特許第6402105号(P6402105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402105
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】可食体のマーキング装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20181001BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20181001BHJP
   A61J 3/06 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   B23K26/00 B
   B23K26/03
   B23K26/00 P
   B23K26/00 G
   A61J3/06 Q
   A61J3/06 R
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-527298(P2015-527298)
(86)(22)【出願日】2014年7月15日
(86)【国際出願番号】JP2014068765
(87)【国際公開番号】WO2015008742
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-147473(P2013-147473)
(32)【優先日】2013年7月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228110
【氏名又は名称】クオリカプス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】櫻本 博
(72)【発明者】
【氏名】島岡 克明
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 勇太
(72)【発明者】
【氏名】石田 哲久
(72)【発明者】
【氏名】柳生 元啓
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−121432(JP,A)
【文献】 特開2008−126309(JP,A)
【文献】 特開2011−229928(JP,A)
【文献】 特開昭61−178604(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/013973(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
A61J 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食体を搬送する搬送手段と、可食体を検出する検出手段と、可食体にマーキングパターンを形成するマーキング手段と、可食体に形成されたマーキングパターンを検査するマーキング検査手段とを備え、
前記搬送手段が、可食体を保持しながら、前記検出手段、前記マーキング手段および前記マーキング検査手段に順次搬送する可食体のマーキング装置であって、
前記検出手段は、可食体を撮像して該可食体の方向を示す方向データを取得し、
前記マーキング手段は、予め設定されたマーキングパターンを、前記方向データに基づき可食体の方向に合わせて形成し、
前記マーキング検査手段は、可食体を撮像してマーキングパターンデータを抽出し、前記検出手段が取得した前記方向データに基づき前記マーキングパターンデータを予め設定された基準パターンデータと比較することにより、マーキング精度を検査し、
前記検出手段およびマーキング検査手段は、それぞれ可食体を照射する照射部と、可食体を撮像する撮像部とを備えており、
前記検出手段における前記照射部の照射方向と前記撮像部の撮像方向とのなす角度と、前記マーキング検査手段における前記照射部の照射方向と前記撮像部の撮像方向とのなす角度とが、互いに異なる可食体のマーキング装置。
【請求項2】
前記検出手段における照射方向と撮像方向とのなす角度が、前記マーキング検査手段における照射方向と撮像方向とのなす角度よりも大きい請求項1に記載の可食体のマーキング装置。
【請求項3】
前記マーキング検査手段は、前記マーキングパターンデータの抽出時に可食体に対するマーキング位置の計測を行い、前記マーキング位置が所定位置から位置ずれを生じている場合に、このずれ量を前記マーキング手段にフィードバックする請求項1に記載の可食体のマーキング装置。
【請求項4】
前記検出手段は、可食体を撮像して、該可食体に形成された溝状の割線から前記方向データを取得すると共に、前記割線により分割された複数の領域を判別する領域データを取得し、
