特許第6402085号(P6402085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402085
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】運搬車両の非常停止システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   G05D1/02 R
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-198819(P2015-198819)
(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公開番号】特開2017-72946(P2017-72946A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2017年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】石本 英史
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−508740(JP,A)
【文献】 特開2012−223847(JP,A)
【文献】 特開2000−066725(JP,A)
【文献】 特開2010−282568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱山内を自律走行する少なくとも一つの運搬車両と当該運搬車両の非常停止を指示するための少なくとも一つの停止操作部材とを、非常停止無線を介して接続した運搬車両の非常停止システムであって、
前記停止操作部材は、
前記運搬車両に非常停止動作を行わせるための指示を入力する非常停止入力装置と、
前記非常停止入力装置に入力された指示に従って、前記運搬車両に非常停止動作を実行させるための非常停止信号を生成する停止信号生成装置と、
前記非常停止信号を送信する停止信号送信機と、を備え
なくとも一つの前記停止操作部材において前記非常停止入力装置に対する前記指示の入力が行われると、前記鉱山内を走行する全ての前記運搬車両に対して前記指示に従って生成された前記非常停止信号が送信され
前記各運搬車両は、当該運搬車両の走行及び稼働を管制する管制サーバに、前記非常停
止無線とは異なる無線回線からなる自律システム管制用無線を介して接続され、
前記各運搬車両は、
該運搬車両を停止させるための制動装置と、
前記非常停止信号を受信する停止信号受信機と、
前記非常停止信号に基づいて、前記制動装置を駆動させるための駆動制御信号を出力する非常停止制御装置と、
自機が停止したことを示す自機停止信号を前記管制サーバに送信する自律走行通信装置と、を備え、
前記管制サーバは、
前記各運搬車両から前記自機停止信号を受信するサーバ側自律走行通信装置と、
前記自機停止信号に基づいて、停車中の運搬車両と走行中の運搬車両とを表示態様を変えて表示する表示装置と、を備える、
ことを特徴とする運搬車両の非常停止システム。
【請求項2】
前記表示装置は、前記鉱山内を走行する全ての運搬車両から前記自機停止信号を受信すると、全ての運搬車両が停止したことを示すメッセージを更に表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の運搬車両の非常停止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱山用運搬車両の走行停止技術に関する。
【0002】
鉱山現場において土砂や鉱物を搬送する運搬車両を、有人運転によらず管制サーバからの指示に従って自律走行させる技術がある。
【0003】
例えば特許文献1には、「広域作業現場全域の通信を補助設備の配設に伴うコスト増大を招くことなく、しかも監視局にかかる負担が少なく、安全性を損なうことなく十分に行え、さらに送受信装置に故障が生じた場合の確認と異常処理を迅速かつ確実に行えるようにする。」ことを目的として、「第1の通信方式によって、監視局と複数の車両間で少なくとも指示データを送受信する第1の送受信手段を監視局および複数の車両それぞれに設ける。第1の通信方式よりも高速にデータを送受信可能の第2の通信方式によって、これら複数の車両相互間で、車両位置計測手段で計測された位置データを送受信する第2の送受信手段を複数の車両それぞれに設ける。