(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
端子が収容される端子収容室を有するハウジングと、前記ハウジングに装着されて前記端子を前記端子収容室において二重係止するフロントホルダと、を有するコネクタであって、
前記フロントホルダは、
該フロントホルダの嵌合方向に交差する方向に延びる板状のリブ部を有し、
前記ハウジングは、
前記リブ部を支持しながら収容可能な形状に窪み且つ前記リブ部が延びる方向に沿って延びる溝部と、前記溝部の延長方向に沿って突出し且つ前記フロントホルダの嵌合方向に沿って延びる山状の突起部と、を前記フロントホルダが装着される装着位置に有し、
前記ハウジングの前記装着位置の幅方向において、前記突起部の位置が、前記溝部の位置と一致しており、
前記ハウジングに前記フロントホルダが装着されるとき、
前記リブ部が前記溝部に収容されると共に、前記フロントホルダの表面に前記突起部が接触する、
コネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来コネクタでは、フロントホルダがハウジングの本係止位置に装着された状態において、フロントホルダとハウジングとの間には一定の隙間がある。このため、フロントホルダのハウジングに対する位置ずれ(以下、単に「フロントホルダの位置ずれ」という。)に起因し、フロントホルダのがたつき等が生じる場合がある。
【0007】
フロントホルダの位置ずれが生じると、場合によっては、フロントホルダによるランスの係止(即ち、二重係止)が解除されることにより、ランスによる端子の係止も意図せず解除されてしまう可能性がある。その場合、ハウジング内にて端子にも位置ずれが生じ、この結果、コネクタ間の電気的接続が不十分となる可能性がある。よって、電気的接続の信頼性の観点から、フロントホルダの位置ずれを出来る限り防ぐことが好ましい。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フロントホルダの位置ずれを出来る限り防止できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1)
端子が収容される端子収容室を有するハウジングと、前記ハウジングに装着されて前記端子を前記端子収容室において二重係止するフロントホルダと、を有するコネクタであって、
前記フロントホルダは、
該フロントホルダの嵌合方向に交差する方向に延びる板状のリブ部を有し、
前記ハウジングは、
前記リブ部を支持しながら収容可能な形状に窪み且つ前記リブ部が延びる方向に沿って延びる溝部と、前記溝部の延長方向に沿って突出し且つ前記フロントホルダの嵌合方向に沿って延びる山状の突起部と、を前記フロントホルダが装着される装着位置に有し、
前記ハウジングの前記装着位置の幅方向において、前記突起部の位置が、前記溝部の位置と一致しており、
前記ハウジングに前記フロントホルダが装着されるとき、
前記リブ部が前記溝部に収容されると共に、前記フロントホルダの表面に前記突起部が接触する、
コネクタであること。
(2)
上記(1)に記載のコネクタにおいて、
前記ハウジングが、
複数の前記突起部であって、前記フロントホルダの幅方向における中央部、前記中央部よりも一の端部側の部分、及び、前記中央部よりも他の端部側の部分の三箇所に少なくとも接触するように配置された複数の前記突起部を有する、
コネクタであること。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載のコネクタにおいて、
前記リブ部が、
該リブ部の延長方向に直交する断面において、前記嵌合方向に長く且つ前記フロントホルダの幅方向に短い扁平形状の断面を有する、
コネクタであること。
【0010】
上記(1)の構成のコネクタによれば、フロントホルダがハウジングに装着された状態にて、フロントホルダのリブ部がハウジングの溝部に収容され且つ支持される。これにより、リブ部の延長方向に交差する方向(例えば、リブ部がハウジングの高さ方向に延びていれば、ハウジングの幅方向)におけるハウジングの移動、及び、リブ部の軸を傾けるようなハウジングの捻れが抑制される。
【0011】
更に、フロントホルダがハウジングに装着された状態にて、ハウジングの突起部がフロントホルダの表面に接触する。これにより、溝部の延長方向(リブ部の延長方向と同じ。例えば、リブ部がハウジングの高さ方向に延びていれば、ハウジングの高さ方向)におけるハウジングの移動、及び、嵌合方法にハウジングを傾けるようなハウジングの捻れが抑制される。なお、フロントホルダの前後方向(嵌合方向)の移動は、相手側コネクタに設けられたフロントホルダと、本コネクタのフロントホルダと、が接触することによって防がれる。
