(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
活性炭に炭素数1〜10の炭化水素基を含む有機過酸化物、アゾ系化合物および1,2−ジフェニルエタン誘導体のいずれか1種以上を反応させることを特徴とする表面疎水性活性炭の製造方法。
【背景技術】
【0002】
吸着剤は、シリカアルミナ系の極性吸着剤と活性炭などの非極性吸着剤に大別される。前者は水その他の極性分子を吸着しやすく、一方、後者は非極性分子を吸着しやすい。活性炭は各種の吸着剤として広く活用され、1000m
2g
−1以上の比表面積をもつ機能性材料である。その製品化は100年以上前にさかのぼり、吸着機能などの付加価値の向上を目指した改良は現在も続いている。例えば、活性炭は本来疎水性の吸着剤であり水分含有率は小さいとされるが、実際には水分を含む製品も多く、疎水性の向上が望まれている。
【0003】
例えば、防毒マスク用有機ガス用吸収缶には活性炭が吸着剤として内臓されているが、活性炭が吸湿すると破過時間が短くなると言われている(非特許文献1)。
そのため、使用前の吸収缶は、防湿機能を有する包装材により包装されて保管する必要があり、また、使用中の吸収缶は湿気を避けて保管する必要がある。
【0004】
また、空気中の除去対象物質を活性炭で吸着するとき、空気中の水分との競争吸着となる。この場合、湿度が高くなると水分の吸着が多くなり除去対象物質の吸着量の低下をまねく。
【0005】
すなわち、活性炭表面には、製造の過程で賦活により生じた水酸基、カルボキシル基などの親水性基が存在する。このような活性炭を使用して、空気中あるいは水中の疎水性物質を吸着させようとする場合は、活性炭表面への吸着は、水と疎水性物質の競争反応となる。このため、活性炭の表面が親水性でありすぎると、疎水性物質は吸着されないのに対し、疎水性が強すぎると、水も近づけないために、水中あるいは高湿度化に存在する疎水性物質も吸着され難くなる。このことから明らかの様に、水中あるいは高湿度化の疎水性物質を効率よく吸着するためには、活性炭に適切な疎水性を付与することが必要である。
【0006】
活性炭あるいは活性炭素繊維(以下これらを活性炭材料と総称することがある)の表面を疎水性にする方法としては、活性炭材料を不活性雰囲気中で加熱したり、あるいは水素気流中で加熱する方法が知られている。(例えば、非特許文献2)。しかしながら、この様な方法は、600℃以上の高温で活性炭材料の過熱を行うので、多量のエネルギーを必要とし、その装置にも耐熱性が要求され、その結果、経済性に劣る。
【0007】
また活性炭を疎水化する方法として、疎水性粒子を活性炭に展着して疎水化する方法がしられている。(特許文献1、特許文献2)。しかし、この方法では活性炭の疎水性粒子が細孔に比べて大きいため、細孔までは疎水化出来ず、疎水性が不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事案に鑑み、本発明は、活性炭、活性炭素繊維などの活性炭材料の表面に適切な疎水性(本発明においては、表面の疎水性とは、材料の表面だけでなく、細孔内表面をも含む材料全体としての疎水性を意味するものとする)を与えることにより、水中あるいは高湿度下における疎水性物質の吸着性能を高めた活性炭材料を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、500℃以下の温度で簡単な装置を使用して、疎水性物質の吸着剤として有用な疎水性活性炭を経済的に得る技術を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の様な従来技術の問題点に留意しつつ研究を進めた結果、その表面に適切な疎水性を付与する場合に、活性炭材料を有機過酸化物、アゾ系化合物あるいは1,2−ジフェニルエタン誘導体で処理することにより、従来技術の問題点が大幅に軽減されることを見出し、本発明に至った。
【0013】
すなわち本発明は、以下の構成からなることを特徴とし、上記課題を解決するものである。
〔1〕 活性炭の表面を炭素数1〜10の炭化水素基で修飾されたことを特徴とする表面疎水性活性炭。
〔2〕 前記炭化水素基が、アルキル基、芳香族基および芳香族基を含有するアルキル基のいずれか1種以上であることを特徴とする前記〔1〕に記載の表面疎水性活性炭
〔3〕 前記炭化水素基がメチル基、エチル基およびフェニル基のいずれか1種以上であることを特徴とする前記〔1〕に記載の表面疎水性活性炭。
〔4〕 前記炭化水素基が有機過酸化物、アゾ系化合物および1,2−ジフェニルエタン誘導体のいずれか1種以上の分解生成物由来の炭化水素基であることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の表面疎水性活性炭。
〔5〕 前記活性炭が粉末、粒状および繊維状のいずれかであることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の表面疎水性活性炭。
