(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402010
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】後退防止構造および後退防止方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
E21D9/06 311A
E21D9/06 311C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-239618(P2014-239618)
(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公開番号】特開2016-102296(P2016-102296A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 直紀
(72)【発明者】
【氏名】上坂 龍平
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰司
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−063948(JP,A)
【文献】
特開2008−082068(JP,A)
【文献】
特開2013−147812(JP,A)
【文献】
特開2010−189939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00〜 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦リブと主桁とを備えて枠状に構成されたリブフレームと、スキンプレートと、を備えてなる推進函体と、前記スキンプレートの内側面に設けられた補強プレートと、前記スキンプレートの外側面に固定される固定ブラケットと、前記固定ブラケットが固定される反力受け部材とを備える後退防止構造であって、
前記補強プレートは、矩形形状を呈しており、少なくとも一側辺部が前記縦リブ側面か、前記主桁側面のいずれか一方に当接することで前記リブフレームに接合されており、
前記固定ブラケットは、前記スキンプレートの外側面に当接する当接プレートを備え、
前記当接プレートと前記補強プレートとで前記スキンプレートを挟んだ状態で、前記固定ブラケットが前記補強プレートに固定される
ことを特徴とする後退防止構造。
【請求項2】
前記補強プレートには、当該補強プレートに直交する直交補強プレートが接合されており、
前記直交補強プレートは、前記リブフレームに接合されている
ことを特徴とする請求項1に記載の後退防止構造。
【請求項3】
枠状のリブフレームとスキンプレートとを備えてなる推進函体と、前記スキンプレートの内側面に設けられた補強プレートと、前記スキンプレートの外側面に固定される固定ブラケットと、前記固定ブラケットが固定される反力受け部材とを備える後退防止構造であって、
前記補強プレートは、前記リブフレームに接合されており、
前記固定ブラケットは、前記スキンプレートの外側面に当接する当接プレートを備え、
前記当接プレートと前記補強プレートとで前記スキンプレートを挟んだ状態で、前記固定ブラケットが前記補強プレートに固定され、
前記スキンプレートには貫通孔が設けられ、
前記補強プレートにはボルト挿通孔が形成され、前記補強プレートの内表面に前記ボルト挿通孔を覆う袋ナットが水密状態で固定されており、
前記当接プレートにはボルト挿通孔が形成されており、
前記ボルト挿通孔と前記貫通孔にボルトが挿通されて、前記ボルトの先端部が前記袋ナットに螺合することで、前記固定ブラケットが前記補強プレートに固定される
ことを特徴とする後退防止構造。
【請求項4】
枠状のリブフレームとスキンプレートとを備えてなる推進函体を用いた推進工法で、新たな推進函体を設置する際に既設の推進函体が後退するのを防止する後退防止方法であって、
予め前記推進函体の前記スキンプレートの内側面に補強プレートを設けるとともに、前記補強プレートを前記リブフレームに接合させておき、
推進方向後端の前記推進函体が所定位置に達したら、反力受け部材に固定された固定ブラケットを、前記スキンプレートの外側面に当接させて、前記固定ブラケットと前記補強プレートとで前記スキンプレートを挟んだ状態で前記固定ブラケットと前記補強プレートとを固定し、
この状態で推進ジャッキを縮退させて、既存の前記推進函体の後方に新たな前記推進函体を設置して前記推進函体同士を固定する
ことを特徴とする後退防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進函体が後退するのを防止する後退防止構造および後退防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
