特許第6402146号(P6402146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402146
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】配管洗浄用器具および配管洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/043 20060101AFI20181001BHJP
   B08B 9/045 20060101ALI20181001BHJP
   B08B 9/047 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   B08B9/043 436
   B08B9/045
   B08B9/047
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-144051(P2016-144051)
(22)【出願日】2016年7月22日
(65)【公開番号】特開2018-12081(P2018-12081A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2016年8月2日
【審判番号】不服2017-10817(P2017-10817/J1)
【審判請求日】2017年7月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516220398
【氏名又は名称】株式会社ディーエスアール
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 尚人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博明
【合議体】
【審判長】 久保 竜一
【審判官】 永田 和彦
【審判官】 佐々木 芳枝
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3117085(JP,U)
【文献】 特開平11−226532(JP,A)
【文献】 実開平6−15777(JP,U)
【文献】 特開平9−317492(JP,A)
【文献】 実開昭52−112266(JP,U)
【文献】 実開昭62−122253(JP,U)
【文献】 特開昭62−248954(JP,A)
【文献】 実開平6−34078(JP,U)
【文献】 実開昭63−98790(JP,U)
【文献】 特開2003−93987(JP,A)
【文献】 特開2005−40730(JP,A)
【文献】 特開2001−300458(JP,A)
【文献】 特開2007−146502(JP,A)
【文献】 実開昭62−136291(JP,U)
【文献】 特開2009−131791(JP,A)
【文献】 特開2002−102812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/00-9/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の軸、
かかる軸が貫通する可撓性の中空部材
なくとも二股に分かれており、一方が前記中空部材と連結されると共に前記可撓性の軸が貫通し、他方が吸引機と接続される分岐管、
記可撓性の軸の一方の端に装着される着脱自在のブラシ、
前記中空部材のブラシ側の端に先端側が扁平な管状の形状であって、前記可撓性の軸が挿通される中央の開口部と、その側方にブラシによって掻き落とされたものを吸い込むための開口部とを有し、当該側方の開口部により、前記ブラシが存在する先端側よりブラシにより掻き落とされた汚れを吸い込むことができるノズル、および
前記可撓性の軸の他方の端に装着される着脱自在の電動機、ならびに
前記分岐管に接続される吸引機を含むことを特徴とする、排煙用ダクト洗浄用器具。
【請求項2】
可撓性の軸、
かかる軸が貫通すると共に、吸引機と接続するための枝分かれ部分を途中に有する可撓性の中空部材、
前記可撓性の軸の一方の端に装着される着脱自在のブラシ、
前記中空部材のブラシ側の端に先端側が扁平な管状の形状であって、前記可撓性の軸が挿通される中央の開口部と、その側方にブラシによって掻き落とされたものを吸い込むための開口部とを有し、当該側方の開口部により、前記ブラシが存在する先端側よりブラシにより掻き落とされた汚れを吸い込むことができるノズル、および