第2の送受信手段により、複数の車両相互間で位置データを送信させることにより、複数の車両それぞれにおいて、相互の位置関係を監視する(要約抜粋)」車両の監視装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−222227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、車両相互間の位置データを送信して相互の位置関係を監視し、車両同士が接近しすぎた場合には車両を停止させて干渉を回避することができるが、例えば、走行路に分離帯があり車両が接近していても干渉しない位置関係にあった場合にも車両が停止してしまうといった不必要な停止動作が起こりうる。鉱山では車両が停止すると運搬車両の稼働効率の低下、ひいては鉱山の生産性の低下につながるので、必要な場合にのみ車両を停止させ、接近していても必要でない場合には車両は停止させたくないという要望がある。特許文献1はこの要望に応えることができない。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、運搬車両の不必要な停止動作は避けつつ、必要な場合にのみ停止させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明は、鉱山内を自律走行する少なくとも一つの運搬車両と当該運搬車両の非常停止を指示するための少なくとも一つの停止操作部材とを、非常停止無線を介して接続した運搬車両の非常停止システムであって、前記停止操作部材は、前記運搬車両に非常停止動作を行わせるための指示を入力する非常停止入力装置と、前記非常停止入力装置に入力された指示に従って、前記運搬車両に非常停止動作を実行させるための非常停止信号を生成する停止信号生成装置と、前記非常停止信号を送信する停止信号送信機と、を備え、少なくとも一つの前記停止操作部材において前記非常停止入力装置に対する前記指示の入力が行われると、前記鉱山内を走行する全ての前記運搬車両に対して前記指示に従って生成された前記非常停止信号が送信され、前記各運搬車両は、当該運搬車両の走行及び稼働を管制する管制サーバに、前記非常停止無線とは異なる無線回線からなる自律システム管制用無線を介して接続され、前記各運搬車両は、当該運搬車両を停止させるための制動装置と、前記非常停止信号を受信する停止信号受信機と、前記非常停止信号に基づいて、前記制動装置を駆動させるための駆動制御信号を出力する非常停止制御装置と、自機が停止したことを示す自機停止信号を前記管制サーバに送信する自律走行通信装置と、を備え、前記管制サーバは、前記各運搬車両から前記自機停止信号を受信するサーバ側自律走行通信装置と、前記自機停止信号に基づいて、停車中の運搬車両と走行中の運搬車両とを表示態様を変えて表示する表示装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運搬車両の不必要な停止動作は避けつつ、必要な場合にのみ停止させる技術を提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る非常停止システムを併用した自律走行システムの概要を示す図である。
図2】携帯停止端末の構成を示す図であって、(a)は外観図、(b)は機能ブロック図を示す。
図3】管制サーバ及びダンプトラックのハードウェア構成図であって、(a)は管制サーバ、(b)はダンプトラックを示す。
図4】非常停止無線の通信形態(単方向通信)を示す図である。
図5】非常停止システムを併用した自律走行システムの動作の流れを示すフローチャートである。
図6】管制サーバにおける画面表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、領域等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。なお、以下の実施の形態において、その構成要素(処理ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。
【0011】
本実施形態は、運搬車両(以下「ダンプトラック」という)の自律走行システムに本発明に係る非常停止システムを併用した例について説明する。図1は、本発明に係る非常停止システムを併用した自律走行システムの概要を示す図である。図2は、携帯停止端末の構成を示す図であって、(a)は外観図、(b)は機能ブロック図を示す。
【0012】
