(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6401775
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】音響的ライントレーシングシステム、及び流体移送システム用の方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20181001BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20181001BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
A61M5/168 540
A61M5/142
A61M5/172
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-501942(P2016-501942)
(86)(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公表番号】特表2016-518157(P2016-518157A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】US2014025685
(87)【国際公開番号】WO2014151415
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年2月28日
(31)【優先権主張番号】13/837,417
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(73)【特許権者】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スレピカ, ジェイムス, スコット
(72)【発明者】
【氏名】デュダー, トーマス エドワード
【審査官】
芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0107517(US,A1)
【文献】
国際公開第02/021120(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/14 − 5/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体移送システムチュービングライン(16)
のトレーシングのための音響的ライントレーシングシステムであって、このトレーシングシステムは、
インフュージョンポンプ(18)と、
動作可能にチュービングラインに接続でき、かつ振動信号を受信するよう構成された音響受信機(22)を含んでなり、この音響受信機は、
振動信号に起因するチュービングライン表面の振動を検知するよう構成された振動センサ(24)と、
前記チュービングラインに接続可能で、かつ音響受信機と電気的に結合され、前記振動センサがチュービングラインの振動信号を検知したときに、チュービングラインに音響振動を発生するように構成された信号送信機(30)と、を含み、
前記インフュージョンポンプによる振動信号の減衰を減ずるために、前記音響受信機(22)は前記インフュージョンポンプの上流に配置され、前記信号送信機(30)は前記インフュージョンポンプの下流に配置されることを特徴とする音響的ライントレーシングシステム。
【請求項2】
前記振動センサ(24)は圧電素子であることを特徴とする請求項1記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項3】
前記振動センサ(24)はマイクロホンであることを特徴とする請求項1記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項4】
発光ダイオードであるインジケータ(26)をさらに含み、前記ダイオードは振動センサが振動信号を検知した時に発光することを特徴とする請求項1記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項5】
スピーカであるインジケータ(26)をさらに含み、前記スピーカは振動センサが振動信号を検知した時に可聴発信音を発することを特徴とする請求項1記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項6】
前記信号送信機(30)は、超音波振動を発生するよう構成された圧電素子を含むことを特徴とする請求項1記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項7】