推進工法においては、推進函体の挿入時に、押輪を盛り替える必要がある。押輪を取り外すと、推進函体を押圧する力が抜けるため、切羽の土水圧によって掘削機並びに推進函体が立坑内に押し戻される(バッキングが生じる)場合がある。このバッキングを防止する構造としては、推進函体を把持する構造やインターロックする部材を用いて係止する構造が知られている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1には、推進管の所定位置に設けられた注入孔を利用して推進管を係止したバッキング防止装置が開示されている。特許文献2には、最後尾の推進管を外側から囲うように複数の押圧盤を設け、各押圧盤で推進管を押さえ込む固定構造が開示されている。特許文献3には、楔型体を推進管外周にかみ合わせることで推進管を固定するバッキング防止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−189939号公報
【特許文献2】特開2008−111241号公報
【特許文献3】特開2003−176688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3のバッキング防止装置は、鉄筋コンクリート製のヒューム管からなる推進管を対象としたものであって、スキンプレートを有する推進函体を対象にしたものではない。スキンプレートは薄いため把持すると変形してしまうため、前記のバッキング防止装置は、表面にスキンプレートを備えた推進函体では適用することができない。
【0006】
このような観点から、スキンプレートを変形させずに推進函体の後退を防止することができる後退防止構造および後退防止方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するための請求項1に係る発明は、
縦リブと主桁とを備えて枠状に構成されたリブフレームと
、スキンプレートと
、を備えてなる推進函体と、前記スキンプレートの内側面に設けられた補強プレートと、前記スキンプレートの外側面に固定される固定ブラケットと、前記固定ブラケットが固定される反力受け部材とを備える後退防止構造であって、前記補強プレートは、
矩形形状を呈しており、少なくとも一側辺部が前記縦リブ側面か、前記主桁側面のいずれか一方に当接することで前記リブフレームに接合されており、前記固定ブラケットは、前記スキンプレートの外側面に当接する当接プレートを備え、前記当接プレートと前記補強プレートとで前記スキンプレートを挟んだ状態で、前記固定ブラケットが前記補強プレートに固定されることを特徴とする後退防止構造である。
【0008】
このような構成によれば、補強プレートと固定ブラケットの当接プレートでスキンプレートを挟んでいるので、推進函体を立坑内に後退させようとする力を受けてもスキンプレートが変形しにくい。また、補強プレートは、リブフレームに接合されているので、リブフレームと補強プレート間で力を直接伝達できるので、板厚の小さいスキンプレートに負担をかけない。
【0009】
また、本発明において、前記補強プレートには、当該補強プレートに直交する直交補強プレートが接合されており、前記直交補強プレートは、前記リブフレームに接合されている。このような構成によれば、補強プレートの剛性が高められるので、スキンプレートの補強効率が向上する。
【0010】
さらに、本発明において、前記スキンプレートには貫通孔が設けられ、前記補強プレートにはボルト挿通孔が形成され、前記補強プレートの内表面に前記ボルト挿通孔を覆う袋ナットが水密状態で固定されており、前記当接プレートにはボルト挿通孔が形成されており、前記ボルト挿通孔と前記貫通孔にボルトが挿通されて、前記ボルトの先端部が前記袋ナットに螺合することで、前記固定ブラケットが前記補強プレートに固定される。このような構成によれば、固定ブラケットを推進函体に容易に着脱することができるとともに、推進函体の内外において止水性を確保することができる。
【0011】
また、本発明は、枠状のリブフレームとスキンプレートとを備えてなる推進函体を用いた推進工法で、新たな推進函体を設置する際に既設の推進函体が後退するのを防止する後退防止方法であって、予め前記推進函体の前記スキンプレートの内側面に補強プレートを設けるとともに、前記補強プレートを前記リブフレームに接合させておき、推進方向後端の前記推進函体が所定位置に達したら、反力受け部材に固定された固定ブラケットを、前記スキンプレートの外側面に当接させて、前記固定ブラケットと前記補強プレートとで前記スキンプレートを挟んだ状態で前記固定ブラケットと前記補強プレートとを固定し、この状態で推進ジャッキを縮退させて、既存の前記推進函体の後方に新たな前記推進函体を設置して前記推進函体同士を固定することを特徴とする後退防止方法である。
