特許第6402018号(P6402018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402018
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06C 11/00 20060101AFI20181001BHJP
   D04H 11/08 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   D06C11/00 A
   D04H11/08
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-252860(P2014-252860)
(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-113723(P2016-113723A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155206
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 源一
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(74)【代理人】
【識別番号】100107205
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100112818
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 昭久
(72)【発明者】
【氏名】金子 和也
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−028891(JP,A)
【文献】 特開2013−007132(JP,A)
【文献】 特表平05−504297(JP,A)
【文献】 特表2007−516364(JP,A)
【文献】 特開昭61−136411(JP,A)
【文献】 特開2010−052835(JP,A)
【文献】 実開平04−000694(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0136777(US,A1)
【文献】 特開2016−065335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06C 3/00−29/00
D06B 1/00−23/30
D06G 1/00− 5/00
D06H 1/00− 7/24
D06J 1/00− 1/12
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長繊維を含むウェブを熱融着部により固定した原料不織布を起毛させ、該長繊維の起毛した起毛不織布を加工する不織布の製造方法であって、
前記原料不織布に凹凸ローラを用いて起毛加工を施す起毛加工工程と、
前記起毛不織布から脱落する繊維屑を、繊維吸引部を用いて吸引して回収する繊維回収工程と、
前記繊維屑が回収された前記起毛不織布に対して、熱及び/又は外力を加えて加工を施す加工工程とを備え、
前記繊維回収工程は、前記凹凸ローラと前記繊維吸引部との間に少なくとも1個以上配された除電部と、前記繊維吸引部に並置され且つ前記起毛不織布における前記凹凸ローラにより起毛加工を施された加工面に当接する繊維除去用凸ローラとを用いて行い、
前記繊維除去用凸ローラは、その凸部の高さが、前記凹凸ローラの凸部の高さよりも低い不織布の製造方法。
【請求項2】
前記繊維除去用凸ローラは、前記起毛不織布の搬送速度(V3)に対する該繊維除去用凸ローラの周速度(V4)の比(V4/V3)の値が、前記起毛不織布の搬送方向を基準として−0.2以上0以下である請求項1に記載の不織布の製造方法。
【請求項3】
前記凹凸ローラは、前記原料不織布の搬送方向に対して、逆方向に回転させる請求項1又は2に記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
前記繊維除去用凸ローラは、ISO1997に準拠して測定したローラ表面の算術平均粗さが、0.1μm以上1.0μm以下である請求項1〜3の何れか1項に記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
前記除電部は、前記凹凸ローラの下流側近傍に配された第1除電部と、更に前記繊維除去用凸ローラの下流側近傍に配された第2除電部とを有している請求項1〜4の何れか1項に記載の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起毛不織布を加工する不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、不織布の複数箇所それぞれに部分延伸加工を施し、該部分延伸加工の施された不織布に該不織布の構成繊維を起毛する起毛加工を施す不織布の製造方法を提案した(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の不織布の製造方法によれば、構成繊維の起毛した肌触りのよい不織布が得られるとともに、得られた起毛不織布の不織布破断強度の低下を軽減した不織布が得られる。また、特許文献1に記載の不織布の製造方法によれば、構成繊維の起毛した不織布が得られるとともに、製造スピードが速く、製造コストを抑えることができる。
【0004】
これとは別の技術として、特許文献2には、走行する用紙の表面に周面が接触するように回転する紙粉除去ローラと、この紙粉除去ローラの周面に付着した紙粉を取り除く清掃手段とを具備している用紙の紙粉除去装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4982616号公報
【特許文献2】特開2010−52835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の製造方法においては、部分延伸加工或いは起毛加工を施すことにより生じる、繊維屑となる可能性のある繊維に対して、着目していなかった。繊維屑となる可能性のある繊維を除去することができれば、加工装置の汚れを抑えることができると共に、製品への異物の混入を抑えることができる。
【0007】
特許文献2に記載の紙粉除去装置によれば、用紙に付着している紙粉を除去することができる。しかしながら、特許文献2に記載の紙粉除去装置は、紙の紙粉を除去する装置であり、特許文献2には、不織布の繊維屑となる可能性のある繊維を除去する方法に関して、何ら記載されていない。
【0008】