図1に示す自律走行システム1は、鉱山などの採石場で、掘削及び積込作業を行うショベル10から積み込まれた土砂や鉱石等の積荷を搬送するための複数のダンプトラック20と、採石場の近傍若しくは遠隔の管制センタ30に設置された管制サーバ31とを、自律システム管制用無線を介して互いに通信接続して構成される。各ダンプトラック20は、GPS(Global Positioning System)衛星50から測位電波を受信して自車位置を算出する自車位置センサ(図3の車載センサ220に相当)を備え、自車位置を参照しつつ管制サーバ31から受信する自律走行制御信号に従って自律走行する。
【0013】
また、鉱山内ではサービスカー71やドーザ72等の有人車両も走行・稼働する。これらの有人車両も自律システム管制用無線に接続される。そして、有人車両及びダンプトラック20の各車両から管制サーバ31に各車両の作業内容や自車位置情報、走行状態情報(走行中か停止中かを示す情報、また走行速度を示す情報含む)が送信され、これを管制サーバ31が受信をして各車両の管制を行う。
【0014】
各ダンプトラック20は、ショベル10が稼働する積込場や放土場を連結する搬送路60上の目標軌道に沿って走行し、積荷を搬送する。また、搬送路60には駐機場61が接続される。駐機場61においてダンプトラック20に自律車両オペレータ70が搭乗し、その運転操作により走行して、点検、給油サービスを受ける。そして自律車両オペレータ70がダンプトラック20から下車し、自律車両起動動作を行い、ダンプトラック20が自律走行を再開する。自律車両オペレータ70は、鉱山内の全てのダンプトラック20に対して非常停止信号を送信するための携帯停止端末80(停止操作部材に相当する)を所持する。
【0015】
同様に、サービスカー71及びドーザ72等の有人車両に搭乗し運転操作を行う有人車両オペレータも携帯停止端末80を所持、携行する。
【0016】
更に、後述のとおり、管制サーバ31にも全てのダンプトラック20に対して非常停止信号を送信するため管制サーバ非常停止スイッチ(SW)351(図3(b)参照、非常停止入力装置に相当する)を備え、管制サーバ31を監視、操作する管制オペレータも非常停止入力操作ができるように構成される。
【0017】
携帯停止端末80から送信された非常停止信号は、マスタ無線局41や中継局42を含む無線通信回線40を介して、各ダンプトラック20に搭載された非常停止装置250で受信され、非常停止動作が行われる。この無線通信回線40は、管制サーバ31と各ダンプトラック20との間で自律走行制御信号及び各車両の自車位置情報を送受信する自律システム管制用無線(双方向通信)と、上記非常停止信号を携帯停止端末80から各ダンプトラック20に一方向に送信する非常停止用無線(単方向通信)とを含む。
【0018】
図1において、両端の矢印(点線の矢印)は双方向通信による通信形態であることを示している。また片側の矢印(二重線の矢印)は単方向通信による通信形態であることを示している。つまり、携帯停止端末80及びマスタ無線局41間の通信形態は、携帯停止端末80からマスタ無線局41に向かって非常停止信号を送信する、所謂単方向通信である。一方、管制サーバ31とダンプトラック20、サービスカー71及びドーザ72の其々との間の通信は双方向通信である。
【0019】
また、管制オペレータと自律車両オペレータと有人車両オペレータとが互いに意思疎通を図るため、図示を省略するものの音声無線を設置してもよい。
【0020】
携帯停止端末80は、図2(a)に示すように本体81と、その外表面に設けられた非常停止SW82と、本体81の外側に設けられた端末アンテナ83とを備える。本体81は、図2(b)に示すように、非常停止スイッチ(SW)82の押下げを検出すると非常停止信号を生成する制御装置(以下「停止信号生成装置」という)811と、停止信号を無線信号に変換し、端末アンテナ83から送波する停止信号送信機812とを内蔵する。
【0021】
次に図3を参照して、管制サーバ31及びダンプトラック20のハードウェア構成について説明する。図3は、管制サーバ31及びダンプトラック20のハードウェア構成図であって、(a)は管制サーバ、(b)はダンプトラックを示す。
【0022】
