(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による蓋体付き容器の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0013】
本発明にかかる蓋体付き容器1は、
図1及び
図2に示すように、例えば化粧料などの内容物Cを収容する携帯用のコンパクト容器であり、平面視で矩形状の扁平容器である。この蓋体付き容器1は、内容物Cを収容する収容凹部2Aが形成された容器本体2と、ヒンジ部3により容器本体2に対して回動可能に連結され、容器本体2を開閉する蓋体4と、容器本体2に形成された陥凹部2Bに配設された押釦体5と、を備えている。
ここで、本実施形態では、蓋体4側を上側とし、容器本体2側を下側とする。また、上下方向に直交する方向のうちヒンジ部3側を後側とし、その反対側を前側とする。さらに、上下方向及び前後方向の双方に直交する方向を左右方向とする。
【0014】
容器本体2は、例えばアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)などの合成樹脂材料で形成されており、平面視で矩形状の底壁部11と、底壁部11の外周縁から上方に向けて延設された第1周壁部12と、を有する。これら底壁部11及び第1周壁部12は、上方に向けて開口する収容凹部2Aを画成する。この収容凹部2Aには、例えばアイシャドウやアイライナ、ファンデーションなどの化粧料のような内容物Cを収容した皿体(図示略)が収容されている。この皿体は、平面視で矩形状の扁平容器であり、例えば金属で形成されている。
【0015】
第1周壁部12は、平面視で矩形環状に形成された壁部であり、前側の第1前壁部(前壁部)13と、左右方向の中間部にヒンジ部3を構成するヒンジ凹部14Aが形成された後側の第1後壁部(後壁部)14と、左右一対の第1側壁部15と、を有する。
第1前壁部13の左右方向の中間部には、前方及び上方に一体に開口する陥凹部2Bが形成されており、この陥凹部2Bを画成する壁部のうち前方を向く奥壁面16には、
図2及び
図3に示すように、前方に向けて突出する係止部17が形成されている。また、奥壁面16のうち係止部17よりも下方に位置する部分には、前方に向けて突出し、押釦体5が上方へ抜けることを防止する係止板部18が形成されている。さらに、陥凹部2Bを画成する壁部のうち上方を向く下壁面19には、前後方向に延在し、上方に開口する一対の引掛溝部19Aが左右方向に間隔をあけて形成されている。
【0016】
蓋体4は、
図1及び
図2に示すように、容器本体2と同様に合成樹脂材料で形成されており、平面視で矩形板状の天壁部21と、天壁部21の外周縁から下方に向けて延設された矩形環状の第2周壁部22と、を有する。
天壁部21は、蓋体4の閉状態において容器本体2の底壁部11の上方で対向して配置されている。天壁部21の前後両端部それぞれには、
図2に示すように、第1周壁部12の後述する左右一対の第2側壁部27と共に天壁部21に鏡体23を接合する空間を画成する一対の鏡枠部21Aが左右方向の全長にわたって直線状に延設されている。
【0017】
第2周壁部22は、平面視で矩形環状に形成された壁部であり、前側の第2前壁部24と、ヒンジ部3を構成するヒンジ軸壁部25が設けられた後側の第2後壁部26と、左右両側の第2側壁部27と、を有する。
第2前壁部24には、
図2及び
図3に示すように、下方に向けて突出し、陥凹部2Bに上方から進入する突出部28が配設されており、この突出部28には、後方に向けて突出し、係止部17にアンダーカット嵌合する被係止部28Aが形成されている。また、突出部28の前方を向く前面は、後方から前方に向かうにしたがって漸次上方に向かうように傾斜している。なお、本実施形態では、突出部28の前面の水平面に対する傾斜角は、一定となっているが、一定でなくてもよい。
ヒンジ軸壁部25は、
図1及び
図2に示すように、ヒンジ凹部14Aの左右方向の内側に配設されており、ヒンジ軸壁部25の左右方向の外端部とヒンジ凹部14Aとは、軸部29を介して連結されている。これにより、容器本体2に対して蓋体4を回動可能に支持するヒンジ部3を構成する。
