【実施例1】
【0020】
図1は、実施例1においてシミュレーション1を行なった可変容量コンデンサ100の回路図である。
図1に示すように、信号端子Ts1とTs2との間にキャパシタC1からC4が直列に接続されている。キャパシタC1の信号端子Ts1側のノードN1と固定端子Tgとの間に抵抗R1が接続されている。キャパシタC1とC2との間のノードN2と可変端子Tpとの間に抵抗R2が接続されている。キャパシタC2とC3との間のノードN3と固定端子Tgとの間に抵抗R3が接続されている。キャパシタC3とC4との間のノードN4と可変端子Tpとの間に抵抗R4が接続されている。キャパシタC4の信号端子Ts2側のノードN5と固定端子Tgとの間に抵抗R5が接続されている。
【0021】
信号端子Ts1およびTs2には、例えば13.56MHz等の交流信号が入出力する。可変端子Tpには、直流バイアス電圧として可変電圧が印加される。固定端子Tgにはグランド電圧等の固定電圧が印加される。キャパシタC1からC5は周波数の高い信号では誘電率が変化しないが周波数の低い電圧が印加されると誘電率が変化する誘電体層を有している。これにより、可変端子Tpに印加する可変電圧を変化させると、交流信号に対するキャパシタC1からC4の容量値が変化する。
【0022】
抵抗R1からR5の抵抗値が小さいと、信号端子Ts1およびTs2に入出力する信号が抵抗R1からR5を介し可変端子Tpおよび固定端子Tgに漏洩してしまう。そこで、抵抗R1からR5の抵抗値は、キャパシタC1からC4のインピーダンス値の5000倍以上が好ましく10000倍以上がより好ましい。例えば、信号端子Ts1およびTs2に入出力する信号の周波数が13.56MHzであり、キャパシタC1からC4の容量値が400pFのとき、キャパシタC1からC4のインピーダンスは、約30Ωである。よって、抵抗R1からR5の抵抗値は150kΩ以上が好ましく、300kΩ以上がより好ましい。
【0023】
抵抗R1からR5の抵抗値が大きいと、キャパシタC1からC4に十分な電圧が印加されない。そこで、抵抗R1からR5の抵抗値は、キャパシタC1からC4のリーク電流に起因する抵抗成分(リーク抵抗成分)の約1/50以下が好ましく約1/100以下がより好ましい。例えば、キャパシタC1からC4のリーク抵抗成分が50GΩのとき、抵抗R1からR5の抵抗値は1GΩ以下が好ましく、500MΩ以下がより好ましい。
【0024】
図2は、実施例1においてDCカットコンデンサを有する可変容量コンデンサの回路図である。
図2に示すように、ノードN1と信号端子Ts1との間にDC(Direct Current)カットコンデンサC11が接続されている。ノードN5と信号端子Ts2との間にDCカットコンデンサC12が接続されている。DCカットコンデンサC11およびC12は、信号端子Ts1とTs2間の直流成分を除去するコンデンサである。DCカットコンデンサC11およびC12の容量値はキャパシタC1からC4より大きい。また、DCカットコンデンサC11およびC12の容量値は意図的に可変とすることがない。その他の構成は
図1と同じであり説明を省略する。
【0025】
可変容量コンデンサに入出力する信号に直流バイアス電流が漏洩しないように、キャパシタC1およびC4の信号が入力または出力する経路側には、通常DCカットコンデンサC11およびC12が接続される。一般に可変容量コンデンサと呼ぶとき、DCカットコンデンサC11およびC12を含む場合と、含まない場合がある。可変容量コンデンサの部品として製造される場合、DCカットコンデンサC11およびC12は、キャパシタC1からC4等と一体に作られる場合と、キャパシタC1からC4等と一体に作られず信号端子Ts1およびTs2の外部に設置される場合がある。例えば、
図1の回路の可変容量コンデンサにおいても、信号端子Ts1およびTs2の外側にDCカットコンデンサが接続される。実施例1においては、主にDCカットコンデンサC11およびC12が外部に設置される場合の可変容量コンデンサで例示するが、実施例1は、DCカットコンデンサC11およびC12が一体になった可変容量コンデンサについても適用できる。