【0012】
その結果、本構成のコネクタは、従来コネクタに比べ、ハウジングの移動および捻れを抑制できる。したがって、本構成のコネクタは、フロントホルダの位置ずれを出来る限り防止できる。
【0013】
上記(2)の構成のコネクタによれば、フロントホルダがハウジングに装着された状態にて、ハウジングに設けられた複数の突起部が、フロントホルダの幅方向の中央部及びその両側に接触する。そのため、上述したリブ部による捻れの抑制に加え、複数の突起部によってもハウジングの捻れが抑制される。よって、本構成のコネクタは、フロントホルダの位置ずれを更に確実に防止できる。
【0014】
上記(3)の構成のコネクタによれば、リブ部の断面が扁平形状であるため、リブ部の軸周りに回転するようなフロントホルダの捻れがより確実に防がれる。よって、フロントホルダの位置ずれを更に確実に防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フロントホルダの位置ずれを出来る限り防止できるコネクタを提供できる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態にコネクタの概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すメスハウジングにメス側フロントホルダを装着する状態を表し、
図2(a)はフロントホルダが挿入途中にある状態(「仮」係止位置にある状態)を表し、
図2(b)はフロントホルダが完全に挿入された状態(「本」係止位置にある状態)を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すメスハウジングを前側から見た場合の図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すメスハウジングにメス側フロントホルダが挿入される途中の状態(
図2(a)の状態)での断面図を表し、
図4(a)はA−A断面図であり、
図4(b)はB−B断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すメスハウジングにメス側フロントホルダが完全に挿入された状態(
図2(b)の状態)での断面図を表し、
図5(a)はA−A断面図であり、
図5(b)はB−B断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すオスハウジングを前側から見た場合の図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すオスハウジングの断面図を表し、
図7(a)はオス側フロントホルダが挿入される途中の状態でのC−C断面図であり、
図7(b)はオス側フロントホルダが完全に挿入された状態でのC−C断面図である。
【
図8】
図8は、
図1に示すオスハウジングを斜め後方から見た場合の斜視図である。
【
図9】
図9は、
図1に示すメス側フロントホルダを表し、
図9(a)はメス側フロントホルダの斜視図であり、
図9(b)はD−D断面図である。
【
図11】
図11は、
図1に示すメスハウジングを斜め下方から見た場合の斜視図である。
【
図12】
図12は、
図1に示すメスハウジングが有する突起部を説明するための図であり、
図12(a)はメスハウジングの前側から見た場合の図であり、
図12(b)は突起部周辺の領域Fの拡大図であり、
図12(c)はG−G断面図である。
【
図13】
図13は、
図1に示すメスハウジングにメス側フロントホルダを装着する状態を表し、
図13(a)はメス側フロントホルダが挿入される途中の状態を示す図であり、
図13(b)はメス側フロントホルダが完全に挿入された状態を示す図である。
【
図14】
図14(a)は、
図1に示すオス側フロントホルダ及びメス側フロントホルダが、オスハウジング及びメスハウジングの嵌合時(コネクタ嵌合時)にて互いに接近して向かい合う状態を示し、
図14(b)はメス側フロントホルダの上面図及び下面図である。
【
図15】
図15は、
図1に示すオスハウジングとメスハウジングとが嵌合した状態を表す模式図である。
【
図16】
図16は、
図1に示すオスハウジングが有するガイド溝を説明するための図であり、
図16(a)はオスハウジングを斜め前方から見た斜視図であり、
図16(b)はガイド溝の最深部周辺の領域Hの拡大図である。
【
図17】
図17は、
