部材は、構築予定の前記基礎の床板の一部をなす床板部及び前記基礎梁の一部をなす基礎梁部を有し、また、前記構築予定の基礎の周縁の一部を規定し、
前記プレキャストコンクリート部材の床板部は、前記基礎梁部に相対して配置される型枠を支持するための少なくとも1つの支持金具を備え、
前記プレキャストコンクリート部材の基礎梁部は、前記基礎梁の梁幅より小さい寸法の厚さを有する、プレキャストコンクリート部材。
【請求項2】
鉄筋コンクリート造の床板及び該床板上の基礎梁からなり、また、複数の直線部及び複数のコーナ部からなる周縁を有する基礎を構築するために用いられる第1のプレキャストコンクリート部材及び第2のプレキャストコンクリート部材であって、
前記第1のプレキャストコンクリート部材及び前記第2のプレキャストコンクリート部材は、構築予定の前記基礎の床板の一部をなす床板部及び前記基礎梁の一部をなす基礎梁部をそれぞれ有し、また、前記構築予定の基礎の周縁の直線部の一部及び各コーナ部をそれぞれ規定し、
前記第1のプレキャストコンクリート部材の床板部は、その基礎梁部に相対して配置される型枠を支持するための少なくとも1つの支持金具を備え、
前記第1のプレキャストコンクリート部材の基礎梁部は、前記基礎梁の梁幅より小さい寸法の厚さを有する板体からなる、第1のプレキャストコンクリート部材及び第2のプレキャストコンクリート部材。
【請求項3】
第1及び第2の両プレキャストコンクリート部材の床板部と、前記第1及び第2の両プレキャストコンクリート部材の基礎梁部とは、それぞれ、構築予定の前記基礎の床板及び基礎梁を形成するために打設されるコンクリートの型枠をなす、請求項に記載の第1のプレキャストコンクリート部材及び第2のプレキャストコンクリート部材。
【請求項4】
前記第1のプレキャスト部材の基礎梁部は、該基礎梁部を貫通するセパレータ用の複数のねじ穴を有する、請求項に記載の第1のプレキャストコンクリート部材及び第2のプレキャストコンクリート部材。
【請求項5】
前記第2のプレキャストコンクリート部材の基礎梁部は、山形に折れ曲がる板状体からなる、請求項2〜のいずれか1項に記載の第1のプレキャストコンクリート部材及び第2のプレキャストコンクリート部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート造の建築物を支える鉄筋コンクリート造の基礎の一部として用いられるプレキャストコンクリート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート造の基礎の構築において、地盤上への配筋及びコンクリートの打設を経て形成された床板の上に基礎梁を形成するために設置される型枠の一部をプレキャストコンクリート部材(PC部材)で構成し、また、該PC部材を前記基礎梁の一部とすることが提案されている。前記PC部材の使用は、前記基礎の構築における型枠工事や鉄筋工事の削減及びこれに伴う工期の短縮に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−41899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の提案にあっては、前記基礎梁を形成するために用いられるPC部材の設置は、前記床板形成のために打設されたコンクリートの硬化を待って行わねばならず、この点において、基礎の構築に要する工期を短縮する上で十分でない。
【0005】
本発明の目的は、鉄筋コンクリート造の基礎の構築に要する工期のより一層の短縮に寄与するプレキャストコンクリート部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、床板及び該床板上の基礎梁からなる鉄筋コンクリート造の基礎を構築するために用いられるプレキャストコンクリート部材(PC部材)に係り、該PC部材は構築予定の前記基礎の床板の一部をなす床板部及び前記基礎梁の一部をなす基礎梁部を有し、前記構築予定の基礎の周縁の一部を規定する。
【0007】
本発明によれば、前記PC部材が、構築予定の基礎の床板の一部及び基礎梁の一部をそれぞれ構成する床板部及び基礎梁部を有し、前記構築予定の基礎の周縁の一部を規定するものであることから、複数の前記PC部材を前記構築予定の基礎の周縁上に配置することにより、前記基礎の周縁と該周縁を含む環状の周縁部を形成し、また、前記複数のPC部材が取り巻く空間、すなわち、前記複数のPC部材の床板部が取り巻く下部空間と、基礎梁部が取り巻く上部空間とを形成することができる。上下各部空間への所要の配筋及び型枠の配置後、前記複数のPC部材を撤去不要の型枠として、前記空間にコンクリートを打設することにより、前記周縁部に連なる前記基礎の残部である中央部を一時に形成することができる。このことから、前記基礎の構築に当たり、構築予定の基礎の周縁に沿っての型枠の設置及び撤去の作業を不要とすることができる。また、前記基礎の周縁部は前記複数のPC部材で構成され、前記中央部はコンクリートによる同時成型が可能であることから、前記基礎の構築において、該基礎における基礎梁の形成に先行する床板の形成のためのコンクリートの打設を行い、また、打設コンクリートの硬化を待つ必要がない。これらのことから、前記基礎の構築に要する工期を大幅に短縮することができる。