〔6〕 活性炭に炭素数1〜10の炭化水素基を含む有機過酸化物、アゾ系化合物および1,2−ジフェニルエタン誘導体のいずれか1種以上を反応させることを特徴とする表面疎水性活性炭の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表面疎水化活性炭は、従来の活性炭と比べて著しく吸湿性を低下させた、疎水性活性炭を提供することが出来る。
また、本発明による活性炭の疎水化方法は、非特許文献2で記載されている、600℃以上の高温での加熱を必要とせず、また多量のエネルギーをも必要とせず、操作も簡単で安価で大量に製造することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において使用する活性炭は、その原料、形態などに特に制限はない。すなわち、処理される活性炭は、石油系、石炭系、PAN系、セルロース系、その他の有機材料などの任意の活性炭原料から得られたものでよく、またその形態も、粒状、粉状、繊維状(活性炭繊維)、活性炭繊維から得られるシート状などの任意の形態のものを使用することが出来る。
また、本発明における活性炭には、炭素微粒子凝集型(微粒子群または繊維状の基本粒子が全体としては溶融されることなく凝集し、孔は構成炭素微粒子がもつ内部の細孔のほかに、粒子の間隙(空隙部分)から成り立ったもの(例えばアセチレンブラック、カーボンブラックやカーボンエアロゲルなど)やこれらの混合物等も含まれる。
【0017】
本発明の表面疎水性活性炭は、活性炭の表面を炭化水素基で修飾されていることを特徴とする。
そして、前記炭化水素基は炭素数1〜10の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基、芳香族基および芳香族基を含有するアルキル基のいずれか1種以上であることがより好ましい。更には、前記炭化水素基がメチル基、エチル基およびフェニル基のいずれか1種以上であることが特に好ましい。
そして、前記炭化水素基は、有機過酸化物、アゾ系化合物および1,2−ジフェニルエタン誘導体のいずれか1種以上の分解生成物由来の炭化水素基であることが好ましい。
【0018】
前記炭化水素基の炭素数が10以下が好ましいのは、炭化水素基の炭素数が大きいと活性炭の細孔が塞がって比表面積が小さくなり、疎水性は示すが、吸着性能が低下する問題が生じるからである。
【0019】
本発明において使用する有機過酸化物は例えば以下の物が挙げられる。
アルキルパーオキシエステル系過酸化物(例えば、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシアセテート、t−アミルパーオキシベンゾエート3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ‐2−エチルヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t‐ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、t‐アミルパーオキシネオデカノエート、t‐アミルパーオキシピバレート、t‐アミルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐アミルパーオキシイソノナノエート、t‐ヘキシルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t‐ブチルパーオキシマレイン酸、t‐ブチルパーオキシ‐3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシラウレート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキシルモノカーボネート、t‐ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t‐ブチルパーオキシ‐3‐メチルベンゾエート及びt‐ブチルパーオキシベンゾエートの混合物など)、パーオキシカーボネート系過酸化物(例えば、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートなど)、パーオキシジカーボネート系過酸化物(例えば、ジ‐n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2‐エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ‐sec−ブチルパーオキシジカーボネートなど)、ジアルキルパーオキサイド系過酸化物{例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−アミルパーオキサイド、ジ(2‐t‐ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−,5−ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジ‐t‐ヘキシルパーオキサイドなど}、パーオキシケタール系過酸化物{例えば、