前記可撓性の軸の他方の端に装着される着脱自在の電動機、ならびに
前記中空部材の枝分かれ部分に接続される吸引機を含むことを特徴とする、排煙用ダクト洗浄用器具。
【請求項3】
前記電動機が電動ドライバー本体である、請求項1または2に記載の排煙用ダクト洗浄用器具。
【請求項4】
前記可撓性の軸が金属製である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の排煙用ダクト洗浄用器具。
【請求項5】
前記可撓性の軸がコイル状である、請求項に記載の排煙用ダクト洗浄用器具。
【請求項6】
前記ブラシが金属製ワイヤーブラシである、請求項1〜のいずれか一項に記載の排煙用ダクト洗浄用器具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の排煙用ダクト洗浄用器具の先端にあるブラシを、可撓性の軸を介して洗浄する排煙用ダクトに挿入する工程、
当該排煙用ダクト洗浄用器具における枝分かれ部分に、または少なくとも二股に分かれた分岐管の前記可撓性の軸が貫通していない方にホースを介して吸引機を接続する工程、
当該排煙用ダクト洗浄用器具の電動機を作動することによって、前記可撓性の軸に連通して回転する前記ブラシで当該排煙用ダクトの汚れを落とす工程、および
汚れを落としながら、または汚れを落とした後、その汚れを当該排煙用ダクト洗浄用器具の中空部材を通して前記吸引機で吸い取る工程
を含むことを特徴とする、排煙用ダクト洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用器具の技術分野に属する。本発明は、配管(特に排煙用ダクト)の洗浄用器具およびその洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配管とは、液体、気体、粉体等の流体の輸送等のために取り付けられた管、チューブ、ホースのことをいう。通常、配管は、金属製または高分子樹脂製等の材質で、形状は角形、円形または楕円形の筒形状を有しており、直管、曲管(エルボ)、分岐管等を組み合わせて用いられる。このような配管は、ダクト(通風管)、水道管、排水管、ガス管、消火管等の様々な用途で、工場、店舗、家庭、屋外、地中、海中等のあらゆる場所に配設されている。これらの中でもダクトは、通常、気体を運ぶ管であり、主に建築物内の空調、換気、または排煙等の目的で配設されるものである。
【0003】
ダクトを配設し、空調、換気、および排煙等を行うことにより、建築物内部は快適な環境に保たれるが、その長期間の使用、または汚れた空気の輸送によりダクトの管の内壁には油や粉塵、付着物等の汚れが堆積していくことになる。このような汚れは、汚れた空気や煙を輸送するための排煙用ダクトの場合において特に問題となる。ダクト内の汚れの堆積は、結果として、ダクトの機能低下、そしてダクトの閉塞を引き起こす。ダクトが閉塞した場合、ダクトそのものを全て取り替える必要が生じることさえある。また、飲食店、例えば焼肉店の排煙用ダクトの場合、堆積された汚れには油分を含んでいるため、悪臭の発生や発火の恐れもある。
【0004】
このようなダクト内の汚れの堆積による、ダクトの機能低下を避けるためには、定期的な清掃、または洗浄が必要不可欠である。しかし、通常は、内部に作業者が清掃器具を持ち込み、作業するにはダクトは開口が狭く、内部の清掃や洗浄は非常に困難である。従来、このようなダクトの清掃や洗浄の方法としては、例えば、汚れが軽度の場合には、水を流してその水圧で汚れを除去する方法、外部からブラシを挿入し、浮かせた粉塵を集塵機で吸い込む方法が挙げられ、また、汚れが酷い場合には、ダクトの内部に薬品や熱湯を流して汚れを溶解、剥離させる方法が挙げられる。しかし、水などの液体を用いて天井のダクトを洗浄すると部屋中が水浸しになるという問題がある。また、ダクトの入口付近に、例えば焼肉用テーブルがある場合、それを取り外して洗浄を行う必要がある。またダクトが折れ曲がっている場合には内部までの洗浄は困難である。
【0005】
