(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の放射素子の前記第1の放射素子に対向する外縁は、前記第2の放射素子の他端を含む区間において、当該他端に近づくに従って前記第1の放射素子から次第に遠ざかる曲線を描き、
前記第3の放射素子の前記第1の放射素子に対向する外縁は、前記第3の放射素子の他端を含む区間において、当該他端に近づくに従って前記第1の放射素子から次第に遠ざかる曲線を描き、且つ、
前記第5の放射素子の前記第4の放射素子に対向する外縁は、前記第5の放射素子の他端を含む区間において、当該他端に近づくに従って前記第4の放射素子から次第に遠ざかる曲線を描き、
前記第6の放射素子の前記第4の放射素子に対向する外縁は、前記第6の放射素子の他端を含む区間において、当該他端に近づくに従って前記第4の放射素子から次第に遠ざかる曲線を描く、
ことを特徴とする請求項4に記載のアンテナ装置。
前記第2の放射素子の前記第1の放射素子に対向する側と反対側の外縁は、前記第2の放射素子の前記一端を含む区間において、当該一端に近づくに従って前記第1の放射素子に次第に近づく曲線を描き、
前記第3の放射素子の前記第1の放射素子に対向する側と反対側の外縁は、前記第3の放射素子の前記一端を含む区間において、当該一端に近づくに従って前記第1の放射素子に次第に近づく曲線を描き、
前記第5の放射素子の前記第4の放射素子に対向する側と反対側の外縁は、前記第5の放射素子の前記一端を含む区間において、当該一端に近づくに従って前記第4の放射素子に次第に近づく曲線を描き、
前記第6の放射素子の前記第4の放射素子に対向する側と反対側の外縁は、前記第6の放射素子の前記一端を含む区間において、当該一端に近づくに従って前記第4の放射素子に次第に近づく曲線を描く、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のアンテナ装置。
前記グランド層は、前記第1のアンテナの前記根本の近傍を構成する第1の部分と、前記第2のアンテナの前記根本の近傍を構成する第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分とを接続するブリッジ部とにより構成されており、前記ブリッジ部は、前記第1のアンテナの根本と第2のアンテナの根本とを通る直線を避けて配線されている、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のアンテナ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、送受信両用のアンテナ装置においては、共通の又は重複する周波数帯域で動作する送信用のアンテナと受信用のアンテナとを、ひとつの筐体内に収容する必要が生じる。このようなアンテナ装置において筐体のコンパクト化を進めると、送信用のアンテナと受信用のアンテナとが近接して配置されることになる。
【0007】
しかしながら、共通の又は重複する周波数帯域で動作する送信用のアンテナと受信用のアンテナとを近接させて配置させた場合、送信用のアンテナが放射した電磁波の影響を受信用のアンテナが受けてしまい、基地局との通信に支障をきたすという課題があった。受信用のアンテナが正しく基地局と通信するためには、送信用のアンテナが放射した電磁波の影響を受信用のアンテナが受けないように互いのアンテナを電気的に孤立させることが求められる。換言すれば、これら2つのアンテナにおけるアイソレーション特性を高めることが求められる。
【0008】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、共通する動作帯域を有する2つのアンテナを備えたアンテナ装置において、これら2つのアンテナにおけるアイソレーション特性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るアンテナ装置は、表面上にグランド層が形成された基板と、前記基板上に起立した第1のアンテナ及び第2のアンテナであって、互いに共通する動作帯域を有する逆F型の第1のアンテナ及び第2のアンテナと、を備えたアンテナ装置であって、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間隔は、前記共通する動作帯域の下限周波数に対応する実効波長の8分の1以上8分の3以下であり、前記グランド層は、(1)前記第1のアンテナの根本を含む領域に設けられ、一部が開いた環状の第1の短絡部と、(2)前記第2のアンテナの根本を含む領域に設けられ、一部が開いた環状の第2の短絡部と、(3)前記第2のアンテナの前記根本の近傍から前記第1のアンテナの根本と反対側の方向に伸びた帯状導体と、を含んでいる。
【0010】
上記のように構成されたアンテナ装置において、第1のアンテナは、第1の短絡部によって短絡された逆F型アンテナであり、第2のアンテナは、第2の短絡部によって短絡された逆F型アンテナである。
【0011】
第1の短絡部は、一部が開いた環状の形状を有し、且つ、第1のアンテナが起立する基板の表面上の第1のアンテナの根本を含む領域に設けられている。そのため、第1の短絡部は、第1のアンテナの放射特性において基板の法線に沿った方向の指向性を強めることができる。換言すれば、第1の短絡部は、第1のアンテナの放射特性において第1のアンテナから第2のアンテナに向かう方向の指向性を弱めることができる。
【0012】