【0026】
一般に、可変容量コンデンサを構成するキャパシタ(DCカットコンデンサC11およびC12を除く。以下、単にキャパシタという場合は、DCカットコンデンサC11およびC12を含まない。)と可変端子Tpおよび固定端子Tgとの接続には、2通りの接続が考えられ、その1つは前出の
図2であり、もう1つは以下の
図3である。
【0027】
図3においては、ノードN1、N3およびN5は抵抗R1、R3およびR5を介し、
図2の場合の固定端子Tgでなく、可変端子Tpに接続されている。反対に、ノードN2およびN4は抵抗R2およびR4を介し、
図2の場合の可変端子Tpではなく、固定端子Tgに接続されている。その他の構成は
図2と
図3とは同じであり説明を省略する。
図3のように、ノードN1およびN5が可変端子Tpに接続されていると、可変端子Tpから印加される可変電圧が変化する瞬間において、ノードN3と信号端子Ts1およびTs2との間に電位差が生じる。これは、DCカットコンデンサC11およびC12の充放電のためである。キャパシタC1からC4の容量値は数100pFであり、DCカットコンデンサC11およびC12の容量値を数10nFであるとする。時定数は抵抗値×容量値に比例するから、DCカットコンデンサC11およびC12の非常に大きな時定数により可変容量コンデンサ全体としての時定数が大きくなる。このように、可変容量コンデンサを構成するキャパシタC1およびC4からそれぞれ信号端子Ts1およびTs2側に接続されるノードN1およびN5が可変端子Tpに接続される場合応答時間が長くなる。
図2は、ノードN1およびN5が固定端子Tgに接続されているため、このような現象は起こらない。
【0028】
以上より、以下では、可変容量コンデンサを構成する回路が、
図2のように可変容量コンデンサを構成するキャパシタC1およびC4からそれぞれ信号端子Ts1およびTs2側に接続されるノードN1およびN5が固定端子Tgに接続する場合を想定する。
図3のように可変容量コンデンサを構成するキャパシタC1およびC4からそれぞれ信号端子Ts1およびTs2側に接続されるノードN1およびN5が可変端子Tpに接続する場合を除外する。可変容量コンデンサを構成するキャパシタが奇数個である場合、そのキャパシタの信号端子Ts1およびTs2側に接続される2つのノードのうち、一方が可変端子Tpに接続される場合がある。このため、以下において可変コンデンサを構成するキャパシタの数は主に偶数個を想定する。
【0029】
実施例1では、可変電圧が変化したときの容量値変化の応答時間を早くするため、ノードN1およびN5は抵抗R1およびR5を介し固定端子Tgに接続されている。以下、実施例1における応答時間をシミュレーションした。
【0030】
[シミュレーション1]
可変電圧が変化したときの容量値の応答時間は、キャパシタC1からC4の充放電時間によって決まる。抵抗R1からR5の抵抗値を小さくすると、充放電時間は短くなる。しかし、抵抗R1からR5の抵抗が小さくなると、交流信号が可変端子Tpおよび固定端子Tgに漏れ、Q値等が低下してしまう。容量変化の応答を速くしかつ特性を劣化させないためには、抵抗R1からR5のうち充放電時間の短縮に寄与する抵抗の抵抗値を小さくし、寄与しない抵抗の抵抗値を小さくしないことが求められる。そこで、抵抗R1からR5の抵抗値を変化させ、応答時間をシミュレーションした。
【0031】
図1のように、可変端子TpからキャパシタC1からC4を充放電して固定端子Tgに至る経路は、3通りある。経路P1は可変端子Tp→抵抗R2→ノードN2→キャパシタC1→ノードN1→抵抗R1→固定端子Tgの経路である。経路P1´は可変端子Tp→抵抗R4→ノードN4→キャパシタC4→ノードN5→抵抗R5→固定端子Tgの経路である。
