特許第6402007号(P6402007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402007
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】レジスト剥離液及びレジスト剥離方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20181001BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   G03F7/42
   H01L21/30 572B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-231267(P2014-231267)
(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公開番号】特開2016-95388(P2016-95388A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】317006683
【氏名又は名称】地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 一史
(72)【発明者】
【氏名】川野 伸一
(72)【発明者】
【氏名】安井 学
(72)【発明者】
【氏名】黒内 正仁
(72)【発明者】
【氏名】小沢 武
【審査官】 塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−216843(JP,A)
【文献】 特開2007−157839(JP,A)
【文献】 特開2003−177556(JP,A)
【文献】 特開2004−323841(JP,A)
【文献】 特開2009−069505(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/110582(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00−7/42
H01L 21/30
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド系有機溶剤と、水と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる剥離助剤とを含むレジスト剥離液であって、
前記アミド系有機溶剤、前記水及び前記剥離助剤の合計量に対して、
前記水を0.30mol/kg〜3.50mol/kg、
前記剥離助剤を0.02mol/kg〜2.00mol/kg含み、
前記剥離助剤/前記水で示されるモル比が0.02〜1.10であることを特徴とするレジスト剥離液。
【請求項2】
前記アミド系有機溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ホルムアミド及び2−ピロリドンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載のレジスト剥離液。
【請求項3】
前記剥離助剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化リチウムからから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のレジスト剥離液。
【請求項4】
アミド系有機溶剤と、水と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる剥離助剤とを含むレジスト剥離液を用いて、基板上に形成されたレジスト層を剥離するレジスト剥離方法であって、
前記アミド系有機溶剤、前記水及び前記剥離助剤の合計量に対して、
前記水を0.30mol/kg〜3.50mol/kg、前記剥離助剤を0.02mol/kg〜2.00mol/kgを含み、前記剥離助剤/前記水で示されるモル比が0.02〜1.10である前記レジスト剥離液を調整する工程と、
前記レジスト剥離液を50〜250℃に加温する工程と、