第1の短絡部と同様に、第2の短絡部は、第2のアンテナの放射特性において基板の法線に沿った方向の指向性を強めることができる。換言すれば、第2の短絡部は、第2のアンテナの放射特性において第2のアンテナから第1のアンテナに向かう方向の指向性を弱めることができる。
【0013】
また、第2のアンテナの根本の近傍から伸びた帯状導体であって、前記第1のアンテナの根本と反対側の方向に伸びた帯状導体は、第2のアンテナの放射特性において当該方向の指向性を強めることができる。換言すれば、この帯状導体は、第2のアンテナの放射特性において第2のアンテナから第1のアンテナに向かう方向の指向性を弱めることができる。
【0014】
したがって、上記の構成によれば、共通する動作帯域を有する第1及び第2のアンテナを備えたアンテナ装置において、第1及び第2のアンテナにおけるアイソレーション特性を高めることができる。
【0015】
本発明の一態様に係るアンテナ装置において、前記第1のアンテナは、(1)その一端部に第1の給電線のホット側導体が接続された第1の放射素子と、(2)その一端部に前記第1の給電線のコールド側導体が接続された、前記第1の放射素子よりも電気長が短い第2の放射素子であって、前記第1の放射素子の一方の側に配置された第2の放射素子と、(3)前記第1の短絡部を介して前記第1の放射素子に短絡された、前記第1の放射素子よりも電気長が短い第3の放射素子であって、前記第1の放射素子の他方の側に配置された第3の放射素子と、を備えており、前記第2のアンテナは、(4)その一端部に第2の給電線のホット側導体が接続された第4の放射素子と、(5)その一端部に前記第2の給電線のコールド側導体が接続された、前記第4の放射素子よりも電気長が短い第5の放射素子であって、前記第4の放射素子の一方の側に配置された第5の放射素子と、(6)前記第2の短絡部を介して前記第4の放射素子に短絡された、前記第4の放射素子よりも電気長が短い第6の放射素子であって、前記第4の放射素子の他方の側に配置された第6の放射素子と、を備えている、ことが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、第1のアンテナの第2の放射素子及び第3の放射素子は、第1の放射素子を挟み込むように配置されている。したがって、本アンテナ装置は、電気長が異なる複数の放射素子を備えた2つのアンテナをコンパクトに搭載することができる。
【0017】
第2及び第3の放射素子の電気長は、第1の放射素子の電気長よりも短い。すなわち、本アンテナ装置は、第1の放射素子の電気長に対応する共振点と、第2及び第3の放射素子の電気長に対応する共振点とを有する。第1のアンテナにおいて、第1の放射素子の電気長と、第2及び第3の放射素子の電気長とを適宜異ならせることによって、所望の周波数帯域を動作帯域にし得る。
【0018】
更に、第1のアンテナにおいて、第2及び第3の放射素子の各々は、第1の放射素子を挟み込むように配置されている。この構成によれば、第1の放射素子と第2の放射素子との間に生じる容量の値、及び、第1の放射素子と第3の放射素子との間に生じる容量の値を容易に制御できる。したがって、所望の周波数帯域のうち特定の帯域においてVSWRが低下すること防止し、VSWRの谷間が生じることを防止することができる。したがって、第1のアンテナは、所望の周波数帯域を動作帯域にすることができる。
【0019】
また、上記の構成によれば、第2のアンテナは、第1のアンテナと同様に構成されている。すなわち、第4〜第6の放射素子は、第1〜第3の放射素子と同様に構成されている。したがって、第2のアンテナは、第1のアンテナと同様の効果を奏する。
【0020】
以上のように構成された第1及び第2のアンテナを備えた本アンテナ装置は、サイズがコンパクトで、且つ、動作帯域が従来のアンテナより広いアンテナ装置を提供することができる。
【0021】
本発明の一態様に係るアンテナ装置において、前記基板及び前記第2のアンテナの双方に交わる平面に沿って設けられた第3の短絡部であって、前記第2のアンテナを短絡する、一部が開いた環状の第3の短絡部を更に備えている、ことが好ましい。
【0022】
第2のアンテナの別の短絡部として機能する第3の短絡部は、一部が開いた環状の形状を有し、且つ、基板及び第2のアンテナの双方に交わる平面に沿って設けられている。そのため、第3の短絡部は、第2のアンテナが放射する磁力線のパターンを変形させることによって、第1及び第2のアンテナにおけるアイソレーション特性を更に高めることができる。
【0023】
本発明の一態様に係るアンテナ装置において、前記第1のアンテナにおいて、前記第2の放射素子の電気長と前記第3の放射素子の電気長とは、互いに異なり、前記第2の放射素子と前記第3の放射素子のうち電気長が長い方の放射素子は、(1)当該電気長が長い方の放射素子の一端を含む放射素子本体と、(2)当該放射素子本体の端部であって当該電気長が長い方の放射素子の一端と逆側の端部から、当該電気長が長い方の放射素子の他端に向かって延伸されたサブ放射素子とにより構成されており、且つ、前記第2のアンテナにおいて、前記第5の放射素子の電気長と前記第6の放射素子の電気長とは、互いに異なり、前記第5の放射素子と前記第6の放射素子のうち電気長が長い方の放射素子は、(3)当該電気長が長い方の放射素子の一端を含む放射素子本体と、(4)当該放射素子本体の端部であって当該電気長が長い方の放射素子の一端と逆側の端部から、当該電気長が長い方の放射素子の他端に向かって延伸されたサブ放射素子とにより構成されている、ことが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、第1のアンテナの第1〜第3の放射素子及び第2のアンテナの第4〜第6の放射素子は、電気長が長い方の放射素子がサブ放射素子を備えていない場合と比較して、より多くの電気長を有する。そのため、幅広い周波数帯域(例えばLTE用の周波数帯域)をより細分化するように第1〜第3の放射素子及び第4〜第6の放射素子の電気長を定めることができる。したがって、本アンテナ装置は、幅広い周波数帯域におけるVSWRをよりフラット化することができる。
