【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1に係るデュプレクサ100を示す図である。
図1のように、実施例1のデュプレクサ100は、送信フィルタ10、受信フィルタ30、及び回路50を備える。送信フィルタ10は、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に接続されている。受信フィルタ30は、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に接続されている。回路50は、送信フィルタ10に並列に接続されている。
【0019】
送信フィルタ10は、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に直列に接続された1又は複数の直列共振器S11〜S14と並列に接続された1又は複数の並列共振器P11〜P13とを備えるラダー型フィルタである。直列共振器S11〜S14及び並列共振器P11〜P13は、圧電薄膜共振器である。
【0020】
受信フィルタ30は、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に直列に接続された1又は複数の直列共振器S21〜S24と並列に接続された1又は複数の並列共振器P21〜P23とを備えるラダー型フィルタである。直列共振器S21〜S24及び並列共振器P21〜P23は、弾性表面波共振器である。なお、弾性表面波共振器は、弾性境界波共振器及びラブ波共振器であってもよい。すなわち、特許請求の範囲における弾性表面波共振器は、広義の弾性表面波共振器であって、弾性境界波共振器及びラブ波共振器を含むものである。
【0021】
送信フィルタ10は、送信端子Txへ入力された信号のうち送信帯域の信号を送信信号としてアンテナ端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ30は、アンテナ端子Antへ入力された信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。
【0022】
送信信号の全てがアンテナ端子Antから出力されることが理想であるが、送信信号の一部が受信フィルタ30を通過して受信端子Rxから出力されてしまうことがある。同様に、受信信号の全てが受信端子Rxから出力されることが理想ではあるが、受信信号の一部が送信フィルタ10を通過して送信端子Txから出力されてしまうことがある。送信端子Txへ入力された送信信号のうち受信端子Rxに漏れた電力の割合を送信端子−受信端子間のアイソレーションといい、アンテナ端子Antへ入力された受信信号のうち送信端子Txに漏れた電力の割合をアンテナ端子−送信端子間のアイソレーションという。
【0023】
回路50は、アイソレーション特性を向上させるために設けられている。回路50は、例えば直列共振器S11とアンテナ端子Antとの間のノードN1と、直列共振器S14と送信端子Txとの間のノードN2と、の間に接続されている。すなわち、回路50は、直列共振器S11〜S14に並列に接続されている。回路50は、ノードN1、N2の間に直列に接続された縦結合型弾性波フィルタ51と、縦結合型弾性波フィルタ51の入力側及び出力側で縦結合型弾性波フィルタ51に直列に接続されたキャパシタC1、C2と、を備える。縦結合型弾性波フィルタ51は複数のIDTで形成されていて、複数のIDTのうちの1つはノードN1に接続され、他の1つはノードN2に接続されている。縦結合型弾性波フィルタ51は、例えばダブルモード型弾性表面波フィルタである。
【0024】
実施例1のデュプレクサ100は、各通信系に対応する。例えば、デュプレクサ100は、バンド7(送信帯域:2500MHz〜2570MHz、受信帯域:2620MHz〜2690MHz)の送信信号及び受信信号を通過させる。この場合、縦結合型弾性波フィルタ51の共振周波数は、例えば2595MHzである。
【0025】
図2(a)は、送信フィルタ10が形成されたチップ11の上面図、
図2(b)は、
図2(a)のA−A間の断面図である。なお、
図2(a)では、圧電体膜15を透視して図示している。
