特許第6402020号(P6402020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402020
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】推進装置
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/40 20060101AFI20181001BHJP
   F03H 1/00 20060101ALI20181001BHJP
   F03H 99/00 20090101ALI20181001BHJP
   F02K 9/88 20060101ALI20181001BHJP
   F02K 9/68 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   B64G1/40 Z
   F03H1/00 A
   F03H99/00 A
   F02K9/88
   F02K9/68
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-253126(P2014-253126)
(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-113019(P2016-113019A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】飯原 重保
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0047578(US,A1)
【文献】 米国特許第04710359(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0327015(US,A1)
【文献】 特開平11−013541(JP,A)
【文献】 特表2013−536356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03H 1/00
F02K 9/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドラジンを貯留するタンクと、
上記タンクの下流側に配設され、上記ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを発生させるガス発生器と、
上記ガス発生器の下流側に配設され、上記高温ヒドラジン分解ガスに含まれる水素ガスを分離するガス分離器と、
上記ガス分離器の下流側であって、かつ、上記水素ガス分流側に配設され、上記分離された水素ガスを噴射する水素ガススラスタと、
上記ガス分離器の下流側であって、かつ、上記水素ガス分流側と反対側に配設され、上記高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスをイオン化し、静電加速して噴射する窒素ガスホールスラスタと、
上記ガス分離器の下流側であって、かつ、上記水素ガス分流側と反対側に配設され、上記高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスから分離された電子を供給する窒素ガスホローカソードと、
上記ガス発生器と上記ガス分離器との間に配設され、上記高温ヒドラジン分解ガスを貯留するバッファタンクと、を備えた
ことを特徴とする推進装置。
【請求項2】
ヒドラジンを貯留するタンクと、
上記タンクの下流側に配設され、上記ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを発生させるガス発生器と、
上記ガス発生器の下流側に配設され、上記高温ヒドラジン分解ガスに含まれる水素ガスを分離するガス分離器と、
上記ガス分離器の下流側であって、かつ、上記水素ガス分流側に配設され、上記分離された水素ガスを噴射する水素ガススラスタと、
上記ガス分離器の下流側であって、かつ、上記水素ガス分流側と反対側に配設され、上記高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスをイオン化し、静電加速して噴射する窒素ガスホールスラスタと、
上記ガス分離器の下流側であって、かつ、上記水素ガス分流側と反対側に配設され、上記高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスから分離された電子を供給する窒素ガスホローカソードと、を備え、
上記水素ガススラスタと上記窒素ガスホールスラスタとが一体型構造を有し、
上記水素ガススラスタが上記一体型構造の中心部に配設されている
ことを特徴とする推進装置。
【請求項3】
上記ガス発生器と上記ガス分離器との間に配設され、上記高温ヒドラジン分解ガスを貯留するバッファタンクを更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の推進装置。
【請求項4】
