(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セットのタンパク質バイオマーカーに、ヘモグロビン鎖アルファおよびベータ、炭酸脱水酵素1(国際タンパク質目録または「IPI」 #IPI00980674)、ならびにプラスチン1からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質が含まれ、前記セットのタンパク質バイオマーカーの存在量の変化が前記区別のために決定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記セットのタンパク質バイオマーカーに、S100−P、トランスアルドラーゼ、S100−A8(カルグラニュリン−A)、ミオシン−9、ヘモグロビンアルファおよびヘモグロビンベータからなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質が含まれ、前記セットのタンパク質バイオマーカーの存在量の変化が前記区別のために決定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記セットのタンパク質バイオマーカーに、アルファ−1−酸性糖タンパク質1および2、マトリクスメタロプロテイナーゼ−9、ペプチジル−プロリルcis−transイソメラーゼA、ならびにハプトグロビン関連タンパク質(IPI00431645.1)からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質が含まれ、前記セットのタンパク質バイオマーカーの存在量の変化が前記区別のために決定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記セットのタンパク質バイオマーカーに、NADPHオキシダーゼおよびアルファ−N−アセチルガラクトサミニダーゼからなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質が含まれ、前記セットのタンパク質バイオマーカーの存在量の変化が前記区別のために決定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記セットのタンパク質バイオマーカーに、タンパク質 S100−A11(IPI00013895.1)、タンパク質 IPI00037070.3、カタラーゼ(IPI00465436.4)、コリントランスポーター様タンパク質2誘導体(IPI00903245.1)、およびチチンのアイソフォーム N2−B(IPI00985334.2)からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質が含まれ、前記セットのタンパク質バイオマーカーの存在量の変化が前記区別のために決定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記セットのタンパク質バイオマーカーに、ヘモグロビン鎖アルファおよびベータ、炭酸脱水酵素1(国際タンパク質目録または「IPI」 #IPI00980674)、ならびにプラスチン1からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質が含まれる、請求項12に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一態様による口腔疾患の状態を診断するための方法のフローチャートの例示である;
【
図2】
図2は、患者の唾液サンプルについてのUV吸収(mAU)対時間(分)のグラフである。前記UVトレース(trace)は、214nmにおけるSCXシステム記録UV吸収(SCX system recording UV Absorbance)の出力値として得られた。
【
図3】
図3は、患者のGCFサンプルについてのUV吸収(mAU)対時間(分)のグラフである。前記UVトレースは、214nmにおけるSCXシステム記録UV吸収の出力値として得られた。
【
図4】
図4は、GCFサンプルデータについて、タンパク質存在量(底2の対数目盛(a base 2 logarithmic scale)の変化により変換されたもの)対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、群平均クラスタリンググラフである。前記群平均クラスタリングは、タンパク質バイオマーカーの六(6)種の異なるクラスターを同定した。クラスター1は、前記タンパク質の主要部(243種のタンパク質)を含み、クラスター2は、19種のタンパク質を含み、クラスター3、5および6は、それぞれ1種のタンパク質のみを含み、クラスター4は、5種のタンパク質を含むものであった。
【
図5】
図5は、GCFサンプルデータについて、タンパク質存在量(底2の対数目盛により変換されたもの)の変化対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、第1回(first round)再クラスタリンググラフである。
図4からのクラスター1を、4つのクラスター群に再クラスタリングし、ここで、群Aは、前記タンパク質の主要部(233種)を含み、群BおよびCは、それぞれ2種のタンパク質を含み、群Dは、6種のタンパク質を含むものであった。
【
図6】
図6は、GCFサンプルデータについて、タンパク質存在量(底2の対数目盛により変換されたもの)の変化対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、第2回再クラスタリンググラフである。
図5からのクラスターAを、4つのクラスター群に再クラスタリングし、ここで、最大クラスター(1A1)は、なお171種のタンパク質を含み、クラスター1A2は、50種のタンパク質を含み、1A3は、10種のタンパク質を含み、1A4は、2種のタンパク質を含むものであった。
【
図7】
図7は、GCFサンプルデータについて、タンパク質存在量(底2の対数目盛により変換されたもの)の変化対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、最終回再クラスタリンググラフである。
図6からのクラスター1A1を、4つのクラスター群に再クラスタリングした。タンパク質存在量の変化は、ここでは1.0の大きさ未満であるので、この分析からのクラスターは関心の対象にならないと思われる。
【
図8】
図8は、唾液サンプルデータについて、タンパク質存在量(底2の対数目盛により変換されたもの)の変化対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、群平均クラスタリンググラフである。前記群平均クラスタリングは、タンパク質バイオマーカーの五(5)種の異なるクラスターを同定した。最大クラスター(1)は、297種のタンパク質を含み、クラスター2および5は、それぞれ1種のタンパク質を含むものであった。クラスター3は、11種のタンパク質を含み、クラスター4は、3種のタンパク質を含むものであった。クラスター2は、重度の歯周炎とより軽度な状態とを区別すると思われる。
【
図9】