【0032】
経路P2は可変端子TpからノードN3の間は経路P2aおよびP2bに並列に分離する。経路P2aは可変端子Tp→抵抗R2→ノードN2→キャパシタC2→ノードN3の経路である。経路P2bは可変端子Tp→抵抗R4→ノードN4→キャパシタC3→ノードN3の経路である。ノードN3において経路P2aとP2bが合流した経路P2はノードN3→抵抗R3→固定端子Tgに至る。
【0033】
各経路P1、P1´、およびP2の抵抗値および容量値等の回路上の定数を決定すれば、電圧降下の式を積分して各経路P1、P1´、およびP2の時定数が求まる。経路P1、P1´、およびP2のうち最も大きな時定数の3倍を、可変容量コンデンサ100の応答時間とした。なお、以下の説明では、慣例に従い抵抗とその抵抗値(例えばR1からR5)とは同じ符号を用い、キャパシタとその容量値(例えばC1からC4)とは同じ符号を用いる。
【0034】
まず、各容量値C1からC4を同じ値とし、各抵抗値R1からR5を同じ値とした。容量値および抵抗値はそれぞれ以下の値である。
C1=C2=C3=C4=400pF
R1=R2=R3=R4=R5=R0=500kΩ
このときの応答時間は3700μ秒である。抵抗値R1からR5の初期値R0を500kΩとした。
【0035】
抵抗値R1からR5のうち1つの抵抗値のみを変化させ、他の抵抗値を初期値R0に固定して応答時間を算出した。抵抗R1とR5は対称であり、抵抗R2とR4は対称であるため、抵抗値R1からR3を計算した。
【0036】
図4(a)は、R1/R0に対する応答時間を示す図、
図4(b)は、R2/R0に対する応答時間を示す図、
図4(c)は、R3/R0に対する応答時間を示す図である。変化させた抵抗値以外の抵抗値は初期値R0=500kΩとした。
図4(a)に示すように、R1/R0を小さくすると応答時間が長くなる。
図4(b)に示すように、R2/R0を小さくすると応答時間は短くなる。
図4(c)に示すように、R3/R0を小さくすると1未満かつ1/2以上ではR2/R0を変化させたときより応答時間は短くなる。しかし、R3/R0を1/2未満とすると応答時間は急激に長くなる。このように、1つの抵抗値を変化させる場合、R0の1未満1/2以上では抵抗値R3を小さくすると最も応答時間が短くなる。
【0037】
次に複数の抵抗値を変化させた。
図5(a)は、R1/R0およびR2/R0に対する応答時間を示す図である。経路P1の抵抗値R1およびR2を同じ値で変化させ、他の抵抗値を初期値R0に固定した。
図5(a)に示すように、経路P1(経路P1´は経路P1と対称であり同様)の抵抗値R1/R0およびR2/R0を小さくしても応答時間はほとんど変わらない。これは
図4(a)のようにR1/R0を小さくすると応答時間が悪化することとに対応している。このように、経路P1およびP1´の抵抗値を小さくしても応答時間の短縮には寄与しない。
【0038】
図5(b)は、R2/R0およびR4/R0に対する応答時間を示す図である。経路P2の可変端子Tp側の抵抗値R2およびR4を同じ値で変化させ、他の抵抗値を初期値R0に固定した。
図5(b)に示すように、R2/R0およびR4/R0を小さくしても応答時間は
図4(b)と余り変わらない。このように、抵抗値R2およびR4を小さくしても抵抗値R2(またはR4)1つを小さくするときと応答時間は余り変わらない。
【0039】
図6(a)は、R2/R0およびR3/R0に対する応答時間を示す図である。経路P2の可変端子Tp側の抵抗値R2およびR4のうち1つの抵抗値R2と固定端子Tg側の抵抗値R3を同じ値で変化させ、他の抵抗値を初期値R0に固定した。
図6(a)に示すように、R2/R0およびR3/R0を小さくすると1未満1/2以上では、応答時間は抵抗値の低下にともない急激に短くなる。1/2未満では応答時間は抵抗値の低下にともない少し短くなる。このように、経路P2のうち経路P2a(経路P2bは経路P2aと対称であり同様)の抵抗値R2およびR3を小さくすると応答時間が短くなる。R2/R0およびR3/R0が1/2未満では、抵抗値の低下にともなう応答時間の低下が小さいのは、
