特許第6401852号(P6401852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6401852-かさ密度調整材 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6401852
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】かさ密度調整材
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/40 20060101AFI20181001BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20181001BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20181001BHJP
   E02F 7/00 20060101ALI20181001BHJP
   A01G 24/00 20180101ALI20181001BHJP
【FI】
   C09K17/40 H
   B09B3/00 301E
   C02F11/00 101Z
   E02F7/00 D
   A01G1/00 303Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-251567(P2017-251567)
(22)【出願日】2017年12月27日
(62)【分割の表示】特願2016-101373(P2016-101373)の分割
【原出願日】2016年5月20日
(65)【公開番号】特開2018-76529(P2018-76529A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2018年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-104815(P2015-104815)
(32)【優先日】2015年5月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】大橋 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】田中 真弓
(72)【発明者】
【氏名】間宮 尚
(72)【発明者】
【氏名】河合 達司
(72)【発明者】
【氏名】川端 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 一喜
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−299994(JP,A)
【文献】 特開2012−176394(JP,A)
【文献】 特開2015−037790(JP,A)
【文献】 特開2014−117625(JP,A)
【文献】 特開昭60−262886(JP,A)
【文献】 特開昭60−032883(JP,A)
【文献】 特開平04−166022(JP,A)
【文献】 特開2005−229865(JP,A)
【文献】 特開平08−333573(JP,A)
【文献】 特開2000−246290(JP,A)
【文献】 特開2003−289720(JP,A)
【文献】 特開昭58−031919(JP,A)
【文献】 特開2012−080788(JP,A)
【文献】 特開2012−080785(JP,A)
【文献】 特開平08−080127(JP,A)
【文献】 特開平07−026262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00
A01G 24/00
B09B 3/00
C02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象土壌を団粒化させるかさ密度調整材であって、
吸水性樹脂と、
前記吸水性樹脂以外の高分子化合物と、
かさ増し材と、を含み、
前記吸水性樹脂100質量部に対し、前記高分子化合物を0.1〜50質量部、前記かさ増し材を500〜15000質量部含み、
前記高分子化合物は、前記対象土壌の土粒子表面に作用して土粒子同士を結合する化合物であり、
前記高分子化合物は、ポリアクリルアミド系化合物であり、
異物分別用である、かさ密度調整材。
【請求項2】
前記かさ増し材のpHが4〜10である、請求項1記載のかさ密度調整材。
【請求項3】
pHが2〜3である酸性処理原土を処理対象とし、
前記かさ増し材のpHが10〜12である、請求項1記載のかさ密度調整材。
【請求項4】
pHが10〜12であるアルカリ性処理原土を処理対象とし、
前記かさ増し材のpHが2〜3である、請求項1記載のかさ密度調整材。