【0008】
また、基礎の周縁を規定する前記PC部材は、前記周縁以外の他の部分を規定するものとする場合と比べて、その規格化及び大量生産化を図り易い。したがって、また、前記PC部材の使用は、前記基礎の構築に要するコストの低減に寄与する。さらに、前記PC部材の床板部は、その基礎梁部に相対して配置される型枠を支持するための少なくとも1つの支持金具を備え、また、前記プレキャストコンクリート部材の基礎梁部は、前記基礎梁の梁幅より小さい寸法の厚さを有する。これによれば、前記基礎梁部と前記支持金具に支持される型枠との間にコンクリートを打設することができ、これにより、前記基礎梁の一部を形成することができる。
【0009】
前記基礎が複数の直線部と複数のコーナ部とからなる例えば矩形の周縁を有する場合にあっては、前記PC部材について、前記基礎の周縁の直線部の一部分を規定するもの(第1のPC部材)と、前記周縁のコーナ部を規定するもの(第2のPC部材)との二種類からなるものとすることができる。第1及び第2の両プレキャストコンクリート部材の床板部と、前記第1及び第2の両プレキャストコンクリート部材の基礎梁部とは、それぞれ、構築予定の前記基礎の床板及び基礎梁を形成するために打設されるコンクリートの撤去不要の型枠として利用される。
【0010】
前記第1のPC部材については、その床板部が、その基礎梁部に相対して配置される型枠を支持するための少なくとも1つの支持金具を備え、また、前記第1のPC部材の基礎梁部が、前記基礎梁の梁幅より小さい寸法の厚さを有する板体からなる。これによれば、前記板体からなる基礎梁部と前記支持金具に支持される型枠との間にコンクリートを打設することができ、これにより前記基礎梁部の厚さを前記基礎梁の梁幅にまで実質的に増大させることができる。
【0011】
さらに、前記第1のPC部材は、その基礎梁部を貫通するセパレータ用の複数のねじ穴を有するものとすることができる。これによれば、前記支持金具に支持される型枠と前記基礎梁部との相互間隔を維持するために用いられるセパレータの自由端部を前記ねじ穴にねじ込みことができ、これにより前記セパレータを前記基礎梁部に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】構築予定の基礎の周縁に沿って配置された複数のPC部材(第1のPC部材)及びコーナ用PC部材(第2のPC部材)の概略的な平面図である。
図2】PC部材(第1のPC部材)の斜視図である。
図3】コーナ用のPC部材(第2のPC部材)の斜視図である。
図4】相対して配置された2つのPC部材(第1のPC部材)の側面図である。
図5】相対して配置された2つのPC部材(第1のPC部材)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すると、鉄筋コンクリート造の基礎(図示せず)を構築するために用いられる複数のプレキャストコンクリート部材(PC部材)が全体に符号10及び符号12で示されている。
【0014】
前記基礎は、鉄筋コンクリート構造や鉄骨鉄筋コンクリート構造の建物であるコンクリート造の建物(図示せず)の支持を目的として構築され、地盤E上に形成される床板14(図4、5参照)と、該床板上に形成される格子状の基礎梁16(図4、5参照)とからなる。前記基礎は矩形の周縁を有し、該周縁は矩形の四辺に沿ってそれぞれ伸びる4つの直線部と、矩形の四隅にそれぞれ位置する4つのコーナ部とからなる。
【0015】
前記基礎の周縁は、前記矩形の四辺のそれぞれに沿って複数のPC部材(第1のPC部材)10を互いに接するように配置し、また、前記矩形の四隅のそれぞれに1つのPC部材(第2のPC部材)12をその両隣の2つの第1のPC部材に接するように配置することにより形成される。したがって、第1及び第2の各PC部材10、12は前記基礎の周縁の一部を規定する。
【0016】
前記基礎の周縁を規定する複数の第1及び第2のPC部材10、12は、また、前記基礎を構成する環状の周縁部Pをなす。
【0017】
