(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光源から照射されて前記対向する各々の斜面で最初に反射された反射光、及び前記光源から照射されて前記被検査物の前記一方の斜面から前記他方の斜面に反射されて前記他方の斜面で更に反射された反射光の各々を前記撮像部へ導光する導光部を更に備えた請求項1に記載の表面撮像装置。
ステムガイドに挿入される軸部と、前記軸部をステムガイドに挿入した状態で前記シート面と前記撮像部間の距離と同距離になるように軸部に配置され、かつ前記撮像部の撮像面側にケガキ模様が設けられた傘部と、を有する治具を用いて前記撮像部のピント合わせを行う請求項4に記載の表面撮像装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、光の照射と反射光の受光は同位置に配置した光学系により行うため、検査面からの反射光を受光して鮮明な画像を得るためには、検査面に対する検査光学系の位置決めを精度良く行う必要があり、改善の余地がある。また、この位置決め精度を実現及び維持していくためのアクチュエータを用いる場合にはコストがかかってしまうと共に、位置決めを精度良く行うためにアクチュエータの移動速度も低く抑える必要があるため検査に要する時間が増大する欠点がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、被検査物の表面が他の部分に比べて鮮明な撮像画像を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明に係る表面撮像装置は、一方の斜面で反射した光の一部を他方の斜面へ入射可能な対向する斜面を有する被検査物に光を照射する光源と、
前記光源から照射された光を予め定めた広がり角の拡散光に変換して前記被検査物に照射するレンズと、前記光源から照射されて前記対向する各々の斜面で最初に反射された反射光、及び前記光源から照射されて前記被検査物の前記一方の斜面から前記他方の斜面に反射されて前記他方の斜面で更に反射された反射光の各
々を受光することで被検査物を撮像する撮像部と、を備えている。
【0008】
また、本発明に係る表面撮像方法は、一方の斜面で反射した光の一部を他方の斜面へ入射可能な対向する斜面を有する被検査物に対して、
光源から照射された光を予め定めた広がり角の拡散光に変換して前記被検査物に照射するレンズによって前記光源から光を予め定めた拡散光に変換して照射し、前記光源から照射されて前記対向する各々の斜面で最初に反射された反射光、及び前記光源から照射されて前記被検査物の前記一方の斜面から前記他方の斜面に反射されて前記他方の斜面で更に反射された反射光の各々を、被検査物を撮像する撮像部に受光させて前記被検査物の撮像を行う。
【0009】
本発明によれば、一方の斜面で反射した光の一部を他方の斜面へ入射可能な対向する斜面を有する被検査物に光源によって光が照射される。
【0010】
そして、撮像部では、光源から照射されて対向する各々の斜面で最初に反射された反射光、及び光源から照射されて一方の斜面から他方の斜面に反射されて他方の斜面で更に反射された反射光の各
々を受光することで被検査物が撮像される。これにより、被検査物の斜面の表面が他の部分に比べて鮮明な撮像画像を得ることができる。
【0011】
なお、光源から照射されて対向する各々の斜面で最初に反射された反射光、及び光源から照射されて被検査物の一方の斜面から他方の斜面に反射されて他方の斜面で更に反射された反射光の各
々を撮像部へ導光する導光部を更に備えてもよい。
【0012】
また、光源から照射された光を予め定めた広がり角の拡散角の光に変換して被検査物に照射するレンズ
を備えて
、拡散光を被検査物に照射することで、より鮮明な撮像画像を得ることができる。
【0013】
また、被検査物の斜面は、45度の斜面を適用することにより、被検査物の一方の斜面で反射した光を他方の斜面へ確実に反射させることができるので、鮮明な撮像画像を得ることができる。
【0014】
また、被検査物は、エンジン吸気及び排気のバルブが当接する円環状のシート面を適用することができる。
【0015】
また、ステムガイドに挿入される軸部と、軸部をステムガイドに挿入した状態でシート面と撮像部間の距離と同距離になるように軸部に配置され、かつ撮像部の撮像面側にケガキ模様が設けられた傘部と、を有する治具を用いて撮像部のピント合わせを行うことにより、撮像部のピント合わせを容易に行うことができる。
【0017】
上記目的を達成するために本発明に係る表面検査装置は、上記の表面撮像装置と、前記撮像部の撮像結果に基づいて、前記被検査物の表面の欠陥を検出するための画像処理を行う画像処理部と、を備えている。
【0018】