特許文献1には、挿抜方向に沿った軸心周りに回転することにより、流体輸送管に接続された弁取付用の分岐管内を掃除し、分岐管内の流体を排出する機能を有する分岐管内掃除装置が開示されている。当該掃除用具の利点は管の内面から掻き落とされた物を、管内に残さず、排出管内流体とともに外部に排出できることにある。当該掃除装置は、流体輸送管に用いられるものであり、また、掃除具の軸は可撓性を有しない。
【0006】
特許文献2には、ダクト内面に強固に付着している塵芥を清掃するための空調ダクトノズルおよび空調ダクト清掃装置が開示されている。当該清掃装置は、高圧空気を導くホースの先端にシャフトを取り付け、シャフトの外周面に高圧空気を略半径方向に噴射する複数の噴射口を形成し、またカバーの内周面には羽根車を有する。当該清掃装置は、放出空気によって空調ダクトの内面の塵芥を浮き飛ばすとともに、ノズルの推進力を得ることができ、ノズルは空調ダクトの内壁面に沿って旋回しながら推進することで付着している塵芥を清掃することができる。しかし、当該清掃装置は高圧の空気によって吹き飛ばすことができる塵芥には有効であるが、強固に堆積した汚れを掻き落とす効果を有しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−98790号公報
【特許文献2】特開2002−102812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、堆積した油やスス、粉塵等で汚れた配管を、容易に洗浄することができる器具または方法を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、電動ドライバー本体のような電動機の力で、可撓性の回転軸の一方の端に接続されるブラシを回転させることができ、かつ当該ブラシで掻き落とした汚れを吸引して配管外へ排出することができる部分を有する器具を着想し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明として、例えば、下記のものを挙げることができる。
[1]可撓性の軸、かかる軸が貫通する可撓性の中空部材(当該中空部材は、吸引機と接続するための枝分かれ部分を途中に有していてもよい。)、前記中空部材が枝分かれ部分を途中に有しない場合、少なくとも二股に分かれており、一方が前記中空部材と連結されると共に前記可撓性の軸貫通し、他方が吸引機と接続される分岐管、および前記可撓性の軸の一方の端に装着される着脱自在のブラシ、ならびに前記可撓性の軸の他方の端に装着される着脱自在の電動機を含むことを特徴とする、配管洗浄用器具。
【0011】
[2]前記電動機が電動ドライバー本体である、上記[1]に記載の配管洗浄用器具。
[3]前記可撓性の軸が金属製である、上記[1]または[2]に記載の配管洗浄用器具。
[4]前記可撓性の軸がコイル状である、上記[3]に記載の配管洗浄用器具。
[5]前記ブラシが金属製ワイヤーブラシである、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の配管洗浄用器具。
[6]前記配管が、ダクトまたは排煙用ダクトである、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の配管洗浄用器具。
[7]さらに、前記中空部材のブラシ側の端にノズルを有する、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の配管洗浄用器具。
[8]さらに、吸引機を含む、上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の配管洗浄用器具。
【0012】
[9]上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の配管洗浄用器具の先端にあるブラシを、可撓性の軸を介して洗浄する配管に挿入する工程、当該配管洗浄用器具における枝分かれ部分に、または少なくとも二股に分かれた分岐管の前記可撓性の軸が貫通していない方にホースを介して吸引機を接続する工程、当該配管洗浄用器具の電動機を作動することによって、前記可撓性の軸に連通して回転する前記ブラシで当該配管の汚れを落とす工程、および汚れを落としながら、または汚れを落とした後、その汚れを当該配管洗浄用器具の中空部材を通して前記吸引機で吸い取る工程を含むことを特徴とする、配管洗浄方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、配管周囲の設備、例えば焼肉用テーブルを取り除くことなく配管洗浄作業を行うことができる。また、掻き落とした汚れを吸引機により吸い取り、速やかに配管外へ排出することができる。そのため、配管内に堆積した油や粉塵といった汚れの洗浄が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る配管洗浄用器具の一使用図である。