図2(a)のように、チップ11は、例えばシリコン基板などの基板12上に、直列共振器S11〜S14と並列共振器P11〜P13が形成されている。直列共振器S11〜S14は、アンテナパッド20と送信パッド21との間に、下部配線14と上部配線17とを介して直列に接続されている。並列共振器P11は、直列共振器S11、S12の間とグランドパッド22との間に接続されている。同様に、並列共振器P12は、直列共振器S12、S13の間とグランドパッド22との間に接続され、並列共振器P13は、直列共振器S13、S14の間とグランドパッド22との間に接続されている。アンテナパッド20、送信パッド21、及びグランドパッド22上に、バンプ23が形成されている。
【0026】
図2(b)のように、基板12上に、下部電極13と、下部電極13に接続した下部配線14と、が形成されている。基板12と下部電極13との間には、ドーム状の膨らみを有する空隙19が形成されている。ドーム状の膨らみとは、例えば空隙19の周辺では空隙19の高さが低く、空隙19の中央ほど空隙19の高さが高くなるような形状の膨らみである。下部電極13、下部配線14、及び基板12上に、圧電体膜15が形成されている。圧電体膜15上に、下部電極13と対向する領域(共振領域18)を有する上部電極16と、上部電極16に接続した上部配線17と、が形成されている。共振領域18は、楕円形状を有し(
図2(a)参照)、厚み縦振動モードが共振する領域である。直列共振器S11は、下部電極13と圧電体膜15と上部電極16とが積層された構造をしている。なお、共振領域18は、楕円形状である場合に限られず、多角形形状など他の形状の場合でもよい。
【0027】
下部電極13と下部配線14は、同時に形成されるため、同じ材料且つ同じ膜厚を有する。上部電極16と上部配線17は、同時に形成されるため、同じ材料且つ同じ膜厚を有する。下部電極13、下部配線14、上部電極16、及び上部配線17として、例えばルテニウム、クロム、アルミニウム、チタン、銅、モリブデン、タングステン、タンタル、白金、ロジウム、又はイリジウムなどの単層膜又はこれらの積層膜を用いることができる。圧電体膜15として、例えば窒化アルミニウム膜、酸化亜鉛膜、チタン酸ジルコン酸鉛膜、またはチタン酸鉛膜などを用いることができる。
【0028】
なお、空隙19は、基板12と下部電極13との間に形成された膨らみの代わりに、基板12の上面に形成された凹部又は孔部である場合でもよい。また、空隙19の代わりに、共振領域18の下部電極13下に音響反射膜が形成されている場合でもよい。
【0029】
なお、
図2(b)では、直列共振器S11について説明したが、直列共振器S12〜S14及び並列共振器P11〜P13も、直列共振器S11と同様に、下部電極13と圧電体膜15と上部電極16とが積層された構造をしている。
【0030】
図3は、受信フィルタ30が形成されたチップ31の上面図である。
図3のように、チップ31は、例えばタンタル酸リチウム基板又はニオブ酸リチウム基板などの圧電基板32上に、直列共振器S21〜S24と並列共振器P21〜P23が形成されている。直列共振器S21〜S24は、アンテナパッド40と受信パッド41との間に配線33を介して直列に接続されている。並列共振器P21は、直列共振器S21、S22の間とグランドパッド42との間に接続されている。同様に、並列共振器P22は、直列共振器S22、S23の間とグランドパッド42との間に接続され、並列共振器P23は、直列共振器S23、S24の間とグランドパッド42との間に接続されている。アンテナパッド40、受信パッド41、及びグランドパッド42上に、バンプ43が形成されている。
【0031】
直列共振器S21〜S24及び並列共振器P21〜P23は、IDT(Inter Digital Transducer)34と、IDT34の両側に設けられた反射器35と、を備える。IDT34は、圧電基板32の表面に弾性表面波を励振する。反射器35は、弾性表面波を反射する。IDT34、反射器35、及び配線33は、同時に形成されるため、同じ材料且つ同じ膜厚を有する。IDT34、反射器35、及び配線33は、例えばアルミニウムや銅などの金属膜で形成されている。
【0032】