本発明によれば、上記の表面撮像装置の撮像部の撮像結果に基づいて、被検査物の表面の欠陥を検出するための画像処理が画像処理部によって行われる。すなわち、他の部分よりも鮮明な撮像画像を用いて画像処理部によって画像処理を行うことで、被検査物の表面の欠陥を確実に検出することができる。
【0019】
なお、被検査物が、エンジン吸気及び排気のバルブが当接する円環状のシート面とされ、画像処理部が、撮像部によって撮像された円環状の被検査物の画像を矩形状の画像に変換する変換処理、変換処理によって変換された画像のノイズを除去する除去処理、及び除去処理によってノイズが除去された画像をシェーディング補正する補正処理を行ってもよい。このように、円環状の画像を矩形状の画像に変換することで、切削痕をノイズとして除去することが可能となるとと共に、画像処理の対象を絞ることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、被検査物の表面が他の部分に比べて鮮明な撮像画像を得ることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る表面撮像装置を含む表面検査装置の概略構成を示す図である。
【
図2】(A)は光源からの光が対向する2つのシート面で各々反射される様子を示す側面図であり、(B)は平行光がシート面に入射された場合の反射の様子を示す図であり、(C)は広角の光がシート面に入射された場合の反射の様子を示す図である。
【
図3】(A)はバルブシート面撮像用治具の一例を示す斜視図であり、(B)はエンジンシリンダヘッドにバルブシート面撮像用治具を挿入した様子を示す斜視図である。
【
図4】(A)はバルブシート面撮像用治具をステムガイドに挿入する様子を示す図であり、(B)はバルブシート面撮像用治具をステムガイドに挿入完了した状態を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る表面検査装置の制御部の概略構成を示すブロック図である。
【
図6】(A)はシート面のピンホールの撮像画像の一例を示し、(B)は(A)の拡大図であり、(C)はシート面のクラックの撮像画像の一例を示し、(D)は(C)の拡大図である。
【
図7】本実施形態に係る表面検査装置の制御部で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】(A)は光源からの光が対向する2つのシート面で各々反射されてシート面の輝度が明るくなる様子を説明するための側面図であり、(B)は正反射を示す側面図であり、(C)は粗面(滑)の場合の拡散反射を示す側面図であり、(D)は粗面(粗)の場合の拡散反射を示す側面図であり、(E)はシート面が粗面(滑)の場合に拡散反射される様子を示す側面図であり、(F)はシート面が粗面(粗)の場合に拡散反射される様子を示す側面図であり、(G)はシート面が粗面(滑)の場合の欠陥部の輝度を示す図であり、(H)はシート面が粗面(粗)の場合の欠陥部の輝度を示す図である。
【
図9】(A)はシート面の撮像画像の例を示し、(B)はシート面の画像を矩形状に変換した例を示し、(C)は(B)の矩形の領域の拡大図であり、(D)は移動平均フィルタによりノイズ除去を行った撮像画像の例を示し、(E)はシェーディング画像の例を示し、(F)は元画像からシェーディング画像を差分した画像の例を示す図である。
【
図10】(A)はシェーディング補正された画像を円環状の画像に変換した例を示し、(B)は欠陥部分の拡大図である。
【
図11】(A)シート面の斜面が30度でシート面からの反射光を直接撮像する場合のカメラと光源の配置を示し、(B)はシート面の斜面が30度でシート面からの反射光を直接撮像する場合のカメラ、光源、及びハーフミラーの配置を示し、(C)はカメラをシート面に近接させる必要がある様子を示す図である。
【
図12】本実施形態の被検査物のシート面として(A)はシート面の角度が60度の場合を示し、(B)はシート面22の角度が50度の場合を示し、(C)はシート面22の角度が45度の場合を示す図である。
【
図13】カメラが中心となるように配置したリング状の光源を適用して対向する各々のシート面からの反射光、及び一方のシート面から他方のシート面に反射して更に他方のシート面で反射した反射光の各々の反射光をカメラで撮像する構成を示す図である。
【
図14】円錐ミラーをシート面に対向するように更に配置した例を示す図である。
【
図15】シェーディング補正を差分で行った場合と、除算で行った場合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る表面撮像装置を含む表面検査装置の概略構成を示す図である。なお、本実施形態では、エンジン吸気及び排気のバルブ(以下、単にバルブという。)が挿入されるエンジンシリンダヘッドに設けられたバルブが当接するシート面を被検査物とした例を説明する。また、シート面22は、円錐状とされ、対向する斜面を有する形状の一例として説明する。