前記音響受信機(22)は、インフュージョンポンプの一部として一体的に形成されていることを特徴とする請求項1記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項8】
前記インフュージョンポンプの一部として一体的に形成され、ポンプの下流側に配置された別の音響受信機をさらに含む、ことを特徴とする請求項7記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項9】
前記信号送信機(30)は、振動信号の一つ又はより多くの特徴を前記受信機へ通信するよう構成されることを特徴とする請求項1記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項10】
前記一つ又はより多くの特徴は、周波数、周波数範囲、振幅、振幅範囲、信号のタイミング、特有の信号パターンのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項9記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項11】
インフュージョンシステムのチュービングセットの連続性を確認するための音響的ライントレーシングシステムであって、このライントレーシングシステムは、
インフュージョンポンプ(18)、
チュービングラインに接続可能で、振動信号を受信するよう構成された音響受信機(22)、この音響受信機は、前記チュービングラインに接触するよう配置され、振動信号に起因するチュービングライン表面の振動を検知するよう構成された振動センサを含み、
動作可能に前記チュービングセットに接触し、前記音響受信機と電気的に結合される信号送信機(30)、この信号送信機は、センサが振動信号を検知した時、チュービングラインに音響振動を発生するよう構成され、
前記音響受信機と前記信号送信機は、インフュージョンポンプによる振動信号の減衰を減ずるためにインフュージョンポンプにより隔てられていることを特徴とする音響的ライントレーシングシステム。
【請求項12】
前記振動センサ(24)は圧電素子であることを特徴とする請求項11記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項13】
前記振動センサ(24)はマイクロホンであることを特徴とする請求項11記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項14】
発光ダイオードであるインジケータ(26)をさらに含み、前記ダイオードは振動センサが振動信号を検知した時に発光することを特徴とする請求項11記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項15】
前記信号送信機(30)は、超音波振動を発生するよう構成された圧電素子を含むことを特徴とする請求項11記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項16】
前記音響受信機(22)と前記信号送信機(30)は、インフュージョンポンプ(18)により隔てられていることを特徴とする、請求項11記載の音響的ライントレーシングシステム。
【請求項17】
次のステップを含む、チュービングセットのチュービングラインの連続性を確認する方法であって、
チュービングセットに沿った第一の位置においてチュービングラインと接触し、振動信号を受信するように構成される音響受信機を供給するステップ、前記音響受信機は、
動作可能にチュービングラインに接触しチュービングラインにおける振動を検知することのできる振動センサを含み、
動作可能にチュービングセットに接触し、前記音響受信機と電気的に結合される信号送信機を供給するステップ、前記信号送信機は、前記振動センサがチュービングラインの振動信号を検知したときに、チュービングラインに音響振動を発生するように構成され、
前記音響受信機はインフュージョンポンプの上流に配置され、前記信号送信機は、インフュージョンポンプによる振動信号の減衰を減ずるために、前記インフュージョンポンプの下流に配置されることを特徴とするチュービングセットの連続性を確認する方法。
【請求項18】
前記信号送信機は第二の位置においてチュービングセットと接触し、前記送信機が前記振動信号を誘起するステップを遂行することを特徴とする請求項17記載のチュービングセットの連続性検出方法。
【請求項19】
請求項18記載のチュービングセットの連続性検出方法であって、さらに、
前記送信機からの振動信号の一つ又はより多くの特徴を前記受信機へ通信するステップと、