【0025】
本発明の一態様に係るアンテナ装置において、(1)前記第2の放射素子の前記第1の放射素子に対向する外縁は、前記第2の放射素子の他端を含む区間において、当該他端に近づくに従って前記第1の放射素子から次第に遠ざかる曲線を描き、(2)前記第3の放射素子の前記第1の放射素子に対向する外縁は、前記第3の放射素子の他端を含む区間において、当該他端に近づくに従って前記第1の放射素子から次第に遠ざかる曲線を描き、且つ、(3)前記第5の放射素子の前記第4の放射素子に対向する外縁は、前記第5の放射素子の他端を含む区間において、当該他端に近づくに従って前記第4の放射素子から次第に遠ざかる曲線を描き、(4)前記第6の放射素子の前記第4の放射素子に対向する外縁は、前記第6の放射素子の他端を含む区間において、当該他端に近づくに従って前記第4の放射素子から次第に遠ざかる曲線を描く、ことが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、動作帯域のうち高周波側の動作帯域に生じ得るVSWRの谷間(VSWRの急激な低下)を抑制することができる。
【0027】
本発明の一態様に係るアンテナ装置において、(1)前記第2の放射素子の前記第1の放射素子に対向する側と反対側の外縁は、前記第2の放射素子の前記一端を含む区間において、当該一端に近づくに従って前記第1の放射素子に次第に近づく曲線を描き、(2)前記第3の放射素子の前記第1の放射素子に対向する側と反対側の外縁は、前記第3の放射素子の前記一端を含む区間において、当該一端に近づくに従って前記第1の放射素子に次第に近づく曲線を描き、(3)前記第5の放射素子の前記第4の放射素子に対向する側と反対側の外縁は、前記第5の放射素子の前記一端を含む区間において、当該一端に近づくに従って前記第4の放射素子に次第に近づく曲線を描き、(4)前記第6の放射素子の前記第4の放射素子に対向する側と反対側の外縁は、前記第6の放射素子の前記一端を含む区間において、当該一端に近づくに従って前記第4の放射素子に次第に近づく曲線を描く、ことが好ましい。
【0028】
本アンテナ装置は、自動車のルーフなどに代表される導体板の上に配置され得る。このような場合に、第2及び第3の放射素子並びに第5及び第6の放射素子が上述のように構成されていることによって、第2及び第5の放射素子と上記導体板との間に生じる容量、及び、第3及び第6の放射素子と上記導体板との間に生じる容量の値を適宜設定することが容易にできる。したがって、本アンテナ装置は、上記導体板上に配置したことに伴うVSWRの低下を抑制し、幅広い動作帯域におけるVSWRの平坦化を容易にする。
【0029】
本発明の一態様に係るアンテナ装置において、前記グランド層は、前記第1のアンテナの前記根本の近傍を構成する第1の部分と、前記第2のアンテナの前記根本の近傍を構成する第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分とを接続するブリッジ部とにより構成されており、前記ブリッジ部は、前記第1のアンテナの根本と第2のアンテナの根本とを通る直線を避けて配線されている、ことが好ましい。
【0030】
第1の部分と第2の部分とを接続するブリッジ部は、第1のアンテナと第2のアンテナとのアイソレーション特性を高め得る。しかし、ブリッジ部が第1のアンテナの根本と第2のアンテナの根本とを通る直線を含んで配線されている場合、ブリッジ部は、アイソレーション特性を低下させる。上記の構成によれば、ブリッジ部は、アイソレーション特性を低下させることなく第1の部分と第2の部分とを接続する。
【0031】
本発明の一態様に係る車載用アンテナ装置は、車両の外装パネルを構成する導体板上に搭載される車載用アンテナ装置であって、上述した何れか一態様に係るアンテナ装置と、前記アンテナ装置と前記導体板との間に介在する絶縁体製の底板と、を備え、前記底板は、(1)前記第1のアンテナの前記根本と前記底板の下面との距離である第1の距離と(2)前記第2のアンテナの前記根本と前記底板の下面との距離である第2の距離との和が前記実効波長の16分の1以上となるように、前記アンテナ装置を保持する、ことが好ましい。
【0032】
上記の構成によれば、第1のアンテナと第2のアンテナとのアイソレーション特性を悪化させることなく本アンテナ装置を導体板上に配置することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、共通する動作帯域を有する2つのアンテナを備えたアンテナ装置において、互いのアンテナにおけるアイソレーション特性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態に係るアンテナ装置1について、
図1〜
図2を参照して説明する。
図1の(a)及び(b)は、アンテナ装置1の斜視図である。
図1の(a)は、アンテナ装置1が備えている2つのアンテナ10,20のうちアンテナ20の放射素子21〜23が紙面手前側を向くようにアンテナ装置1を配置した場合に得られる斜視図である。