【0023】
表面検査装置10は、撮像部としてのカメラ12、光源14、レンズ16、及び導光部としてのハーフミラー18を有する表面撮像装置20と、該表面撮像装置20を制御する制御部24とを備えている。
【0024】
カメラ12は、エンジン吸気及び排気のバルブが当接するシート面22を被検査物として撮像する。シート面22は、一方から他方に向かって径が徐々に小さくなる円錐状に形成された面とされており、カメラ12は、シート面22の一方側から撮像するようになっている。また、カメラ12は、必要に応じて集光するレンズを撮像面側に設けてもよい。
【0025】
なお、本実施形態では、被検査物としてのシート面22は、バルブの移動方向と直交する面に対して45度の斜面を有する例を一例として説明する。また、以下の説明では、バルブの移動方向を垂直方向、バルブの移動方向と直交する面を水平面として説明する。
【0026】
カメラ12とシート面22との間には、ハーフミラー18が設けられ、
図1に示すように、光源14から照射された光が、レンズ16を介してハーフミラー18に照射され、ハーフミラー18によって反射されて被検査物のシート面22に光が照射される。このとき、レンズ16は、シート面22に対して予め定めた広がり角の照射角度を持った拡散光を照射するように光を集光する。
【0027】
光源14からシート面22に照射された光は、シート面22で垂直方向に反射されてハーフミラー18を介してカメラ12に入射されることにより、カメラ12でシート面を撮像する。
【0028】
本実施形態では、光源14から光を照射することにより、レンズ16によって拡散光とされた光がハーフミラー18によって反射されてシート面22に照射される。また、シート面22に照射された光は、レンズ16によって拡散光とされているため、各方向に反射され、一部はハーフミラー18の方向へ反射されてハーフミラー18を介してカメラ12に直接入射される。また、本実施形態では、シート面22が45度の斜面とされているので、一部は、
図2(A)に示すように、水平方向へ反射されて対向するシート面22へ入射され、対向するシート面22で更に垂直方向に反射されてハーフミラー18を介してカメラ12に入射される。すなわち、カメラ12は、対向するシート面22の各々の斜面で最初に反射された反射光、及び対向する一方のシート面22から他方のシート面22に反射されて他方のシート面22で更に反射された反射光の各々の反射光を受光することで被検査物を撮像する。
【0029】
また、本実施形態では、拡散光がシート面22に入射されることにより、
図2(B)に示すように、平行光がシート面22に入射される場合に比べて、
図2(C)に示すように、被検査物の表面の微小な凹凸がキャンセルされて凹凸の影響(ノイズ)を低減することが可能となる。
【0030】
ここで、本実施形態に係る表面検査装置10によってシート面の表面を撮像する際に用いるバルブシート面撮像用治具について説明する。
図3(A)はバルブシート面撮像用治具の一例を示す斜視図であり、
図3(B)はエンジンシリンダヘッドにバルブシート面撮像用治具を挿入した様子を示す斜視図である。また、
図4(A)はバルブシート面撮像用治具30をステムガイド38に挿入する様子を示す図であり、
図4(B)はバルブシート面撮像用治具をステムガイド38に挿入完了した状態を示す図である。
【0031】
バルブシート面撮像用治具30は、バルブが挿入されるステムガイド38に挿入して、表面撮像装置20のピント合わせや、カメラ12のパラメータ設定等に使用される。
【0032】
バルブシート面撮像用治具30は、バルブに類似する形状とされ、傘部32及び軸部34を有している。傘部32は、撮像面側が黒等の光の反射を抑制する塗装等が施されている。また、傘部32の撮像面側には、ケガキ模様が設けられている。ケガキ模様としては、例えば、
図3(A)、(B)に示すように、格子状のケガキ模様を適用することができ、ケガキ模様のカメラ12の撮像結果を用いてピント合わせが可能とされている。なお、ケガキ模様は格子状に限るものではなく、他の形状のケガキ模様を適用してもよい。
【0033】
また、傘部32は、シート面22の直径よりも小さい径とされ、カメラ12の撮像時にシート面22全面が撮像可能な大きさとされている。
【0034】
軸部34は、段差部36が設けられており、傘部32に近い方の径が太く、傘部32から遠い方の径が細い、異なる径の軸を有する。本実施形態では、バルブシート面撮像用治具30をステムガイド38に挿入したときに、段差部36がステムガイド38の端部(ステムシールが打ち込まれるエンジンシリンダヘッドに加工された円ボスの端部)40に当接するようになっている。また、軸部34の段差部36がステムガイド38の端部40に当接した状態で、傘部32の撮像面側とシート面22の中央位置(
