(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電線配索部材は、前記電線配索空間の内奥に、前記スライダを前記スライダ挿通口の延在方向に沿って摺動可能に支持するスライダガイド溝を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電線配索構造。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電線を車体上の可動部の移動経路に沿って移動可能に配索する電線配索構造として、電線巻き取り装置から引き出した電線を、前記可動部の移動経路に沿って布設された電線配索部材に挿通させる構造が開示されている。
【0003】
図5は、特許文献1の電線配索構造などにおいて使用される電線配索部材の従来例を示したものである。
【0004】
この電線配索部材100は、車体上の可動部の移動経路に沿って布設されて、前記可動部に接続する電線110を可動部の移動に伴って移動可能に収容する。なお、図示例の電線110は、フラットケーブルで、表面を垂直に立てた起立状態で配索される。
【0005】
この電線配索部材100は、車体のフロアパネル140の上を覆うカーペット等の弾性床材150に埋設して布設される。この電線配索部材100は、上方に開口したスライダ挿通口101と、このスライダ挿通口101の直下に設けられた電線配索空間102と、この電線配索空間102の直下に設けられたスライダガイド溝103と、を備えている。これらのスライダ挿通口101、電線配索空間102、スライダガイド溝103は、当該電線配索部材100の長手方向(
図5では、紙面と直交する方向)に沿って、電線配索部材100の全長に渡って延設されている。
【0006】
スライダ挿通口101は、電線110の先端側に固定されたスライダ120が挿通する。スライダ120は、スライダ挿通口101より電線配索部材100の上部に突出して可動部に連結される可動部連結部121と、可動部連結部121の下部から直下に延出して形成されて電線110の先端側に固定される電線保持部122と、電線保持部122からその直下に延出してスライダガイド溝103に摺動自在に嵌合する摺動用係合部123と、を備えている。
【0007】
スライダ挿通口101には、ゴム等の弾性材料で形成されたモール160が装備される。このモール160は、スライダ挿通口101の縁から可動部連結部121に向かって延出する一対のリップ部161によって、スライダ挿通口101とスライダ120との間の隙間を塞いで、スライダ挿通口101から電線配索部材100内に異物が侵入することを抑止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、
図5に示した電線配索構造の場合、スライダ120の移動方向の前後では、
図6に示すように、モール160の対向している一対のリップ部161間に隙間Sが残存しており、該隙間Sからスライダ挿通口101に、粉塵等の異物Dsが侵入する。そして、スライダ挿通口101の直下に、電線配索空間102やスライダガイド溝103が配置されているため、スライダ挿通口101に侵入した異物Dsは、
図6に矢印X1で示すように落下して、電線配索空間102やスライダガイド溝103内に堆積する。
その結果、電線配索空間102やスライダガイド溝103に堆積した異物Dsによってスライダ120の摺動に支障が生じるおそれがあった。
【0010】
また、スライダ120よりも手前側(電線110の基端側)では、一対のリップ部161間の隙間Sの直下に電線110が通っていて、傘の先端等が隙間Sに進入したときに、傘の先端が電線110に当たって、電線110が傷つくおそれがあった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、スライダ挿通口から電線配索部材内に侵入する異物によってスライダの移動に支障が生じることが無く、また、電線配索部材内の電線の傷つきを防止することのできる電線配索構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1) 先端が車体上の可動部に接続される電線と、
該電線の先端部付近に取り付けられたスライダと、
前記可動部の移動経路に沿って布設されて、上方に開口して前記スライダを前記可動部の移動経路に沿って移動可能に挿通させるスライダ挿通口と、前記電線が挿通する電線配索空間と、を備えた電線配索部材と、
を備える電線配索構造であって、
前記電線配索部材は、前記スライダ挿通口の直下から水平方向に離れた位置に前記電線配索空間が装備され、
前記スライダは、前記スライダ挿通口を挿通して前記スライダ挿通口に沿って移動可能な挿通口挿通部と、前記挿通口挿通部の下部から水平方向の第1の向きに延出して前記電線配索空間内の電線の先端付近の部位を保持する電線保持部と、を備え、
