(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402086
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】魚釣用両軸受型リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/0155 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
A01K89/0155
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-214992(P2015-214992)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-79701(P2017-79701A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 雄一
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−044990(JP,A)
【文献】
特開2013−070651(JP,A)
【文献】
特開2009−089665(JP,A)
【文献】
特開平11−169036(JP,A)
【文献】
実開平03−095771(JP,U)
【文献】
特開2014−103935(JP,A)
【文献】
特開2011−010579(JP,A)
【文献】
特開2007−135417(JP,A)
【文献】
特開2007−228859(JP,A)
【文献】
特開2003−319742(JP,A)
【文献】
特開2007−116912(JP,A)
【文献】
特開2011−192477(JP,A)
【文献】
実開平02−095416(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0178868(US,A1)
【文献】
韓国登録実用新案第20−0473502(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 − 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、
前記スプールを回転操作するハンドルと、
前記ハンドルの軸上に回転可能に設けられたドラグ機構と、
前記スプールの軸のハンドル側の端部に当接し、押圧を調節するキャップ状に形成された調節部材を備え、前記キャップ状の調節部材の回転によりスプールの回転に制動力を付与するキャストコントロール機構と、を有し、
前記リール本体のハンドル側の側板には、前記調節部材の筒状側壁の径方向外方を覆うガード部材が配設されていることを特徴とする魚釣用両軸受型リール。
【請求項2】
前記調節部材は、周縁部に凹凸が形成された天面を有することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用両軸受型リール。
【請求項3】
前記ガード部材は、前記調節部材との対向面に周方向に亘って形成された凹溝を有しており、
前記凹溝と前記調節部材の間には、Oリングが配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚釣用両軸受型リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転でリール本体の側板間に支持されたスプールを回転駆動し、釣糸をスプールに巻回する魚釣用両軸受型リールに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用両軸受型リールには、スプールの回転を実釣条件に応じて調節するために、スプール軸の回転を制動するキャストコントロール機構(制動機構)を備えたものが数多く存在する。初心者は仕掛け投擲時のノントラブルを目的とし、スプールに強力な制動力を必要とするのに対し、上級者は飛距離を稼ぐことを目的としてスプールの制動力を抑えたり、あるいは仕掛けの重さに応じて制動力を調節したりする。このキャストコントロール機構としては、スプール軸の端部に摩擦プレートを配設し、摩擦プレートへの押圧を調節部材によって調節する仕組みが知られている。
【0003】
