(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電極対が、前記空隙を隔てて対向配置された2枚の透明基板の対向面にそれぞれ配置された透明導電膜を有し、該素子がカメラ用調光フィルターを構成する請求項1から3のいずれか1つに記載の素子。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
《実施の形態1(鏡面反射透過型素子)》
この発明の反射率可変素子を薄型の鏡面反射透過型反射率可変素子(反射面が鏡面を構成し、かつ反射率が低いときに厚み方向に透過性である反射率可変素子)として構成した実施の形態を以下説明する。
図1において鏡面反射透過型反射率可変素子10(以下「鏡面反射透過型素子10」)は空隙12を隔てて対向配置されたガラス製または樹脂製の2枚の透明基板14,16を具えている。透明基板14,16のそれぞれの面は平滑である。透明基板14,16の対向面には電極対を構成する透明導電膜18,20がそれぞれ成膜形成されている。透明導電膜18,20は例えばITO(酸化インジウム・スズ)、酸化スズ、酸化亜鉛等で構成される。空隙12には電解液22が充填されている。空隙12の周囲はシール材24で封止されている。電解液22は炭酸プロピレンを主成分(最も含有重量が多い成分)とし、メタノールを副成分(主成分よりも含有重量が少ない成分)として含有する非水溶媒に、溶質として、AgNO
3(硝酸銀)、CuCl
2(塩化第二銅)、支持電解質のLiBrをそれぞれ溶解して構成されている。電解液22中の硝酸銀の含有重量は塩化第二銅の含有重量よりも多い。電解液22には増粘剤としてポリプロピレン、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタアクリレート等のポリマーを添加することができる。透明導電膜18,20にはリード線32,34の一端部がそれぞれ接続されている。リード線32,34の他端部間にはスイッチ36と直流電源38による直列接続回路が接続されている。またリード線32,34間にはスイッチ40が、スイッチ36と直流電源38による直列接続回路と並列に接続されている。スイッチ36,40は相互に連動して互いに逆方向にオン、オフ切り換えされる。
【0023】
以上の構成の鏡面反射透過型素子10の動作を説明する。
図1のようにスイッチ36がオフし、スイッチ40がオンしているときは透明導電膜18,20間は短絡状態となり、透明導電膜18,20間に電場は生じない。したがって電解液22中で金属陽イオンAg
+、Cu
2+、陰イオンNO
3-、Cl
-は分散した状態にある。このとき電解液22はほぼ無色透明であり、鏡面反射透過型素子10は透明基板14から透明基板16に至るまで厚み方向全体がほぼ無色透明である(透明導電膜18,20の色が若干生じる場合がある)。
【0024】
図1の状態から
図2のようにスイッチ36をオンし、スイッチ40をオフすると直流電源38の電圧が透明導電膜18,20間に印加され(透明導電膜18を正電極、透明導電膜20を負電極とする)、透明導電膜18,20間に電場が生じる。この電場により電解液22中の金属陽イオンAg
+、Cu
2+は負電極20の表面に移動して還元される。その結果、負電極20の表面に銀を主成分とし、副成分として少量の銅が混在する析出層(鏡面反射層)26が析出して、析出層26による反射面(鏡面)26aを出現させる。これにより鏡面反射透過型素子10は反射率(主に鏡面反射による反射率)が増大し、透過率が減少してミラーまたはハーフミラーとなる。透明導電膜18,20間に印加する電圧を段階的にまたは無段階に可変できるようにして、反射率、透過率を段階的にまたは無段階に調整可能にすることもできる。あるいは透明導電膜18,20間に印加する電圧を、直流電圧(所望の最高反射率または最低透過率を実現する大きさの直流電圧)をパルス幅変調した電圧とし、このパルス幅変調のパルスのデューティ比を段階的にまたは無段階に可変できるようにして、反射率、透過率を段階的にまたは無段階に調整可能にすることもできる。なお、鏡面反射透過型素子10は、
