(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リッジ部は、径方向の断面視で上方に向かうにつれて横幅が次第に大きくなる形状を呈してなり、前記リッジ部が潰れれば潰れるほど前記懸架スプリングへ付与される反力の大きさが漸増するようにされていること
を特徴とする、請求項1または請求項2に記載の下側ばね受け部材。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係わる下側ばね受け部材について、適宜図面を参照しながら、自動車のサスペンション装置に装着する場合を例に挙げて説明する。但し、これはあくまで実施形態の一例を示したものにすぎない。つまり、本発明の実施形態は、サスペンション装置を備えるあらゆる二輪車、航空機、圧雪車などの産業機械、農業機械、MTB(マウンテンバイク)などに適用することができる。また、免震装置などに適用してもよい。
また、説明の便宜上、各図面で共通する部材には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。また、図を簡略化して分かりやすく描くために、おのおので要素部品の記載を一部省略している場合がある。前後上下左右の方向軸については、各図の記載によるものとする。
また、以下の説明において、下側ばね受け部材のスプリング荷重がオフ(またはスプリング荷重の入力前)とは、下側ばね受け部材に懸架スプリング18(詳細は後記
図1を参照)が装着されていないか、または懸架スプリング18を装着して車重に相当する荷重のみが入力されている状態を指す。また、下側ばね受け部材のスプリング荷重がオン(またはスプリング荷重の入力後)とは、下側ばね受け部材に懸架スプリング18を装着して少なくとも車重より大きな荷重が掛かって懸架スプリング18が縮んでいる状態を指すものとする。
【0027】
(実施形態の説明)
図1は、本発明の実施形態に係わる下側ばね受け部材を含んでなるサスペンション装置の断面図であり、概略構成を説明する図である。
図1に示すようにサスペンション装置10は、ショックアブソーバ16と、ショックアブソーバ16の軸方向に沿うようにして懸架される懸架スプリング18とを備えている。またサスペンション装置10は、懸架スプリング18の上端部および下端部において、スプリング荷重F(後記
図2(a)、
図4(b)などを参照)を受ける上側ばね受け部材34、下側ばね受け部材36をそれぞれ備えている。なお、
図1に示す下側ばね受け部材36の断面形状は、後記
図2(a)におけるA−A矢視断面図に対応している。
【0028】
ショックアブソーバ16は車両が路面から衝撃力を受ける際、懸架スプリング18が弾性力によって該衝撃力を吸収するのに併せて伸縮動作を行い振動を減衰させる装置である。例えば、ショックアブソーバ16には図示しないピストンやピストンバルブ機構などが備えられている。これらによって、伸縮動作に応じた減衰力を発生させる。この減衰力によって、伸縮振動の振幅が抑制される。
【0029】
またショックアブソーバ16は、アウターチューブ20とピストンロッド22とを備えている。アウターチューブ20は円筒体で下方側に備わる。ピストンロッド22は、一端側がアウタチューブ20の内部に収容されるとともに、他端側がアウタチューブ20の外部上方に延出している。
【0030】
また、ショックアブソーバ16のアウタチューブ20の外周面に環状段部26が形成されている。そして、この環状段部26に係止されるようにして下側スプリングシート28が備えられている。また、これと対をなすようにして、ピストンロッド22に上側スプリングシート32が備えられている。これら下側スプリングシート28と上側スプリングシート32との間には、懸架スプリング18が懸架されている。そして、下側スプリングシート28と懸架スプリング18の下端部との間には、下側ばね受け部材36が介装される。また、上側スプリングシート32と懸架スプリング18の上端部との間には、上側ばね受け部材34が介装される。
【0031】
例えば、
図1に示すように、懸架スプリング18の下端部は、下側ばね受け部材36を介して下側スプリングシート28の支持面44aに支持されている。また、懸架スプリング18の上端部は、上側ばね受け部材34を介して上側スプリングシート32の支持面44bに支持されている。ここで、下側ばね受け部材36、および上側ばね受け部材34は、懸架スプリング18のスプリング荷重Fを受けるマウント部材として機能する部材である。なお、以下では特に断りなく支持面44と言った場合は、支持面44aを指すものとする。また、下側ばね受け部材36の詳細に関しては、
図2以降で詳細を後記する。
【0032】
なお、下側ばね受け部材36は、懸架スプリング18が生ずる弾性力を受けて、支持面44と懸架スプリング18との間に支持される。
【0033】
図2は、本発明の実施形態に係わる下側ばね受け部材を上面側から見た場合の図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)をB−B線に沿って切断した場合の断面図である。