図9は、GCFサンプルデータについて、タンパク質存在量(底2の対数目盛により変換されたもの)の変化対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、第1回再クラスタリンググラフである。
図8からのクラスター1を、4つのクラスター群に再クラスタリングし、そのうちの最大のものは、166種のタンパク質を含むものであった(クラスター1A)。クラスター1Bおよび1Dは、それぞれ14種および1種のタンパク質を含むものであった。これらの2つの群は、歯肉炎/軽度の歯周炎および重度の歯周炎を区別し得る。
【
図10】
図10は、GCFサンプルデータについて、タンパク質存在量(底2の対数目盛により変換されたもの)の変化対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、第2回再クラスタリンググラフである。
図9からのクラスター1Aを、5つのクラスター群に再クラスタリングし、最大のものは、150種のタンパク質を含むものであった。存在量の変化の欠如に基づき、ここでは、いかなる顕著なクラスターであるとも思われない。
【
図11】
図11は、GCFサンプルデータについて、タンパク質存在量(底2の対数目盛により変換されたもの)の変化対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、第2回再クラスタリンググラフである。
図9からのクラスター1Cを、3つのクラスターに再クラスタリングした。7種のタンパク質を含むクラスター1C2は、処置後による減少(reduction post treatment)の前の、重度の歯周炎まで、タンパク質存在量の近線形的増加を示す。
【
図12】
図12は、GCFサンプルデータについて、タンパク質存在量(底2の対数目盛により変換されたもの)の変化対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、最終回再クラスタリンググラフである。クラスター1A1は、
図10からのものである。5つのクラスターが、観測され、重度の歯周炎についての存在量の増加を示すタンパク質の群(クラスター1A1b)が観測されたが、その他の群には観測されなかった。このクラスター中で同定された、5種のタンパク質があった。
【
図13】
図13は、前記GCFおよび唾液サンプルデータセット間の前記重複を示す、ベン図である。
【
図14】
図14は、組み合わせられたGCFおよび唾液サンプルデータにおける、タンパク質 S100−PのLog(2)変換された存在レベル(Log(2) transformed abundance levels)対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、クラスターグラフである。
【
図15】
図15は、組み合わせられたGCFおよび唾液サンプルデータにおける、タンパク質 S100−A8のLog(2)変換された存在レベル対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、クラスターグラフである。
【
図16】
図16は、組み合わせられたGCFおよび唾液サンプルデータにおける、ミオシン−9のLog(2)変換された存在レベル対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、クラスターグラフである。
【
図17】
図17は、組み合わせられたGCFおよび唾液サンプルデータにおける、トランスアルドラーゼのLog(2)変換された存在レベル対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、クラスターグラフである。
【
図18】
図18は、組み合わせられたGCFおよび唾液サンプルデータにおける、ヘモグロビンベータのLog(2)変換された存在レベル対六(6)種のプロテオームMS分析群(表3に定義されたもの)を示す、クラスターグラフである。
【0016】
態様の詳細な説明
当業者が前記開示された方法およびキットを実施することができるために、本願の前記方法およびキットのいくつかの態様を、添付の図面を参照して、以下でより詳細に説明する。しかしながら、前記方法およびキットを、多くの異なる形態で具体化してもよく、本明細書に記載される前記態様に限定されるものとみなしてはならない。むしろ、これらの態様を提供することにより、この開示が徹底され、完全にされ、当業者には本開示の方法およびキットの範囲を完全に伝達するであろう。前記態様は、開示された方法およびキットの範囲を限定するものではない。前記態様は、添付の特許請求の範囲により限定されるのみである。さらに、前記添付の図面において例示される前記特定の態様の詳細な説明において使用される専門用語は、前記開示された方法またはキットを限定することを意図するものでない。
【0017】
本願は、例えば、歯周炎などの口腔疾患の状態を診断するための方法を詳述する。前記方法は、1セットのバイオマーカーの発現レベルを決定することを含んでもよい。前記セットのタンパク質バイオマーカーには、1種または2種以上のタンパク質バイオマーカーが含まれてもよく、これらは、口腔疾患の特定段階において、存在量を変化させることを示した。したがって、前記セットのタンパク質バイオマーカーを、口腔疾患の異なる状態を区別するために、発現により同定して定量してもよい(may be identified and quantified in expression)。
【0018】
本願の方法は、例えば、歯肉炎、軽度の歯周炎などの、重症度の種々のレベルでの歯周炎の指標として役立つバイオマーカーについての役割を実証する。本明細書に記載される研究(work)は、複数のバイオマーカーの上昇レベルを、例えば、歯周炎などの口腔疾患の状態を正確におよび迅速に決定するためのツールとして使用することができることを実証する。
【0019】
本明細書において使用されるとおり、用語「歯周的健康状態」は、閾値条件に基づくもの(a threshold criteria based)であり、単なる健康の漠然とした状態ではない。歯周的健康状態を有する患者は、1.0のG.I.またはB.O.P.を有する<10%のサイトを示し、2.0または3.0のG.I.を有するサイトはない(<10% sites with G.I.of 1.0 or B.O.P.and no sites with G.I.of 2.0 or 3.0)。さらに、それらは、隣接歯間の付着損失を有するサイトを有さず、ppd>3mmを有するサイトを有しない。
【0020】
本明細書において使用されるとおり、用語「歯周炎状態」は、広汎型(generalized)歯周炎を示す患者に基づく閾値条件であり、単なる漠然とした状態ではない。広汎型歯周炎は、G.I.>2.0を有する、>30%のサイトを示す患者に現れ、隣接歯間の付着損失を有するサイトはなく、ppd>4mmを有するサイトはない。
【0021】
本明細書において使用されるとおり、用語「軽度の歯周炎状態」は、軽度〜中等度の(mild−moderate)歯周炎を示す患者に基づく閾値条件であり、単なる漠然とした状態ではない。軽度〜中等度の歯周炎は、5〜7mmのppdおよび>8本の歯で2〜4mmの隣接歯間CALを示す患者に現れる。
【0022】
本明細書において使用されるとおり、用語「重度の歯周炎状態」は、重度の歯周炎を示す患者に基づく閾値条件であり、単なる漠然とした状態ではない。重度の歯周炎は、>7mmのppdおよび>12本の歯で>5mmの隣接歯間CALを示す患者に現れる。