前記加温したレジスト剥離液を前記基板上に形成されたレジスト層に接触させる工程とを備えることを特徴とするレジスト剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト剥離液及びレジスト剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体パッケージの製造等において、微細なパターンを形成するためにフォトリソグラフィが用いられている。フォトリソグラフィでは、例えば、酸化膜が形成された半導体基板上に、ノボラック樹脂やエポキシ樹脂等のフォトレジストを塗布し、塗布したレジストに、半導体基板と光源との間に設置されるマスクを介して光を照射して露光させる。露光されたフォトレジストを現像液で処理した後、加熱等を行う。これにより、マスクのパターンがフォトレジストに転写・固定されてフォトレジスト層によるレジストパターンが形成される。形成されたレジストパターンをマスクとして、酸化膜がエッチングされることによって、酸化膜に紫外線露光装置で使用したマスクのパターンが転写される。通常、マスクとして使用されたフォトレジストは、レジスト剥離液やアッシングによって剥離され、除去される。
【0003】
また、近年、微小電気機械システム(MEMS)や電鋳金型作成用途にエポキシ系フォトレジストが用いられている。例えば、MEMSの製造方法として知られるLIGAプロセスでは、シリコン基板や金属基板上にPMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂を用いて厚さ数十〜数百μmのフォトレジスト塗布層を形成し、X線放射光でパターンを転写することによって、レジスト層による微細構造を形成する。また、電鋳金型の作成では、レジスト層で形成した微細構造に電気メッキを施して金属製の金型を作成する。レジスト層は、金型作成後に金型から剥離される。また、これらの分野では、紫外線で露光することで、高アスペクト比の微細構造のレジスト層を作成可能なフォトレジストとして、SU−8(マイクロケム社製)等のエポキシ系フォトレジストも用いられている。
【0004】
このSU−8に代表されるエポキシ系フォトレジストは、紫外光領域で高い透過性を示す。また、露光によって高度に架橋され、さらにハードベーク処理により硬化されることで高い耐熱性、耐薬性を示す。このため、厚膜中に高アスペクト比の微細構造を形成するのに有利である。しかしながら、エポキシ系フォトレジストによるレジスト層は、高架橋であるために剥離が極めて困難である。そのため、水素を含んだガス分子と水を含んだガス分子との接触分解反応により生成する活性原子種を用いて、エポキシ系フォトレジストをドライエッチングにより除去する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、エポキシ系フォトレジスト以外のフォトレジストであっても、過露光等により、強く架橋・硬化したレジスト層は、通常の剥離剤では剥離が困難である場合があるという課題もある。
【0006】
エポキシ樹脂は、フォトレジスト以外でも、例えば、プリント配線基板や半導体チップ封止剤として使われている。これらの用途では、エポキシ樹脂からなるプリント配線基板を溶解して再利用することも行われている(例えば、特許文献2参照。)。この場合、プリント配線基板は、エポキシ樹脂に、臭素(Br)等のハロゲン元素を数十%含有させて、クロム酸や濃硫酸等の取り扱いの難しい薬品を使用しなくても分解し易いように製造されている。
【0007】
このように、従来、エポキシ系フォトレジストによるレジスト層等、高架橋、高硬化されたレジスト層を剥離するためには、特殊な装置や、工程、取り扱いの難しい薬品等が必要であり、より簡易に効率よくレジスト層を剥離することのできるレジスト剥離液やレジスト剥離方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−258047号公報
【特許文献2】特開2001−172426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであって、高架橋、高硬化したレジスト層であっても簡易に剥離することのできるレジスト剥離液及びレジスト剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のレジスト剥離液は、アミド系有機溶剤と、水と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる剥離助剤とを含むレジスト剥離液であって、前記アミド系有機溶剤、前記水及び前記剥離助剤の合計量に対して、前記水を0.30mol/kg〜3.50mol/kg、前記剥離助剤を0.02mol/kg〜2.00mol/kg含み、前記剥離助剤/前記水で示されるモル比は、0.02〜1.10であることを特徴とする。
【0011】
本発明のレジスト剥離液において、前記アミド系有機溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ホルムアミド及び2−ピロリドンから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0012】
