特許第6401925号(P6401925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6401925虚像表示装置、制御方法、プログラム、及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6401925
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】虚像表示装置、制御方法、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20181001BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   B60K35/00 A
   G02B27/01
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-62319(P2014-62319)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-182672(P2015-182672A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】氏家 敬明
(72)【発明者】
【氏名】岡村 純一
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−182189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00−37/06
G02B 27/00−27/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の前方風景と見かけ上で重なるように虚像を表示可能な第1表示手段に、マーカ画像を前記虚像として表示させ、且つ前記移動体の室内に配置され前記前方風景を撮像する撮像手段により撮像された画像に基づく調整用画像を、前記第1表示手段とは異なる第2表示手段に表示させる制御手段と、
前記虚像の観察者が、前記マーカ画像が重なって視認される前記前方風景中の位置を、前記調整用画像中で指定する操作を検知する操作検知手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記操作検知手段が検知した操作により指定された指定位置と、前記マーカ画像の表示位置に対応して予め記憶された前記調整用画像上の適正位置との相対位置関係に応じて、前記虚像として表示する1以上のオブジェクトの少なくとも1つの表示位置または拡大率の少なくとも一方を変化させて前記第1表示手段に表示させることを特徴とする虚像表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、それぞれの表示位置が異なる複数の前記マーカ画像を前記第1表示手段に表示させ、前記操作検知手段が検知した操作により指定された前記複数のマーカ画像のそれぞれに対する複数の指定位置と、前記複数のマーカ画像のそれぞれの表示位置に対応して予め記憶された前記調整用画像上の適正位置との相対位置関係に応じて、前記1以上のオブジェクトの少なくとも1つの表示位置または拡大率の少なくとも一方を変化させて前記第1表示手段に表示させることを特徴とする請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
虚像表示装置が実行する制御方法であって、
移動体の前方風景と見かけ上で重なるように虚像を表示可能な第1表示手段に、マーカ画像を前記虚像として表示させ、且つ前記移動体の室内に配置され前記前方風景を撮像する撮像手段により撮像された画像に基づく調整用画像を、前記第1表示手段とは異なる第2表示手段に表示させる第1制御工程と、
前記虚像の観察者が、前記マーカ画像が重なって視認される前記前方風景中の位置を、前記調整用画像中で指定する操作を検知する操作検知工程と、
前記操作検知工程が検知した操作により指定された指定位置と、前記マーカ画像の表示位置に対応して予め記憶された前記調整用画像上の適正位置との相対位置関係に応じて、前記虚像として表示する1以上のオブジェクトの少なくとも1つの表示位置または拡大率の少なくとも一方を変化させて前記第1表示手段に表示させる第2制御工程と、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項4】
コンピュータが実行するプログラムであって、
移動体の前方風景と見かけ上で重なるように虚像を表示可能な第1表示手段に、マーカ画像を前記虚像として表示させ、且つ前記移動体室内に配置され前記前方風景を撮像する撮像手段により撮像された画像に基づく調整用画像を、前記第1表示手段とは異なる第2表示手段に表示させる制御手段と、
前記虚像の観察者が、前記マーカ画像が重なって視認される前記前方風景中の位置を、前記調整用画像中で指定する操作を検知する操作検知手段、
として前記コンピュータを機能させ、
前記制御手段は、前記操作検知手段が検知した操作により指定された指定位置と、前記マーカ画像の表示位置に対応して予め記憶された前記調整用画像上の適正位置との相対位置関係に応じて、前記虚像として表示する1以上のオブジェクトの少なくとも1つの表示位置または拡大率の少なくとも一方を変化させて前記第1表示手段に表示させることを特徴とするプログラム。
【請求項5】
請求項に記載のプログラムを記憶したことを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