【請求項5】
前記かさ増し材は、グリーンタフを含む、請求項1〜のいずれか一項記載のかさ密度調整材。
【請求項6】
前記グリーンタフは、モンモリロナイト含有量が質量基準で50%以下であるベントナイトである、請求項記載のかさ密度調整材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かさ密度調整材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中間貯蔵や廃棄等の処理をすべき土壌に改質材を添加することにより、土壌を減容化したり、流動性を低減させたりして取扱いを容易にすることが行われている。例えば特許文献1には、瓦礫等の異物を含む高含水土壌に改質材を添加することで篩い分けが良好となり、異物を効率よく分離できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−176394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、処理の目的や処理すべき土壌の性状は様々であるため、従来の改質材は汎用性に乏しく、必ずしも所望の効果を奏することができない場合があった。
【0005】
そこで本発明は、土壌処理の汎用性を備えたかさ密度調整材、及び、かさ密度調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、処理すべき土壌の性状としてかさ密度に着目し、本発明を完成するに到った。本発明は、吸水性樹脂と、吸水性樹脂以外の高分子化合物と、かさ増し材と、を含む、かさ密度調整材を提供する。
【0007】
このかさ密度調整材を土壌に添加して混合すると、吸水性樹脂及び高分子化合物が土壌中の水を吸収して膨潤し、土壌のかさ密度を低減させ、更には土壌を団粒化させる。これにより、処理後の土壌の取り扱いが容易となる。本発明のかさ密度調整材は、様々な土壌に適用可能な汎用性を備えている。
【0008】
このかさ密度調整材は、吸水性樹脂100質量部に対し、高分子化合物を0.1〜50質量部、かさ増し材を10〜15000質量部含むことが好ましい。この配合比であると、土壌のかさ密度が一層低減される。
【0009】
かさ増し材のpHは4〜10であることが好ましい。これによれば、吸水性樹脂の吸水性能が発揮されやすい。また、pHが2〜3である酸性処理原土を処理対象としてかさ増し材のpHが10〜12であってもよく、pHが10〜12であるアルカリ性処理原土を処理対象としてかさ増し材のpHが2〜3であってもよい。これらによれば、処理すべき土壌が酸性又はアルカリ性である場合にも、処理後の土壌のpHを中性付近に合わせることができるので、処理の都合がよい。
【0010】
また、かさ増し材は、グリーンタフを含むことが好ましい。そして、このとき吸水性樹脂100質量部に対し、高分子化合物を0.1〜50質量部、かさ増し材を500〜15000質量部含むことが好ましい。これによれば、高分子成分(吸水性樹脂と高分子化合物)の相対的な配合比を低くすることができるので、高分子成分が吸水後の年月の経過にしたがって分解して土壌がかさ密度調整前の状態に戻ってしまうという懸念が抑えられる。
【0011】
また、本発明は、対象土壌の性状を事前評価し、事前評価の結果に基づいて上記かさ密度調整材の配合及び添加量を決定し、対象土壌にかさ密度調整材を添加して混合する、かさ密度調整方法を提供する。
【0012】
ここで、かさ密度調整材を添加して混合した後の対象土壌の性状が所望の性状になっているか否かを確認することが好ましい。
【0013】
また、かさ密度調整材の添加量は、対象土壌1m当たり50kg以下であることが好ましい。添加量を少なくするほうが、処理後の土壌の容量を抑制することができる。
【0014】
このかさ密度調整方法では、対象土壌は、含水率が10〜90%であってもよく、対象土壌は、放射性物質を含んでいてもよい。また、対象土壌は、津波堆積物の場合、津波堆積物の塩化物イオン濃度が3150〜5040mg/Lであってもよい。また、対象土壌は、農耕地の土壌、浚渫土、又はシールド掘削土であってもよい。こうした土壌であっても、本発明は適用可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、土壌処理の汎用性を備えたかさ密度調整材、及び、かさ密度調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例3の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
(かさ密度調整材)
本実施形態のかさ密度調整材は、吸水性樹脂と、吸水性樹脂以外の高分子化合物と、かさ増し材とが均一に混合されて成っている。