図2】本発明に係る配管洗浄用器具の一例を示す分解側面図である。
図3】本発明に係る配管洗浄用器具に用いうるノズルの一例を示す斜視図である。
図4】本発明に係る配管洗浄用器具に用いうるノズルの一例を示す斜視図である。
図5】本発明に係る配管洗浄用器具に用いうる分岐管の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳述する。
1.本発明に係る配管洗浄用器具について
本発明に係る配管洗浄用器具(以下、「本発明洗浄用器具」という。)は、可撓性の軸、かかる軸が貫通する可撓性の中空部材(当該中空部材は、吸引機と接続するための枝分かれ部分を途中に有していてもよい。)、前記中空部材が枝分かれ部分を途中に有しない場合、少なくとも二股に分かれており、一方が前記中空部材と連結されると共に前記可撓性の軸貫通し、他方が吸引機と接続される分岐管、および前記可撓性の軸の一方の端に装着される着脱自在のブラシ、ならびに前記可撓性の軸の他方の端に装着される着脱自在の電動機を含むことを特徴とする。
【0016】
1.1 可撓性の軸
本発明洗浄用器具は、可撓性の軸(以下、「可撓軸」という。)を含む。かかる可撓軸は、電動機とブラシの間に設置され、電動機の回転運動をブラシに伝達する回転軸(シャフト)としての機能を有する。
【0017】
当該可撓軸は、配管の折れ曲がりに応じて折り曲げることができ、折り曲げられた状態でも電動機の回転を一方から他方へ伝達することができる。当該可撓軸の有する外形は、配管に挿入して使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、ワイヤー状、ロープ状、糸状、針金状または棒状である。当該可撓軸の構造としては、通常、コイル状の構造を挙げることができる。それらの構造の中でも、例えば、金属製の芯材の周囲に針金状の金属がコイル状に編み上げられた構造を有することが好ましい。また、内部ほど細く表面に近いほど太い鋼線を、コイル状に順次逆巻きに密に巻き重ねた構造を有するフレキシブルシャフトであることがより好ましい。当該可撓軸におけるコイルの巻きは、通常、当該可撓軸の使用時の回転方向に応じて適宜選択される。
【0018】
当該可撓軸は、単一の部材からなるものでも、複数の部材が軸継ぎ手等により連結されたものでもよい。当該可撓軸の長さは、洗浄する配管に応じて適宜選択され、特に制限されない。具体的には、例えば、1m〜25mの範囲内の長さを挙げることができる。好ましくは、2m〜5mの範囲内の長さである。25mより長いと、電動機のパワーが足りないおそれがある。
当該可撓軸の材質としては、洗浄する配管に合わせてそれ自身を曲げることができる可撓性と回転を伝達する回転軸としての機能を有していれば特に制限されないが、通常、金属製のものを挙げることができる。かかる金属としては、例えば、ステンレススチール、スチール、鉄が挙げられる。これらの中でも、ステンレススチールが好ましい。
当該可撓軸として好適な性質を有するものは、フレキシブルシャフトとして市販されている。
【0019】
1.2 ブラシ
本発明洗浄用器具は、可撓軸の一方の端に装着されるブラシを含む。かかるブラシは、当該ブラシの回転により配管を洗浄することができれば特に制限されないが、通常、軸および軸に放射状に植え付けられた毛を有する。このようなブラシとしては、例えば、チューブブラシ、ローラーブラシ、カップブラシが挙げられる。これらの中でもチューブブラシが好ましい。ブラシの毛の材質は配管に堆積した汚れを掻き取ることができれば特に制限されないが、例えば、真鍮、鉄、ステンレススチール等の金属、ナイロン、ポリエチレン等の合成樹脂、植物繊維、動物毛等の天然素材が挙げられる。これらの中でも真鍮、鉄、ステンレススチール等の金属であることが好ましい。特に、本発明洗浄用器具を排煙用ダクトに用いる場合は、その強固に堆積した油、スス、粉塵といった汚れを掻き落とすために金属製ワイヤーブラシが好適である。
