【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)日本病態生理学会雑誌 第23巻2号 第56頁,発行日 平成26年7月31日 (2)第24回日本病態生理学会大会,開催日 平成26年8月10日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乳酸菌が、ストレプトコッカス・フェーカリス 129 BIO 3B(Streptococcus faecalis 129 BIO 3B)を含む請求項1〜3のいずれかに記載の剤。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、乳酸菌を含有する神経機能改善剤(以下、本発明の剤という)を提供する。本発明の剤は、乳酸菌を含有していればよく、さらに他の成分を含有していてもよい。乳酸菌は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0009】
本発明における乳酸菌は特に限定されず、例えば、ビフィズス菌、乳酸桿菌、乳酸球菌等の乳酸菌が挙げられる。
【0010】
本発明においては使用される乳酸菌は、例えば、Bifidobacterium bifidum、B. longum、 B. breve、B. adolescentis、B. infantis、B.pseudolongum、B.thermophilum等のビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属のビフィズス菌;例えば、Lactobacillus acidophilus、L. casei、L. gasseri、L. plantarum、L. delbrueckii subsp bulgaricus、L. delbrueckii subsp lactis、L. fermentum、L. helveticus、L. johnsonii、L. paracasei subsp. paracasei、L. reuteri、L. rhamnosus、L. salivarius、L. brevis等のラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸桿菌;例えば、Leuconostoc mesenteroides等のリューコノストック属、Streptococcus(Enterococcus) faecalis、Streptococcus(Enterococcus) faecium、 Streptococcus(Enterococcus) hirae、Streptococcus thermophilus等のストレプトコッカス(Streptococcus)属(現在の分類学上、エンテロコッカス (Enterococcus)属に分類される)、Lactococcus lactis、L. cremoris等のラクトコッカス(Lactococcus)属、Tetragenococcus halophilus等のテトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属、Pediococcus acidilactici、P. pentosaceus等のペディオコッカス(Pediococcus)属、Oenococcus oeni等のオエノコッカス(Oenococcus)属等の乳酸球菌等が挙げられる。
これらの菌体は、例えばATCC又はIFO等の機関や財団法人 日本ビフィズス菌センターなどから容易に入手することができる。また、市販されているものを適宜使用することもできる。
【0011】
本明細書中においては、ストレプトコッカス(Streptococcus)属とは、ストレプトコッカス(Streptococcus)属及びエンテロコッカス(Enterococcus)属を包含する。
【0012】
乳酸菌の分類体系は1980年頃までは細胞形態、細胞配列、乳酸発酵形式、糖の資化性、DNA−DNA相同性などによって分類されていたが、現在では化学分類学的性質や16SrRNA遺伝子の塩基配列を用いた遺伝学的手法により、新規属の提案や既知属の再分類が活発に行われるようになったため、現在の分類学ではストレプトコッカス・フェーカリス 129 BIO 3Bはエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)に属している。
【0013】