前記電線配索部材は、前記スライダ挿通口の直下の空間である直下空間と該直下空間に隣接する前記電線配索空間との間において、前記直下空間の底部から立ち上がって、前記直下空間の下部領域を前記電線配索空間から遮断する異物混入防止壁を備え、
前記異物混入防止壁は、前記水平方向において、前記スライダ挿通口における前記第1の向き側の端縁より前記第1の向き側に位置
し、
前記電線保持部は、上下方向に延びる前記挿通口挿通部の下端部から、前記異物混入防止壁の上端面の上方を跨ぐように前記電線配索空間に向けて前記第1の向きに延出する第1部分と、前記電線配索空間内にて前記第1部分の延出端部から下方に向けて前記異物混入防止壁の上端面より下方の位置まで延出する第2部分と、を備えることを特徴とする電線配索構造。
【0013】
(2) 前記電線配策部材は、前記電線配策空間を画成する前記電線配策部材の前記第1の向き側の
端部に位置する側壁と前記異物混入防止壁とによって前記電線保持部の
前記第2部分を前記水平方向に挟むように収容することを特徴とする上記(1)の電線配索構造。
【0014】
(3) 前記電線配索部材は、前記電線配索空間の内奥に、前記スライダを前記スライダ挿通口の延在方向に沿って摺動可能に支持するスライダガイド溝を備えたことを特徴とする上記(1)又は(2)の電線配索構造。
【0015】
上記(1)の構成によれば、電線配索部材に装備される電線配索空間は、上方に開口したスライダ挿通口の直下から水平方向に離れた位置にある。そのため、スライダ挿通口に侵入した異物が落下しても、電線配索空間に堆積することを回避できる。そのため、電線配索空間に位置しているスライダの電線保持部に異物が付着したり、電線保持部の周囲の隙間が異物によって埋まることがなく、スライダ挿通口から侵入した異物によってスライダの移動に支障が生じることが無い。
また、誤って傘の先端等がスライダ挿通口に進入しても、電線配索部材内の電線の位置はスライダ挿通口の直下から水平方向にずれているため、傘の先端等が電線に触れることがなく、電線配索部材内の電線の傷つきを防止することもできる。
【0016】
更に、上記(
1)の構成によれば、電線配索空間とスライダ挿通口の直下の直下空間との間が、直下空間の底部から立ち上がった異物混入防止壁により遮断されている。そのため、直下空間の底部に堆積した異物が電線配索空間に流入することを防止することができる。従って、電線配索空間を、より長期にわたって、異物の侵入の無い健全な状態に維持することができ、異物によってスライダの移動に支障が生じることのない良好な作動状態をより長期にわたって維持することが可能になる。
【0017】
上記(3)の構成によれば、スライダを摺動可能に支持するスライダガイド溝は、異物が侵入し難い電線配索空間の内奥にあって、電線配索空間よりも更に異物が侵入し難い。従って、スライダの摺動部に異物が噛み込んでスライダの移動に支障が生じることを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明による電線配索構造によれば、スライダ挿通口から電線配索部材内に侵入する異物によってスライダの移動に支障が生じることが無く、また、電線配索部材内の電線の傷つきを防止することができる。
【0019】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る電線配索構造の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜
図3は本発明に係る電線配索構造の一実施形態を示したもので、
図1は本発明の一実施形態の電線配索構造の斜視図、
図2は
図1に示したスライダを支持した電線配索部材の外観斜視図、
図3は一実施形態の電線配索部材の横断面図で、
図2の矢印A方向からの矢視図である。
【0022】
この一実施形態の電線配索構造は、車体上の可動部であるスライドシート(不図示)に給電するための配索構造で、
図1に示すように、電線20と、巻き取り装置30と、スライダ40と、電線配索部材50と、を備えている。
【0023】
電線20は、多数の平角導体を平面状に結合したフラットケーブルである。なお、導体の断面形状(丸、平角)、形態(撚り線、単芯線)等は限定されない。本実施形態の電線20は、先端が車体上の可動部であるスライドシート(不図示)に接続される。また、電線20は、基端側の余長部が、引き出し可能に巻き取り装置30に巻き取られている。
【0024】
巻き取り装置30は、
