特許第6402094号(P6402094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402094
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】原子炉の燃料交換方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/02 20060101AFI20181001BHJP
   G21C 19/18 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   G21C19/02 F
   G21C19/18 A
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-510294(P2015-510294)
(86)(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公表番号】特表2015-517654(P2015-517654A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】US2013036059
(87)【国際公開番号】WO2013165666
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2016年2月12日
【審判番号】不服2017-13819(P2017-13819/J1)
【審判請求日】2017年9月18日
(31)【優先権主張番号】13/461,821
(32)【優先日】2012年5月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ハークネス、アレクサンダー、ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】カミンズ、ウィリアム、エドワード
【合議体】
【審判長】 森 竜介
【審判官】 居島 一仁
【審判官】 野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−105899(JP,U)
【文献】 特開平10−54896(JP,A)
【文献】 特表2000−506978(JP,A)
【文献】 特開昭62−185198(JP,A)
【文献】 特開昭59−176697(JP,A)
【文献】 特開2004−69354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C19/02-19/24
G21C13/00
G21C15/18
G21F7/005, 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ(30)付きの開放上端を有し、複数の燃料集合体を含む炉心(14)と炉心上方に支持された上部炉心構造物(24)とを収容する、原子炉キャビティ内で支持された原子炉容器(10)と、当該原子炉容器の開放上端を封止するための相手フランジ(52)を有する蓋(28)とを備える原子炉の燃料交換方法において、
当該原子炉の燃料交換方法の実行期間中、当該原子炉キャビティの原子炉容器(10)を囲む部分を乾燥状態に保つステップと、
原子炉容器蓋(28)を取り外すステップと、
原子炉容器蓋(28)を原子炉容器(10)上方の経路外の第1の貯蔵場所に配置するステップと、
当該原子炉キャビティの乾燥状態に保たれた部分を通して上部炉心構造物(24)を気中で吊り上げて原子炉容器(10)から取り出し、原子炉容器上方の経路外の第2の貯蔵場所(68)に移すステップと、
開放下端および開放上端を有する円筒形タンク(40)を、原子炉容器フランジの上に、実質的に原子炉容器フランジが当該円筒形タンクを支持するように着脱自在に設置するステップと、
円筒形タンク(40)の下端を原子炉容器(10)に対して、且つ円筒形タンク側面の貫通部(44)を使用済燃料プール(46)につながれた燃料交換キャナル(48)に対して、それぞれ着脱自在に封止するステップと、
原子炉容器(10)内の原子炉冷却材の液位を、円筒形タンク(40)が少なくとも部分的に満たされるように使用済燃料プール(46)内の冷却材と実質的に同じ液位に至るまで上昇させるステップと、
燃料交換キャナル(48)を開放するステップと、
少なくとも部分的に円筒形タンク(40)上方に支持された燃料交換機(56)を使って、貫通部(44)および燃料交換キャナル(48)を通して炉心(14)内の幾つかの燃料集合体を使用済燃料プール(46)内の貯蔵場所(60)に移送するステップと
を含み、
当該原子炉キャビティの乾燥状態に保たれた部分を通して気中で行う上部炉心構造物(24)の吊上げステップが、
下端が開放されたベルの形状を成す放射線遮蔽体(64)を、原子炉容器(10)の開放上端の上方で支持するステップと、