図2(a)に示すように、下側ばね受け部材36は、円環状の一部を呈する形状(部分円環形状)を有している。そして、懸架スプリング18と当接するガイド面である湾曲面60を有している。湾曲面60は、上面視で懸架スプリング18のスプリング径と略同一の径を有し、円環状に窪むようにして形成された滑らかな面である。下側ばね受け部材36は、一端側に基端部STが形成され、他端側にスロープ部SLが形成されている。また、基端部STとスロープ部SLの間にスプリング保持部HLを有している。基端部STは、懸架スプリング18の終端部が挿入・押圧介装される。ここで、下側ばね受け部材36の基端部STは、上方が切り欠かれて開口(以下、「切り欠き開口」という)した壁状に形成され、懸架スプリング18の終端部を両側から保持する。また、前記した基端部STの切り欠き開口は、端部が両側に向かって広がった形状を呈している。これによって、該切り欠き開口に下側ばね受け部材36の上方から懸架スプリング18の終端部を下側ばね受け部材36の基端部STに挿入しやすくなっている。また懸架スプリング18を、終端部が突き当たった点を中心に下側ばね受け部材36の面方向(湾曲面60の方向)へ回動させながら、略円環状に湾曲したガイド面となる湾曲面60へ押圧介装しやすくなっている。この際、切り欠き開口は徐々に狭くなるようにされているので、懸架スプリング18の介装後の下側ばね受け部材36は、懸架スプリング18の保持性に関し、高い保持性能を有している。なお、下側ばね受け部材36のスロープ部SLおよびスプリング保持部HLの詳細については後記する。
【0034】
また下側ばね受け部材36の一端側から他端側までの長さは特に限定されないが、例えば懸架スプリング18の略0.6巻〜0.7巻分に相当する長さとなるようにして形成されている。しかし本実施形態にあたっては、懸架スプリング18はスパイラル状に所定の勾配で立ち上がる立ち上がり部T(詳細後記)を有している。つまり懸架スプリング18において立ち上がり部T以降の部分は、下側スプリングシート28の支持面44からの高さは相当量離間した状態となっている。ゆえに本実施形態の下側ばね受け部材36は、一端側から他端側までの長さを懸架スプリング18の1巻分に相当する長さよりも短くすることができる。これによって材料費などの製造コストを低減したり製造工数低減や製造所要時間の短縮などで生産性を向上させたりすることができる。
【0035】
次に、引き続き
図2(a)を参照しながら、スプリング保持部HLの機能について説明する。
スプリング保持部HLは平坦面である底面部46と、懸架スプリング18の外周側に設けられ底面部46の周縁部から懸架スプリング18に向けて延出する第1延出部64aおよび第2延出部64bとを有している。
また、第2延出部64bが設けられる箇所の下方において、下側スプリングシート28の支持面44(
図1参照)に向けて底面部46から所定長Δh(
図3(a)も併せて参照)だけ突出した第1の凸部54を有している。
また、懸架スプリング18と当接する内周面は、懸架スプリング18が介装可能に形成された湾曲面60を有している。
【0036】
なお、第1延出部64aおよび第2延出部64bは対をなし互いに対向するように配置され、懸架スプリング18がスプリング保持部HLから脱落しないように(湾曲面60から離反しないように)されている。
【0037】
下側ばね受け部材36が車両に装着されて、例えば路面凹凸による振動で懸架スプリング18が伸縮すると、懸架スプリング18には伸縮作用に伴う弾性力(ばね力)が発生する。つまり、底面部46を下側スプリングシート28の支持面44(
図1参照)に向かって押圧させるスプリング荷重F(破線矢印)が発生する。
【0038】
この結果、第1の凸部54の上部側に形成された第2延出部64bが第1延出部64aの側に変位して、スプリング保持部HLの内周面の開口部50の幅(離間間隔)が狭まる(実線矢印参照)。つまり、スプリング保持部HLにスプリング荷重Fが掛かると開口部50が閉じる方向に向けて第1延出部64aおよび第2延出部64bが弾性変形する。これによって、懸架スプリング18の保持力が高められている。
【0039】
次に、
図2(b)は、
図2(a)をB−B線に沿って切断した場合の断面図である。ここで、B−Bは、下側ばね受け部材36に懸架スプリング18を装着した際に、懸架スプリング18の円環外周に当接してガイドするように湾曲して形成された湾曲面60の最底部をトレースした線である。なお、参考までに懸架スプリング18の断面図を併記してある。
図2(b)に示すように、実施形態に係わる懸架スプリング18は、下側スプリングシート28の支持面44と平行を保つように配設されて弾性変形しない座巻き部Zを有している。また、懸架スプリング18は、座巻き部Zから所定勾配で立ち上がる立ち上がり部Tを有している。ここで、懸架スプリング18の座巻き部Zの長さは特に限定されないが、本実施形態では、例えば略0.5巻(半周)分に相当する長さとなるようにして形成されている。