【0012】
このような方法によれば、補強プレートと固定ブラケットの当接プレートでスキンプレートを挟んでいるので、推進函体を立坑内に後退させようとする力を受けてもスキンプレートが変形しにくい。また、補強プレートは、リブフレームに接合されているので、リブフレームと補強プレート間で力を直接伝達できるので、板厚の小さいスキンプレートに負担をかけない。したがって、新たな推進函体を設置する際に、スキンプレートを変形させずに、推進函体の後退を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る後退防止構造によれば、スキンプレートを変形させずに推進函体の後退を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る後退防止構造の外側を示した側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る後退防止構造の外側を示した斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る後退防止構造の内側を示した斜視図である。
【
図4】固定ブラケットを示した図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は斜視図である。
【
図5】固定ブラケットを固定した状態の推進函体を示した断面図である。
【
図6】推進函体の補強プレートと固定ブラケットを固定した状態を示した図であって、(a)は全体断面図、(b)は部分拡大断面図である。本発明の実施形態に係る後退防止構造を示した側面図である。
【
図7】新たな推進函体を装着する工程を説明するため図であって、発進立坑を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る後退防止構造を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
図7に示すように、後退防止構造は、掘削機(図示せず)の後方に連接された複数の推進函体1,1・・の後端に新たな推進函体1を設置する際に、切羽の土水圧によって掘削機および推進函体1が立坑5内に押し戻されるのを防止するための構造である。
【0016】
図3に示すように、推進函体1は、枠状のリブフレーム2とスキンプレート3とを備えてなる。リブフレーム2は、縦リブ2aと主桁2bを備えて構成されている。スキンプレート3は、たとえば厚さ5mmの鋼板からなる。スキンプレート3には、貫通孔4(
図6および
図7参照)が形成されている。貫通孔4は、後記する固定ブラケット20が取り付けられる一つの取付領域に3つ形成されている。貫通孔4の配置形状は、一の貫通孔4の推進方向後方に他の貫通孔4が形成され、さらにその上方に他の貫通孔4が一つ形成されている。つまり、各貫通孔4は、直角三角形の頂点上にそれぞれ配置されている。
【0017】
図1乃至
図3に示すように、後退防止構造は、補強プレート10と、固定ブラケット20と、反力受け部材30とを備えている。
【0018】
図3に示すように、補強プレート10は、スキンプレート3の内側面に設けられており、たとえば厚さ25mmの鋼板からなる。補強プレート10の表面は、スキンプレート3に当接している。補強プレート10は、矩形形状を呈しており、上辺部が縦リブ2aの下面に当接し、一方の側辺部が主桁2bの側面に当接している。補強プレート10の上辺部は、全長に亘って縦リブ2aに溶接されている。補強プレート10の一方の側辺部は、全長に亘って主桁2bに溶接されている。補強プレート10の下辺部および他方の側辺部は、全長に亘ってスキンプレート3の内側面に溶接して固定されている。
【0019】
補強プレート10には、ボルト挿通孔11(
図6参照)が形成されている。ボルト挿通孔11には、固定ブラケット20を推進函体1に固定するためのボルトB1(
図5および
図6参照)が挿通される。ボルト挿通孔11は、スキンプレート3の貫通孔4に対応する位置に形成されている。貫通孔4は、ボルト挿通孔11よりも大径となっている。ボルト挿通孔11の周縁部と貫通孔4の内周面は、全周に亘ってシール溶接されている。補強プレート10の内表面には、ボルト挿通孔11を覆う袋ナット12が固定されている。袋ナット12の座面は補強プレート10の表面に当接している。袋ナット12の座面側端部の外周縁部は、全周に亘って補強プレート10の表面にシール溶接されている。つまり、袋ナット12が補強プレート10に水密状態で固定されている。
【0020】