図3(a)に示すように、管制サーバ31は、CPU(Central Processing Unit)301、RAM(Random Access Memory)302、ROM(Read Only Memory)303、HDD(Hard Disk Drive)304、I/F305、バス308を含み、バス308を介してCPU301、RAM302、ROM303、HDD304、及びI/F305が互いに接続されて構成される。更にI/F305には表示装置306、入力装置307、サーバ側自律走行通信装置309、管制サーバ非常停止SW351、及び停止信号送信機352が接続される。サーバ側自律走行通信装置309は自律システム管制用無線アンテナ310に接続され、管制サーバ31から自律走行制御信号を送信し、各ダンプトラック20や各有人車両、例えばサービスカー71、ドーザ72から自車位置情報を受信する。停止信号送信機352は非常停止無線アンテナ353に接続され、管制オペレータが管制サーバ非常停止SW351を操作すると、CPU301がその操作を検知して非常停止信号を生成し、停止信号送信機352を介して非常停止無線アンテナ353から送信する。
【0023】
ダンプトラック20は、図3(b)に示すように管制サーバ31からの指示に従って自律走行するための制御を行う自律走行制御装置200と、ダンプトラック20の走行駆動装置210と、GPSやIMUからなる自車位置を算出する自車位置検出センサ及びダンプトラック20の周囲の障害物を検知する障害物検知センサを含む車載センサ220と、管制サーバ31から自律走行制御信号を受信するとともに、自車位置情報を送信するためのダンプ側自律走行通信装置230と、非常停止動作を行う非常停止装置250とを含む。
【0024】
走行駆動装置210は、制動装置としてのリターダブレーキ(回生ブレーキ)211a及び機械ブレーキ211bと、ダンプトラック20の操舵角を変更するための操舵装置212と、ダンプトラック20を加速させるための加速装置213とを含む。
【0025】
自律走行制御装置200は、CPU201、RAM202、ROM203、HDD204、I/F205、及びバス208を含む。そして、CPU201、RAM202、ROM203、HDD204、及びI/F205がバス208を介して接続されて構成される。そして、I/F205を介して車載センサ220から自車位置情報や障害物検知情報を取得し、ダンプ側自律走行通信装置230を介して管制サーバ31から受信した自律走行制御信号を基に、走行駆動装置210に対して駆動制御信号、例えば制動駆動信号、操舵制御信号、及び加速制御信号を出力する。
【0026】
非常停止装置250は、大きくは非常停止信号を受信して非常停止動作を実行する受信系と、非常停止信号を送信する送信系とを含む。受信系に係る構成として、非常停止アンテナ256から非常停止信号を受信する停止信号受信機251と、受信した非常停止信号を基に、ダンプトラック20の制動装置、より詳しくはリターダブレーキ211a及び機械ブレーキ211bに対して制動動作を行わせるための制動駆動信号を生成、出力する非常停止制御装置252を備える。また送信系に係る構成として、非常停止信号の入力操作を受け付けるダンプトラック非常停止SW253と、その入力操作に応動して非常停止信号を生成する停止信号生成装置254と、非常停止信号を非常停止アンテナ256から無線送信するための停止信号送信機255とを備える。ダンプトラック非常停止SW253は主に自律車両の起動操作を行う自律車両オペレータが操作する。なお、自律車両オペレータが携帯停止端末80を常に携行する場合、非常停止装置250の送信系に関する構成は必須ではない。
【0027】
自律走行制御装置200は、管制サーバ31からの自律走行制御信号に従って通常の制動動作を行う場合には、リターダブレーキ211aに対する制動駆動信号を出力し、ダンプトラック20が十分に減速して停止直前に機械ブレーキ211bに対する制動駆動信号を出力する。これにより、機械ブレーキ211bの構成部品、例えばブレーキパッドなどの消耗を低減させつつ、ダンプトラック20を停止させる。
【0028】
一方、非常停止装置250が非常停止動作を実行する場合は、非常停止制御装置252からリターダブレーキ211a及び機械ブレーキ211bの双方に対して制動駆動信号を出力する。これにより、ダンプトラック20に双方のブレーキからの制動力が働くので、通常の制動動作よりも短い制動距離で停止する。なお、本実施形態では、双方のブレーキに対してほぼ同時に制動駆動信号を出力するが、同一の作動条件の下では機械ブレーキ211bはリターダブレーキ211aよりも制動力が大きいので、機械ブレーキ211bのみに制動駆動信号を出力してもよい。つまり、本実施形態における非常停止動作とは、通常の自律走行制御で用いる制動力よりも相対的に大きな制動力をダンプトラック20に作用させるための停止動作であり、その態様はリターダブレーキ211aと機械ブレーキ211bの同時併用に限定されず、タイミングをずらした併用、また機械ブレーキ211b単体の使用でもよい。