【0018】
押釦体5は、
図2及び
図3に示すように、陥凹部2B内で後方へ押込移動自在に配設されている。押釦体5は、後方に向けて開口する矩形箱状をなしており、前方に配設された押圧壁部31と、押圧壁部31の上端から後方に向けて突設された上壁部32と、押圧壁部31の下端から後方に向けて突設された下壁部33と、左右一対の横壁部34と、押圧壁部31の上下方向の中間部から後方に向けて突設された摺接部35と、を有する。
【0019】
上壁部32の後端は、摺接部35の後端よりも前方に位置しており、押釦体5を押し込んだ際に摺接部35よりも先に突出部28に摺接しない。
下壁部33は、係止板部18と陥凹部2Bの下壁面19との間に配設されており、下壁部33の後端部には、下方に向けて突出し、引掛溝部19A内へ各別に突出する一対の引掛突出部33Aが左右方向に間隔をあけて設けられている。引掛突出部33Aは、引掛溝部19Aに係止することによって、押釦体5が前方へ抜けることを防止する。
横壁部34は、押釦体5の操作時に突出部28に接触しないように構成されている。
摺接部35は、前後方向の長さが係止板部18の前後方向の長さよりも短くなっており、押釦体5を後方へ押し込み、係止板部18の前端部が押圧壁部31の後面に当接したときに摺接部35の後端部が陥凹部2Bを画成する奥壁面16に押し付けられないように構成されている。また、摺接部35のうち少なくとも後端部は、被係止部28Aよりも下方に位置し、突出部28の前面に当接している。なお、摺接部35の後端部は、押釦体5の押込前に突出部28の前面に当接していなくてもよい。
【0020】
次に、以上のような構成の蓋体付き容器1の使用方法について説明する。
まず、蓋体4を開く場合には、押釦体5を後方へ押し込むと、摺接部35が突出部28の前面を後方へ押圧する。これにより、摺接部35の後端部は、突出部28を押圧する力の反力によって下方へ弾性変形すると共に、第1前壁部13のうち奥壁面16が形成されている部分は、突出部28を介して伝達される力によって、その下端部を起点として後方へ弾性変形する。ここで、摺接部35が突出部28の前面のうち下端よりも上方に位置する部分に当接し、かつ突出部28の前面が後方から前方に向かうにしたがって上方に向かうように傾斜しているので、第1前壁部13のうち奥壁面16が形成されている部分を後方へ弾性変形させながら、摺接部35が突出部28を後方に押圧する力の一部が突出部28を押し上げる力に変換される。
【0021】
押釦体5をさらに押し込むと、摺接部35の後端部は、突出部28の前面に沿って摺動して突出部28の下方へ潜り込み、突出部28を押し上げる。
突出部28の被係止部28Aは、摺接部35によって押し上げられることにより、奥壁面16に形成された係止部17を上方に乗り越え、係止部17と被係止部28Aとの係止状態を解除する。
これにより、蓋体4をヒンジ部3回りに回動させ、容器本体2の収容凹部2Aを開放する。
【0022】
また、蓋体4を閉じる場合には、まず、蓋体4をヒンジ部3回りで逆方向に回動させる。ここで、蓋体4をヒンジ部3回りに回動させていくと、蓋体4の突出部28は、摺接部35の上面に当接し、蓋体4のヒンジ部3回りのさらなる回動が規制されるので、必要に応じて、押釦体5を前方に移動させておく。この状態で蓋体4を押し下げると、突出部28の被係止部28Aは、容器本体2の奥壁面16に形成された係止部17を下方に乗り越えて、係止部17とアンダーカット嵌合する。これにより、容器本体2の収容凹部2Aを蓋体4で閉じる。
以上のようにして、蓋体付き容器1を開閉する。
【0023】
以上のような構成の蓋体付き容器1によれば、摺接部35が被係止部28Aよりも下方に位置しているので、押釦体5を押し込む力が突出部28を押し上げる力に変換されやすくなり、容器本体2を開放するために必要な押釦体5を押し込む力を低減できる。
【0024】