一つ又はより多くの特徴を傾聴(listening)するステップの間に受信した振動信号と比較するステップとを含み、
もし前記受信した信号が前記一つ又はより多くの通信された特徴に合致すれば、チュービングセットが連続していると確認することを特徴とする請求項18記載のチュービングセットの連続性検出方法。
【請求項20】
前記誘起するステップは、臨床家がチュービングセットをタップする(tapping)ことによる、手動の振動信号の誘起を含むことを特徴とする請求項18記載のチュービングセットの連続性検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のチュービングセットの端から端までのトレーシング(tracing)のためのシステム及び方法に関し、特に、流体移送用のチュービングシステムを音響的振動(acoustic vibration)を使ってトレースするシステム及び方法、さらに特定すれば、静脈内インフュージョンチュービング(infusion tubing)のような流体移送のための医療産業において使用される、音響的振動を用いたトレーシングチュービングシステムのためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者インフュージョンシステム、自動コンパウンダー(automatic compounder)などの流体移送システムを通した投薬管理における誤りは、誤接続を含む多くの原因から起きる。従って、このような誤りの可能性を減らすために、専門ガイドラインや標準操作手順は、ライントレーシング(line tracing)としても知られる「ライン・マネージメント(line management)」を勤務のシフト中に何回も行うための看護師や薬剤師などの臨床家を必要としている。自動コンパウンダーの場合、ライン・マネージメントは、各医薬源の容器がチュービングラインを通して混合マニホルドとポンプの正しい入力へと経路を決められているか確認することを含む。患者インフュージョンシステムの場合、ライン・マネージメントは、各医薬源の容器、典型的にはバッグ、ボトル、注射器が、チュービングラインを通して正しいカテーテルへと経路を決められているか、かつ(インフュージョンポンプが使用されていれば)チュービングラインは正しいポンプの管に結合されているか確認することを含む。この動作はさらに異なる薬剤や異なる流量を含む二つかそれ以上のチュービングライン部分を結合することが安全か、確認することを含む。例として、看護師その他の臨床家は、勤務シフトを開始した時、患者を他の機関や病院の他の場所又は他の臨床家から受け継いだ時、かつ静脈内投薬の直前には、各患者のライン・マネージメントを行うであろう。きめ細かいライン・マネージメント手順を繰り返し行うことは、臨床家に時間の負荷を負わせ、特に患者の全体的なインフュージョンチュービングシステムの複雑さが増したとき、誤りをしがちになる。すなわち、多数のチュービングセット、投薬、分岐点、アクセスポート、ポンプ流路、カテーテルが、ライン・マネージメントを行う時間を増大し、ライン・マネージメントにおけるさらなる誤りの可能性へ導いてしまう。
【0003】
ライン・マネージメントを推進するため、臨床家はしばしばインフュージョンセットのチュービングシステムの全てにわたる様々な箇所に、手でラベルを付ける。一般的に、ラベル付けは大雑把であり、チュービングラインの周りを包む医療テープ等の、手に持った材料を使って、薬剤名等の情報を表示したラベルを付けていく。このラベル付けは、システムの全体にわたって数箇所で繰り返される。例えば、ラベルはチュービングセットの針端部、カテーテル接続部、各アクセスポートと分岐点、ローラークランプとスライドクランプ、カテーテル、ポンプ流路そのもの、薬剤容器に付けられる。ラベルを付けるとき、臨床家は彼又は彼女の手をチュービングラインに沿ってスライドさせ、第一のチューブ端から第二のチューブ端へ進め、チュービングラインの長さの望む箇所にラベルを付ける。
【0004】
ライン・マネージメントシステムは、新たな薬剤容器とチュービングラインを連結する前、又は薬剤を既存のアクセスポートへ注入する前に、正しいライン、カテーテル、コネクタを特定することができなくてはならない。さらにこのシステムは、使用者がチュービングライン(tubing line)をポンプに取り付ける前に、容器とそれに対応するラインとポンプ接合部を正しく特定できるようにしなくてはならない。このシステムはまた、容器、チュービングライン、ポンプ、カテーテル間の、明確で物理的な目に見える接続が保たれるようにしなくてはならない。ライン・マネージメントプロセスを推進するため提案されたシステムは、インフュージョンシステムに使われるチュービングセットの色分け、チュービングをガラスやプラスチックの光ファイバーに似た光学的導波管として用いること、チュービングの壁に埋め込まれた導電ワイヤを用いることを含む。これらの各解決法は、いくらかの利点はあるが、各提案の主な不利点は、特別なチュービングセットの開発を必要とすることである。