【0029】
次に図4を参照して、非常停止無線の通信形態について説明する。図4は、非常停止無線の通信形態(単方向通信)を示す図である。
【0030】
図4に示すように、非常停止信号を送信する要素として、少なくとも一つの携帯停止端末80、管制サーバ非常停止SW351、及びダンプトラック非常停止SW253があり、これらがマスタ無線局41に無線接続される。図4は、一例として4つの携帯停止端末80a、80b、80c、及び80dのいずれか一つからマスタ無線局41に非常停止信号を送信すると、マスタ無線局41が6台のダンプトラック20a、20b、20c、20d、20e及び20fの其々に搭載された非常停止装置250a、250b、250c、250d、250e、及び250fの全てに対して非常停止信号をブロードキャスト送信する構成を示すが、携帯停止端末及びダンプトラックの数は図4の例に限定されない。
【0031】
更に管制サーバ非常停止SW351、又はダンプトラック非常停止SW253から非常停止信号が送信されるとマスタ無線局41が一旦受信し、その非常停止信号をブロードキャスト送信する。そして、全ての非常停止装置250が非常停止信号を受信し、各非常停止装置250が非常停止動作を自機が搭載されたダンプトラック20に対して行うことにより、全ダンプトラック20が非常停止する。携帯停止端末80、管制サーバ非常停止SW351、及びダンプトラック非常停止SW253からマスタ無線局41を介してダンプトラック20(非常停止装置250)への通信形態は、非常停止信号を一方向に送出するだけでよく単方向通信により構成されれば足りる。
【0032】
マスタ無線局41は、いずれかの携帯停止端末80から非常停止信号を受信するとその非常停止信号を増幅又は電波強度を強くして、鉱山内の全ダンプトラック20に非常停止信号を送信する。また、マスタ無線局41から中継局42を介して非常停止信号を送信し、非常停止装置250が受信してもよいし、携帯停止端末80から直接非常停止信号を受信してもよい。
【0033】
非常停止無線で用いる周波数帯やチャンネルは、自律システム管制用無線で用いる周波数帯やチャンネルとは異なるものを用いることで、自律走行制御信号の送受信とは独立して非常停止信号の送受信が行われる。また、各ダンプトラック20に搭載される車載カメラや、搬送路60沿いに設置され監視カメラの画像を管制サーバ31に伝送するカメラシステム無線を自律システム管制用無線及び非常停止無線と併設する場合には、カメラシステム無線も上記二つの無線とは異なる周波数帯やチャンネルを用いて独立して構成する。この場合、画像データは自律走行制御信号や非常停止信号よりもデータ量が大きいため、上記二つのシステムよりも広周波数帯の無線回線を用いてもよい。
【0034】
次に図5を介して、本実施形態に係る非常停止システムを自律走行システムに併用したときの動作の流れについて説明する。図5は、非常停止システムを併用した自律走行システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【0035】
ダンプトラック20の自律走行を開始する前に、各非常停止SWが正常に動作しているかの確認を行う(S501)。具体的には、各携帯停止端末80、管制サーバ31、及び非常停止装置250から順番に接続確認用信号を送信し、マスタ無線局41が各機から送信された接続確認用信号を受信したか、又は全ダンプトラック20のそれぞれに搭載された非常停止装置250が接続確認用信号を受信したかをチェックする。ここでいう接続確認用信号は、非常停止信号と同じものを用いてもよいし、異なる信号を用いてもよい。本ステップではまだダンプトラック20が自律走行をしていないので、接続確認用信号として非常停止信号と同じものを用いても、ダンプトラック20が実際に非常停止を行うことはないので、機械ブレーキ211bの摩耗を防ぎつつ、チェックすることができる。
【0036】
また別態様として、各携帯停止端末80、管制サーバ31、及び非常停止装置250に接続確認用信号の入力操作部材を非常停止SWとは別に設け、非常停止信号とは異なる接続確認用信号を送信してもよい。この場合、接続確認用信号を受信した非常停止装置250の非常停止制御装置252は、制動装置に対して駆動制御信号を出力しない。なお、接続確認用信号を受信したことを視認できるよう、非常停止装置250に確認通知装置、例えばLEDを点灯させる装置を設けてもよい。
【0037】