前記マーキング手段は、予め設定された複数のマーキングパターンを、前記方向データおよび領域データに基づき、複数の前記領域のそれぞれに可食体の方向に合わせて形成し、
前記マーキング検査手段は、可食体を撮像して複数のマーキングパターンデータを抽出し、前記検出手段が取得した前記方向データおよび領域データに基づき、複数の前記マーキングパターンデータを予め設定された基準パターンデータと比較することにより、マーキング精度を検査する請求項1に記載の可食体のマーキング装置。
【請求項5】
搬送手段が可食体を保持しながら搬送することにより、可食体を検出する検出ステップと、可食体にマーキングパターンを形成するマーキングステップと、可食体に形成されたマーキングパターンを検査するマーキング検査ステップとを順次行う可食体のマーキング方法であって、
前記検出ステップは、可食体を撮像して該可食体の方向を示す方向データを取得し、
前記マーキングステップは、予め設定されたマーキングパターンを、前記方向データに基づき可食体の方向に合わせて形成し、
前記マーキング検査ステップは、可食体を撮像してマーキングパターンデータを抽出し、前記検出ステップで取得した前記方向データに基づき前記マーキングパターンデータを予め設定された基準パターンデータと比較することにより、マーキング精度を検査し、
前記検出ステップおよび前記マーキング検査ステップは、それぞれ照射部により可食体を照射しながら可食体を撮像するステップを備えており、
前記検出ステップにおける照射方向と撮像方向とのなす角度と、前記マーキング検査ステップにおける照射方向と撮像方向とのなす角度とが、互いに異なる可食体のマーキング方法。
【請求項6】
前記検出ステップにおける照射方向と撮像方向とのなす角度が、可食体に形成された溝状の割線を画像データの濃淡で判別可能となるように設定されており、
前記マーキング検査手段における照射方向と撮像方向とのなす角度が、可食体に形成されたマーキングパターンを鮮明にするように、前記検出ステップにおける照射方向と撮像方向とのなす角度よりも小さく設定されている請求項5に記載の可食体のマーキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や食品等の可食体にマーキングパターンを形成する可食体のマーキング装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可食体のマーキング装置として、例えば特許文献1に開示された構成が知られている。このマーキング装置は、搬送ドラムの保持部に保持した錠剤やカプセル剤等の可食体を、搬送ドラムの回転によりマーキングエリアに搬送し、レーザ光の走査により可食体にマーキングを行った後、搬送ドラムを更に回転させて可食体を撮影エリアに搬送し、撮影された可食体の画像データに基づきマーキング状態を検査するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−126309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マーキングを施す可食体としては、錠剤の表面または裏面の少なくとも一方に割線が形成された割線錠が存在する。割線錠の場合、マーキングの向きが割線の向きに対してずれたり、マーキングが割線と交差すると、マーキングの見栄えや識別性が低下するおそれがあることから、割線に沿って正確にマーキングを行うことが必要になる。
【0005】
ところが、高速で大量搬送される割線錠は、それぞれ割線の向きが異なることから、個々の割線錠について割線の向きを検出して割線に沿ったマーキングを行った後、マーキング検査を個別に精度良く行うことが困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、正確なマーキングが施された可食体を迅速容易に得ることができる可食体のマーキング装置および方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、可食体を搬送する搬送手段と、可食体を検出する検出手段と、可食体にマーキングパターンを形成するマーキング手段と、可食体に形成されたマーキングパターンを検査するマーキング検査手段とを備え、前記搬送手段が、可食体を保持しながら、前記検出手段、前記マーキング手段および前記マーキング検査手段に順次搬送する可食体のマーキング装置であって、前記検出手段は、可食体を撮像して該可食体の方向を示す方向データを取得し、前記マーキング手段は、予め設定されたマーキングパターンを、前記方向データに基づき可食体の方向に合わせて形成し、前記マーキング検査手段は、可食体を撮像してマーキングパターンデータを抽出し、前記検出手段が取得した前記方向データに基づき前記マーキングパターンデータを予め設定された基準パターンデータと比較することにより、マーキング精度を検査し、前記検出手段およびマーキング検査手段は、それぞれ可食体を照射する照射部と、可食体を撮像する撮像部とを備えており、前記検出手段における前記照射部の照射方向と前記撮像部の撮像方向とのなす角度と、前記マーキング検査手段における前記照射部の照射方向と前記撮像部の撮像方向とのなす角度とが、互いに異なる可食体のマーキング装置により達成される。