実際の風景に存在する施設や交通標識などのオブジェクトに対応する情報を示す虚像を、風景中のそれらのオブジェクトの位置に対応させて表示するヘッドアップディスプレイが公知である。一方、ヘッドアップディスプレイには、運転者の体格の違いなどによって、実際の位置と虚像の表示位置がずれてしまうという問題がある。これに対し、実際の風景中のオブジェクトと、当該オブジェクトを案内する虚像とが適切に対応付けて表示されるように、虚像の表示位置の調整を行う技術が存在する。例えば、特許文献1には、2つのカメラでドライバの顔を撮影し、各々の画像上で検出した視点の位置変化に応じて、表示情報の位置及び大きさを調整するヘッドアップディスプレイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−247184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、運転者の顔を撮影するカメラを2台使用するため、システムが高価になってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、実際の風景と対応付けて虚像を適切に表示させるように調整可能な虚像表示装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、虚像表示装置であって、移動体の前方風景と見かけ上で重なるように虚像を表示可能な第1表示手段に、マーカ画像を前記虚像として表示させ、且つ前記移動体の室内に配置され前記前方風景を撮像する撮像手段により撮像された画像に基づく調整用画像を、前記第1表示手段とは異なる第2表示手段に表示させる制御手段と、前記虚像の観察者が、前記マーカ画像が重なって視認される前記前方風景中の位置を、前記調整用画像中で指定する操作を検知する操作検知手段と、を備え、前記制御手段は、前記操作検知手段が検知した操作により指定された指定位置と、前記マーカ画像の表示位置に対応して予め記憶された前記調整用画像上の適正位置との相対位置関係に応じて、前記虚像として表示する1以上のオブジェクトの少なくとも1つの表示位置または拡大率の少なくとも一方を変化させて前記第1表示手段に表示させることを特徴とする。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、虚像表示装置が実行する制御方法であって、移動体の前方風景と見かけ上で重なるように虚像を表示可能な第1表示手段に、マーカ画像を前記虚像として表示させ、且つ前記移動体の室内に配置され前記前方風景を撮像する撮像手段により撮像された画像に基づく調整用画像を、前記第1表示手段とは異なる第2表示手段に表示させる第1制御工程と、前記虚像の観察者が、前記マーカ画像が重なって視認される前記前方風景中の位置を、前記調整用画像中で指定する操作を検知する操作検知工程と、前記操作検知工程が検知した操作により指定された指定位置と、前記マーカ画像の表示位置に対応して予め記憶された前記調整用画像上の適正位置との相対位置関係に応じて、前記虚像として表示する1以上のオブジェクトの少なくとも1つの表示位置または拡大率の少なくとも一方を変化させて前記第1表示手段に表示させる第2制御工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、コンピュータが実行するプログラムであって、移動体の前方風景と見かけ上で重なるように虚像を表示可能な第1表示手段に、マーカ画像を前記虚像として表示させ、且つ前記移動体室内に配置され前記前方風景を撮像する撮像手段により撮像された画像に基づく調整用画像を、前記第1表示手段とは異なる第2表示手段に表示させる制御手段と、前記虚像の観察者が、前記マーカ画像が重なって視認される前記前方風景中の位置を、前記調整用画像中で指定する操作を検知する操作検知手段、として前記コンピュータを機能させ、前記制御手段は、前記操作検知手段が検知した操作により指定された指定位置と、前記マーカ画像の表示位置に対応して予め記憶された前記調整用画像上の適正位置との相対位置関係に応じて、前記虚像として表示する1以上のオブジェクトの少なくとも1つの表示位置または拡大率の少なくとも一方を変化させて前記第1表示手段に表示させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】表示システムの概略構成を示す。
図2】ナビゲーション装置の概略構成を示す。
図3】ヘッドアップディスプレイの概略構成を示す。
図4】光源ユニットの概略構成を示す。
図5】調整モードの手順を示すフローチャートである。
図6】調整モードの実行時でのコンバイナ及びディスプレイの表示例を示す。
図7】調整モードの実行前後での虚像の表示位置を示す。
図8】変形例において、調整モードの実行時でのディスプレイ及びコンバイナの表示例を示す。
図9】変形例において、調整モードの実行時でのコンバイナの表示例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の1つの好適な実施形態では、虚像表示装置は、移動体の前方風景と見かけ上で重なるように1以上のオブジェクトを含む虚像を表示する第1表示手段の観察者が、前記前方風景を撮像する撮像手段により撮像された画像に基づく調整用画像と、前記前方風景と、に基づいて行う操作を検知する操作検知手段と、前記操作検知手段により検知した操作に基づいて、前記1以上のオブジェクトの少なくとも1つの表示位置または拡大率の少なくとも一方を変化させて前記第1表示手段に表示させる制御手段と、を備える。
【0011】
上記虚像表示装置は、操作検知手段と、制御手段とを備える。操作検知手段は、移動体の前方風景と見かけ上で重なるように1以上のオブジェクトを含む虚像を表示する第1表示手段の観察者が、移動体の前方風景を撮像する撮像手段により撮像された画像に基づく調整用画像と、前方風景と、に基づいて行う操作を検知する。制御手段は、操作検知手段により検知した操作に基づいて、1以上のオブジェクトの少なくとも1つの表示位置または拡大率の少なくとも一方を変化させて第1表示手段に表示させる。この態様により、虚像表示装置は、観察者の体格等によらず、第1表示手段により表示させる虚像を、前方風景に好適に対応付けて表示させることができる。
【0012】