次に、本発明における蓋体付き容器の第2実施形態について説明する。なお、ここで説明する実施形態は、その基本的構成が上述した第1実施形態と同様であり、上述の第1実施形態に別の要素を付加したものである。したがって、
図4及び
図5では、
図1から
図3と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0025】
本実施形態にかかる蓋体付き容器100の押釦体101では、
図4に示すように、摺接部102が、押圧壁部31から後方へ突出する突出板部103と、突出板部103の左右両端に配設された一対の傾斜板部104と、を有する。
突出板部103は、第1実施形態における摺接部35と同様の構成となっている。
一対の傾斜板部104は、上壁部32と突出板部103とを接続している。傾斜板部104のうち後方を向く後面は、後方から前方に向かうにしたがって漸次上方に向けて延在するように傾斜している。また、傾斜板部104は、被係止部28Aよりも下方に位置して突出部28の前面に面接触する後側部分104Aと、後側部分104Aに前方から連なり突出部28の前面との間に上下方向の隙間が設けられた前側部分104Bと、を有する。すなわち、後側部分104Aの後面における水平面に対する傾斜角は、前側部分104Bの後面における水平面に対する傾斜角よりも大きくなっている。さらに、後側部分104の前後方向の長さは、前側部分104Bの前後方向の長さよりも短い。なお、突出板部103及び傾斜板部104は、当初から突出部28の前面に当接していなくてもよい。
【0026】
以上のような構成の蓋体付き容器100においても、上述した実施形態と同様に、蓋体4を開くために押釦体101を後方へ押し込むと、摺接部102の傾斜板部104の後側部分104Aは、突出部28と面接触し、摺接部102は、突出部28の前面を後方へ押圧する。このとき、第1前壁部13のうち奥壁面16が形成されている部分は、突出部28を介して伝達される力によって、その下端部を起点として後方へ弾性変形するが、摺接部102は、突出板部103の左右両端に一対の傾斜板部104が配設されており、剛性が高められているので、下方に向けて弾性変形しにくくなっている。そして、摺接部102の傾斜板部104の後側部分104Aは、突出部28の下方に潜り込む。
【0027】
この状態で押釦体101をさらに押し込むと、傾斜板部104の後側部分104Aと前側部分104Bとの移行部分が突出部28に当接する。この移行部分が突出部28に対して点状または線状に当接しているので、傾斜板部104が突出部28と面接触している場合と比較して、押釦体101を押し込む力が突出部28の前面のうち点接触または線接触している部分に集中する。そのため、押釦体101を押し込む力は、突出部28を押し上げる力に変換されやすい。これにより、押釦体101は、突出部28を押し上げて係止部17と被係止部28Aとの係止状態を解除する。
【0028】
その後、この状態で押圧壁部31をさらに押し込むと、傾斜板部104の前側部分104Bが突出部28の下方に潜り込んで突出部28を押し上げる。ここで、前側部分104Bの後面における水平面に対する傾斜角が後側部分104Aの後面における水平面に対する傾斜角よりも小さいため、後側部分104Aと比較して、突出部28の下に潜り込ませやすい。
これにより、蓋体4をヒンジ部3回りに回動させ、容器本体2の収容凹部2Aを開放する。
【0029】
続いて、蓋体4を閉じる際には、蓋体4をヒンジ部3回りに回動させると、
図5に示すように、突出部28の前面が傾斜板部104の後面に当接する。この状態で蓋体4を押し下げると、突出部28の前面が傾斜板部104の後面に沿って摺動すると共に、傾斜板部104は、前方に向けて復帰移動する。そのため、蓋体4を閉じる際に、第1実施形態にかかる押釦体5のように押釦体101を前方に向けて移動させておく必要がない。その後、突出部28の被係止部28Aは、係止部17に係止され、容器本体2の収容凹部2Aは、蓋体4によって閉塞される。
【0030】