図1の(b)は、アンテナ10の放射素子11〜13が紙面手前側を向くようにアンテナ装置1を配置した場合に得られる斜視図である。
図1の(b)に示した斜視図は、
図1の(a)に示したアンテナ装置1をz軸を中心に180°回転させることによって得られる。
【0036】
なお、アンテナ10及びアンテナ20の各々は、それぞれに別個の給電線を接続して運用するように設計されている。本実施形態では、アンテナ10に対して給電線の一態様である同軸ケーブル80を接続し、アンテナ20に対して給電線の一態様である同軸ケーブル90を接続するものとして説明する。
図1の(a)及び(b)には、同軸ケーブル80,90を接続した状態のアンテナ装置1を図示している。
【0037】
図2は、アンテナ装置1が備えている2つのアンテナ10,20、グランド層50、及びU字型導体70の平面図である。なお、
図2に挿入した拡大
図I及び拡大
図IIの各々は、それぞれ、アンテナ10の根本を含む領域R1及びアンテナ20の根本を含む領域R2の拡大することによって得られる。また、
図2においては、アンテナ10に接続される同軸ケーブル80及びアンテナ20に接続される同軸ケーブル90を模式的に示している。
【0038】
(アンテナ装置1の構成)
図1の(a)に示すように、アンテナ装置1は、アンテナ10、アンテナ20、基板40、グランド層50、基板60、及びU字型導体70を備えている。アンテナ10及びアンテナ20の各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の第1のアンテナ及び第2のアンテナに対応する。
【0039】
(アンテナ10)
図2に示すように、アンテナ10は、放射素子11、放射素子12、放射素子13、及び基板14を備えている。基板14は、誘電体(本実施形態においてはガラスエポキシ樹脂)によって構成された誘電体基板である。
【0040】
放射素子11、放射素子12、及び放射素子13の各々は、基板14の一方の表面上に形成された金属製(本実施形態においては銅製)の導体箔により構成されている。放射素子11、放射素子12、及び放射素子13の各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の第1の放射素子、第
3の放射素子、及び第
2の放射素子に対応する。放射素子12及び放射素子13は、放射素子11を挟み込むように配置されている。
【0041】
放射素子11は、低周波側の周波数帯域を動作帯域とする長方形の放射素子である。放射素子11は、その一端11aに給電線のホット側導体を接続するように構成されている。本実施形態では、同軸ケーブル80のホット側導体である中心導体81が放射素子11の一端11aに接続されている。したがって、放射素子11は、ホット側の放射素子である。
【0042】
放射素子11の電気長は、第1の共振点である698MHzの電磁波に対応するように定められている。放射素子11の電気長は、放射素子11の一端11aと他端11bとの距離、すなわち放射素子11の長辺の長さに対応する。
【0043】
放射素子12,13の各々は、高周波側の周波数帯域を動作帯域とする放射素子である。放射素子13は、その一端13aに給電線のコールド側導体を接続するように構成されている。本実施形態では、同軸ケーブル80のコールド側導体である外側導体82が放射素子13の一端13aに接続されている。また、放射素子12と放射素子13とは、後述するグランド層50の根本部512,513及びC字型導体514を介して短絡されている。したがって、放射素子12,13は何れもコールド側の放射素子である。
【0044】
放射素子13の電気長は、第2の共振点である1420MHz以上の電磁波に対応するように定められている。放射素子12の電気長は、第3の共振点である2000MHz以上の電磁波に対応するように定められている。したがって、放射素子12の電気長、及び、放射素子13の電気長は、放射素子11の電気長よりも短い。放射素子12及び13の各々の電気長は、それぞれ、放射素子12の外縁12d及び放射素子13の外縁13dの長さに対応する。アンテナ10は、698MHz以上2690MHz以下の周波数帯域、いわゆるLTE用の周波数帯域において用いることを想定している。
【0045】
以上のように、アンテナ10は、放射素子11の電気長に対応する第1の共振点と、第2及び第3の放射素子の各々の電気長にそれぞれ対応する第2及び第3の共振点とを有する。第1の共振点を698MHzに設定し、第2の共振点を1420MHzに設定し、第3の共振点を2000MHzに設定することによって、アンテナ10は、所望の周波数帯域である698MHz以上2690MHz以下の周波数帯域を動作帯域にすることができる。
【0046】
アンテナ10において、放射素子12,13の各々は、放射素子11を挟み込むように配置されている。この構成によれば、アンテナ10は、電気長が異なる3つの放射素子11〜13をコンパクトに配置することができる。後述するアンテナ20についても同様であるので、アンテナ装置1は、アンテナ10,20搭載しつつコンパクト化することができる。
【0047】
放射素子11と放射素子12との間に生じる容量の値、及び、放射素子11と放射素子13との間に生じる容量の値を容易に制御できる。したがって、アンテナ10は、所望の周波数帯域のうち特定の帯域においてVSWRが増大するのを防止することができる。したがって、アンテナ10は、所望の周波数帯域であるLTE用の周波数帯域の大部分を動作帯域にすることができる。