チップ31はさらに、圧電基板32上に縦結合型弾性波フィルタ51とキャパシタC1、C2とが形成されている。縦結合型弾性波フィルタ51は、弾性波の伝搬方向で並んだIDT54a、54bと、IDT54a、54bの両側に設けられた反射器55と、を備える。IDT54aの一端は、配線53を介してグランドパッド62に接続され、他端は、配線53とキャパシタC2とを介して接続パッド60に接続されている。IDT54bの一端は、配線53を介してグランドパッド62に接続され、他端は、配線53とキャパシタC1とを介して接続パッド61に接続されている。キャパシタC1、C2は、一対の櫛型電極で形成されている。キャパシタC1、C2の櫛型電極の両側には反射器は設けられていない。縦結合型弾性波フィルタ51のIDT54a、54b及び反射器55と、キャパシタC1、C2の櫛型電極と、配線53とは、直列共振器S21〜S24及び並列共振器P21〜P23のIDT34及び反射器35並びに配線33と同時に形成される。このため、縦結合型弾性波フィルタ51のIDT54a、54b及び反射器55と、キャパシタC1、C2の櫛型電極と、配線53とは、直列共振器S21〜S24及び並列共振器P21〜P23のIDT34及び反射器35並びに配線33と同じ材料且つ同じ膜厚を有する。接続パッド60、61及びグランドパッド62上に、バンプ63が形成されている。
【0033】
このように、チップ31上には、直列共振器S21〜S24と並列共振器P21〜P23で構成される受信フィルタ30に加えて、縦結合型弾性波フィルタ51とキャパシタC1、C2とで構成される回路50も形成されている。
【0034】
なお、アンテナパッド20、40、送信パッド21、受信パッド41、グランドパッド22、42、62、及び接続パッド60、61は、バンプ23、43、63によって、パッケージ基板などに接続される。このことから、アンテナパッド20、40は
図1のアンテナ端子Antに対応し、送信パッド21は
図1の送信端子Txに対応し、受信パッド41は
図1の受信端子Rxに対応し、グランドパッド22、42、62は
図1のグランドに対応する。
【0035】
図4は、チップ11、31が実装されるパッケージ基板70のダイアタッチ層71の上面図である。
図4のように、セラミックなどの絶縁体からなるダイアタッチ層71の上面に、アンテナ用パッド72、73、送信用パッド74、受信用パッド75、グランド用パッド76〜78、接続用パッド79、80、及び配線81、82が形成されている。配線81は、アンテナ用パッド72と接続用パッド79との間を接続する。配線82は、送信用パッド74と接続用パッド80との間を接続する。
【0036】
アンテナ用パッド72、送信用パッド74、及びグランド用パッド76には、チップ11上に形成されたアンテナパッド20、送信パッド21、及びグランドパッド22がバンプ23によって接続される。アンテナ用パッド73、受信用パッド75、及びグランド用パッド77には、チップ31上に形成されたアンテナパッド40、受信パッド41、及びグランドパッド42がバンプ43によって接続される。接続用パッド79、80及びグランド用パッド78には、チップ31上に形成された接続パッド60、61及びグランドパッド62がバンプ63によって接続される。このように、チップ11、31は、ダイアタッチ層71にフリップチップ実装される。
【0037】
図5は、チップ11、31がダイアタッチ層71にフリップチップ実装された状態を示す図である。なお、
図5では、基板を透視して送信フィルタ10、受信フィルタ30、及び回路50を図示している。また、ダイアタッチ層71の上面に形成されたパッドのうちアンテナ用パッド72、送信用パッド74、及び接続用パッド79、80のみを図示している。
【0038】
図5のように、チップ31上に形成された接続パッド60は、ダイアタッチ層71に形成された接続用パッド79、配線81、及びアンテナ用パッド72を介して、チップ11上に形成されたアンテナパッド20に接続されている。チップ31上に形成された接続パッド61は、ダイアタッチ層71に形成された接続用パッド80、配線82、及び送信用パッド74を介して、チップ11上に形成された送信パッド21に接続されている。これにより、チップ31上に形成された回路50が、チップ11上に形成された送信フィルタ10に並列に接続されている。
【0039】
実施例1によれば、