上記虚像表示装置の一態様では、前記制御手段は、前記調整用画像を、前記第1表示手段に虚像として表示させる。この態様により、虚像表示装置は、本来表示されるべき虚像の位置や大きさと現在の虚像の位置や大きさとの違いを観察者に好適に認識させ、観察者の操作に基づき虚像の表示位置やサイズを適切に調整することができる。
【0013】
上記虚像表示装置の他の一態様では、前記操作検知手段は、前記第1表示手段に虚像として表示された調整用画像と前記前方風景とを見かけ上一致させるための操作を検知し、前記制御手段は、前記操作検知手段が検知した操作に基づいて、前記第1表示手段に虚像として表示させる前記調整用画像の表示位置または拡大率の少なくとも一方を変化させる。この態様により、虚像表示装置は、観察者の操作に基づき虚像の表示位置やサイズを適切に調整することができる。
【0014】
上記虚像表示装置の他の一態様では、前記制御手段は、前記調整用画像を第1表示手段とは異なる第2表示手段に表示させる。
【0015】
上記虚像表示装置の他の一態様では、前記制御手段は、基準位置を示すマーカ画像を虚像として前記第1表示手段に表示させ、前記操作検知手段は、前記第1表示手段に虚像として表示される前記マーカ画像と見かけ上重なる前記前方風景の部位が表示される前記第2表示手段上の位置を指定する操作を検知する。この態様により、虚像表示装置は、基準位置に表示されるマーカ画像が実際に見える前方風景の位置を把握し、運転者の視点位置に応じて、虚像の表示位置や大きさを好適に調整することができる。
【0016】
上記虚像表示装置の他の一態様では、前記制御手段は、基準位置を示すマーカ画像を前記調整用画像に重ねて前記第2表示手段に表示させ、前記操作検知手段は、前記マーカ画像と重なって表示される前記前方風景の部位が視認される前記第1表示手段上の位置を指定する操作を検知する。この態様によっても、虚像表示装置は、マーカ画像に基づき運転者が第1表示手段上で視認する前方風景の位置を好適に把握し、運転者の体格等に応じて、虚像の表示位置や大きさを好適に調整することができる。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態では、虚像表示装置が実行する制御方法であって、移動体の前方風景と見かけ上で重なるように1以上のオブジェクトを含む虚像を表示する第1表示手段の観察者が、前記前方風景を撮像する撮像手段により撮像された画像に基づく調整用画像と、前記前方風景と、に基づいて行う操作を検知する操作検知工程と、前記操作検知工程により検知した操作に基づいて、前記1以上のオブジェクトの少なくとも1つの表示位置または拡大率の少なくとも一方を変化させて前記第1表示手段に表示させる制御工程と、を有する。虚像表示装置は、この制御方法を実行することで、観察者の体格等によらず、第1表示手段により表示させる虚像を、前方風景に好適に対応付けて表示させることができる。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態では、コンピュータが実行するプログラムであって、移動体の前方風景と見かけ上で重なるように1以上のオブジェクトを含む虚像を表示する第1表示手段の観察者が、前記前方風景を撮像する撮像手段により撮像された画像に基づく調整用画像と、前記前方風景と、に基づいて行う操作を検知する操作検知手段と、前記操作検知手段により検知した操作に基づいて、前記1以上のオブジェクトの少なくとも1つの表示位置または拡大率の少なくとも一方を変化させて前記第1表示手段に表示させる制御手段として前記コンピュータを機能させる。コンピュータは、このプログラムを実行することで、観察者の体格等によらず、第1表示手段により表示させる虚像を、前方風景に好適に対応付けて表示させることができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0020】
[概略構成]
(1)システム構成
図1は、実施例に係る表示システム100の構成例を示す。図1に示すように、表示システム100は、車両Veに搭載され、ナビゲーション装置1と、ヘッドアップディスプレイ2と、カメラ3とを備える。そして、表示システム100は、運転者の視点位置に応じ、ヘッドアップディスプレイ2が表示する虚像が前方風景に適切に対応付けて表示されるように虚像の表示位置等の調整(即ちキャリブレーション)を行う。
【0021】
ナビゲーション装置1は、出発地から目的地までのルート案内を行う機能などを有する。ナビゲーション装置1は、例えば、車両Veに設置される据え置き型のナビゲーション装置、PND(Portable Navigation Device)、又はスマートフォンなどの携帯端末とすることができる。
【0022】
ヘッドアップディスプレイ2は、運転を補助する情報を表示する画像(「案内画像」とも呼ぶ。)を生成し、当該案内画像を運転者の目の位置(アイポイント)から虚像として視認させる装置である。ヘッドアップディスプレイ2は、案内画像として、例えば、案内ルートの方向を示す矢印、右左折地点などの案内地点に関する情報、車速などの車両Veの走行に関する情報、施設マークを示す情報、前方の方位を示す情報、及び交通法規に関する情報などを表示する。ヘッドアップディスプレイ2には、案内ルートの情報などの案内画像の生成に必要な各種情報がナビゲーション装置1から供給される。
【0023】
カメラ3は、車両Veの前方に向けて固定され、所定の間隔ごとに車両Veの前方を撮影した画像(「前方画像Im」とも呼ぶ。)を生成する。カメラ3は、生成した前方画像Imをヘッドアップディスプレイ2へ供給する。好適には、カメラ3は、ルームミラーの裏などの運転者の視点の近傍に設置される。
【0024】
なお、ナビゲーション装置1がスマートフォンなどの携帯端末である場合、ナビゲーション装置1は、クレードルなどによって保持されても良い。この場合、ナビゲーション装置1は、クレードルなどを介して、ヘッドアップディスプレイ2と情報の授受を行うこととしても良い。また、ナビゲーション装置1がスマートフォンなどの携帯端末である場合、カメラ3は携帯端末に内蔵されているものであってもよい。また、カメラ3は、前方画像Imをナビゲーション装置1の代わりにヘッドアップディスプレイ2に供給し、ヘッドアップディスプレイ2は、ナビゲーション装置1へ前方画像Imを転送してもよい。