【0023】
本明細書において使用されるとおり、用語「バイオマーカー」は、客観的に測定され、通常の生物学的プロセス、発病プロセス、または治療介入への薬理学的応答の指標として評価される物質を意味する。
【0024】
本明細書において、口腔疾患の選択された状態(a select status)を示す、予測的タンパク質バイオマーカーの測定により前記口腔疾患の状態を診断するための方法が提供される。例示的態様において、前記口腔疾患は歯周炎であり、前記タンパク質バイオマーカーは、歯肉炎、軽度の歯周炎、または重度の歯周炎のいずれかを示す。
【0025】
口腔疾患のさまざまな状態を有する患者から採取した歯肉溝滲出液(GCF)および唾液サンプルのプロテオーム分析により、タンパク質バイオマーカーを、同定してもよく、これらは、歯周炎の明確なフェーズの間に、存在量が増加するかまたは減少する。少なくとも1種のタンパク質バイオマーカーを、単独でまたは組み合わせて使用して、健康な患者、歯肉炎を患っている患者、および軽度のまたは重度の歯周炎を患っている患者を区別してもよい。
【0026】
プロテオーム分析を、液体クロマトグラフィーおよび質量スペクトル法の組み合わせにより行ってもよい。特に、GCFおよび唾液口腔液サンプルの前記プロテオームを、フーリエ変換−タンデム質量スペクトル法(FT MS/MS)により分析してもよい。健康な口腔状態および疾患の口腔状態を区別するであろうバイオマーカーのパネルを試行して解明するために、前記FT MS/MSプロテオームアプローチを、歯周病について健康な(periodontally healthy)ボランティア、歯肉炎のボランティア、軽度のおよび重度の歯周炎のボランティア、ならびに無歯ボランティア(無歯対照)から採取した、GCFおよび唾液サンプルに適用してもよい。特に、前記FT MS/MSアプローチがなされることにより、歯周病について健康的かおよび疾患的かを、歯肉炎および歯周炎を、ならびに軽度および重度の歯周炎を、歯肉溝滲出液(GCF)および誘導唾液(stimulated saliva)の非推定プロテオーム分析の使用により区別することができる、新規なタンパク質バイオマーカーを見出し得る。
【0027】
本発明者らは、驚くべきことに、1つの小セット(a small set)の特定のタンパク質バイオマーカーの発現を決定して、歯肉炎または軽度の歯周炎を同定し得ることを見出した。これらのタンパク質バイオマーカーは、歯肉炎/歯周炎の軽度の疾患状態の間に、強化された存在量の変化(増加または減少のいずれか)を示し、歯周炎の重度の状態の間は、ほとんど変化を示さない。さらに、1つの小セットの特定のタンパク質バイオマーカーの発現を決定して、重度の歯周炎を同定し得る。これらのタンパク質バイオマーカーは、歯周炎の重度の状態の間に、強化された存在量の変化(増加または減少のいずれか)を示し、歯肉炎および歯周炎の軽度の状態の間は、ほとんど変化を示さない。重度の歯肉炎を同定して区別するための、前記セットのタンパク質バイオマーカーは、軽度の歯周炎または歯肉炎に関連する。
【0028】
図1を参照して、口腔疾患の状態を診断するための方法(S100)は、S101でスタートする。例示的態様によれば、前記口腔疾患は歯周炎であり、歯周炎の状態には、歯周炎としての健康、歯肉炎、軽度の歯周炎、および重度の歯周炎が含まれ得る。
【0029】
S102において、少なくとも1種の口腔液サンプルが提供される。一態様によれば、前記口腔疾患は歯周炎であり、GCFおよび唾液サンプルの少なくとも一方が提供される。前記サンプルは、非侵襲的に患者から採取され得る。
【0030】
S104において、タンパク質プロファイルが、GCFおよび唾液サンプルの少なくとも一方のプロテオームを分析することにより生じる。別の態様において、前記タンパク質プロファイルを、LC FT MS/MSを使用して見出す。
【0031】
S106において、前記タンパク質プロファイルをクラスターして、1セットのタンパク質バイオマーカー中で役立つために最良に調和する、それらのタンパク質を決定する。クラスタリングを、主成分分析、ガンマ統計法(gamma statistics)、および計量多次元尺度法(MMDS)を含む統計法の組み合わせを使用して行ってもよい。一態様において、群平均リンク階層的クラスタリング(group average link hierarchical clustering)を用いて、前記セットのタンパク質バイオマーカーを決定する。別の態様において、完全リンク階層的クラスタリング(complete link hierarchical clustering)法を用いて、前記セットのタンパク質バイオマーカーを決定する。
【0032】
S108において、1セットのタンパク質バイオマーカーを、口腔疾患の異なる状態を区別するために選択する。一態様において、前記口腔疾患は歯周炎であり、前記セットのタンパク質バイオマーカーを、歯肉炎および歯周炎を区別するために選択する。別の態様において、前記口腔疾患は歯周炎であり、前記セットのタンパク質バイオマーカーを、軽度の歯周炎および重度の歯周炎を区別するために選択する。
S110において、前記選択されたセットのタンパク質バイオマーカー中の前記タンパク質の発現レベルを決定して、前記口腔疾患の状態を診断する。
【0033】
前記方法の一側面によれば、口腔疾患の状態を診断するための方法には、少なくとも1種の口腔液サンプルを提供すること、前記少なくとも1種の口腔液サンプルのプロテオームを分析することによりタンパク質プロファイルを生じさせること、前記タンパク質プロファイルをクラスタリングして1セットのタンパク質バイオマーカーを決定すること、口腔疾患の特定の状態を区別するための1セットのタンパク質バイオマーカーを選択すること、および前記選択されたセットのタンパク質バイオマーカーにおける発現レベルを決定して前記口腔疾患の状態を診断すること、が含まれる。
【0034】
前記方法のなお別の側面によれば、歯周疾患の状態を診断するための方法には、歯肉溝滲出液(GCF)サンプルおよび唾液サンプルの少なくとも一方を提供すること、歯周炎の特定の状態を同定するための1セットのタンパク質バイオマーカーを選択すること、ならびに前記歯周疾患の状態を診断するための、前記選択されたセットのタンパク質バイオマーカーにおける発現レベルを決定すること、が含まれる。
【0035】
前記方法のある側面において、前記セットのタンパク質バイオマーカーを、歯肉溝滲出液(GCF)および唾液のプロテオームを分析することにより選択する。プロテオーム分析には、タンパク質のフーリエ変換−タンデム質量スペクトル(FT MS/MS)分析が含まれてもよく、これは、歯周炎の状態の変化において、高発現するかまたは低発現することが同定される。
【0036】
前記方法の別の側面について、前記バイオマーカーには、疾患状態の診断に有用な、1種のみの特定のバイオマーカーまたは特定のバイオマーカーの組み合わせが、含まれてもよい。1種、2種、または3種以上のタンパク質バイオマーカーの発現レベルを決定して、口腔疾患の状態を決定する。さらなる側面において、3種、4種、5種、または6種以上のバイオマーカーを決定して、口腔疾患の状態を決定するのに使用してもよい。
【0037】