補強プレート10の内側表面には、補強プレート10に直交する直交補強プレート15が接合されている。直交補強プレート15は、たとえば厚さ25mmの鋼板からなる。直交補強プレート15は、長方形の一の出隅が面取りされた形状(五角形形状)を呈している。直交補強プレート15の長辺部は、補強プレート10の表面に当接しており、長辺部の全長に亘って補強プレート10に溶接されている。直交補強プレート15の短辺部は、主桁2bの側面に当接しており、短辺部の全長に亘って主桁2bに溶接されている。直交補強プレート15は、縦リブ2aと平行に配置されることが望ましい。また、直交補強プレート15は、主桁2bに対して垂直に当接されることが望ましい。
【0021】
図1および
図2に示すように、固定ブラケット20は、スキンプレート3の外側面に固定される。固定ブラケット20は、推進函体1の左右両側の下部にそれぞれ固定される(
図5参照)。
図4にも示すように、固定ブラケット20は、函体当接プレート21と、反力受け当接プレート22と、補強リブ23とを備えてなる。函体当接プレート21と反力受け当接プレート22は、たとえば厚さ25mmの鋼板からなり、ともに矩形形状を呈している。函体当接プレート21と反力受け当接プレート22は、断面L字状に組み合わされて、溶接されている。
【0022】
函体当接プレート21は、貫通孔4の周辺のスキンプレート3の取付領域に当接する。函体当接プレート21には、ボルト挿通孔24(
図4および
図6参照)が形成されている。ボルト挿通孔24には、ボルトB1(
図5および
図6参照)が挿通される。ボルト挿通孔24は、上下二段に二つずつの合計四箇所に形成されている。この四つのボルト挿通孔24のうち三つのボルト挿通孔24は、スキンプレート3の貫通孔4の位置に対応する。固定ブラケット20は、推進函体1の左右両側に天地が逆さまの状態でそれぞれ固定されるが、ボルト挿通孔24が四箇所に形成されていることによって、推進函体1の左右両側の三つの貫通孔4のいずれにも対応することができる。
【0023】
補強リブ23は、函体当接プレート21と反力受け当接プレート22とに接合されている。補強リブ23は、略直角三角形状を呈する鋼板からなり、直角を挟む二辺部のうち、一方の辺部は、函体当接プレート21の表面に溶接されている。他方の辺部は、反力受け当接プレート22の表面に溶接されている。補強リブ23には、ネジ孔26が形成されている。ネジ孔26には、ネジ付フック(図示せず)が螺合され、固定ブラケット20を搬送する際に利用される。補強リブ23は、固定ブラケット20の上部と下部の二箇所に設けられている。二枚の補強リブ23,23は、互いに平行になっている。
【0024】
図7に示すように、反力受け部材30は、切羽の土水圧が掘削機および推進函体1を立坑5内に押し戻そうとする力を受ける部材であって、立坑5内に設けられた支持壁41に接続された発進架台6に固定されている。発進架台6は、フレーム状に組み合わされた支持梁を備えている。反力受け部材30は、支持梁に固定されている。
【0025】
図1および
図2に示すように、反力受け部材30は、縦材31と横材32とを備えている。縦材31は、H型鋼にて構成されている。縦材31は、推進方向前後に配置されたフランジ31b,31bと、フランジ31b,31bを繋ぐウエブ31aとを備えている。縦材31の下端部には、ベースプレート35が溶接されており、ボルト・ナットで発進架台6に固定されている。縦材31には、補強リブ33が適宜設けられている。補強リブ33は、ウエブ31aおよびフランジ31b,31bに溶接されている。補強リブ33は、固定ブラケット20の固定部分と横材32の固定部分にそれぞれ設けられている。
【0026】
横材32は、縦材31の中間部の後面(フランジ31b)に溶接されている。横材32も、H型鋼にて構成されている。横材32は、上下に配置されたフランジ32b,32bと、フランジ32b,32bを繋ぐウエブ32aとを備えている。横材32の後端部は、ボルト・ナットで発進架台6に固定されている。横材32には、補強リブ33が適宜設けられている。横材32の前端部の縦材31との接続部分の下部には、ハンチ部34が形成されている。前記接続部分の上部には、孔付きのブラケット36が取り付けられており、反力受け部材30を搬送する際に利用される。
【0027】
次に、本実施形態にかかる後退防止構造を用いて、新たな推進函体1を設置する際の方法(後退防止方法)を、
図7を参照しながら説明する。
図7に示すように、推進工法では、推進函体1を、推進ジャッキ40で順次地山に押し込みながら推進していく。推進ジャッキ40は、立坑5内に形成された支持壁41に固定されている。推進ジャッキ40は複数設けられており、その先端に環状の押圧部材42が設けられている。この押圧部材42を介して、推進函体1が地山側に押圧される。なお、