図2の鏡面反射透過型素子10の右側(透明基板16側)から入射する光Laを、析出層26を右側から見た鏡面26aで反射する素子として利用することができる。このほか、鏡面反射透過型素子10は、鏡面反射透過型素子10の左側(透明基板14側)から入射する光Lbを、析出層26を左側から見た鏡面26bで反射する素子として利用することもできる。さらには、鏡面反射透過型素子10は、鏡面反射透過型素子10の左右両側から入射する光を左右の鏡面26a,26bで反射する素子として利用することもできる。
【0025】
図2の状態から再び
図1のようにスイッチ36をオフし、スイッチ40をオンすると透明導電膜18,20間が短絡し、透明導電膜18,20間の電場が消失する。これにより、析出層26を形成していた銀および銅は酸化されて、負電極20の表面から離脱して、金属陽イオンAg
+、Cu
2+となって、再び電解液22中に分散する。析出層26が、主成分の銀に銅を混在して構成されているため、このような離脱が可能となる。その結果、鏡面反射透過型素子10は反射率が低下し、透過率が増大して元の透明な状態に戻る。なお両電極18,20間を短絡するのに代えて、両電極18,20間を開放することもできる。すなわち両電極18,20間を開放すると、両電極18,20間の電場が消失するので、金属陽イオンAg
+、Cu
2+を負電極20から離脱させて、鏡面反射透過型素子10を元の透明な状態に戻すことができる。すなわち、
図2の状態からスイッチ36,40を共にオフして両電極18,20間を開放すると、鏡面反射透過型素子10は、両電極18,20間を短絡した場合に比べて緩やかな速度で反射率が低下し、透過率が増大して元の透明な状態に戻る。
図8は鏡面反射透過型素子10の或る試料について、透過率をほぼ0%まで低下させることができる大きさの直流電圧を印加して測定した透過率の時間変化特性を示す。特性I,II,IIIはそれぞれ次を示す。
・特性I:初期透過率が約77%(透過率の数値は波長550nmにおける値を示す。以下同じ)の状態から両電極18,20間に直流電圧を印加して、透過率が7%まで低下したところで両電極18,20間を短絡したときの特性
・特性II:初期透過率が約77%の状態から両電極18,20間に、特性Iを測定したときと同じ直流電圧を印加して、透過率が7%まで低下したところで両電極18,20間を開放したときの特性
・特性III:初期透過率が約77%の状態から両電極18,20間に、特性I,IIを測定したときと同じ直流電圧を印加して、透過率が35%まで低下したところで両電極18,20間を開放したときの特性
図8によれば、透過率が低下した状態から透過率が増大する速度は、両電極18,20間を短絡した場合は速く、両電極18,20間を開放した場合は遅いことがわかる。
【0026】
以上のようにして、両電極18,20間に電場を印加し、また電場の印加を解除することにより、鏡面反射透過型素子10の反射率および透過率を可逆的に変化させることができる。
【0027】
鏡面反射透過型素子10は例えば建築用調光窓ガラス、自動車用調光窓ガラス等の用途に好適に用いることができる。すなわち夏は透過率を低くする(反射率を高くする)ことにより紫外線、赤外線を反射させて室内の冷房効率を高め、冬は透過率を高くする(反射率を下げる)ことにより室内の暖房効率を高めることができる。その結果、省エネルギー効果が得られる。また透過率を低くする(反射率を高くする)ことにより、室外からの視線に対して目隠し効果を得ることもできる。
【0028】
また鏡面反射透過型素子10はカメラの調光フィルターの代替デバイスとして利用することもできる。すなわち、鏡面反射透過型素子10をカメラ内の光軸上に配置し、両電極18,20間に印加する電圧を段階的にまたは無段階に可変する。あるいは透明導電膜18,20間に印加する電圧を、直流電圧(所望の最低透過率を実現する大きさの直流電圧)をパルス幅変調した電圧とし、このパルス幅変調のパルスのデューティ比を段階的にまたは無段階に可変する。これらのようにして鏡面反射透過型素子10の透過率を段階的にまたは無段階に調整することにより、機械的動作部分を有しない調光フィルターを構成することができる。
図9は鏡面反射透過型素子10の或る試料について測定した透過率の分光特性を示す。特性X,Y,Zはそれぞれ次を示す。