本実施形態にかかる蓋体付き容器100によっても、上述と同様の作用、効果を奏するが、突出部28を傾斜板部104に沿って摺接させることにより、突出部28に対して押し上げる力をさらに付与させやすくなるので、容器本体2を開放するために必要な押釦体5を押し込む力をさらに低減できる。ここで、押釦体101を押し込む過程で後側部分104Aと前側部分104Bとの移行部分が突出部28に対して点接触または線接触するので、突出部28に対して面接触している場合と比較して、押釦体101を押し込む力が突出部28を押し上げる力に変換されやすくなり、係止部17と被係止部28Aとの係止状態をより容易に解除できる。
また、蓋体4を閉じるときに突出部28が摺接部102に当接しても、突出部28の前面が一対の傾斜板部104に沿って摺接し、押釦体101が前方へ移動するので、例えば押釦体5が押込位置にあっても、蓋体4を閉じる操作が押釦体101によって阻害されず、蓋体付き容器100の操作性をさらに向上させることができる。
さらに、傾斜板部104と突出部28の前面とが面接触しており、押釦体101を押し込んだ力が突出部28に対して局所的にかかることを防止するので、突出部28及び摺接部102にかかる負荷を低減し、容器本体2の開閉動作を安定させる。
【0031】
本願発明者は、摺接部の形状と係止部17及び被係止部28Aの係止状態を解除させるために押釦体にかけた押込力との関係を比較、検証した。以下、本検証で用いた押釦体の形状について説明する。実施例1の押釦体の形状は、実施形態1にかかる押釦体5の形状に対応しており、実施例2の押釦体の形状は、実施形態2にかかる押釦体101において、左右一対の傾斜板部104同士の間が中実となっている形状に対応している。比較例1の押釦体201では、
図6に示すように、摺接部が別途設けられてはおらず、押釦体201の上壁部202が摺接部として機能している。なお、上壁部202の後端部は、被係止部28Aよりも上方に位置している。
また、以下の表1では、比較例1の押釦体201において前述の係止状態を解除させるためにかけた押込力を1(100%)としている。
【0033】
表1に示すように、実施例1、2では、前述の係止状態を解除させるための押込力が比較例1にかかる押釦体201よりも小さくなった。特に、実施例2では、摺接部102に突出部28と面接触する一対の傾斜板部104を設けることによって、押込力が著しく低減されている。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、第1実施形態において、摺接部は、押圧壁部から後方に向けて延在しているが押圧壁部から延設されている必要はなく、例えば上壁部と摺接部とを接続する接続壁部を設けることによって摺接部を押釦体に一体的に形成してもよい。同様に、第2実施形態において、摺接部は、突出板部の左右両端に設けられた一対の傾斜板部を有しているが、上壁部から延在すると共に前方から後方に向かうにしたがって漸次下方に向けて傾斜する板部材によって摺接部を構成するなど、他の構成を有してもよい。
第2実施形態において、傾斜板部は、突出部と面接触するように構成されているが、突出部と点接触や線接触するように構成されてもよい。また、傾斜板部の前側部分は、係止部と被係止部との係止状態を解除した後で、突出部に摺接しているが、係止部と被係止部との係止状態を解除する前に、突出部に摺接してもよい。さらに、傾斜板部は、上縁の傾斜角が異なる後側部分と前側部分とを有しているが、上縁の傾斜角を一定としてもよく、後側部分の上端縁と前側部分の上端縁とを滑らかに接続する上端縁を有する移行部分を後側部分と前側部分との間に設けてもよい。
押釦体の形状は、箱状に限らず、例えば左右一対の横壁部が設けられていない形状など、他の形状であってもよい。
容器本体や蓋体の形状は、上面視で矩形状に限らず、円状など他の形状であってもよく、また、扁平形状に限られない。
容器本体は、1つの内容物を収容する構成となっているが、複数の内容物を収容するように構成されてもよい。ここで、容器本体には、例えばパフやブラシなどの塗布具を収容してもよい。
蓋体付き容器は、コンパクト容器に限らず、蓋体が設けられている他の容器であってもよい。
内容物は、ファンデーションやアイシャドウ、アイライナなどの化粧料に限られない。