従って、本発明は、上記課題を解消し得る不織布の製造方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、長繊維を含むウェブを熱融着部により固定した原料不織布を起毛させ、該長繊維の起毛した起毛不織布を加工する不織布の製造方法であって、前記原料不織布に凹凸ローラを用いて起毛加工を施す起毛加工工程と、前記起毛不織布から脱落する繊維屑を、繊維吸引部を用いて吸引して回収する繊維回収工程と、前記繊維屑が回収された前記起毛不織布に対して、熱及び/又は外力を加えて加工を施す加工工程とを備え、前記繊維回収工程は、前記凹凸ローラと前記繊維吸引部との間に少なくとも1個以上配された除電部と、前記繊維吸引部に並置され且つ前記起毛不織布における前記凹凸ローラにより起毛加工を施された加工面に当接する繊維除去用凸ローラとを用いて行い、前記繊維除去用凸ローラは、その凸部の高さが、前記凹凸ローラの凸部の高さよりも低い不織布の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の不織布の製造方法によれば、加工装置の汚れを抑えることができると共に、製品への繊維屑の混入を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の不織布の製造方法に用いられる好適な製造装置の一実施形態を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す製造装置の備える凹凸ローラを示す模式図である。
図3図3は、図1に示す製造装置の備える繊維除去用凸ローラを示す模式図である。
図4図4(a)は、本発明の不織布の製造方法に用いる原料不織布の一部拡大断面図であり、図4(b)は、原料不織布に起毛加工を施している状態を示す要部拡大断面図であり、図4(c)は、起毛加工を施して製造された起毛不織布の要部拡大断面図である。
図5図5は、本発明の不織布の製造方法に用いられる他の製造装置の備える凹凸ローラを示す模式図である。
図6図6(a)は、実施例1〜2の不織布を製造する際に、製造装置の備える繊維回収部で回収された繊維屑の量を示し、図6(b)は、製造された実施例1〜2の不織布に対して別の繊維回収部で回収された繊維屑の量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の不織布の製造方法を、その好ましい実施態様に基づき、図1図4を参照しながら説明する。
図1は、本発明の不織布の製造方法に用いられる製造装置(以下、単に製造装置ともいう。)の一実施形態を模式的に示したものである。
ここで、図中のY方向とは、構成繊維の配向方向に沿うMD方向の不織布を搬送する方向、或いはローラを周方向に回転させることによりシートを搬送する方向を意味する。また、図中のX方向とは、Y方向と直交する方向であり、ローラ回転軸方向、或いは搬送する不織布のCD方向を意味する。また、図中のZ方向とは、Y方向及びX方向からなる面方向に直交する方向である垂直方向を意味する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の製造装置100は、製造工程の上流側から下流側に向けて、起毛加工部2、繊維回収部3及び加工部4を、この順で備えている。
【0014】
起毛加工部2は、加工前の不織布10(以下、「原料不織布10」とも言う。)に起毛加工を施す部分であり、本実施形態の製造装置100においては、図1図2に示すように、周面に凸部211が設けられた凹凸ローラ21である回転ローラを備えている。凹凸ローラ21は、直径10mm以上300mm以下程度の回転ローラであり、アルミニウム合金又は鉄鋼等の金属性の円筒形状のものである。凹凸ローラ21は、その回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって回転する。凹凸ローラ21の回転速度(周速度V2)は、製造装置100の備える制御部(不図示)により制御されている。ここで、凹凸ローラ21の周速度V2とは、凹凸ローラ21の凸部211表面での速度を意味する。
【0015】
起毛加工部2は、図1に示すように、凹凸ローラ21(回転ローラ)の上流側及び下流側に、原料不織布10を搬送する搬送ローラ22,23を備えている。搬送ローラ22,23は、それぞれ原料不織布10における起毛加工が施される加工面とは反対側の面に当接するように配置されている。原料不織布10の搬送速度V1は、製造装置100の備える制御部(不図示)により制御されている。ここで、原料不織布10の搬送速度V1とは、凹凸ローラ21に供給される原料不織布10表面での速度を意味する。
【0016】
凹凸ローラ21は、その凸部211の高さを、ISO1997に準拠して測定したローラ表面の算術平均粗さ(Ra)で表すことができる。凹凸ローラ21の算術平均粗さ(Ra)は、起毛量の多い起毛不織布を効率よく得られる観点から、1.5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、そして、500μm以下であることが好ましく、150μm以下であることが更に好ましく、具体的には、1.5μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上150μm以下であることが更に好ましい。
なお、ISO1997に準拠して測定した算術平均粗さ(Ra)とは、平均線から評価曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。
【0017】
凹凸ローラ21の凸部211の密度は、起毛量の多い起毛不織布を効率よく得られる観点から、500個/cm2以上であることが好ましく、1000個/cm2以上であることが更に好ましく、そして、5000個/cm2以下であることが好ましく、3000個/cm2以下であることが更に好ましく、具体的には、500個/cm2以上5000個/cm2以下であることが好ましく、1000個/cm2以上3000個/cm2以下であることが更に好ましい。
【0018】
以上のような表面を有する凹凸ローラ21は、金属性の円筒形状のローラの表面を、サンドブラスト処理を施して作製してもよく、金属性の円筒形状のローラの表面を、サンドブラスト処理を施した後、サンドブラスト処理の施された面を更に研磨することにより作製してもよい。サンドブラスト処理の施された面を更に研磨する場合には、尖りすぎた頂部を潰して滑らかになるように研磨する観点から、JIS R 6010の研磨布紙用研磨材の粒度の規定に基づく粒度が、50番以上1000番以下であるサンドペーパーを用いることが好ましい。ただし、所望の凹凸を得られればこの限りではなく、切削による荒加工でも良いし、ローレット加工などにより製作しても良い。
【0019】
繊維回収部3は、原料不織布10に対して凹凸ローラ21を用いて起毛加工を施して製造された起毛不織布1aから脱落する繊維屑1wを回収する部分であり、本実施形態の製造装置100においては、図1に示すように、繊維屑1wを吸引する繊維吸引部31、凹凸ローラ21と繊維吸引部31との間に配される除電部32、及び繊維吸引部31に並置された繊維除去用凸ローラ33を備えている。
【0020】