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、エチル3,3−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブチレート、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t‐ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t‐ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t‐ブチルパーオキシ)‐2‐メチルシクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ‐(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパンなど}、アルキルハイドロパーオキサイド系過酸化物(例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−アミルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p‐メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなど)、ジアシルパーオキサイド系過酸化物(例えば、ジベンゾイルパーオキサイド、ジイソノナノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジスクシン酸パーオキサイド、ジ(4‐メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジ‐(3‐メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3‐メチルベンゾイル)パーオキサイドなど)、ケトン系過酸化物(例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなど)が挙げられる。
【0020】
これらの有機過酸化物のうち、t−ブチル基を有する有機過酸化物(例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイドやt−ブチルハイドロパーオキサイドなど)を用いれば、加熱分解により最初t−ブチルオキシラジカルが生成し、このラジカルが分解してメチルラジカルとアセトンが生成し、このメチルラジカルが活性炭と反応することにより、活性炭にメチル基が導入された本発明の化合物である疎水性活性炭を得ることができる。
【0021】
またt−アミル基を有する有機過酸化物(例えば、ジ−t−アミルパーオキサイドやt−アミルハイドロパーオキサイドなど)を用いれば、加熱分解により最初t−アミルオキシラジカルが生成し、このラジカルが分解してエチルラジカルとアセトン(あるいは、メチルラジカルとメチルエチルケトン)が生成し、このエチルラジカルあるいは、メチルラジカルが活性炭と反応することにより、活性炭にエチル基あるいはメチル基が導入された本発明の化合物である疎水性活性炭を得ることができる。
【0022】
またフェニル基を有する有機過酸化物(例えば、ジベンゾイルパーオキサイドなど)を用いれば、加熱分解により最初ベンゾイルラジカルが生成し、このラジカルが分解してフェニルラジカルと二酸化炭素が生成し、このフェニルラジカルが活性炭と反応することにより、活性炭にフェニル基が導入された本発明の化合物である疎水性活性炭を得ることができる。
あるいはジクミルパーオキサイドを用いれば、加熱分解によりクミルオキシラジカルが生成し。このラジカルが分解してフェニルラジカルとアセトン(あるいは、メチルラジカルとアセトフェノン)が生成し、このフェニルラジカルあるいは、メチルラジカルが活性炭と反応することにより、活性炭にフェニル基あるいはメチル基が導入された本発明の化合物である疎水性活性炭を得ることができる。
【0023】
なお本発明の疎水性活性炭には、メチル基、エチル基およびフェニル基などが導入された疎水性活性炭に、メチルラジカル、エチルラジカルおよびフェニルラジカルの前駆体である、t−ブトキシラジカル、t−アミルオキシラジカル、ベンゾイルラジカルおよびクミルオキシラジカルなどが活性炭と反応することにより得られるt−ブトキシ基、t−アミルオキシ基、ベンゾイル基およびクミルオキシ基などが導入された疎水性活性炭も含まれる。
またこれらのアルキル基(メチル基、エチル基、フェニル基、t−ブトキシ基、t−アミルオキシ基およびベンゾイル基など)の種類が複数導入された疎水性活性炭も含まれる。
【0024】
また本発明において炭素数1〜10の炭化水素基で修飾された表面疎水性活性炭とは、炭化水素基が化学的に活性炭に結合した状態のみならず、物理的に吸着した状態も含む。
【0025】