【0008】
この可食体のマーキング装置において、前記検出手段における照射方向と撮像方向とのなす角度は、前記マーキング検査手段における照射方向と撮像方向とのなす角度よりも大きく設定することができる。
【0009】
前記マーキング検査手段は、前記マーキングパターンデータの抽出時に可食体に対するマーキング位置の計測を行い、前記マーキング位置が所定位置から位置ずれを生じている場合に、このずれ量を前記マーキング手段にフィードバックすることが好ましい。
【0010】
また、前記検出手段は、可食体を撮像して、該可食体に形成された溝状の割線から前記方向データを取得すると共に、前記割線により分割された複数の領域を判別する領域データを取得することができる。この構成において、前記マーキング手段は、予め設定された複数のマーキングパターンを、前記方向データおよび領域データに基づき、複数の前記領域のそれぞれに可食体の方向に合わせて形成することができる。前記マーキング検査手段は、可食体を撮像して複数のマーキングパターンデータを抽出し、前記検出手段が取得した前記方向データおよび領域データに基づき、複数の前記マーキングパターンデータを予め設定された基準パターンデータと比較することにより、マーキング精度を検査することができる。
【0011】
また、本発明の前記目的は、搬送手段が可食体を保持しながら搬送することにより、可食体を検出する検出ステップと、可食体にマーキングパターンを形成するマーキングステップと、可食体に形成されたマーキングパターンを検査するマーキング検査ステップとを順次行う可食体のマーキング方法であって、前記検出ステップは、可食体を撮像して該可食体の方向を示す方向データを取得し、前記マーキングステップは、予め設定されたマーキングパターンを、前記方向データに基づき可食体の方向に合わせて形成し、前記マーキング検査ステップは、可食体を撮像してマーキングパターンデータを抽出し、前記検出ステップで取得した前記方向データに基づき前記マーキングパターンデータを予め設定された基準パターンデータと比較することにより、マーキング精度を検査し、前記検出ステップおよび前記マーキング検査ステップは、それぞれ照射部により可食体を照射しながら可食体を撮像するステップを備えており、前記検出ステップにおける照射方向と撮像方向とのなす角度と、前記マーキング検査ステップにおける照射方向と撮像方向とのなす角度とが、互いに異なる可食体のマーキング方法により達成される。
【0013】
可食体に溝状の割線が形成されている場合、前記検出ステップにおける照射方向と撮像方向とのなす角度が、可食体に形成された溝状の割線を画像データの濃淡で判別可能となるように設定されることが好ましく、前記マーキング検査手段における照射方向と撮像方向とのなす角度が、可食体に形成されたマーキングパターンを鮮明にするように、前記検出ステップにおける照射方向と撮像方向とのなす角度よりも小さく設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の可食体のマーキング装置および方法によれば、正確なマーキングが施された可食体を迅速容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る可食体のマーキング装置の概略構成図である。
図2図1に示す可食体のマーキング装置の要部拡大図である。
図3図1に示す可食体のマーキング装置が備える第1の検出装置の模式図である。
図4図1に示す可食体のマーキング装置が備える第1のマーキング検査装置の模式図である。
図5図4に示す第1のマーキング検査装置の変形例を示す模式図である。
図6】(a)および(b)は、図1に示す可食体のマーキング装置によるマーキング方法を説明するための図である。
図7】(a)から(c)は、図1に示す可食体のマーキング装置の要部変形例を示す図である。
図8図1に示す可食体のマーキング装置の他の要部変形例を示す図である。
図9図1に示す可食体のマーキング装置によりマーキングが施された可食体の一例を示す側面図である。