・特性X:両電極18,20間を短絡または開放し続けて、両電極18,20間の電場が消失して、素子10が透明(透過率は約77%)を呈している時の特性
・特性Y:両電極18,20間に透過率をほぼ0%まで低下させることができる大きさの直流電圧を印加し続けて、両電極18,20間の電場が飽和して、素子10が鏡面(透過率はほぼ0%)を呈しているとき時の特性
・特性Z:両電極18,20間に、特性Xのときと特性Yのときの中間の電場が生じて、素子10が透明と鏡面の中間状態(無彩色のハーフミラー状態)を呈している時の特性
図9によれば、中間状態の特性Zを利用してND(減光)フィルターを構成することができる。そして、この中間状態の電場の強さを段階的にまたは無段階に調整可能とすることにより可変NDフィルターを構成することができる。鏡面反射透過型素子10の透過率を鏡面状態と透明状態の中間の所望の透過率に調整し維持する方法としては例えば次の各方法が考えられる。
・方法1:両電極18,20間に印加する直流電圧の大きさを、鏡面状態と透明状態の中間の所望の透過率を実現する値に調整し、その調整した直流電圧を印加し続ける。なお、透過率を目標値に早急に到達させるために、直流電圧値を、調整開始当初は目標値を超える透過率を実現する電圧値に設定し、透過率が目標値に達したときまたはその直前に、透過率の目標値を維持する電圧値に戻すこともできる。
・方法2:両電極18,20間に印加する直流電圧の大きさを所望の最低透過率を実現する値に設定し、該直流電圧をパルス幅変調して両電極18,20間に印加する。このパルス幅変調のパルスのデューティ比を所望の透過率を維持する値に調整し、この調整したパルス幅変調電圧を印加し続ける。なお、透過率を目標値に早急に到達させるために、パルス幅変調電圧のデューティ比を、調整開始当初は目標値を超える透過率を実現する値に設定し、透過率が目標値に達したときまたはその直前に、透過率の目標値を維持する値に戻すこともできる。
なお、鏡面反射透過型素子10でNDフィルターを構成する場合は、透明状態で高い透過率が得られることが望ましいので、透明基板14,16を透過率が高い光学ガラス(白板ガラス)で構成し、かつ透明基板14,16の外表面に反射防止膜を形成するのが望ましい。
【0029】
また鏡面反射透過型素子10は透明導電膜20をセグメントに分割し各セグメントごとに電圧を印加することにより金属反射による表示体として構成することもできる。
【0030】
<<実施例>>
図1の鏡面反射透過型素子10の実施例を説明する。この実施例では次の手順で
図1の鏡面反射透過型素子10を製作した。
(1) この実施例では、溶質として無水硝酸銀および無水塩化銅(塩化第二銅)、溶媒の主成分として炭酸プロピレンを使用する。無水硝酸銀の使用重量は無水塩化銅の使用重量よりも多い。無水硝酸銀および無水塩化銅は炭酸プロピレンには不溶である。そこで、無水硝酸銀および無水塩化銅をそれぞれ脱水メタノールに溶解する。無水硝酸銀の脱水メタノールに対する飽和溶解度を試験したところ、5wt%であった。結果、飽和溶解度の5wt%硝酸銀−メタノール溶液を作成した。
(2) 無水塩化銅を脱水メタノールに溶解して塩化銅−メタノール溶液を作成する。この場合、塩化銅の濃度が高いと電解液22の透明度が低くなる。そこで、負電極20の表面からの金属陽イオンAg
+、Cu
2+の離脱を可能にし、かつ電解液22の十分な透明度が得られる濃度の塩化銅−メタノール溶液として、1wt%塩化銅−メタノール溶液を作成した。
(3) 支持電解質となる無水LiBrを炭酸プロピレンに溶解して、0.5mol/LのLiBr−炭酸プロピレン溶液を作成した。
(4) 工程(1)で作成した5wt%硝酸銀−メタノール溶液Aと、工程(2)で作成した1wt%塩化銅−メタノール溶液Bと、工程(3)で作成した0.5mol/LのLiBr−炭酸プロピレン溶液Cを、重量比A:B:C=10:1:80で混合して、電解液22を作成した。このとき、電解液22全体に占める硝酸銀の含有量は、5wt%×{10/(10+1+80)}=0.55wt%である。
(5) それぞれ5cm四方の2枚の正方形の透明基板14,16を用意し、これら透明基板14,16を隙間距離300μmの空隙12を隔てて対向配置した。透明基板14,16の対向面には、ITO透明導電膜18,20がそれぞれ形成されている。ITO透明導電膜18,20の表面抵抗値は10Ω/□である。