【0019】
吸水性樹脂は、水と接触することで吸水し、膨潤する性質を有する樹脂である。吸水性樹脂としては、デンプン系、セルロース系、ポリビニルアルコール系、アクリル系等の樹脂が挙げられる。
【0020】
吸水性樹脂は、対象土壌との混合のしやすさの観点から、粒状であることが好ましい。粒径は、篩い分け法で測定したときに、その90%以上が150〜710μmの範囲内にあることが好ましい。
【0021】
高分子化合物は、対象土壌の土粒子表面に作用して土粒子同士を結合する化合物である。高分子化合物としては、有機高分子化合物が好ましく、例えばポリアクリルアミド系化合物等が挙げられる。対象土壌の帯電の状況に応じて、アニオン系又はノニオン系の高分子化合物を使い分けることが好ましい。
【0022】
高分子化合物は、対象土壌との混合のしやすさの観点から、粉末状又は液体であることが好ましい。
【0023】
高分子化合物の配合量は、吸水性樹脂100質量部に対し、0.1〜50質量部が好ましく、1〜40質量部がより好ましく、5〜20質量部が更に好ましい。この配合比であると、かさ密度調整材を混合した対象土壌のかさ密度を一層低減させることができる。
【0024】
かさ増し材は、対象土壌と吸水性樹脂及び高分子化合物とを均質に混合しやすいように、かさ密度調整材全体のかさを増やす材料である。吸水性樹脂及び高分子化合物は、添加対象である対象土壌の容量に対して量が少ない。このため、対象土壌と混合しにくいうえ、これらが添加時に一部に大量にあると撹拌機に固着し、そこで粘性を発揮して益々混合しにくくなる場合がある。ここでかさ増し材を使用すると、かさ増し材が吸水性樹脂及び高分子化合物が均一に分散する媒体を提供することとなるので、対象土壌とかさ密度調整材とが容易に均一に混合されやすくなる。
【0025】
かさ増し材としては、ゼオライト、炭酸カルシウム、石膏、ペーパースラッジ、ベントナイト、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは一種類を単独で配合してもよいし、二種類以上を併用してもよい。また、かさ増し材として、対象土壌自体を使用することもできる。
【0026】
かさ増し材としては、グリーンタフも有用である。ここでグリーンタフとはモンモリロナイト含有量が低いベントナイトをいい、その含有量がベントナイト全体に対して質量基準で50%以下であることが好ましく、30%であってもよく、20%以下であってもよい。含有量の下限としては、1%、5%、10%等が挙げられる。
【0027】
かさ増し材としては、専らかさを増やすために用いられる無機母材と、専らpH調整材としての働きを有するものとがある。無機母材は、金属塩や鉱物等の無機物であり、粉末状又は粒状であることが好ましい。pH調整機能を有するかさ増し材としては、ゼオライトや、硫酸第一鉄等の金属塩が挙げられる。pH調整機能を有するかさ増し材は、使用してもよく、使用しなくてもよい。使用する場合は、かさ増し材構成の50%以下であることが好ましい。
【0028】
かさ密度調整材を添加する前の対象土壌のpH値、又は、かさ密度調整材を添加・混合した後の対象土壌のpH目標値に応じて、かさ増し材のpHを選択することが好ましい。また、吸水性樹脂は周囲のpHが4〜10の範囲を外れると吸水性能が劣るため、対象土壌のpHは、かさ密度調整材を添加する前後で中性付近であることが好ましい。ここで、かさ増し材のpHとは、MSDS記載のpH、又は、JIS5101−17−2 顔料試験方法 pH値−第2節:常温抽出法によって質量分率10%懸濁液を調製し、振盪、静置させた上澄み液を0.1の単位で測定して得られるpHをいう。
【0029】
上記観点から、かさ密度調整材の組成の大部分を占めうるかさ増し材のpHは、4〜10であることが好ましい。また、対象土壌がpHが2〜3である酸性処理原土である場合は、かさ増し材のpHは10〜12であることが好ましい。反対に、対象土壌がpHが10〜12であるアルカリ性処理原土である場合は、かさ増し材のpHは2〜3であることが好ましい。かさ増し材として、アルカリ性の高い材料である生石灰等を多く用いた場合はpHを高くすることができるので、生石灰等を他のかさ増し材と併用することで、アルカリ性度を高い方へ調整することができる。
【0030】
また、pH調整機能を有するかさ増し材を適宜使用することで、対象土壌のpH調整を様々に行うことができる。pHが極端に高い(10を超える)場合又は極端に低い(4未満)場合であっても、本実施形態のかさ密度調整材を適用可能とすることができる。
【0031】
また、ゼオライトは、放射性セシウム等の放射性物質を吸着する観点からも好ましい。
【0032】