図7中、符号9は、推進函体1が載置されるレール架台を示す。
【0028】
推進函体1の推進を行っているときは、固定ブラケット20は、反力受け部材30から取り外しておく。推進ジャッキ40が伸長して、後端の推進函体1が反力受け部材30の側部の所定位置(推進函体追加位置)に達したら、固定ブラケット20を反力受け部材30に固定する。その後、固定ブラケット20の外側から、ボルト挿通孔24、スキンプレート3の貫通孔4、補強プレート10のボルト挿通孔11の順に、ボルトB1を挿通させた後、ボルトBの先端を袋ナット12に螺合させる。これによって、推進函体1が反力受け部材30に固定される。この状態で、推進ジャッキ40を縮退させて、押圧部材42を後方に退避させる(
図7中、二点鎖線にて図示)。そして、最後尾の推進函体1の後方に新たな推進函体1を設置して、推進函体1,1同士を固定する。
【0029】
このとき、切羽に作用する土水圧は、推進函体1を押し戻そうとする方向に作用するが、固定ブラケット20が反力受け部材30によって支持壁41側から係止されているので、推進函体1の後退を防止できる。
【0030】
最後尾の推進函体1のスキンプレート3は、補強プレート10によって補強されているとともに補強プレート10と固定ブラケット20の函体当接プレート21とで挟まれているので、推進函体1を後退させようとする力を受けても変形しにくい。また、補強プレート10は、リブフレーム2(縦リブ2aと主桁2b)に溶接されているので、推進函体1に強固に固定できるとともに、推進函体1を押し戻そうとする力は、リブフレーム2から補強プレート10およびボルトB1を介して固定ブラケット20に直接伝達される。したがって、板厚の小さいスキンプレート3に負担をかけない。
さらに、ボルトB1を締め付けつけることで、固定ブラケット20を推進函体1に固定できるので、溶接などで固定する場合と比較して、作業時間を大幅に低減できるとともに、現場作業員の熟練による溶接精度のばらつきを排除できる。さらに、固定ブラケット20は、繰り返し利用できるので、コストダウンおよび資源の有効利用を達成できる。
【0031】
また、
図3に示すように、補強プレート10には直交補強プレート15が接合されているので、補強プレート10の剛性が高められる。したがって、スキンプレート3の補強効率がより一層向上する。さらに、直交補強プレート15が主桁2bに溶接されているので、補強プレート10の剛性がさらに高められる。
【0032】
一方、
図6の(b)に示すように、補強プレート10のボルト挿通孔11を覆う袋ナット12が水密状態で設けられているので、ボルト挿通孔11内に流れ込んだ水が袋ナット12の周辺から推進函体1内に浸入するのを防止できる。さらに、ボルト挿通孔11の周縁部の補強プレート10表面と貫通孔4の内周面が全周に亘ってシール溶接されているので、ボルト挿通孔11内に流れ込んだ水がスキンプレート3と補強プレート10との間から推進函体1内に浸入するのを防止できる。したがって、推進函体1の内外で止水性を確保することができる。
【0033】
また、固定ブラケット20は、L字状に溶接固定された函体当接プレート21と反力受け当接プレート22と、これらの内側面同士を繋ぐ補強リブ23とを備えてなるので、剛性が高い。したがって、推進函体1からの土水圧を、反力受け部材30、支持梁から支持壁41へと確実に伝達することができる。
【0034】
以上のような後退防止構造および後退防止方法によれば、スキンプレート3を備えてなる鋼製の推進函体1であっても、スキンプレート3を変形させることなく、推進函体1のバッキングを防止することができる。
【0035】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、補強プレート10は矩形形状を呈しているが、これに限定されるものではない。縦リブ2aと主桁2bにそれぞれ当接する直線部を有するとともに、ボルト挿通孔を形成するスペースを備えていれば、補強プレート10の形状は問わない。
【0036】
また、前記実施形態では、補強プレート10のボルト挿通孔11と、スキンプレート3の貫通孔4は、三つずつ形成されているがこれに限定されるものではない。切羽の土水圧に応じて、減らしてもよいし増やしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 推進函体
2 リブフレーム
2a 縦リブ
2b 主桁
3 スキンプレート
4 貫通孔
10 補強プレート
11 ボルト挿通孔
12 袋ナット
15 直交補強プレート
20 固定ブラケット
21 函体当接プレート(当接プレート)
24 ボルト挿通孔
30 反力受け部材