図1のように、送信フィルタ10に、縦結合型弾性波フィルタ51を含む回路50が並列に接続されている。送信フィルタ10の受信帯域における減衰量を向上させ、受信帯域のアイソレーション特性を向上させるには、縦結合型弾性波フィルタ51の共振周波数を制御する必要がある。しかしながら、縦結合型弾性波フィルタ51を圧電薄膜共振器で形成した場合、共振周波数を精度良く制御することが難しい。これは、圧電薄膜共振器は、下部電極、圧電体膜、及び上部電極を含む積層膜の膜厚によって共振周波数が変化するため、ウエハ面内の膜厚ばらつきなどの影響によって膜厚を精度良く制御することが難しいためである。このため、実施例1では、
図5のように、縦結合型弾性波フィルタ51は、圧電薄膜共振器で形成された送信フィルタ10に並列に接続されるが、弾性表面波共振器で形成された受信フィルタ30のチップ31上に設けられたIDTで形成されるようにしている。縦結合型弾性波フィルタ51がIDTで形成される場合、IDTピッチなどによって共振周波数を制御できることから、共振周波数を精度良く制御できる。したがって、実施例1によれば、アイソレーション特性を向上させることができる。
【0040】
また、実施例1によれば、
図5のように、送信フィルタ10のチップ11と受信フィルタ30のチップ31とは、パッケージ基板70のダイアタッチ層71上に隣り合って実装されている。縦結合型弾性波フィルタ51を含む回路50は、ダイアタッチ層71に設けられた配線81、82を介して、送信フィルタ10に並列に接続されている。これにより、縦結合型弾性波フィルタ51を含む回路50が送信フィルタ10に並列に接続されることを容易に実現でき、且つ、配線81、82が長くなることを抑制できる。
【0041】
また、実施例1によれば、
図1及び
図5のように、回路50は、縦結合型弾性波フィルタ51の入力側及び出力側に縦結合型弾性波フィルタ51に直列に接続され、櫛型電極で形成されたキャパシタC1、C2を含む。縦結合型弾性波フィルタ51に直列にキャパシタC1、C2が接続されることで、回路50の入出力インピーダンスを高くすることができ、回路50に流れ込む信号量を抑制することができる。このため、損失の低下を抑制することができる。なお、キャパシタC1、C2の容量の大きさは、回路50に流れ込む信号量などを考慮して決定することができる。
【0042】
なお、実施例1では、回路50は、送信フィルタ10の全ての直列共振器S11〜S14に並列に接続されている場合を例に示したが、直列共振器S11〜S14のうちの一部の直列共振器に並列に接続されている場合でもよい。
【0043】
図6(a)から
図6(f)は、回路50の他の例を示す図である。
図6(a)のように、縦結合型弾性波フィルタ51の入力側のキャパシタC1が接続されてなくてもよいし、
図6(b)のように、縦結合型弾性波フィルタ51の出力側のキャパシタC2が接続されてなくてもよい。
図6(c)のように、縦結合型弾性波フィルタ51の入力側及び出力側両方のキャパシタC1、C2が接続されてなくてもよい。この場合、縦結合型弾性波フィルタ51によって回路50の入出力インピーダンスを高くすることが好ましい。
図6(d)のように、縦結合型弾性波フィルタ51は、3つのIDT54a〜54cで構成されていてもよい。
図6(e)のように、キャパシタC1、C2の代わりに弾性波共振器64、65を備えていてもよい。この場合、弾性波共振器64、65の共振周波数を調整することで、回路50に流れ込む信号量を抑制することができる。
図6(f)のように、縦結合型弾性波フィルタ51の入力側及び/又は出力側のノードとグランドとの間に弾性波共振器66を備えていてもよい。
【0044】
図7は、実施例1の変形例1に係るデュプレクサ110を示す図である。
図7のように、実施例1の変形例1のデュプレクサ110は、縦結合型弾性波フィルタ51を含む回路50が、送信フィルタ10だけでなく、受信フィルタ30にも並列に接続されている。送信フィルタ10に並列に接続された縦結合型弾性波フィルタ51及び受信フィルタ30に並列に接続された縦結合型弾性波フィルタ51は、図示は省略するが、共に弾性表面波共振器で形成された受信フィルタ30のチップ31上に設けられている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0045】
実施例1の変形例1によれば、縦結合型弾性波フィルタ51を含む回路50が、受信フィルタ30にも並列に接続されている。これにより、受信フィルタ30の送信帯域における減衰量を向上させることができ、その結果、送信帯域のアイソレーション特性を向上させることができる。