【0020】
また、本発明洗浄用器具に使用されるブラシは、洗浄する配管の大きさ(直径)に応じて選択される。配管の洗浄に適したブラシは、通常、軸周りの毛の直径が配管の直径と同等か、それよりやや小さいものである。
【0021】
本発明洗浄用器具に好適なブラシは、ワイヤーチューブブラシ等の名称で一般に市販されており、容易に入手することができる。可撓軸へのブラシの装着手段は特に制限されないが、例えば、溶接、ねじの螺合、ねじ止め、ピン止め、接着が挙げられる。
【0022】
1.3 電動機
本発明洗浄用器具は、可撓軸の他方の端(ブラシ装着側と反対側)に装着される着脱自在の電動機を含む。かかる電動機としては、可撓軸を十分に回転させ、その先端に装着されるブラシを十分に回転させる駆動力(トルク)を有するものであれば特に制限されないが、例えば、電動ドリルドライバー、インパクトドライバー、電気ドリルなどの電動ドライバー本体、電気モーター、ガソリンモーターを挙げることができる。これらの中で電動ドライバー本体は一般に市販されており簡便で好ましい。電動機の電源は通常の家庭用電源等が使用できるが、充電器を使用してもよい。交換可能な充電器を備えた電動ドライバー本体であれば、1以上の当該充電器を本発明洗浄用器具と一緒に作業場に運んで本発明洗浄用器具に予備として搭載することにより、電源の備えられていない場所においてもバッテリー切れによる作業中断を回避することができる。
【0023】
電動機と可撓軸の接続方法としては、電動機の回転運動を伝達することができれば特に制限されないが、例えば、溶接、ねじの螺合、ねじ止め、ピン止め、接着が挙げられる。これらの中でも溶接が好ましい。
【0024】
また、電動ドライバー本体であれば、変速機能を有するものもあり、例えば、トリガーを緩く引くことで低回転、奥まで引くことで高回転のように、トルクないし回転数を簡単に調節することができることから、配管内の汚れの堆積度に応じてブラシの回転速度を適宜調節することができる。
【0025】
1.4 可撓性の中空部材
本発明洗浄用器具は、可撓性の中空部材(以下、「中空部材」という。)を含む。かかる中空部材は、吸引機と接続するための枝分かれ部分を途中に有していてもよい。当該中空部材は、電動機により回転する可撓軸を保護し、またブラシで配管から掻き落とされた粉塵や油といった汚れを配管外へ排出する際の通路としての機能も有する。
【0026】
当該中空部材は、通常、管状であり、気密性であり、その中空部に前記可撓軸が挿入され、可撓軸を覆う形で配置される。その材質は、可撓性を有していれば特に制限されないが、通常は樹脂製のものが使用される。かかる樹脂としては、例えば、合成ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンが挙げられる。
【0027】
当該中空部材の長さは、後述する分岐管を有しない場合には、可撓軸よりやや短長であることが好ましい。分岐管を有する場合には、それを含めた長さが可撓軸よりやや短長であることが好ましい。
当該中空部材が枝分かれ部分を途中に有している場合、その枝分かれ部分に吸引機が接続され、そこから吸引機の吸引力により、ブラシで配管から掻き落とされた粉塵や油といった汚れが配管外へ排出される。
【0028】
1.5 分岐管
本発明洗浄用器具は、前記中空部材が枝分かれ部分を途中に有しない場合、少なくとも二股に分かれており、一方が前記中空部材と連結されると共に前記可撓性軸を貫通し、他方が吸引機と接続される分岐管を含む。かかる分岐管には気密性のホースを介して吸引機が接続され、そこからブラシで配管から掻き落とされた粉塵や油といった汚れが配管外へ排出される。
【0029】
当該分岐管は、少なくとも二股に分かれていればよく、それ以上に分岐する管を有していてもよい。また、当該分岐管は、通常、可撓軸が貫通する部分が直管であり、当該直管より垂直または斜め方向に一以上の分岐する管を有する。
【0030】