繊維吸引部31は、図1に示すように、エアを吸引するエア吸引口311を備えている。エア吸引口311は、繊維除去用凸ローラ33のZ方向下方側の周面に対向する位置に配置されている。繊維吸引部31は、エア吸引口311と反対側の端部が、空気の吸引装置(図示せず)に接続されており、該吸引装置(図示せず)を作動させることにより、エア吸引口311からエアを吸引することができるようになっている。
【0021】
除電部32は、起毛不織布1aの帯電量をゼロに近づける部分である。除電部32としては、起毛不織布1aに当接してアースする除電バー、或いは起毛不織布1aにイオン化した空気(空気イオンともいう)を吹き付けるイオナイザー等を用いることができ、製造装置100においては、イオナイザーが用いられている。空気イオンを吹き付けるイオナイザーとしては、市販の静電気除去装置が利用でき、該静電気除去装置としては、対象物に空気イオンを送風によって吹き付けるタイプのもの、或いは軟X線を照射して大気中のイオンを電離させるタイプのものが存在する。空気イオンを吹き付けるタイプとしては、例えば(株)キーエンス社製の除電ブロア、又は春日電機(株)社製の送風型直流除電機等が挙げられる。また、軟X線照射のタイプとしては、例えば浜松ホトニクス(株)社製のフォトイオナイザ(光照射式静電気除去装置)等が挙げられる。
【0022】
除電部32は、製造装置100においては、図1に示すように、凹凸ローラ21の下流側近傍に配された第1除電部321と、繊維除去用凸ローラ33の下流側近傍に配された第2除電部322とを有している。第1除電部321及び第2除電部322は、何れも上述した空気イオンを吹き付けるイオナイザーである。
第1除電部321は、凹凸ローラ21の起毛不織布1a搬送方向の下流側に配され、且つ起毛不織布1aにおける凹凸ローラ21により起毛加工を施された加工面1p1側に配置されている。そして、第1除電部321によって、凹凸ローラ21の下流側から、凹凸ローラ21の周面及び起毛不織布1aの加工面1apに対して、空気イオンが吹き付けられている。
【0023】
第2除電部322は、図1に示すように、繊維除去用凸ローラ33の起毛不織布1a搬送方向の下流側に配され、且つ起毛不織布1aにおける繊維除去用凸ローラ33に当接した加工面1p2側に配置されている。そして、第2除電部322によって、繊維除去用凸ローラ33の下流側から、繊維除去用凸ローラ33の周面及び起毛不織布1aの加工面1p2に対して、空気イオンが吹き付けられている。
【0024】
繊維除去用凸ローラ33は、図1に示すように、繊維吸引部31に並置され且つ起毛不織布1aにおける凹凸ローラ21により起毛加工を施された加工面1p1に当接するように配置されている。繊維除去用凸ローラ33は、直径10mm以上300mm以下程度の回転ローラであり、アルミニウム合金又は鉄鋼等の金属性の円筒形状のものである。繊維除去用凸ローラ33は、その回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって回転する。繊維除去用凸ローラ33の回転速度(周速度V4)は、製造装置100の備える制御部(不図示)により制御されている。ここで、繊維除去用凸ローラ33の周速度V4とは、繊維除去用凸ローラ33の凸部331表面での速度を意味する。
【0025】
繊維回収部3は、図1に示すように、繊維除去用凸ローラ33(回転ローラ)の上流側及び下流側に、原料不織布10を搬送する搬送ローラ34,35を備えている。搬送ローラ34,35は、それぞれ原料不織布10における起毛加工が施される加工面とは反対側の面に当接するように配置されている。起毛不織布1aの搬送速度V3は、製造装置100の備える制御部(不図示)により制御されている。
【0026】
繊維除去用凸ローラ33は、図3に示すように、その凸部331の高さが、凹凸ローラ21の凸部211の高さよりも低く形成されている。繊維除去用凸ローラ33は、その凸部331の高さを、ISO1997に準拠して測定したローラ表面の算術平均粗さ(Ra)で表すことができる。繊維除去用凸ローラ33の算術平均粗さ(Ra)は、不織布を新たに起毛することなく、且つ不織布に付着している繊維屑や、凹凸ローラ21によりダメージを受けて後の加工工程で不織布から離脱して繊維屑となる可能性がある繊維を凸部331で確実に絡め取る観点から、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることが更に好ましく、そして、1.5μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることが更に好ましく、具体的には、0.1μm以上1.5μm以下であることが好ましく、0.2μm以上1.0μm以下であることが更に好ましい。
なお、ISO1997に準拠して測定した算術平均粗さ(Ra)とは、平均線から評価曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。
【0027】
繊維除去用凸ローラ33の凸部331の密度は、不織布を新たに起毛することなく、且つ不織布に付着している繊維屑や、凹凸ローラ21によりダメージを受けて後の加工工程で不織布から離脱して繊維屑となる可能性がある繊維を凸部331で確実に絡め取る観点から、凹凸ローラ21の凸部211の密度よりも高いことが好ましく、5,000個/cm2以上であることが好ましく、40,000個/cm2以上であることが更に好ましく、そして、100,000,000個/cm2以下であることが好ましく、1,000,000個/cm2以下であることが更に好ましく、具体的には、5,000個/cm2以上100,000,000個/cm2以下であることが好ましく、40,000個/cm2以上1,000,000個/cm2以下であることが更に好ましい。
【0028】
加工部4は、起毛不織布1aから繊維屑1wを回収して形成された起毛不織布1bに対して熱及び/又は外力を加えて、所望の形状に加工する部分である。加工部4は、製造装置100においては、図1に示すように、起毛不織布1bに接触させたノズルから接着剤を塗出するコーター式のダイヘッド41を備えている。ダイヘッド41は、起毛不織布1bに接触しながら接着剤を塗出するため、起毛不織布1bに対して接触による外力を加える部材である。起毛不織布1bに対して接触による外力を加える部材としては、ダイヘッド41以外に、帯状の起毛不織布1bの搬送方向を転換する方向転換バーや、帯状の起毛不織布1bを折り返すセーラー板等が挙げられる。また、起毛不織布1bに対して熱を加える部材としては、熱シール装置、超音波シール装置、ホットメルト塗布装置、熱風照射等が挙げられる。
【0029】
次に、本発明の不織布の製造方法の一実施態様を、上述した本実施形態の製造装置100を用いて、図1図4を参照しながら説明する。
本発明の不織布の製造方法は、原料不織布10に凹凸ローラ21を用いて起毛加工を施す起毛加工工程と、起毛不織布1aから脱落する繊維屑1wを、繊維吸引部31を用いて吸引して回収する繊維回収工程と、繊維屑1wが回収された起毛不織布1bに対して、熱及び/又は外力を加えて加工を施す加工工程とを備えている。
【0030】