【0040】
また、このような形状の懸架スプリング18と下側スプリングシート28(
図1参照)の支持面44との間に、下側ばね受け部材36が介装される。
図2(b)に示すように、下側ばね受け部材36は、懸架スプリング18の座巻き部Zから立ち上がり部Tに至る形状に応じた形状を有してなる。つまり、下側ばね受け部材36は、懸架スプリング18の座巻き部Zに対応する部分(基端部STを含む)は断面視略均一な厚みh1となる平坦部FLとなっている。また、立ち上がり部Tに対応する部分は、厚みh1から厚みh2(但し、h1<h2とする)に漸増し底面部46(詳細後記)に対して傾斜した断面視略スロープ形状のスロープ部SLとなっている。このようにして、下側ばね受け部材36は平坦部FLとスロープ部SLとを有し、スロープ部SLはその断面視肉厚が変化するようにされている。
【0041】
なお、本発明の実施形態では、下側ばね受け部材36として例えば硬質ゴムなどの弾性部材によって成形されたラバーパッドを用いているが、特にこれには限定されない。
【0042】
次に、
図3(a)〜
図3(e)を参照しながら、本発明の実施形態に係わる下側ばね受け部材を底面側から見た場合の構成を説明する。ここで、
図3(a)は斜視図、(b)は(a)のスロープ部の拡大図、(c)は(b)の変形例、(d)は(b)のその他の変形例、(e)は例えば(b)のC−C矢視断面図である。
【0043】
図3(a)に示すように、本発明の実施形態に係わる下側ばね受け部材36には、下側スプリングシート28(
図1参照)の支持面44と平行に接するようにされた略平坦面の底面部46が形成されている。この底面部46によって、懸架スプリング18から下側ばね受け部材36がスプリング荷重Fを受けた際、前記の支持面44に対して浮きがないようにして安定的に懸架スプリング18を支持できるようにされている。
【0044】
さらに、底面部46の径方向の幅は、スロープ部SLの幅W2、および基端部STの幅W3に対して、基端部ST以外の平坦部FLの幅W1の方がわずかに狭くなるようにして形成されている(つまり、W1<W2,W3)。これは、スロープ部SLおよび基端部STの方が、その他の部分よりも、懸架スプリング18から受けるスプリング荷重Fの大きさが大きくなっていることに対応するためである。つまり、大きな荷重を受けるのに応じて底面部46の径方向の幅を幅広として、より均一に荷重を受けられるようにしたものである。また、底面部46の大きな荷重がかかる部分の径方向の幅を幅広として面積を拡大することで、懸架スプリング18の変形量が仮に大きくなった場合にも、安定して大きな荷重を受けることができる。
なお、幅W2と幅W3との大小関係は特に限定されず、略等しくなるように形成しても構わない(W2≒W3)。しかし、懸架スプリング18からのスプリング荷重Fは基端部STの方がスロープ部SLよりもわずかに大きな荷重がかかる。ゆえに、幅W3を幅W2よりもわずかに幅広に形成(W2≦W3)するとより好適である。
【0045】
次に、
図3(b)に
図3(a)のスロープ部の底面拡大図を示す。実施形態に係わる下側ばね受け部材36のスロープ部SLの底面部46には、スロープ部SLの末端に形成された壁部Kと、壁部Kの内側に形成された肉抜き部Nk(太実線部分)とが形成されている(適宜、後記
図3(e)も相互参照のこと)。なお、壁部Kは径方向に広がった形状を呈している。また、肉抜き部Nkの形状については後記する。
ここで、壁部Kおよび肉抜き部Nkは、例えば懸架スプリング18の下方への変形量が大きくなった場合にも、下側ばね受け部材36の変形追従性を向上する目的で設けられた部位である。つまり、懸架スプリング18が大きな伸び変形と縮み変形とを短時間で交互に繰り返したとする。そのような場合でも、肉抜き部Nkによって速やかに下側ばね受け部材36が潰れて沈み込む沈み込み変形が実現される。また、壁部Kによって速やかに下側ばね受け部材36が沈み込み前の状態に戻る戻り変形が実現される。このように下側ばね受け部材36のスロープ部SLの底面側に壁部Kおよび肉抜き部Nkを設けることによって、下側ばね受け部材36を懸架スプリング18の大きな変形運動に間断なく追従させることができる作用・効果がある。これによって、下側ばね受け部材36と懸架スプリング18との間に隙間を生じさせる余地を与えない。隙間が生じなければ懸架スプリング18と下側ばね受け部材36との間に砂や砂利などの異物を噛み込むことがないので、懸架スプリング18の塗膜の磨滅による腐食や折損が生じる可能性を減らすことができる効果がある。
【0046】
なお、壁部Kには肉抜き部Nkに連通する連通孔は穿孔されていないことが望ましい。なぜならば、連通孔が穿孔されなければ壁部Kの強度が増すので懸架スプリング18の縮み変形に対する下側ばね受け部材36の戻り変形の追従性を向上させることができるからである。但し、特にこれには限定されない。
【0047】
また肉抜き部Nkは