図4(c)のように、R3/R0が1/2未満になると応答時間が長くなるためと考えられる。
【0040】
図6(b)は、R2/R0、R3/R0およびR4/R0に対する応答時間を示す図である。経路P2の全ての抵抗値R2からR4を同じ値で変化させ、他の抵抗値を初期値R0に固定した。
図6(b)に示すように、R2/R0、R3/R0およびR4/R0を小さくすると1未満1/2以上では、応答時間は抵抗値の低下にともない急激に短くなる。1/2未満では応答時間は抵抗値の低下にともない少し短くなる。同じ抵抗値では応答時間は
図6(a)よりさらに短くなる。このように、経路P2の抵抗値R2からR4を小さくすると応答時間は、さらに短くなる。
【0041】
図6(a)および
図6(b)では、R2/R0およびR4/R0を1/2未満とするときに、R3/R0を1/2未満としている。
図4(c)のように、R3/R0を1/2未満とすると応答時間は悪化する。そこで、R3/R0を1/2に固定した。
【0042】
図7(a)は、R3/R0を1/2に固定しR2/R0に対する応答時間を示す図である。他の抵抗値を初期値R0に固定した。R3/R0=1を白丸で示す。
図7(a)に示すように、R2/R0を小さくすると、
図6(a)よりさらに応答時間が短くなる。特に、R2/R0が1/2未満では応答塩間が短くなる。
【0043】
図7(b)は、R3/R0を1/2に固定しR2/R0およびR4/R0に対する応答時間を示す図である。他の抵抗値を初期値R0に固定した。R3/R0=1を白丸で示す。
図7(b)に示すように、R2/R0およびR4/R0を小さくすると、
図6(b)よりさらに応答時間が短くなる。特に、R2/R0およびR4/R0が1/2未満では応答時間が短くなる。
【0044】
図7(a)および
図7(b)のように、抵抗値R3を初期値R0の1/2に固定し、抵抗値R2(または抵抗値R2およびR4)を1未満とすることで、応答時間がより短くなる。抵抗値R2(または抵抗値R2およびR4)を抵抗値R3より小さくすると応答時間はさらに短くなる。
【0045】
このように、R3/R0を1未満かつ1/2以上とし、R2/R0(またはR2/R0およびR4/R0)をR3/R0と異ならせることで応答時間を短くできる。R2/R0(またはR2/R0およびR4/R0)は1未満が好ましく、1/2未満がより好ましい。
【0046】
[シミュレーション2]
次に12個のキャパシタが直列に接続された可変容量コンデンサについて同様のシミュレーションを行なった。
図8は、実施例1においてシミュレーション2を行なった可変容量コンデンサの回路図である。
図8に示すように、可変容量コンデンサ102において、信号端子Ts1とTs2との間に12個のキャパシタC10およびC20が直列に接続されている。最も信号端子Ts1およびTs2側のキャパシタをC10、他のキャパシタをC20とする。キャパシタC10の信号端子Ts1およびTs2側のノードN30と固定端子Tgとの間に抵抗R30が接続されている。可変端子Tpとキャパシタ間のノードN10との間に抵抗R10が接続されている。固定端子Tgとキャパシタ間のノードN20との間に抵抗R20が接続されている。
【0047】
可変端子Tp→抵抗R10→ノードN10→キャパシタC10→ノードN30→抵抗R30→固定端子Tgの経路P1は2個ある。可変端子Tp→抵抗R10→ノードN10→キャパシタC20→ノードN20→抵抗R20→固定端子Tgの経路P2は5個ある。経路P2のうち可変端子Tp→抵抗R10→ノードN10→キャパシタC20→ノードN20の経路は、経路P2aとP2bの2つの経路が並列に接続されている。
【0048】
シミュレーションの方法は、シミュレーション1と同じである。容量値C10、C20、抵抗値R10からR30および初期値R0を以下のようにした。