図10】(a)および(b)は、図9に示す可食体の表面図および裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る可食体のマーキング装置の概略構成図である。図1に示すように、可食体のマーキング装置1は、可食体を供給する供給装置10と、供給装置10から供給された可食体を受け取って搬送する第1の搬送装置20と、第1の搬送装置20から可食体を受け取って搬送する第2の搬送装置30と、第2の搬送装置30から可食体を受け取って外部に排出する排出装置40とを備えている。
【0017】
供給装置10は、錠剤、カプセル剤、空カプセルなどの定形性を有する可食体が投入されるホッパー11と、ホッパー11内の可食体を整列させるフィーダ12と、フィーダ12により案内された可食体を搬送する供給ドラム13とを備えており、可食体は、供給ドラム13から中間ドラム14を介して第1の搬送装置20に供給される。供給ドラム13および中間ドラム14は、円筒状の外周面の軸方向および周方向に沿って整列配置された凹部からなる多数の保持部13a,14aを備えており、それぞれ保持部13a,14aに収容された可食体を吸引保持して搬送することができる。
【0018】
第1の搬送装置20は、供給ドラム13や中間ドラム14と同様にドラム状に形成されており、図2に一部を切り欠いて示すように、可食体Eを保持する保持部22が、周方向および軸方向の双方に沿って等間隔に多数設けられている。保持部22は、底部に吸引孔24が形成されており、真空吸引装置(図示せず)により第1の搬送装置20の内部を減圧することにより、保持部22に収容された可食体Eを吸引孔24を介して吸引保持し、可食体Eの方向が搬送中に変化するのを防止しつつ、可食体Eを第1の搬送装置20の回転方向に沿って搬送することができる。
【0019】
第2の搬送装置30は、第1の搬送装置20と同様に構成されており、ドラム状の外周面に保持部32が形成されている。第1の搬送装置20により搬送される可食体は、第2の搬送装置30に引き渡される際に表裏が反転されて、排出装置40に搬送される。
【0020】
上記の構成を備える可食体のマーキング装置1において、第1の搬送装置20の近傍には、第1の検出装置210、第1のマーキング装置220および第1のマーキング検査装置230が、第1の搬送装置20の搬送方向に沿って順次設けられている。
【0021】
第1の検出装置210は、検出エリアA1に搬送された可食体に照明光を照射する照射部212と、照射部212の照射方向とは異なる方向から可食体を撮像するCCDエリアカメラやCCDラインカメラなどの撮像部214とを備えている。照射部212は、例えばリング照明であり、可食体を全周から均一に照射することができる。
【0022】
図3に示す照射部212の照射方向と、撮像部214の撮像方向とのなす角度αは、第1の搬送装置20に保持された可食体の方向を検出するのに適した値に設定される。例えば、図3に示すように、可食体Eの方向を可食体Eに形成された溝状の割線Cにより判別する場合、この割線Cの溝内に影を形成して割線部分を強調できるように照射部212から照明光を照射し、割線Cの直上から撮像部214により撮像することで、割線Cの方向(すなわち、可食体Eの方向)を明確に判別することができる。この場合の角度αは、割線Cの幅や深さ等により適宜設定すればよいが、例えば30〜80度の範囲に設定することが好ましい。割線Cの方向を検出するための照射部212の照射方向は、可食体の表面および溝部を画像データの濃淡で判別可能であれば、必ずしも溝部に影を生じさせる照射方向に限定されるものではない。例えば、可食体の表面と溝部との反射光の違いを利用して溝部を判別することも可能であり、この場合の上記角度αは、例えば10〜30度の範囲に設定することが好ましい。可食体の溝部の底部が平坦である等の場合には、可食体の表面での反射光の輝度と比較して、溝部の内面における反射光の輝度が高くなるように、照射部212からの照射方向を設定することも可能である。
【0023】
可食体の方向の判別は、割線を検出する方法に限定されるものではなく、例えば、可食体の複数個所に凹部が形成されている場合には、凹部が強調されるように照射することで、この凹部をアライメントマークとして可食体の方向を判別することができる。また、可食体の形状が、多角形状や楕円形状など非円形状である場合には、可食体の外形線(輪郭線)が強調されるように照射して、外形線の一部または全部から可食体の方向を判別することができる。第1の検出装置210において検出された可食体の位置および方向を示す位置データおよび方向データは、第1の搬送装置20における各可食体の配置と個別に対応付けられて、イーサネット(登録商標)通信やシリアル通信等により、第1のマーキング装置220および第1のマーキング検査装置230に出力される。