図4(B)の一点鎖線)との高さが一致するようになっている。すなわち、バルブシート面撮像用治具30は、軸部34をステムガイド38に挿入して段差部36がステムガイド38の端部40に当接した状態で、傘部32の撮像面側とカメラ12間の距離と、シート面22の中心位置とカメラ12間の距離とが同距離になる。これにより、傘部32に設けられたケガキ模様を用いてピントを合わせることでシート面22にピントを容易に合わせることが可能とされている。
【0035】
なお、本実施形態では、バルブシート面撮像用治具30をステムガイド38に挿入したときに、段差部36がステムガイド38の端部40に当接して、傘部32の撮像面側とシート面22の中央位置との高さを一致させる構成としたが、これに限るものではない。例えば、傘部32がシート面22の中央位置に当接する直径に設定して、傘部32とシート面22を当接することで、段差部36を設けることなく、傘部32の撮像面側とシート面22の中央位置との高さを一致させてもよい。
【0036】
続いて、制御部24について説明する。
図5は、本実施形態に係る表面検査装置10の制御部の概略構成を示すブロック図である。
【0037】
制御部24は、
図5に示すように、CPU24A、ROM24B、RAM24C、及びI/O(入出力インターフェース)24Dがバス24Eに接続されたコンピュータで構成されている。
【0038】
I/O24Dには、カメラ12及び光源14が接続されており、制御部24の制御により光源14が発光され、カメラ12の撮像を行うと共に、カメラ12の撮像結果を用いてシート面22の表面の欠陥を検出する。シート面の欠陥の検出は、カメラ12の撮像画像に対して各種画像処理を行うことにより、シート面22の欠陥を検出する。
【0039】
ROM24Bには、シート面22を撮像して撮像結果に基づいてシート面の表面の欠陥を検出するためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPU24AがROM24Bに記憶されたプログラムをRAM24Cに展開して実行することにより、シート面22の表面欠陥検出処理が行われる。本実施形態では、シート面22の表面欠陥検出処理を行うことにより、
図6(A)、(B)に示すようなピンホールや、
図6(C)、(D)に示すようなクラックを検出する。なお、
図6(A)はシート面22のピンホールの撮像画像の一例を示し、
図6(B)は(A)の拡大図である。また、
図6(C)はシート面22のクラックの撮像画像の一例を示し、
図6(D)は(C)の拡大図である。
【0040】
次に、制御部24のROM24Bに記憶されたプログラムをCPU24Aが実行することにより行われるシート面22の表面欠陥検出処理の具体例について説明する。
図7は、本実施形態に係る表面検査装置10の制御部24で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0041】
ステップ100では、制御部24が光源14及びカメラ12を制御してシート面22の撮像を行ってステップ102へ移行する。すなわち、光源14から光を照射することにより、レンズ16によって拡散光とされた光がハーフミラー18によって反射されてシート面22に照射される。また、シート面22に照射された光は、レンズ16によって拡散光とされているため、
図1及び
図8(A)に示すように、各方向に反射され、一部はハーフミラー18の方向へ反射されてハーフミラー18を介してカメラ12に直接入射される。厳密には、
図8(B)に示すような鏡面ではないため、
図8(C)、(D)に示すような細かい凹凸があるため、
図8(E)、(F)に示すように、シート面22で拡散反射し、拡散反射により、シート面22の直接反射光もカメラ12に直接入射される。また、本実施形態では、シート面22が45度の斜面とされているので、
図1及び
図8(A)に示すように、他の一部は、水平方向へ反射されて対向するシート面22へ入射され、対向するシート面22で更に垂直方向に反射されてハーフミラー18を介してカメラ12に入射される。これにより、
図9(A)に示すようなシート面22の撮像画像を取得することができる。取得した画像は、シート面22で直接反射した反射光に加えて、シート面22を2回反射した光を含むため、シート面22が他の部分に比べて輝度が高く鮮明な画像となり、欠陥を検出し易くなる。すなわち、シート面22の傷等の欠陥部分については、
図8(E)の粗面(滑)や
図8(F)の粗面(粗)に示すように、拡散反射成分が多くなり、
図8(G)、(H)に示すように、画像輝度が低下して欠陥の検出が容易になる。