C10=C20=400pF
R10=R20=R30=R0=500kΩ
【0049】
固定端子Tg側の抵抗値R20およびR30を固定し、可変端子Tp側の抵抗値R10を変化させた。抵抗R10は6個あるため、抵抗R10のうち抵抗値を変化させる抵抗R10の数を1から6個とした。6個は全ての抵抗値R10を変化させている。変化させる抵抗R10の抵抗値をR10´とする。
【0050】
図9(a)は、R10´/R0に対する応答時間を示す図である。変化させない抵抗値R10を初期値R0に固定し、抵抗値R20およびR30を初期値R0に固定している。
図9(a)に示すように、抵抗値R10´を小さくする抵抗R10が1個でも応答時間は短くなる。抵抗値R10´を小さくする抵抗R10の個数を増やすと応答時間はさらに短くなる。
【0051】
次に、抵抗値R10およびR30を固定し、経路P2の固定端子Tg側の抵抗値R20を変化させた。抵抗R20のうち抵抗値を変化させる抵抗R20の数を1から5個とした。5個は全ての抵抗値R20を変化させている。変化させる抵抗R20の抵抗値をR20´とする。
【0052】
図9(b)は、R20´/R0に対する応答時間を示す図である。変化させない抵抗値R20を初期値R0に固定し、抵抗値R10およびR30を初期値R0に固定している。
図9(b)に示すように、抵抗値R20´を小さくする抵抗R20が1個ではR20´/R0を1未満とすると応答時間は長くなる。抵抗値R20´を小さくする抵抗R20の個数が1個から4個でも同様である。全ての抵抗R20においてR20´/R0を1未満とすると応答時間が短くなる。
【0053】
このように、可変端子Tp側では1個の抵抗R10の抵抗値を小さくすると応答時間が短くなるが、固定端子Tg側では抵抗R20の全ての抵抗値を小さくしないと応答時間は短くならない。この理由は明確ではないが、例えば以下のように考えられる。固定端子Tg側では一部の抵抗値R20が初期値R0に固定されていると、応答時間は最も充放電の時定数が長い経路で律速されるためと考えられる。固定端子Tg側では1個の抵抗値R20を小さくしても隣接する経路P2には影響しない。一方、可変端子Tp側では1個の抵抗値R10を小さくすると隣の経路P2に影響する。これにより、1個の抵抗値R10が全体の応答時間に影響しているものと考えられる。
【0054】
5個の経路P2のうち抵抗値R10およびR20を変化させる経路の個数を変えて応答時間をシミュレーションした。経路P2は経路P2aとP2bが含まれるため、経路P2aのみ(経路P2bのみと対称)の抵抗値R10およびR20を変化させる場合と、経路P2aおよび経路P2bの両方の抵抗値R10およびR20を変化させる場合と、でシミュレーションした。変化させる抵抗R10およびR20の抵抗値をR10´´およびR20´´とした。
【0055】
図10(a)は、片方の経路P2aのR10´´/R0およびR20´´/R0に対する応答時間を示す図である。変化させない抵抗値R10およびR20を初期値R0に固定し、R30を初期値R0に固定している。抵抗値を変化させる経路P2aの個数を1個から4個とした。
図10(a)に示すように、抵抗値を変化させる経路P2aの個数が1個から4個では応答時間はほとんど変化しない。
【0056】
図10(b)は、両方の経路P2aおよびP2bのR10´´/R0およびR20´´/R0に対する応答時間を示す図である。変化させない抵抗値R10およびR20を初期値R0に固定し、R30を初期値R0に固定している。抵抗値を変化させる経路P2aおよびP2bの個数を1個から5個とした。5個のときは全ての経路P2の抵抗R10およびR20の抵抗を変化させている。
図10(b)に示すように、抵抗値を変化させる経路P2の個数が1個から4個では応答時間はほとんど変化しない。全ての経路P2の抵抗値R10およびR20の抵抗値を1未満とすると、応答時間が短くなる。
【0057】
図10(a)および