(6) 工程(4)で作成された電解液22を空隙12に充填し、該充填後に空隙12の周囲をシール材24で封止して鏡面反射透過型素子10を完成した。完成した鏡面反射透過型素子10は厚み方向に透明であった。
【0031】
以上の手順で製作された鏡面反射透過型素子10について、
図1のように電気回路を接続して以下のとおり各種特性を調べた。
【0032】
[実験1:透過率最終到達上下限値の確認]
初めに、電圧を印加する前の鏡面反射透過型素子10の初期透過率は約77%であった。
図1のスイッチ36がオフ、スイッチ40がオンの状態から、
図2のようにスイッチ36をオン、スイッチ40をオフして両電極18,20間に直流電源38から2.1Vの電圧を印加した。このときの鏡面反射透過型素子10の透過率の変化を
図3に線aで示す。すなわち、透過率は、初期値である約77%から、印加を開始すると、析出層26の層厚の増加に伴い、時間とともに低下し、印加開始から30秒で約5%になり、最終的にほぼ0%になった。透過率が低下するにつれて、析出層26は銀色の鏡面26aを呈するに至った。透過率がほぼ0%になった状態からスイッチ36,40を
図1の状態に戻して両電極18,20間を短絡すると、析出層26の層厚の減少に伴い、鏡面26aの銀色は薄まっていき、透過率は徐々に上昇し最終的に初期値である約77%に戻った。これとともに析出層26は消失し、鏡面反射透過型素子10は元の、厚み方向に透明な状態に戻った。
【0033】
[実験2:低温耐性の確認]
図1のスイッチ36がオフ、スイッチ40がオンの状態から、
図2のようにスイッチ36をオン、スイッチ40をオフして両電極18,20間に2.1Vの電圧を印加した。次いでこの印加開始から30秒後に、スイッチ36,40を
図1の状態に戻して両電極18,20間を短絡した。このときの鏡面反射透過型素子10の透過率の変化を
図3に線bで示す。すなわち、透過率は、初期値である約77%から、印加を開始すると、時間とともに低下し、印加開始から30秒後に約5%となった。そこから短絡に切り換えると透過率は時間とともに上昇し、短絡開始から約2分で約76%に戻った。
【0034】
次いで、
図3の特性bを測定した鏡面反射透過型素子10を−30℃の環境に24時間放置した後に、該環境から取り出したところ、鏡面反射透過型素子10に金属塩の析出は見られなかった。該低温環境から取り出した鏡面反射透過型素子10について上記同様の実験を行った。すなわち、
図1のスイッチ36がオフ、スイッチ40がオンの状態から、
図2のようにスイッチ36をオン、スイッチ40をオフして両電極18,20間に2.1Vの電圧を印加した。次いでこの印加開始から30秒後に、スイッチ36,40を
図1の状態に戻して両電極18,20間を短絡した。このときの鏡面反射透過型素子10の透過率の変化を
図3に線cで示す。すなわち、透過率は、低温環境から取り出した直後の約75%から、印加を開始すると、時間とともに低下し、印加開始から30秒後に約5%となった。そこから短絡に切り換えると透過率は時間とともに上昇し、短絡開始から約2分で約73%に戻った。したがって、この実験から、鏡面反射透過型素子10は、低温耐性が十分に得られていることがわかった。すなわち、DMSOを使用せずに、銀の化合物を非水溶媒に溶解して電解液を作成して、銀を含む析出層26で構成される鏡面26aを出現させる、低温耐性が高い薄型の反射率可変素子を成立させることができた。
【0035】
[実験3:電圧印加・短絡を繰り返したときの性能の確認]
図1のスイッチ36がオフ、スイッチ40がオンの状態から、
図2のようにスイッチ36をオン、スイッチ40をオフして両電極18,20間に2.1Vの電圧を印加する。次いでこの印加開始から30秒後に、スイッチ36,40を
図1の状態に戻して両電極18,20間を4分間短絡する。この一連の動作を1サイクルとして、この動作を1000サイクル連続して繰り返した。その後、
図1のスイッチ36がオフ、スイッチ40がオンの状態から、
図2のようにスイッチ36をオン、スイッチ40をオフして両電極18,20間に直流電源38から2.1Vの電圧を印加し続けて、鏡面反射透過型素子10の透過率最終到達下限値を測定した。さらにその後、スイッチ36,40を