【0024】
第1のマーキング装置220は、レーザマーキング装置であり、マーキングエリアA2に搬送された可食体に対して、レーザスポットの走査によりマーキングを行うことができる。第1のマーキング装置220のメモリ部には、文字、数字、記号、図形等やこれらの組み合わせからなるマーキングパターンの基準座標系での座標データが予め格納されており、第1の検出装置210から入力された可食体毎の位置データおよび方向データに基づいて、基準座標系での座標データを加工座標系での座標データに変換し、この加工座標系でレーザスポットの駆動制御を行うことにより、それぞれの可食体の方向に合わせてマーキングパターンを形成することができる。
【0025】
第1のマーキング装置220のレーザ光としては、YVOレーザ光、YLFレーザ光、YAGレーザ光などの固体レーザ光や、エキシマレーザ光、炭酸ガスレーザ光などの気体レーザ光、色素レーザ光などの液体レーザ光を例示することができる。可食体のマーキングは、可食体の表面に、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等の変色誘起酸化物を含有させる等して、可食体の表面を変色させる方法を好ましく例示することができるが、可食体の表面の一部を削ることによりマーキングを行うことも可能であり、特に限定されるものではない。
【0026】
第1のマーキング装置220は、基準座標系での座標データを加工座標系での座標データに変換することにより、可食体を移動・回転させることなく可食体の方向に合わせてマーキング可能なものであればよく、レーザマーキング装置以外に、例えば、インクジェット印刷装置など非接触で印刷可能な装置であってもよい。
【0027】
第1のマーキング検査装置230は、検査エリアA3に搬送された可食体に照明光を照射する照射部232と、可食体を撮像するCCDエリアカメラやCCDラインカメラなどの撮像部234とを備えている。照射部232は、可食体の表面に形成されたマーキングパターンを鮮明にするように照射することが好ましく、例えば図4に示すように、LED等の光源232aからの照射光を導光拡散板232bにより拡散させて面発光させることができる。この構成によれば、撮像部234が導光拡散板232bを介して可食体Eを撮像する配置にすることで、照射部232の照射方向と撮像部234の撮像方向とを一致させる(すなわち、図3の角度αに相当する角度を0度にする)ことができ、照射光を均一に拡散させつつ、同軸落射照明を行うことができる。照射部232は、導光拡散板232bの代わりに、図5に示すようにハーフミラー232cを使用してもよい。照射部232の照射方向は、上記のように撮像部234の撮像方向と一致していることが好ましいが、完全に一致する必要はなく、例えば、照射部232の照射方向と、撮像部234の撮像方向とのなす角度(図3の角度αに相当する角度)を、0〜30度(より好ましくは、0度以上10度未満)の範囲に設定してもよい。
【0028】
第1のマーキング検査装置230は、マーキングパターンに対応する基準パターンデータがメモリ部に予め格納されており、撮像部234が可食体を撮像したデータからマーキングパターンデータを抽出して、第1の検出装置210から入力された方向データに基づき基準パターンデータと比較することにより、可食体のマーキング精度を検査する。予め設定された基準パターンデータは基準座標系で設定されているため、第1の検出装置210から入力された可食体の位置データおよび方向データに基づいてマーキングパターンデータを補正(あるいは、基準パターンデータを補正)した後に、マーキングパターンデータを基準パターンデータと比較してパターンマッチング等が行われる。第1のマーキング検査装置230は、マーキングパターンデータの抽出時に、可食体に対するマーキング位置の計測を行っており、マーキング位置が所定位置から位置ずれを生じている場合に、このずれ量を第1のマーキング装置220に送信する。これにより、第1のマーキング装置220においては、レーザスポットの駆動部に対してフィードバック制御を行うことができ、周囲温度などの環境変化や機械精度の経時変化等に伴うマーキング精度の低下を抑制して、錠剤等の表面における微小なスペースに必要な情報を正確にマーキングすることができる。フィードバック制御は、平均化等の統計的な処理や補正量の制限等と組み合わせることで段階的に行うことが可能である。あるいは、フィードバック制御の制限を緩和(または除外)して、マーキングおよびマーキング検査を行う可食体のサンプル数が比較的少ない場合(例えば、1万錠程度の錠剤)でも対応可能にすることで、マーキング位置の調整を迅速且つ正確に行うことができる。