【0025】
(2)ナビゲーション装置の構成
図2は、ナビゲーション装置1の構成を示す。図2に示すように、ナビゲーション装置1は、自立測位装置10、GPS受信機18、システムコントローラ20、ディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、通信装置38、インタフェース39、表示ユニット40、音声出力ユニット50、及び入力装置60を備える。
【0026】
自立測位装置10は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13を備える。加速度センサ11は、例えば圧電素子からなり、車両Veの加速度を検出し、加速度データを出力する。角速度センサ12は、例えば振動ジャイロからなり、車両Veの方向変換時における車両Veの角速度を検出し、角速度データ及び相対方位データを出力する。距離センサ13は、車両Veの車輪の回転に伴って発生されているパルス信号からなる車速パルスを計測する。
【0027】
GPS受信機18は、複数のGPS衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波19を受信する。測位用データは、緯度及び経度情報等から車両Veの絶対的な位置(「現在位置」とも呼ぶ。)を検出するために用いられる。
【0028】
システムコントローラ20は、インタフェース21、CPU(Central Processing Unit)22、ROM(Read Only Memory)23及びRAM(Random Access Memory)24を含んでおり、ナビゲーション装置1全体の制御を行う。
【0029】
インタフェース21は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13並びにGPS受信機18とのインタフェース動作を行う。そして、これらから、車速パルス、加速度データ、相対方位データ、角速度データ、GPS測位データ、絶対方位データ等をシステムコントローラ20に入力する。CPU22は、システムコントローラ20全体を制御する。ROM23は、システムコントローラ20を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリ等を有する。RAM24は、入力装置60を介して使用者により予め設定された経路データ等の各種データを読み出し可能に格納したり、CPU22に対してワーキングエリアを提供したりする。
【0030】
システムコントローラ20、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブなどのディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60は、バスライン30を介して相互に接続されている。
【0031】
ディスクドライブ31は、システムコントローラ20の制御の下、CD又はDVDといったディスク33から、音楽データ、映像データなどのコンテンツデータを読み出し、出力する。なお、ディスクドライブ31は、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブのうち、いずれか一方としてもよいし、CD及びDVDコンパチブルのドライブとしてもよい。
【0032】
データ記憶ユニット36は、例えば、HDDなどにより構成され、地図データなどのナビゲーション処理に用いられる各種データを記憶するユニットである。地図データは、道路に相当するリンクと、道路の接続部分に相当するノードとにより表された道路データや、各施設に関する施設情報などを含む。施設情報には、例えば、登録された施設ごとの施設マークの情報や当該施設の位置情報が含まれている。
【0033】
通信装置38は、例えば、FMチューナやビーコンレシーバ、携帯端末や専用の通信モジュールなどにより構成され、通信用インタフェース37を介して、VICS(登録商標、Vehicle Information Communication System)センタから配信される渋滞や交通情報などの道路交通情報、その他の情報を受信する。また、通信装置38は、GPS受信機18から取得した現在位置の情報、自立測位装置10から取得した車速パルス等の情報及び地図データなど、ナビゲーション処理に用いられる各種情報をヘッドアップディスプレイ2に送信する。また、通信装置38は、カメラ3から、所定間隔ごとに前方画像Imを受信する。さらに、通信装置38は、ヘッドアップディスプレイ2から所定の指示信号を受信する。
【0034】
表示ユニット40は、システムコントローラ20の制御の下、各種表示データをディスプレイなどの表示装置に表示する。具体的には、システムコントローラ20は、データ記憶ユニット36から地図データを読み出す。表示ユニット40は、システムコントローラ20によってデータ記憶ユニット36から読み出された地図データなどを表示画面上に表示する。表示ユニット40は、バスライン30を介してCPU22から送られる制御データに基づいて表示ユニット40全体の制御を行うグラフィックコントローラ41と、VRAM(Video RAM)等のメモリからなり即時表示可能な画像情報を一時的に記憶するバッファメモリ42と、グラフィックコントローラ41から出力される画像データに基づいて、液晶、CRT(Cathode Ray Tube)等のディスプレイ44を表示制御する表示制御部43と、ディスプレイ44とを備える。ディスプレイ44は、画像表示部として機能し、例えば対角5〜10インチ程度の液晶表示装置等からなり、車内のフロントパネル付近に装着される。
【0035】