図1に示すオスハウジングに装着されたオス側フロントホルダを取り外す工程を説明するための図であり、
図17(a)はオスハウジングの正面図であり、
図17(b)はI−I断面図において取り外し治具がガイド溝に沿って挿入される状態を表し、
図17(c)はI−I断面図において取り外し治具をフロントホルダに引っ掛けて引き出す状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタについて説明する。なお、以下に述べる全図において、各部材の説明を容易にする等の理由から、端子、及び、端子から延びる電線の記載が省略されている。
【0019】
(全体構成)
図1に示すように、本発明の実施形態に係るコネクタは、メスハウジング10と、メス側フロントホルダ(以下、単に「フロントホルダ」と呼ぶ。)20と、オスハウジング30と、オス側フロントホルダ(以下、単に「フロントホルダ」と呼ぶ。)40と、から構成される。以下、
図1に示すように、「嵌合方向」、「幅方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「上」、「下」を定義する。「嵌合方向」、「幅方向」、及び「上下方向」は、互いに直交する方向である。
【0020】
メスハウジング10の内部には、複数(本例では、幅方向に6つ、上下方向に2つで計12個)の端子収容室11が嵌合方向に沿って形成されている。メスハウジング10には、複数本の電線の端部にそれぞれ接続された複数(本例では、12個)のメス端子が、後側から対応する端子収容室11にそれぞれ挿入され、その後、前側からフロントホルダ20が装着される。
【0021】
フロントホルダ20は、幅方向両端部にて後側に向けて突出する一対のアーム21と、複数の端子収容室11のそれぞれに対応する位置にて後側に向けて突出する複数(本例では、12個)の平板状の二重係止部22とを備える。後述するように、一対のアーム21、及び、複数の二重係止部22は、メス端子が端子収容室11に正常に収容されているか否か(具体的には、メス端子の中途挿入状態の有無)を検知する機能、並びに、正常に収容されているメス端子の抜け止めをより確実にする機能を有する。
【0022】
オスハウジング30の内部には、メスハウジング10と同様、複数(本例では、幅方向に6つ、上下方向に2つで計12個)の端子収容室31が嵌合方向に沿って形成されている。オスハウジング30には、複数本の電線の端部にそれぞれ接続された複数(本例では、12個)のオス端子が、後側から対応する端子収容室31にそれぞれ挿入され、その後、前側からフロントホルダ40が装着される。オス端子の先端部(タップ部)を保護する等のため、オスハウジング30の前側には、オス端子の先端部を囲む筒状の囲み部(ホロー部)32が一体的に設けられている。
【0023】
フロントホルダ40は、フロントホルダ20と実質的に同じ形状を有する。即ち、フロントホルダ40は、幅方向両端部にて後側に向けて突出する一対のアーム41と、複数の端子収容室31のそれぞれに対応する位置にて後側に向けて突出する複数(本例では、12個)の平板状の二重係止部42とを備える。一対のアーム41、及び、複数の二重係止部42は、オス端子が端子収容室31に正常に収容されているか否か(具体的には、オス端子の中途挿入状態の有無)を検知する機能、並びに、正常に収容されているオス端子の抜け止めをより確実にする機能を有する。
【0024】
このように、フロントホルダ20とフロントホルダ40とは、実質的に同じ形状を有する(より詳細な形状については、後述される。例えば、
図9及び
図14を参照。)。そのため、フロントホルダ20は、フロントホルダ40の代わりとして、オスハウジング30に取り付けることが可能である。逆に、フロントホルダ40は、フロントホルダ20の代わりとして、メスハウジング10に取り付けることが可能である。即ち、フロントホルダ20及びフロントホルダ40を共用することが可能である。
【0025】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、フロントホルダ20は、前側からメスハウジング10に挿入され、
図2(a)に示す「仮」係止位置(フロントホルダ20が挿入途中にある状態)を経て、
図2(b)に示す「本」係止位置(フロントホルダ20が完全に挿入された状態)まで挿入される。
【0026】
フロントホルダ20が
図2(a)に示す「仮」係止位置にある状態では、
図4(a)(
図3のA−A断面)に示すように、アーム21に設けられた突起21a(
図9も参照。)がメスハウジング10に設けられた突起12を乗り越えている一方で、アーム21に設けられた突起21b(