図10(b)では、抵抗値R20が初期値R0の1/2未満となってしまう。そこで、全ての抵抗値R20を初期値R0の1/2として、
図10(a)および
図10(b)と同様に、経路P2aのみの抵抗値R10を変化させる場合と、経路P2aおよび経路P2bの両方の抵抗値R10を変化させる場合と、でシミュレーションした。変化させる抵抗R10の抵抗値をR10´´とした。
【0058】
図11(a)は、片方の経路P2aのR10´´/R0に対する応答時間を示す図である。変化させない抵抗値R10を初期値R0に固定し、全てのR20を初期値R0の1/2に固定し、R30を初期値R0に固定している。抵抗値を変化させる経路P2aの個数を1個から3個とした。全ての抵抗R20を初期値R0とした場合を白丸で示す。
図11(a)に示すように、抵抗値を変化させる経路P2aの個数が1個から3個でも応答時間は短くなっており、経路P2aの個数が増えると応答時間はより短くなる。
【0059】
図11(b)は、両方の経路P2aおよびP2bのR10´´/R0に対する応答時間を示す図である。変化させない抵抗値R10を初期値R0に固定し、全てのR20を初期値R0の1/2に固定し、R30を初期値R0に固定している。抵抗値を変化させる経路P2aおよびP2bの個数を1個から5個とした。5個のときは全ての経路P2の抵抗R10の抵抗を変化させている。
図11(b)に示すように、
図11(a)より応答時間が短くなっている。抵抗値を変化させる経路P2の個数が増えると応答時間はより短くなる。
【0060】
図11(a)および
図11(b)のように、全ての抵抗R20の抵抗値R20を初期値R0の1/2に固定し、抵抗値R10の少なくとも1個を1未満とすることで、応答時間がより短くなる。抵抗値R10を初期値R0の1/2より小さくすると応答時間はさらに短くなる。
【0061】
以上のように、実施例1におけるシミュレーション1および2によれば、信号端子Ts1(第1信号端子)と信号端子Ts2(第2信号端子)との間に直列に接続された容量値が変化する複数のキャパシタC10およびC20のうち隣接するキャパシタ間の複数のノードN10(第1ノード)と可変端子Tpとの間にそれぞれ複数の抵抗R10(第1抵抗)が接続されている。隣接するキャパシタの間の1または複数のノードN20(第2ノード)と固定端子Tgとの間にそれぞれ1または複数の抵抗R20(第2抵抗)が接続されている。最も信号端子T1およびT2側のノードN30(第3ノード)と固定端子Tgとの間に抵抗R30(第3抵抗)が接続されている。
【0062】
このような可変容量コンデンサにおいて、抵抗R30の抵抗値の初期値R0を基準として抵抗R20の全ての抵抗値R20を1未満かつ1/2以上とする。抵抗R20の全ての抵抗値R20は抵抗R10の少なくとも1つの抵抗値R10と等しくない。このように、R20/R0を1未満かつ1/2とすることで応答時間を短くできる。
【0063】
また、抵抗R30の抵抗値の初期値R0を基準として抵抗R10の少なくとも1つの抵抗値を1未満とする。抵抗R10の少なくとも1つの抵抗値は抵抗R20の全ての抵抗値と等しくない。このように、抵抗R10の少なくとも1つにおいてR10/R0を1未満とすることで、応答時間を短くできる。
【0064】
少なくとも1つの抵抗値R10は1または複数の抵抗R20の全ての抵抗値より小さいことが好ましい。これにより、より応答時間を短くできる。
【0065】
抵抗R30の抵抗値の初期値R0を基準として抵抗R20の全ての抵抗値は略1/2である。これにより、より応答時間を短くできる。
【0066】
抵抗R20の全ての抵抗値は複数の抵抗R10の全ての抵抗値と等しくない。また、抵抗R30の抵抗値を基準として抵抗R10の全ての抵抗値は1未満であることが好ましい。これにより、より応答時間を短くできる。
【0067】
図1および