本実施態様においては、先ず、図1に示すように、原料である帯状の原料不織布10を、ロール(不図示)から巻き出し、搬送する。原料不織布10としては、図4(a)に示すように、長繊維11を含むウェブを熱融着部12により固定して形成された不織布である。このような原料不織布10の好ましい具体例としては、スパンボンド不織布、スパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布、又はカード法によるヒートローラ不織布等が挙げられる。積層不織布としては、例えば、スパンボンド−スパンボンド積層不織布、スパンボンド−スパンボンド−スパンボンド積層不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層不織布、スパンボンド−スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層不織布等が挙げられる。原料不織布10は、安価でかつ、良好な肌触り感が得られ、加工適正の観点から、その坪量が、20g/m2程度であることが好ましく、8g/m2以上50g/m2以下であることが更に好ましい。
【0031】
原料不織布10を構成する長繊維11は、熱可塑性樹脂を主として含んでいることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ビニル系樹脂、ビニリデン系樹脂などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としてはナイロン等が挙げられる。ビニル系樹脂としてはポリ塩化ビニル等が挙げられる。ビニリデン系樹脂としてはポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。これら各種樹脂の1種を単独で又は2種以上を混合して用いることもでき、これら各種樹脂の変成物を用いることもできる。また、原料不織布10を構成する長繊維11として複合繊維を用いることもできる。複合繊維としてサイドバイサイド繊維、芯鞘繊維、偏芯したクリンプを有する芯鞘繊維、分割繊維などを用いることができる。複合繊維を用いる場合には、芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレンからなる芯鞘繊維を用いると柔らかな不織布が得られる点で好ましい。長繊維11の繊径は、後述する加工前において、5μm以上30μm以下であることが好ましく、10μm以上20μm以下であることが更に好ましい。
【0032】
原料不織布10を構成する熱融着部12は、肌触りや、加工適正の観点から、各熱融着部12の表面積が、0.05mm2以上10mm2以下であることが好ましく、0.1mm2以上1mm2以下であることが更に好ましい。熱融着部12の数は、10個/cm2以上250個/cm2以下であることが好ましく、35個/cm2以上65個/cm2以下であることが更に好ましい。X方向に隣り合う熱融着部12同士の中心間の距離は、0.5mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上3mm以下であることが更に好ましく、Y方向に隣り合う熱融着部12同士の中心間の距離は、0.5mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上3mm以下であることが更に好ましい。
【0033】
熱融着部12は、エンボス(エンボス凸ローラとフラットローラなどによる)による熱圧着により間欠的に形成されたものや、超音波融着によるもの、間欠的に熱風を加えて部分融着させたもの等が挙げられる。熱融着部12の形状は、特に制限されず、例えば、図4(a)に示す楕円形の他、円形、菱形、三角形等の任意の形状であってもよい。原料不織布10の一面の表面積に占める熱融着部12の合計表面積の割合は、毛玉が出来難い観点から、5%以上30%以下であることが好ましく、10%以上20%以下であることが更に好ましい。
【0034】
次いで、本実施態様の不織布の製造方法は、原料不織布10に凹凸ローラ21を用いて起毛加工を施す(起毛加工工程)。本実施態様においては、図1に示すように、原料不織布10を、搬送ローラ22,23により、周面にサンドブラスト処理を施すことにより凸部211が形成された凹凸ローラ21に搬送し、図4(b)に示すように、凹凸ローラ21により、原料不織布10を構成する長繊維11を原料不織布10の表面から起毛させ、起毛不織布1aを連続的に製造する。
【0035】
本実施態様においては、原料不織布10の構成繊維である長繊維11を熱融着部12の境界から切断し、原料不織布10の表面から効率的に起毛させる観点から、起毛加工工程においては、搬送されている原料不織布10の構成繊維を、該原料不織布10の搬送速度V1と異なる周速度V2で回転する凹凸ローラ(回転ローラ)21を用いて起毛する。凹凸ローラ21の回転方向は、原料不織布10の搬送方向に対して逆方向又は正方向に回転させることができ、原料不織布10の構成繊維11を原料不織布10の表面から効率的に起毛させる観点から、逆方向に回転させることが好ましい。このように逆方向に回転させる場合には、原料不織布10の搬送速度V1に対する凹凸ローラ21の周速度V2の比(V2/V1)の値が、原料不織布10の表面を十分に起毛できロールに繊維の絡みつきも少ない観点から、−10.0以上であることが好ましく、−5.0以上であることが更に好ましく、そして、−0.3以下であることが好ましく、−1.5以下であることが更に好ましく、具体的には、−10.0以上−0.3以下であることが好ましく、−5.0以上−1.5以下であることが更に好ましい。また、凹凸ローラ21が逆方向でなく、原料不織布10の搬送方向に対して正方向である場合には、原料不織布10の搬送速度V1に対する凹凸ローラ21の周速度V2の比(V2/V1)の値が、原料不織布10の表面を十分に起毛できる観点から、1.1以上であることが好ましく、2.0以上であることが更に好ましく、そして、20.0以下であることが好ましく、8.0以下であることが更に好ましく、具体的には、1.1以上20.0以下であることが好ましく、2.0以上8.0以下であることが更に好ましい。ここで、(V2/V1)の値がマイナスの値とは、起毛不織布1aの搬送方向に対して凹凸ローラ21が逆方向に回転していることを意味する。
【0036】
また、凹凸ローラ21の周面に原料不織布10が接触し始めてから、起毛不織布1aとして凹凸ローラ21の周面から離れるまでの角度(以下、抱き角という。)α(図1参照)は、原料不織布10の表面を効率よく起毛する観点から、10°以上であることが好ましく、30°以上であることが更に好ましく、そして、180°以下であることが好ましく、120°以下であることが更に好ましく、具体的には、10°以上180°以下であることが好ましく、30°以上120°以下であることが更に好ましい。
【0037】