第1のPC部材10は、図2に示すように、床板部18と該床板部から上方へ伸びる基礎梁部20とを有する。床板部18及び基礎梁部20は、それぞれ、構築予定の前記基礎の床板14の一部及び基礎梁16の一部をなす。図3に示すように、第2のPC部材12も、また、床板部22と該床板部から上方へ伸びる基礎梁部24とを有し、床板部22及び基礎梁部24は、それぞれ、構築予定の前記基礎の床板14の一部及び基礎梁16の一部をなす。
【0018】
図示の例にあっては、第1のPC部材10の床板部18と、第2のPC部材12の床板部22とは、共に、直方体の外形を有するブロック体からなる(以下、説明の便宜上、ブロック体18、ブロック体22ということがある。)。第1及び第2の各PC部材10、12のブロック体18、22は、同一の矩形の横断面形状を有し、前者のブロック体18は後者のブロック体22より大きい長さ寸法を有する。
【0019】
第1のPC部材10は、そのブロック体18の長さ寸法を規定するブロック体18の両端面18aを前記矩形の各辺の伸長方向に向けて配置される。このとき、ブロック体18の互いに相対する一対の側面18b、18cはそれぞれ前記矩形の内方及び外方に面する。
【0020】
また、第1のPC部材10の基礎梁部20は矩形の立面形状を有する板体からなる(以下、説明の便宜上、板体20ということがある。)。板体20は、形成予定の基礎梁16における梁せいに相当する高さ寸法と、ブロック体18の長さ寸法に等しい幅寸法と、形成予定の基礎梁16の梁幅より小さい厚さ寸法とを有する。
【0021】
板体20の前記幅寸法を規定する板体20の互いに相対する両側面20a、20aのそれぞれと、ブロック体18の各端面18aとは同一の立面内にある。板体20の前記厚さ寸法を規定する板体20の表裏面20b、20c間の距離は、ブロック体18の両側面18b、18c間の距離より小さい。
【0022】
板体20の表面20b及び裏面20cは、それぞれ、第1のPC部材10が前記矩形の各辺上に配置されるとき、前記矩形の内方及び外方に面する。第1のPC部材10の配置時に前記矩形の外方に面することとなる板体20の裏面20cと、同様に外方に面することとなるブロック体18の側面18cとは同一の立面内にある。なお、以下の説明において、ブロック体18の各端面18a及び板体20の各側面20aを第1のPC部材10の側面Aと称する。
【0023】
第1のPC部材10の側面Aは、複数の第1のPC部材10が前記矩形の各辺上に配置されるときの互いに隣接する2つの第1のPC部材10同士の当接面をなす。
【0024】
他方、第2のPC部材12のブロック体22は、その長さ寸法を規定する両端面22a1、22a2と、これらの両端面にそれぞれ連なり互いに相対する一対の側面22b、22cとを有する。第2のPC部材12が前記矩形の各隅に配置されるとき、ブロック体22の側面22c及びこれに連なる端面22a2が前記矩形の外方に面する。
【0025】
第2のPC部材12の基礎梁部24は、山形(図示の例では直角)に折れ曲がる板状体(以下、説明の便宜上、板状体24ということがある。)からなる。山形の板状体24は、第1のPC部材10の板体20におけると同様に、形成予定の基礎梁16における梁せいと同じ大きさの高さ寸法を有する。また、板状体24は、第1のPC部材10の板体20におけると同じ厚さ寸法を有する。
【0026】
山形の板状体24は、互いに直交する両側面24a1、24a2と、その厚さ寸法を規定する、山形に折れ曲がる表裏面24b、24cとを有する。
【0027】
板状体24の一方の側面24a1はブロック体22の一方の端面22a1に連なり、両面24a1、22a1は同一の立面内にある。また、他方の側面24a2はブロック体22の前記他方の側面22bに連なり、両面24a2、22bは同一の立面内にある。なお、以下の説明において、両面24a1、22a1と、両面24a2、22bとを、それぞれ、第2のPC部材12の側面Bと称する。
【0028】
板状体24の山形の裏面24cはブロック体22の端面22a2及びこれに直交する側面22cの双方に連なり、これらの面24c、22a2、22cは同一の山形の立面内にある。
【0029】
第2のPC部材12が前記矩形の各隅に配置されるとき、山形の表面24bと、裏面24c及びこれに連なるブロック体22の面22a2、22cとが、それぞれ、前記矩形の内方と外方とに面する。このとき、第2のPC部材12の両側面Bが、それぞれ、前記矩形の各辺上に配置され第2のPC部材12に隣接する2つの第1のPC部材10の側面Aに当接する。
【0030】