【0042】
ステップ102では、制御部24が、撮像画像を画像変換してステップ104へ移行する。画像変換は、円環状のシート面22の画像を矩形状の画像に変換する。例えば、
図9(A)のシート面22の画像を矩形状に変換した例を
図9(B)に示す。シート面22の加工時の切削痕は、シート面の円周に沿った方向に発生するが、シート面22の画像を矩形状にすることにより、切削痕を直線に変換してノイズとして除去し易くすることができる。また、矩形状にすることにより、以降の画像処理の対象部分を絞ることができる。
【0043】
ステップ104では、制御部24が、変換した画像に対してノイズ除去を行ってステップ106へ移行する。ノイズ除去は、例えば、縦長の1×5移動平均フィルタ(シート面22の円周方向に対して直交する方向に長い移動平均フィルタ)を用いて切削痕による影響をノイズとして除去する。
図9(C)(
図9(B)の矩形の領域の拡大図)に示す画像変換後の画像に対して移動平均フィルタによりノイズ除去を行うことにより、
図9(D)に示す画像を得ることができる。なお、ノイズ除去を行う画像処理は周知の技術を適用可能で、移動平均フィルタ以外の画像処理によってノイズを除去してもよい。
【0044】
ステップ106では、制御部24が、ノイズ除去を行った画像に対してシェーディング補正を行ってステップ108へ移行する。これにより、シート面22の円周方向の輝度ムラが補正される。例えば、211×9(超横長)メジアンフィルタ(シート面22の円周方向に長いメジアンフィルタ)を用いてシェーディング補正を行う。
図9(D)の画像に対してメジアンフィルタを用いた処理を行うことで
図9(E)に示すシェーディング画像を作成し、元画像(
図9(D))からシェーディング画像(
図9(E))を差分により取り除くことで、
図9(F)に示す画像を得ることができる。これにより、ピンホールやクラック等の欠陥部分を画像上で鮮明にすることが可能となる。なお、シェーディング補正は周知の技術を適用可能で、メジアンフィルタを用いる画像処理ではなく、他のフィルタ等を用いた画像処理を適用してもよい。
【0045】
ステップ108では、制御部24が、シェーディング補正された画像を画像変換してステップ110へ移行する。画像変換は、矩形状の画像を元の円環状のシート面22の画像に変換する。
図10(A)に円環状の画像に変換した例を示す。また、
図10(B)は、欠陥部分の拡大図を示す。なお、ステップ108は、視覚的に欠陥を発見し易いように実施している処理であり、省略してもよい。
【0046】
ステップ110では、制御部24が上述のように各種画像処理を行った画像を用いて欠陥領域の計測を行って一連の処理を終了する。欠陥領域の計測は、例えば、画像情報の画素値に対する予め定めた閾値を用いて欠陥領域の有無や大きさ等を判定し、欠陥があるか否かを検出する。なお、本実施形態では、シート面の対向する面で反射させて撮像するため、欠陥が大きい場合には対向するシート面22の双方に欠陥が写り込んだ画像となることがあり得るが、欠陥として確実に検出することができるので、表面検査装置としては問題なく機能する。
【0047】
ところで、本実施形態では、シート面22が、バルブ移動方向と直交する面(水平面)に対して45度の斜面の例を説明したが、斜面が緩やかな場合には、対向するシート面22で反射せずに正反射の光のみを撮像してシート面22全面を観察する配置があり得る。
【0048】
例えば、
図11(A)に示すように、シート面22の斜面が30度の場合には、バルブ挿入穴の中心軸上にカメラ12及び光源14を設けて、光源14から照射された光をシート面22で正反射させてカメラ12に入射することが可能となる。また、
図11(B)に示すように、カメラ12、ハーフミラー18、及び光源14を用いる場合も光源14から照射された光をハーフミラー18で反射させてシート面22に照射し、シート面22で正反射した光をカメラ12に入射することが可能となる。しかしながら、シート面22の角度が本実施形態の45度のように大きくなると、
図11(C)に示すように、カメラ12をシート面22に近接させる必要があり、物理的に配置が厳しくなってしまう。また、ハーフミラー18等のビームスプリッタを配置するスペースもなくなってしまう。なお、
図11(A)、(C)のカメラ12と光源14の位置は逆でもよいが、撮像画像内に光源14の配線や補治具等が写り込み、シート面22の円環状の一部が欠けた画像になってしまうので、好ましくない。
【0049】
これに対して、本実施形態では、シート面22へ拡散光を入射することで、シート面が45度に限定されることなく、対向するシート面22で反射した光をカメラ12で撮像することで、シート面22を他の部分よりも鮮明に撮像することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態において、シート面の角度が45度以上場合、対向するシート面22での反射を利用すると、よりきつい角度のシート面22でもシート面22全周を一度に撮像する配置が可能となる。例えば、