また、原料不織布10の搬送速度V1、及び搬送ローラ22,23と凹凸ローラ21との位置関係により搬送する原料不織布10の搬送テンションを調製することができ、該搬送テンションは、原料不織布10を弛ませることなく搬送可能、かつ原料不織布10を起毛ロールである凹凸ローラ21に押し付けすぎて穴が開いたり原料不織布10の幅縮みを防止する観点から、10N/m以上であることが好ましく、20N/m以上であることが更に好ましく、そして、80N/m以下であることが好ましく、40N/m以下であることが更に好ましく、具体的には、10N/m以上80N/m以下であることが好ましく、20N/m以上40N/m以下であることが更に好ましい。原料不織布10の搬送テンションは、張力検出器(例えば三菱電機■ LX−TD型)を用いてインラインにて測定す
ることができる。
【0038】
本実施態様の起毛加工工程にて製造された起毛不織布1aには、図4(c)に示すように、両端部が熱融着部12により固定されている繊維11a、及び一端部が熱融着部12により固定され且つ他端部が塑性変形して熱融着部12から切断されて起毛している起毛繊維11b、並びに、繊維屑1wとなる両端部が塑性変形して熱融着部12から切断されている繊維11c、及び繊維屑1wとなる可能性の高い繊維11dが形成されている。繊維屑1wとなる可能性の高い繊維11dとしては、一端部が塑性変形して細くなっており熱融着部12に弱く固定され且つ他端部が熱融着部12から切断されている繊維、又は両端部が塑性変形して細くなっており熱融着部12に弱く固定されている繊維等が挙げられる。
【0039】
また、本実施態様の起毛加工工程においては、図1に示すように、凹凸ローラ21の起毛不織布1a搬送方向の下流側に配され、且つ起毛不織布1aにおける凹凸ローラ21により起毛加工を施された加工面1p1側に配置された第1除電部321により、製造された起毛不織布1aの加工面1apに対して、空気イオンが吹き付けられており、起毛不織布1aの帯電量をゼロに近づける。
【0040】
次いで、本実施態様の不織布の製造方法は、起毛不織布1aから脱落する繊維屑1wを、繊維吸引部31を用いて吸引して回収する(繊維回収工程)。本実施態様においては、起毛不織布1aから脱落する繊維屑1wを、繊維吸引部31を用いて吸引して回収して、繊維屑1wの回収された起毛不織布1bを連続的に製造する。
【0041】
具体的に、本実施態様においては、図1に示すように、起毛加工の施された起毛不織布1aを、搬送ローラ34,35により、周面に凸部331が形成された繊維除去用凸ローラ33に搬送し、凸部331により、両端部が熱融着部12から切断されている繊維11cを、繊維屑1wとして繊維除去用凸ローラ33の周面に絡め捕る。更に、凸部331により、繊維屑1wとなる可能性の高い繊維11dを、塑性変形して細くなっている部分から切断し、繊維屑1wとして繊維11dを繊維除去用凸ローラ33の周面に絡め捕る。
【0042】
繊維除去用凸ローラ33の回転方向は、起毛不織布1aの搬送方向に対して逆方向又は正方向に回転させることができ、本実施態様においては、繊維屑1wとして繊維11dを繊維除去用凸ローラ33の周面に効率的に絡め捕る観点から逆方向に回転させることが好ましい。本実施態様においては、起毛不織布1aの搬送速度V3は、原料不織布10の搬送速度V1と同速となっている。起毛不織布1aの搬送速度V3(原料不織布10の搬送速度V1)に対する繊維除去用凸ローラ33の周速度V4の比(V4/V3,V4/V1)の値は、繊維屑1wや繊維11dを十分に凸部331で絡め取りながらもこれ以上の起毛を発生させない観点から、起毛不織布1aの搬送方向を基準として、−0.2以上であることが好ましく、−0.01以上であることが更に好ましく、そして、0以下であることが好ましく、−0.001以下であることが更に好ましく、具体的には、−0.2以上0以下であることが好ましく、−0.01以上−0.001以下であることが更に好ましい。ここで、(V4/V3,V4/V1)の値がマイナスの値とは、起毛不織布1aの搬送方向に対して繊維除去用凸ローラ33が逆方向に回転していることを意味する。
【0043】
また、繊維除去用凸ローラ33の周面に起毛不織布1aが接触し始めてから周面から離れるまでの角度(以下、抱き角という。)β(図1参照)は、繊維屑1wや繊維11dを十分に凸部331で絡め取りながらもこれ以上の起毛を発生させない観点から、10°以上であることが好ましく、180°以上であることが更に好ましく、そして、15°以下であることが好ましく、40°以下であることが更に好ましく、具体的には、10°以上180°以下であることが好ましく、15°以上40°以下であることが更に好ましい。
【0044】
また、起毛不織布1aの搬送速度V3、及び搬送ローラ34,35と繊維除去用凸ローラ33との位置関係により搬送する起毛不織布1aの搬送テンションを調製することができ、該搬送テンションは、起毛不織布1aを弛ませることなく搬送可能、繊維除去用凸ローラ33が搬送の抵抗となって幅縮みすることを防ぐ観点から、原料不織布10と同じ搬送テンションとすることが好ましく、詳細には、10N/m以上であることが好ましく、20N/m以上であることが更に好ましく、そして、80N/m以下であることが好ましく、40N/m以下であることが更に好ましく、具体的には、10N/m以上80N/m以下であることが好ましく、20N/m以上40N/m以下であることが更に好ましい。起毛不織布1aの搬送テンションは、上述した原料不織布10の搬送テンションと同様に、張力検出器(例えば三菱電機■ LX−TD型)を用いてインラインにて測定すること
ができる。
【0045】
本実施態様の繊維回収工程においては、図1に示すように、繊維除去用凸ローラ33の起毛不織布1a搬送方向の下流側に配され、且つ起毛不織布1aにおける繊維除去用凸ローラ33に当接した加工面1p2側に配置された第2除電部322により、繊維除去用凸ローラ33の周面及び起毛不織布1aの加工面1p2に対して、空気イオンが吹き付けられており、繊維除去用凸ローラ33の周面及び起毛不織布1aの帯電量をゼロに近づける。
【0046】
そして、本実施態様の繊維回収工程においては、図1に示すように、繊維除去用凸ローラ33のZ方向下方側の周面に対向する位置に配置された繊維吸引部31により、繊維除去用凸ローラ33の周面に絡め取られた繊維11c及び繊維11d、並びに、起毛不織布1aの加工面1p2に残っている繊維11cを、繊維屑1wとしてエア吸引口311から吸引して回収する。以上のようにして、繊維屑1wの回収された起毛不織布1bを連続的に製造する。
【0047】
繊維吸引部31によるエア吸引口311からの吸引力は、繊維除去用凸ロール33で絡め取った繊維屑11wを確実に回収する観点から、ゲージ圧力で、好ましくは0.1kPa以上、より好ましくは0.5kPa以上であり、そして、好ましくは20Pa以下、より好ましくは10kPa以下であり、具体的には、好ましくは 0.1Pa以上20kPa以下、より好ましくは0.5kPa以上10kPa以下である。
【0048】