図1の状態に戻して両電極18,20間を短絡し続け、鏡面反射透過型素子10の透過率最終到達上限値を測定した。その結果、応答速度は1000サイクル繰り返し実験前よりも若干低下するものの、透過率最終到達下限値はほぼ0%、透過率最終到達上限値は初期値と同じ約77%となった。したがって、この結果から、電圧印加・短絡を繰り返しても可逆性能が維持されることがわかった。
【0036】
《実施の形態2(鏡面反射非透過型素子)》
この発明の反射率可変素子を薄型の鏡面反射非透過型反射率可変素子(反射面が鏡面を構成し、かつ反射率が低いときに厚み方向に非透過性である反射率可変素子)として構成した実施の形態を以下説明する。実施の形態1と共通する部分には同一の符号を用いる。
図4において鏡面反射非透過型反射率可変素子42(以下「鏡面反射非透過型素子42」)は空隙12を隔てて対向配置された不透明基板44と透明基板16を具えている。不透明基板44は例えば表面が暗色(黒色等)のガラス、セラミックス、樹脂、金属等の基板で構成されたもので、表面の反射率は低い。不透明基板44の表面は平滑面に形成するほか、微細な凹凸面に形成して拡散反射性にすることもできる。不透明基板44と透明基板16の対向面には電極対を構成する透明導電膜18,20がそれぞれ形成されている。空隙12には電解液22が充填されている。空隙12の周囲はシール材24で封止されている。電解液22は実施の形態1で使用したものと同じである。電解液22には増粘剤としてポリプロピレン、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタアクリレート等のポリマーを添加することができる。透明導電膜18,20にはリード線32,34の一端部がそれぞれ接続されている。リード線32,34の他端部間にはスイッチ36と直流電源38による直列接続回路が接続されている。またリード線32,34間にはスイッチ40が、スイッチ36と直流電源38による直列接続回路と並列に接続されている。スイッチ36,40は相互に連動して互いに逆方向にオン、オフ切り換えされる。
【0037】
以上の構成の鏡面反射非透過型素子42の動作を説明する。
図4のようにスイッチ36がオフし、スイッチ40がオンしているときは透明導電膜18,20間は短絡状態となり、透明導電膜18,20間に電場は生じない。したがって電解液22中で金属陽イオンAg
+、Cu
2+、陰イオンNO
3-、Cl
-は分散した状態にある。このとき電解液22は透明であり、透明基板16の表面側から入射した光は不透明基板44に当たってほとんど吸収される。したがってこのとき透明基板16の前面側から見た反射率は低い。
【0038】
図4の状態から
図5のようにスイッチ36をオンし、スイッチ40をオフすると直流電源38の電圧が透明導電膜18,20間に印加され(透明導電膜18を正電極、透明導電膜20を負電極とする)、透明導電膜18,20間に電場が生じる。この電場により電解液22中の金属陽イオンAg
+、Cu
2+は負電極20の表面に移動して還元される。その結果、負電極20の表面に銀を主成分とし、副成分として少量の銅が混在する析出層(鏡面反射層)26が析出して、析出層26による反射面(鏡面)26aを出現させる。これにより鏡面反射非透過型素子42は透明基板16の前面側から見た反射率(主に鏡面反射による反射率)が増大する。透明導電膜18,20間に印加する電圧を段階的にまたは無段階に可変できるようにして、反射率を段階的にまたは無段階に調整可能にすることもできる。あるいは透明導電膜18,20間に印加する電圧を、直流電圧(所望の最高反射率を実現する大きさの直流電圧)をパルス幅変調した電圧とし、このパルス幅変調のパルスのデューティ比を段階的にまたは無段階に可変できるようにして、反射率を段階的にまたは無段階に調整可能にすることもできる。
【0039】
図5の状態から再び
図4のようにスイッチ36をオフし、スイッチ40をオンすると透明導電膜18,20間が短絡し、透明導電膜18,20間の電場が消失する。これにより、析出層26を形成していた銀および銅は酸化されて、負電極20の表面から離脱して、金属陽イオンAg
+、Cu