図示の例に係る第2のPC部材12にあっては、そのブロック体22が矩形の平面形状を有するところ、この例に代えて、山形に折れ曲がる平面形状を有するもの(図示せず)とすることができる。この例の第2のPC部材のブロック体は、図示の第2のPC部材12のブロック体22の端面22a1及び側面22bに相当する2つの面、すなわち前記山形の両先端にそれぞれ位置する2つの面を有する。また、この例の第2のPC部材の山形の板状体は、図示の第2のPC部材12の板状体24の両側面24a1、24a2にそれぞれ相当する両側面を有する。これらの両側面は、前記山形のブロック体の前記両面にそれぞれ連なり、図示の第2のPC部材12における両側面Bに相当する両側面を規定する。さらに、この例の第2のPC部材のブロック体は、図示の第2のPC部材12のブロック体22の頂面22dに相当する山形の頂面を有する。このブロック体にはその山形の頂面から上方へ伸びる後記定着筋34に相当する1乃至複数の定着筋、後記第1のPC部材10のブロック体18の支持金具26に相当する支持金具等を設けることができる。さらに、この例の第2のPC部材の山形に伸びる前記ブロック体には、該ブロック体から横方向へ水平に伸びる、第1のPC部材10のブロック体18の定着筋32に相当する複数の定着筋を設けることができる。
【0031】
前記矩形の各辺上及び各隅にそれぞれ配置された所要数の第1のPC部材10及び4つの第2のPC部材12は、前記基礎の一部をなす環状の周縁部Pを形成する。周縁部Pは、該周縁部に取り囲まれた矩形の平面形状を有する空間を規定する。前記空間は、複数の第1及び第2のPC部材10,12の床板部18,22及び基礎梁部20,24がそれぞれ規定する下部空間及び上部空間からなる。前記下部空間に所要の配筋(図示せず)を施し、また、前記上部空間に所要の型枠Fを配置しまた所要の配筋(図示せず)を施した後、前記空間にコンクリートを打設することにより、周縁部Pに接合しこれに連なる、前記基礎の残部である中間部C(図1参照)を形成することができる。このとき、周縁部Pを構成する前記所要数の第1及び第2のPC部材10,12は前記空間に打設されるコンクリートのための脱型不要の型枠をなす。
【0032】
前記上部空間に配置される型枠Fについては、図1に示すように、矩形をなすように配置された4つの型枠Fを一組として、複数組の型枠Fが、形成予定の基礎梁16の梁幅に相当する間隔をおいて配置される。
【0033】
図示の例においては、各組の型枠Fの内の1つ又は互いに直交する2つの型枠(以下、型枠F1という。)が周縁部Pに沿ってこれと平行に配置されている。1つの型枠F1は、第1のPC部材10の板体20との間に所定の間隔を置いて、第1のPC部材10のブロック体18上に配置されている。また、直交する2つの型枠F1は、それぞれ、第1のPC部材10の板体20及び第2のPC部材12の板状体24との間に所定の間隔を置いて、第1のPC部材10のブロック体18及び第2のPC部材12のブロック体22の双方の上に配置されている。これによれば、板体20と1つの型枠F1との間、及び、板体20及び板状体24と2つの型枠F1との間にそれぞれ打設されるコンクリートにより、板体20及び板状体24がそれぞれ所定の梁幅を有する基礎梁に形成される。
【0034】
板体20及び板状体24は、形成予定の基礎梁16の梁幅より小さい厚さ寸法を有する図示の例に代えて、基礎梁16の梁幅と同じ大きさの厚さ寸法を有するものに設定することが可能である。但し、図示の例におけるように前記梁幅より小さい厚さ寸法を有するものに設定するときは、第1及び第2の各PC部材10、12の重量の低減が可能であり、これにより第1及び第2の各PC部材10、12の運搬、取扱い等をより容易にすることができる。
【0035】
図示の例においては、型枠F1の支持のために、図2に示すように、第1のPC部材10のブロック体18の頂面18d上に板体20に相対する2つの支持金具26が設けられている。各支持金具26は、例えばL形の横断面形状(図2)や上方に向けて開放するコ字形の横断面形状(図4図5)を有するものとすることができる。
【0036】
前記L形の横断面形状の支持金具26は、ブロック体18の頂面18d上におけるその位置決めのために、ブロック体18の両側面18b、18cの一方から他方に向けて移動可能とされ、移動後の位置にて固定可能とされている。図示の例においては、このために、各支持金具26の一片部に、ブロック体18の両側面18b、18cの一方から他方に向けて伸びる互いに平行な2つの長穴28が設けられ、各支持金具26はこれらの長穴28に通されるボルト(図示せず)を介してブロック体18に固定される。型枠F1は、各支持金具26の他片部に設けられたねじ穴(図示せず)に螺合可能のねじ部材(図示せず)を用いて、各支持金具26に固定することができる。これによれば、支持金具26により支持される型枠F1と第1及び第2の各PC部材10、12の板体20及び板状体24との間隔を、所要の梁幅の大きさに適合するように、調整することができる。