本発明のレジスト剥離液において、前記剥離助剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化リチウムから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0013】
本発明のレジスト剥離方法は、アミド系有機溶剤と、水と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる剥離助剤とを含むレジスト剥離液を用いて、基板上に形成されたレジスト層を剥離するレジスト剥離方法であって、前記アミド系有機溶剤、前記水及び前記剥離助剤の合計量に対して、前記水を0.30mol/kg〜3.50mol/kg、前記剥離助剤を0.02mol/kg〜2.00mol/kgを含み、前記剥離助剤/前記水で示されるモル比は、0.02〜1.10である前記レジスト剥離液を調整する工程と、前記レジスト剥離液を50〜250℃に加温する工程と、前記加温したレジスト剥離液を前記基板上に形成されたレジスト層に接触させる工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレジスト剥離液又はレジスト剥離方法によれば、高架橋、高硬化したレジスト層であっても簡易に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例で用いたレジストパターンを模式的に示す図である。
図2】実施例の剥離性能評価に用いたレジスト層付き基板1を模式的に示す図である。
図3】実施例の剥離性能評価に用いた装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[レジスト剥離液]
本実施形態のレジスト剥離液は、アミド系有機溶剤と、水と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる剥離助剤を含有し、アミド系有機溶剤、水及び剥離助剤の合計量に対する、水の含有割合が、0.30mol/kg〜3.50mol/kg、剥離助剤の含有割合が、0.02mol/kg〜2.00mol/kgである。また、本実施形態のレジスト剥離液において、剥離助剤/水で示されるモル比は、0.02〜1.10である。本実施形態のレジスト剥離液は、基板上等に形成されたレジスト層、特に、通常の剥離方法では剥離が困難な、高架橋、高硬化されたレジスト層の剥離に用いられるレジスト剥離液である。
【0017】
本実施形態のレジスト剥離液によるレジスト剥離の機構は必ずしも明らかではないが、次のように推測される。本実施形態のレジスト剥離液中のアミド系有機溶剤は、レジスト層を構成する架橋構造に侵入し、レジスト層を膨潤させることで、レジスト層を剥離する作用を有する。
【0018】
このとき、アミド系有機溶剤に、微量の水および剥離助剤を含有させると、アミド系有機溶剤中で剥離助剤が水に溶解、電離して、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとハロゲン化物イオンを生成する。このうち、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンは、アミド系有機溶剤により溶媒和イオンを形成し、ハロゲン化物イオンは、水和イオンを形成してアミド系有機溶剤中に存在すると考えられる。レジスト剥離液に上記した特定の割合で、アミド系有機溶剤、水及び剥離助剤を含有させることで、これらのアルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンの溶媒和イオン、ハロゲン化物イオンの水和イオンを安定的に生成させ、アミド系有機溶剤中に分散して存在させ得るものと考えられる。そして、アミド系有機溶剤は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンと溶媒和を形成した状態でレジスト層に浸入する。または、レジスト層に侵入したアミド系有機溶剤及びアルカリ土類金属イオンがレジスト層内で溶媒和イオンを形成する。これらのアルカリ土類金属イオンの溶媒和イオン半径はアミド系有機溶剤単独よりも大きいことから、当該溶媒和イオンにより、レジスト層がより大きく膨潤される。その結果、高架橋、高硬化されたレジスト層であっても基板から容易に剥離することができると考えられる。
【0019】