このようなキャストコントロール機構の調節部材は、実釣時における操作性、リールのホールド性等を考慮して容易に操作できることが望ましく、特許文献1に開示されているように、リール本体のハンドル側の側板に配設されているのが一般的である。すなわち、調節部材は摘んで回転操作される部材であるため、反ハンドル側の側板に設置すると、リールのホールド性が低下すると共に、反ハンドル側の側板をホールドした際に触れてしまい誤操作の原因にもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−319742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、魚釣用両軸受型リールは、仕掛け投擲後スプールから釣糸が繰り出された際に、釣糸切断を防止するためのドラグ機構を備えており、このドラグ機構の調節部材(スタードラグ)もまた、操作性を考慮して、リール本体のハンドル側の側板に設けられている(特許文献1の
図2及び
図3)。図に示されたように、スタードラグとキャストコントロール機構は近接配置されているため、スタードラグを回転操作する指が、キャストコントロール機構の調節部材に接触してしまうことがある。また、仕掛け投擲時等に、リールを握持する手の指や付け根部分が、前記キャストコントロール部材の調節部材に接触してしまうことがある。
【0006】
上記した理由によって、キャストコントロール機構の調節部材に指や手の付け根部分が誤って接触してしまうと、スプールの支持及び回転状態の設定条件等が変更されて誤動作に繋がることがある。また、このような誤動作の発生を恐れて意識するあまり、スタードラグの操作性やリールのホールド性が低下する等の課題がある。
【0007】
さらに、キャストコントロール機構の調節部材はキャップ状の回転部材であって、その筒状側壁の下部は開口となっているため(特許文献1の
図4)、側板支持部との間から異物、塵、液体(海水)等が侵入、付着しやすい課題もある。これにより、前記調節部材の回転性の低下、異物等の侵入による不具合が引き起こされる。
【0008】
本発明は、上記した事情に着目してなされたものであり、ホールド性を損なうことなくキャストコントロール機構の誤操作を防止し、内部に異物等が侵入し難い調節部材を備えた魚釣用両軸受型リールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、リール本体の側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、前記スプールを回転操作するハンドルと、前記ハンドルの軸上に回転可能に設けられたドラグ機構と、前記スプールの軸のハンドル側の端部に当接し、押圧を調節するキャップ状に形成された調節部材を備え、前記キャップ状の調節部材の回転によりスプールの回転に制動力を付与するキャストコントロール機構と、を有し、前記リール本体のハンドル側の側板には、前記調節部材の筒状側壁の径方向外方を覆うガード部材が配設されていることを特徴とする。
【0010】
上記した構成では、ハンドル側の側板に、キャストコントロール機構の調節部材と、ドラグ機構の調節部材(スタードラグ)とを設けていることからリール本体のホールド性の向上が図れるとともに、キャストコントロール機構の調節部材の筒状側壁の径方向外方をガード部材で覆ったことから、スタードラグを操作する際に、誤ってキャストコントロール機構の調節部材に触れることが防止され、誤動作することはない。また、ガード部材を設けたことにより、前記調節部材の開口端から異物、埃、液体等が侵入し難くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の魚釣用両軸受型リールによれば、ホールド性を損なうことなく、キャストコントロール機構の誤操作を防止可能となる。また、本発明によれば、キャストコントロール機構の調節部材内への異物等の侵入を抑制することができ、不具合の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る魚釣用両軸受型リールの一実施形態を示す平面図。
【
図2】
図1に示す魚釣用両軸受型リールの部分断面平面図。
【
図3】キャストコントロール機構部分を拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1〜
図3は、本発明に係る魚釣用両軸受型リール1の実施形態を示している。
図1および
図2に示されるように、本実施形態に係る魚釣用リール1のリール本体1Aは、左右フレーム2a,2bと、これら左右フレーム2a,2bに装着される左右カバー3a,3bとを備えた左右側板4A,4Bを有しており、前記左右フレーム2a,2bは、公知のように複数の支柱を介して一体化されている。
【0014】
前記左右側板4A,4B間には、スプール軸5が軸受6a,6bを介して回転可能に支持されており、このスプール軸5には、釣糸が巻回されるスプール5aが一体に取り付けられている。
【0015】