【0037】
また、コ字形の支持金具26は、その底部に設けられた前記したと同様の2つの長穴(図示せず)に通される前記ボルトを介して、ブロック体18に固定される。型枠F1はコ字形の支持金具26が規定する溝にこれを差し込むことにより支持される。なお、L形又はコ字形の支持金具26の数量は図示の例に代えて1又は3以上とすることができる。
【0038】
好ましくは、第1のPC部材10のブロック体18が複数の定着筋30、32を有する。複数の定着筋30は板体20と支持金具26との間にあって、ブロック体18の上方、より詳細にはブロック体18の頂面18dからその上方に伸びている。また、複数の定着筋32は、ブロック体18の側方、より詳細には、ブロック体18の側面18bから前記矩形の内方側へ水平に伸びている。
【0039】
上方に伸びる定着筋30は、第1のPC部材10の板体20と支持金具26に支持された型枠F1との間に打設される前記コンクリートに埋設され、これに定着する。これにより、板体20と硬化後の前記打設コンクリートとの相互接合及びこれらの一体性がより強固にされる。また、側方へ伸びる定着筋32は、前記下部空間に打設されるコンクリートに埋設され、これに定着する。これによれば、ブロック体18と前記打設コンクリートとの相互接合及びこれらの一体性がより強固にされる。
【0040】
さらに好ましくは、第2のPC部材12のブロック体22が少なくとも1つの定着筋34を有する。定着筋34はブロック体22の上方、より詳細にはブロック体22の頂面22dのほぼ中央部から上方へ伸びている。定着筋34は、第1のPC部材10の定着筋30と同様、板状体24と支持金具26に支持された型枠F1との間に打設されたコンクリートに埋設され、これに定着する。これによれば、板状体24と前記打設コンクリートとの相互接合及びこれらの一体性がより強固にされる。
【0041】
さらに、好ましくは、第1のPC部材10は、その板体20を貫通するセパレータ36(図4及び図5参照)用の複数のねじ穴38図2参照)を有する。これによれば、支持金具26に支持される型枠F1と板体20との相互間隔を維持するために用いられ型枠F1を貫通して伸びる前記セパレータの自由端部をねじ穴38にねじ込み、セパレータ36を板体20に取り付けることができる。
【0042】
第1及び第2のPC部材10,12を使用する前記基礎の構築においては、前記基礎の周縁部Pを構成する複数の第1及び第2のPC部材10、12を脱型不要の型枠として、周縁部Pに連なる中央部Cを形成することができ、また、前記上部空間からのコンクリートの打設により、中央部Cを構成する床板14の残部及び基礎梁16の残部を一時に形成することができる。
【0043】
前記した例においては、前記基礎の構築のために、第1及び第2のPC部材10,12を使用したが、これに代えて、第2のPC部材12を使用することなしに、第1のPC部材10のみを使用することができる。第1のPC部材10のみを使用する例にあっては、前記矩形の四辺上に配置される複数の第1のPC部材10のみにより前記基礎の周縁部Pと前記空間とが形成される。但し、前記矩形の各隅に配置された第2のPC部材12が存在しないため、第2のPC部材12に代わる任意の型枠を配置する。これにより、第2のPC部材12が占めていた上端解放の空間を形成し、ここにコンクリートを打設することにより周縁部Pのコーナ部とすることができる。
【0044】
また、第1及び第2の両PC部材10、12又は第1のPC部材10のみを使用して構築される前記基礎は、前記矩形の平面形状を有するもののほか、例えばその周縁がクランク形に折れ曲がって伸びる部分を含むものであってもよい。このときには、前記クランク形を構成する各直線部に1又は複数の第1のPC部材10が配置され、また、前記クランク形を構成する各折れ曲がり部に第2のPC部材12が配置される。前記クランク形の折れ曲がり部への第2のPC部材12の配置を省略し、この代わりに、前記したと同様の型枠を配置してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 第1のPC部材
12 第2のPC部材
14 基礎の床板
16 基礎の基礎梁
18 第1のPC部材の床板部
20 第1のPC部材の基礎梁部
22 第2のPC部材の床板部
24 第2のPC部材の基礎梁部
26 支持金具
30,32,34 定着筋
36 セパレータ
38 ねじ穴
図1
図2
図3
図4
図5