上部炉心構造物(24)の少なくとも一部の上に位置するように、放射線遮蔽体(64)を実質的に原子炉容器フランジに降ろすステップと、
放射線遮蔽体(64)内で上部炉心構造物(24)を持ち上げるステップと、
放射線遮蔽体(64)をその内部の上部炉心構造物(24)とともに吊り上げて第2の貯蔵場所(68)に移すステップと
を含む方法。
【請求項2】
上部炉心構造物(24)を放射線遮蔽体(64)から第2の貯蔵場所(68)の遮蔽スタンドに降ろすステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遮蔽スタンドが冷却材プール内に位置する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
放射線遮蔽体(64)内に空気を導入するステップと、
放射線遮蔽体(64)から排出する前に空気をろ過するステップと、
ろ過後に放射線遮蔽体(64)から空気を排出するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上部炉心構造物(24)の吊上げステップを原子炉建屋の主クレーン(50)によって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
燃料交換機(56)を原子炉容器(10)から支持するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
燃料交換機(56)を円筒形タンク(40)の頂部から支持するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
原子炉冷却材液位を上昇させるステップを既存の原子炉容器(10)の貫通部を用いて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
円筒形タンク(40)の下端を封止するステップにおいて、原子炉容器フランジ(30)に対して封止がなされる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に原子炉の燃料交換の方法に関し、詳細には、コンパクトな格納容器を備えるモジュール式小型炉の燃料交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽水炉を用いた原子力発電所は、原子炉の燃料交換のために定期的に動作不能にする必要がある。新しい燃料集合体は、プラントに搬入された後、それ以前に原子炉から取り出されている使用済燃料集合体があればそれと一緒に、燃料貯蔵建屋で一時的に貯蔵される。燃料交換のための動作不能時に、原子炉内の燃料集合体の一部は燃料貯蔵建屋に取り出される。燃料集合体の第2の部分は原子炉内の1つの支持場所から別の炉心支持場所に移される。取り出された燃料集合体に代わって、新しい燃料集合体が燃料貯蔵建屋から原子炉内に移される。これらの移動は詳細なシーケンスプランに従って行われ、炉心設計者によって用意された全体的な燃料交換プランに従ってそれぞれの燃料集合体が所定の場所に配置される。
【0003】
燃料交換活動は原子力プラントを出力運転に戻すまでのクリティカルパス上にあることも多く、そのため、この作業のスピードは発電所所有者にとって重要な経済的検討事項の1つとなっている。さらに、プラント設備や燃料集合体は高価なものであり、燃料集合体または燃料移送設備の不適切な取扱いによって損傷や無用な放射線被曝が引き起こされることがないように注意を払わなければならない。炉心の安全で経済的な運転はそれぞれの燃料集合体が正しい位置にあるかどうかにかかっているため、この作業ではその精度もまた重要である。
【0004】
典型的な加圧水型原子炉は、18か月から24か月毎に燃料を交換する必要がある。燃料交換の際には、原子炉が分解され、炉心を装荷していた燃料が取り出されて、典型的には使用済燃料プールとして知られる貯蔵場所に移される。従来型の加圧水型原子炉では、燃料へのアクセスは、原子炉容器蓋および上部炉内構造物を取り外すことによって行われる。これらの構成機器は、原子炉容器フランジ上方の作業デッキにより支持された燃料交換専用クレーンで燃料集合体を一度に1体ずつ原子炉容器から燃料移送キャナルに移動する間、格納容器建屋内で貯蔵される。移送キャナルは、プラント内の使用済燃料貯蔵区域と原子炉格納容器建屋とをつないでいる。燃料は、移送キャナルを通して移動させる前に横向きにされる。燃料を再び原子炉容器に装荷する際には、これと逆のプロセスが行われる。モジュール式小型炉プラント用に開発が進められている一体型原子炉を含め、一部の加圧水型原子炉の物理的構成では、燃料交換のためのこの従来型アプローチをそのまま適用することができない。
【0005】