図3(b)の太実線で示すように、例えば下側ばね受け部材36の周方向に沿って設けられ、下側ばね受け部材36の端部に向かって広がる略くさび形の形状を呈している。つまり、肉抜き部Nkは略くさび形形状であって頂部を通る中心線が底面部46の中心線の曲率と等しくなるように曲がった形状を呈している。肉抜き部Nkの具体的な肉抜き形状に関しては、例えば断面視で山部となるリッジ部Rdと谷部となるトラフ部Trが部分的に形成されるような形状としてもよい(詳細は後記
図3(e)参照)。但し、これには限定されない。
【0048】
さらに、
図3(c)に
図3(b)の肉抜き部の変形例を、
図3(d)に
図3(b)の肉抜き部のその他の変形例を示す。
図3(c)の肉抜き部Nk1は、
図3(b)の肉抜き部Nkのうち壁部K側の形状を対向する頂部側と同様にくさび形として、全体として略ひし形形状を呈している。それ以外の点については、
図3(b)の肉抜き部Nkと同様である。このような肉抜き部Nk1としてもよい。また、これとは逆に
図3(d)の肉抜き部Nk2は、
図3(b)の肉抜き部Nkのうち頂部側の形状を壁部K側と同様に略矩形状として、全体として略四角形状を呈するようにされている。それ以外の点については、
図3(b)の肉抜き部Nkと同様である。このような肉抜き部Nk2とすることもできる。
このように、肉抜き部Nkは、例えばその形状が略くさび形形状、略ひし形形状、または略四角形状を呈するように設けることができる。このようにすると、壁部Kの強度が所望の強度となり、懸架スプリング18の縮み変形に追従して下側ばね受け部材36の良好な戻り変形が実現される。また、肉抜き部Nkの形状に応じた肉抜き量で肉抜きされるので、懸架スプリング18の伸び変形に追従して下側ばね受け部材36の良好な沈み込み変形が実現される。
【0049】
なお、
図7(b)に、
図3(b)、
図3(c)、
図3(d)それぞれの場合の荷重−撓み特性図を示す。この図に示されるように、肉抜き量が例えば
図3(d)>
図3(b)>
図3(c)の順で小さくなるのに伴って、同じ撓み量で見た場合、付与される反力の大きさは徐々に大きくなる傾向があることが分かる。また、肉抜き量が小さくなるのに伴って、最大の撓み量となるときの反力の大きさは、徐々に大きくなることが分かる。つまり、肉抜き部の形状を、所望の荷重−撓み特性が得られるような形状を適宜選択することによって、懸架スプリング18への下側ばね受け部材36の追従性をより一層、向上させることができる作用・効果がある。また、乗員が感じるドライブフィールを向上させ、底付き感などを低減することができる効果を奏する。
【0050】
次に、
図3(e)を参照しながら、肉抜き部Nkの具体的な肉抜き形状について説明する。ここで
図3(e)は、例えば
図3(b)のC−C矢視断面図、
図3(c)のD−D矢視断面図、
図3(d)のE−E矢視断面図である。
肉抜き部Nkは例えば断面視で山部となるリッジ部Rdの両側に谷部となるトラフ部Trが形成されるような形状とすることができる。
ここでリッジ部Rdは、下側スプリングシート28の支持面44(
図1参照)に当接するようにされているが、特にこれには限定されない。但し、このようにリッジ部Rdが支持面44と当接した形状とすれば、スプリング荷重Fを下側ばね受け部材36の左右の側壁S1,S2とリッジ部Rdとの3点支持で受けることになる(詳細は
図4(b)で後記)。この場合、(リッジ部Rdによる支持のない)2点支持の場合よりも以下の点で好適である。具体的には、下側ばね受け部材36の沈み込み変形で潰れる際に3点支持の方が懸架スプリング18に与える反力が漸増(つまり、
図7(a)の比較例のように撓み量T2で急激に増加するのではなく、
図7(a)の一点鎖線で示すように全体的に滑らかに緩やかに増加)するので、乗員に底付き感を感じさせない効果がある。つまり、ドライブフィールを向上させることができる。また、下側ばね受け部材36がスプリング荷重Fによって斜めに潰れてしまうことが抑制される効果がある。また、肉抜き量が比較例よりも小さくなるので、最大の撓み量となるときの反力の大きさを、比較例よりも大きくすることができるという効果がある。
なお、トラフ部Trの肉抜き形成にあたっては、角部が丸みを帯びるようにして角落とし処理が施されることが望ましい。このように角落とし処理を行うことによって、トラフ部Trからクラックが入ることを防ぎ、下側ばね受け部材36が裂けてしまうことを回避することができる。
【0051】
次に、
図4(a),
図4(b)を参照しながら、下側ばね受け部材36のスロープ部SLの機能を説明する。
図4は
図3(e)に懸架スプリングを組み付けた場合の断面図であり、(a)はスプリング荷重入力前の状態、(b)はスプリング荷重入力後の状態を示している。
図4(a)は、車両に搭載する前の状態を表している。このとき、下側ばね受け部材36は、下側スプリングシート28の支持面44と側壁S1,S2、および山部となるリッジ部Rdの3箇所において当接している。なお、実施形態に係わるリッジ部Rdは、前記したとおり径方向の断面視で略山型の形状を呈するようにされている。つまり、リッジ部Rdは、下側スプリングシート28の支持面44と平行な平面で切断した際の横断面幅が、上方に向かうに従って次第に大きくなる形状を呈してなる。