本発明において、乳酸菌は、ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する菌を含むことが好ましい。ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌は、好ましくは、現在乳酸菌の分類に使用されている1984年以降の分類学上、エンテロコッカス (Enterococcus)属に分類される乳酸菌である。ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌として、ストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)が好ましく、さらに、ストレプトコッカス・フェーカリス 129 BIO 3B(Streptococcus faecalis 129 BIO 3B)を必須として用いるのが最も好ましい。
【0014】
本発明の効果を奏する限り、上記乳酸菌以外に、糖化菌、酪酸菌等の有用菌を含んでもよい。例えば、Bacillus subtilis、Bacillus mesentericus、Bacillus polyformenticus等の糖化菌;例えば、Bacillus coagulans等の有胞子性乳酸菌; Bacillus toyoi、B.licheniformis、Clostridium butyricum等の酪酸菌;その他の有用菌が挙げられる。
これらの菌体は、例えばATCC又はIFOなどの機関や財団法人 日本ビフィズス菌センターなどから容易に入手することができる。また、市販されているものを適宜使用することもできる。
【0015】
上記菌体は、公知の条件又はそれに準じる条件で培養することにより得ることができる。例えば、乳酸菌の場合は、通常、グルコ−ス、酵母エキス、ペプトン等を含む液体培地で上記乳酸菌の1種又は2種以上を通常約25〜45℃程度で約4〜72時間程度、好気又は嫌気培養し、培養液から菌体を集菌し、洗浄し、湿菌体を得る。また、糖化菌の場合は、通常、肉エキス、カゼイン製ペプトン、塩化ナトリウム等を含む寒天培地で1種又は2種以上を通常約25〜45℃程度で約4〜72時間程度、好気培養し、培地から菌体を集菌し、洗浄し、湿菌体を得る。
【0016】
本発明において用いる乳酸菌は、生菌が好ましいが、菌の処理物を用いてもよい。菌の処理物とは、乳酸菌に何らかの処理を加えたものをいい、その処理は特に限定されない。該処理物として具体的には、該菌体の超音波などによる破砕液、該菌体の培養液又は培養上清、それらを濾過又は遠心分離など固液分離手段によって分離した固体残渣などが挙げられる。また、細胞壁を酵素又は機械的手段により除去した処理液、トリクロロ酢酸処理又は塩析処理などして得られるタンパク質複合体(タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質など)又はペプチド複合体(ペプチド、糖ペプチド等)なども該処理物として挙げられる。さらに、これらの濃縮物、これらの希釈物又はこれらの乾燥物なども該処理物に含まれる。また、該菌体の超音波などによる破砕液、該細胞の培養液又は培養上清などに対し、例えば各種クロマトグラフィーによる分離などの処理をさらに加えたものも本発明における該処理物に含まれる。乳酸菌の死菌体も本発明における該処理物に含まれる。上記死菌体は、例えば、酵素処理、約100℃程度の熱をかける加熱処理、抗生物質などの薬物による処理、ホルマリンなどの化学物質による処理、γ線などの放射線による処理などにより得ることができる。これらの技術は従来充分に確立されていて、本発明において、そのような技術に従ってよい。
【0017】
本発明において使用される乳酸菌は、乾燥物(菌体乾燥物)であってもよく、菌体乾燥物としては、シングルミクロンの菌体乾燥物が好ましい。菌体乾燥物とは、通常は乾燥された個々の菌体又は乾燥された菌体の集合物をいう。また、シングルミクロンとは、小数第1位を四捨五入して1〜10μmをいう。本発明に使用される乳酸菌として、シングルミクロンの菌体乾燥物を使用すると、製剤中の生菌率が上がり、その結果、神経機能の亢進作用が高くなる。シングルミクロンの乳酸菌の製造方法も従来公知であり、本発明の実施においても、公知の方法に従ってよい。
【0018】
菌体乾燥物の好ましい製造方法について説明する。上記菌体を溶媒に分散して菌体液とする。溶媒は、当業界で用いられる公知の溶媒を用いてよいが、水が好ましい。また、所望によりエタノールを加えてよい。エタノールを加えることによって、最初にエタノールが気化し、ついで水が気化するから、段階的な乾燥が可能となる。さらに、菌体液は、懸濁液であってもよい。溶媒は上記で示したものと同じでよい。また、懸濁させる際、懸濁剤、例えばアルギン酸ナトリウム等を使用してもよい。
また、上記菌体液には、公知技術に従ってさらに賦形剤、結合剤、崩壊剤、静電気防止剤など当業界で一般に用いられている添加剤を通常の配合割合で添加してもよい。