上記タンクの下流側に配設され、上記ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを噴射する高温ヒドラジン分解ガススラスタを更に備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の推進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進装置に関する。更に詳細には、本発明は、ヒドラジンを用いたハイブリッド推進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス発生器において、ヒドラジン(液体)を触媒で分解して、窒素ガスと水素ガスとアンモニアガスを含む高温ヒドラジン分解ガスをノズルより噴射して推力を得る推進装置や、ガス発生器において、ヒドラジン(液体)を触媒で分解して、窒素ガスと水素ガスとアンモニアガスを含む高温ヒドラジン分解ガスを発生させ、生成された高温ヒドラジン分解ガスを直流放電チャンバに導入し、導入された高温ヒドラジン分解ガスに直流放電エネルギーを付加して、ガスを高温化して更に高い推進効率を得る推進装置が知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−13541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された高温ヒドラジン分解ガスをそのまま噴射する推進装置においては、1N以上の推力を達成することができるものの、その推進効率は低く、また、その比推力は240s程度である。
また、特許文献1に記載された高温ヒドラジン分解ガスに直流放電エネルギーを付加して噴射する推進装置においては、2kW程度の電力が必要である上、その比推力は500s程度であり、達成される推力は250mN程度である。
更に、特許文献1に記載されたアークジェットにおいては約400〜700sの比推力、力場加速装置においては1500〜3000sの比推力を得ることができるものの、それらにはそれぞれ約5kW、100kW程度の電力が必要であり、供給電力が2kW程度であることを要する現在の宇宙船や人工衛星には搭載することができない。
このように、現在の宇宙船や人工衛星に搭載可能な推進装置においては、その比推力が低いという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明は、ヒドラジンを用いた推進装置において、比推力を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた。その結果、ヒドラジンを貯留するタンクと、タンクの下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを発生させるガス発生器と、ガス発生器の下流側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる水素ガスを分離するガス分離器と、ガス分離器の下流側であって、かつ、水素ガス分流側に配設され、分離された水素ガスを噴射する水素ガススラスタと、ガス分離器の下流側であって、かつ、水素ガス分流側と反対側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスをイオン化し、静電加速して噴射する窒素ガスホールスラスタと、ガス分離器の下流側であって、かつ、水素ガス分流側と反対側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスから分離された電子を供給する窒素ガスホローカソードとを備え、更に、ガス発生器とガス分離器との間に配設され、高温ヒドラジン分解ガスを貯留するバッファタンクを備えた構成、又は水素ガススラスタと窒素ガスホールスラスタとが一体型構造を有し、水素ガススラスタが一体型構造の中心部に配設されている構成とすることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の推進装置は、ヒドラジンを貯留するタンクと、タンクの下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを発生させるガス発生器と、ガス発生器の下流側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる水素ガスを分離するガス分離器と、ガス分離器の下流側であって、かつ、水素ガス分流側に配設され、分離された水素ガスを噴射する水素ガススラスタと、ガス分離器の下流側であって、かつ、水素ガス分流側と反対側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスをイオン化し、静電加速して噴射する窒素ガスホールスラスタと、ガス分離器の下流側であって、かつ、水素ガス分流側と反対側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスから分離された電子を供給する窒素ガスホローカソードとを備え、更に、ガス発生器とガス分離器との間に配設され、高温ヒドラジン分解ガスを貯留するバッファタンクを備えたものか、又は水素ガススラスタと窒素ガスホールスラスタとが一体型構造を有し、水素ガススラスタが一体型構造の中心部に配設されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒドラジンを貯留するタンクと、タンクの下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを発生させるガス発生器と、ガス発生器の下流側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる水素ガスを分離するガス分離器と、ガス分離器の下流側であって、かつ、水素ガス分流側に配設され、分離された水素ガスを噴射する水素ガススラスタと、ガス分離器の下流側であって、かつ、水素ガス分流側と反対側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスをイオン化し、静電加速して噴射する窒素ガスホールスラスタと、ガス分離器の下流側であって、かつ、水素ガス分流側と反対側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスから分離された電子を供給する窒素ガスホローカソードとを備え、更に、ガス発生器とガス分離器との間に配設され、高温ヒドラジン分解ガスを貯留するバッファタンクを備えた構成、又は水素ガススラスタと窒素ガスホールスラスタとが一体型構造を有し、水素ガススラスタが一体型構造の中心部に配設されている構成とした。