当該分岐管の材質は特に制限されないが、金属、樹脂が挙げられる。かかる金属としては、例えば、ステンレススチール、スチール、鉄、真鍮が挙げられる。かかる樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンが挙げられる。また、当該分岐管は、通常、気密性である。
【0031】
当該分岐管の一例としては、図5に示すようなものを挙げることができる。このような分岐管の使用により、容易に吸引機の接続または取り外しを行うことができる。
【0032】
1.6 配管
本発明洗浄用器具で洗浄することができる配管は、本発明洗浄用器具を使用することができれば特に制限されないが、例えば、ダクト(通風管)、水道管、排水管、ガス管、消火管が挙げられる。これらの中でもダクトが好ましい。ダクトはその用途によって、排煙用ダクト、換気用ダクト等に分類されるが、本発明洗浄用器具は、これらの中でも排煙用ダクトに用いられることが好ましい。排煙用ダクトは、通常、工場や焼肉店等の飲食店において、建造物内より煙を除去するために配設されたダクトである。煙は不完全燃焼の結果にできる微粒子を含む空気の固まりであり、通常、スス、粉塵、油分、有害な微粒子等を含むことが多いため、排煙用ダクトは特に油分の汚れや粉塵の蓄積が顕著である。
【0033】
本発明洗浄用器具は、亜鉛めっき鉄板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、ステンレス鋼板、塩ビ被覆鋼板等が使用された金属製の配管に使用されることが好ましい。
【0034】
1.7 吸引機
本発明洗浄用器具は、さらに吸引機を含むことができる。かかる吸引機により、ブラシで配管から掻き落とされた粉塵や油といった汚れを配管外へ速やかに排出することができる。
当該吸引機としては、洗浄する配管の汚れを吸引することができれば特に制限されないが、例えば、バキューム、掃除機、電動ポンプ、ガソリンポンプが挙げられる。これらの中でもバキュームや掃除機が好ましい。また、バキュームの中でも業務用の強力なもの、例えば、高真空・大風量タイプのものが好ましい。
本発明洗浄用器具に適した吸引機としては、例えば、東浜工業株式会社製のパワーバッククリーナー TVC−3200型が挙げられる。
【0035】
1.8 ノズル
本発明洗浄用器具は、さらに前記中空部材のブラシ側の端にノズル含むことができる。かかるノズルは、ブラシによって掻き落とされた汚れを吸い取るための、吸引機の吸い取り口として機能する。
【0036】
ノズルの形状としては特に制限されないが、例えば、先端部、または側面部に開口部を有するものが挙げられる。具体的には、例えば、図3に示すノズル5Aや図4に示すノズル5Bのものを挙げることができる。ノズル5Aは、2つの金属環を、複数の金属の細い棒状の部材で接続した形状を有している。環状部材の中央部には前記可撓軸が挿通される。棒状の部材の間は開口となっており、当該開口より掻き落とされた汚れが中空部材に吸い込まれる。ノズル5Bは、先端側が扁平な管状の形状を有する。先端側には、前記可撓軸が挿通される中央の開口部と、その側方にブラシによって掻き落とされたものを吸い込むための2つの開口部を有する。当該側方の開口部により、ブラシが存在する先端側よりブラシにより掻き落とされた汚れを吸い込むことができる。
【0037】
2.本発明に係る配管洗浄方法
本発明に係る配管洗浄方法(以下、「本発明洗浄方法」という。)は、以下の(1)〜(4)の工程を含むものである。
(1)本発明洗浄用器具の先端にあるブラシを、可撓軸を介して洗浄する配管に挿入する工程
(2)当該配管洗浄用器具における枝分かれ部分に、または少なくとも二股に分かれた分岐管の前記可撓軸が貫通していない方にホースを介して吸引機を接続する工程
(3)当該配管洗浄用器具の電動機を作動することによって、前記可撓軸に連通して回転する前記ブラシで当該配管の汚れを落とす工程
(4)汚れを落としながら、または汚れを落とした後、その汚れを当該配管洗浄用器具の中空部材を通して前記吸引機で吸い取る工程
【0038】
以下、本発明洗浄方法について、図面を用いて具体的に説明する。
図2は、本発明の一例である本発明洗浄用器具Aの分解側面図である。この一例において、可撓軸3は、図2中の拡大図に示すようにコイル状の外形を有する金属製のものである。可撓軸3の一方の端には金属製のチューブワイヤーブラシであるブラシ6が、他方の端側には電動ドライバー本体である電動機1が接続されている。また、中空部材4の一方の端には、吸引機の取り込み口として機能するノズル5ないし5A(図3参照)が、他方の端側には分岐管2が接続されている。