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、粉末セルロース、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、キサンタンガム等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、部分アルファー化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチ等が挙げられる。静電気防止剤としては、例えば微粉または非微粉タルク、コロイド状シリカ、加工シリカ、沈降シリカ等が挙げられる。
【0019】
上記菌体液を、菌体乾燥物を製造するために噴霧乾燥装置による乾燥操作に付する。噴霧乾燥装置は、シングルミクロンの噴霧液滴を形成できる微粒化装置を備えた噴霧乾燥装置が好ましい。非常に粒径の小さな噴霧液滴にすると、噴霧液滴の単位質量あたりの表面積が大きくなり、乾燥温風との接触が効率よく行われるため、生産性が向上する。
ここでシングルミクロンの液滴とは、好ましくは噴霧液滴の粒径が小数第1位を四捨五入して1〜10μmであるものをいう。
【0020】
噴霧乾燥装置には、微粒化装置が、例えばロータリーアトマイザー(回転円盤)、加圧ノズル、又は圧縮気体の力を利用した2流体ノズルや4流体ノズルである噴霧乾燥装置が挙げられる。
噴霧乾燥装置は、シングルミクロンの噴霧液滴を形成できるものであれば、上記形式のいずれの噴霧乾燥装置であってもよいが、4流体ノズルを有する噴霧乾燥装置を使用するのが好ましい。
【0021】
4流体ノズルを有する噴霧乾燥装置では、例えば4流体ノズルの構造としては、好ましくは気体流路と液体流路とを1系統として、これを2系統ノズルエッジにおいて対称に設けたもので、ノズルエッジに流体流動面となる斜面を構成している。
また、ノズルエッジの先端の衝突焦点に向かって、両サイドから圧縮気体と液体を一点に集合させる外部混合方式の装置がよい。この方式であれば、ノズル詰まりがなく長時間噴霧することが可能となる。
【0022】
4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置について
図1を用いてさらに詳しく説明する。4流路ノズルのノズルエッジにおいて、液体流路3又は4から湧き出るように出た菌体液が、気体流路1又は2から出た高速気体流により流体流動面5で薄く引き伸ばされ、引き伸ばされた液体はノズルエッジ先端の衝突焦点6で発生する衝撃波で微粒化させることにより、シングルミクロンの噴霧液滴7を形成する。
【0023】
圧縮気体としては、例えば、空気、炭酸ガス、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス等を用いることができる。とくに、酸化されやすいもの等を噴霧乾燥させる場合は、炭酸ガス、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガスを用いるのが好ましい。
圧縮気体の圧力としては、通常約1〜15kg重/cm2、好ましくは約3〜8kg重/cm2である。
ノズルにおける気体量は、ノズルエッジ1mmあたり、通常約1〜100L/分、好ましくは約10〜20L/分である。
【0024】
通常、その後、乾燥室において、その噴霧液滴に乾燥温風を接触させることで水分を蒸発させ菌体乾燥物を得る。
乾燥室の入り口温度は、通常約2〜400℃、好ましくは約5〜250℃、より好ましくは約5〜150℃である。入り口温度が約200〜400℃の高温であっても、水分の蒸発による気化熱により乾燥室内の温度はそれほど高くならず、また、乾燥室内の滞留時間を短くすることにより、生菌の死滅や損傷をある程度抑えることができる。
出口温度は、通常約0〜120℃、好ましくは約5〜90℃、より好ましくは約5〜70℃である。
【0025】
上記のように菌体乾燥物の粒径を小さくすることにより、生菌率が上がり、生菌率の多い製剤を提供できるという利点がある。
すなわち、シングルミクロンの菌体乾燥物を得るためにはシングルミクロンの噴霧液滴を噴霧するのが好ましい。噴霧液滴の粒径を小さくすると、噴霧液滴の単位質量あたりの表面積が大きくなるので、乾燥温風との接触が効率よく行われ、乾燥温風の熱による菌体の死滅又は損傷を極力抑えることができる。その結果として、生菌率が上がり生菌数の多い菌体乾燥物が得られる。
【0026】
本発明の剤は、乳酸菌を単独で使用または他の成分を混合することにより容易に製造され得る。他の成分は、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。本発明の剤は、医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等の形態として用いることができる。このような、本発明の剤を含む医薬品も、本発明の好ましい実施態様の1つである。
【0027】