前記方法の種々の側面において、前記1種または2種以上のタンパク質バイオマーカーを、ヘモグロビン鎖アルファおよびベータ、炭酸脱水酵素1(国際タンパク質目録または「IPI」 #IPI00980674)、ならびにプラスチン1からなる群から選択する。この側面による前記方法を使用して、歯周炎の健康状態、歯肉炎状態、軽度の状態、および重度の状態を区別してもよい。
【0038】
前記方法のなお別の側面において、1種または2種以上のタンパク質バイオマーカーを、S100−P、トランスアルドラーゼ、S100−A8(カルグラニュリン−A)、ミオシン−9、ヘモグロビンアルファ、およびヘモグロビンベータからなる群から選択する。この側面による前記方法を使用して、歯周炎の重度の状態を同定してもよく、例えば、軽度の歯周炎および歯肉炎などのより軽度の状態と歯周炎の重度の状態とを区別してもよい。
【0039】
前記開示される方法のいくつかの側面において、1種または2種以上のタンパク質バイオマーカーを、アルファ−1−酸性糖タンパク質1および2、マトリクスメタロプロテイナーゼ−9、ペプチジル−プロリルcis−transイソメラーゼA、ならびにハプトグロビン関連タンパク質(IPI00431645.1)からなる群から選択する。この側面による前記方法を使用して、歯周炎の重度の状態を同定してもよく、例えば、軽度の歯周炎および歯肉炎などのより軽度の状態と歯周炎の重度の状態とを区別してもよい。
【0040】
前記方法のなお別の側面において、タンパク質バイオマーカーである、アルファ−N−アセチルガラクトサミニダーゼを、歯肉炎および軽度の歯周炎状態を同定するために、ならびにそれらを重度の歯周炎状態と区別するために選択する。
前記方法のさらなる側面において、歯肉炎または軽度の歯周炎を同定するために、ならびにそれらを重度の歯周炎状態と区別するために、1種または2種以上のタンパク質バイオマーカーを、NADPHオキシダーゼおよびアルファ−N−アセチルガラクトサミニダーゼから選択する。
【0041】
いくつかの側面によれば、口腔疾患の状態を診断するための前記方法には、さらに、前記GCFサンプルおよび唾液サンプルを提供すること、GCFサンプルおよび唾液サンプルのプロテオームを分析することにより第1および第2タンパク質プロファイルを生じさせること、ならびに前記第1および第2タンパク質プロファイル間の重複領域を決定すること、が含まれる。前記歯周炎の特定の状態を区別するための前記セットのタンパク質バイオマーカーを選択することには、歯周炎の異なる段階の間の前記重複領域内でのタンパク質の存在量の変化を計算すること、および歯周炎の単一状態の間に、低発現するまたは高発現する、それらのタンパク質を選択すること、が含まれる。
【0042】
なお別の側面において、上記態様により開示されたとおりの口腔疾患の状態を診断するための前記方法を、診断キットにより行う。前記診断キットには、口腔疾患の状態を診断するための1セットのタンパク質バイオマーカーが含まれる。前記キットには、前記開示された方法のアッセイを実行するために必要な試薬が含まれる。
【0043】
本願を、種々の態様および例の観点から説明してきた一方で、変形および改善が生じるであろうことが、当業者には理解される。したがって、特許請求の範囲において現れるとおりのかかる限定のみが、前記開示された態様に置かれなければならない(only such limitations as appear in the claims should be placed on the disclosed embodiments)。
【0044】
例
例1
歯肉溝滲出液(GCF)および唾液のプロテオームを分析して、例えば、歯肉炎、軽度の歯周炎、および重度の歯周炎などの異なる口腔疾患の状態のバイオマーカーを同定した。GCFおよび唾液サンプルを、何人かの患者の口腔から非侵襲的に採取した。フーリエ変換−タンデム質量スペクトル計(FT MS/MS)に連結された、液体クロマトグラフィー法を使用して、前記サンプル内からタンパク質バイオマーカーを分離して、前記タンパク質バイオマーカーを同定した。
【0045】
健康な口腔状態および疾患の口腔状態を区別するであろうバイオマーカーのパネルを試行して解明するために、前記FT MS/MSプロテオームアプローチを、歯周病について健康なボランティア、歯肉炎のボランティア、軽度のおよび重度の歯周炎のボランティア、ならびに無歯ボランティア(無歯対照)から採取したサンプルに適用した。特に、前記FT MS/MSアプローチがなされることにより:
1.歯周病について健康的かおよび疾患的かを区別すること
2.歯肉炎および歯周炎を区別すること
3.軽度および重度の歯周炎を区別すること
ができる、新規なタンパク質バイオマーカーを、歯肉溝滲出液(GCF)および誘導唾液の非推定プロテオーム分析により見出した。
【0046】
研究計画
表1
【表1】
【0047】
患者ボランティアの5つの群を、表1に定義するとおりに採用した。臨床的に示唆され得るルーチンの治療以外に計画された介入なしで(with no interventions planned other than routine therapy that may be clinically indicated)、前記研究を横断的研究として行った。サンプリングのために、1回の来院のみがベースラインにおいて必要であったが、群3および4の患者は、ルーチンの歯周測定(periodontal scaling)、歯根表面創面切除および予防を必要とし、したがって、彼らの治療の完了後、再検査され、3か月後にサンプリングした。したがって、縦断的分析が、群3および4について利用可能であった。前記臨床評価を、熟練した研究歯科医(a trained study dental surgeon)により実行した。
【0048】
サンプル採取
ボランティアは、標準ろ紙片(Periopapers(登録商標))上で非侵襲的に、前記歯肉(歯茎)縁から採取されたGCFの6個のサンプルを提供することを求められた。彼らはまた、滅菌マーブル(sterile marble)を彼らの口腔内を5分間回転させて、体積測定用段階的滅菌ガラス採取バイル(a graduated sterile glass collection vile)中に吐き出すことより、誘導唾液サンプルを提供することを求められた。
【0049】
GCFおよび唾液を、10人のボランティアから採取し、そのそれぞれを5つの表現型群:健康、歯肉炎、軽度の歯周炎、重度の歯周炎、および−ve対照群(a −ve control group)として無歯患者、に明確に定義した。したがって、合計50人のボランティアを採用してサンプリングした。前記歯周組織炎を除去して改善された健康を回復するために、歯周炎のボランティア(群3および4)を次いで非外科的に処置した。GCFおよび唾液をまた、これらの2つの群においては、処置後3か月後に採取して、縦断的データを提供した。
【0050】
表2は、ベースライン時点および治療後の時点で、5つの発現型群を表す50人の患者から得られた平均臨床データを提示する。GCFおよび唾液サンプルを、10人のボランティアから採取し、そのそれぞれを5つの表現型群:群I(健康)、群II(歯肉炎)、群III(軽度の歯周炎)、群IV(重度の歯周炎)、群V(陰性対照群としての無歯患者)、に明確に定義し、ここで、前記表現型群を、予め定義された臨床データ閾値に基づいて定義する。前記歯周組織炎を除去して改善された健康を回復するために、歯周炎のボランティア(群3および4)を、非外科的に処置したので、「ベースライン」および「再調査」の両方の臨床データを有する。