図1に示すように、平面視で略円形となる装置ケース31内に、電線20の余長部を、該電線20の表面を鉛直方向に向けた起立状態で、巻き取っている。この巻き取り装置30では、巻き取った電線20の先端側が、装置ケース31の外周部に形成したケーブル引出口から導出する。巻き取り装置30から導出した電線20の先端側は、電線配索部材50内に配索される。
【0025】
スライダ40は、電線20の先端部付近に取り付けられると共に、電線配索部材50によって、スライドシートの移動方向に沿って移動可能に支持される。
本実施形態のスライダ40は、
図3に示すように、挿通口挿通部41と、電線保持部42と、摺動用係合部43と、電線導出部44と、を備えている。
【0026】
挿通口挿通部41は、後述する電線配索部材50のスライダ挿通口51を挿通してスライダ挿通口51に沿って移動可能な部位である。
【0027】
電線保持部42は、挿通口挿通部41の下部に形成された略鉤形の連絡部45から水平方向に延出した部位で、後述する電線配索部材50の電線配索空間53内の電線20の先端付近の部位を保持する。電線保持部42は、電線20を、該電線20の表面が鉛直方向に沿った状態となる起立状態のまま、保持する。
【0028】
摺動用係合部43は、電線保持部42の連絡部45とは逆側の面に突設されている。この摺動用係合部43は、電線配索部材50のスライダガイド溝54に摺動可能に係合する。本実施形態のスライダ40は、摺動用係合部43がスライダガイド溝54に係合することで、スライダ挿通口51の延在方向にスライド自在に支持される。
【0029】
電線導出部44は、挿通口挿通部41の上部に装備されている。この電線導出部44は、電線保持部42によって保持した電線20の先端を、その上端部から上方に導出させる。即ち、電線保持部42に保持された電線20の先端部は、連絡部45、挿通口挿通部41、電線導出部44を伝って、電線導出部44の上部に導出される。電線導出部44から導出した電線20の先端部は、スライドシートに装備されたコネクタに接続される。
【0030】
また、図示していないが、電線導出部44は、
図1に示すシート支持フレーム60に、不図示の取り付け金具を介して固定される。シート支持フレーム60は、スライドシートの下部のフレームで、電線配索部材50と一体のスライドレール70によって、
図1の矢印X2,X3方向にスライド可能に支持されている。
【0031】
電線配索部材50は、可動部であるスライドシートの移動経路に沿って、布設される。また、電線配索部材50は、
図3に示すように、車体のフロアパネル140の上を覆うカーペット等の弾性床材150に埋設して布設される。
【0032】
本実施形態の電線配索部材50は、
図3に示すように、スライダ挿通口51と、このスライダ挿通口51の直下に位置する直下空間52と、直下空間52に隣接する電線配索空間53と、電線配索空間53に隣接するスライダガイド溝54と、を備えている。これらのスライダ挿通口51、直下空間52、電線配索空間53、スライダガイド溝54は、当該電線配索部材50の長手方向(
図3では、紙面と直交する方向)に沿って、電線配索部材50の全長に渡って延設されている。
【0033】
スライダ挿通口51は、上方に開口しており、スライダ40の挿通口挿通部41を、スライドシートの移動経路に沿って移動可能に挿通させる。
【0034】
図3に示すように、スライダ挿通口51には、該スライダ挿通口51の延在方向に沿って、ゴム等の弾性材料で形成されたモール80が装備される。このモール80は、スライダ挿通口51の縁から挿通口挿通部41に向かって延出する一対のリップ部81によって、スライダ挿通口51とスライダ40(挿通口挿通部41)との間の隙間を塞いで、スライダ挿通口51から電線配索部材50内に異物が侵入することを抑止する。
【0035】
直下空間52は、スライダ挿通口51の直下に位置する空間である。
【0036】
電線配索空間53は、電線20が挿通する空間で、直下空間52とは水平方向に隣接して装備されている。言い換えると、電線配索空間53は、スライダ挿通口51の直下から、水平方向に離れて設けられている。この電線配索空間53は、直下空間52と連通していて、スライダ40の連絡部45に連なる電線保持部42を、スライダ挿通口51の延在方向に沿って移動自在に収容する。
【0037】
本実施形態の場合、
図3に示すように、直下空間52と電線配索空間53との間には、異物混入防止壁56が装備されている。この異物混入防止壁56は、直下空間52の底部52aから立ち上がって設けられていて、直下空間52の下部領域を電線配索空間53から遮断している。
この異物混入防止壁56は、直下空間52の底部52aに堆積する異物Dsの電線配索空間53への移動を規制する。
【0038】
