【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、以下の実施例で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
(
参考例1)
図1は、
参考例1に係る推進装置を模式的に示す構成図である。
図1に示すように、本例の推進装置1は、ヒドラジンを貯留するタンク10と、タンク10の下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを発生させるガス発生器20と、ガス発生器20の下流側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる水素ガスを分離するガス分離器30と、ガス分離器30の下流側であって、かつ、水素ガス分流側に配設され、分離された水素ガスを噴射する水素ガススラスタ40と、ガス分離器30の下流側であって、かつ、水素ガス分流側と反対側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスをイオン化し、静電加速して噴射する窒素ガスホールスラスタ50と、ガス分離器30の下流側であって、かつ、水素ガス分流側と反対側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに含まれる窒素ガスから分離された電子を供給する窒素ガスホローカソード60と、タンク10の下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを噴射する高温ヒドラジン分解ガススラスタ70を備えたものである。
なお、本例においては、水素ガススラスタ40が窒素ガスホールスラスタ50とは別途補助的な位置に配設された別体型構造を有している。また、図中のPは各構成を連結するパイプ、Vはバルブを示す。更に、パイプの他の部位に図示しないバルブを設けてもよい。
【0019】
このような構成とすると、比推力を高めることができると共に、推力が必要な場合には、高い推力を得ることが可能な高温ヒドラジン分解ガススラスタを作動させることができる。
【0020】
そして、本例の推進装置の性能は、以下のように求めることができる。
【0021】
(1)液体ヒドラジン(N
2H
4)は、触媒により、窒素ガス(N
2)、水素ガス(H
2)に分解される。このときの分解は、以下の化学反応式(I)で示される。
N
2H
4→N
2+2H
2 ・・・(I)
分解後のガス成分には、化学反応の途中経過としてアンモニアガス(NH
3)が発生するがアンモニアガス(NH
3)は更に触媒により分解され、最終的に窒素ガス(N
2)、と水素ガス(H
2)とが残る。液体ヒドラジン(N
2H
4)1molに対して、1molの窒素ガス(N
2)、2molの水素ガス(H
2)が生成される。
図2にヒドラジン分解時のガス温度特性を示す。
図2に示すように、アンモニアガス(NH
3)分解度が1の場合、温度は869K(約596℃)程度となる。
【0022】
(2)分解により生成された窒素ガス(N
2)と水素ガス(H
2)は、ガス分離器に供給され、窒素ガス(N
2)と水素ガス(H
2)とがガス分離器における多孔質セラミック製水素分離膜により分離される。多孔質セラミック製水素分離膜を用いれば、窒素ガス(N
2)と水素ガス(H
2)とにほぼ完全に分離することが可能である。そして、このガス分離器の下流側においては、約800K(約530℃)程度の窒素ガス(N
2)と水素ガス(H
2)とが存在する。
【0023】
(3)そして、水素ガス(H
2)は、水素ガススラスタへ供給され、窒素ガス(N
2)は窒素ガスホールスラスタへ供給され、各スラスタが宇宙空間にガスを噴射する。なお、水素ガス(H
2)の場合はガスのまま噴射される。
図3に水素ガス(H
2)スラスタの性能を示す。
【0024】
(4)窒素ガス(N
2)は、窒素ガスホールスラスタに供給され、大部分は陽極に分流されるが、一部は陰極である窒素ガスホローカソードに分流される。
図4に1.5kW級の窒素ガスホールスラスタの性能を示す。
【0025】
(5)水素ガス(H
2)を用いた水素ガススラスタと、窒素ガス(N
2)を用いた窒素ガスホールスラスタを両方噴射することとすると、推進装置全体としての総合比推力(Isp)は下記の式(1)で表され、総合推力は下記の式(5)で表される。ここで、ヒドラジン分解後の窒素ガス流量及び水素ガス流量はそれぞれ下記の式(2)及び(3)から算出され、ヒドラジン流量とヒドラジン分解後の窒素ガス流量及び水素ガス流量とは下記の式(4)の関係を満足する。また、各スラスタ推力(F
N2及びF
H2)は下記の式(6)及び(7)から算出される。
【0026】
【数1】
【0027】