そのため、ヒドラジンを用いた推進装置において、比推力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、参考例1に係る推進装置を模式的に示す構成図である。
図2図2は、ヒドラジン(N)分解時のガス温度特性を示すグラフである。
図3図3は、水素ガス(H)スラスタの性能を示すグラフである。
図4図4は、1.5kW級の窒素ガス(N)ホールスラスタの性能を示すグラフである。
図5図5は、実施例2に係る推進装置を模式的に示す構成図である。
図6図6は、実施例3に係る推進装置を模式的に示す構成図である。
図7図7は、比較例1に係る推進装置を模式的に示す構成図である。
図8図8は、高温ヒドラジン分解ガススラスタの性能を示すグラフである。
図9図9は、比較例2に係る推進装置を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る推進装置について詳細に説明する。
【0011】
まず、本発明の一実施形態に係る推進装置は、ヒドラジンを貯留するタンクと、タンクの下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを発生させるガス発生器と、ガス発生器の下流側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる水素ガスを分離するガス分離器と、ガス分離器の下流側であって、かつ、水素ガス分流側に配設され、分離された水素ガスを噴射する水素ガススラスタと、ガス分離器の下流側であって、かつ、水素ガス分流側と反対側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスをイオン化し、静電加速して噴射する窒素ガスホールスラスタと、ガス分離器の下流側であって、かつ、水素ガス分流側と反対側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスから分離された電子を供給する窒素ガスホローカソードとを備えたものである。
そして、このような構成とすることにより、ヒドラジンを用いた推進装置において、比推力を高めることができる。
【0012】
ここで、原理について説明する。
まず、ガス発生器において、ヒドラジンを触媒で分解して高温ヒドラジン分解ガス(H,N)を発生させる。
次いで、ガス分離器において、高温ヒドラジン分解ガスを用途別(H,N)に分離する。
更に、分離された水素ガス(H)は、水素ガススラスタより噴射される。
一方、分離された窒素ガス(N)は、窒素ガスホールスラスタの推進薬として用いられる。また、窒素ガスホローカソードは、分離された窒素ガス(N)から得られる電子を、窒素ガスホールスラスタから噴射されるイオン化された窒素ガスに供給して中和する。
なお、例えば、水素ガス(H)を用いた水素ガススラスタでは比推力が500s程度となるため、総合的な比推力は900〜1000s程度となる。
【0013】
ここで、上記ガス発生器としては、例えば、EHT(Electrothermal Hydrazine Thruster)のガス発生器などの上述の機能を果たす従来公知のガス発生器を適用することができる。代表例としては、株式会社IHI製のEHTを挙げることができる。
また、上記ガス分離器としては、例えば、多孔質セラミック製水素分離膜などを有する上述の機能を果たす従来公知のガス分離器を適用することができる。多孔質セラミック製水素分離膜の代表例としては、分離層に炭素、DDR型ゼオライトが採用され、細孔径が1nm以下のセラミック膜で分子単位の分離が可能なサブナノセラミック膜フィルタを挙げることができる。
更に、上記窒素ガスホールスラスタとしては、いわゆるホール効果と呼ばれる原理を利用して窒素ガス(N)をイオン化し、静電加速する従来公知のホールスラスタを適用することができる。
【0014】
そして、本実施形態の推進装置は、水素ガススラスタと窒素ガスホールスラスタとが一体型構造を有していてもよく、水素ガススラスタが窒素ガスホールスラスタとは別途補助的な位置に配設された別体型構造を有していてもよい。
水素ガススラスタと窒素ガスホールスラスタとが一体型構造を有している場合、例えば、ガス分離器において分離された水素ガス(H)が、窒素ガスホールスラスタの中心部に設けられた水素ガススラスタから噴射される構造とすることが好ましい。
このような構成とすることにより、窒素ガスホールスラスタの比推力を高めることができ(水素ガス流れが窒素ガスイオンの多価イオン化を防止することにより性能が向上すると推定される。)、かつ、推力も10%程度高めることができる。
また、水素ガススラスタと窒素ガスホールスラスタとが別体型構造を有している場合には、例えば、各スラスタには別の機能を持たせることが可能となる。
このような構成とすることにより、窒素ガスホールスラスタには高比推力スラスタとしての機能、水素ガススラスタには補助推力スラスタとしての機能を分割して持たせることができる。