【0048】
また、放射素子11と放射素子12とは、後述するグランド層50のU字型導体515を介して短絡されている。したがって、アンテナ10は、ホット側の放射素子11とコールド側の放射素子12,13とが短絡された逆F型のアンテナである。
【0049】
なお、
図1の(b)を参照して後述するように、アンテナ10は、基板40に起立した状態で固定されている。
【0050】
(放射素子12,13の形状)
図2に示すように、放射素子12の外縁は、(1)一端12aである端辺と、(2)放射素子11に対向する外縁12cと、(3)放射素子11に対向する側と反対側の外縁12dとによって構成されている。外縁12cは、一端12aである端辺の放射素子11側の端部に連なっており、外縁12dは、当該端辺の放射素子11側と反対側の端部に連なっている。外縁12cと外縁12dとは、放射素子12の他端12bによって隔てられている。
【0051】
図2に示すように、放射素子13は、放射素子本体13eとサブ放射素子13fとによって構成されている。放射素子本体13eは、放射素子13の一端13aを含む。サブ放射素子13fは、放射素子本体13eの端部であって一端13aと逆側の端部から、放射素子13の他端13bに向かって延伸されている。
【0052】
このように構成された放射素子13において、外縁13dの電気長(外縁13dに沿って一端13aから他端13bまで測った場合の長さに対応する電気長)は、1420MHzの電磁波に対応するように定められている。一方、外縁13cの電気長(外縁13cに沿って一端13aから放射素子本体13eの端部まで測った場合の長さに対応する電気長)は、1800MHzの電磁波に対応するように定められている。なお、本実施形態においては、外縁13cの電気長及び外縁13dの電気長のうち短い方、すなわち、外縁13cの電気長を放射素子13の電気長とする。
【0053】
放射素子12は、第3の共振点である2000MHzを含む1900MHz以上2700MHz以下の周波数帯域の電磁波に対応するように設計されている。具体的には、外縁12c及び外縁12dの電気長は、2000MHzの電磁波に対応するように定められている。外縁12cの電気長及び外縁12dの電気長が異なる場合には、外縁12cの電気長及び外縁12dのうち長い方を放射素子12の電気長とする。
【0054】
以上のように、アンテナ10において、放射素子12の電気長、及び、放射素子13の電気長は、放射素子11の電気長よりも短い。また、放射素子12の電気長は、放射素子13の電気長よりも短い。
【0055】
この構成によれば、LTE用の周波数帯域をより細分化するように放射素子12,13の電気長が定められている。したがって、アンテナ10は、LTE用の周波数帯域におけるVSWRをよりフラット化することができる。
【0056】
また、放射素子13の外縁は、(1)一端13aである端辺と、(2)放射素子11に対向する外縁13cと、(3)放射素子11に対向する側と反対側の外縁13dとによって構成されている。外縁13cは、一端13aである端辺の放射素子11側の端部に連なっており、外縁13dは、当該端辺の放射素子11側と反対側の端部に連なっている。外縁13cと外縁13dとは、放射素子13の他端13bによって隔てられている。
【0057】
放射素子12の外縁12cは、他端12bを含む区間において、他端12bに近づくに従って放射素子11から次第に遠ざかる曲線を描く。
【0058】
同様に、放射素子13の外縁13cは、他端13bを含む区間において、他端13bに近づくにしたがって放射素子11から次第に遠ざかる曲線を描く。
【0059】
放射素子12,13がこのように構成されていることによって、LTE用の周波数帯域のうち高周波側の周波数帯域(2000MHz以上2690MHz以下)に生じ得る利得の谷間を抑制することができる。
【0060】
(アンテナ10のインピーダンス)
放射素子11の一端11aを含む所定の長さを有する区間において、放射素子11と放射素子12との間隔、及び、放射素子11と放射素子13との間隔は、一定である。上述したように放射素子11は、同軸ケーブル80の中心導体81に接続されており、放射素子12は、同軸ケーブル80の外側導体82に接続されており、放射素子13は、根本部522,523及びC型導体524を介して放射素子12に短絡されている。したがって、放射素子11と放射素子12,13とは、少なくとも上記所定の長さを有する区間において、コプラナー構造を有する。
【0061】
アンテナ10において、放射素子11と放射素子12との間隔及び放射素子11と放射素子13との間隔、並びに、これら2つの間隔が一定である区間の長さを調整することによって、アンテナ10のインピーダンスと、同軸ケーブル80の特性インピーダンス(例えば50Ω)とを整合させることができる。したがって、アンテナ10は、同軸ケーブル80を接続される給電点において生じ得るインピーダンス不整合に起因する反射を抑制することができる。
【0062】
以上のように、アンテナ10は、インピーダンスを調整することができる。したがって、アンテナ10は、様々な特性インピーダンスを有する同軸ケーブルに対しても、インピーダンス整合が取れた状態で接続可能である。
【0063】
(アンテナ20)
アンテナ20は、上述したアンテナ10と同一に構成されている。
図2に示すように、アンテナ20は、放射素子21、放射素子22、放射素子23、及び基板24を備えている。放射素子21、放射素子22、及び放射素子23の各々は、それぞれ、請求の範囲に記載の第4の放射素子、第