図1および2はそのようなモジュール式小型炉を示している。図1に、圧力容器およびその炉内機器を見せるために一部を切り取った原子炉格納容器の斜視図を示す。図2は、図1に示した圧力容器の拡大図である。加圧器22は原子炉圧力容器蓋28の上部に一体化されているため、別個に設ける必要がない。高温側ライザー16は、炉心14から、高温側ライザー16を取り囲む蒸気発生器18へと一次冷却材を導く。原子炉圧力容器10の周囲には、上部炉内構造物24の上端近くの高さで幾つかの冷却材ポンプ26が円周方向に間隔をあけて配置される。原子炉冷却材ポンプ26は、水平に取り付けられた軸流キャンドモータポンプである。炉心14および上部炉内構造物24は、それぞれのサイズは別にして、ペンシルベニア州クランベリー郡区に所在のウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニーLLCから供給されるAP1000(登録商標)原子炉の対応する構成要素と実質的に同じである。上記から、容器フランジ30の部位より十分に上方まで原子炉を冠水させ、格納容器を貫通する移送キャナル32を介して水面下で燃料集合体を使用済燃料プールに移送するという従来型の燃料交換方法を用いることは、この種の格納容器およびコンパクトな設計の原子炉にあっては実用的でないことは明らかであろう。
【0006】
そのため、コンパクトで一体型設計の原子炉に対応できる新しい燃料交換方法が望まれる。
【0007】
さらに、そうしたコンパクトな格納容器と一体型設計の原子炉において、移送される構成機器を損傷させたり、無用な放射線被曝を引き起こしたりすることなしに、効率的に燃料交換を行なうことができる方法が望まれる。
【発明の概要】
【0008】
上記およびその他の目的は、フランジ付きの開放上端を有する原子炉容器を備える原子炉の燃料交換方法であって、原子炉キャビティ内で支持された原子炉容器が複数の燃料集合体を含む炉心と炉心上方に支持された上部炉心構造物とを収容する原子炉の燃料交換方法によって達成される。相手フランジ付きの原子炉容器蓋は原子炉容器の開放上端を封止する。燃料交換方法は、当該燃料交換方法の実行期間中、原子炉キャビティの原子炉容器を囲む部分を乾燥状態に保つステップと、原子炉容器蓋を取り外すステップと、蓋を原子炉容器上方の経路外の第1の貯蔵場所に配置するステップとを含む。次いで、原子炉キャビティの乾燥状態に保たれた部分を通して上部炉心構造物を気中で吊り上げて原子炉容器の外に出し、原子炉容器上方の経路外の第2の貯蔵場所に移す。開放下端および開放上端を有する円筒形タンクを、原子炉容器フランジの上に、実質的に原子炉容器フランジが円筒形タンクを支持するように着脱自在に設置し、円筒形タンクの下端を原子炉容器フランジに着脱自在に封止する。円筒形タンク側面の貫通部は、格納容器の外にあって原子炉建屋内にある使用済燃料プールと格納容器内部とを連通する燃料交換キャナルに対して着脱自在に封止される。原子炉容器内の原子炉冷却材液位を、円筒形タンクが少なくとも部分的に満たされるように使用済燃料プール内の冷却材と実質的に同じ液位に至るところまで上昇させる。その後、燃料交換キャナルを開放し、円筒形タンク上方に支持された燃料交換機を使って、貫通部および燃料交換キャナルを通して幾つかの燃料集合体を炉心から使用済燃料プール内の貯蔵場所に移送する。
【0009】
原子炉キャビティの乾燥状態に保たれた部分を通して気中で行う上部炉心構造物の吊上げステップは、下端が開放されたベルの形状を成す放射線遮蔽体を、原子炉容器の開放上端の上方で支持するステップと、上部炉心構造物の少なくとも一部の上に位置するように、放射線遮蔽体を実質的に原子炉容器フランジに降ろすステップを含む。その後、上部炉心構造物を放射線遮蔽体内で持ち上げ、放射線遮蔽体をその中の上部炉心構造物とともに吊り上げて第2の貯蔵場所に移す。好ましくは、上部炉心構造物の吊上げステップは、上部炉心構造物を放射線遮蔽体から第2の貯蔵場所の遮蔽スタンドに降ろすステップをさらに含む。遮蔽スタンドは冷却材プール内に位置するのが望ましい。別の実施形態では、放射線遮蔽体内に空気を導入し、放射線遮蔽体から排出する前にろ過し、ろ過後に放射線遮蔽体から排出する。また、上部炉心構造物の吊上げステップは、原子炉建屋の主クレーンをその目的に使用することも含むことができる。
【0010】
さらに、この方法は、燃料交換機を原子炉容器から、好ましくは円筒形タンク上方から支持するステップを含むことができる。この方法はまた、移動させる燃料集合体の位置を突き止めるために原子炉フランジから燃料交換機の割出しを行なうステップを含むこともできる。
【0011】
好ましくは、原子炉冷却材液位を上昇させるステップは、既存の原子炉容器貫通部を用いて行い、円筒形タンクは原子炉容器フランジに対して封止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の詳細を、好ましい実施形態を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0013】