したがって、本発明のレジスト剥離液において、アミド系有機溶剤、水及び剥離助剤の含有割合がレジスト剥離性能に対して重要である。すなわち、レジスト剥離液中の各成分の含有割合が上記した範囲から大きく外れる場合には、水和イオン及び溶媒和イオンの生成が妨げられる、生成した水和イオン及び溶媒和イオンがアミド系有機溶剤中に安定的に分散し難い等の理由で、高架橋、高硬化されたレジスト層に対して十分な剥離性能を得られなくなることがある。
【0020】
本実施形態のレジスト剥離液において、アミド系有機溶剤は、分子内にアミド基を有する有機溶剤であって、水を可溶な有機溶剤である。ここで、アミド系有機溶剤が「水を可溶」とは、水を0.3〜3.5mol/kg溶解可能であることを意味する。
【0021】
本実施形態におけるアミド系有機溶剤は、上記したように、アルカリ金属イオンあるいはアルカリ土類金属イオンと溶媒和イオンを形成し得るものであれば特に限定されず、具体的に例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、ピロリドン(2−ピロリドン等)、N−メチルピロリドン(N−メチル−2−ピロリドン等)、カプロラクタム、カルバミド酸エステル等を用いることができる。中でも、レジスト剥離性能の点で、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ホルムアミド、2−ピロリドンを用いることが好ましい。アミド系有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本実施形態のレジスト剥離液において、剥離助剤は、アルカリ金属のハロゲン化物及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化合物であり、常温において固体であって、水に可溶な化合物である。ここで、剥離助剤が「水に可溶」とは、20℃の水に0.02〜12mol/kg溶解可能であることを意味する。剥離助剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属とのハロゲン化物としては、上記したアルカリ金属及びアルカリ土類金属の、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等が挙げられ、レジスト剥離性能の点から、フッ化物、塩化物、臭化物であることが好ましい。なかでも、水への溶解性が良好で、レジスト剥離性に優れることから、アルカリ金属のハロゲン化物を用いることが好ましく、ナトリウム、リチウム、カリウムのハロゲン化物を用いることがより好ましい。
【0024】
剥離助剤としては、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウムが特に好ましく用いられる。
【0025】
また、剥離助剤として、上記したアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物以外にも、これに代えて、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金の水酸化物、リン酸化合物を用いてもよい。この場合にも、水酸化物イオン、リン酸イオン水和イオンを形成することで、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の溶媒和イオンを安定的に生成させることができるため、剥離助剤としてアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物を用いた場合と同等の効果を得ることができる。アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等を、リン酸化合物としては例えば、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム等を、それぞれ用いることができる。
【0026】
本実施形態のレジスト剥離液は、アミド系有機溶剤、水及び剥離助剤の合計量に対する水の含有割合が、0.30mol/kg〜3.50mol/kgであり、剥離助剤の含有割合が、0.02mol/kg〜2.00mol/kgである。
【0027】
レジスト剥離液中の水の含有割合が3.50mol/kgを超える場合及び0.30mol/kg未満である場合には、剥離性能が低下することがある。これは、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンの溶媒和イオンが安定的に生成し難いためと考えられる。
【0028】
レジスト剥離液中の剥離助剤の含有割合が2.00mol/kgを超える場合及び0.02mol/kg未満である場合にも同様に、剥離性能が低下することがある。その理由として、剥離助剤の含有割合が2.00mol/kgを超える場合には、剥離助剤の非溶解分が多くなり、この非溶解分が水を強く引き付けることで、ハロゲン化物イオンを水和させる水の量が少なくなり、そのため、対イオンであるアルカリ金属イオンあるいはアルカリ土類金属イオンの溶媒和も起こりにくいためであると考えられる。