音声出力ユニット50は、システムコントローラ20の制御の下、CD−ROMドライブ31又はDVD−ROM32、若しくはRAM24等からバスライン30を介して送られる音声デジタルデータのD/A(Digital to Analog)変換を行うD/Aコンバータ51と、D/Aコンバータ51から出力される音声アナログ信号を増幅する増幅器(AMP)52と、増幅された音声アナログ信号を音声に変換して車内に出力するスピーカ53とを備えて構成されている。
【0036】
入力装置60は、各種コマンドやデータを入力するための、キー、スイッチ、ボタン、リモコン、音声入力装置等から構成されている。入力装置60は、据置型のナビゲーション装置の場合、車内に搭載された当該車載用電子システムの本体のフロントパネルやディスプレイ44の周囲に配置される。また、入力装置60は、ディスプレイ44に積層されたタッチパネル61を有する。
【0037】
(3)ヘッドアップディスプレイの構成
図3は、ヘッドアップディスプレイ2の概略構成図である。図3に示すように、本実施例に係るヘッドアップディスプレイ2は、光源ユニット4と、コンバイナ9とを備え、フロントウィンドウ25、天井部27、ボンネット28、及びダッシュボード29などを備える車両Veに取り付けられる。
【0038】
光源ユニット4は、支持部材5a、5bを介して車室内の天井部27に設置され、運転を補助する情報を示す案内画像を構成する光を、コンバイナ9に向けて出射することで、コンバイナ9を介して運転者に虚像「Iv」を視認させる。
【0039】
コンバイナ9は、光源ユニット4から出射される表示像が投影されると共に、表示像を運転者のアイポイント「Pe」へ反射することで当該表示像を虚像Ivとして表示させる。そして、コンバイナ9は、天井部27に設置された支持軸部8を有し、支持軸部8を支軸として回動する。支持軸部8は、例えば、フロントウィンドウ25の上端近傍の天井部27、言い換えると運転者用の図示しないサンバイザが設置される位置の近傍に設置される。なお、支持軸部8は、上述のサンバイザに代えて設置されてもよい。コンバイナ9は、本発明における「表示手段」の一例である。
【0040】
(4)光源ユニットの構成
図4は、光源ユニット4の構成を概略的に示した図である。図4に示すように、光源ユニット4は、光源54と、制御部55と、通信部56と、入力部57とを有する。
【0041】
光源54は、例えば赤色、青色及び緑色の各色のレーザ光源を有し、制御部55の制御に基づき、コンバイナ9に照射させる表示像を構成する光(「表示光」とも呼ぶ。)を出射する。
【0042】
通信部56は、制御部55の制御に基づき、ナビゲーション処理に用いられる各種情報をナビゲーション装置1から受信する。例えば、通信部56は、ナビゲーション装置1から案内ルートの情報や現在位置の情報などの案内画像の生成に必要な情報を受信する。また、通信部56は、制御部55の制御に基づき、ナビゲーション装置1へ所定の指示信号を送信する。入力部57は、各種コマンドやデータを入力するための、キー、スイッチ、ボタン、リモコン、音声入力装置等から構成されている。
【0043】
制御部55は、CPU、CPUが実行する制御プログラムやデータなどを記憶するROM、CPUが動作する際のワークメモリとして各種データが逐次読み書きされるRAMなどを有し、ヘッドアップディスプレイ2の全般的な制御を行う。
【0044】
例えば、制御部55は、ナビゲーション装置1から送信される情報に基づき、案内画像を生成し、案内画像を構成する表示光を光源54に出射させることでコンバイナ9に虚像Ivを表示させる。例えば、施設マークを表す案内画像を表示する場合、制御部55は、まず、ナビゲーション装置1から受信したGPS受信機18の測定情報及び自立測位装置10の測定情報に基づき、車両Veの位置及び進行方向を認識する。そして、制御部55は、車両Veの進行方向から所定角度以内にあり、かつ、車両Veから所定距離以内にある施設を示すマーク画像を案内画像として生成し、これらの案内画像を構成する光を光源54に出射させる。
【0045】
また、本実施例では、制御部55は、入力部57等への所定の操作を検知した場合に、虚像Ivの位置及び拡大率を調整するための調整モードを開始する。そして、調整モードでは、制御部55は、前方画像Imをディスプレイ44に表示させるべき旨等を示す指示信号を、通信部56を介してナビゲーション装置1に送信する。そして、制御部55は、本発明における「操作検知手段」、「制御手段」、及びプログラムを実行するコンピュータの一例である。
【0046】
[調整モード]
次に、調整モードで制御部55が実行する処理について説明する。概略的には、制御部55は、調整モードでは、調整用のマーカ画像(「マーカ画像Mk」とも呼ぶ。)を虚像Ivとして複数表示させ、各マーカ画像Mkに重なって表示される前方風景の位置を、前方画像Imが表示されたディスプレイ44上で指定させる入力を受け付ける。これにより、制御部55は、運転者の体格等に起因して生じた虚像Ivの表示位置や表示サイズのずれを認識し、虚像Ivの表示位置等を適切に調整する。
【0047】
(1)処理フロー
図5は、調整モードでの処理手順を示すフローチャートの一例である。制御部55は、図5に示すフローチャートの処理を、ナビゲーション装置1又はヘッドアップディスプレイ2への所定の操作を検知した場合に実行する。
【0048】
まず、制御部55は、2つのマーカ画像Mkをコンバイナ9上に表示させる(ステップS101)。このとき、好適には、制御部55は、後述する拡大率の誤差を少なくするため、マーカ画像Mkを互いに離れた位置に表示させるとよい。以後では、ステップS101で表示させる2つのマーカ画像Mkを、それぞれ「第1マーカ画像Mk1」及び「第2マーカ画像Mk2」とも呼ぶ。
【0049】