図1】モジュール式小型炉システムを示す一部を切り取った斜視図である。
【0014】
図2図1に示した原子炉の拡大図である。
【0015】
図3-14】以下に説明する方法の実施形態の各ステップを順を追って示す原子炉建屋の内部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この実施形態の各ステップを図3〜14にシーケンスを追って示す。この実施形態は、原子炉容器10に直接取り付けた仮設の燃料交換機36を使用する。燃料交換機36は、原子炉容器の植込みボルト穴38またはそれに類した装備を用いて、それ自体を原子炉容器10に対して固定し、位置合せすることができる。交換機は、上下端が開放された遮蔽タンク40を備えることが好ましい。タンクは、容器の相手面と当接することで原子炉10のフランジ30に対して封止される。漏洩を抑えるため、Oリングまたはそれに類した軟質シールを使用することができる。封止を行うためにかける圧力は、タンクの自重か、または植込みボルト42等の機械的締結具によって与えられる。漏洩があれば、プラント運転時の原子炉容器の封止に使用されるOリングシールの間に設けられた既存の原子炉容器リークオフラインによって検出される。タンク40は、タンクの中心線と垂直な貫通部44を有する。この貫通部は、炉心14内の燃料集合体を原子炉容器10から燃料貯蔵区域、すなわちプラント内の使用済燃料プール46に移送するための手段を提供する。この貫通部は、燃料移送キャナル48の少なくとも一部を形成する。原子炉容器10から原子炉容器蓋28の閉鎖フランジ52と上部炉内構造物24が取り外されて、炉心14内の燃料集合体へのアクセスが確保された後、仮設燃料交換機アセンブリ36はそのタンク40および貫通部44とともに、原子炉建屋主クレーン50を使って原子炉容器10の上に降ろされる。多くの一体型原子炉設計では、燃料へアクセスするために、原子炉容器から蒸気発生器18、加圧器アセンブリ22および上部炉内構造物を取り外す。タンク貫通部44は、使用済燃料プール46と連通する格納容器12内の相手貫通部32につながれる。次いで、化学体積制御系の貫通部のような既存の原子炉貫通部を通して原子炉容器内に追加的な水インベントリを注入することによって仮設タンク40内の水位を上昇させる。仮設タンク40内の水位が使用済燃料プール46内の水位と実質的に同等になったところで、移送キャナル48を開放して燃料を原子炉から使用済燃料プールに移すことができる。燃料は移送台車54を用いて移送キャナル48を介して移動させる。キャナルを通って台車54を原子炉容器に移動させ、遮蔽タンク40の頂部で支持された仮設燃料交換機56から燃料集合体を受け取る。在来型プラントと同様、台車54は、移送キャナルに必要とされる直径を最小化するために、燃料集合体を横向きにすること、すなわち水平位置まで回転させることができるようにした回転バスケットを備えている。台車54が原子炉容器10から使用済燃料プールエリア46に移動すると、バスケットは再び起こされ、在来型の燃料取扱い機58によって台車から燃料が取り出される。この在来型燃料取扱い機58は、燃料を乾式貯蔵場所または再処理施設に移せるようになるまでの間、燃料を一時貯蔵ラック60に配置する。
【0017】
したがって、本発明は、一体型加圧水型原子炉およびモジュール式小型炉の設計に伴う幾つかの課題に対処するものである。図1に示すもののような、モジュール式小型炉の設計に使用されるコンパクトな高圧格納容器12には、稼働中の従来の加圧水型原子炉に典型的な原子炉容器上方の燃料交換プールを収容するスペースがない。燃料交換中に格納容器を水で満たすことは、汚染に対する懸念からも、また取扱いに厳重な注意を要する機器が格納容器内に水没するように設計できないことからも不可能である。そこで、上述の実施形態によれば、原子炉容器フランジの相手面に封止されるタンクを原子炉容器に装着することによって一時的な燃料交換プールを提供する。仮設タンク40内の水は、遮蔽を提供するとともに、燃料要素からの漏洩が広がる場合にはフィルタとなる。タンク40それ自体(移送キャナルの構造を含む)は、壁材の厚さによって追加的な遮蔽を提供する。
【0018】
格納容器を水で満たすことはできないため、上部炉内構造物24は貯蔵場所への取出し作業の間中水中に留まることはできない。原子炉容器10から上部炉内構造物24を取り出すには、遮蔽および能動的な通気が施された専用設計の吊上げ装置を使用する。上部炉内構造物の上のフランジに遮蔽ベル64を密着させ、吊上げ装置の構造の一部を遮蔽ベルの穴を通過させて、上部炉内構造物に吊上げ用として設けられた機構と係合させる。空中浮遊物による汚染を防止するため、送風機とHEPAフィルタの組合せにより、遮蔽ベル64内に底部から空気を導入し、ベル内の空気をろ過した後、排出する。吊上げ装置62は、原子炉建屋内の格納容器12の外側の遮蔽スタンドに上部炉内構造物を配置するために使用される。炉内構造物は、貯蔵場所で水中またはホウ酸水中に水没させることによって遮蔽することができる。