次いで、本実施態様の不織布の製造方法は、繊維屑1wが回収された起毛不織布1bに対して、熱及び/又は外力を加えて加工を施す(加工工程)。本実施態様においては、図1に示すように、コーター式のダイヘッド41を起毛不織布1bに接触させ、起毛不織布1bに対して接触による外力を加えながら接着剤を塗出する。接着剤の塗出された起毛不織布1bは、例えば、吸収性物品用の表面シート、裏面シート、使い捨ておむつの外包材を構成するシート等として用いられ、主として使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品に加工される。また、接着剤の塗出された起毛不織布1bは、例えば、清掃用シートの清掃面シート等として用いられ、清掃用シートに加工される。
【0049】
上述した本実施態様の不織布の製造方法によれば、起毛不織布1aから脱落する繊維屑1wを、繊維吸引部31を用いて吸引して回収する繊維回収工程を備えているので、両端部が熱融着部12から切断されている繊維11cのみならず、繊維屑1wとなる可能性の高い繊維11dも繊維屑1wとして回収できる。その為、起毛不織布1bに対して接触するダイヘッド41等の加工装置の汚れを抑えることができると共に、吸収性物品或いは清掃用シート等の製品への異物となりうる繊維屑1wの混入を抑えることができる。本実施態様の不織布の製造方法によれば、品質が向上した起毛不織布1bを効率的に連続して製造することができる。
【0050】
また、本実施態様の不織布の製造方法によれば、図1に示すように、凹凸ローラ21の下流側近傍に配された第1除電部321と、繊維除去用凸ローラ33の下流側近傍に配された第2除電部322とにより除電されるので、加工装置の汚れを更に抑えることができると共に、製品への異物となりうる繊維屑1wの混入を更に抑えることができる。特に、本実施態様の不織布の製造方法によれば、第1除電部321が、凹凸ローラ21の起毛不織布1a搬送方向の下流側に配され、且つ起毛不織布1aにおける凹凸ローラ21により起毛加工を施された加工面1p1側に配置されており、そして、第2除電部322が、繊維除去用凸ローラ33の起毛不織布1a搬送方向の下流側に配され、且つ起毛不織布1aにおける繊維除去用凸ローラ33に当接した加工面1p2側に配置されているので、一層加工装置の汚れを抑えることができると共に、製品への異物となりうる繊維屑1wの混入を一層抑えることができる。
【0051】
本発明の不織布の製造方法は、上述の実施態様の製造方法に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
【0052】
例えば、上述の実施態様の不織布の製造方法においては、図1図2に示すように、起毛加工工程に、凹凸ローラ21を用いているが、凹凸ローラ21の替わりに、図5に示すような一対の凹凸ローラ24,25からなるスチールマッチングエンボスローラ26を用いてもよい。スチールマッチングエンボスローラ26は、アルミニウム合金又は鉄鋼等の金属性の円筒形状のものであり、一方の凹凸ローラ24が周面に均一に分散する複数個の凸部241を有し、他方の凹凸ローラ25が、周面に一方の凹凸ローラ24の凸部241に対応する位置に凸部241が入り込む凹部252を有している。また、他方の凹凸ローラ25が周面に均一に分散する複数個の凸部251を有し、一方の凹凸ローラ24が、周面に他方の凹凸ローラ25の凸部251に対応する位置に凸部251が入り込む凹部242を有している。一対の凹凸ローラ24,25は、それぞれ直径50mm以上300mm以下程度の回転ローラであり、少なくとも一方の回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって噛み合って回転する。スチールマッチングエンボスローラ26の材質としては、上述の金属の他、樹脂等も用いることができるが、帯電防止の観点から金属製であることが好ましい。スチールマッチングエンボスローラ26においては、互いの凸部241,251が互いの凹部252,242に対応する位置に設けられている以外は、一方の凹凸ローラ24と他方の凹凸ローラ25とは同じローラである。従って、以下の説明では、同様な部分については、主に、一方の凹凸ローラ24の凸部241について説明する。
【0053】
凹凸ローラ24の各凸部241は、凹凸ローラ24の底から凸部241の頂点までの高さが、1mm以上10mm以下であることが好ましく、2mm以上7mm以下であることが更に好ましい。回転軸方向(X方向)に隣り合う凸部241同士の距離(ピッチ)は、0.01mm以上20mm以下であることが好ましく、1mm以上10mm以下であることが更に好ましく、周方向に隣り合う凸部241同士の距離(ピッチ)は、0.01mm以上20mm以下であることが好ましく、1mm以上10mm以下であることが更に好ましい。凹凸ローラ24の各凸部241の頂部表面の形状に特に制限はないが、スチールマッチングエンボスローラ26においては、円形に形成されている。凹凸ローラ24の各凸部241と凹凸ローラ25の各凸部251との噛み合いの深さ(各凸部241と各凸部251とが重なっている部分の長さ)は、0.1mm以上であることが好ましく、1mm以上であることが更に好ましく、そして10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることが更に好ましい。具体的には、0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上8mm以下であることが更に好ましい。
【0054】
スチールマッチングエンボスローラ26は、原料不織布10の搬送方向に対して図5に示す方向に回転する。図5に示すスチールマッチングエンボスローラ26を用いる起毛加工工程においては、搬送ローラ22,23により、原料不織布10を一対の凹凸ローラ24,25間に搬送し、原料不織布10に部分延伸加工を施しながら起毛加工を施すようにする。更に詳述すると、搬送された原料不織布10を、一方の凹凸ローラ24の有する複数個の凸部241と、他方の凹凸ローラ25の有する複数個の凹部252との間で挟圧し、さらに他方の凹凸ローラ25の有する複数個の凸部251と、一方の凹凸ローラ24の有する複数個の凹部242との間で挟圧して、原料不織布10の複数箇所それぞれに搬送方向及び搬送方向に直交する方向に延伸加工を施しながら起毛加工を施すようにする。
【0055】
また、上述の実施態様の不織布の製造方法においては、図1に示すように、第1除電部321及び第2除電部322の2個の除電部32を用いて除電しているが、凹凸ローラ21と繊維吸引部31との間に少なくとも1個配した除電部32を用いて除電してもよい。また、第1除電部321は図1に示すように、凹凸ローラ21の起毛不織布1a搬送方向の下流側に配され、且つ起毛不織布1aにおける凹凸ローラ21により起毛加工を施された加工面1p1側に配置されているが、非加工面側に配置されていてもよく、凹凸ローラ21のZ方向の真上に配置されていてもよい。また、第2除電部322は、図1に示すように、繊維除去用凸ローラ33の起毛不織布1a搬送方向の下流側に配され、且つ起毛不織布1aにおける繊維除去用凸ローラ33に当接した加工面1p2側に配置されているが、非加工面側に配置されていてもよい。