【0052】
この状態でスプリング荷重Fが例えば鉛直下方に入力されると、
図4(b)に示すように、下側ばね受け部材36は下方に押圧されて左右の側壁S1,S2、およびリッジ部Rdが撓む。このとき、リッジ部Rdは支持面44と断面視所定幅で面接触するようになる(
図4(a)の状態だと断面視線接触)。前記したとおり、このときリッジ部Rdの横断面幅(横幅)は上方に向かうに従って次第に大きくなっている。ゆえに、下側ばね受け部材36の撓み量を仮に無視して考えた場合であっても、懸架スプリング18の伸び変形量が大きくなればなるほど、支持面44と断面視面接触する所定幅は大きくなっている。これにより実施形態の下側ばね受け部材36は入力されるスプリング荷重Fの大きさに応じた面積で支持面44と面接触し、懸架スプリング18への反力が漸増して潰れにくくなっている。
以上により、懸架スプリング18の変形が伸び変形から縮み変形に短時間で急激にシフトしたとしても、下側ばね受け部材36は懸架スプリング18の縮み変形に追従して懸架スプリング18との間に隙間を生じさせることなくしなやかに戻ることができるという作用・効果がある。従って、懸架スプリング18と下側ばね受け部材36との間に砂や砂利などが挟み込まれることを防止できる効果を奏する。そして、塗膜を磨滅させることによる腐食や折損などの発生を防ぐことができる効果を奏する。
【0053】
また、懸架スプリング18に対する下側ばね受け部材36の変形追従性が向上するので、乗員が感ずる車両の底付き感を低減することができ、ドライブフィールを向上させることができるという作用・効果がある。
詳しく説明すると、例えばリッジ部Rdがない場合には、下側ばね受け部材36が潰れたときは、肉抜き部Nkの上面が支持面44に当たったときに懸架スプリング18への反力が急増するので、底付き感を余儀なくされていた。
しかし、実施形態に係わる下側ばね受け部材36には肉抜き部Nkにリッジ部Rdが設けられている。リッジ部Rdが設けられていると、下側ばね受け部材36が潰れるときにリッジ部Rdも潰れるが、リッジ部Rdの潰れが裾の辺りまで近づけば近づくほど、つまりリッジ部Rdが潰れれば潰れるほど、懸架スプリング18へ付与される反力が大きくなっていく。つまり、実施形態に係わる下側ばね受け部材36が潰れる際にはリッジ部Rdによって懸架スプリング18への反力が漸増するので、従来よりも乗員が底付き感を感じにくくすることができる作用・効果がある。
【0054】
図5は、本発明の実施形態の変形例に係わる下側ばね受け部材の断面形状を示す図であり、それぞれ
図3(e)に相当する部分の断面図である。なお、下側スプリングシート28の支持面44(
図1参照)の図示は省略している。
図5(a)〜
図5(g)に示すように、実施形態に係わる下側ばね受け部材36のスロープ部SLの断面形状には、さまざまな変形例が考えられる。以下、他の下側ばね受け部材と相違する点を中心に説明する。
【0055】
図5(a)に示す下側ばね受け部材36Aは、
図3(e)に示す下側ばね受け部材36と比較して、リッジ部Rdがリッジ部Rd1となって高さが低くなり、スプリング荷重Fがオフの状態で支持面44と当接していない。この場合には、
図7(a)の細実線に示すように、スプリング荷重Fが入力されると、リッジ部Rd1が支持面44に当接するまで沈み込み(撓み量T1)、支持面44に当接後から小刻みに徐々に大きな弾性率となるような荷重―撓み特性を示す。つまり、
図7(a)によれば、
図5(a)の下側ばね受け部材36Aは、
図3(e)の実施形態の下側ばね受け部材36よりもしなやかに沈み込む。しかし、比較例で見られるような反力の急増点(撓み量T2)が存在せず、
図3(e)の実施形態の下側ばね受け部材36と同様に、底付き感のないドライブフィールを提供することができる。また、肉抜き量が比較例よりも小さくなるので、最大の撓み量となるときの反力の大きさを、比較例よりも大きくすることができる。このような下側ばね受け部材36Aとしてもよい。なお、
図7(a)では作図上、撓み量T1までは比較例と、実施形態に係わる本変形例はわずかにずれて描いてあるが、実際は略一致した特性を示す。
【0056】
次に、
図5(b)に示す下側ばね受け部材36Bは、下側ばね受け部材36Aと比較して、リッジ部Rd1がリッジ部Rd2,Rd3となって1つから2つ(複数)に数が増えている。この場合には、スプリング荷重Fが入力され、リッジ部Rd2,Rd3が支持面44に当接するまで沈み込むと、左右の側壁S1,S2、およびリッジ部Rd2,Rd3の4点支持で懸架スプリング18を支持することになる。つまり、下側ばね受け部材36Bは下側ばね受け部材36Aよりも、沈み込んだ際の底付き感を一層感じさせないドライブフィールを乗員に提供することができる。このような下側ばね受け部材36Bとしてもよい。なお、リッジ部Rd2,Rd3の高さは略等しくなるように描かれているが、特にこれには限定されない。また、リッジ部Rd2,Rd3の数は2つに限定されず、複数(3つ以上)備えるものであってもよい。