また、ステップS101と同時に、制御部55は、前方画像Imをナビゲーション装置1のディスプレイ44に表示させ、各マーカ画像Mkに重なる前方風景の表示位置を指定する入力を受け付ける(ステップS102)。例えば、制御部55は、前方画像Imを表示すべき旨の指示信号をナビゲーション装置1に送信することで、ナビゲーション装置1に前方画像Imを表示させる。そして、制御部55は、第1マーカ画像Mk1、第2マーカ画像Mk2の順に、これらに重なる風景を表示したディスプレイ44上の位置を指定すべき旨の案内をナビゲーション装置1に出力させる。そして、ナビゲーション装置1は、第1マーカ画像Mk1及び第2マーカ画像Mk2のそれぞれに対するディスプレイ44上の位置指定をタッチパネル61等により検知した場合、入力された位置の情報を制御部55へ送信する。これにより、制御部55は、第1マーカ画像Mk1に対するディスプレイ44(即ち前方画像Im)上の入力位置(「第1入力位置」とも呼ぶ。)と、第2マーカ画像Mk2に対するディスプレイ44上の入力位置(「第2入力位置」とも呼ぶ。)とを認識する。第1入力位置、第2入力位置は、例えばディスプレイ44上の2次元座標位置を示す。ステップS102の具体例については、図6(B)を参照して後述する。
【0050】
そして、制御部55は、各マーカ画像Mkに対する位置指定の入力を検知したか否か判定する(ステップS103)。具体的には、制御部55は、第1マーカ画像Mk1に対する第1入力位置と、第2マーカ画像Mk2に対する第2入力位置とをそれぞれ指定する入力があったか否か判定する。そして、制御部55は、各マーカ画像Mkに対する第1及び第2入力位置の指定があったと判断した場合(ステップS103;Yes)、ステップS104へ処理を進める。一方、制御部55は、第1入力位置又は第2入力位置の少なくともいずれか一方を指定する入力を検知していないと判断した場合(ステップS103;No)、引き続きステップS102を実行し、ナビゲーション装置1に前方画像Imを表示させ、マーカ画像Mkに対するディスプレイ44上での位置を指定する入力を受け付ける。
【0051】
各マーカ画像Mkに対する位置指定の入力があった後、制御部55は、ステップS102で認識した第1及び第2入力位置から、公知のキャリブレーション技術等に基づき、虚像Ivの表示位置及び拡大率を認識する(ステップS104)。例えば、制御部55は、虚像Ivと前方風景との対応がとれているときの第1マーカ画像Mkの表示位置に対応するディスプレイ44(即ち前方画像Im)上の位置(「第1基準位置」とも呼ぶ。)と、第2マーカ画像Mkの表示位置に対応するディスプレイ44上の位置(「第2基準位置」とも呼ぶ。)とを予め記憶しておく。そして、制御部55は、記憶した上述の第1及び第2基準位置とステップS102で認識した第1及び第2入力位置との相対位置関係に基づき、虚像Ivと前方風景との対応をとるために必要なコンバイナ9上での虚像Ivの上下方向又は/及び左右方向の移動幅と必要な虚像Ivの拡大率とを設定する。例えば、この場合、制御部55は、第1基準位置に対する第1入力位置の相対位置座標及び第2基準位置に対する第2入力位置の相対位置座標に対する適切な虚像Ivの上下左右での移動幅及び拡大率を指定したマップ又は式を予め記憶しておく。上述のマップ等は、例えば予め実験等に基づき作成され、制御部55のメモリ等に記憶される。
【0052】
(2)表示例
次に、図5に基づいて調整モードを開始した場合の表示例について、図6及び図7を参照して説明する。
【0053】
図6は、調整モードの実行時でのコンバイナ9及びディスプレイ44の表示例を示す。具体的には、図6(A)は、図5のステップS101に基づき第1マーカ画像Mk1及び第2マーカ画像Mk2が表示されたコンバイナ9の表示例である。また、図6(B)は、図5のステップS102に基づき前方画像Imが表示されたディスプレイ44の正面図を示す。図6の例では、道路90と、信号機91と、太陽92とを含む前方風景を、コンバイナ9を介して運転者が視認する。
【0054】
図6(A)に示すように、制御部55は、調整モードの開始後、第1マーカ画像Mk1と第2マーカ画像Mk2とを表示させる。なお、制御部55は、各マーカ画像Mkを同時に表示してもよく、ステップS103で第1マーカ画像Mk1に対する位置指定の入力を検知した後に第2マーカ画像Mk2を表示させてもよい。
【0055】
また、図6(A)に示すマーカ画像Mkの表示と同時に、図6(B)に示すように、制御部55は、ナビゲーション装置1に所定の指示信号を送信することで、ディスプレイ44上に前方画像Imを表示させる。さらに、制御部55は、第1マーカ画像Mk1が見えるディスプレイ44上の位置をタッチし、その後に第2マーカ画像Mk2が見えるディスプレイ44上の位置をタッチすべき旨を示した指示画像80を前方画像Imに重ねてナビゲーション装置1に表示させている。そして、制御部55は、最初にタッチパネル61が検出したディスプレイ44上の位置を、第1入力位置としてナビゲーション装置1から取得し、次にタッチパネル61が検出したディスプレイ44上の位置を、第2入力位置としてナビゲーション装置1から取得する。その後、制御部55は、図5のステップS104に基づき、取得した第1入力位置及び第2入力位置と、予め記憶した第1及び第2基準位置との相対位置関係に基づき、所定のマップ又は式を参照し、必要なコンバイナ9上での虚像Ivの上下左右での変更幅及び拡大率を決定する。
【0056】
図7は、調整モードの実行前後でのコンバイナ9を介して視認される虚像Ivの表示位置を示す。図7の例では、制御部55は、建物93A〜93Fの施設マークを吹き出し内に表示したマーク画像81A〜81Fを虚像Ivとしてコンバイナ9上に表示させている。また、図7では、調整モードの実行前のマーク画像81A〜81Fを破線により示し、調整モードの実行後のマーク画像81A〜81Fを実線により示している。
【0057】