【0051】
表2
【表2】
【0052】
サンプル処理
GCFサンプル
GCFサンプルを、ボランティア毎に6本の歯の近心面頬面(mesio−buccal)サイトから、従来のとおりに(as is convention)30秒間、Perotron 8000(登録商標)で体積を読み、Periopaper片上に採取した(Chapple et al 1999)。これらを1.5mL スクリュートップクライオチューブ中の、400μLの100mM 炭酸アンモニウム緩衝液中に置いた。前記GCFサンプルを、直ちに−80℃まで凍結した。分析に先立って、GCFを氷上で解凍した。前記チューブを30秒間ボルテックスして、溶液を清潔なスナップトップエッペンドルフチューブ中に除去した。200μLの炭酸アンモニウム(100mM)を、前記片に添加した。これらを、30秒間、再度ボルテックスして、13,000RPMで5分間、再度遠心分離した。溶液を除去して、前のものに添加した。群内の各サンプルから、150μLを合わせて、群毎に、単一の「プールされた(pooled)」サンプルを得た。個別の患者サンプルを戻して(held back)、いったん好ましいバイオマーカーパネルが解明されたところで、患者特有レベルでの研究後の再評価が可能となるようにした。したがって、6×1.5mL「母集団」サンプルが、表3に示すとおり、MSによるプロテオーム分析に利用可能であった。
【0053】
表3
【表3】
【0054】
唾液サンプル
唾液の分泌を、滅菌マーブルを使用して誘導し、15mLファルコンチューブ中に5分間採取した。チューブを、−80℃で凍結させた。分析に先立って、前記唾液を4℃で解凍した。追加のファルコンチューブを、解凍前に秤量して、透明の(clarified)唾液を移動した。いったん解凍されたところで、前記唾液を、1.5mL スナップトップエッペンドルフチューブ中に等分して、13,000RPMで5分間、遠心分離した。上澄みを、前記予め秤量されたチューブ中に移動した。前記破片ペレット(debris pellet)をまた、今後の分析のために保持した。唾液の重量および体積の両方を記録した。群毎に、10μLの各唾液サンプルを、GCFサンプルと同様のやり方で合わせた。しかしながら、GCFとは異なり、唾液は、無歯患者群(群5)から利用可能であったため、合計7×105μLの「母集団」の唾液サンプルとなった。GCFについては、前記個別の患者サンプルを戻して、今後の「患者レベル」分析が可能となるようにした。前記プールされた唾液サンプルを、13,000RPMで5分間、遠心分離して、100μLを保持した。これは、最終サンプル中に、破片が移動されないことを保証するものであった。炭酸アンモニウム(100μL、200mM)を、各サンプルに添加した。
【0055】
LC FT MS/MSによるサンプル分析
ジチオトレイトール(dithiothrietol)を、GCFおよび唾液サンプルの両方に添加し(20μL、50mM)、これらを、60℃で45分間振とうしながらインキュベートして、あらゆるジスルフィド結合を還元した。前記サンプルを、ヨードアセトアミド(100μL、22mM)の添加および暗所での25分間室温でのインキュベートの前に室温に戻した。ヨードアセトアミドは、システイン残基上の遊離チオール基をアルキル化する。ジチオトレイトール(2.8μL、50mM)を添加して、残留する、あらゆるヨードアセトアミドをクエンチした。1μgのLys−C(リシン残基のC末端でタンパク質を切断するもの)を、各サンプル(1:100 酵素:タンパク質)に添加して、37℃で振とうしながら4時間インキュベートした。2μgのトリプシン(リシンおよびアルギニン残基のC末端でタンパク質を切断するもの)を添加し、一晩37℃で、消化を継続した。
【0056】
前記サンプルを、(iTRAQラベリングに必要な)脱塩に先立って真空遠心分離乾燥した。前記サンプルを酸性化して(200μL、0.5% TFA)、マクロトラップ(Michrom)を使用して脱塩を行った。前記トラップをアセトニトリルで湿らせ(3×50%、200μL)、続いてトリフルオロ酢酸で洗浄した(3×0.1%、200μL)。前記サンプルを、次いで前記トラップをにより負荷し、溶離液は、再度前記トラップを通った。前記トラップを、再度トリフルオロ酢酸で洗浄し(3×0.1%、200μL)、最終的にペプチドをアセトニトリルで溶離した(70%、100μL)。前記サンプルを、真空遠心分離乾燥した。
【0057】
前記乾燥サンプルを、以下の表4に示すとおり、前記iTRAQ 8−plexラベルでラベルした。前記ラベリングにより、全てのサンプルが連続的に混合され、一連の条件下で、三連で(in triplicate)行うことが可能となる。続いて、前記個別群のサンプルを、前記iTRAQラベルから同定した。
【0058】
表4
【表4】
【0059】
全ての個別のサンプルを、GCFおよび唾液のそれぞれについて、一緒に混合する前に、前記サンプルをラベルして2時間室温でインキュベートした。前記合わせたサンプル(1つのプールされた唾液および1つのプールされたGCF)を、真空遠心分離乾燥した。前記サンプルを、前記SCXシステムのための100μLの移動相A中に再懸濁させた(10mM KH2PO4、pH 3、20% MeCN)。前記ペプチドを上記の移動相Aおよび移動相Bを使用した、強カチオン交換クロマトグラフィーを使用して、分離した(10mM KH2PO4、500mM KCl、pH 3、20% MeCN)。勾配を、90分間かけた。15個の画分を回収した。画分15および12を合わせて、同様に13および14を合わせて、13画分を得た。
【0060】
図2および3を参照して、214nmで記録された前記UVを有する、得られたSCX UVトレースを、唾液サンプルおよびGCFサンプルのそれぞれについて示す。前記唾液およびGCFサンプルを、次いで、上記のマクロトラップLCカラムで脱塩して、真空遠心分離して、200μLの0.1%ギ酸中に再度懸濁した。20μLの前記サンプルを、2個のジップチップ(ziptip)で脱塩して、20μL中で溶離した。
【0061】
画分分析
各画分を、三連で、LC−MS/MSにより分析した。ペプチドを移動相A(0.1% ギ酸)中で、150mm Acclaim PepMap100 C18カラム上に負荷した。ペプチドを、350nl/分の流速で、3.2%から44%の移動相B(アセトニトリル+0.1% ギ酸)の線形勾配により、分離した。3.2%の移動相Bにおいて再平衡化する前に、前記カラムを、次いで90%の移動相Bで洗浄した。前記カラムオーブンを、35℃まで加熱した。前記LCシステムを、Advion Triversa Nanomate(Advion,Ithaca,NY)に連結し、これは、1.7kVのスプレー電圧で前記ペプチドを注入した。ペプチドを、前記LTQ−Orbitrap Velos ETD(Thermo Fischer Scientific,Bremen,ドイツ国)中に、直接注入した。前記質量分析計に、フルFT−MSスキャン(m/z 380〜1600)を行い、続いて、3種の最も存在量のあるイオンの解離衝突誘起解離(CID)MS/MSスキャンを行い、これに続いて同一の3種のイオンの高エネルギー衝突解離(HID)を行った。前記CIDスペクトルを使用して、前記ペプチドを同定し、前記HCDスペクトルを使用してそれらを定量した。