本発明の剤の剤形は、それぞれの成分の物理化学的性質、生物学的性質等を考慮して投与に好適な剤形とすればよい。医薬品の場合には、経口投与に適しており、内服剤とすることが好ましい。内服剤の剤型としては、例えば、錠剤、ペレット、細粒剤、散剤、顆粒剤、丸剤、チュアブル剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤等が挙げられる。中でも、錠剤又は散剤が好ましい。さらに、本発明の剤は、乳酸菌の他に、賦形剤(例えば、乳糖、デンプン、結晶セルロース又はリン酸ナトリウム等)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えばデンプン、カルメロースナトリウム等)、滑沢剤(例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、マクロゴール、ショ糖脂肪酸エステル等)、安定剤(亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン等)、着色剤、賦香剤、光沢剤等、当業界で使用される公知の添加剤等を適宜含有していてもよい。製剤中に含まれる乳酸菌の合計量は、通常、最終製剤中に約0.000001〜99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。
【0028】
なお、乳酸菌は、一般に嫌気性で乾燥状態では空気又は酸素に対して弱く、また、高温と湿気に弱いため、組成物の製剤化に際してはできるだけ、不活性ガスの存在下又は真空、低温下で、処理することが好ましい。
【0029】
乳酸菌を含有する組成物を固形製剤にする場合、乾燥法によって、単に粉末同士を混合してもよいし、またその粉末を圧縮して顆粒にしたり、錠剤にしたりしてもよい。湿式法により顆粒、錠剤を製造する場合は、結合剤の水溶液を用いて練合、乾燥し、目的の固形剤とすることができる。さらに、この様にして得られた粉末又は顆粒をカプセルに充填して、カプセル剤とすることもできる。
【0030】
例えば、錠剤を製造する場合は、公知の打錠機を用いるとよい。該打錠機としては、例えば単発式打錠機又はロータリー型打錠機等が挙げられる。また、丸剤、チュアブル剤又はトローチ剤の製造方法は、公知の方法に従って行われてよく、例えば錠剤を製造するのと同じ手段で作ることができる。
【0031】
微量の有効成分(乳酸菌)を大量の他の粉末と混合し均一な混合物を得るためには、いわゆる段階的混合法を採るのがよい。例えば、有効成分をその100〜200容量倍の粉末と混合して均一な粉末を得、これを残りの粉末と混合すると均一な粉末を得ることができる。
含水物からの乾燥には、L−乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥などの手段をとることができる。乳酸菌の乾燥菌体を得るには、適当な安定剤、例えばグルタミン酸モノナトリウム塩、アドニトールなどを加えた中性の緩衝液に菌を懸濁させておき、自体公知の方法で乾燥することもできる。
【0032】
本発明において、乳酸菌の投与量は、生菌を用いる場合には、生菌の菌数にして通常約10
3〜10
12個/大人/回、好ましくは10
5〜10
10個/大人/回、より好ましくは10
6〜10
10個/大人/回である。ここで、製剤中の生菌数の測定は菌体によって異なるが、例えば日本薬局方外医薬品規格に記載されたそれぞれの菌体の定量方法により容易に測定できる。
【0033】
本発明の剤は、中でも、炎症状態の神経の変化の予防又は抑制のために好適に用いられる。炎症状態の神経の変化とは、例えば、一酸化窒素作動性神経の減弱、タキキニン及びアセチルコリン作動性神経を除く平滑筋収縮作用を有する神経の出現等のことである。「平滑筋」は、特に限定されるものではないが、例えば、血管平滑筋、気管支平滑筋、消化器平滑筋(例えば、食道、胃、空腸、回腸、大腸等の平滑筋等)、尿路平滑筋(例えば、尿管、膀胱、尿道等の平滑筋等)、胆管、膵管等に代表される各種分泌管の平滑筋等が挙げられる。
【0034】
神経機能の変化により生じる症状としては特に限定されず、平滑筋運動の異常、炎症(炎症性腸疾患(IBD)、皮膚炎、逆流性食道炎、気管支炎、喀痰、鼻炎、リューマチ関節炎、変形性関節炎、結膜炎、眼炎、膀胱炎、大腸炎等)、疼痛、偏頭痛、神経痛、掻痒、気管支拡張症、咳、便秘、排尿障害、尿失禁、尿閉、頻尿、過活動膀胱、切迫早産、循環障害、高血圧症等が挙げられる。中でも、大腸炎、便秘に好適に適用される。炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎、便秘以外の公知の平滑筋運動異常による疾病(例えば、巨大結腸症等)にも好適に使用される。個体としてはヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等の哺乳類が好ましく、特にヒトが好ましい。
【0035】