【0046】
図8は、実施例1の変形例2に係るデュプレクサ120を示す図である。実施例1では、送信フィルタ10の直列共振器S11〜S14及び並列共振器P11〜P13が圧電薄膜共振器で形成され、受信フィルタ30の直列共振器S21〜S24及び並列共振器P21〜P23が弾性表面波共振器で形成されていた。これに対し、実施例1の変形例2では、送信フィルタ10の直列共振器S11〜S14及び並列共振器P11〜P13が弾性表面波共振器で形成され、受信フィルタ30の直列共振器S21〜S24及び並列共振器P21〜P23が圧電薄膜共振器で形成されている。回路50は、圧電薄膜共振器で形成された受信フィルタ30に並列に接続されている。回路50に含まれる縦結合型弾性波フィルタ51は、図示は省略するが、実施例1と同様に、弾性表面波共振器で形成された送信フィルタ10のチップ上に設けられている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0047】
実施例1の変形例2のデュプレクサ120は、各通信系に対応し、例えばバンド3(送信帯域:1710MHz〜1785MHz、受信帯域:1805MHz〜1880MHz)の送信信号及び受信信号を通過させる。この場合、縦結合型弾性波フィルタ51の共振周波数は、例えば1795MHzである。
【0048】
図9は、実施例1の変形例3に係るクワッドプレクサ130を示す図である。
図9のように、実施例1の変形例3のクワッドプレクサ130は、第1デュプレクサ131と第2デュプレクサ135とを備える。第1デュプレクサ131は、アンテナ端子Antと第1送信端子Tx1との間に接続された送信フィルタ132と、アンテナ端子Antと第1受信端子Rx1との間に接続された受信フィルタ133と、を備える。第2デュプレクサ135は、アンテナ端子Antと第2送信端子Tx2との間に接続された送信フィルタ136と、アンテナ端子Antと第2受信端子Rx2との間に接続された受信フィルタ137と、を備える。
【0049】
第1デュプレクサ131の受信フィルタ133は圧電薄膜共振器で形成され、第1デュプレクサ131の送信フィルタ132及び第2デュプレクサ135の送信フィルタ136、受信フィルタ137は弾性表面波共振器で形成されている。回路50は、圧電薄膜共振器で形成された受信フィルタ133に並列に接続されている。回路50に含まれる縦結合型弾性波フィルタ51は、図示は省略するが、実施例1と同様に、弾性表面波共振器で形成された送信フィルタ132、送信フィルタ136、又は受信フィルタ137のいずれかのチップ上に設けられている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0050】
実施例1の変形例3のクワッドプレクサ130は、各通信系に対応する。例えば、第1デュプレクサ131は、バンド2(送信帯域:1850MHz〜1910MHz、受信帯域:1930MHz〜1990MHz)の送信信号及び受信信号を通過させる。第2デュプレクサ135は、バンド4(送信帯域:1710MHz〜1755MHz、受信帯域:2110MHz〜2155MHz)の送信信号及び受信信号を通過させる。この場合、縦結合型弾性波フィルタ51の共振周波数は、例えば1920MHzである。
【0051】
実施例1から実施例1の変形例2では、分波器がデュプレクサの場合を例に示し、実施例1の変形例3では、分波器がクワッドプレクサの場合を例に示したが、これに限られない。分波器は、マルチプレクサの場合であればその他の場合でもよい。
【実施例2】
【0052】
実施例1では、回路50のキャパシタC1、C2が一対の櫛型電極で形成されている場合を例に示した。ここで、弾性表面波共振器で形成されたラダー型フィルタに、縦結合型弾性波フィルタ51と櫛型電極で形成されたキャパシタC1、C2とを含む回路50が並列に接続されたフィルタに対して行ったシミュレーションについて説明する。シミュレーションは、キャパシタC1、C2の櫛型電極のピッチを変えて、フィルタの通過特性とキャパシタC1、C2の周波数特性とを求めた。
図10(a)から
図11(b)は、シミュレーションの結果を示す図である。キャパシタC1の周波数特性を一点鎖線で、キャパシタC2の周波数特性を二点鎖線で、フィルタの通過特性を実線で示している。
【0053】