【0062】
データ分析
前記データを、Proteome Discoverer(V1.2,Thermo Fisher Scientific)を使用して分析した。データを技術的反復(technical repeat)として分析した。MascotおよびSEQUESTアルゴリズムを使用して、使用した同一の設定で前記データを探索した。前記データベースは、Socranskyにより記載されたとおりの、口腔細菌が補充された前記IPIヒトデータベースであった。このデータベースを、リバースバージョン(reverse version)で連結して、過誤率(false discovery rate)を提供した。前記データを、以下の設定で探索した:セミトリプシンを、最大で2個の切断部欠如を有する前記酵素として選択し、前記前駆体イオンについて5ppmの質量精度であり、フラグメントイオン質量許容差を0.5Daに設定した(semi−trypsin was selected as the enzyme with a maximum of 2 missed cleavages,5 ppm mass accuracy for the precursor ion,fragment ion mass tolerance was set to 0.5 Da)。システインのカルボキシアミドメチル化ならびにN−末端およびリシン残渣へのiTRAQ添加を、静的修正として設定した。セリン、トレオニンおよびチロシンのホスホリル化を、メチオニンの酸化およびチロシンへのiTRAQ添加と同様に、可変修正(variable modification)として設定した。
【0063】
各技術的複製からの前記探索結果を合わせて、2つまたは3つ以上のペプチドで同定されたタンパク質を、同定されたとおりに分類した。唯一のペプチドのみが、タンパク質定量に使用され、タンパク質グループ化を用いた(唯一のペプチドを含むタンパク質のみが使用された)。
【0064】
GCF分析予備結果−見出されたタンパク質
全てのGCFサンプルの前記分析から、270種のタンパク質が、2つまたは3つ以上のペプチドで同定された。これは、264種のヒトタンパク質および6種の細菌タンパク質を含むものであった。前記同定されたタンパク質を、添付の追加の表1において、関連する定量値に沿って示す。全てのタンパク質を、健康な対照群に対する比で示す(ラベル113−健康)。このデータを、続いて、採取されたGCF体積に正規化して、またlog変換して(底2)、陽性または陰性生存量値を得た。
【0065】
あらゆる前記疾患状態において、単に同定されるタンパク質はなかった。前記タンパク質の大部分は、健康なもの、歯肉炎および疾患間での、存在量の減少を示した(歯肉炎では229種の、軽度の歯周炎では195種の、および重度の歯周炎では174種のタンパク質が、健康なものと比較してより低い存在量であった)。前記群にわたる存在量のこの減少は、組織がより炎症を起こすものとして、および表2に証明されるとおり、GCF体積の増加によるものであり得る。代替的に、GCFの「非正規化」分析を、この問題に対処するために行ってもよく、これは、文献において認識されている(Lamster et al 1986,Chapple et al 1994&1999)。
【0066】
見出されたタンパク質に行われた、GCFクラスタリング分析
見出されたタンパク質を、前記PolySNAP 3ソフトウェアを使用してクラスタリングした。PolySNAP 3は、各一次元タンパク質プロファイルを、他の全てと比較し、ピアソンパラメータのおよびスピアマン非パラメータの相関係数の加重平均を使用して、類似スコアを生じさせる。前記プロファイルを、主成分分析、ガンマ統計法、および計量多次元尺度法(MMDS)を含む統計法の組み合わせを使用してクラスタリングした。前記データを、次いで、系統樹、PCAプロット、およびMMDSプロットで視覚化した。この分析において、群平均リンク階層的クラスタリング法および完全リンク階層的クラスタリング法を使用して、前記データをグループ化した。全ての場合において、使用したクラスターの数を、自動的にPolySNAP 3により設定した。
前記群平均クラスタリングから、3回のクラスタリングを行った。最大数のタンパク質を有する前記群を、各点において再クラスタリングした。
【0067】
第1回のクラスタリング
図4を参照すると、第1回の分析により、6個のクラスターが提供された。クラスター1は、前記タンパク質の大部分(243種のタンパク質)を含み、クラスター2は、19種のタンパク質を含み、クラスター3、5および6は、それぞれ1種のみのタンパク質を含み、クラスター4は、5種のタンパク質を含むものであった。
【0068】
引き続き
図4を参照すると、クラスター4は、疾患の間に存在量が減少するが、分割後に(post−resolution)ベースラインに戻らない、1セットのタンパク質を含むため、関心の対象であり得る。クラスター2として同定された前記19種のタンパク質は、歯周炎でのレベルのようにベースラインに戻る前に、歯肉炎で存在量の増加を示す。これは、血液を含む前記GCFサンプルの1種によるものであり得るが、出血は、歯肉炎および歯周炎の決定的な臨床サインであり、血液関連タンパク質は、健康および疾患について極めて識別的であり得る。ヘモグロビンアルファおよびベータを含むこの群において同定された、数種の血液関連タンパク質がある。これは、血液が存在する可能性があるにもかかわらず、歯肉炎および歯周炎および健康を区別し得る群として関心の対象であり得る。クラスター3および5は、例えば、未処置の歯周炎を、健康/歯肉炎と区別すると思われる。
前記タンパク質、同定された、関心のあるクラスターである、クラスター3、4および5を、添付の追加の表2に示す。
【0069】
第2回のクラスタリング
図5を参照すると、
図4のクラスター1からの前記243種のタンパク質を再クラスタリングし、合計4つの群を得た。群1Aは、前記タンパク質の主要部(233種)を含み、群1Bおよび1Cは、それぞれ2種のタンパク質を含み、群1Dは、6種のタンパク質を含むものであった。群1Dは、歯周炎で増加する前に、健康および歯肉炎間でほとんど変化を示さない。軽度の歯周炎および処置された軽度の歯周炎間で相対的存在量が下落して、前記処置された重度の歯周炎でベースラインへ戻っている。群1Cで同定された前記2種のタンパク質は、前記処置されたサンプル中で前記ベースラインに向かって戻る前に、歯肉炎まで減少して2つの歯周炎群まで大きく減少して、疾患に従うと思われる(appear to follow)。かかるタンパク質は、処置が成功したか否かの結果測定として分析したものと想定され得る。
関心のあるクラスター中で同定された前記タンパク質である、クラスター1Cおよび1Dを、添付の追加の表3に示す。
【0070】
第3回のクラスタリング
図6を参照すると、
図5のクラスター1Aからの前記233種のタンパク質を再度クラスタリングし、4つのクラスターを得たが、存在量の変化は、ここでは、対数スケールで2より小さい(4倍の増加/減少)。最大クラスター(1A1)は、なお171種のタンパク質を含み、クラスター1A2は、50種のタンパク質を含み、1A3は、10種のタンパク質を含み、1A4は、2種のタンパク質を含むものであった。再び、この分析において、潜在的に関心のある群があるように思われる。