【0005】
従って、新たなチュービングセットの開発を必要としない、正確なライン・マネージメントを推進するシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
改良された音響的ライントレーシングシステムは、この必要性に対処するものである。音響センサシステムは、特別なチュービングセットの開発を必要とせず、正確なライントレーシングを可能とする。従って、音響的ライントレーシングシステムに既知の物理的特徴を有する既存のチュービングセットを用いることができる。
【0007】
第一の態様で、流体移送システムのチュービングラインをトレーシングするための音響的ライントレーシングシステムは、動作可能にチュービングラインに接続でき、かつ振動信号を受信するよう構成された音響受信機を含む。音響受信機はチュービングラインに接触するよう配置され、振動信号に起因するチュービングライン表面の振動を検知するよう構成された振動センサ、振動センサが振動信号を検知した時に聴覚的・視覚的の少なくとも一つの合図を発生するインジケータを含む。
【0008】
別の態様では、インフュージョンシステムのチュービングセットの連続性を確認するための音響的ライントレーシングシステムは、チュービングラインに接続可能で振動信号を受信するよう構成された第一の音響受信機を含む。第一の音響受信機は、チュービングラインに接触するよう配置され、振動信号に起因するチュービングライン表面の振動を検知するよう構成された振動センサを有する。信号送信機は、動作可能にチュービングラインに接触し、第一の音響受信機と電気的に結合される。信号送信機は、センサが振動信号を検知した時、チュービングラインに音響振動を発生するよう構成されている。第二の音響受信機は、チュービングラインに接続可能とされ、かつ信号送信機で発生された音響振動を検知するよう構成される。この第二の音響受信機は、チュービングラインに接触するよう配置され、音響振動に起因するチュービングライン表面の振動を検知するよう構成されたセンサと、振動センサが振動を検知した時に聴覚的・視覚的の少なくとも一つの合図を発生するインジケータを含む。第一の音響受信機と信号送信機は、少なくとも一つの振動減衰部材により隔てられている。
【0009】
さらに別の態様では、チュービングセットの連続性を確認するためにチュービングセットをトレーシングする方法は、チュービングセットに沿った第一の位置でチュービングセットに接触する音響受信機を供給するステップを含む。音響受信機は、チュービングセットに接触し、チュービングセットの振動を検知できるよう動作可能な振動センサと、振動センサが振動を検知した時に聴覚的・視覚的の少なくとも一つの合図を発生するインジケータを有する。この方法はさらに、チュービングセットに沿った第二の位置で振動信号を誘起するステップと、与えられた音響受信機を用いて振動信号がチュービングセットに沿った第一の位置で受信されたか否かを検知するステップを含む。この方法はさらに、第一の位置と第二の位置間でチュービングセットが連続しているかを確認するステップ−もし検知するステップで振動センサが振動信号を検知すれば、チュービングセットが連続していることが確認する−を有する。インジケータは、チュービングセットが連続していることが確認された時に、聴覚的・視覚的の少なくとも一つの合図を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に基づく着脱可能な音響受信機を含むインフュージョンシステムである。
【
図2】本発明の一実施形態に基づくインフュージョンポンプと着脱可能な音響受信機を含むインフュージョンシステムである。
【
図4】
図3の音響受信機が受信する振動音響信号のグラフである。
【
図5】
