【実施例】
【0041】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例においてマイクロ波合成装置はBiotage社のInitiator +を用いた。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0042】
実施例1及び比較例1
木粉(スギ、1.5φ)をマイクロ波反応容器に1g量りとり、トルエン(一級、純正化学株式会社)を表1に記載量加えた。メタノールで100倍に希釈した硫酸(特級、純正化学株式会社)を0.67mL、メタノール(一級、純正化学株式会社)を表1に記載量加えた。反応容器にキャップを取り付け、マイクロ波合成装置にセットした。マイクロ波を照射し、反応温度140℃で20分間加熱した。反応溶液の温度が室温まで下がった後に、水(10mL)を加え、桐山漏斗でろ過を行った。水層をトルエン(10mL)で3回抽出し、有機層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水した後に、ろ過を行い、エバポレーター(60℃、水浴)で溶媒を除去した。減圧乾燥を行い、リグニン分解物の収量を求めた。
リグニン分解物の濃縮物をTHF溶媒によるゲル浸透クロマトグラフ(GPC)にて、分子量分布を測定した。得られたリグニン分解物を重クロロホルムに溶かし、内部標準として1,1,2,2−テトラクロロエチレンを用い、得られたリグニン分解物の1H NMRを測定した。1H NMRスペクトルに基づき、得られたリグニン分解物のうち、4−(2,2−ジアルコキシエチル)フェノール誘導体のリグニンモノマーである(4−(2,2−dimethoxyethyl)−2−methoxyphenol、並びにセルロース成分の分解物であるMMF、Levoglucosenone、及びLevulinic acid methyl esterの収量を算出した。リグニンオリゴマー(Lignin Oligomer)の収量は、全体の回収量から、算出したリグニンモノマー各成分の収量を引いたものである。また、収量が少なく、図には明示していないが、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−メトキシプロパ−2−オンも検出された。収量を
図1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
4−(2,2−ジアルコキシエチル)フェノール誘導体の収量は炭化水素とアルコールの混合溶媒のうち、アルコールの比率の増加に伴い、低下した。炭化水素の比率が高くなるにつれ、4−(2,2−ジアルコキシエチル)フェノール誘導体の収量が下がり、他のセルロース成分の分解物の収量が増えた。また、炭化水素が用いられない場合、全体の収量が減った。また、炭化水素が用いられない場合、全体の収量が減った。
【0045】
実施例2
木粉(スギ、1.5φ)をマイクロ波反応容器に1g量りとり、トルエンを13mL加えた。さらにメタノールで100倍に希釈した硫酸を0.67mL、メタノールを1.33mL加えた。反応容器にキャップを取り付け、マイクロ波合成装置にセットした。マイクロ波を照射し、反応温度140℃で表2に記載の時間加熱した。そのほかは実施例1と同様に行った。収量を
図2に示す。収量が少なく、図には明示していないが、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−メトキシプロパ−2−オンも検出された。
【0046】
【表2】
【0047】
加熱時間が長くなることにより、若干、全体の収量が増加し、及びMMFの収量が増加した。
【0048】
実施例3
木粉(スギ、1.5φ)をマイクロ波反応容器に1g量りとり、トルエンを13mL加えた。さらにメタノールで100倍に希釈した硫酸を0.67mL、メタノールを1.33mL加えた。反応容器にキャップを取り付け、マイクロ波合成装置にセットした。マイクロ波を照射し、表3に記載の反応温度で10分加熱した。そのほかは実施例1と同様に行った。収量を
図3に示す。収量が少なく、図には明示していないが、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−メトキシプロパ−2−オンも検出された。
【0049】
【表3】
【0050】
高温になるにつれて全体の収量が増加したが、セルロース分解物の収量も増加した。温度が低いとセルロース分解物は生成しないが、全体の収量が減った。
【0051】
比較例2
木粉(スギ、1.5φ)をマイクロ波反応容器に1g量りとり、水を表4記載量加えた。さらにメタノールで100倍に希釈した硫酸を0.67mL、メタノールを表4記載量加えた。反応容器にキャップを取り付け、マイクロ波合成装置にセットした。マイクロ波を照射し、反応温度140℃で20分間加熱した。反応溶液の温度が室温まで下がった後に、トルエン(10mL)を加え、桐山漏斗でろ過を行った。ろ液をトルエンで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで脱水した。そのほかは実施例1と同様に行った。収量を
図4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
炭化水素を用いず、水を用いる場合、4−(2,2−ジアルコキシエチル)フェノール誘導体は得られないことがわかる。また、炭化水素を用いる場合(実施例1〜3)、4(2,2−ジアルコキシエチル)フェノール誘導体が選択的に得られることがわかる。
【0054】
実施例4
表5記載の原料(乾燥)をマイクロ波反応容器に1g量りとり、トルエンを12mL、メタノールで100倍に希釈した硫酸を0.67mL、メタノールを2.3mL加えた。反応容器にキャップを取り付け、マイクロ波合成装置にセットした。マイクロ波を照射し、反応温度140℃で20分間加熱した。そのほかは実施例1と同様に行った。収量を