かさ増し材の配合量は、吸水性樹脂100質量部に対し、10〜15000質量部が好ましく、100〜10000質量部がより好ましく、500〜2000質量部が更に好ましい。この配合比であると、かさ密度調整材を混合した対象土壌のかさ密度を一層低減させることができる。
【0033】
かさ増し材としてグリーンタフを含有する場合、かさ増し材の配合量は吸水性樹脂100質量部に対し、500〜15000質量部が好ましく、1000〜10000質量部がより好ましく、2000〜8000質量部が更に好ましい。このとき、かさ増し材は、その90〜100%(質量比)がグリーンタフで占められていることが好ましく、95〜100%(質量比)がグリーンタフで占められていることがより好ましい。これらの配合量によれば、高分子成分(吸水性樹脂と高分子化合物)の相対的な配合比を低くすることができるので、高分子成分が吸水後の年月の経過にしたがって分解して土壌がかさ密度調整前の状態に戻ってしまうという懸念が抑えられる。また、通常のベントナイトは吸水性が高く、配合量が多すぎると却ってかさ密度が高くなる(いわゆるリバウンド)場合があるが、これと比較してグリーンタフは吸水性がやや劣るので、リバウンドが生じる虞を小さくすることができる。更に、高分子成分の相対的な配合比を低くすることができることで、かさ密度調整後の土壌に強度を持たせることができ、転圧等することで盛土として再利用することができる。
【0034】
また、かさ増し材としてグリーンタフを含有する場合は、かさ密度調整材の吸水性樹脂、高分子化合物及びグリーンタフの三成分の配合比率を百分率で表した場合に、質量基準で吸水性樹脂5〜20%、高分子化合物1〜2%、グリーンタフ78〜94%で構成されることが好ましい。
【0035】
かさ密度調整材は、対象土壌の性状を測定した後、対象土壌に添加する直前に配合及び添加量が決定され、吸水性樹脂、高分子化合物及びかさ増し材が互いに混合されて均一に調製されることが好ましい。
【0036】
(かさ密度調整方法)
本実施形態のかさ密度調整材の適用対象である土壌としては、津波堆積物、農耕地の土壌、浚渫土、シールド掘削土等が挙げられる。例えば、津波堆積物や農耕地の土壌では、土壌の減容化に鑑み、草木根等の異物を分別するために効率的な篩い分けができることが望まれている。また、浚渫土では、ダンプカー等で運搬しやすくするために、土壌の流動性を低減することが望まれている。本実施形態のかさ密度調整材によって対象土壌のかさ密度を低減させることができると、上記目的を達成することができる。
【0037】
対象土壌は、海水や肥料に由来する無機イオンを多量に含んでいてもよい。一般に、津波堆積物の塩分濃度が0.3〜0.8%(つまり3000〜8000mg/L)であること、及び、海水の塩分濃度が3.4%(34000mg/L)でこのうち塩化物イオン濃度が1.89%(18980mg/L)であることから、津波堆積物を処理対象とする場合は塩化物イオン濃度が3150〜5040mg/L程度であってもよい。なお、上記数値は、土壌:水=1(乾土ベース):5で溶出させた液体中の濃度である。
【0038】
更に、対象土壌は、放射性物質を含んでいてもよい。対象土壌がこれらを含んでいた場合でも、本実施形態のかさ密度調整材の作用は妨げられない。
【0039】
対象土壌は、含水率が10〜90%であることが好ましい。細粒分(φ0.075mm)の含有率は、20〜30%、30〜50%、50〜60%、60〜70%等、特に限定されることなく適用できる。
【0040】
本実施形態のかさ密度調整材を用いたかさ密度調整方法としては、はじめに、目視等で対象土壌の含水状態や団粒の大きさを測り、かさ密度調整材を添加する必要があるか否かを判断する。例えば、細粒分(φ0.075mm)の含有率が、50〜60%、又は60〜70%の土壌である場合は、その外観性状から、かさ密度が1.0g/cmを超えている場合は団粒が大きく、かさ密度の調整が必要であると判断することができる。
【0041】
ここでは、対象土壌の改質目標とするべきかさ密度を推定する。かさ密度が低減すると、団粒粒径も小さくなる傾向があり、土壌が異物の分別や土壌の運搬に適した性状となる。かさ密度低減の目標値としては、例えば1.0g/cm以下、1.1g/cm以下、1.2g/cm以下が挙げられる。かさ密度の目標値は、処理後の土壌の篩い分けや搬送の必要性に応じて、適宜設定する。
【0042】
次に、かさ密度調整材を添加する必要があると判断された対象土壌の性状を事前評価する。評価項目としては、例えば、含水率、かさ密度、土壌のpH、が挙げられる。含水率は、加熱乾燥式水分計やオーブンや電子レンジを用いて現場で測定することができる。かさ密度は、容量が分かっている容器に対象土壌を入れ、軽く数回振動を与えて重量を測り、土壌の重量を容量で除すことによって求めることができる。土壌のpHは、土懸濁液のpH試験方法(JGS 0211−2000)によって測定することができる。ここで、かさ密度調整材による対象土壌の処理後の団粒粒径、かさ密度、及びpHの目標値を決定する。