本発明において使用する1,2−ジフェニルエタン誘導体としては、2,3−ジメチル‐2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル‐2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジメチル‐2,3−ジ(p‐メチルフェニル)ブタン、2,3−ジエチル‐2,3−ジ(p‐メチルフェニル)ブタン、2,3−ジメチル‐2,3−ジ(p‐ブロモフェニル)ブタン、2,3−ジエチル‐2,3−ジ(p‐ブロモフェニル)ブタン、2,3−ジメチル‐2,3−ジ(p‐クロロフェニル)ブタン、2,3−ジエチル‐2,3−ジ(p‐クロロフェニル)ブタン、2,3−ジメチル‐2,3−ジ(p‐エトキシフェニル)ブタン、2,3−ジエチル‐2,3−ジ(p‐エトキシフェニル)ブタンなどが挙げられる。
これらのうち好ましいのは、2,3−ジメチル‐2,3−ジフェニルブタンである。
【0026】
本発明において使用するアゾ系化合物としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド]などが挙げられる。
これらのうち好ましいのは、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルである。
【0027】
活性炭に対する有機過酸化物、アゾ系化合物あるいは1,2−ジフェニルエタン誘導体の量は、通常5重量%から1000重量%である。
これらのうち好ましくは、10重量%から500重量%であり、特に好ましくは50重量%から300重量%である。
【0028】
活性炭と有機過酸化物、アゾ系化合物あるいは1,2−ジフェニルエタン誘導体の反応は、溶媒を用いても用いなくても良い。
【0029】
溶媒としては、有機過酸化物、アゾ系化合物あるいは1,2−ジフェニルエタン誘導体が溶解するものであれば特に限定されない。
【0030】
溶媒の具体的な例としては、脂肪族炭化水素系溶剤(ヘキサン、へプタン、オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン、デカン、ドデカンなど)、芳香族炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン、テトラリン、クロロベンゼン、ナフタレン、1‐メチルナフタレン、2‐メチルナフタレンなど)、エーテル系溶剤(ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、テトラハイドロフラン、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、アルコール系溶剤(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ドデシルアルコールなど)、非プロトン性溶剤(N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、N−メチルアセトアミドなど)、及びシリコーン系溶剤(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサンなど)などが挙げられる。
【0031】
活性炭と過酸化物、アゾ系化合物あるいは1,2−ジフェニルエタン誘導体の反応においては、不活性ガス雰囲気下、加圧、常圧あるいは減圧下どれでも良い。反応温度は室温から500℃であり、好ましくは室温から400℃である。反応時間は1時間から48時間であり、好ましくは2時間から24時間である。また、紫外線、電子線あるいは放射線(γ線など)を照射しても良く、その場合、反応時間を短縮することができる。
【0032】
本反応で作製した表面疎水性活性炭は、各種ガス吸着材、浄水材(浄水フィルターなど)、溶剤回収用材、脱臭フィルター、触媒担体、電極材、ガス分離精製材、脱硫用材、溶剤捕集用材(キャニスターなど)などに使用可能である。
【0033】
本発明の表面疎水性活性炭の製造方法は、活性炭だけではなく炭素繊維、グラファイトおよびこれらの混合物等にも適用ができる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。実施例は、本発明を説明するものであり、制限を加えるものではない。以下特記しない限り、部は重量部を意味する。
【0035】
(活性炭試)
活性炭試料は、クラレケミカル株式会社製活性炭KW−10−32である。この活性炭は顆粒状で150℃で6時間乾燥した物を用いた。
【0036】
(比表面積の算出)
窒素ガス吸着法のBET法で基本物性値を算出した。細孔径分布はMP法で求めた。測定の前処理として、最初に150℃で10時間真空加熱処理した。測定装置には、マイクロメトリック社製ASAP2020を用いた。水蒸気吸着等温線測定は日本ベル社製BELLSORP18を用いた。
【0037】
〔実施例1〕
活性炭0.5006g(クラレケミカル株式会社製活性炭KW−10−32)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(東京化成工業株式会社製)1.46gを50mlナシ型フラスコに入れ、15分間アルゴンを液相にバブリングすることによりアルゴン置換を行った。置換終了後、アルゴンフロー下150℃で24時間、次いで200℃で24時間反応を行った。反応終了後、アセトン50mlで3回洗浄、150℃で真空乾燥することにより本発明の表面疎水性活性炭を0.5793g(重量増加率:7.23%)得た。