図8のように、抵抗R10は複数である。抵抗R20は1または複数である。抵抗R30は1または2個である。シミュレーション1および2では、抵抗R10内で、変化させる抵抗R10の抵抗値は全て同じとし、固定する抵抗R10の抵抗値は全て同じ抵抗値とした。変化させる複数の抵抗R10内で抵抗値は異なっていてもよい。固定する複数の抵抗R10内で抵抗値は異なっていてもよい。抵抗R20およびR30についても同様である。
【0068】
図8のように、ノードN10とN20は交互に設けられている。この場合、信号端子Ts1とTs2との間に偶数のキャパシタが直列に接続されていると、最も信号端子Ts1およびTs2側の2つのノードの両方を固定端子Tgに接続することができる。信号端子Ts1とTs2との間に奇数のキャパシタが直列に接続されているとき、通常は最も信号端子Ts1およびTs2側の2つのノードの片方のみ固定端子Tgに接続することができる。この場合実施例1は適用できない。しかし信号端子Ts1とTs2との間に偶数のキャパシタが直列に接続されている場合に、一つのキャパシタを容量値が2倍の2つの直列のキャパシタに置き換えることがありうる。この場合、信号端子Ts1とTs2との間に全体として奇数のキャパシタが直列に接続されているが、信号端子Ts1およびTs2側の2つのノードN30の両方を固定端子Tgに接続することができる場合もある。この場合は実施例1を適用することができる。
【0069】
次に実施例1に係る可変容量コンデンサの平面図および断面図をキャパシタが8個直列に接続されている可変容量コンデンサを例に説明する。
図12は実施例1の可変容量コンデンサの一例を示す平面図、
図13は、
図12のA−A断面図である。
図12においては、配線層44を破線で示しかつ絶縁膜の図示は省略している。
【0070】
図12および
図13に示すように、実施例1の一例では可変容量コンデンサ104は、上面に絶縁膜32が形成された支持基板30上に、複数のキャパシタ20a〜20hが形成されている。支持基板30は、例えば厚さ200μmのシリコン(Si)基板である。絶縁膜32は、例えば厚さ1μmの酸化シリコン(SiO
2)膜である。なお、支持基板30として、例えば石英基板、アルミナ基板、サファイア基板、またはガラス基板等の絶縁性基板を用いてもよいし、Siなどの導電性基板(好ましくは高抵抗基板)を用いてもよい。絶縁性基板を用いる場合は、上面の絶縁膜を省略することができる。導電性基板を用いる場合は、上面に絶縁膜が形成されることが好ましい。
【0071】
複数のキャパシタ20a〜20hは、絶縁膜32上に密着層38を介して形成された下部電極22と、下部電極22上に形成された誘電体層24と、誘電体層24上に形成された上部電極26と、で構成されている。なお、密着層38は形成されていなくてもよい。キャパシタ20aとキャパシタ20bとは、互いの下部電極22が接続されて一体となっている。同様に、キャパシタ20cとキャパシタ20d、キャパシタ20eとキャパシタ20f、およびキャパシタ20gとキャパシタ20hも、互いの下部電極22が接続されて一体となっている。なお、下部電極22が接続されずに分離されていて、別の配線などによって電気的に接続されていてもよい。
【0072】
下部電極22および上部電極26は、例えば厚さ250nmの白金(Pt)である。誘電体層24は、例えば厚さ90nmで、マンガン(Mn)が添加されたBST(Ba
XSr
1−XTiO
3)層であり、組成比はX=0.5、すなわちBa
0.5Sr
0.5TiO
3である。なお、リーク特性を改善する目的で、Mn以外の、例えばニオブ(Nb)などを添加してもよいし、耐圧特性など他の特性の改善のために、その他の微量添加物を添加してもよい。また、BaとSrの組成比はX=0.5の場合に限られず、組成比を適宜変更することができる。また、誘電体層24として、BST以外の強誘電体(例えばペロブスカイト構造を有する誘電体)を用いることができる。
【0073】
密着層38は、例えばチタン(Ti)層や酸化チタン(TiO