前記右フレーム2bおよび右側板3bには軸受8を介してハンドル軸9が回転可能に支持されており、ハンドル軸9の端部にはハンドル9aが装着されている。この場合、ハンドル9aを回転操作すると、その操作力は、駆動力伝達機構10を介してスプール軸5に伝達され、スプール5aを回転駆動するようになっている。
【0016】
前記駆動力伝達機構10は、ハンドル軸9に回転可能に装着される駆動歯車11と、前記スプール軸5上に軸方向に摺動可能に保持され、駆動歯車11と噛合するピニオンギア13とを備えており、ハンドル9aの回転操作をスプール5aに伝達する。なお、ピニオンギア13については、スプール軸5と同軸上で分断された支軸5cに保持された構成であるが、公知のようにスプール軸5に摺動可能に支持しても良い。
【0017】
また、右フレーム2bと右側板3bとの間には、駆動力伝達機構10の駆動力の伝達を継脱する公知のクラッチ機構15と、魚釣時にスプール5aから釣糸が繰り出された際にスプール5aにドラグ力を付与する公知のドラグ機構20とが収容されている。
【0018】
前記クラッチ機構15は、ピニオンギア13に係合しピニオンギア13を軸方向に摺動させるクラッチプレート16と、スプール5aの後方側で左右側板4A,4B間に配設されたクラッチ操作部材17とを備えており、クラッチ操作部材17を押し下げ操作するとクラッチプレート16を駆動してピニオンギア13を軸方向に摺動させ、クラッチOFFにする。また、この状態でハンドル9aを巻き取り操作することで、公知の自動復帰機構(図示せず)を介してクラッチONにする。
【0019】
前記ドラグ機構20は、駆動歯車11に摩擦係合する制動板21と、制動板21に対して押圧力を付与する調節部材(スタードラグ)22を備えている。スタードラグ22は、ハンドル9aの近傍に設けられており、回転操作することで前記制動板21を介して駆動歯車11のハンドル軸9に対する摩擦力(ドラグ力)を調節する。なお、ハンドル軸9には、逆転防止機構(一方向クラッチ)23が配設されており、ハンドル軸9(ハンドル9a)の釣糸繰出し方向の逆回転を阻止している。
【0020】
前記スプール5aの前側には、レベルワインド機構50が設けられている。このレベルワインド機構50は、釣糸が挿通される釣糸ガイド51を備えており、ハンドル9aを巻き取り操作した際、前記駆動歯車11に噛合する公知のギアトレインを介して釣糸ガイド51を左右に往復動させ、回転するスプール5aに対して釣糸を均一に平行巻きする。
【0021】
また、本実施形態の魚釣用両軸受型リール1は、スプール軸5の一側である右側板4B側(ハンドル側の側板)に、スプール軸5の回転に制動力を与えるキャストコントロール機構40を備えている。キャストコントロール機構をハンドル側の側板に配設することによって、実釣時における操作性、リールのホールド性等を低下させずに、キャストコントロール機構40を操作することが出来る。
【0022】
図3に拡大して示されるように、キャストコントロール機構40は、スプール軸5の端面に当接する支軸5cのハンドル側の端部(端面)5bに当接する摩擦プレート41と、この摩擦プレート41を覆うように配設され、摩擦プレートと一体回転する調節部材43とを備えている。前記調節部材43は有底筒状のキャップ状に形成されており、ハンドル側に天面43bが位置するように配設され、筒状側壁43aがハンドルと反対側(スプール側)に伸びている。
【0023】
前記調節部材43は、前記右カバー3bに一体形成された筒状突起3dの先端側に螺合結合されており、筒状突起3d内に前記支軸5cの右端部側が挿通されている。この筒状突起3dの内面には、軸受14が配設されており、前記ピニオンギア13を回転かつ摺動可能に支持している。
【0024】
前記筒状突起3dの外周面には、前記調節部材43の筒状側壁43aとの対向面に周方向に亘って凹溝が形成されており、この凹溝にOリング47が配置されている。前記Oリング47によって調節部材43の内側や支軸5cの周囲等への異物(塵等)、液体(海水等)の侵入が防止され、前記調節部材43の回転性の低下、前記摩擦プレート41、支軸5c等の不具合発生を防止することが可能となる。
【0025】
前記調節部材43を摘まんで回転操作すると、前記摩擦プレート41は、調節部材43の螺合結合によりスプール側に移動し、それに当接する前記支軸5cの端部5bを押圧する。この押圧による摩擦力によって、支軸5cを介して前記スプール軸5の回転には制動力が付与される。
【0026】
前記右カバー3bには、前記調節部材43の筒状側壁43aの下部(スプール5a側の先端側)の径方向外方を、隙間を介して覆うようにガード部材45が固定されている。前記ガード部材45は断面L字状であって、底壁45aと環状の側壁45bを有し、底壁45aを右カバーの表面に当て付け、留め具46を圧入することによって右カバー3bに固定されている。なお、本実施形態のガード部材45は、右カバー3bと別体で構成されているが、右カバー3bと一体形成されていてもよい。また、本実施形態のように別体の場合、右カバーに対する固定方法については適宜変形することが可能である。