図9も参照。)がメスハウジング10に設けられた突起13を乗り越えていない。よって、フロントホルダ20は、外力が作用しない限り、「仮」係止位置に維持され得る。
【0027】
また、フロントホルダ20が「仮」係止位置にある状態では、
図4(b)(
図3のB−B断面)に示すように、二重係止部22が、メスハウジング10に設けられたランス14の位置まで到達していない。ランス14は、各端子収容室11に対応してそれぞれ設けられている。
【0028】
ランス14は、前側且つ斜め上方に向けて延びる係止片であり、ランス14の先端部は、端子収容室11の下面に形成された開口部から端子収容室11の内部に進入している。メス端子が端子収容室11に正常に収容されている状態では、ランス14の先端部が端子収容室11に収容されているメス端子の係止部を係止することによって、メス端子の抜け止めがなされる。
【0029】
一方、メス端子が端子収容室11に正常に収容されていない状態(メス端子の中途挿入状態)では、メス端子がランス14を下方に押し出すことで、ランス14が、二重係止部22が挿入される空間に入り込む位置まで撓んだ状態にある。このため、フロントホルダ20が「本」係止位置まで挿入できなくなる。このことを利用して、メス端子の中途挿入状態の有無を検知することができる。
【0030】
フロントホルダ20が
図2(b)に示す「本」係止位置にある状態(且つ、メス端子が端子収容室11に正常に収容されている状態)では、
図5(a)(
図3のA−A断面)に示すように、突起21bが突起13を乗り越えている。また、
図5(b)(
図3のB−B断面)に示すように、二重係止部22がランス14の下側の空間に入り込んでランス14をメス端子側(上側)に押し込む。このため、ランス14がメス端子を係止し、且つ、二重係止部22がランス14を(抜け止め機能を発揮する正常位置に)係止する所謂二重係止の状態が得られる。この二重係止により、端子収容室11に正常に収容されているメス端子の抜け止めがより確実になされる。
【0031】
このように、フロントホルダ20が「本」係止位置にある状態では、フロントホルダ20は、外力が作用しない限り、「本」係止位置に維持され得る。
【0032】
フロントホルダ20と同様、フロントホルダ40も、図示は省略するが、前側からオスハウジング30に挿入され、「仮」係止位置(フロントホルダ40が挿入途中にある状態)を経て、「本」係止位置(フロントホルダ40が完全に挿入された状態)まで挿入される。
【0033】
フロントホルダ40が「仮」係止位置にある状態では、
図7(a)(
図6のC−C断面)に示すように、アーム41に設けられた突起41aがオスハウジング30に設けられた突起33を乗り越えている一方で、アーム41に設けられた突起41bがオスハウジング30に設けられた突起34を乗り越えていない。よって、フロントホルダ40は、外力が作用しない限り、「仮」係止位置に維持される。また、図示は省略するが、二重係止部42が、オスハウジング30に設けられたランスの位置まで到達していない。
【0034】
一方、フロントホルダ40が「本」係止位置にある状態(且つ、オス端子が端子収容室31に正常に収容されている状態)では、
図7(b)(
図6のC−C断面)に示すように、突起41bが突起34を乗り越えている。また、図示は省略するが、二重係止部42がランスの下側の空間に入り込んでランスをオス端子側(上側)に押し込む。よって、フロントホルダ40は、外力が作用しない限り、「本」係止位置に維持され得る。
【0035】
オスハウジング30に設けられたランスとフロントホルダ40の二重係止部42との協働によっても、メスハウジング10に設けられたランス14とフロントホルダ20の二重係止部22の場合と同様、オス端子の中途挿入状態の有無を検知することができ、且つ、二重係止により、端子収容室31に正常に収容されているオス端子の抜け止めがより確実になされる。
【0036】
また、
図8に示すように、フロントホルダ40が「本」係止位置にある状態では、フロントホルダ40のアーム41の先端部分のみが、オスハウジング30に装着されたカバー35の傾斜した端面から露呈している。よって、アーム41を押し出すことによってオスハウジング30からフロントホルダ40を分離する際、アーム41を押し出す作業が容易になる。一方、そのような分離を行わない場合(例えば、通常の使用時)には、作業者の手などが意図せずにアーム41に接触してしまうことが防止される。
【0037】
(フロントホルダ、並びに、ハウジングのフロントホルダ装着位置の詳細形状)