【0029】
また、第2の搬送装置30の近傍には、第2の検出装置310、第2のマーキング装置320および第2のマーキング検査装置330が、第2の搬送装置30の搬送方向に沿って順次設けられている。第2の検出装置310、第2のマーキング装置320および第2のマーキング検査装置330の構成は、それぞれ第1の検出装置210、第1のマーキング装置220および第1のマーキング検査装置230と同様であり、第2の検出装置310が照射部312および撮像部314を備え、第2のマーキング検査装置330が照射部332および撮像部334を備えている。第2の搬送装置30は、第1の搬送装置20から可食体を受け取って搬送し、第1の搬送装置20による搬送中にマーキングパターンが形成された面とは反対側の面に、第2の検出装置310、第2のマーキング装置320および第2のマーキング検査装置330がマーキングを行う。
【0030】
排出装置40は、第1のマーキング検査装置230および第2のマーキング検査装置330におけるマーキング検査の結果に基づいて可食体の振り分けを行う振り分け部42を備えており、良品のみを排出コンベア44に案内して排出する。
【0031】
次に、上記の構成を備える可食体のマーキング装置1を用いて可食体にマーキングを行う方法を説明する。供給装置10から第1の搬送装置20に供給された可食体Eは、図6(a)に示すように、第1の搬送装置20の軸方向に整列した状態となるように、個別に保持部22に収容される。このとき、それぞれの可食体Eに形成された割線Cの方向はランダムである。
【0032】
可食体Eが第1の検出装置210の検出エリアA1に搬送されると、撮像部214が、列ごとの可食体Eの画像データを取得する。可食体Eは、上記のように割線Cが強調されるように照射部212により照射されるため、第1の検出装置210において、可食体E毎に正確な方向データを取得することができる。なお、取得した画像データに割線Cが存在しない可食体Eについては、その旨が方向データの代わりに出力される。
【0033】
ついで、可食体Eが第1のマーキング装置220のマーキングエリアA2に搬送されると、図6(b)に示すように、各可食体Eの方向に合わせてマーキングが行われる。図6(b)において、マーキングパターンM1は割線Cに沿って形成されているが、割線Cの方向を考慮して形成されていればよく、例えば、割線Cと重なり合わないような配置であれば、必ずしも割線Cに沿って形成する必要はない。割線Cが存在しない可食体Eについては、上記のマーキングパターンM1とは異なるマーキングパターンM2を形成してもよく、あるいは、マーキングパターンを形成しないようにしてもよい。なお、第1のマーキング装置220において、割線Cを検出した面にマーキングパターンを形成しない構成にすることもできる。
【0034】
次に、可食体Eが第1のマーキング検査装置230の検査エリアA3に搬送されると、撮像部234が、列ごとの可食体Eの画像データを取得する。可食体Eは、上記のようにマーキングパターンM1が鮮明に表示されるように照射部232により照射されるため、正確なマーキングパターンデータを抽出することができる。この後、第1の検出装置210が取得した方向データに基づいてマーキングパターンデータの傾きが修正され、修正後のマーキングパターンデータを予め設定された基準パターンデータと比較して、パターンマッチング等の公知の検査方法によりマーキング精度の検査が行われる。
【0035】
こうして、可食体Eの一方面に対するマーキングおよび検査が行われた後、可食体Eが第1の搬送装置20から第2の搬送装置30に引き渡され、第2の検出装置310、第2のマーキング装置320および第2のマーキング検査装置330に順次搬送されることにより、上記と同様にして、可食体Eの他方面に対するマーキングおよびマーキング検査が行われる。すなわち、第2のマーキング装置320においては、第2の検出装置310が取得した方向データに基づいて可食体へのマーキングが行われ、第2のマーキング検査装置330においては、第2の検出装置310が取得した方向データに基づいてマーキング精度の検査が行われる。第2のマーキング装置320および第2のマーキング検査装置330においては、第2の検出装置310が取得した方向データの代わりに、第1の検出装置210が取得した方向データに基づいてマーキングおよびマーキング検査を行うことも可能であり、これによって可食体の表裏におけるマーキング方向を一致させることができる。
【0036】