【0015】
また、本実施形態の推進装置は、ガス発生器とガス分離器との間に配設され、高温ヒドラジン分解ガスを貯留するバッファタンクを更に備えたものであることが好ましい。
ガス発生器とガス分離器との間に配設され、高温ヒドラジン分解ガスを貯留するバッファタンクを更に備えた構成とすることによって、ガス発生器を作動させることなく、スラスタを作動させる自在性を有すると共に、高温ヒドラジン分解ガスをガス分離器に供給するに当たり、高温ヒドラジン分解ガスの生成反応が律速段階にならず、高温ヒドラジン分解ガスをガス分離器に安定して供給することができる。
【0016】
更に、本実施形態の推進装置は、タンクの下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを噴射する高温ヒドラジン分解ガススラスタを更に備えたものであることが好ましい。
このような構成とすることによって、比推力を高めることができると共に、推力が必要な場合には、高い推力を得ることが可能な高温ヒドラジン分解ガススラスタを作動させることができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、以下の実施例で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
参考例1)
図1は、参考例1に係る推進装置を模式的に示す構成図である。
図1に示すように、本例の推進装置1は、ヒドラジンを貯留するタンク10と、タンク10の下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを発生させるガス発生器20と、ガス発生器20の下流側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる水素ガスを分離するガス分離器30と、ガス分離器30の下流側であって、かつ、水素ガス分流側に配設され、分離された水素ガスを噴射する水素ガススラスタ40と、ガス分離器30の下流側であって、かつ、水素ガス分流側と反対側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスをイオン化し、静電加速して噴射する窒素ガスホールスラスタ50と、ガス分離器30の下流側であって、かつ、水素ガス分流側と反対側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスから分離された電子を供給する窒素ガスホローカソード60と、タンク10の下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを噴射する高温ヒドラジン分解ガススラスタ70を備えたものである。
なお、本例においては、水素ガススラスタ40が窒素ガスホールスラスタ50とは別途補助的な位置に配設された別体型構造を有している。また、図中のPは各構成を連結するパイプ、Vはバルブを示す。更に、パイプの他の部位に図示しないバルブを設けてもよい。
【0019】
このような構成とすると、比推力を高めることができると共に、推力が必要な場合には、高い推力を得ることが可能な高温ヒドラジン分解ガススラスタを作動させることができる。
【0020】
そして、本例の推進装置の性能は、以下のように求めることができる。
【0021】
(1)液体ヒドラジン(N)は、触媒により、窒素ガス(N)、水素ガス(H)に分解される。このときの分解は、以下の化学反応式(I)で示される。
→N+2H ・・・(I)
分解後のガス成分には、化学反応の途中経過としてアンモニアガス(NH)が発生するがアンモニアガス(NH)は更に触媒により分解され、最終的に窒素ガス(N)、と水素ガス(H)とが残る。液体ヒドラジン(N)1molに対して、1molの窒素ガス(N)、2molの水素ガス(H)が生成される。
図2にヒドラジン分解時のガス温度特性を示す。図2に示すように、アンモニアガス(NH)分解度が1の場合、温度は869K(約596℃)程度となる。
【0022】
(2)分解により生成された窒素ガス(N)と水素ガス(H)は、ガス分離器に供給され、窒素ガス(N)と水素ガス(H)とがガス分離器における多孔質セラミック製水素分離膜により分離される。多孔質セラミック製水素分離膜を用いれば、窒素ガス(N)と水素ガス(H)とにほぼ完全に分離することが可能である。そして、このガス分離器の下流側においては、約800K(約530℃)程度の窒素ガス(N)と水素ガス(H)とが存在する。
【0023】
(3)そして、水素ガス(H)は、水素ガススラスタへ供給され、窒素ガス(N)は窒素ガスホールスラスタへ供給され、各スラスタが宇宙空間にガスを噴射する。なお、水素ガス(H)の場合はガスのまま噴射される。
図3に水素ガス(H)スラスタの性能を示す。
【0024】
(4)窒素ガス(N)は、窒素ガスホールスラスタに供給され、大部分は陽極に分流されるが、一部は陰極である窒素ガスホローカソードに分流される。
図4に1.5kW級の窒素ガスホールスラスタの性能を示す。
【0025】
(5)水素ガス(H)を用いた水素ガススラスタと、窒素ガス(N)を用いた窒素ガスホールスラスタを両方噴射することとすると、推進装置全体としての総合比推力(Isp)は下記の式(1)で表され、総合推力は下記の式(5)で表される。ここで、ヒドラジン分解後の窒素ガス流量及び水素ガス流量はそれぞれ下記の式(2)及び(3)から算出され、ヒドラジン流量とヒドラジン分解後の窒素ガス流量及び水素ガス流量とは下記の式(4)の関係を満足する。また、各スラスタ推力(FN2及びFH2)は下記の式(6)及び(7)から算出される。