次いで、フロントホルダ20、及び、メスハウジング10のフロントホルダ装着位置の詳細形状について説明する。
【0038】
図9に示すように、フロントホルダ20は、断面四角状の枠体部26の内部にて、枠体部26の上壁及び下壁を上下方向に連結する複数本(本例では、5本)の板状のリブ23が設けられている。換言すると、各リブ23は、フロントホルダ20の嵌合方向に交差する方向に延びている。各リブ23は、幅方向において、複数(本例では、6個)の端子収容室11における隣接する端子収容室11の間に対応する位置にそれぞれ設けられている。
図9(b)(
図9(a)のD−D断面)に示すように、各リブ23の延長方向(上下方向)に直交する断面(嵌合方向及び幅方向に平行な平面に沿う断面)は、嵌合方向に長く且つ幅方向に短い扁平形状を有している。なお、上述した一対のアーム21は枠体部26の幅方向両側壁から、上述した複数の二重係止部22は枠体部26の上下壁から、それぞれ、後側に向けて突出している。
【0039】
また、フロントホルダ20の前端面(より具体的には、枠体部26の上下壁の前面)は、凸部24と凹部25とにより段違いに形成されている。本例では、枠体部26の上壁前面には幅方向一方側及び他方側に凸部24及び凹部25がそれぞれ形成され、枠体部26の下壁前面には幅方向一方側及び他方側に凹部25及び凸部24がそれぞれ形成されている。なお、フロントホルダ40も、フロントホルダ20と実質的に同じ形状を有している(
図14も参照。)。
【0040】
図10に示すように、メスハウジング10の前側端部は、フロントホルダ装着位置15となっている。
図10(b)に示すように、このフロントホルダ装着位置15には、上下方向に延び且つ前側に開口する溝部16が、幅方向において、複数本(本例では、5本)のリブ23の位置に対応する複数(本例では、5つ)の位置にそれぞれ設けられている。換言すると、各溝部16は、上述した各リブ部23を支持しながら収容可能な形状に窪み且つ各リブ部23が延びる方向に沿って延びている。
【0041】
フロントホルダ20が「本」係止位置までメスハウジング10に装着された状態では、フロントホルダ20の各リブ23が、対応する溝部16にそれぞれ挿入・支持される。これにより、フロントホルダ20の幅方向の移動及び捻れが抑制され得る。
【0042】
図11に示すように、メスハウジング10のフロントホルダ装着位置15の上面には、下方(溝部16の延長方向)に突出しフロントホルダ20の嵌合方向に延びる山状の突起部17が形成されている。本例では、突起部17は、幅方向における3箇所にそれぞれ形成されている。
【0043】
フロントホルダ20が「本」係止位置までメスハウジング10に装着された状態では、
図12に示すように、これら3つの突起部17が、フロントホルダ20の枠体部26の上壁の上面における幅方向中央部、中央部より幅方向一方側の部分、及び、中央部より幅方向他方側の部分の3箇所に、それぞれ接触する。これにより、フロントホルダ20の上下方向の移動及び捻れが抑制され得る。
【0044】
図13に示すように、フロントホルダ20が「本」係止位置までメスハウジング10に装着された状態では、フロントホルダ20の前端面の凸部24(
図9も参照)が、メスハウジング10の前端面から突出している。これにより、以下の作用・効果が奏され得る。
【0045】
即ち、メス端子が中途挿入状態にある場合、上述のように、ランス14が下方に撓むため、フロントホルダ20が「仮」係止位置から「本」係止位置へ移動できない。この結果、通常、フロントホルダ20の前端面がメスハウジング10の前端面から突出した状態となる。
【0046】
しかしながら、メスハウジング10、及びフロントホルダ20の寸法精度などのばらつきに起因し、メス端子が中途挿入状態にあっても、フロントホルダ20が「本」係止位置に近い位置にまで移動し得る場合がある。この場合、メス端子が中途挿入状態にあるにもかかわらず、外観上、フロントホルダ20の前端面がメスハウジング10の前端面から突出していないように見える可能性が発生し得る。この結果、作業者がメス端子の中途挿入状態に気付かない可能性がある。
【0047】
この点、フロントホルダ20の前端面は、凸部24と凹部25とにより段違いに形成されている。このため、フロントホルダ20が「本」係止位置に近い位置にまで移動した場合であっても、フロントホルダの前端面が平坦の場合と比べて、フロントホルダ20の前方への突出が目立つ。この結果、作業者がメス端子の中途挿入状態に気付き易くなる。
【0048】
以上、フロントホルダ20、及び、メスハウジング10の詳細形状について説明した。フロントホルダ40においても、フロントホルダ20のリブ23、凸部24、及び凹部25に相当するリブ、凸部43、及び凹部44が形成されている(