【0029】
レジスト剥離性能の点で、アミド系有機溶剤、水及び剥離助剤の合計量に対する水の含有割合は、0.50mol/kg〜3.00mol/kgであることがより好ましく、剥離助剤の含有割合は、0.07mol/kg〜1.10mol/kgであることがより好ましい。
【0030】
また、本実施形態のレジスト剥離液において、剥離助剤/水で示されるモル比が、0.02〜1.10であることが好ましく、0.10〜1.00であることがより好ましい。剥離助剤及び水のモル比が上記した範囲内であることで、アミド系有機溶剤と剥離助剤と水とによる、剥離性能向上効果をより一層増大させることができる。
【0031】
また、剥離助剤は必ずしもすべてがレジスト剥離液中に溶解している必要はない。レジスト剥離液中に剥離助剤の非溶解分が存在していても、溶解した剥離助剤が失活した場合に、非溶解分が溶解してそれを補うことになる。したがって、レジスト剥離液中に剥離助剤の非溶解分が存在するような飽和溶液を使用することも有用である。
【0032】
本実施形態のレジスト剥離液の製造方法は特に限定されず、上記した好ましい範囲のアミド系有機溶剤、水及び剥離助剤を計量し、混合、撹拌することで製造することができる。この際、アミド系有機溶剤、水及び剥離助剤の混合の順序は特に限定されないが、アミド系有機溶剤に水を添加した後に剥離助剤を添加するか、アミド系有機溶剤に剥離助剤を添加した後に、水を添加することが好ましい。これは、剥離助剤が水に可溶であるため、剥離助剤と水を先に混合する場合には、上述した溶媒和の効果が得られにくいためである。
【0033】
また、アミド系有機溶剤は加熱して用いることが好ましく、この場合には、加熱温度は、後述するレジスト剥離液の使用温度である50〜250℃であることが好ましく、70〜150℃がより好ましい。なお、アミド系有機溶剤を加熱する場合には、加熱のタイミングは、水又は剥離助剤を添加した後、あるいは水及び剥離助剤を添加した後でもよい。
【0034】
また、本実施形態のレジスト剥離液は、本発明の効果を損なわない範囲で、アミド系有機溶剤、水及び剥離助剤以外にも、通常レジスト剥離液に含有される成分、例えば界面活性剤、安定化剤等を含有していてもよい。
【0035】
[レジスト剥離方法]
次に、本実施形態のレジスト剥離液を用いたレジスト剥離方法について説明する。本実施形態のレジスト剥離方法は、上記レジスト剥離液を用いて基板上に形成されたレジスト層を剥離する方法であり、アミド系有機溶剤と、水と、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる剥離助剤とを用いて、前記アミド系有機溶剤、前記水及び前記剥離助剤の合計量に対して前記水を0.30mol/kg〜3.50mol/kg、前記剥離助剤を0.02mol/kg〜2.00mol/kgを含むレジスト剥離液を調整する工程と、前記レジスト剥離液を50〜250℃に加温する工程と、前記加温したレジスト剥離液を前記基板上に形成されたレジスト層に接触させる工程とを備える。
【0036】
本実施形態で用いられるレジスト剥離液の好ましい態様は上述したレジスト剥離液と同様である。本実施形態のレジスト剥離方法では例えば、レジスト剥離液を、50〜250℃に加熱する。このとき、レジスト剥離液の温度は、レジスト剥離液の引火点以下に加熱する。レジスト剥離液の加熱温度は、70〜150℃がより好ましい。この範囲であれば、レジスト剥離液が揮発しにくく、火災に対する特別な配慮や装置がなくても、安全にレジストの剥離を行うことができる。
【0037】
その後、前記加温したレジスト剥離液を前記基板上に形成されたレジスト層に接触させる。レジスト剥離液をレジスト層に接触させる方法としては、レジスト層の形成された基板(以下「レジスト層付き基板」ともいう。)をレジスト剥離液に浸漬させる方法、レジスト層付き基板のレジスト層にレジスト剥離液を高圧で噴射する方法等が挙げられる。
【0038】
浸漬処理によって、レジスト剥離処理を行う場合には、加熱したレジスト剥離液に剥離対象であるレジスト層付き基板を浸漬し、必要に応じてレジスト剥離液を撹拌してレジスト剥離処理を行う。また、レジスト剥離処理は、超音波により振動を与えながら行うこともできる。
【0039】
浸漬時間は、レジスト層を構成する樹脂の種類や、レジスト層の厚さや架橋度等によって適宜設定することができるが、例えば、SU−8を用いて形成されたレジスト層の場合、30〜90分に調節する。