全ての非常停止SWが機能していることが確認できると(S502/Yes)、自律車両オペレータは携帯停止端末80を所持してダンプトラック20の自律走行システムを起動させ、各ダンプトラック20が自律走行を開始する(S503)。
【0038】
一つでも機能していない非常停止SWが見つかると(S502/No)、機能していない非常停止システムの要素を除いて自律走行システムを起動して自律走行させる(S504)。より詳しくは、非常停止信号が受信できない非常停止装置250が一つでも発見されると、そのダンプトラック20は非常停止装置250が復旧されるまで自律走行させないことにより、万一、非常停止SWを操作しなければならない状況が発生したときには、全ダンプトラック20を非常停止させることができる。また、非常停止信号が送信できない携帯停止端末80があれば、それを用いないで自律走行を開始する。
【0039】
ダンプトラック20が自律走行中に、少なくとも一つの携帯停止端末80、管制サーバ31、又は非常停止装置250において非常停止SWが押し下げられると(S505/Yes)、非常停止信号が送信され、マスタ無線局41が非常停止信号をブロードキャスト送信を行い、全ての非常停止装置250が受信して全ダンプトラック20が非常停止する(S506)。非常停止SWが押し下げられない限り(S505/No)、ダンプトラック20は管制サーバ31からの自律走行制御信号に従って、自律走行を継続する(S503)。
【0040】
各ダンプトラック20は非常停止すると、自車両が停止したことを車載センサ220が検知し、ダンプ側自律走行通信装置230から自車両が停止したことを示す自機停止信号を送信する(S507)。管制サーバ31は、サーバ側自律走行通信装置309を介して自機停止信号を受信し、表示装置306の管制画面にその旨を表示する。管制サーバ31が全ダンプトラック20から自機停止信号を受信すると、全ダンプトラック20が停止したことを管制オペレータが確認できる(S508)。
【0041】
図6に管制サーバ31における画面表示例を示す。表示装置306は管制画面601において、搬送路60上を走行する全てのダンプトラック20が停止し(停止中の車両は網掛けで図示)、有人車両としてのサービスカー71、ドーザ72及びショベル10が稼働又は走行中である(稼働・走行中車両は白抜きで図示)ことを、表示態様を変えて表示する。更に管制サーバ31は、管制対象としている全てのダンプトラック20が停止したと判断すると、そのことを示すメッセージ602を管制画面601に付加して表示してもよい。
【0042】
本実施形態によれば、自律走行車両であるダンプトラック20を非常停止させたい状況が発生した場合に、ダンプトラック20の位置や他車両との距離に関らず、全ダンプトラック20を非常停止させることができる。一方、仮にダンプトラック20に有人車両やオペレータが接近したとしても、不必要に停止することが無い。
【0043】
また非常停止させるための非常停止無線は、自律システム管制用無線とは独立した無線回線を用いることで、自律走行システムに不具合があった場合にもそれとは独立して非常停止信号の送受信が行える。
【0044】
更に管制サーバ31が、ダンプトラック20が停止したことを表示することにより、管制オペレータはダンプトラック20が全停止した状況を確認することができる。
【0045】
上記実施形態は、本発明を限定する趣旨ではなく、様々な変更態様も本発明に含まれる。例えば、管制サーバ31に停止信号受信機を接続し、マスタ無線局41から非常停止信号を受信してその結果を表示装置306の管制画面に表示させてもよい。これにより、ダンプトラック20が停止して後ではなく、非常停止信号が発せられた時点により近い時点で、管制オペレータに非常停止信号が送信された事実を通知することができる。更に、管制サーバ31が非常停止信号を受信すると、全ダンプトラック20に対して非常停止動作と同様の動作を行わせるための自律走行制御信号を送信してもよい。これにより、非常停止動作をさせるための信号を二重の無線回線、すなわち、非常停止無線を経由した非常停止信号、及び自律システム管制用無線を経由した非常停止動作を指示するための自律走行制御信号の双方で送信することができ、より確実に各ダンプトラック20に対して非常停止動作を行わせることができる。
【符号の説明】
【0046】
1:非常停止システムを併用した自律走行システム
20:ダンプトラック(運搬車両)
31:管制サーバ
80:携帯停止端末
200:車載端末装置
250:非常停止装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6