6の放射素子、及び第
5の放射素子に対応する。
【0064】
放射素子21、放射素子22、放射素子23、及び基板24の各々は、それぞれ、アンテナ10の放射素子11、放射素子12、放射素子13、及び基板14に対応する。したがって、ここでは、アンテナ20の説明を省略する。
【0065】
(グランド層50)
図2に示すように、グランド層50は、導電体(本実施形態においては銅)によって構成されている。グランド層50は、基板40の表面上に貼り付けられた導体板であってもよいし、基板40の表面上に形成された導体膜であってもよい。表面上にグランド層50が形成された基板40は、プリント回路基板の一態様である。したがって、プリント回路基板の分野で用いられるパターニング技術を適用することにより、グランド層50は、容易に任意の形状にパターニング可能である。グランド層50の形状について、以下に説明する。なお、基板40は、誘電体(本実施形態においてはガラスエポキシ樹脂)によって構成された誘電体基板である。
【0066】
グランド層50は、第1の部分51、第2の部分52、及びブリッジ部53により構成されている。
【0067】
(第1の部分51)
第1の部分51は、第1の根本部511、第2の根本部512,第3の根本部513、C字型導体514、U字型導体515、及び帯状導体517により構成されている。
【0068】
根本部511には、放射素子11の一端11aが接続(本実施形態では半田付け)されている。根本部512には、放射素子12の一端12aが接続(本実施形態では半田付け)されている。根本部513には、放射素子13の一端13aが接続(本実施形態では半田付け)されている。根本部511〜513は、請求の範囲に記載の第1のアンテナの根本に対応する。また、第1の部分51は、請求の範囲に記載の第1のアンテナの根本の近傍に対応する。
【0069】
なお、根本部511は、矩形導体511a及び矩形導体511bにより構成されている。矩形導体511a及び矩形導体511bの形状については、(アンテナ10のインピーダンス)の項に後述する。
【0070】
C字型導体514は、C字型に折り曲げられた帯状導体によって構成されている。C字型導体514の一方の端部は、根本部512に連なっており、C字型導体514の他方の端部は、根本部513に連なっている。すなわち、C字型導体514は、根本部512と根本部513とを短絡する導体パターンである。したがって、放射素子12の一端12aと、放射素子13の一端13aとは、根本部512、根本部513、及びC字型導体514を介して短絡されている。
【0071】
U字型導体515は、U字型に折り曲げられた帯状導体によって構成されている。U字型導体515の一方の端部は、根本部511に連なっており、U字型導体515の他方の端部は、根本部512に連なっている。したがって、放射素子11の一端11aと放射素子12の一端12aとは、根本部511、根本部512、及びU字型導体515を介して短絡されている。すなわち、根本部511、根本部512、及びU字型導体515は、請求の範囲に記載の第1の短絡部を構成する。
【0072】
帯状導体517は、
図2に示したC字型導体514の左上の端部に連なる長方形の導体パターンである。帯状導体517とU字型導体515との間隔は、10mm以上であることが好ましい。この構成によれば、U字型導体515から放射される電磁波の利得を高めることができる。
【0073】
(第2の部分52)
第2の部分52は、(1)第4の根本部521の形状が第1の根本部511の形状と異なること、(2)帯状導体526を備えていること、を除いて第1の部分51と同様に構成されている。したがって、第2の部分52を構成する部材のうち第1の部分51と共通する部材に関しては、その説明を省略する。
【0074】
図2に示すように、第2の部分52は、第4の根本部521、第5の根本部522、第6の根本部523、C字型導体524、U字型導体525、帯状導体526、及び帯状導体527により構成されている。第2の部分52を構成する第4の根本部521、第5の根本部522、第6の根本部523、C字型導体524、U字型導体525、及び帯状導体527の各々は、それぞれ、第1の部分51を構成する第1の根本部511、第2の根本部512,第3の根本部513、C字型導体514、U字型導体515、及び帯状導体517に対応する。したがって、根本部521、根本部522、及びU字型導体525は、請求の範囲に記載の第2の短絡部を構成する。
【0075】
根本部521は、第1の部分51の根本部511と同様に矩形導体521a及び矩形導体521bにより構成されている。根本部511と比較して根本部521は、矩形導体521bが矩形導体521aより大きく構成されている点が異なる。これは、矩形導体521bに対して、U字型導体70の端部71を接続することを用意にするためである。U字型導体70については、後述する。
【0076】
帯状導体526は、
図2に示した、C字型導体524の右上の端部及び帯状導体517の右下の端部に連なる長方形の導体パターンである。帯状導体526は、アンテナ20の根本(根本部521〜523)の近傍である第2の部分52からアンテナ10の根本(根本部511〜513)と反対側の方向に伸びている。
【0077】
(ブリッジ部53)
ブリッジ部53は、第1のアンテナ10の根本(根本部511〜513)と第2のアンテナ20の根本(根本部521〜523)とを通る直線を避けて配線されている。本実施形態において、ブリッジ部53は、