図14も参照。)。加えて、オスハウジング30においても、図示は省略するが、メスハウジング10の溝部16、及び突起部17に相当する溝、及び突起部が形成されている。
【0049】
よって、フロントホルダ40、及びオスハウジング30の関係においても、フロントホルダ20、及びメスハウジング10の関係と同様、上述したように、フロントホルダ40の幅方向の移動及び捻れ、並びに、フロントホルダ40の上下方向の移動及び捻れが抑制され得る。また、オス端子が中途挿入状態にある場合、フロントホルダ40の前方への突出が目立つので、作業者がオス端子の中途挿入状態に気付き易くなる。
【0050】
上述したように、フロントホルダ40も、フロントホルダ20と実質的に同じ形状を有している。よって、
図14に示すように、フロントホルダ40の前端面も、フロントホルダ20と同様、凸部43と凹部44とにより段違いに形成されている。
【0051】
図15に示すように、メスハウジング10、及び、オスハウジング30の嵌合完了状態(コネクタ嵌合完了状態)にて、フロントホルダ20、及びフロントホルダ40の双方の前端面が接触する。この状態では、フロントホルダ20側の凸部24及び凹部25が、フロントホルダ40側の凹部44及び凸部43とそれぞれ接触する。
【0052】
ここで、フロントホルダの前端面に単純な凸部を設けた場合、フロントホルダの嵌合方向の長さが大きくなり、ひいてはコネクタ(=メスハウジング+オスハウジング)の全長が長くなる。これに対し、フロントホルダ20、及びフロントホルダ40の双方の前端面には段違いの凸部と凹部とが設けられ、メスハウジング10とオスハウジング30との嵌合完了時に、それぞれのフロントホルダの凸部と凹部同士が接触する。よって、フロントホルダの前端面に凸部を設けても、コネクタの大型化を抑制することができる。
【0053】
更に、上述したように、フロントホルダ20とフロントホルダ40とは、実質的に同じ形状を有するため、共用することが可能である。その結果、フロントホルダ20とフロントホルダ40とを共用できない場合(両者の形状が異なる場合)に比べ、コネクタの部品点数を低減できることにより、コネクタの製造時における部品管理などが容易になる。加えて、フロントホルダ20,40の各々について個別の(異なる)製造用金型などを準備する必要がないため、フロントホルダ20,40の製造コストを低減でき、ひいてはコネクタの製造コストを低減できる。
【0054】
(オスハウジングからのフロントホルダの取り外しの容易化)
次いで、オスハウジング30からのフロントホルダ40の取り外しの容易化について説明する。
【0055】
図16に示すように、オスハウジング30には、オス端子(図示省略)の先端部を囲む筒状の囲み部32が一体的に設けられている。この囲み部32の存在が、オスハウジング30に装着されたフロントホルダ40をオスハウジング30から取り外し難くしている。
【0056】
この点、
図16に示すように、オスハウジング30の囲み部32の内壁の下面には、フロントホルダ取り外し用のガイド溝36が嵌合方向に沿って形成されている。
図16(b)(
図16(a)のH部拡大図)に示すように、このガイド溝36の最も奥側(後側)の部分には、囲み部32の内壁の下面から上向き(即ち、フロントホルダ40に近付く向き)に傾いた傾斜部37が設けられている。なお、
図16(b)では、便宜上、フロントホルダ40の記載が省略されている。
【0057】
図17に示すように、オスハウジング30に装着されたフロントホルダ40をオスハウジング30から取り外す場合、先端部が湾曲した棒状のフロントホルダ分離ロッド50が使用される。即ち、まず、
図17(b)に示すように、フロントホルダ分離ロッド50を、その先端部が上方に湾曲する向きに維持しながら、ガイド溝36に沿ってフロントホルダ40に向けて滑らせるように挿入する。フロントホルダ分離ロッド50がガイド溝36の奥側の傾斜部37に到達すると、フロントホルダ分離ロッド50が、傾斜部37に案内されてフロントホルダ40の下面に近付く。
【0058】
そして、
図17(c)に示すように、フロントホルダ分離ロッド50をフロントホルダ40の所定箇所に引っ掛けて手前側(前側)に引き出すことにより、フロントホルダ40を取り外すことができる。この結果、オスハウジング30のように囲み部32の開口から離れた奥まった位置にフロントホルダ40が装着されていても、フロントホルダ40を容易に取り外すことができる。
【0059】
(作用・効果)