【0057】
次に、
図5(c)に示す下側ばね受け部材36Cのリッジ部Rd4は、下側ばね受け部材36のリッジ部Rdと比較して、先端が鋭利な角に形成されて角落としがされていない。このような構成の下側ばね受け部材36Cとしても、下側ばね受け部材36とほぼ同様のドライブフィールを乗員に提供することができる。このような下側ばね受け部材36Cとしてもよい。
【0058】
次に、
図5(d)に示す下側ばね受け部材36Dは、下側ばね受け部材36Aと比較して、リッジ部Rd1がリッジ部Rd5となり、断面視で略山型だった先端が角落としされていない鋭利な角で形成されている。また、左右の側壁S1,S2を構成する側面のうちリッジ部Rd5と対向する側の側面は、支持面44と略面直となるようにされている点が異なっている。このような構成の下側ばね受け部材36Dとしても、下側ばね受け部材36Aとほぼ同様のドライブフィールを乗員に提供することができる。このような下側ばね受け部材36Dとしてもよい。
【0059】
次に、
図5(e)に示す下側ばね受け部材36Eは、下側ばね受け部材36Dと比較して、スプリング荷重Fがオフの状態で支持面44と線接触するようにされたリッジ部Rd5が、支持面44と面接触するようなリッジ部Rd6となっている点が異なっている。なお、リッジ部Rd6を下側スプリングシート28の支持面44と平行な平面で切断した際の横断面幅は、切断する高さに依存しないで一定の所定幅となっている。このような構成の下側ばね受け部材36Eにスプリング荷重Fが入力されると、リッジ部Rd6が支持面44に当接するまで沈み込み、支持面44に当接後から所定値で一定の弾性率となるような荷重―撓み特性を示すようになる。つまり、下側ばね受け部材36Eは、スプリング荷重Fを左右の側壁S1,S2、リッジ部Rd6の3箇所で受ける3点支持状態となった後は、下側ばね受け部材36Dよりも底付き感が一層低減されたドライブフィールを乗員に提供することができる。このような下側ばね受け部材36Eとしてもよい。
【0060】
次に、
図5(f)に示す下側ばね受け部材36Fは、下側ばね受け部材36Eと比較して、リッジ部Rd6がリッジ部Rd7となっている点が異なっている。なお、リッジ部Rd7を下側スプリングシート28の支持面44と平行な平面で切断した際の横断面幅は、上方に向かうに従い所定割合で徐々に大きくなるようにされている。つまり、リッジ部Rd7は断面視テーパ形状を有している。なお、下側ばね受け部材36Fのリッジ部Rd7は下側ばね受け部材36Dと下側ばね受け部材36Eのリッジ部Rd5とRd6両方の特徴を併せ持つようにされたものである。このような下側ばね受け部材36Fとしてもよい。
【0061】
次に、
図5(g)に示す下側ばね受け部材36Gは、下側ばね受け部材36Cと比較して、左右の側壁S1,S2を形成する肉抜き部Nkの肉抜き形状が異なっている。具体的には、左右の側壁S1,S2を形成する側面うち、リッジ部Rd8と対向する側の側面はそれぞれ、該リッジ部Rd8の側面と平行となるようにして肉抜きがなされている。このようにすることで、下側ばね受け部材36Gに斜めに潰れるモードが生じたとしても、リッジ部Rd8の先端が左右の側壁S1,S2と早期に当接し、それ以上の左右方向への変形が規制されることとなる。なお、リッジ部Rd4とリッジ部Rd8とは略同じ断面形状を呈するようにされている。このような構成の下側ばね受け部材36Gとすると、下側ばね受け部材36Cよりも斜め方向に潰れにくくすることができるので、より良好なドライブフィールを乗員に提供することができる。このような下側ばね受け部材36Gとしてもよい。
【0062】
(作用・効果)
実施形態に係わる下側ばね受け部材の作用・効果をまとめると、以下のようになる。
本発明の実施形態に係わる下側ばね受け部材36は、
図2(a),
図2(b)に示すように、平坦部FLとスロープ部SLとを含んでなる。平坦部FLには基端部ST、スプリング保持部HLが備わる。下側ばね受け部材36の基端部STは、マウント部材の上方が切り欠かれて開口した壁状に形成され、懸架スプリング18の終端部を両側から保持する。また、この開口は端部が両側に向かって広がった形状を呈している。これによって、懸架スプリング18の端部が挿入・押圧介装が行われやすくなっている。
また、
図2(a)に示すように、スプリング保持部HLは、スプリング荷重Fを受けると第1延出部64a、第2延出部64bの離間距離が狭まるようにされている。つまり、スプリング荷重Fが大きくなればなるほど第1延出部64a、第2延出部64bの離間距離が狭まるようにされている。これにより、懸架スプリング18の強固な保持性が実現される作用・効果がある。
また、
図2(b)に示すように、下側ばね受け部材36は断面視スロープ形状のスロープ部SLを有し、その断面視肉厚が変化するようにされている。つまり、懸架スプリング18の形状に合せて下側ばね受け部材36の厚み(肉厚)を変化させることで、下側ばね受け部材36の懸架スプリング18に対する変形追従性が向上されている。これによって、懸架スプリング18と下側ばね受け部材36の間に隙間が生じ砂や砂利を噛んで塗膜を磨滅させることによる、腐食や折損などを生じないようにすることができる効果を奏する。