スライダガイド溝54は、電線配索空間53の内奥で、直下空間52とは逆側となる位置に形成されている。このスライダガイド溝54は、スライダ40の摺動用係合部43がスライダ挿通口51の延在方向に摺動可能に嵌合する溝である。このスライダガイド溝54は、嵌合する摺動用係合部43を介して、スライダ40をスライダ挿通口51の延在方向(
図2の矢印X4方向)に沿って摺動可能に支持している。
【0039】
以上に説明した一実施形態の電線配索構造では、電線配索部材50に装備される電線配索空間53は、上方に開口したスライダ挿通口51の直下から水平方向に離れた位置にある。そのため、
図4に示すように、モール80の一対のリップ部81間の隙間Sからスライダ挿通口51に侵入した異物Dsが、
図4の矢印X5方向に落下しても、電線配索空間53に堆積することを回避できる。
そのため、電線配索空間53に位置しているスライダ40の電線保持部42に異物Dsが付着したり、電線保持部42の周囲の隙間が異物Dsによって埋まることがなく、スライダ挿通口51から侵入した異物Dsによってスライダ40の移動に支障が生じることが無い。
【0040】
また、誤って傘の先端等がスライダ挿通口51に進入しても、電線配索部材50内の電線20の位置はスライダ挿通口51の直下から水平方向にずれているため、傘の先端等が電線20に触れることがなく、電線配索部材50内の電線20の傷つきを防止することもできる。
【0041】
また、一実施形態の電線配索構造では、電線配索空間53とスライダ挿通口51の直下の直下空間52との間が、直下空間52の底部52aから立ち上がった異物混入防止壁56により遮断されている。そのため、直下空間52の底部52aに堆積した異物Dsが電線配索空間53に流入することを防止することができる。
従って、電線配索空間53を、より長期にわたって、異物Dsの侵入の無い健全な状態に維持することができ、異物Dsによってスライダ40の移動に支障が生じることのない良好な作動状態をより長期にわたって維持することが可能になる。
【0042】
また、一実施形態の電線配索構造では、スライダ40を摺動可能に支持するスライダガイド溝54は、異物Dsが侵入し難い電線配索空間53の内奥にあって、電線配索空間53よりも更に異物Dsが侵入し難い。従って、スライダ40の摺動部に異物Dsが噛み込んでスライダ40の移動に支障が生じることを確実に防止することができる。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0044】
例えば、スライダ40の摺動用係合部43は、一実施形態に示した電線保持部42の側方ではなく、電線保持部42の下部、又は電線保持部42の上部に装備することも可能である。その場合に、電線配索部材50におけるスライダガイド溝54は、電線配索空間53の下部又は上部に配置される。
【0045】
また、本発明の電線配索構造によって電線を配索する可動部は、上記実施形態に示したスライドシートに限らない。例えば、車体にスライド可能に装備されるスライドドアや、その他の可動部に応用することも考えられる。
【0046】
ここで、上述した本発明に係る電線配索構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0047】
[1] 先端が車体上の可動部に接続される電線(20)と、
該電線(20)の先端部付近に取り付けられたスライダ(40)と、
前記可動部の移動経路に沿って布設されて、上方に開口して前記スライダ(40)を前記可動部の移動経路に沿って移動可能に挿通させるスライダ挿通口(51)と、前記電線(20)が挿通する電線配索空間(53)と、を備えた電線配索部材(50)と、
を備える電線配索構造であって、
前記電線配索部材(50)は、前記スライダ挿通口(51)の直下から水平方向に離れた位置に前記電線配索空間(53)が装備され、
前記スライダ(40)は、前記スライダ挿通口(51)を挿通して前記スライダ挿通口(51)に沿って移動可能な挿通口挿通部(41)と、前記挿通口挿通部(41)の下部から水平方向に延出して前記電線配索空間(53)内の電線(20)の先端付近の部位を保持する電線保持部(42)と、を備えたことを特徴とする電線配索構造。
【0048】
[2] 前記電線配索部材(50)は、前記スライダ挿通口(51)の直下の空間である直下空間(52)と該直下空間(52)に隣接する前記電線配索空間(53)との間において、前記直下空間(52)の底部(52a)から立ち上がって、前記直下空間(52)の下部領域を前記前記電線配索空間(53)から遮断する異物混入防止壁(56)を備えたことを特徴とする上記[1]の電線配索構造。
【0049】
[3] 前記電線配索部材(50)は、前記電線配索空間(53)の内奥に、前記スライダ(40)を前記スライダ挿通口(51)の延在方向に沿って摺動可能に支持するスライダガイド溝(54)を備えたことを特徴とする上記[1]又は[2]の電線配索構造。