【0056】
また、原料不織布10を構成する繊維には、静電気防止特性剤、潤滑剤、親水剤など少量の添加物を付与してもよい。
【0057】
また、凹凸ローラ21と繊維除去用凸ローラ33間には起毛不織布1aの張力制御用のフィードロールやフリーロール等を配置しても良い。この場合、それぞれのロールは、起毛不織布1aの起毛を施した面とは反対側の面で起毛不織布1aと設置するように配置して、それぞれのロールへの繊維屑1wの付着や堆積を防止することが好ましい。
【0058】
上述した実施形態に関し、さらに以下の不織布の製造方法を開示する。
【0059】
<1>
長繊維を含むウェブを熱融着部により固定した原料不織布を起毛させ、該長繊維の起毛した起毛不織布を加工する不織布の製造方法であって、
前記原料不織布に凹凸ローラを用いて起毛加工を施す起毛加工工程と、
前記起毛不織布から脱落する繊維屑を、繊維吸引部を用いて吸引して回収する繊維回収工程と、
前記繊維屑が回収された前記起毛不織布に対して、熱及び/又は外力を加えて加工を施す加工工程とを備え、
前記繊維回収工程は、前記凹凸ローラと前記繊維吸引部との間に少なくとも1個以上配された除電部と、前記繊維吸引部に並置され且つ前記起毛不織布における前記凹凸ローラにより起毛加工を施された加工面に当接する繊維除去用凸ローラとを用いて行い、
前記繊維除去用凸ローラは、その凸部の高さが、前記凹凸ローラの凸部の高さよりも低い不織布の製造方法。
【0060】
<2>
前記除電部は空気イオンを吹き付けるイオナイザーである前記<1>に記載の不織布の製造方法。
<3>
前記繊維除去用凸ローラは、前記起毛不織布の搬送速度(V3)に対する該繊維除去用凸ローラの周速度(V4)の比(V4/V3)の値が、前記起毛不織布の搬送方向を基準として−0.2以上0以下である前記<1>又は<2>に記載の不織布の製造方法。
<4>
前記繊維除去用凸ローラは、前記起毛不織布の搬送速度(V3)に対する該繊維除去用凸ローラの周速度(V4)の比(V4/V3)の値が、前記起毛不織布の搬送方向を基準として−0.2以上、好ましくは−0.01以上、そして、0以下、好ましくは−0.001以下、具体的には、−0.2以上0以下、好ましくは−0.01以上−0.001以下である前記<3>に記載の不織布の製造方法。
<5>
前記凹凸ローラは、前記原料不織布の搬送方向に対して、逆方向に回転させる前記<1>〜<4>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<6>
前記繊維除去用凸ローラは、ISO1997に準拠して測定したローラ表面の算術平均粗さが、0.1μm以上1.0μm以下である前記<1>〜<5>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<7>
前記繊維除去用凸ローラは、ISO1997に準拠して測定したローラ表面の算術平均粗さが、0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上、そして、1.5μm以下、好ましくは1.0μm以下、具体的には、0.1μm以上1.5μm以下、好ましくは0.2μm以上1.0μm以下である前記<6>に記載の不織布の製造方法。
<8>
前記除電部は、前記凹凸ローラの下流側近傍に配された第1除電部と、更に前記繊維除去用凸ローラの下流側近傍に配された第2除電部とを有している前記<1>〜<7>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<9>
前記第1除電部は、前記起毛不織布における凹凸ローラにより起毛加工を施された加工面側に配置されている前記<8>に記載の不織布の製造方法。
<10>
前記第1除電部よって、前記凹凸ローラの下流側から、該凹凸ローラの周面及び前記起毛不織布の加工面に対して、空気イオンが吹き付けられている前記<8>又は<9>に記載の不織布の製造方法。
<11>
前記第2除電部は、前記起毛不織布における前記繊維除去用凸ローラに当接した加工面側に配置されている前記<8>〜<10>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<12>
前記第2除電部によって、前記繊維除去用凸ローラの下流側から、該繊維除去用凸ローラの周面及び前記起毛不織布の加工面に対して、空気イオンが吹き付けられている前記<8>〜<11>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
【0061】
<13>
前記繊維除去用凸ローラの凸部の密度は、前記凹凸ローラの凸部の密度よりも高い前記<1>〜<12>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<14>
前記繊維除去用凸ローラの凸部の密度は、5,000個/cm2以上、好ましくは40,000個/cm2以上であることが好ましく、そして、100,000,000個/cm2以下、好ましくは1,000,000個/cm2以下、具体的には、5,000個/cm2以上100,000,000個/cm2以下、好ましくは40,000個/cm2以上1,000,000個/cm2以下である前記<1>〜<13>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<15>
前記加工工程は、前記起毛不織布に接触させたノズルから接着剤を塗出するコーター式のダイヘッドを用いて行われる前記<1>〜<14>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<16>
前記原料不織布の搬送速度(V1)に対する前記凹凸ローラの周速度(V2)の比(V2/V1)の値は、前記原料不織布の搬送方向を基準として−10.0以上、好ましくは−5.0以上、そして、−0.3以下、好ましくは−1.5以下、具体的には、−10.0以上−0.3以下、好ましくは−5.0以上−1.5以下である前記<1>〜<15>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<17>
前記原料不織布の搬送速度(V1)に対する前記凹凸ローラの周速度(V2)の比(V2/V1)の値は、前記原料不織布の搬送方向を基準として1.1以上、好ましくは2.0以上、そして、20.0以下、好ましくは8.0以下、具体的には、1.1以上20.0以下、好ましくは2.0以上8.0以下である前記<1>〜<15>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<18>
前記繊維除去用凸ローラの周面に起毛不織布が接触し始めてから周面から離れるまでの角度は、10°以上、好ましくは180°以上、そして、15°以下、好ましくは40°以下、具体的には、10°以上180°以下、好ましくは15°以上40°以下である前記<1>〜<17>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<19>