図10(a)は、キャパシタC1の櫛型電極のピッチが2.0μm、キャパシタC2の櫛型電極のピッチが1.95μmの場合のシミュレーション結果であり、
図10(b)は、キャパシタC1、C2の櫛型電極のピッチが共に2.0μmの場合のシミュレーション結果である。
図10(a)及び
図10(b)のように、キャパシタC1、C2の周波数特性の影響によって、フィルタの通過特性の通過帯域内に不要応答が発生していることが確認できる。
【0054】
図11(a)は、キャパシタC1の櫛型電極のピッチが1.7μm、キャパシタC2の櫛型電極のピッチが1.6μmの場合のシミュレーション結果であり、
図11(b)は、キャパシタC1、C2の櫛型電極のピッチが1.6μmの場合のシミュレーション結果である。
図11(a)及び
図11(b)のように、キャパシタC1、C2の周波数特性の影響によって、フィルタの通過特性の通過帯域外に不要応答が発生していることが確認できる。
【0055】
図10(a)から
図11(b)のように、回路50のキャパシタC1、C2が一対の櫛型電極で形成されている場合、フィルタの通過特性の通過帯域内又は通過帯域外に不要応答が発生し、フィルタ特性が劣化することが分かった。そこで、実施例2では、不要応答の発生によるフィルタ特性の劣化を抑制するために、キャパシタC1、C2を立体配線構造で形成した場合の例を説明する。なお、実施例2に係るデュプレクサは、実施例1と同じく、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に圧電薄膜共振器で形成された送信フィルタ10が接続され、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に弾性表面波共振器で形成された受信フィルタ30が接続されている。そして、縦結合型弾性波フィルタ51とキャパシタC1、C2とを含む回路50が、送信フィルタ10に並列に接続されている。
【0056】
図12は、実施例2のデュプレクサの送信フィルタ10が形成されたチップ11と受信フィルタ30が形成されたチップ31とがダイアタッチ層71にフリップチップ実装された状態を示す図である。
図13(a)は、
図12のキャパシタC1の破線領域を拡大した上面図であり、
図13(b)は、
図13(a)のA−A間の断面図である。なお、キャパシタC2の破線領域については、
図13(a)及び
図13(b)と同様であるため図示を省略する。
【0057】
図12から
図13(b)のように、回路50のキャパシタC1、C2は、誘電体膜57を下部配線56と上部配線58とで挟んだ立体配線構造をしている。下部配線56は、例えば縦結合型弾性波フィルタ51のIDTに接続されている。上部配線58は、例えば接続パッド61に接続されている。下部配線56は、縦結合型弾性波フィルタ51や直列共振器S21〜S24、並列共振器P21〜P23、配線33と同時に形成される。したがって、下部配線56は、縦結合型弾性波フィルタ51のIDT、直列共振器S21〜S24及び並列共振器P21〜P23のIDT、及び配線33と同じ材料且つ同じ膜厚を有する。下部配線56は、例えばアルミニウムや銅などの金属膜である。上部配線58は、例えば金などの金属膜である。誘電体膜57は、例えばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜などである。
【0058】
なお、下部配線56が、縦結合型弾性波フィルタ51などと同時に形成される場合に限られず、上部配線58が、縦結合型弾性波フィルタ51などと同時に形成される場合でもよい。この場合、下部配線56は、縦結合型弾性波フィルタ51のIDTなどとは異なる材料且つ異なる膜厚で形成され、上部配線58が、縦結合型弾性波フィルタ51のIDTなどと同じ材料且つ同じ膜厚で形成される。
【0059】
実施例2によれば、回路50のキャパシタC1、C2は、下部配線56と上部配線58とで誘電体膜57を挟んだ立体配線構造をしている。これにより、キャパシタC1、C2を櫛型電極で形成したときのような不要応答の発生を抑制でき、フィルタ特性の劣化を抑制することができる。
【0060】
また、実施例2によれば、下部配線56又は上部配線58は、縦結合型弾性波フィルタ51などと同時に形成されるため、縦結合型弾性波フィルタ51のIDTと同じ材料且つ同じ膜厚を有する。これにより、製造コストを低減させることができる。