図2のインフュージョンシステムと、リレーを含む着脱可能な音響チュービングライン受信機である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1、2を参照すると、インフュージョンシステム10としての流体移送システムの概略が示される。第1図、第2図は、患者へのインフュージョンシステム10としての流体移送システムを示すが、当業者であれば自動コンパウンダーシステムなどの、他の流体移送システムも本発明の範囲内にあることがわかるであろう。インフュージョンシステム10は、薬剤容器12、患者に接続するためのカテーテル14、薬剤容器12とカテーテル14間の流体連結をもたらすチュービングセット16を含む。インフュージョンシステム10は、第1図に示すような、いわゆる重力送りのポンプなしシステムとすることができ、また任意選択により、第2図に示すように、薬剤容器12からチュービングセット16とカテーテル14を通して患者へ薬剤を送り込むインフュージョンポンプ18を含むこともできる。第1図、第2図に示すシステム10は、明確にするために、一つの薬剤を供給する装置を含んでいるが、当業者であればインフュージョンシステムは、複数の薬剤容器、カテーテル、ポンプ、チュービングセットを含みうることがわかるであろう。
【0012】
薬剤容器12は、例えばバッグ、ボトル、注射器、又はその他の、液体薬剤を入れるために使われる標準的容器とすることができる。どんな容器を用いることができるかに関し、特に制約はない。ドリップチャンバ20は、好ましくは薬剤容器12の下流に直接配置される。ドリップチャンバ20は、薬剤容器12内にある液体から気体を分離させることができ、従って空気塞栓症を防ぐことに役立ち、また臨床家が与えられた時間内にドリップチャンバ20に入る薬剤の滴下数をカウントできることにより、臨床家が薬剤の流量を推定することに役立つ。
【0013】
カテーテル14は、患者用のどんな標準的装置であってもよい。カテーテル14は、例えば末梢静脈に挿入された短期カテーテル、中心静脈カテーテル、又は当業者に知られた他のカテーテルであってもよい。同様に、チュービングセット16は、薬剤容器12からカテーテル14を接続するのに使われるどんな標準的チュービングセットであってもよい。
【0014】
図2に示すように、インフュージョンポンプ18は、静脈内に液体を投与する、既知のどんなポンプでもよい。ポンプ18は、システム10を通る流量の制御に役立てるために用いられ、また、例えば時間及び/又は患者の必要性に基づきインフュージョンレートを変えるために用いることができる。ポンプ18は、ドリップチャンバ20とカテーテル14間に配置され、一つまたはそれ以上の流路を含み、各流路は、他とは異なる薬剤容器と他とは異なるチュービングセットを通して液体の流量を制御するのに使われる。
【0015】
図1、2の各々は、チュービングセット16の外側表面に接続された音響受信機22を示す。音響受信機22は、チュービングセット16を通って送信される音波を検知することのできる機器である。受信機22は、好ましくはチュービングセット16に着脱可能に固定され、臨床家が、チュービングセットの長さにわたって望ましい場所に配置することができ、かつ一つのチュービングセットから他のチュービングセットへ要望された通りに移すこともできる。第2図は分離した機器としての音響受信機22を示すが、当業者であれば、受信機が本発明の範囲から逸脱することなく、ポンプの上流側、下流側の一方又は両方に配置される一体型ポンプとしてポンプ18へ任意に組込まれうることがわかるであろう。代わりの方法として、受信機22は、任意選択によりチュービングセット16の一体部分として、薬剤容器12の近く及び/又はカテーテル14の近くに配置されるように形成される。また、代わりの方法として、受信機22は、任意選択により薬剤容器12及び/又はカテーテル14を含むインフュージョンシステム10の一体部分として、形成される。
【0016】
図3に示すように音響受信機22は、センサ24、インジケータ26、電源28を含む。振動センサなどのセンサ24は、チュービングセット16に接触するよう配置され、チュービングセット16を通って送信される音響振動信号を検知するのに使われる。好ましい実施形態では、センサ24はチュービングセット16からの振動を電気信号に変換する変換器である。例えばセンサ24は、任意選択により例えばコンタクトマイクロホンなどのマイクロホンや他の圧電素子である。
【0017】
センサ24は、センサ24が音波を検知した時に、聴覚的・視覚的・その他の表示の少なくとも一つを行うインジケータ26に、電気的に接続される。インジケータ26は、好ましくは発光ダイオードのような小さな光源、可聴発信音を出す小さなスピーカ、または臨床家が気づくことのできる信号を出すことのできる機器である。
【0018】
電源28は、受信機22に電力を供給する。電源28は、好ましくは電池のような小型の携帯用電源である。しかしながら、本発明の範囲を逸脱することなく、他の電源、例えば主電源への接続、光発電パネルなどを使うことができる。
【0019】