【0040】
また、噴射処理によってレジスト剥離処理を行う場合には、加温したレジスト剥離液を、スプレーノズル等を用いてレジスト層付き基板に噴射する。
【0041】
レジスト剥離処理後の基板は、純水でリンスした後、基板に対して反応性を有さず、また、基板を汚染しないガス、例えば、窒素ガス、ドライエア等を吹き付けて乾燥させる。
【0042】
基板としては、銅(Cu)基板、ニッケル(Ni)基合金基板、アルミニウム(Al)等の金属基板、Si(シリコン)基板や、樹脂基板、ガラス基板等が用いられる。
【0043】
レジスト層としては、ポジ型フォトレジスト、ネガ型フォトレジストのいずれで形成されていてもよく、エポキシ樹脂を用いたエポキシ系フォトレジスト、ノボラック系フォトレジスト、アクリル系フォトレジスト等が挙げられる。上記フォトレジストは、硬化剤、架橋剤、硬化促進剤などを含んでいてもよい。
【0044】
レジスト層は例えば、上記フォトレジストを基板上に塗布後、紫外線(近紫外線、遠紫外線)、X線等の放射光により露光、硬化されて形成される。このようなレジスト層は、Si(シリコン)基板や表面を酸化したSi基板上に形成されるレジストパターン、電鋳金型製造やMEMS製造過程で形成されるレジストパターン、ナノインプリント技術で形成されるレジストパターン等に用いられる。
【0045】
上記したなかでも、電鋳金型製造やMEMS製造、ナノインプリント技術において用いられる高架橋、高硬化されたエポキシ系レジストによるレジスト層は、通常の剥離方法では剥離が困難である。本実施形態のレジスト剥離方法によれば、このようなエポキシ系フォトレジストで形成されるレジスト層であっても容易に剥離することができる。
【実施例1】
【0046】
以下、実施例について説明する。
[レジスト層付き基板の作製]
図1は、実施例において銅(Cu)基板2上にレジスト層3のパターンを形成したレジスト層付き基板1の一部を模式的に示す図である。レジスト層パターンは、図1に示すように、パターンが形成されず銅(Cu)基板2全面にレジスト層3の形成されたパターンなし(図1(a))、ライン幅Lが5〜50μm(L=(5,6,7,8,9,10,15,20,30,40,50)μm)でそれぞれレジスト層3によるパターンが形成されたL/Sパターン(図1(b))、一辺の長さPが5〜50μm(P=(5,6,7,8,9,10,15,20,30,40,50))μmの正方形でそれぞれレジスト層3によるパターンが形成されたホールパターン(図1(c))の3種を形成した。L/Sパターンでは、ライン幅Lのレジスト層領域と、同幅Lのレジスト除去領域が隣り合って形成され、この同幅からなるレジスト層とレジスト除去領域の組合せが、ライン幅L11=50μmから、L10=40μm、・・・・、L=5μmまでが幅方向にそれぞれ1個又は複数個ずつ順に設けられている。また、ホールパターンでは、一辺の長さ50μmの正方形からなるレジスト除去領域が横方向に間隔50μmで形成され、縦方向に、一辺の長さPの正方形からなるレジスト除去領域と一辺の長さPM−1の正方形からなるレジスト除去領域が、幅PM−1のレジスト層領域を介し、横方向に各大きさを同数で配置して、P11=50μm、P10=40μm、・・・P=5μmのレジスト除去領域が縦、横両方向にそれぞれ1個又は複数個ずつ、順に形成されている。
【0047】
Cu基板2としては、ミニテストピース10cm円形陰極板((株)山本鍍金試験器製)を用いた。Cu基板2に、ソフトエッチング装置(型番:SEDE−GE、メイワフォーシス(株)製)にて、圧力8Pa、電流5mA、処理時間60秒間の条件で親水化処理を行った後、レジスト層3を形成した。
【0048】
レジスト層3は次のように形成した。上記親水化処理を行ったCu基板2に、マイクロケム社製(日本化薬(株)販売)フォトレジストSU−8 2000.5を、スピンコーター(型番:1H−DX2、(株)ミカサ製)を用いて、500rpmで5秒間、その後、3000rpmで20秒間、塗布した。その後、デジタルホットプレート(型番:722A−1、Barnstead Thermolyne製)を用い、レジストを塗布した基板を95℃で3分間のプリベークを施し、膜厚0.4μmのレジスト層3を形成した。
【0049】
上記で得られたレジスト層3に、手動式マスクアライナ(型番:SUSS MA6 BSA、ズース・マイクロテック(株)製)を用いてマスクパターンを介して露光し、現像液(型番:P1171、東京化成工業(株)製)によって現像し、レジストパターンを形成した。その後、上記同様のデジタルホットプレートにて150℃で5分間のハードベークを施した。
【0050】