【0043】
対象土壌から異物を取り除く必要がある場合は、団粒粒径の目標値は、当該異物の長軸方向の平均長さの10分の1から3分の1の長さを目標とすることが好ましい。団粒粒径が異物よりもこの程度にまで小さくなると、異物から土壌が剥がれ落ちやすく、異物を容易に分別することができる。団粒粒径の目標値は、使用する篩の目の半分程度以下の大きさとすることもできる。ここで、団粒粒径とは、目視で最頻近傍の団粒についてメジャーで測定した値をいう。
【0044】
事前評価で得られた値に基づき、かさ密度調整材の配合及び添加量を決定する。配合については、例えば、土壌のpHから、かさ増し材の具体的な成分を決定する。また、その各々の理論配合量を決定する。添加量については、対象土壌1m当たり10kgを想定して理論配合量を決定しているが、対象土壌の特性や混合撹拌機の特性によって効果に良し悪しが発生するので、実際に混合撹拌した結果を見て、添加量を増やす方向で調整する。ここで、かさ密度調整材の添加量は、対象土壌1m当たり30kg以下とすることが好ましく、20kg以下とすることがより好ましく、5〜15kgとすることが更に好ましい。添加量を少なくするほうが、処理後の土壌の容量を抑制することができる。
【0045】
次に、対象土壌にかさ密度調整材を添加して混合する。決定された配合及び添加量に基づき、吸水性樹脂、高分子化合物及びかさ増し材を混合してかさ密度調整材を調製する。このとき、かさ増し材が吸水性樹脂及び高分子化合物の分散媒体となってこれらが均一に分散するまで混合する。そして、均一混合されたかさ密度調整材を対象土壌と混合する。かさ密度調整材と対象土壌との混合には、バックホウや二軸混合機等を用いることができる。かさ密度調整材と対象土壌との混合過程において、吸水性樹脂及び高分子化合物が、対象土壌中の水を吸収して膨張しみかけ含水率を低減させるとともに、土壌表面に架橋を形成し団粒化を促進し、団粒周囲に空気層ができることで対象土壌のかさ密度が低減する。
【0046】
次に、対象土壌から異物を取り除く必要がある場合は、対象土壌の篩い分けを行う。篩い分けには、振動篩いやロールスクリーン等を用いることができる。
【0047】
その後、かさ密度調整材による処理のなされた対象土壌について、団粒粒径、かさ密度、及びpHを測定し、これらが目標値に達しているかどうかを確認する。処理を終えた対象土壌は、かさ密度が低減し、団粒化が進んでおり、又は、流動性が小さくなっている。対象土壌は、目的に応じて中間貯蔵施設や埋立て施設等に運搬する。もし、団粒粒径、かさ密度、及びpHが目標値に達していない場合は、同じかさ密度調整材を追加して再度処理する、他の対象土壌と混ぜて再度処理する、又は、目的に合った機能を有するかさ密度調整材の成分量の調整を図って再度処理する。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0050】
各評価項目の測定方法は、以下のとおりである。
・含水率:試験土壌を加熱乾燥式水分計で測定した。
・団粒粒径:目視で最頻近傍の団粒についてメジャーで測定した。
・かさ密度:100mlビーカーに100cmの土を入れ、土壌の重量を測定し、この重量を容量で除して求めた。
・土壌のpH:土懸濁液のpH試験方法(JGS 0211−2000)によって測定した。
・かさ増し材のpH:メーカーMSDSの記載値を参考とした。
【0051】
(実施例1)模擬草木根なしの場合
・試験土壌の性状
細粒分(φ0.075mm含有率):50〜60%
高含水粘性土(黒土:赤土=1:1):300cm
質量:300cm×1.47g/cm=441g
外観形状:目視では団粒が確認できない程度の泥状
模擬草木根:なし
【0052】
試験土壌の事前評価を実施したところ、含水率:47%、かさ密度1.47g/cm、土壌のpH6.4であった。これらの値から、団粒粒径、かさ密度、土壌のpHの目標値をそれぞれ10mm以下、1.0g/cm以下、pH6〜7と定め、かさ密度調整材として以下の配合及び添加量を決定した。
【0053】
・配合
<1>アクリル系樹脂(吸水性樹脂)=0.59g/cm
<2>ポリアクリルアミド系化合物(高分子化合物)=0.13g/cm
<3>炭酸カルシウム(かさ増し材)=3.69g/cm
・添加量
15kg/m
【0054】
上記<1>〜<3>の材料を袋内に入れて混合してかさ密度調整材を調製した後、これと試験土壌とを、針金撹拌子ミキサーを用いて土壌が上下方向に空気を巻き込むよう配慮しながら3分間混合した。
【0055】
処理後の事後評価を実施したところ、団粒粒径:2〜10mm、かさ密度0.811g/cm、土壌のpH6.2であった。これらはいずれも、定めた目標値を達成していた。