受信機22は、好ましくは、チュービングライン自体及び/又は、ドリップチャンバ20及び/又はアクセスポートなどの、チュービングセット16の任意の構成要素に着脱可能に接続される。代わりの方法として、受信機22は、薬剤容器12又はカテーテル14を含む、インフュージョンシステム10の他の部分に接続することができる。この接続は、例えばバネで付勢されたクランプで成される。受信機22によりチュービングセット16に及ぼされる力は、正確な読み取りができるよう、望ましくはセンサ24とチュービングセット間の安定した接触を維持するのに充分なものとなっている。しかしながら、受信機22をその位置に保持する付勢力は、チュービングセット16を塞ぐほど強くしてはならない。
【0020】
次に
図5を見ると、音響受信機22により検知された信号は、好ましくは、例えば信号送信機30−好ましくはチュービングセットに着脱可能に接続されている−により供給されている。送信機30は、好ましくは20kHz以上の周波数を持つ超音波信号の振動音響信号を出すことのできるどんな機器でもよい。好ましい実施形態では、送信機30は超音波音響振動を発生するよう構成された圧電素子を含む。送信機30は分離された機器とすることができ、または任意選択によりチュービングセット16と一体にすることができる。代わりの方法として、送信機30は、任意選択により薬剤容器12又はカテーテル14を含むインフュージョンシステム10の他の構成要素に取り付けられ、又は一体に組込むことができる。第5図に示すように、送信機30は、任意選択により一体型信号送信機18aとしてポンプ18に組み込むことができる。
図5はポンプ18の下流側に配置された一体型信号送信機18aを示すが、当業者であれば一体型信号送信機は、本発明の範囲から逸脱することなく、上流側、下流側の一方又は両方に配置できることがわかるであろう。また、代わりの方法として、ポンプ18のポンピング機構は信号送信機30とすることができる。図示された実施形態では、信号送信機30は音響受信機22から分離されているが、音響受信機22は、任意選択により音響振動信号を発生でき、これによって信号送信機/受信機又は「トランシーバ」として動作するように意図されている。さらに代わりの方法として、振動信号は、例えば使用中のチュービングセットを臨床家により例えば指又は他の道具でタップすることによって手動で発生されてもよい。振動音響信号は、チュービングセット16の対向する両端が連続していると確認されるように、好ましくは受信機22から離れた位置13に加えられる。例として、
図1は振動信号をチュービングセット16の薬剤容器12に隣接した位置13に加えることができることを示し、一方、受信機22はカテーテル14に隣接して配置され、
図2は振動信号がポンプ18から下流の位置13に加えられ、受信機22はカテーテル14に隣接して配置されることを示し、
図5は振動信号を薬剤容器12に隣接した位置13に加えられ、第一の受信機22はポンプ18から上流に配置されることを示す。
【0021】
実際には、インフュージョンマッピングの創作を支援するため、振動信号はチュービングセット16の第一の端部に供給される。信号は、任意選択により連続して又は間欠的に(つまりパルス信号)供給される。次いで音響受信機22は、振動信号が、信号送信機のチュービングラインと流体連結しているチュービングラインにあるセンサ24により検知されるまで、インフュージョンシステム10の第二の端部にある複数の候補チュービングラインの各々に体系的に接続される。
図4は、センサ24による、例えば信号送信機30又は臨床家によりチュービングセット16をタップする(tapping)ことによるパルス信号の受信を表わすグラフを示す。振動信号を受信したセンサ24に応えて、インジケータ26は臨床家に対し、信号が受信されたとの表示をする。次いで臨床家は、音響受信機22が接続されたチュービングラインセクション16は、振動信号が供給されたチュービングラインセクションと連続していることがわかる。
【0022】
次に
図2を参照すると、システム10へインフュージョンポンプ18を加えることは、音響的な連続性検出のためのさらなる複雑さを引き起こす。特にインフュージョンポンプ18は、供給された振動信号を、ポンプの上流側の信号がポンプの下流側(逆もまた同様)では正確に検知できないほど充分に減衰させる。インフュージョンポンプ18の減衰係数を調整する一つの方法は、二段階法を使い、受信機22は当初カテーテル14の近くのチュービングセット16に置かれ、振動信号が体系的にポンプ又はポンプ群(もしインフュージョンシステムに複数のポンプがあれば)の下流側の各ポンプ出力流路と関連した位置13から送信される。このことは、臨床家にどのポンプ流路がカテーテル14の近くのチュービングセット16に結合しているか確認することを可能にする。