図5に示す。実施例4−2、及び4−4では、4−(2,2−ジメトキシエチル)−2−メトキシフェノールに加え、4−(2,2−ジメトキシエチル)−2,6−ジメトキシフェノールが得られ、実施例1と同様に1H NMRスペクトルに基づき収量を算出した。実施例4−2では、収量が少なく、図には明示していないが、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−メトキシプロパ−2−オン、1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)−1−メトキシプロパ−2−オンも検出された。また、実施例4−3では、4−(2,2−ジアルコキシエチル)フェノール誘導体として4−(2,2−ジメトキシエチル)フェノール、4−(2,2−ジメトキシエチル)−2メトキシフェノール、及び4−(2,2−ジメトキシエチル)−2,6−ジメトキシフェノールの3種類が混合物として得られ、NMRでの化合物ごとの収量の算出が困難であったため、
図5には記載していない。
【0055】
【表5】
【0056】
スギやユーカリ由来のリグニンの分解により4−(2,2−ジアルコキシエチル)フェノール誘導体が得られた。なお、ユーカリからは4−(2,2−ジメトキシエチル)−2,6−ジメトキシフェノールが効率よく得られた。
【0057】
実施例5
木粉(スギ、1.5φ)をマイクロ波反応容器に1g量りとり、表7記載の炭化水素を12mL加えた。表7記載のアルコールで100倍に希釈した硫酸を0.67mL、表7記載のアルコール(一級、純正化学株式会社)を2.3mL加えた。反応容器にキャップを取り付け、マイクロ波合成装置にセットした。マイクロ波を照射し、反応温度140℃で20分間加熱した。そのほかは実施例1と同様に行った。エタノールを用いた場合は4−(2,2−ジエトキシエチル)−2−メトキシフェノールが得られるが、実施例1と同様に1H NMRスペクトルに基づき収量を算出した。収量を
図6に示す。収量が少なく、図には明示していないが、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−メトキシプロパ−2−オンも検出された。
【0058】
【表6】
【0059】
以上の結果から、炭化水素とアルコールの種類にかかわらず、4−(2,2−ジアルコキシエチル)フェノール誘導体が得られることがわかる。なお、エタノールを用いた場合は4−(2,2−ジエトキシエチル)−2−メトキシフェノールが効率よく得られた。
【0060】
実施例6
木粉(スギ又、1.5φ)をマイクロ波反応容器に1g量りとり、トルエンを12mL加えた。表8に記載の酸を10mg、メタノールを3mL加えた。反応容器にキャップを取り付け、マイクロ波合成装置にセットした。マイクロ波を照射し、反応温度140℃で20分間加熱した。そのほかは実施例1と同様に行った。収量を
図7に示す。収量が少なく、図には明示していないが、1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1−メトキシプロパ−2−オンも検出された。
【0061】
【表7】
【0062】
以上の結果から、硫酸が本発明においては最も効率のよいリグニン分解の触媒であり、他の酸、メタンスルホン酸やルイス酸である三塩化アルミニウムも触媒として有用であることがわかる。
【0063】
実施例7
木粉(スギ、1.5φ)をマイクロ波反応容器に1g量りとり、トルエンを13mL加えた。メタノールで100倍に希釈した硫酸を0.67mL、メタノール(一級、純正化学株式会社)を1.33mL加えた。反応容器にキャップを取り付け、マイクロ波合成装置にセットした。マイクロ波を照射し、反応温度170℃で10分間加熱した。そのほかは実施例1と同様に行った。得られたリグニン分解物を重クロロホルムに溶かし、内部標準として1,1,2,2−テトラクロロエチレンを用い、得られたリグニン分解物の1H NMRを測定した。1H NMRスペクトルに基づき、1H NMRチャートを
図8に示す。
【0064】
NMR data
・1,1,2,2,-テトラクロロエタン
5.94 ppm (2H, s, CHCl2)
・4-(2,2-ジメトキシエチル)-2-メトキシフェノール
2.78 ppm (1H, d, J = 5.6 Hz, CH(OMe)2)
・MMF
9.56 ppm (2H, s, CHO)
・Levoglucosenone
4.96 ppm (1H, t, J = 4.0 Hz, -CH=CHCH)
・Levlic acid methyl ester
2.53 ppm (2H, t, J =6.4 Hz, CH2)
【0065】
実施例8
木粉(スギ又はユーカリ、1.5φ)をマイクロ波反応容器に1g量りとり、トルエンを12mL加えた。メタノールで100倍に希釈した硫酸を0.67mL、メタノール(一級、純正化学株式会社)を1.33mL加えた。反応容器にキャップを取り付け、マイクロ波合成装置にセットした。マイクロ波を照射し、反応温度140℃で20分間加熱した。そのほかは実施例1と同様に行った。得られたリグニン分解物の濃縮物をTHF溶媒によるゲル浸透クロマトグラフ(GPC)にて、分子量分布を測定した。
【0066】
GPC data
Column: TSKgel SuperMultiporeHZ-M×3 (4.6 mmI.D. × 15 cm × 3)
Mobile Phase: THF
Flow Rate :0.35 ml/min
Column Tmperature: 40℃
Sample Concentlation : ca. 2 mg/ml THF
Detection: RI
Standard : Shodex STANDARD (s-0.5, SM-105)
スギ:Mn=380、Mw=530
ユーカリ:Mn=442、Mw=671(Mn:数平均分子量、Mw:重量平均分子量)