【0056】
(実施例2)模擬草木根ありの場合
・試験土壌の性状
細粒分(φ0.075mm含有率):50〜60%
高含水粘性土(黒土:赤土=1:1)300cm
質量:300cm×1.41g/cm=423.6g
外観形状:目視では団粒が確認できない程度の泥状
模擬草木根:2.33g
模擬草木根の長軸方向の平均長さ:3cm
【0057】
試験土壌の事前評価を実施したところ、含水率:50%、かさ密度1.41g/cm、土壌のpH6.4であった。これらの値から、団粒粒径、かさ密度、土壌のpHの目標値をそれぞれ10mm以下、1.0g/cm以下、pH6〜7と定め、かさ密度調整材として以下の配合及び添加量を決定した。
【0058】
・配合
<1>アクリル系樹脂(吸水性樹脂)=0.68g/cm
<2>ポリアクリルアミド系化合物(高分子化合物)=0.16g/cm
<3>炭酸カルシウム(かさ増し材)=7.62g/cm
・添加量
20kg/m
【0059】
上記<1>〜<3>の材料を袋内に入れて混合してかさ密度調整材を調製した後、これと試験土壌とを、針金撹拌子ミキサーを用いて土壌が上下方向に空気を巻き込むよう配慮しながら3分間混合した。
【0060】
処理後の対象土壌を、目開き9.5mmの篩を用いて篩分けした。
【0061】
処理後の事後評価を実施したところ、団粒粒径:2〜10mm、かさ密度0.835g/cm、土壌のpH6.9であった。これらはいずれも、定めた目標値を達成していた。また、篩い通過分は、全体量の92.54wt%以上であった。
【0062】
(実施例3)模擬草木根なしの場合;グリーンタフを用いた場合
・試験土壌の性状
細粒分(φ0.075mm含有率):50〜60%
高含水粘性土(黒土:赤土=1:1):200cm
質量:200cm×1.41g/cm=282g
外観形状:目視では団粒が確認できない程度の泥状
模擬草木根:なし
【0063】
試験土壌の事前評価を実施したところ、含水率:47%、かさ密度1.41g/cm、土壌のpH5.6であった。これらの値から、団粒粒径、かさ密度、土壌のpHの目標値をそれぞれ10mm以下、1.0g/cm以下、pH6〜7と定め、かさ密度調整材として以下の配合及び添加量を決定した。
【0064】
・配合
〔配合1〕
<3>グリーンタフ(かさ増し材)=40g/cm
すなわち、吸水性樹脂:高分子化合物:かさ増し材=0:0:100(質量比)の配合であり、本発明の範囲外の例である(比較例)。
〔配合2〕
<1>アクリル系樹脂(吸水性樹脂)=0.5〜2g/cm
<2>ポリアクリルアミド系化合物(高分子化合物)=0.1〜0.4g/cm
<3>グリーンタフ(かさ増し材)=9.4〜37.6g/cm
吸水性樹脂:高分子化合物:かさ増し材=5:1:94(質量比)の配合となるように調製した。
〔配合3〕
<1>アクリル系樹脂(吸水性樹脂)=1〜4g/cm
<2>ポリアクリルアミド系化合物(高分子化合物)=0.2〜0.8g/cm
<3>グリーンタフ(かさ増し材)=8.8〜35.2g/cm
吸水性樹脂:高分子化合物:かさ増し材=10:2:88(質量比)の配合となるように調製した。
〔配合4〕
<1>アクリル系樹脂(吸水性樹脂)=2〜8g/cm
<2>ポリアクリルアミド系化合物(高分子化合物)=0.2〜0.8g/cm
<3>グリーンタフ(かさ増し材)=7.8〜31.2g/cm
吸水性樹脂:高分子化合物:かさ増し材=20:2:78(質量比)の配合となるように調製した。
・添加量
配合1については40kg/mで、配合2〜4については10kg/m、20kg/m、40kg/mで試験した。
【0065】
上記<1>〜<3>の材料を袋内に入れて混合してかさ密度調整材を調製した後、これと試験土壌とを、針金撹拌子ミキサーを用いて土壌が上下方向に空気を巻き込むよう配慮しながら3分間混合した。
【0066】
処理後の事後評価を実施したところ、配合1では団粒粒径:20〜30mm、かさ密度1.4g/cm、土壌のpH6.0であった。配合2では団粒粒径:5〜40mm、かさ密度0.8〜1.0g/cm、土壌のpH6.2であった。配合3では団粒粒径:5〜20mm、かさ密度0.8〜1.0g/cm、土壌のpH6.0であった。配合4では団粒粒径:5〜20mm、かさ密度0.8〜1.0g/cm、土壌のpH6.2であった。配合2〜4では、かさ密度及びpHが目標値を達成していた。
【0067】
配合1〜4のそれぞれについて、かさ密度調整材の添加量と10mmふるい上割合(%)との関係を図1に示した。配合1(比較例)ではかさ密度調整材を40kg/m添加した場合でも10mmふるいを通過しなかったが、配合2〜4ではかさ密度調整材を10kg/m、20kg/m、40kg/m添加した後の10mmふるい上割合が、いずれもかさ密度調整の目安である20%よりも小さくなった。
図1