本発明の剤は、例えば、神経機能の変化により生じる症状のある個体(動物)に好適に適用することができる。また、本発明の剤は、副作用がなく安全であることから、予防目的で長期間投与することもできる。このため、上記神経機能の変化により生じる症状を発症した個体だけでなく、健常な個体、該症状を発症するおそれのある個体(動物)等にも好適に適用することができる。中でも、上記神経機能の変化により生じる症状を発症した個体に特に好適に適用される。
【0036】
本発明の剤は、投与の方法も簡単で、しかも副作用がほとんどないものである。
【0037】
本発明の剤は、炎症状態の神経の変化の予防又は抑制する剤、炎症による一酸化窒素作動性神経の減弱を予防又は抑制する剤、炎症によるタキキニン及びアセチルコリン作動性神経を除く平滑筋収縮作用を有する神経の発現を予防又は抑制する剤として好適に使用することができるものである。
【0038】
本発明の剤は、上述した医薬品として用いることができるほか、機能性食品、特定保健用食品、食品添加物、ドリンク剤などの飲食品として用いることができるものである。本発明の剤を含む神経機能改善用飲食品組成物、炎症状態の神経の変化の予防又は抑制するための飲食品組成物も、本発明の1つである。本発明に係る飲食品組成物を、神経機能の変化若しくは炎症を発症した、又はそのおそれのあるヒトを含む哺乳動物に摂取させることにより、神経機能を改善することができる。飲食品組成物中に含まれる乳酸菌の合計量は、通常、最終組成物中に約0.000001〜99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。乳酸菌と併用される医薬成分としては、例えば、Bacillus subtilis、Bacillus mesentericus、Bacillus polyformenticus等の糖化菌;例えば、Bacillus coagulans等の有胞子性乳酸菌; Bacillus toyoi、B.licheniformis、Clostridium butyricum等の酪酸菌;その他の有用菌、副交感神経刺激薬、平滑筋収縮剤、クロルゾキサゾン、塩酸パパべリン、イソサミジン等の平滑筋弛緩剤、血管弛緩剤、血管拡張剤、血流増加剤、血流改善剤、前立腺平滑筋弛緩剤、膀胱平滑筋弛緩剤、フラボキサート等の平滑筋直接作用薬等が挙げられる。
【0039】
本発明の剤を飲食品組成物として用いる場合、その形態は特に限定されない。また、飲食品組成物は、自然流動食、半消化態栄養食若しくは成分栄養食、又はドリンク剤等の加工形態とすることもできる。さらに、本発明にかかる飲食品組成物は、アルコール飲料又はミネラルウォーターに用時添加する易溶性製剤としてもよい。より具体的には、本発明に係る飲食品組成物は、例えばビスケット、クッキー、ケーキ、キャンディー、チョコレート、チューインガム、和菓子などの菓子類;パン、麺類、米飯又はその加工品;清酒、薬用酒などの発酵食品;ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージ、マヨネーズなどの畜農食品;果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、茶などの飲料等の形態とすることができる。
【0040】
また、本発明に係る飲食品組成物は、例えば、医師の食事箋に基づく栄養士の管理の下に、病院給食の調理の際に任意の食品に本発明の飲食品組成物を加え、その場で調製した食品の形態で患者に与えることもできる。本発明の飲食品組成物は、液状であっても、粉末や顆粒などの固形状であってもよい。
【0041】
本発明に係る飲食品組成物は、食品分野で慣用の補助成分を含んでいてもよい。上記補助成分としては、例えば乳糖、ショ糖、液糖、蜂蜜、ステアリン酸マグネシウム、オキシプロピルセルロース、各種ビタミン類、微量元素、クエン酸、リンゴ酸、香料、無機塩などが挙げられる。
【0042】
本発明に係る飲食品組成物の摂取量は、摂取する哺乳動物の生活習慣病の状態、年齢、性別などによって異なるので、一概には言えないが、乳酸菌を、上述した医薬品の場合と同様の量摂取させることが好ましい。
【0043】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた態様を含む。
【実施例】
【0044】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0045】
[実施例1](乳酸菌菌体乾燥物の調製及び該菌体乾燥物中の生菌数の測定)
1.菌(3B:Streptococcus faecalis 129 BIO 3B)の調製方法