【0026】
【数1】
【0027】
ヒドラジン1秒当たり1/2000molの流量時の性能を具体的に計算する。
ヒドラジンは1mol当たりの質量が32gであるので、ヒドラジンの流量は16mg/sとなる。このとき、窒素ガスの流量は14mg/sとなり、水素ガスの流量は2mg/sとなる。また、窒素ガスホールスラスタにおける比推力は1000s(図4参照。)であり、水素ガススラスタにおける比推力は500s(図3参照。)であるので、式(1)、(5)〜(7)より、総合比推力は約938s、総合推力は約147mNとなる。
【0028】
(実施例2)
図5は、実施例2に係る推進装置を模式的に示す構成図である。なお、上記参考例1において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、本例の推進装置1Aは、窒素ガスホールスラスタ50の中心部に水素ガススラスタ40が設けられ、窒素ガスホールスラスタの中心部から水素が噴射される一体型構造を有する構成が、上記参考例1の推進装置と相違している。
なお、本例においては、水素ガススラスタ40が水素ガススラスタとして機能するばかりでなく、窒素ガスホールスラスタの比推力向上にも活用できる(水素ガス流れが窒素ガスイオンの多価イオン化を防止することにより性能が向上すると推定される。)。
このような構成とすると、比推力を高めることができると共に、推力も高めることができる。もちろん、推力が必要な場合には、高い推力を得ることが可能な高温ヒドラジン分解ガススラスタを作動させることができる。
【0029】
(実施例3)
図6は、実施例3に係る推進装置を模式的に示す構成図である。なお、上記参考例1において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、本例の推進装置1Bは、ガス発生器20とガス分離器30との間に配設され、高温ヒドラジン分解ガスを貯留するバッファタンク80を更に備えた構成が、上記参考例1の推進装置と相違している。
このような構成とすると、比推力を高めることができると共に、高温ヒドラジン分解ガスをガス分離器に供給するに当たり、高温ヒドラジン分解ガスの生成反応が律速段階にならず、高温ヒドラジン分解ガスをガス分離器に安定して供給することができる。もちろん、推力が必要な場合には、高い推力を得ることが可能な高温ヒドラジン分解ガススラスタを作動させることができる。
【0030】
(比較例1)
図7は、比較例1に係る推進装置を模式的に示す構成図である。なお、上記参考例1において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図7に示すように、本例の推進装置100は、ヒドラジンを貯留するタンク10と、タンク10の下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを噴射する高温ヒドラジン分解ガススラスタ70を備えたものである。
また、図8に高温ヒドラジン分解ガススラスタの性能を示す。
このような構成とすると、1N以上の推力を達成することができるものの、その推進効率は低く、また、その比推力は240s程度である。
【0031】
(比較例2)
図9は、比較例2に係る推進装置を模式的に示す構成図である。なお、上記参考例1において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、本例の推進装置100Aは、ヒドラジンを貯留するタンク10と、タンク10の下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを発生させるガス発生器20と、ガス発生器20の下流側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに直流放電エネルギーを付加して、ガスを高温化して噴射するDCアークジェットスラスタ90と、タンク10の下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを噴射する高温ヒドラジン分解ガススラスタ70を備えたものである。
このような構成とすると、DCアークジェットスラスタにおいては、2kW程度の電力が必要である上、その比推力は500s程度であり、達成される推力は250mN程度である。
【0032】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0033】
上述した各実施形態や実施例に記載した構成は、各実施形態や実施例に限定されるものではなく、例えば、各種タンクやガス発生器、ガス分離器、各種スラスタ、窒素ガスホローカソードの構成の細部を変更したり、各実施形態や実施例の構成を上述した各実施形態や実施例以外の組み合わせにしたりすることができる。
【0034】
また、上述した各実施形態や実施例においては、一液式推進装置を例に挙げて説明したが、二液式推進装置に組み込むことも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1,1A,1B,100,100A 推進装置
10 タンク
20 ガス発生器
30 ガス分離器
40 水素ガススラスタ
50 窒素ガスホールスラスタ
60 窒素ガスホローカソード
70 高温ヒドラジン分解ガススラスタ
80 バッファタンク
90 DCアークジェットスラスタ
P パイプ
V バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9