X)層である。なお、下部電極22及び上部電極26として、例えばイリジウム(Ir)又はルテニウム(Ru)などの貴金属や、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO
3)、酸化ルテニウム(RuO
2)、酸化イリジウム(IrO
2)などの導電性酸化物を用いてもよい。
【0074】
キャパシタ20a、20hとキャパシタ20b〜20gとは、誘電体層24を挟んで下部電極22と上部電極26とが対向する面積がほぼ同じである。
【0075】
絶縁膜32上に、上部電極26の上面を露出させかつ他の領域を覆う絶縁膜36が形成されている。絶縁膜36は、例えば酸化チタン(TiO
X)などの密着層38を介して形成されているが、密着層38が形成されていなくてもよい。絶縁膜36は、例えば厚さ100nmの酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜である。なお、絶縁膜36として、Al
2O
3膜以外にも、例えば窒化シリコン(SiN)膜、酸化タンタル(Ta
2O
5)膜、又はチタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)膜などを用いてもよい。また、絶縁膜36は、これらの単層膜であってもよいし、積層膜であってもよい。
【0076】
絶縁膜36上に、上部電極26の上面を露出させる開口を有する絶縁膜40が形成されている。絶縁膜40の開口には、シード層42を介して、配線層44が埋め込まれている。なお、シード層42は形成されていなくてもよい。絶縁膜40および配線層44上に、絶縁膜46が形成されている。絶縁膜36、40および46は、保護膜としての機能を有する。複数のキャパシタ20a〜20hは、配線層44によって、信号端子50と52との間に直列に接続されている。また、複数のキャパシタ20a〜20hは、配線層44によって、可変端子54と固定端子56との間に並列に接続されている。各端子50から56は、例えば厚さ10μmで、Cu、Ni、錫(Sn)がこの順に積層された積層膜である。なお、各端子50から56は、金(Au)や半田を用いてもよい。信号端子50および52は信号端子Ts1およびTs2対応し、可変端子54および固定端子56は可変端子Tpおよび固定端子Tgに対応する。
【0077】
絶縁膜40、46は、例えば厚さ3μmのポリイミド膜である。配線層44は、例えば厚さ4μmの銅(Cu)メッキである。シード層42は、例えば窒化タンタル(TaN)とタンタル(Ta)とCuの積層膜である。なお、絶縁膜40、46として、例えばSiO
2膜やSiN膜などの無機絶縁膜や、BCB(ベンゾシクロブテン)樹脂などの有機絶縁膜を用いてもよい。配線層44として、アルミニウム(Al)又はアルミニウム合金(AlSiやAlCuなど)などの導電性材料を用いてもよい。シード層42として、TaN、Ta、Cuの積層膜以外にも、TaNの代わりに、窒化チタン(TiN)、珪化窒化チタン(TiSiN)、珪化窒化タンタル(TaSiN)などの窒化物やSrRuO
3、IrO
2などの酸化物を用いてもよい。
【0078】
図14(a)は、
図12のB−B間の断面図、
図14(b)は、
図12のC−C間の断面図である。
図12および
図14(a)に示すように、絶縁膜36上に、抵抗膜48が形成されている。抵抗膜48は、配線層44を介して、可変端子54と下部電極22との間に接続されている。抵抗膜48は、
図8の抵抗R20およびR30に対応する。
図12および
図14(b)のように、絶縁膜36上に、抵抗膜49が形成されている。抵抗膜49は、配線層44を介して、固定端子56と上部電極26との間に接続されている。抵抗膜49は、
図8の抵抗R10に対応する。抵抗膜48、49は、例えば厚さ80nmのTaSiN膜である。なお、抵抗膜48、49として、Ni−Cu合金やFe−Cr−Al合金などの高抵抗膜を用いてもよい。また、抵抗膜48、49は、絶縁膜36上に形成される場合に限られず、その他の場所に形成されてもよい。