2+となって、再び電解液22中に分散する。析出層26が、主成分の銀に銅を混在して構成されているため、このような離脱が可能となる。その結果、鏡面反射非透過型素子42は透明基板16の前面側から見た反射率が低下して元の状態に戻る。なお両電極18,20間を短絡するのに代えて、両電極18,20間を開放することもできる。すなわち両電極18,20間を開放すると、両電極18,20間の電場が消失するので、金属陽イオンAg
+、Cu
2+を負電極20から離脱させて、鏡面反射非透過型素子42を元の反射率が低い状態に戻すことができる。すなわち、
図5の状態からスイッチ36,40を共にオフして両電極18,20間を開放すると、鏡面反射非透過型素子42は両電極18,20間を短絡した場合に比べて緩やかな速度で反射率が低下して元の反射率が低い状態に戻る。
【0040】
以上のようにして、両電極18,20間に電場を印加し、また電場の印加を解除することにより、鏡面反射非透過型素子42の透明基板16の前面側から見た反射率を可逆的に変化させることができる。
【0041】
鏡面反射非透過型素子42は、実施の形態1の実施例で説明したのと同様の手順で製作することができる。
【0042】
鏡面反射非透過型素子42は例えば車両用防眩ミラーとして利用することができる。また鏡面反射非透過型素子42は透明導電膜20をセグメントに分割し各セグメントごとに電圧を印加することにより金属反射による表示体として構成することもできる。
【0043】
《実施の形態3(拡散反射透過型素子)》
この発明の反射率可変素子を薄型の拡散反射透過型反射率可変素子(反射面が拡散反射面を構成し、かつ反射率が低いときに厚み方向に透過性である反射率可変素子)として構成した実施の形態を以下説明する。実施の形態1と共通する部分には同一の符号を用いる。
図6において拡散反射透過型反射率可変素子46(以下「拡散反射透過型素子46」)は、透明基板16’の内側の面(析出層26が析出する側の面)が微細な凹凸面に形成されている。透明基板16’のこの凹凸面に倣って透明導電膜20’も凹凸状に成膜されている。他の構成は
図1の鏡面反射透過型素子10と同じである。
【0044】
以上の構成の拡散反射透過型素子46の動作を説明する。
図6の、透明導電膜18,20’間が短絡状態のときは、電解液22中で金属陽イオンAg
+、Cu
2+、陰イオンNO
3-、Cl
-は分散した状態にある。このとき電解液22はほぼ無色透明である。拡散反射透過型素子46に入射された光は透明基板16’および透明導電膜20’の凹凸面で拡散して透過する。したがって、拡散反射透過型素子46を透過して見た反対側の景色はぼやけて見える。
【0045】
図6の状態から
図7の、透明導電膜18,20’間に電圧を印加した状態に切り換えると、電解液22中の金属陽イオンAg
+、Cu
2+は負電極20’の表面に移動して還元される。その結果、負電極20’の表面に銀を主成分とし、副成分として少量の銅が混在する析出層(拡散反射層)26’が析出して、析出層26’による反射面(拡散反射面)26a’を出現させる。これにより拡散反射透過型素子46は反射率(主に拡散反射による反射率)が増大し、透過率が減少する。拡散反射透過型素子46に入射される光Laは反射面26a’で拡散反射する。透明導電膜18,20’間に印加する電圧を段階的にまたは無段階に可変できるようにして、反射率、透過率を段階的にまたは無段階に調整可能にすることもできる。あるいは透明導電膜18,20’間に印加する電圧を、直流電圧(所望の最高反射率または最低透過率を実現する大きさの直流電圧)をパルス幅変調した電圧とし、このパルス幅変調のパルスのデューティ比を段階的にまたは無段階に可変できるようにして、反射率、透過率を段階的にまたは無段階に調整可能にすることもできる。なお、拡散反射透過型素子46は、
図7の拡散反射透過型素子46の右側(透明基板16’側)から入射する光Laを、析出層26’を右側から見た反射面26a’で拡散反射する素子として利用することができる。このほか、拡散反射透過型素子46は、拡散反射透過型素子46の左側(透明基板14側)から入射する光Lbを、析出層26’を左側から見た反射面26b’で拡散反射する素子として利用することもできる。さらには、拡散反射透過型素子46は、拡散反射透過型素子46の左右両側から入射する光を左右の反射面26a’,26b’で拡散反射する素子として利用することもできる。