図1に示した座標系におけるy軸方向に沿った方向に延伸された帯状導体である。
【0078】
第1の部分51と第2の部分52とを接続するブリッジ部53は、アンテナ10とアンテナ20とのアイソレーション特性を高め得る。しかし、ブリッジ部53がアンテナ10の根本とアンテナ20の根本とを通る直線上に配線されている場合、ブリッジ部53は、アイソレーション特性を低下させる。上記の構成によれば、ブリッジ部53は、アイソレーション特性を低下させることなく第1の部分51と第2の部分52とを接続する。
【0079】
(アンテナ10のインピーダンス)
上述したように、アンテナ10は、放射素子11と放射素子12との間隔、及び、放射素子11と放射素子13との間隔、並びに、所定の長さを有する区間の長さを調整することによってインピーダンスを調整することができる。アンテナ10は、上記のインピーダンス調整に加えて、以下の方法を用いてインピーダンス調整を実施することができる。
【0080】
図2に示すように、根本部511は、矩形導体511a及び矩形導体511bにより構成されている。矩形導体511bのサイズ及び根本部513のサイズを変化させることによって、(1)根本部511と根本部513との間隔、及び、(2)互いに対向する部分の長さを変化させることができる。また、矩形導体511aのサイズ及び根本部512のサイズを変化させることによって、(1)根本部511と根本部512との間隔、及び、(2)互いに対向する部分の長さを変化させることができる。
【0081】
換言すれば、アンテナ10は、矩形導体511bのサイズ及び根本部513のサイズを調整すること、及び、矩形導体511aのサイズ及び根本部512のサイズを調整することによって、自信のインピーダンスが所望の値になるように調整することができる。したがって、アンテナ10は、自身のインピーダンスと、同軸ケーブル80の特性インピーダンス(例えば50Ω)とを容易に整合させることができる。したがって、アンテナ10は、給電点において生じ得るインピーダンスの不整合に起因する反射を容易に抑制することができる。
【0082】
(アンテナ10,20の配置)
図1の(a)及び(b)に示すように、アンテナ10及びアンテナ20の各々は、基板40上に起立した状態で固定されている。より詳しくは、アンテナ10の基板14は、その表面が
図1に図示した座標系におけるyz平面に沿う(本実施形態においては平行)ように、且つ、その一方の表面(放射素子11〜13が形成されている側の表面)がx軸正方向を向くように配置されている。また、アンテナ20の基板24は、その表面がyz平面に沿う(本実施形態においては平行)ように、且つ、その一方の表面(放射素子21〜23が形成されている側の表面)がx軸負方向を向くように配置されている。
【0083】
基板40上におけるアンテナ10は、
図2に示した領域R3に固定される。上述したように、放射素子11の一端11aは、根本部511の矩形導体511aに対して接続(本実施形態では半田付け)されており、放射素子12の一端12aは、根本部512に対して接続(本実施形態では半田付け)されており、放射素子13の一端13aは、根本部513に対して接続(本実施形態では半田付け)されている。半田付けに用いられる半田は、一端11a,12a,13aの各々と、根本部511,512,513の各々とを導通させるための導電部材であると同時に、アンテナ10を基板40上に起立した状態で固定する固定部材でもある。
【0084】
基板40上におけるアンテナ20は、
図2に示した領域R4に固定される。放射素子21の一端21aは、根本部521の矩形導体521aに対して接続(本実施形態では半田付け)されており、放射素子22の一端22aは、根本部512に対して接続(本実施形態では半田付け)されており、放射素子13の一端13aは、根本部513に対して接続(本実施形態では半田付け)されている。半田付けに用いられる半田は、一端21a,22a,23aの各々と、根本部521,522,523の各々とを導通させるための導電部材であると同時に、アンテナ20を基板40上に起立した状態で固定する固定部材でもある。
【0085】
本実施形態において、放射素子11の中心軸と放射素子21の中心軸との間隔を第1のアンテナと第2のアンテナとの間隔L
gapと定義する(
図1の(a)参照)。
図1の(a)においては、放射素子11の中心軸及び放射素子12の中心軸の各々を二点鎖線で示している。
【0086】
間隔L
gapは、アンテナ10とアンテナ20とのアイソレーション特性を向上させるために、アンテナ10,20に共通する動作帯域の下限周波数である698MHzに対応する実効波長λ
gの8分の1以上8分の3以下となるように定められている。
【0087】
周波数が698MHzである電磁波の真空中における波長λ
0は、λ
0=430mmである。基板40の比誘電率ε
0がε
0=4.4であり、且つ、基板40の厚さが1.6mmである場合、実効波長λ
gは、λ
g=215mmである。したがって、実効波長λ
gの8分の1は26.9mm(有効数字3桁の場合)であり、実効波長λ
gの8分の3は、80.6mm(有効数字3桁の場合)である。本実施形態では、間隔L
gapとして80mmを採用している。
【0088】
(第3の短絡部)
図2に示したU字型導体70は、請求の範囲に記載の第3の短絡部の一部を構成する。U字型導体70は、金属(本実施形態においては銅)製の導体箔により構成されており、誘電体製である基板60の一方の表面に形成されている。U字型導体70及び基板60は、基板40及びアンテナ20の双方と交わるように(本実施形態においては直交するように)、基板40の表面上に固定されている。