3Bの菌体乾燥物の調製は以下のように行った。すなわち、試験管に入った3Bの凍結保存菌株(ビオフェルミン製薬社保存菌株)を融解した後,37℃のインキュベーター内に置いて、24時間静置培養した。その後、ラクトミン試験用液体培地(2)(日本薬局方外医薬品規格「ラクトミン」の項に記載)にこの培養菌液をラクトミン試験用液体培地(2)100に対して1の割合(容量比)で接種し、37℃で18時間静置培養した。得られた培養菌液を遠心分離し、水で3回洗浄後、適量の水を加えて得られる、湿菌体1kgに対し、グルタミン酸ナトリウム塩0.1kg及びデキストリン0.5kgの割合で加えて噴霧乾燥装置にて菌体乾燥物とした。なお、3B株は、医療用医薬品のビオフェルミン配合散(商品名、ビオフェルミン製薬社製)等の成分として含まれており、該散剤等から通常行われる方法で精製することによって入手可能である。
【0046】
上記ラクトミン試験用液体培地(2)は、日本薬局方外医薬品規格「ラクトミン」の項に記載された方法に従い、下記の成分を混合し、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で15分間加熱して滅菌して調製した。
酵母エキス 5g
カゼイン製ペプトン 20g
ブドウ糖 20g
肉エキス 15g
トマトジュース* 200mL
ポリソルベート80 3g
L−塩酸システイン 1g
精製水 800mL
pH 6.8±0.1
トマトジュース*は、トマトジュースに等量の精製水を加え、時々かき混ぜながら煮沸した後、pHを6.8に調整し、ろ過したものを使用した。
【0047】
2.菌体乾燥物中の生菌数の測定
日本薬局方外医薬品規格「ラクトミン」の項に記載されているラクトミンの定量法に従って測定した。すなわち、菌体乾燥物5gを精密に量り、希釈液(2)30mL中に加え、強く振り混ぜ、更に同希釈液を加えて正確に50mLとし、よく振り混ぜ、この菌液1mLを正確に量り、別に正確に分注した同希釈液9mL中に加える操作(10倍希釈法)を繰り返し、1mL中の生菌数が20〜200個となるよう希釈した。この液1mLをペトリ皿にとり、ここに50℃に保ったラクトミン試験用カンテン培地(2)を20mL加えてすばやく混和し、固化させた。これを37℃で24〜48時間好気培養し、出現したコロニー数及び希釈倍率から菌体乾燥物中の生菌数を求めた。これにより求めた上記1.で得られた菌体乾燥物の菌数は、生菌数5.7x10
11CFU/gであった。
【0048】
実施例中で用いた希釈液(2)の調製方法を、以下に示す。
希釈液(2)の調製方法
日本薬局方外医薬品規格「ラクトミン」の項に記載された方法に従い、下記の成分を混合し、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で15分間加熱して滅菌して調製した。
無水リン酸一水素ナトリウム 6.0g
リン酸二水素カリウム 4.5g
ポリソルベート80 0.5g
L−塩酸システイン 0.5g
カンテン 1.0g
精製水 1000mL
pH 6.8〜7.0
【0049】
上記ラクトミン試験用カンテン培地(2)は、上記ラクトミン試験用液体培地(2)にカンテン20gを加え、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で15分間加熱して滅菌して調製した。
【0050】
[実施例2]
(乳酸菌の摂取)
雄性Wistarラットを8〜9週齢で購入後(日本SLCより購入)、室温22±5℃、湿度55±5%、12時間周期の照明(7:00〜19:00)条件下で、固形飼料(CE−2:日本クレア社製)及び上水道を自由に摂取させ飼育した。1週間馴化飼育した後、ラットを試験に使用した。24時間絶食し、TNBS(2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸、1mg/Body)40%エタノール溶液を経腸投与(肛門から8cmの位置)し、遠位結腸に大腸炎を誘発させた。
【0051】
TNBS投与直後から,(1)対照群(デキストリンを10%配合したCE−2粉末飼料を摂取させた群;n=5)及び(2)3B菌群(Streptococcus faecalis 129 BIO 3B乾燥菌体(5.7x10
11cfu/g)を10%配合したCE−2粉末飼料を摂取させた群;n=4)の2群に群分けした。実験プロトコルを
図2に示す。
【0052】
[実施例3]
(自発運動及び電気刺激での大腸運動)
大腸炎誘発から2週間後に、ラットを安楽死させて、直ちに開腹し大腸標本を摘出した。腸内容物、周囲に付着している脂肪等を除去し1.5cmの管状大腸標本を作製した。
20mL容量のマグヌス槽に予め37℃に加温したTyrode液(NaCl(8.0g/L)、KCl(0.2g/L)、MgCl
2(0.1g/L)、CaCl
2(0.2g/L)、NaHCO
3(1.0g/L)、NaH
2PO
4(0.05g/L)、glucose(1.0g/L))20mLを充填し、これに大腸標本を1gの負荷のもとに等尺性トランスデューサー(T7−8−240、Orientec製)に