次いで振動信号が、同じ流路上のポンプ18の上流側と関連した位置13から送信され、受信機22は、信号を受信するまで、一つのチュービングシステムから薬剤容器12の近くの他のチュービングシステムへ体系的に移される。このことは、薬剤容器12からポンプ18までが連続していることを示す。このようにして、たった一つの受信機22と一つの送信機30を使って、途中にインフュージョンポンプ18があっても、薬剤容器12からカテーテル14までの連続性を完全に確立することができる。これは、信号がポンプに近い位置から上流・下流方向に送信されるので、一般的に「ポンプアウト」法と言われる。このシステムと方法は、上流・下流方向信号送信機30と関連するソフトウェアがポンプ18に組み込まれているとき、簡素化できる。このケースでは、一つの受信機22だけが臨床家により配置される必要がある。
【0023】
当業者であれば、上記にリストされたステップは、ポンプからカテーテル14までの連続性の前に、薬剤容器12からポンプ18までの連続性を確認するよう、任意選択により逆の順序でも行われることに気づくであろう。さらに、信号はカテーテル14と薬剤容器12から送信され、ポンプ18の上流・下流側で受信されるので、当業者であれば、送信機30と受信機22の位置は「ポンプイン」のワークフローを作り出すよう、取り替え可能であることがわかるであろう。このシステムと方法は、上流・下流の音響受信機22と関連するソフトウェアがポンプ18に組み込まれているとき、簡素化できる。このケースでは、一つの受信機22だけが臨床家により配置される必要がある。信号送信機30の代わりに指タップを使えば、さらなる簡素化が可能となる。
【0024】
同様に、「トップダウン」のワークフローは、薬剤容器から送信され、ポンプ上流側で受信される信号と、ポンプ下流側から送信され、カテーテルで受信される信号を使う。「ボトムアップ」のワークフローは、カテーテルから送信され、ポンプ下流側で受信される信号と、ポンプ上流側から送信され、薬剤容器で受信される信号を使う。下の表は、薬剤容器、ポンプ上流側、ポンプ下流側、カテーテルに対する送信機と受信機の位置を示す。
【0026】
上記各配置やワークフローは、同じ連続性の確認をもたらすが、異なる臨床家が、より目的にかなった及び/又は直感で理解できるワークフローを見つけるかもしれない。従って、臨床家がどの方法を好むのか、連続性確認のための柔軟性を考慮に入れたシステムは、臨床家に機器の使用を奨励すること、ライントレーシングにおける誤り傾向を減らすこと、ライントレーシングを遂行できる時間のスピードを高めることにおいて、有利となる。
【0027】
インフュージョンポンプ18の減衰係数を調整する他の方法は、リレー32を使うものである。
図5に示すように、インフュージョンシステム10は、任意選択により、有線又は無線接続により信号送信機30に電気的に結合している音響受信機22を有するリレー32を含む。このリレーは、受信機と送信機がポンプの反対側にあるよう(つまり、受信機22は上流側、送信機30は下流側に配置される、逆もまた同様)に配置される。次いで、受信機を含むポンプの側でチュービングセット16に音響信号が供給される。受信機22が供給された信号を受信したとき、電気的に結合している送信機30により対応する信号が発生される。このようにして、ポンプ18の減衰効果が打ち消される。
【0028】
信号受信機22と信号送信機30は、無線又は有線接続を介して互いに交信できることも意図される。特に送信機30は、好ましくは送信された音響振動の一つ又はより多くの特徴に関する情報を受信機22へ送信する。このような特徴は、好ましくは一つ又はより多くの信号周波数(又は周波数範囲)、信号の振幅(又は振幅範囲)、信号のタイミング、送信される特有の信号パターン、又は信号を特定するためのその他の特徴を含む。このことは、受信機22が送信機30からの受信信号と、雑音、又はその他の、例えば複雑なインフュージョンシステムの多くの送信機と受信機間のクロストーク、インフュージョンシステムの多くのチュービングライン間の偶発的接触、ポンプ18が引き起こす振動、又はシステム10内にある他の振動源に起因する、チュービングライン外部からの振動との間の弁別を可能にする。受信機22は、センサ24で受信した信号を、一つ又はより多くの特徴と比較し、もし受信した信号が特徴に合致すれば、インジケータ26を介して信号が受信されたことを表示する。
【0029】
特異な器具と適用に関連する、このインフュージョンセットのライントレーシングシステムの原理を上記してきたが、この記載は単なる例示であり、以下の特許請求の範囲を限定するものでないことを理解すべきである。