【0039】
分岐管2は、中空部材4との接続部、電動機1側、および中空部材4と電動機1を結ぶ管より斜め方向に延びる管に開口部を有する。図2には示されていないが、分岐管2の斜め方向に延びる開口部には、ホース7を介して吸引機8が接続される。
【0040】
図1には、本発明洗浄用器具Aの使用状態(作業例)が示されている。当該図において、図1下方にある配管10は、焼肉ロースターを上部に有する焼肉用テーブル9からの煙を吸い込む排煙用ダクトである。本発明洗浄用器具Aに使用されるブラシ6の直径は、当該配管10の直径に合わせて選択されている。
【0041】
(1)第1工程
本工程は、本発明洗浄用器具の先端にあるブラシを、可撓軸を介して洗浄する配管に挿入する工程である。
まず、本発明洗浄用器具Aを、洗浄する配管10が設置されている建造物等に運搬し、設置する。本発明洗浄用器具Aは、一体として、また部品に分解されて運搬され、作業場所に設置される。そして、本発明洗浄用器具Aの一方の端にあるブラシ6を、可撓軸3を介して洗浄する配管10に挿入する。図1の使用図においてはブラシ6、可撓軸3、および中空部材4が、配管10の入り口にある焼肉用テーブル9の上方より挿入されている。可撓軸3および中空部材4は、図1および図2に示すように、配管10の曲がりに応じて折れ曲がることができ、ブラシ6は配管10の内部にまで挿入される。本発明洗浄用器具Aの設置に先だって、ファイバースコープ等により配管内の汚れやその堆積の程度を確認することもできる。
【0042】
(2)第2工程
本工程は、当該配管洗浄用器具における枝分かれ部分に、または少なくとも二股に分かれた分岐管の前記可撓軸が貫通していない方にホースを介して吸引機を接続する工程である。
図1および図2では、本発明洗浄用器具Aの分岐管2において、電動機1も中空部材4も接続されない開口部にホース7を介して吸引機8が接続されている、または接続される。図2および図5の分岐管2は金属製であり可撓性ではないが、本発明洗浄用器具においては、分岐管を有さず中空部材自体が分岐していてもよい。
【0043】
(3)第3工程
本工程は、当該配管洗浄用器具の電動機を作動することによって、前記可撓軸に連通して回転する前記ブラシで当該配管の汚れを落とす工程である。
本発明洗浄用器具Aの電動機1を起動することにより可撓軸3が回転し、その回転がブラシ6に伝達され、ブラシ6が回転する。このブラシ6の回転によって配管10内の堆積した油、スス、粉塵といった汚れが掻き落とされる。汚れが強固な場合は、電動機1の回転を高速回転にすることで高い洗浄力を得ることができる。
【0044】
(4)第4工程
本工程は、汚れを落としながら、または汚れを落とした後、その汚れを当該配管洗浄用器具の中空部材を通して前記吸引機で吸い取る工程である。
汚れを配管10から掻き落としながら、または汚れを掻き落とした後、その汚れは本発明洗浄用器具Aの中空部材4を通過して吸引機8によって吸い取られる。図1および図2の一例では、ブラシ6の根元に位置するところにあるノズル5が吸引機8の吸い取り口として機能し、そこから汚れが吸い取られる。吸い取られた汚れは、中空部材4を通って吸引機内部に蓄積される。このとき、図3に示すノズル5Aを用いた場合はノズルの側方から、図4に示すノズル5Bを用いた場合はノズルの正面から汚れが主に吸い込まれる。このように、吸引機8により汚れを吸い取り除去することにより、油、スス、粉塵といった汚れが堆積し、閉塞した配管であっても容易に洗浄することができる。また、本発明洗浄方法を用いれば、配管周囲の設備、例えば焼肉用テーブルを取り除くことなく洗浄作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明洗浄用器具または本発明洗浄方法は、例えば、焼肉店の焼肉用テーブルに配設された排煙用ダクト等の配管に堆積した油、スス、粉塵といった汚れを落とすために有用である。
【符号の説明】
【0046】
A 本発明洗浄用器具
1 電動機
2 分岐管
3 可撓軸
4 中空部材
5 ノズル
6 ブラシ
7 ホース
8 吸引機
9 焼肉用テーブル
10 配管

図1
図2
図3
図4
図5