図7の例では、制御部55は、調整モードにより、虚像Ivをコンバイナ9の上方向に所定幅(図7ではコンバイナ9の短手幅の約1/4)だけずらす必要があること、及び、虚像Ivを全体として所定率(図7では約80%)の拡大率によりサイズ変更する必要があることを認識する。そして、制御部55は、調整モード前の虚像Ivの表示位置を調整モードにより認識した上下左右での調整幅に基づきずらした位置を、調整モード後の虚像Ivの表示位置とする。また、制御部55は、調整モード前の虚像Ivの表示サイズを調整モードにより認識した拡大率に基づき変更した表示サイズを、調整モード後の虚像Ivの表示サイズとする。その結果、図7の例では、制御部55は、調整モード実行後に、各マーク画像81A〜81Fを、風景上の建物93A〜93Fに適切に対応付けて表示している。これにより、制御部55は、運転者の体格に応じてコンバイナ9を介して視認される前方風景が異なる場合であっても、運転者の視点位置に適した位置に虚像Ivを表示させ、虚像Ivと前方風景とを好適に対応付けて運転者に視認させることができる。
【0058】
以上説明したように、本実施例に係るヘッドアップディスプレイ2は、光源ユニット4と、コンバイナ9とを有する。光源ユニット4の制御部55は、車両Veの前方風景と見かけ上で重なるように虚像Ivを表示するコンバイナ9の観察者が、カメラ3により撮像されてディスプレイ44に表示された前方画像Imと、前方風景とに基づいて行うディスプレイ44上での位置指定の操作を検知する。そして、制御部55は、検知した位置に基づいて、虚像Ivの表示位置または拡大率の少なくとも一方を変化させてコンバイナ9に表示させる。この態様により、ヘッドアップディスプレイ2は、観察者の体格等によらず、コンバイナ9により表示させる虚像Ivを、前方風景に好適に対応付けて表示させることができる。
【0059】
[変形例]
以下、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0060】
(変形例1)
制御部55は、マーカ画像Mkをコンバイナ9上に表示させ、マーカ画像Mkと重なる風景が表示されたディスプレイ44上の位置を指定させる代わりに、マーカ画像Mkをディスプレイ44上に表示させ、マーカ画像Mkと重なる風景が視認されるコンバイナ9上の位置を指定させてもよい。
【0061】
図8(A)は、本変形例に係るディスプレイ44の表示例を示し、図8(B)は、本変形例に係るコンバイナ9の表示例を示す。図8の例では、コンバイナ9は、タッチパネルが積層されており、当該タッチパネルは、検出したコンバイナ9上の位置を示す信号をヘッドアップディスプレイ2へ送信する。
【0062】
図8(A)に示すように、制御部55は、調整モードを開始した場合、ディスプレイ44上に第1マーカ画像Mk1及び第2マーカ画像Mk2を表示させる。また、図8(B)に示すように、制御部55は、第1マーカ画像Mk1が見えるコンバイナ9上の位置をタッチし、その後に第2マーカ画像Mk2が見えるコンバイナ9上の位置をタッチすべき旨を示した指示画像80を虚像Ivとして表示させる。そして、制御部55は、コンバイナ9に積層されたタッチパネルが最初に検出したコンバイナ9上の位置を、第1入力位置として取得し、次に上記タッチパネルが検出したコンバイナ9上の位置を、第2入力位置として取得する。
【0063】
その後、制御部55は、取得した第1入力位置及び第2入力位置に基づき、必要なコンバイナ9上での虚像Ivの上下左右での移動幅及び拡大率を認識する。この場合、図5のステップS104と同様、制御部55は、虚像Ivと前方風景との対応がとれているときの第1マーカ画像Mk1に対応するコンバイナ9上の位置である第1基準位置と、第2マーカ画像Mk2に対応するコンバイナ9上の位置である第2基準位置とをそれぞれ予め記憶しておく。そして、制御部55は、コンバイナ9上での第1基準位置に対する第1入力位置の相対位置と、コンバイナ9上での第2基準位置に対する第2入力位置の相対位置とに基づき、所定のマップ等を参照して、必要なコンバイナ9上での虚像Ivの上下左右での移動幅及び拡大率を決定する。
【0064】
このように、マーカ画像Mkをディスプレイ44上に表示させ、マーカ画像Mkと重なる風景が視認されるコンバイナ9上の位置を指定させた場合であっても、制御部55は、好適に虚像Ivの表示位置等を調整することができる。
【0065】
(変形例2)
制御部55は、マーカ画像Mkをコンバイナ9上に表示させる代わりに、前方画像Imをコンバイナ9上に表示させることで、虚像Ivの表示位置等を調整する操作を受け付けてもよい。
【0066】
図9は、本変形例におけるコンバイナ9の表示例を示す。図9では、制御部55は、前方画像Imを虚像Ivとしてコンバイナ9上に表示させている。また、図9の例では、コンバイナ9は、タッチパネルが積層されており、当該タッチパネルは、検出したコンバイナ9上の位置を示す信号をヘッドアップディスプレイ2へ送信する。
【0067】
この場合、制御部55は、コンバイナ9に積層されたタッチパネルへの入力に基づき、前方画像Imの表示位置や表示サイズを調整する。例えば、制御部55は、コンバイナ9に積層されたタッチパネル上で指をスライドさせる操作を検知した場合、指がスライドした方向(図9では左方向)に前方画像Imを移動させる。また、制御部55は、例えば、タッチパネルに接触させた2本指の幅を縮める操作を検知した場合に前方画像Imを縮小させ、タッチパネルに接触させた2本指の幅を広げる操作を検知した場合に前方画像Imを拡大させる。これにより、運転者は、コンバイナ9を介して視認される前方風景と、前方画像Imにより表示された前方風景とが重なるように、前方画像Imの表示位置及び表示サイズを調整する操作を行う。具体的には、運転者は、コンバイナ9を介して視認される前方風景中の道路90、信号機91、太陽92等が、コンバイナ9上に表示された前方画像Im中の道路領域90A、信号機領域91A、太陽領域92Aと一致するように、前方画像Imの表示位置及び表示サイズを調整する操作を行う。
【0068】
そして、制御部55は、調整モードを終了すべき旨の入力を検知した場合に、調整操作により移動した前方画像Imの上下左右での移動幅及び変更された拡大率の情報を記憶する。その後、制御部55は、記憶した表示位置の上下左右での移動幅及び拡大率を反映させて虚像Ivを表示させる。