【0046】
図7の状態から再び
図6の透明導電膜18,20’間を短絡させた状態にすると、析出層26を形成していた銀および銅は酸化されて、負電極20の表面から離脱して、金属陽イオンAg
+、Cu
2+となって、再び電解液22中に分散する。その結果、拡散反射透過型素子46は反射率が低下し、透過率が増大して、拡散反射透過型素子46を透過して見た反対側の景色がぼやけて見える元の状態に戻る。なお両電極18,20’間を短絡するのに代えて、両電極18,20’間を開放することもできる。すなわち両電極18,20’間を開放すると、両電極18,20’間の電場が消失するので、金属陽イオンAg
+、Cu
2+を負電極20’から離脱させて、拡散反射透過型素子46を元の状態に戻すことができる。すなわち、
図7の状態からスイッチ36,40を共にオフして両電極18,20’間を開放すると、拡散反射透過型素子46は両電極18,20’間を短絡した場合に比べて緩やかな速度で反射率が低下し、透過率が増大して元の状態に戻る。
【0047】
以上のようにして、両電極18,20’間に電場を印加し、また電場の印加を解除することにより、拡散反射透過型素子46の反射率および透過率を可逆的に変化させることができる。
【0048】
拡散反射透過型素子46は例えば建築用調光窓ガラス等の用途に好適に用いることができる。すなわち、室外からの視線を遮りながら、夏は透過率を低くする(反射率を高くする)ことにより紫外線、赤外線を反射させて室内の冷房効率を高め、冬は透過率を高くする(反射率を下げる)ことにより室内の暖房効率を高めることができる。その結果、省エネルギー効果が得られる。
【0049】
前記各実施の形態では硝酸銀を使用したが、硝酸銀に代えてAgI、AgCl等のハロゲン化銀を使用することも考えられる。また、前記各実施の形態では塩化第二銅を使用したが、塩化第二銅に代えて、CuF、CuCl、CuBr等の他のハロゲン化銅を使用することも考えられる。また前記各実施の形態では支持電解質としてLiBrを使用したが、LiBrに代えてアンモニウム塩等を使用することも考えられる。
【0050】
前記各実施の形態では非水溶媒の主成分として炭酸プロピレンを使用したが、炭酸プロピレンに代えてγ−ブチロラクトンを使用することもできる。γ−ブチ
ロラクトンを使用した場合は、炭酸プロピレンを使用した場合と同様に低温耐性が高い反射率可変素子が得られるものと考えられる。
【0051】
前記各実施の形態では透明導電膜18,20を形成する基材としてガラス基板、樹脂基板等を使用したが、樹脂フィルムを基材として使用してその表面に導電膜を形成することもできる。
【0052】
前記各実施の形態では両電極間を短絡または開放させることにより反射率を低下させたが、特許文献1および非特許文献1に記載の素子と同様に、両電極間に逆電圧を印加することにより、反射率を低下させることもできる。
【0053】
前記実施の形態1の実施例で説明した製作手順では、支持電解質(LiBr)を溶解した炭酸プロピレン溶液と、硝酸銀−メタノール溶液と、塩化銅−メタノール溶液を混合して電解液を作成したが、電解液の作成方法はこれに限らない。すなわちこれに代えて、支持電解質(LiBr)を溶解する前の炭酸プロピレン溶液と、硝酸銀−メタノール溶液と、塩化銅−メタノール溶液を混合し、その後に該混合液に支持電解質(LiBr)を溶解して電解液を作成することもできる。
【0054】
前記実施の形態2では導電膜18を透明導電膜で構成したが、金属膜(不透明導電膜)を使用することもできる。また前記実施の形態2では不透明基板44の表面に透明導電膜18を形成したものを使用したが、不透明基板44と透明導電膜18の組み合わせに代えて金属板単体を配置して、該金属板単体を基板兼電極として使用することもできる。
【0055】
また、前記実施の形態では、析出層26,26’を析出させた状態から、析出層26,26’を完全に消失させた状態に戻すようにしたが、析出層26,26’を完全に消失させた状態まで戻さない(析出層26,26’が薄く残っている状態で止める)ような使い方も可能である。