本発明の実施形態に係るコネクタによれば、フロントホルダ20がハウジング10に装着された状態にて、フロントホルダ20のリブ23がハウジング10の溝部16に収容される。これにより、フロントホルダ20の幅方向の移動及び捻れが抑制され得る。加えて、ハウジング10の突起部17がフロントホルダ20の上面に接触する。これにより、フロントホルダ20の上下方向の移動が抑制され得る。
【0060】
また、フロントホルダ20がハウジング10に装着された状態にて、ハウジング10の複数の突起部17が、フロントホルダ20の幅方向の中央部及びその両側に接触する。このため、フロントホルダ20の上下方向の捻れが防がれる。
【0061】
加えて、リブ23の断面が扁平形状であるため、フロントホルダ20の幅方向の捻れがより確実に防がれる。以上より、本発明の実施形態に係るコネクタによれば、フロントホルダ20の位置ずれを出来る限り防止できる。
【0062】
更に、フロントホルダ20,40が実質的に同じ形状を有するため、フロントホルダ20,40を共用することが可能である。よって、コネクタの部品点数を低減できることにより、コネクタの製造時における部品管理などが容易になる。更に、一対のフロントホルダの製造コストを低減でき、ひいてはコネクタの製造コストを低減できる。
【0063】
(他の態様)
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0064】
例えば、上記実施形態では、メス端子が挿入されるメスハウジング10とフロントホルダ20との組み合わせ、及び、オス端子が挿入されるオスハウジング30とフロントホルダ40との組み合わせ、の双方について、本発明に係る構成(リブ23と溝部16との係合、突起部17の接触)が採用されている。これに対し、メス端子が挿入されるメスハウジングとメス側フロントホルダとの組み合わせ、及び、オス端子が挿入されるオスハウジングとオス側フロントホルダとの組み合わせ、の何れか一方についてのみ、この構成が採用されていてもよい。
【0065】
更に、フロントホルダ20及びメスハウジング10の幅方向における複数箇所においてリブ23及び溝部16がそれぞれ設けられているが、フロントホルダ20及びメスハウジング10の幅方向における1箇所のみにリブ23及び溝部16が設けられていてもよい。同様に、メスハウジング10の幅方向における複数箇所において突起部17がそれぞれ設けられているが、メスハウジング10の幅方向における1箇所のみに突起部17が設けられていてもよい。
【0066】
また、リブ23は、その延長方向に直交する断面において、嵌合方向に長く且つ幅方向に短い扁平形状の断面を有しているが、嵌合方向に短く且つ幅方向に長い扁平形状の断面を有していてもよい。
【0067】
ここで、上述した本発明に係るコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(3)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
端子が収容される端子収容室(11)を有するハウジング(10,30)と、前記ハウジングに装着されて前記端子を前記端子収容室において二重係止するフロントホルダ(20,40)と、を有するコネクタであって、
前記フロントホルダ(20,40)は、
該フロントホルダの嵌合方向に交差する方向に延びる板状のリブ部(23)を有し、
前記ハウジング(10,30)は、
前記リブ部(23)を支持しながら収容可能な形状に窪み且つ前記リブ部が延びる方向に沿って延びる溝部(16)と、前記溝部の延長方向に沿って突出し且つ前記フロントホルダの嵌合方向に沿って延びる山状の突起部(17)とを前記フロントホルダが装着される装着位置(15)に有し、
前記ハウジングに前記フロントホルダが装着されるとき、
前記リブ部(23)が前記溝部(16)に収容されると共に、前記フロントホルダの表面(26)に前記突起部(17)が接触する、
コネクタ。
(2)
上記(1)に記載のコネクタにおいて、
前記ハウジング(10,30)が、
複数の前記突起部(17)であって、前記フロントホルダの幅方向における中央部、前記中央部よりも一の端部側の部分、及び、前記中央部よりも他の端部側の部分の三箇所に少なくとも接触するように配置された複数の前記突起部(17)を有する(
図11)、
コネクタ。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載のコネクタにおいて、
前記リブ部(23)が、
該リブ部の延長方向に直交する断面において、前記嵌合方向に長く且つ前記フロントホルダの幅方向に短い扁平形状の断面を有する(
図9b)、
コネクタ。