関心のある各クラスター中で同定された前記タンパク質である、クラスター1A3および1A4を、添付の追加の表4に示す。
【0071】
最終回のクラスタリング
図7を参照すると、
図6のクラスター1A1からの前記171種のタンパク質について、最終回のクラスタリングが行われた。これにより、
図6に示す4つの群が得られた。この分析から、関心があると思われるクラスターはない。
複数回のクラスタリング分析により、GCF中に、歯周炎の異なる疾患状態を区別し得る、いくつかの群があることが示唆される。
【0072】
唾液分析予備結果−見出されたタンパク質
全ての唾液サンプルを、GCFサンプルと同様に分析した。314種のタンパク質が、2つまたは3つ以上のペプチドで同定され、これは、307種のヒトタンパク質および7種の細菌タンパク質を含むものであった。1種のタンパク質を、1種のサンプル群(無歯)においてのみ同定した。前記同定されたタンパク質を、添付の追加の表5において、関連する定量値に沿って示す。
【0073】
見出されたタンパク質に行われた唾液クラスタリング分析
第1回のクラスタリング
前記クラスタリング分析について、前記無歯サンプルは含まれなかった。PolySNAP 3を使用してクラスタリング分析を行った。
図8を参照すると、第1回のクラスタリングにより、5個のクラスターを得た。最大クラスター(1)は、297種のタンパク質を含む一方で、クラスター2および5は、それぞれ1種のタンパク質を含むものであった。クラスター3は、11種のタンパク質を含み、クラスター4は、3種のタンパク質を含むものであった。前記GCFデータセットと同様に、疾患で下方制御されて処置後にベースラインに戻らない、タンパク質の群がある。クラスター2は、重度の歯周炎を、より軽度の状態と区別すると思われる。
関心のある前記クラスターにおいて同定された前記タンパク質である、クラスター2を、添付の追加の表6に示す。
【0074】
第2回のクラスタリング
図9を参照して、
図8からのクラスター1を、再クラスタリングして、さらに4つのクラスター群を得た。最大の群は、166種のタンパク質を含むものであった(クラスター1A)。クラスター1Bおよび1Dは、それぞれ14種および1種のタンパク質を含むものであった。これらの2つの群は、歯肉炎/軽度の歯周炎および重度の歯周炎を区別し得る。しかしながら、両方の場合において、重度の歯周炎への前記シグナルは健康レベルに近いが、処置後に、軽度および重度の歯周炎の両方についてタンパク質存在量の増加が起こる。クラスター1Cは、116種のタンパク質を含むものであった。この群において、健康および歯肉炎間ではほとんど変化を示さず、その後、重度の歯周炎への大幅な増加の前に、軽度の歯周炎への増加がある。これらの値は、前記処置されたサンプルにおいて減少するが、前記歯肉炎の群より、なお高いレベルである。
関心のある各クラスターにおいて同定された前記タンパク質である、クラスター1Bおよび1Cを、添付の追加の表7に示す。
【0075】
第3回のクラスタリング
図10を参照すると、
図9からのクラスター1Aを、再クラスタリングした。クラスター1Aにより、5つの群が得られ、最大クラスター(1A1)は、150種のタンパク質を含むものであった。ここでは、いかなる顕著なクラスターがあるとも思われない。クラスター1A4により、3種のタンパク質が提供され、クラスター1A5により、1種のタンパク質が提供された。クラスター1A4および1A5における前記タンパク質バイオマーカーは全て、軽度の歯周炎におけるものよりは大きく、重度の歯周炎におけるものよりは小さい、健康および歯肉炎間でタンパク質存在量の増加または減少を示す。
クラスター1A4および1A5において同定された前記タンパク質を、添付の追加の表8に示す。
【0076】
図11を参照すると、
図9からのクラスター1Cを、再クラスタリングして、3つのクラスターを得た。クラスター1C2は、7種のタンパク質を含み、これらは、処置後の減少の前の、重度の歯周炎まで、タンパク質存在量の近線形的増加を示す。この群は、さらにクラスタリングされなかった。クラスター1C2において同定された前記タンパク質を、添付の追加の表9に示す。
【0077】
最終回のクラスタリング
図12を参照すると、
図10からのクラスター1A1を再クラスタリングした。5つのクラスターが観測され、重度の歯周炎についての存在量の増加を示すタンパク質の群(クラスター1A1b)が観測されたが、その他の群には観測されなかった。このクラスター中で同定された、5種のタンパク質があった。クラスター1A1bにおいて同定された前記タンパク質を、添付の追加の表10に示す。
【0078】
GCFおよび唾液データセットの比較
前記2個のデータセットにおいて観測された前記タンパク質を比較して、唾液およびGCFサンプルの両方において見出されたタンパク質バイオマーカーを同定した。
図13を参照すると、95種のタンパク質が、前記GCFおよび唾液中で同定され、
図13のベン図の重複領域により表される。これは、前記GCFデータセットで同定されたタンパク質の総数のおよそ3分の1である。
【0079】
前記重複領域において観測された前記タンパク質を、添付の追加の表11に示す。追加の表11中の前記タンパク質についての関連する存在量データを回収して、続いて、観測された前記タンパク質存在量について変換して、Log(2)比を描いた。さらに、前記GCFについての2つの値を測定して、一方を回収した体積に正規化し、他方についてはしなかった。
【0080】
GCFが、唾液の構成成分であるとされる場合には、および唾液が、前記同一のGCF体積に正規化されない場合には、前記3つの値を比較することが有用であり得る。これらの三重の値の分析は、これらのタンパク質のいくつかが極めて類似のプロファイルを有することを示す。存在量の値の大きな増加または減少を伴う、それらのタンパク質バイオマーカーのいくつかを、
図14〜17に描く。
【0081】
図14は、タンパク質 S100−Pについての前記3つのトレースを示す。S100−Pは、細胞周期の進行および分化の制御に関与する。GCFおよび唾液の両方について観測され、口腔扁平上皮がんについての潜在的バイオマーカーとして示唆された。
図14に示すとおり、S100−Pタンパク質のiTRAQ測定存在量は、軽度の歯周炎および重度の歯周炎間で、大きな増加があることを示す。したがって、S100−Pは、軽度および重度の歯周炎を区別するための、有用なタンパク質バイオマーカーとして役立ち得る。
【0082】
図15は、カルグラニュリン−Aとしても知られる、タンパク質 S100−A8についての、前記3つのトレースを示す。それは、細菌に対して抗菌活性を有する。炎症におけるプロ炎症(pro inflammatory)のメディエーターであり、IL8の放出を上方調整する(up−regulate)。高レベルのS100−A8が、慢性歯周炎を有する患者の血漿中で検出された。
図15において示すとおり、S100−A8 タンパク質のiTRAQ測定存在量は、軽度の歯周炎および重度の歯周炎間で、大きな増加があることを示す。したがって、S100−A8は、軽度および重度の歯周炎を区別するための、有用なタンパク質バイオマーカーとして役立ち得る。