【0027】
前記ガード部材45の側壁45bは、前記筒状側壁43aの先端側の外周を覆うことによって、調節部材43の側壁43aに指や手の付け根部分が誤って接触し、回転操作されることを回避する役割を果たす。すなわち、
図1及び
図2に示されるように、前記調節部材43は、前記スタードラグ22に近接した位置にあるため、スタードラグ22を回転操作する指が調節部材43に接触して誤操作しやすい状況にあるが、ガード部材45によってそのような誤操作を回避している。尚、調節部材43の筒状側壁43aをガード部材45内に配置することで、調節部材43が右カバー3b側に近づき、その分、スタードラグ22から離れるので更に誤操作し難くなる。
【0028】
本実施形態では、前記ガード部材45の側壁45bは、周方向に亘って360度形成されており、前記筒状側壁43aの先端から略中央部までを覆うことで効果を最大限発揮できる形態となっているが、必ずしも360度形成されている必要はない。例えば、前記ガード部材45の側壁45bは、操作部材43の側壁43aにおいて、指や手の付け根が接触しやすい範囲等、一部範囲のみに形成されていても良い。
【0029】
前記ガード部材45は、
図3に示すように、下端(基端)から上端(先端)までの距離をL1、上端(先端)から前記調節部材43の天面43bの露出面までの距離をL2とすると、L1はL2より大きい構成であることが好ましい。すなわち、上述したように、前記ガード部材45は前記筒状側壁43aのスプール5a側の外周部(先端から略中央部)を覆うことによって、前記筒状側壁43aに対する不測の接触を回避する役割を果たすため、L1がL2以下となると、前記筒状側壁43aを覆う範囲が小さすぎて、ガード部材45を配設した利点が薄れてしまうためである。なお、本実施形態においてはL1:L2=2:1程度に設定されている。
【0030】
前記調節部材43の天面43bには、周縁部に、360°に亘って連続する凹凸43cを形成することが望ましい。上記したように、前記筒状側壁43aはガード部材45によって覆われ、調節部材43における露出部分が減少し、これによって調節部材43をつまんで回転操作しにくくなってしまう。このため、調節部材43の天面43bの周縁部に連続的に凹凸43cを形成することによって、回転操作の操作性低下を改善することが出来る。なお、本実施形態では凹凸が形成されているが、調節部材43をつまんで回転操作しやすくなる形態であれば凹凸形状に限定されない。
【0031】
前記ガード部材45には、前記調節部材43との対向面に周方向に亘って凹溝45cが形成されており、この凹溝45cと前記調節部材43との間にOリング49が配設されている。前記Oリング49によって、ガード部材45の内側に異物が混入して貯留される問題を防止することができ、また、前記Oリング47に加えて更にOリング49が別途配設されることによって、調節部材43の内側やスプール軸5の周囲等への異物(塵等)、液体(海水等)の侵入を二重のOリング47、49によって、より確実に防げるようになる。
【0032】
以上のように、上述した魚釣用両軸受型リール1によれば、キャストコントロール機構40をハンドル側の側板3bに配設することによってホールド性を損なわずに済み、ガード部材45を設けることによって、近接配置された前記スタードラグ22を回転操作する指等が、キャストコントロール機構40の操作部材43に誤って接触することを防止可能となる。また、キャストコントロール機構40の調節部材43内への異物等の侵入を抑制することができ、不具合の発生を抑制できる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上記した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、ガード部材の形状は、上記した断面L字状の形状に限定されることはなく、固定方法等に応じて任意に設定できる。また、上述した実施形態では、Oリング47、49を設置するための凹溝は、それぞれ調節部材43の側壁43aに対向する筒状突起3d、ガード部材45の側壁45bに形成されているが、調節部材の側壁43aに形成されていても良い。
【符号の説明】
【0034】
1 魚釣用両軸受型リール
1A リール本体
4A,4B 左右側板
5 スプール軸
5a スプール
20 ドラグ機構
40 キャストコントロール機構
41 摩擦プレート
43 調節部材
43a 筒状側壁
43b 天面
47、49 Oリング