図2は、剥離性能評価に用いたレジスト層付き基板1を模式的に示す図である。上記の方法で、図2に示すように、Cu基板2表面に、上記したL/Sパターンの区域(A)、ホールパターンの区域(B)、L/Sパターンを90°回転したパターンを有する区域(C)及びホールパターンにおけるレジスト領域とレジスト剥離領域を反転したパターンを有する区域(D)をそれぞれ略正方形で形成した。区域(A)〜(D)は、各区域における、一方の対角方向に同種の区域が隣り合い、各辺で異なった種類の区域と隣り合うように形成した。区域(A)〜(D)を形成した周囲に、所定の幅で、パターンのない(「パターンなし」)区域(E)を形成した。これを、剥離評価対象のレジスト層付き基板1として用いた。
【0051】
[レジスト剥離液の調整]
ガラス製100mlビーカーに、80℃に加温したアミド系有機溶剤50gを収容し、剥離助剤(NaCl、KCl、LiClのいずれか)及び純水を表1で示される量でそれぞれ添加してレジスト剥離液の調整を行った。このとき、剥離助剤は、全て溶解しきらず、ビーカー底に一部沈殿した。
【0052】
レジスト剥離液の調整において使用した各成分は次のとおりである。
アミド系有機溶剤:有機合成用 N−メチル−2−ピロリドン(脱水)、関東化学(株)社製(NMP)
NaCl:特級 塩化ナトリウム(結晶)、関東化学(株)社製
KCl:特級 塩化カリウム(結晶)、関東化学(株)社製
LiCl:特級 塩化リチウム(結晶)、関東化学(株)社製
【0053】
[レジスト層の剥離処理]
図3は実施例におけるレジスト剥離処理に用いた装置を模式的に示す図である。上記ガラス製ビーカー4で調整したレジスト剥離液5を、デジタルホットプレートスターラー6(型番:PC−620、コーニング社製)を用い、液温80℃に維持した。この時、レジスト剥離液5の蒸発を防ぐために、ガラス製ビーカー4の上面に、時計皿7を蓋として載置した。
【0054】
液温が80℃に維持されていることを確認した後、撹拌子8と上記で製造したレジスト層付き基板1をガラス製ビーカー4内に設置し、液温を80℃に維持した状態で、撹拌速度320rpmで30分間、撹拌して、レジスト剥離処理を行った。この際、レジスト層付き基板1表面に撹拌子8が直接当たらないように設置治具9を使用した。また、加温時同様、時計皿7を蓋として使用した。
【0055】
レジスト剥離処理後、レジスト層付き基板1をレジスト剥離液5より取り出し、レジスト層付き基板1表面に付着したレジスト剥離液5を純水で充分に洗い流した後、レジスト層付き基板1上の水分を、窒素ガンを用いて飛ばし、充分に乾燥させた。
【0056】
[剥離性能の評価]
上記レジスト剥離処理後、純水洗浄、乾燥したレジスト層付き基板1の表面の、各区域をそれぞれ顕微鏡(型番:BH2、オリンパス(株)製)を用いて観察し、パターンなし区域(E)、L/Sパターンを形成した区域(A)、ホールパターンを形成した区域(B)についてレジスト剥離性能を次のように評価した。
【0057】
[パターンなしの場合]
1…レジスト層3が全く除去されなかった。
2…レジスト層3の総面積の40%以下程度が除去された。
3…レジスト層3の総面積の40%を超え70%以下程度が除去された。
4…レジスト層3の総面積の70%を超え100%までが度除去された。
【0058】
[ホールパターン及びL/Sパターンの場合]
1…レジスト層3が全く除去されなかった。
2…パターンサイズ50μm〜30μmのレジスト層3まで除去された。
3…パターンサイズ50μm〜10μmのレジスト層3まで除去された。
4…パターンサイズ50μm〜5μmのレジスト層3まで除去された。
【0059】
【表1】
【0060】
表1より、アミド系有機溶剤、水、剥離助剤を所定の割合で混合したレジスト剥離液を用いた実施例では、エポキシ系フォトレジストが高架橋、高硬化してなるレジスト層を除去できることが分かる。また、レジスト層パターンは、一般的にパターンなしの場合よりも、ホールパターンの方が剥離しにくく、さらに、L/Sパターンの方が剥離し難い。パターンの大きさでいえば、パターンの幅が小さいほど剥離しにくく、さらに、面積の小さい四角形パターンになるほど剥離しにくくなる。これは、レジスト層が膨潤したときに生じるレジスト層と基板との間の応力の寄与が大きいためであると考えられる。上記実施例のレジスト剥離液では、幅5μmのL/Sパターン、5μm四方のホールパターンのレジスト層まで剥離できたことが分かる。
【符号の説明】
【0061】
1…レジスト層付き基板、2…銅(Cu)基板、3…レジスト層、4…ガラス製ビーカー、5…レジスト剥離液、6…デジタルホットプレートスターラー、7…時計皿、8…撹拌子、9…設置治具。
図1
図2
図3