【0069】
なお、制御部55は、コンバイナ9に積層されたタッチパネルへの入力に基づき、コンバイナ9上の前方画像Imの移動やサイズ変更を行う代わりに、ヘッドアップディスプレイ2に付属するリモートコントローラなどへの入力に基づき、前方画像Imの移動やサイズ変更を行ってもよい。他の例では、制御部55は、前方画像Imが表示されたディスプレイ44上への操作に基づき、コンバイナ9上の前方画像Imの移動やサイズ変更を行ってもよい。この場合、制御部55は、ナビゲーション装置1から、タッチパネル62等が検知した入力信号を受信することで、前方画像Imの移動処理等を行う。
【0070】
(変形例3)
図3では、ヘッドアップディスプレイ2は、コンバイナ9を有し、コンバイナ9で反射させた光源ユニット4の出射光に基づき運転者に虚像Ivを視認させていた。しかし、本発明が適用可能な構成はこれに限定されない。これに代えて、ヘッドアップディスプレイ2は、コンバイナ9を有さず、フロントガラス25で反射させた光源ユニット4の出射光に基づき運転者に虚像Ivを視認させてもよい。
【0071】
また、光源ユニット4の位置は、天井部27に設置される場合に限定されない。これに代えて、光源ユニット4は、ダッシュボード29上に設置されたり、ダッシュボード29の内部に設置されたりしてもよい。ダッシュボード29上に設置される場合、ダッシュボード29には、コンバイナ9を設けるか、又はフロントガラス25に光源ユニット4から直接光を反射させ運転者に虚像Ivを認識させる。ダッシュボード内に設置される場合、ダッシュボード29には、コンバイナ9又はフロントガラス25に光を通過させるための開口部が設けられる。
【0072】
(変形例4)
制御部55の処理の一部を、システムコントローラ20が実行してもよい。
【0073】
例えば、図5のフローチャートの処理を、制御部55に代えて、システムコントローラ20が実行してもよい。この場合、システムコントローラ20は、ステップS101では、マーカ画像Mkを表示させる旨の指示信号をヘッドアップディスプレイ2へ送信することでマーカ画像Mkをコンバイナ9上に表示させる。また、システムコントローラ20は、ステップS104において、第1入力位置、第2入力位置に基づき虚像Ivの表示位置及び大きさを決定し、決定した虚像Ivの表示位置及び大きさを指定する信号をヘッドアップディスプレイ2へ送信する。この場合、システムコントローラ20は、本発明における「操作検知手段」、「制御手段」、及びプログラムを実行するコンピュータの一例である。
【0074】
また、ヘッドアップディスプレイ2が表示するための案内画像をシステムコントローラ20が生成し、ヘッドアップディスプレイ2の光源ユニット4が当該案内画像を受信する態様であってもよい。
【0075】
また、他の例では、ヘッドアップディスプレイ2は、ナビゲーション装置1の一部又は全部の機能を有してもよい。この場合、光源ユニット4は、例えば、地図データを記憶するメモリやGPS受信機などの各センサなどを有してもよい。
【0076】
(変形例5)
図6(B)の例では、ヘッドアップディスプレイ2は、タッチパネル61によりマーカ画像Mkの位置を指定する入力を受け付けた。これに代えて、ヘッドアップディスプレイ2は、ナビゲーション装置1に設けられた操作キーやボタン、リモートコントローラ等によりマーカ画像Mkの位置を指定する入力を受け付けてもよい。
【0077】
(変形例6)
実施例では、ヘッドアップディスプレイ2は、2つのマーカ画像Mkをコンバイナ9上に表示させたが、これに代えて、3つ以上のマーカ画像Mkをコンバイナ9上に表示させ、それぞれに対応するディスプレイ44上の位置をユーザに指定させてもよい。この場合、制御部55は、例えば公知のキャリブレーション技術を用いて、指定されたディスプレイ44上の入力位置に基づき、虚像Ivの表示位置や表示サイズを調整する。
【0078】
(変形例7)
実施例では、ヘッドアップディスプレイ2は、2つのマーカ画像Mkをコンバイナ9上に表示させたが、これに代えて、1つのマーカ画像Mkをコンバイナ9上に表示させ、それに対応するディスプレイ44上の位置をユーザに指定させてもよい。好適にはマーカ画像Mkをコンバイナ上の略中央に表示させ、それに対応するディスプレイ44上の位置をユーザに指定させてもよい。この場合、制御部55は、指定されたディスプレイ44上の入力位置に基づき、虚像Ivの表示位置を調整する。これにより、ユーザは少ない手数で虚像Ivの表示位置のみを調整できる。
【0079】
(変形例8)
ヘッドアップディスプレイ2は、一部の虚像Ivのみに対し、調整モードでの認識結果に基づき表示位置や拡大率を変更してもよい。例えば、ヘッドアップディスプレイ2は、表示すべき虚像Ivのうち、車速や交通規制に関する情報などの前方風景と対応付ける必要がない情報を表す虚像Ivについては、調整モードの実行前後において、表示位置や拡大率を変更しなくてもよい。即ち、この場合、ヘッドアップディスプレイ2は、前方風景と対応付ける必要がある情報を表す虚像Ivについてのみ、調整モードの実行前後において、表示位置や拡大率を変更する。
【0080】
また、ヘッドアップディスプレイ2は、一部の虚像Ivについては、調整モードの実行前後において、表示位置のみを変更し、拡大率を変更しなくともよい。例えば、ヘッドアップディスプレイ2は、施設マークなどの施設の位置を知らせるための情報については、調整モードの実行前後において、表示位置のみを変更し、案内ルートをその道路形状に合わせてケーブル状に表示した虚像Ivについては、表示位置及び拡大率の両方を変更する。
【符号の説明】
【0081】
1 ナビゲーション装置
2 ヘッドアップディスプレイ
4 光源ユニット
9 コンバイナ
25 フロントガラス
28 ボンネット
29 ダッシュボード
100 表示システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9