前記繊維除去用凸ローラは、直径10mm以上300mm以下の回転ローラである前記<1>〜<18>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<20>
前記凹凸ローラは、直径10mm以上300mm以下の回転ローラである前記<1>〜<19>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<21>
前記凹凸ローラは、ISO1997に準拠して測定したローラ表面の算術平均粗さが、1.5μm以上、好ましくは10μm以上、そして、500μm以下、好ましくは150μm以下、具体的には、1.5μm以上500μm以下、好ましくは10μm以上150μm以下である前記<1>〜<20>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<22>
前記凹凸ローラの凸部の密度は、500個/cm2以上、好ましくは1000個/cm2以上、そして、5000個/cm2以下、好ましくは3000個/cm2以下、具体的には、500個/cm2以上5000個/cm2以下、好ましくは1000個/cm2以上3000個/cm2以下である前記<1>〜<21>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<23>
前記原料不織布の坪量が、8g/m2以上50g/m2以下である前記<1>〜<22>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
【0062】
<24>
長繊維を含むウェブを熱融着部により固定した原料不織布を起毛させ、該長繊維の起毛した起毛不織布を加工する不織布の製造装置であって、
前記原料不織布に凹凸ローラを用いて起毛加工を施す起毛加工部と、
前記起毛不織布から脱落する繊維屑を、繊維吸引部を用いて吸引して回収する繊維回収部と、
前記繊維屑が回収された前記起毛不織布に対して、熱及び/又は外力を加えて加工を施す加工部とを備え、
前記繊維回収部は、前記凹凸ローラと前記繊維吸引部との間に少なくとも1個以上配された除電部と、前記繊維吸引部に並置され且つ前記起毛不織布における前記凹凸ローラにより起毛加工を施された加工面に当接する繊維除去用凸ローラとを有し、
前記繊維除去用凸ローラは、その凸部の高さが、前記凹凸ローラの凸部の高さよりも低い不織布の製造装置。
【0063】
<25>
前記起毛加工部は、前記凹凸ローラの上流側及び下流側に、前記原料不織布を搬送する第1搬送ローラを備えている前記<24>に記載の不織布の製造装置。
<26>
前記繊維回収部は、前記繊維除去用凸ローラの上流側及び下流側に、前記原料不織布を搬送する第2搬送ローラを備えている前記<24>又は<25>に記載の不織布の製造装置。
<27>
前記第1搬送ローラ及び第2搬送ローラは、前記原料不織布における前記起毛加工が施される加工面とは反対側の面に当接するように配置されている前記<25>又は<26>に記載の不織布の製造装置。
<28>
前記加工部は、前記起毛不織布に接触させたノズルから接着剤を塗出するコーター式のダイヘッドを備えている前記<24>〜<27>の何れか1に記載の不織布の製造装置。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
【0065】
〔実施例1〕
原料不織布として、繊維径10μmのポリプロピレン樹脂からなる坪量17g/m2のスパンボンド不織布を使用した。また、原料不織布を構成する熱融着部は、1個あたりの表面積が0.09mm2であり、その数が25個/cm2であった。次に、このスパンボンド不織布を、図1に示す製造装置100に通して実施例1の不織布を作製した。凹凸ローラ21に関しては、直径が100mmであり、算術平均粗さ(Ra)が13.9μmであり、凸部の密度が3,000個/cm2であった。また、繊維除去用凸ローラ33に関しては、直径が25mmであり、算術平均粗さ(Ra)が0.33μmであり、凸部の密度が92,000個/cm2であった。また、原料不織布の搬送速度V1に対する凹凸ローラの周速度V2の比(V2/V1)の値が−1.6であった。また、起毛不織布の搬送速度V3に対する繊維除去用凸ローラの周速度V4の比(V4/V3)の値が−0.0015であった。なた、繊維除去用凸ローラへの抱き角βが20°であり、起毛不織布の搬送テンションが25N/m以上であった。また、繊維吸引部の吸引力は0.7kPaであった。
【0066】
〔実施例2〕
実施例1と同じ原料不織布を使用し、繊維除去用凸ローラ33に関する条件以外は、実施例1と同様の条件で実施例2の不織布を作製した。具体的に、繊維除去用凸ローラ33に関しては、直径が25mmであり、算術平均粗さ(Ra)が0.83μmであり、凸部の密度が80,000個/cm2であった。また、また、起毛不織布の搬送速度V3に対する繊維除去用凸ローラの周速度V4の比(V4/V3)の値が−0.0015であった。なた、繊維除去用凸ローラへの抱き角βが180°であり、起毛不織布の搬送テンションが50N/m以上であった。
【0067】
〔性能評価〕
実施例1〜2の不織布について、繊維吸引部31で吸引された繊維屑発生量を求め、図6(a)に示した。また、図1に示す製造装置100において、繊維回収部3と加工部4との間に、別の繊維吸引部を配置して、別の繊維吸引部で吸引された繊維屑発生量を求め、図6(b)に示した。尚、別の繊維吸引部の吸引力は6.8kPaであった。
【0068】
別の繊維吸引部の吸引力は、繊維吸引部31の吸引力の10倍近くであるにもかかわらず、図6(a),図6(b)に示すように、別の繊維吸引部における繊維屑発生量は、繊維吸引部31における繊維屑発生量に比べ大きく減少している。また、比較例として、繊維回収部3を用いずに、別の繊維吸引部のみを配置した場合の繊維屑発生量は63mgであり、実施例1〜2に比べて増大した。このことから明らかなように、実施例1〜2の不織布は、図1に示す製造装置100の備える繊維回収部3により、繊維屑となる可能性の高い繊維を含んで、繊維屑として十分に回収できることが判った。従って、図1に示す製造装置100を用いる不織布の製造方法によれば、接着剤を吐出するダイヘッド等の加工装置の汚れを抑えることが期待できると共に、製品への繊維屑の混入を抑えることが期待できる。
【符号の説明】
【0069】
100 製造装置
10 原料不織布
1a,1b 起毛不織布
1w 繊維屑
11 長繊維
12 熱融着部
2 起毛加工部
21 凹凸ローラ
211 凸部
22,23 搬送ローラ
24,25 凹凸ローラ
26 スチールマッチングエンボスローラ
241,251 凸部
242,252 凹部
3 除電部
31 繊維吸引部
32 除電部
321 第1除電部
322 第2除電部
33 繊維除去用凸ローラ
331 凸部
34,35 搬送ローラ
4 加工部
41 ダイヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6