【0063】
また、
図3(a)に示すように、本発明の実施形態に係わる下側ばね受け部材36の底面部46の略平坦面の径方向の幅は、スロープ部SLの幅W2、および基端部STの幅W3に対して、その他の部分の幅W1がわずかに狭く形成されている(つまり、W1<W2,W3)。これにより、懸架スプリング18から入力される荷重の大きさが場所によって異なっていたとしても、より均一に荷重を受けることができる作用・効果がある。
【0064】
また
図3(b)〜
図3(e)に示すように、実施形態に係わる下側ばね受け部材36のスロープ部SLの底面部46には、スロープ部SLの末端に形成された壁部Kと、壁部Kの内側に形成された肉抜き部Nk(太実線部分)とが形成されている。これによって、下側ばね受け部材36と懸架スプリング18との間に隙間を生じさせる余地を与えないようにすることができる作用・効果がある。隙間が生じなければ、砂利などを噛み込んで腐食や折損が生じる可能性を減らすことができる作用・効果がある。なお、肉抜き部Nkは、例えば断面視で山部となるリッジ部Rdの両側に谷部となるトラフ部Trが形成されるような形状とすることができる。肉抜き部Nkは、下側ばね受け部材36が設置される設置面と当接するリッジ部Rdまたは設置面と当接しないリッジ部Rdを少なくとも一つ備えるようにすればよい。このようにすれば、大きなスプリング荷重Fを下側ばね受け部材36の左右の側壁S1,S2とリッジ部Rdとの少なくとも3点支持によって受けることができる。これによって、2点支持の場合よりも安定して支持できる。つまり、本発明の実施形態、およびその変形例に係わる下側ばね受け部材は、
図7(a)に示されるように、比較例よりも懸架スプリング18への反力を漸増させて、乗員のドライブフィールを向上させることができるという効果がある。
【0065】
上記した実施形態または変形例は本発明を分かりやすくするために詳細に説明したものであり、必ずしも、説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0066】
また、ある実施形態または変形例の構成の一部を他の実施形態または変形例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態または変形例の構成に、他の実施形態または変形例の構成の一部もしくは全てを加えることも可能である。また、実施形態または変形例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0067】
具体的には、上記実施形態に係わる下側ばね受け部材36は、肉抜き部Nkが
図3(b),
図3(c),
図3(d)で示される肉抜き部Nk,Nk1,Nk2として説明したが、これには限定されない。
例えば、
図6(a)で示されるように、
図3(b)とはくさび形の形状が反転した肉抜き部Nk3であってもよい。具体的には、この場合はくさび形の頂部の位置が
図3(b)とは反転して下側ばね受け部材36の端部側にくるようにして形成すればよい。
また、同様にして
図6(b)に示すように、
図3(c)の肉抜き部Nk1の形状を反転させた肉抜き部Nk4であってもよい。具体的には、この場合は
図6(a)の肉抜き部Nk3のうち壁部Kとは対向する側の形状を、壁部Kの方の頂部側と同様にくさび形として、全体として略ひし形形状を呈するようにすればよい。それ以外の点については、
図6(a)の肉抜き部Nk3と同様である。このような肉抜き部Nk4としても、実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
また、
図3(b)の壁部Kは下側ばね受け部材36のスロープ部SLの末端に1箇所形成されているものとして説明したが、特にこれには限定されない。例えば、
図6(c)に示す肉抜き部Nk5のように、スロープ部SLの末端に形成された壁部Kに加え、肉抜き部Nkの内部にも肉抜き部Nkの短手方向に広がるようにして壁部Kαが備えられていてもよい。換言すると、肉抜き部Nkは径方向に広がる形状の壁部K,Kαを備えていてもよい。さらには、壁部Kαは複数箇所に設けられていてもよい。なお、
図6(c)に示す肉抜き部Nk5は、
図3(b)に示す肉抜き部Nkの内部に短手方向に広がる壁部Kαを設けたものである。
つまり、この壁部Kαの構成(有り、または無しの2通り)と併せれば、例えば、肉抜き部Nkの形状を
図3(b)〜
図3(d)および
図6(a)〜
図6(b)の5通り(Nk〜Nk4)、スロープ部SLの壁部K,Kαを除く径方向の断面形状を
図3(e)、
図5(a)〜
図5(g)の8通り(36〜36G)のいずれか一つで示される全80通り(2*5*8=80)の組み合わせによって、少なくとも形成することができる。なお、