【0038】
〔実施例2〕
活性炭0.5051g(クラレケミカル株式会社製活性炭KW−10−32)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(東京化成工業株式会社製)1.51gを100mlオートクレーブに入れて密封し、150℃で24時間、次いで200℃で24時間反応を行った。反応終了後、アセトン50mlで3回洗浄、150℃で真空乾燥することにより本発明の表面疎水性活性炭を0.5416g(重量増加率:15.72%)得た。
【0039】
〔実施例3〕
活性炭0.5056g(クラレケミカル株式会社製活性炭KW−10−32)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(東京化成工業株式会社製)1.51gを50mlナシ型フラスコに入れ、15分間アルゴンを液相にバブリングすることによりアルゴン置換を行った。置換終了後、アルゴンフロー下150℃で24時間、次いで200℃で24時間、300℃で24時間反応を行った。反応終了後、アセトン50mlで3回洗浄、150℃で真空乾燥することにより本発明の表面疎水性活性炭を0.5332g(重量増加率:5.46%)得た。
【0040】
〔実施例4〕
活性炭0.5060g(クラレケミカル株式会社製活性炭KW−10−32)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(東京化成工業株式会社製)1.51gを50mlナシ型フラスコに入れ、15分間アルゴンを液相にバブリングすることによりアルゴン置換を行った。置換終了後、アルゴンフロー下100℃で2時間、次いで130℃で16時間、200℃で5時間反応を行った。反応終了後、アセトン50mlで3回洗浄、150℃で真空乾燥することにより本発明の表面疎水性活性炭を0.5366g(重量増加率:6.05%)得た。
【0041】
〔実施例5〕
活性炭0.5102g(クラレケミカル株式会社製活性炭KW−10−32)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(東京化成工業株式会社製)1.51gを50mlナシ型フラスコに入れ、15分間アルゴンを液相にバブリングすることによりアルゴン置換を行った。置換終了後、アルゴンフロー下130℃で2時間、次いで200℃で6時間反応を行った。反応終了後、アセトン50mlで3回洗浄、150℃で真空乾燥することにより本発明の表面疎水性活性炭を0.5543g(重量増加率:8.64%)得た。
【0042】
〔実施例6〕
活性炭0.5109g(クラレケミカル株式会社製活性炭KW−10−32)、ジ−t−アミルパーオキサイド(アルケマ吉富株式会社製、商品名:ルペロックスDTA)1.51gを50mlナシ型フラスコに入れ、15分間アルゴンを液相にバブリングすることによりアルゴン置換を行った。置換終了後、アルゴンフロー下150℃で24時間、次いで200℃で24時間反応を行った。反応終了後、アセトン50mlで3回洗浄、150℃で真空乾燥することにより本発明の表面疎水性活性炭を0.5856g(重量増加率:14.62%)得た。
【0043】
〔実施例7〕
活性炭0.5048g(クラレケミカル株式会社製活性炭KW−10−32)、ジ−t−アミルパーオキサイド(アルケマ吉富株式会社製、商品名:ルペロックスDTA)1.51gを100mlオートクレーブに入れて密封し、150℃で24時間、次いで200℃で24時間反応を行った。反応終了後、アセトン50mlで3回洗浄、150℃で真空乾燥することにより本発明の表面疎水性活性炭を0.5706g(重量増加率:13.03%)得た。
【0044】
表1に実施例1〜7及び原料活性炭の比表面積の測定結果、及び細孔ピーク半径を示す。
【表1】
表1に25℃における各種活性炭(実施例1、6及び未処理活性炭)の細孔ピーク径を示す。
原料活性炭は細孔径ピークが3.8Åだが、活性炭表面にメチル基を被覆した実施例1の活性炭試料では、3.6Åと細孔径ピークが減少しており、活性炭表面にメチル基より大きいエチル基を被覆した実施例6の活性炭試料では細孔径ピークがさらに3.4Åまで減少した。
これらの結果から、本発明の表面疎水性活性炭は未処理活性炭が有機過酸化物に由来するアルキル基(メチル基、エチル基及びフェニル基など)で表面を修飾されたのは明らかである。
【0045】
水蒸気吸着特性
25℃における各種活性炭(実施例6及び原料活性炭)の水蒸気吸着等温線を
図1に示す。原料活性炭は相対圧P/P
0=0.4付近から急激な水蒸気の吸着が起こる。相対圧0.8付近では約450mlg
−1の水蒸気を吸着した。低相対圧領域において水蒸気の吸着量が小さいことは、活性炭表面と水分子との相互作用が弱いことを示している。活性炭表面にアルキル基(メチル基、エチル基およびフェニル基など)を被覆した活性炭試料では水蒸気の吸着量は減少した。表面が疎水化されたものと考えられる。