この後、可食体Eは、第2の搬送装置30から排出装置40に搬送される。排出装置40には、第1のマーキング検査装置230および第2のマーキング検査装置330から、可食体E毎のマーキング良否判定データが入力され、良品と判定された可食体Eが、振り分け部42を経て排出コンベア44に案内される一方、不良品と判定された可食体Eは、不良排出部45においてエアで吹き出されて不良排出シュート46に案内される。不良排出確認センサ47は、不良判定された可食体Eが第2の搬送装置30に残留していないかをチェックし、不良の可食体Eが残留していた場合に、振り分け部42において可食体Eを廃棄シュート48に案内する。
【0037】
本実施形態の可食体のマーキング装置1は、可食体の方向に合わせて所望のマーキングを行うために第1の検出装置210(および第2の検出装置310)で取得した方向データを利用して、第1のマーキング検査装置230(および第2のマーキング検査装置330)においてマーキング精度を検査するように構成されているため、第1のマーキング検査装置230において方向データを改めて取得する必要がなく、検査時間を短縮できると共に、マーキング検査の精度を高めることができる。
【0038】
すなわち、第1のマーキング検査装置230(および第2のマーキング検査装置330)において取得される画像データには、マーキングパターンデータ以外に割線データも含まれているが、照射条件がマーキングパターンに合わせて設定されていることから割線データが不鮮明になり易く、このような割線データに合わせてマーキング精度を検査すると、マーキング検査の精度が不十分になるおそれがある。本実施形態においては、第1の検出装置210(および第2の検出装置310)と、第1のマーキング検査装置230(および第2のマーキング検査装置330)とで照射条件を変えることで、それぞれが正確な方向データおよびマーキングパターンデータを取得できることから、検査精度を高めることができ、結果としてマーキングパターンが正確に形成された可食体を迅速容易に得ることができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、第1の搬送装置20および第2の搬送装置30をいずれも搬送ドラムとしているが、保持した可食体の姿勢が搬送中に変化しない構成であれば、他の構成であってもよい。例えば、図7(a)および図7(b)に示すように、第1の搬送装置20および第2の搬送装置30を、いずれもスラットコンベアやベルトコンベアなどのコンベア装置として、第1の搬送装置20により水平搬送される可食体を、反転機構60により表裏反転させて、第2の搬送装置30に搭載して水平搬送することで、本実施形態と同様に、可食体の表裏両面にマーキングを行うことができる。また、図7(c)に示すように、第2の搬送装置30を、上方から可食体を真空吸引可能な吸引孔を有する吸引ベルトにより構成し、第1の搬送装置20により水平搬送される可食体を第2の搬送装置30に吸着保持させて下方からマーキングを行うことにより、可食体の表裏両面にマーキングを行うこともできる。図7(a)から(c)において、図1と同様の構成部分には同一の符号を付している。マーキングの形成は、可食体の一方面のみに行う構成であってもよく、第2の搬送装置30、第2の検出装置310、第2のマーキング装置320および第2のマーキング検査装置330を備えない構成であってもよい。また、第1の検出装置210、第1のマーキング装置220および第1のマーキング検査装置230は、必ずしも同一の搬送ドラム(またはコンベア装置)に沿って配置する必要はない。例えば、図1に示す可食体のマーキング装置1において、供給装置10と第1の搬送装置20との間に新たな搬送ドラム等を配置し、この搬送ドラムで搬送される可食体の一方面を検出して可食体の方向データを取得するように、新たな検出装置を設けてもよい。この構成によれば、可食体の一方面から取得した方向データに基づき、可食体の他方面にマーキングおよびマーキング検査を行うことができるので、被マーキング面に割線等の方向を示すものが存在しない場合でも、可食体の方向に合わせてマーキングを行うことが可能になる。
【0040】
第1の検出装置210における照射方向と撮像方向とのなす角度と、第1のマーキング検査装置230における照射方向と撮像方向とのなす角度とは、それぞれの照射目的が相違することから、通常は異なることが好ましいが、結果的に同一になる場合を除外するものではない。照射方向と撮像方向とのなす角度は、照射目的に応じて適宜決定すればよく、例えば、第1の検出装置210において、可食体の方向を可食体の外形線(輪郭線)により判別する場合には、図8に示すように、透明な搬送ベルト20の下方から照明部212,212が照射する透過照明を行い、照射方向と撮像方向とのなす角度αを、本実施形態の場合よりも大きい値に設定することができる。第2の検出装置310と第2のマーキング検査装置330との関係についても、上記と同様である。