図3(b)の壁部Kはスロープ部SLの末端の位置であるとともに、肉抜き部Nkの端部の位置に備えられているとみなすこともできる。
また、
図6(c)のさらなる変形例として、
図6(d)の肉抜き部Nk6に示すように、スロープ部SLの末端に形成された壁部Kを取り払い、肉抜き部Nkの内部に設けられた壁部Kαのみを備えるようにしてもよい。なお、
図6(d)の肉抜き部Nk6は、
図3(d)に示す肉抜き部Nk2において、その内部に短手方向に広がる壁部Kαを備えるとともに、スロープ部SLの末端の壁部Kを取り払ったものである。なお、肉抜き部Nk2以外で壁部Kαを備える肉抜き部において、それぞれ壁部Kを取り払う構成を考えることができる。つまり、肉抜き部Nk〜Nk4の5通り、断面形状36〜36Gの8通りの全40通り(5*8=40)において、壁部Kαを備えるとともに、壁部Kを取り払った構成を考えることができる。
また、
図6(e)に示す肉抜き部Nk7のように、壁部Kαを挟むようにして、
図6(a)の肉抜き部Nk3と、これと異なる例えば
図3(b)に示す肉抜き部Nkとが備えられていてもよい。
以上のようにすると、肉抜き部Nkに壁部K、または壁部Kαが適宜備えられることによって、懸架スプリング18に与える反力に関し、大きさをより大きくしたり、反力のかかる位置を変更するなどの調節を行うことができる。つまり、懸架スプリング18の縮み変形に追従して、下側ばね受け部材36の一層良好な戻り変形を実現するように調節ができるので、好適である。
【0069】
さらには、
図6(c)のさらなる変形例として、
図6(f)の肉抜き部Nk8に示すように、壁部Kαの周方向両側に形成された肉抜き部Nk8において、径方向の断面形状が互いに異なる組み合わせとなるようにして形成してもよい。具体的には、例えば
図6(c)に示す肉抜き部Nk5と
図6(f)に示す肉抜き部Nk8とは、外形形状は略くさび形の内部に壁部Kαを備える点で共通している。しかし、肉抜き部Nk5は径方向の断面形状が壁部Kαの周方向両側とも共通であって、例えば
図3(e)に示す実施形態のリッジ部Rdが備えられている。これに対して肉抜き部Nk8は、径方向の断面形状が壁部Kαよりもスロープ部SLの末端側には例えば
図5(e)に示すリッジ部Rd6が備えられ、これと反対側には例えば
図3(e)に示す実施形態のリッジ部Rdが備えられている。なお、リッジ部Rd6,Rdの組み合わせは一例であってこの逆順であってもよいし、これ以外の組み合わせであってもよいことは言うまでもない。つまりこの場合、36〜36Gの
8P
2=8*7=56通りの断面形状の組み合わせが少なくとも考えられる。
【0070】
つまり、以上をまとめると、本発明の実施形態は少なくとも176通り(∵80+40+56=176)の組み合わせを考えることができる。
【0071】
さらには、
図5(d)〜
図5(g)において、リッジ部Rd5〜Rd8はそれぞれ一つ備える例で説明したが、複数備える構成であってもよい。この場合に、径方向の断面視で高さや形状など種類の異なるリッジ部Rdを混在させた組み合わせで構成することもできる。
具体的には、例えば
図5(a)、
図5(d)、
図5(e)、
図5(f)のリッジ部Rd1、Rd5、Rd6、Rd7のうち少なくとも2つ以上が一つの下側ばね受け部材36に含まれる構成であってもよい。例えば
図6(g)に示すように、
図5(a)に示すリッジ部Rd1と、
図5(f)に示すリッジ部Rd7とが一つの下側ばね受け部材36Hに含まれる構成としてもよい。なお、
図6(g)は
図5(b)の下側ばね受け部材36Bの変形例とみなすこともできる。つまり、
図6(g)は
図5(b)における複数のリッジ部Rdを、種類の異なる組み合わせで形成したものとみなすこともできる。
また、例えば
図3(e)と、
図5(d)、
図5(e)、
図5(f)のリッジ部Rd1、Rd5、Rd6、Rd7のうちいずれか1つとが、一つの下側ばね受け部材36に含まれる構成など、さまざまな組み合わせが考えられる。この場合、例えば
図6(h)の下側ばね受け部材36Iに示すように、下側スプリングシート28の側壁から遠い側(すなわち、径方向内側)のリッジ部Rdの高さを、近い側のリッジ部よりも高くすると、径方向すなわち左右方向への潰れに強くすることができるので、好適である。なお、
図6(h)はリッジ部Rdとリッジ部Rd5とを組み合わせたものであるが、特にこれには限定されない。
【0072】
つまり、本発明の実施形態に係わる下側ばね受け部材36は、荷重に対する撓み量が最適化されるように肉抜き部の径方向の断面形状および底面側の形状の組み合わせを適宜選択することによって、懸架スプリングの変形に対する一層良好な追従性を実現するものである。また、乗員のドライブフィールを一層良好にできるという作用・効果を奏するものである。
【0073】
また、本発明の実施形態に係わる下側ばね受け部材36は下側ばね受け部材であるとして説明したが、上側ばね受け部材34に適用することもできる。この場合、特に車高が低い車両に適用すると、比較的砂や砂利が入り込みやすい環境にあるため、一層効果的である。