【0019】
原子炉建屋作業デッキから炉心14内の燃料集合体までの距離は、モジュール式小型炉の設計では、従来の加圧水型原子炉プラントにおけるものよりもはるかに大きい。そのような距離でも操作できるように従来型の燃料交換機を改造するのは、寸法制御、視覚的監視能力および耐震性の観点からして実用的ではなかろう。本実施形態では、仮設燃料交換機56を原子炉フランジに固定することで、交換機を炉心にはるかに近いところまで移動させる。燃料は支柱70内に引き上げられ、従来型の燃料交換機と似たような距離を移動する。原子炉容器は、燃料に対する割出しを行って高精度の位置合わせを可能にする非常に安定した取付けポイントを提供する。
【0020】
図3〜14は、上述した燃料交換方法の各段階を順を追って示す原子炉プラントの概略図である。図3は、通常運転時におけるコンパクトな格納容器12を備えたモジュール式小型炉を示している。図3のエリア74によって冠水エリアを模式的に示すが、外側が冠水したプラント建屋の格納容器の燃料交換を行なうには、まず水位を下げ、格納容器12の上部34を取り外して貯蔵することにより、図4に示すように格納容器12を開く。次いで、蒸気発生器18および加圧器22を閉じ込めている原子炉蓋28を主建屋クレーンを使って取り外し、図5に示すように原子炉建屋側方に片付ける。遮蔽された上部炉内構造物吊上げ装置62を、原子炉建屋主クレーン50によって所定位置に降ろし、上部炉内構造物24に固定する。図6に示すように、上部炉内構造物24を上部炉内構造物吊上げ装置62の遮蔽ベル64の中に引き上げる。吊上げの間、送風機およびHEPAフィルタ66は格納容器建屋の雰囲気中に空中浮遊汚染物が放出されるのを防ぐ。その後、上部炉内構造物は、図8に示すように上部炉内構造物貯蔵スタンド68内に配置する。続いて、仮設の燃料交換機36を、図9に示すように原子炉容器フランジ30に取り付ける。仮設の燃料交換機36の一部である遮蔽タンク40を、原子炉容器フランジ30の相手面で封止し、さらに移送キャナル48に取り付ける。次いで、タンク40内の水位を、図10に示すように既存の原子炉貫通部を用いて実質的に使用済燃料プール46の水位まで上昇させる。図11に示すように仮設燃料交換機36の支柱70内に燃料が引き上げられているときに、移送キャナル48を介して燃料移送台車54を移動させる。次いで、燃料移送台車54のバスケットを回転させて、図12に示すようにバスケット内に燃料を配置する。その後、バスケットを水平位置まで回転させ、図13に示すように、横向きにされた燃料を移送キャナル48に入り込ませる。移送キャナル48を通り抜けた後、バスケットは再び回転して垂直位置に戻り、燃料を使用済燃料取扱い機58によって取り出し、図14に示すように、一時貯蔵ラック60に配置する。このプロセスを、原子炉容器10から燃料を取り出すために必要なだけ繰り返す。燃料を使用済燃料プール46から再び原子炉容器10に移す際には、これと逆のプロセスが行われる。
【0021】
炉心の燃料交換が終了した後は、移送キャナル48を閉鎖し、仮設燃料交換機36内の水位を原子炉容器10内にまで下げ、仮設燃料交換機36を主建屋クレーンによって取り出して貯蔵場所に配置することができる。さらに、遮蔽された上部炉内構造物吊上げ装置を使用して、炉内構造物をベル内に引き上げて炉心内に降ろすことができる。炉内構造物を固定した後、主建屋クレーンを使って原子炉蓋28を容器10の上に戻し、さらに格納容器34頂部を元に戻して原子炉システムの運転に備えることができる。
【0022】
本発明の特定の実施形態について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施形態に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施形態は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何らも制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物である。
図1
図2
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図4
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図8
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図10
図11
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図13
図14