図2に示すように縦走方向に懸垂した。標本の腸管運動はアンプ(AS1202、NEC製)を介してレコーダー(PowerLab system、AD Instruments製)で記録した。標本は、37℃、酸素及び二酸化炭素通気下で30分以上平衡化を行った。
【0053】
実施例で用いたマグヌス槽の構造を示す模式図を、
図3(*厳密には私が使用したものと異なるイラストですが、結果には影響しないものと思われます。)に示す。マグヌス槽11は、気体供給部12、環流水供給口14及び環流水排出口19、並びに、輸液注入口16及び輸液排出口21を備える。
気体供給部12から空気13がマグヌス槽中のTyrode液23に供給される。環流水供給口14から、マグヌス槽内の温度を保つための環流水15が供給され、マグヌス槽を環流した水20は、環流水排出口19から排出される。実施例においては、環流水供給口14から37℃の水15を供給した。輸液注入口16からTyrode液17が管内に注入される。輸液排出口21から、実験に使用されたTyrode液(modified Tyrode液)22が排出される。Tyrode液23内に懸垂した管状標本24が収縮すると、矢印18の方向に設置されたアイソメトリックトランスデューサー(T7−8−240、Orientec製)によって収縮の強度が検出される。
【0054】
標本の平衡化後、安定したところで経壁電気刺激(electrical field stimulation(EFS);80V、0.5m秒の矩形波電流を20Hzの頻度で1秒間刺激)し、これによって誘発される収縮反応を評価の対象とした。
[実施例4]
(乳酸菌による神経機能改善作用確認試験)
【0055】
一酸化窒素作動性神経(NO作動性神経)については、一酸化窒素合成酵素阻害薬L−NAME(Sigma Chemicals)200μMをTyrode液に添加し自発運動での平滑筋収縮反応及びEFSによる平滑筋収縮機能亢進作用の変化により評価した。
【0056】
非アセチルコリン及びタキキニン作動性神経(非ACh及びTK作動性神経)については、タキキニン受容体阻害薬L−732,138(R&D Systems company)及びSR48968各2μM並びにムスカリン受容体阻害薬アトロピン5μMをTyrode液に添加し、EFSによる平滑筋収縮機能亢進作用の変化により評価した。
【0057】
[実施例5]
(結果)
一酸化窒素作動性神経(NO作動性神経)の動態について、NO合成酵素阻害薬の影響の有無で評価した。正常大腸標本の機械的反応を
図4に、炎症後の大腸標本の機械的反応を
図5に示す。
図4より、正常大腸標本では、NO合成酵素阻害薬の添加により、自発運動での平滑筋収縮反応の増強及びEFSによる平滑筋収縮機能亢進作用の増強が認められた。
図5より、炎症後の大腸標本では、NO合成酵素阻害薬の添加により、自発運動での平滑筋収縮反応及びEFSによる平滑筋収縮機能亢進作用に何らの影響も認められなかった。
図4のような機械的反応を示した場合、NO作動性神経が正常であるものとし、
図5のような機械的反応を示した場合、炎症によりNO作動性神経による反応が減弱した(異常)と判断した。
【0058】
対照群では5匹中2匹(40%)が
図5のような機械的反応を示し、NO作動性神経が異常であると認められた。一方、3B群ではいずれも
図5のような機械的反応を示さなかった。
【0059】
非ACh及びTK作動性神経の動態について、ACh及びTK阻害薬の影響の有無で評価した。正常大腸標本の機械的反応を
図6に、炎症後の大腸標本の機械的反応を
図7に示す。
図6より、正常大腸標本では、ムスカリン受容体阻害薬及びタキキニン受容体阻害薬の添加により、EFSによる平滑筋収縮機能亢進作用が認められなくなることが確認された。
図7より、炎症後の大腸標本では、ムスカリン受容体阻害薬及びタキキニン受容体阻害薬の添加によっても、EFSによる平滑筋収縮機能亢進作用が確認されたため(
図7矢印)、非ACh及びTK作動性神経が顕在化することが認められた。
図6のような機械的反応を示した場合、ACh及びTK作動性神経が正常であるものとし、
図7のような機械的反応を示した場合、炎症により非ACh及びTK作動性神経が出現し、平滑筋の収縮に関与すると判断した。
【0060】
対照群では3匹中3匹(100%)、3B菌群では4匹中2匹(50%)が、
図7のような機械的反応を示し、非ACh及びTK作動性神経の出現とそれによる平滑筋の収縮が認められた。
【0061】
以上の結果を表1にまとめた。
【0062】
【表1】
【0063】
表1の結果から、3B菌投与により、TNBS誘発性大腸炎によって生じるこれらの神経変化(NO作動性神経反応の減弱及び非ACh及びTK作動性神経反応の出現)を抑制し、神経機能が改善されることが示唆された。