図12(A)はシート面22の角度が60度の場合を示し、
図12(B)はシート面22の角度が50度の場合を示し、
図12(C)はシート面22の角度が45度の場合を示す。これらの場合は、入射する光とカメラ12への反射光が対称の関係になるので、ハーフミラー18等のビームスプリッタが必要となる。但し、反射面での拡散を利用することでビームスプリッタを省略することも可能である。カメラ12と光源14は、シート面22の角度が45度に近いとシート面22から離れた位置に配置できるが、シート面22の角度がきつくなるとシート面22に近接して配置する必要があり、物理的に成り立たなくなってくる。すなわち、本実施形態のように、シート面22が45度の場合は、正反射光のみを考えると、カメラ12と光源14を無限遠に配置する必要がある。しかし現実には、反射面が完全な鏡面でなければ、反射光は正反射の方向にピークを持ちつつもある程度の散乱光成分を含むので、この散乱光のうち都合のよい方向のものを利用することで、シート面22の観察が可能となる。
【0051】
なお、上記の実施形態では、被検査物としてエンジンシリンダヘッドに設けられたシート面22を一例として挙げて説明したが、被検査物はこれに限るものではない。被検査物としては、対向する面が斜面とされて一方の斜面で反射した光が他方の斜面へ入射可能な斜面を有するものであればよい。
【0052】
また、上記の実施形態において、カメラ12の位置と光源14の位置とは逆の位置を適用しても上記の実施形態と同様の作用を得ることができる。
【0053】
また、上記の実施形態では、ハーフミラー18を備えた構成としたが、これに限るものではない。例えば、ハーフミラー18の代わりにビームスプリッタを適用してもよい。或いは、ハーフミラー18を省略して、
図13に示すように、カメラ12が中心となるように配置したリング状の光源14を適用して対向する各々のシート面22から最初に反射された反射光、及び一方のシート面22から他方のシート面22に反射して更に他方のシート面22で反射した反射光の各々をカメラ12で撮像する構成としてもよい。
【0054】
また、上記の実施形態では、光源14から照射される光をレンズ16によって予め定めた広がり角の拡散光に変換して被検査物へ照射するようにしたが、これに限るものではない。拡散光に比べて画像の鮮明性が劣るが、例えば、平行光の光を被検査物に照射してシート面22を撮像してもよい。或いは、
図14に示すように、円錐ミラー50を更に設けてもよい。
図14では、円錐ミラー50がシート面22に対向するように配置して、光源14からの光をシート面22に一様に照射するようになっている。これにより、光源14からの光がシート面22で直接反射された反射光と、シート面22及び円錐ミラー50によって2回反射された反射光とがカメラ12に入射される。このように構成しても上記の実施形態と同様に、シート面22の撮影画像が他の部分より鮮明となる。
【0055】
また、上記の実施形態では、ステップ106においてシェーディング補正を行う際に、元画像からシェーディング画像を差分したが、差分ではなく、元画像をシェーディング画像で除算してもよい。例えば、
図15(A)に示すように、素地に対して欠陥及びしみがある場合、周囲の明るさによって輝度が変化し、
図15(B)に示すようになる。上記の実施形態のようにシェーディング補正を差分で行うと、欠陥やしみの暗さが周囲の明るさにより変動するため、単一の閾値で欠陥やしみを区別することができない。例えば、撮像された明るさの比が、
図15(B)に示すように、素地:しみ:欠陥=5:3:1であるとすると、シェーディング補正を差分で行うと、
図15(C)のように周囲の明るさによって欠陥やしみの明るさが変動する。一方、除算で行う場合には、
図15(D)に示すように、欠陥やしみの暗さが周囲の明るさによらず一定になるので、単一の閾値で欠陥やしみを区別できるようになる。
【0056】
また、上記の各実施形態における制御部24で行われる
図7の処理は、コンピュータがプログラムを実行することにより行われるソフトウエア処理として説明したが、ハードウエアで行う処理としてもよい。或いは、ソフトウエア及びハードウエアの双方を組み合わせた処理としてもよい。また、ソフトウエアで行う処理とする場合のプログラムは、各種記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。
【0057】
さらに、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。