【0041】
第1の検出装置210における照射方向と撮像方向とのなす角度と、第1のマーキング検査装置230における照射方向と撮像方向とのなす角度とは、通常は前者の方が大きい値になるが、例えば、可食体の周縁部の斜面に形成されたマーキングパターンを検査する場合には、第1のマーキング検査装置230における角度を、第1の検出装置210における角度よりも大きくしてもよい。
【0042】
割線Cを備える可食体Eに対しては、割線Cで分割された各領域にそれぞれ異なるマーキングを行うことで、複数の情報(例えば、品名および含量)を表示することができ、割線Cの検出により取得した方向データに基づき、各領域に形成されたマーキングを検査することができる。この場合、可食体Eを割線Cで分割した後も各半割錠が必要な情報を表示できるように、可食体Eの表裏面におけるマーキングの配置を決定することが好ましい。例えば、図9に側面図で示すように、割線Cで分割された可食体Eの第1の領域R1および第2の領域R2に、それぞれ異なるマーキングパターンM1,M2を形成する場合、可食体Eの表裏面で第1の領域R1および第2の領域R2を入れ替える(すなわち、表面の第1の領域R1の裏面を第2の領域R2とし、表面の第2の領域R2の裏面を第1の領域R1とする)ことにより、この可食体Eを割線Cで分割した各半割錠は、いずれもマーキングパターンM1,M2の双方を含んだものとなるため情報の消失を防止することができ、錠剤の識別を容易に行うことができる。
【0043】
第1の領域R1および第2の領域R2の判別は、例えば図10(a)および(b)に示すように、可食体Eの表面および裏面の第1の領域R1に刻印Sを予め形成する一方、第2の領域R2には刻印Sを形成しないことにより、第1の検出装置210および第2の検出装置310が割線Cおよび刻印Sを検出して得られた方向データおよび領域データに基づいて、行うことができる。第1のマーキング装置220および第2のマーキング装置320は、可食体Eの表裏面における方向データおよび領域データに基づいて、第1の領域R1および第2の領域R2のそれぞれに、割線Cに沿ってマーキングパターンM1,M2を形成する。可食体Eの表裏面における割線Cおよび刻印Sの位置は、可食体Eを成型する打錠機の杵臼によって定まるため、可食体Eの表裏面の間で割線Cおよび刻印Sの位置ずれが生じるおそれがなく、マーキングパターンM1,M2の双方を有する可食体Eの半割錠を確実に得ることができる。
【0044】
第1のマーキング検査装置230および第2のマーキング検査装置330は、可食体Eの表裏面における方向データおよび領域データに基づいて、可食体Eの表裏面に形成されたマーキングパターンM1,M2の画像データを予め設定された基準パターンデータと比較し、マーキング精度を検査する。
【0045】
マーキングパターンM1,M2の形成は、レーザマーキングの他、インクジェット印刷で行うことができる。特に、刻印Sの一部または全部と重なるようにマーキングパターンを形成する場合には、インクジェット印刷を好ましく適用することが可能である。刻印Sが、文字や数字等の情報を含む場合には、この刻印Sをなぞるようにインクジェット印刷を行うことで、刻印Sの情報をより鮮明に表示することができる。
【0046】
第1の検出装置210および第2の検出装置310による領域データの取得は、刻印Sの有無以外に、例えば可食体Eの外形線(輪郭線)を利用して行ってもよく、例えば、可食体Eが三角錠や五角錠などの場合には、この外形線および割線Cから方向データおよび領域データを取得することができる。割線Cは、必ずしも可食体Eの表裏面の双方に形成される必要はなく、いずれか一方のみに割線Cが形成されている場合でも、可食体Eの外形線や刻印Sの形状・向き等から、方向データおよび領域データを取得することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 可食体のマーキング装置
20 第1の搬送装置
210 第1の検出装置
212 照射部
214 撮像部
220 第1のマーキング装置
230 第1のマーキング検査装置
232 照射部
234 撮像部
30 第2の搬送装置
310 第2の検出装置
312 照射部
314 撮像部
320 第2のマーキング装置
330 第2のマーキング検査装置
332 照射部
334 撮像部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10