ヒドラジン1秒当たり1/2000molの流量時の性能を具体的に計算する。
ヒドラジンは1mol当たりの質量が32gであるので、ヒドラジンの流量は16mg/sとなる。このとき、窒素ガスの流量は14mg/sとなり、水素ガスの流量は2mg/sとなる。また、窒素ガスホールスラスタにおける比推力は1000s(
図4参照。)であり、水素ガススラスタにおける比推力は500s(
図3参照。)であるので、式(1)、(5)〜(7)より、総合比推力は約938s、総合推力は約147mNとなる。
【0028】
(実施例2)
図5は、実施例2に係る推進装置を模式的に示す構成図である。なお、上記
参考例1において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、本例の推進装置1Aは、窒素ガスホールスラスタ50の中心部に水素ガススラスタ40が設けられ、窒素ガスホールスラスタの中心部から水素が噴射される一体型構造を有する構成が、上記
参考例1の推進装置と相違している。
なお、本例においては、水素ガススラスタ40が水素ガススラスタとして機能するばかりでなく、窒素ガスホールスラスタの比推力向上にも活用できる(水素ガス流れが窒素ガスイオンの多価イオン化を防止することにより性能が向上すると推定される。)。
このような構成とすると、比推力を高めることができると共に、推力も高めることができる。もちろん、推力が必要な場合には、高い推力を得ることが可能な高温ヒドラジン分解ガススラスタを作動させることができる。
【0029】
(実施例3)
図6は、実施例3に係る推進装置を模式的に示す構成図である。なお、上記
参考例1において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、本例の推進装置1Bは、ガス発生器20とガス分離器30との間に配設され、高温ヒドラジン分解ガスを貯留するバッファタンク80を更に備えた構成が、上記
参考例1の推進装置と相違している。
このような構成とすると、比推力を高めることができると共に、高温ヒドラジン分解ガスをガス分離器に供給するに当たり、高温ヒドラジン分解ガスの生成反応が律速段階にならず、高温ヒドラジン分解ガスをガス分離器に安定して供給することができる。もちろん、推力が必要な場合には、高い推力を得ることが可能な高温ヒドラジン分解ガススラスタを作動させることができる。
【0030】
(比較例1)
図7は、比較例1に係る推進装置を模式的に示す構成図である。なお、上記
参考例1において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図7に示すように、本例の推進装置100は、ヒドラジンを貯留するタンク10と、タンク10の下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを噴射する高温ヒドラジン分解ガススラスタ70を備えたものである。
また、
図8に高温ヒドラジン分解ガススラスタの性能を示す。
このような構成とすると、1N以上の推力を達成することができるものの、その推進効率は低く、また、その比推力は240s程度である。
【0031】
(比較例2)
図9は、比較例2に係る推進装置を模式的に示す構成図である。なお、上記
参考例1において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
図9に示すように、本例の推進装置100Aは、ヒドラジンを貯留するタンク10と、タンク10の下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを発生させるガス発生器20と、ガス発生器20の下流側に配設され、高温ヒドラジン分解ガスに直流放電エネルギーを付加して、ガスを高温化して噴射するDCアークジェットスラスタ90と、タンク10の下流側に配設され、ヒドラジンを触媒で分解して、高温ヒドラジン分解ガスを噴射する高温ヒドラジン分解ガススラスタ70を備えたものである。
このような構成とすると、DCアークジェットスラスタにおいては、2kW程度の電力が必要である上、その比推力は500s程度であり、達成される推力は250mN程度である。
【0032】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0033】
上述した各実施形態や実施例に記載した構成は、各実施形態や実施例に限定されるものではなく、例えば、各種タンクやガス発生器、ガス分離器、各種スラスタ、窒素ガスホローカソードの構成の細部を変更したり、各実施形態や実施例の構成を上述した各実施形態や実施例以外の組み合わせにしたりすることができる。
【0034】
また、上述した各実施形態や実施例においては、一液式推進装置を例に挙げて説明したが、二液式推進装置に組み込むことも可能である。