【0083】
図16は、タンパク質ミオシン−9についての、前記3つのトレースを示す。
図16において示すとおり、ミオシン−9タンパク質のiTRAQ測定存在量は、軽度の歯周炎および重度の歯周炎間で、大きな増加があることを示す。したがって、ミオシン−9は、軽度および重度の歯周炎を区別するための、有用なタンパク質バイオマーカーとして役立ち得る。
【0084】
図17は、タンパク質トランスアルドラーゼについての、前記3つのトレースを示す。
図17において示すとおり、トランスアルドラーゼタンパク質のiTRAQ測定存在量は、軽度の歯周炎および重度の歯周炎間で、大きな増加があることを示す。したがって、トランスアルドラーゼは、軽度および重度の歯周炎を区別するための、有用なタンパク質バイオマーカーとして役立ち得る。
【0085】
図18は、タンパク質ヘモグロビンベータについての、前記3つのトレースを示す。
図18において示すとおり、ヘモグロビンベータタンパク質のiTRAQ測定存在量は、軽度の歯周炎および重度の歯周炎間で、大きな増加があることを示す。前記トレースはまた、全ての口腔疾患状態の範囲にわたって、増加および減少する。したがって、ヘモグロビンベータ(またはアルファ)は、軽度および重度の歯周炎、および/または他の口腔疾患状態を区別するための、有用なタンパク質バイオマーカーとして役立ち得る。
【0086】
結果の検討
前記GCFおよび唾液データセットに、The Database for Annotation,Visualization and Integrated Discovery(DAVID)を使用した、遺伝子オントロジー分析は、前記唾液データセットにおける最も顕著に強化された生物学的プロセスは、防御応答であり、GCFデータセットにおいては、細胞骨格形成であったことを示す。上位20個のプロセスを、添付の追加の表12に示す。前記20個のうちの7個は、防御応答、刺激に対する応答、および解糖を含め、GCFおよび唾液の両方において強化される。
【0087】
GCFおよび唾液の前記分析により、GCF中で270種のタンパク質が同定され、唾液中で314種のタンパク質が同定され、そのうちの95種は、両方において同定された。(無歯の唾液中で単に同定された)1種を除く全てのタンパク質を、前記異なる疾患および回復期にわたって定量した。GCFおよび唾液の両方において同定される前記タンパク質のうち、疾患により(GCFおよび唾液データセットの両方の)増加を示し、健康、歯肉炎、軽度および重度の歯周炎ならびに疾患の回復を区別するのに潜在的に使用し得る、いくつかのタンパク質がある。
【0088】
例示的態様によれば、口腔疾患の状態を診断するための方法は:ヘモグロビン鎖アルファおよびベータ、炭酸脱水酵素1(IPI00980674)、ならびにプラスチン1、からなる群からの少なくとも1種のタンパク質バイオマーカーを選択することを含む。前記方法は、さらに、健康状態、歯肉炎状態、および軽度および/または重度の歯周炎状態である、少なくとも1種の前記状態を診断することを含み得る。別の態様において、前記少なくとも1種のタンパク質バイオマーカーは、唾液データクラスター1C2(追加の表9)における前記タンパク質バイオマーカー:タンパク質 #IPI00016347.5、タンパク質 #IPI00377122.4、ヘモグロビンサブユニットアルファ(IPI00410714.5)、ヘモグロビンサブユニットデルタ(IPI00473011.3)、ヘモグロビンサブユニットベータ(IPI00654755.3)、タンパク質 #IPI00980674.1およびタンパク質受入番号#O83773、からなる群から選択される。
【0089】
また、前記GCFおよび唾液データセットの両方において存在量の増加を示すことにより、重度の歯周炎についての潜在的指標である、いくつかのタンパク質バイオマーカーがある。例示的態様において、重度の歯周炎を診断するための方法は:S100−P、トランスアルドラーゼ、S100−A8(カルグラニュリン−A)、ミオシン−9、ヘモグロビンアルファ、およびヘモグロビンベータ、からなる群からの少なくとも1種のタンパク質バイオマーカーを選択することを含む。別の態様において、重度の歯周炎を診断するための前記方法は、唾液データクラスター1A1b(追加の表10)における前記タンパク質バイオマーカー:タンパク質S100−A11(IPI00013895.1)、タンパク質IPI00037070.3、カタラーゼ(IPI00465436.4)、コリントランスポーター様タンパク質2誘導体(IPI00903245.1)、およびチチンのアイソフォーム N2−B(IPI00985334.2)、からなる群からの少なくとも1種のタンパク質バイオマーカーを選択することを含む。
【0090】
なお別の側面において、重度の歯周炎を診断するための前記方法は:S100−P、トランスアルドラーゼ、S100−A8(カルグラニュリン−A)、ミオシン−9、ヘモグロビンアルファ、およびヘモグロビンベータ、アルファ−1−酸性糖タンパク質1および2、マトリクスメタロプロテイナーゼ−9、ペプチジル−プロリルcis−transイソメラーゼA、ならびにハプトグロビン関連タンパク質(IPI00431645.1)、からなる群からの、少なくとも1種のタンパク質バイオマーカーを選択することを含む。
【0091】
別の例示的態様によれば、歯肉炎または軽度の歯周炎を診断するための方法は、唾液データクラスター1B、1D(追加の表7)におけるおよび/または唾液データクラスター1A4、1A5(追加の表8)における前記タンパク質バイオマーカーからなる群からの、少なくとも1種のタンパク質バイオマーカーを選択することを含む。これらのタンパク質バイオマーカーは全て、軽度の歯周炎におけるものよりは大きく、重度の歯周炎におけるものよりは小さい、健康および歯肉炎間でタンパク質存在量の増加または減少を示す。これらを使用して、歯肉炎および軽度の歯周炎と重度の歯周炎とを(between gingivitis and mild periodontitis with severe periodontitis)差別化することが、可能であり得る。
【0092】
別の態様によれば、歯肉炎または軽度の歯周炎を診断するための方法は、NADPHオキシダーゼ活性化剤−1およびアルファ−N−アセチルガラクトサミニダーゼからの少なくとも1種のタンパク質を選択することを含む。NADPHオキシダーゼ活性化剤−1は、反応性酸素種の産生に関与する。アルファ−N−アセチルガラクトサミニダーゼは、重度の歯周炎と比較して、歯肉炎および軽度の歯周炎について、いくつかの最大比を有する。このタンパク質は、糖脂質の分解に関与する。別の側面において、歯肉炎または軽度の歯周炎を診断するための前記方法は、アルファアルファ−N−アセチルガラクトサミニダーゼバイオマーカー(Alphaa alpha−N−acetylgalactosaminidase biomarker)を選択することを含む。
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
【表7】
【0096】
【表8】
【0097】
【表9】
【0098】
【表10】
【0099】
【表11】
【0100】
【表12】
【0101】
【表13】
【0102】
【表14】
【0103】
【表15】
【0104】
【表16】