【0089】
U字型導体70は、U字型に折り曲げられた帯状導体によって構成されている。U字型導体70の一方の端部である端部71は、上述した根本部521の矩形導体521bに接続(本実施形態においては半田付け)されており、U字型導体70の他方の端部である端部72は、C字型導体524に接続(本実施形態においては半田付け)されている。
【0090】
したがって、放射素子21の一端21aと放射素子23の一端23aとは、根本部521、根本部523、及びC字型導体524を介して短絡されている。したがって、根本部521、根本部523、C字型導体524、及びU字型導体70は、請求の範囲に記載の第3の短絡部を構成する。
【0091】
なお、
図1では、このように構成されたアンテナ装置1において、(1)基板40の表面に沿う平面の法線に沿った方向であって、基板40のうら面(グランド層50が形成されていない側の表面)からおもて面(グランド層が形成されている側の表面)へ向かう方向をz軸正方向と規定し、(2)基板40の表面に沿う平面において、アンテナ10の基板14の表面及びアンテナ20の基板24の表面に沿った方向であって、アンテナ20からアンテナ10へ向かう方向をy軸正方向と規定し、(2)基板40の表面に沿う平面内において、y軸に直交する方向であって、y軸正方向及びz軸正方向と共に右手系を構成する方向をx軸正方向と規定する。
【0092】
また、z軸正方向が天頂方向に沿うようにアンテナ装置1を空間中に配置したものとして説明した。しかし、アンテナ装置1を運用する場合にアンテナ装置1を空間中に配置する方向は、これに限定されるものではなく、任意に定めることができる。
【0093】
(アンテナ装置1の効果)
以上のように、アンテナ装置1において、アンテナ10は、放射素子11と放射素子13とが第1の短絡部(根本部511〜513及びU字型導体515)によって短絡された逆F型アンテナであり、アンテナ20は、第2の短絡部(根本部521〜523及びU字型導体525)によって短絡された逆F型アンテナである。アンテナ装置1において、間隔L
gapは、実効波長λ
gの8分の1以上8分の3以下となるように定められている。
【0094】
第1の短絡部は、一部(根本部511と根本部512との間)が開いた(離間した)環状の形状を有し、且つ、アンテナ10が起立する基板40の表面上のアンテナ10の根本を含む領域に設けられている。そのため、第1の短絡部は、アンテナ10の放射特性において基板40の法線に沿った方向(
図1に図示した座標系におけるz軸方向)の指向性を強めることができる。換言すれば、第1の短絡部は、アンテナ10の放射特性において第1のアンテナから第2のアンテナに向かう方向(y軸負方向)の指向性を弱めることができる。
【0095】
第1の短絡部と同様に、第2の短絡部は、アンテナ20の放射特性において基板40の法線に沿った方向(
図1に図示した座標系におけるz軸方向)の指向性を強めることができる。換言すれば、第2の短絡部は、アンテナ20の放射特性においてアンテナ20からアンテナ10に向かう方向(
図1に図示した座標系におけるy軸正方向)の指向性を弱めることができる。
【0096】
また、アンテナ20の根本の近傍から伸びた帯状導体526であって、アンテナ10の根本と反対側の方向(
図1に図示した座標系におけるy軸負方向)に伸びた帯状導体526は、アンテナ20の放射特性においてy軸負方向の指向性を強めることができる。換言すれば、この帯状導体526は、アンテナ20の放射特性においてアンテナ20からアンテナに10向かう方向(
図1に図示した座標系におけるy軸正方向)の指向性を弱めることができる。
【0097】
したがって、アンテナ装置1は、共通する動作帯域を有するアンテナ10,20を備えたアンテナ装置において、アンテナ10とアンテナ20とにおけるアイソレーション特性を高めることができる。
【0098】
第3の短絡部を構成するU字型導体70は、一部が開いた凡そ環状の形状を有し、且つ、基板40及びアンテナ20の双方に交わる平面(
図1に図示した座標系におけるzx平面)に沿って設けられている。そのため、U字型導体70を含む第3の短絡部は、アンテナ20が放射する磁力線のパターンを変形させることによって、アンテナ10とアンテナ20とにおけるアイソレーション特性、特に500MHzから1000MHzまでの周波数帯域におけるアイソレーション特性を更に高めることができる。
【0099】
なお、本実施形態に係るアンテナ装置1から第3の短絡部を省略したアンテナ装置も本発明の範疇に含まれる。第3の短絡部を省略することによって、500MHzから1000MHzまでの周波数帯域におけるアンテナ10とアンテナ20とにおけるアイソレーション特性が悪化するものの、実用上問題のないアイソレーション特性を得ることができる。
【0100】
〔アンテナ装置1の搭載例〕
アンテナ装置1は、自動車や電車などに代表される移動体の外装パネルに好適に搭載することができる。ここでは、自動車の外装パネルの一部を構成するルーフ上にアンテナ装置1を搭載する場合を例に説明する。
図4の(a)は、アンテナ装置1の放射特性を測定するときの配置を示す斜視図である。
図4に示した導体板200は、500mm×500mmのアルミ板である。本搭載例においては、アンテナ装置1を自動車のルーフに搭載することを模している。
【0101】
自動車のルーフが鋼板やアルミ板などの導体板により構成されている場合に、アンテナ装置1をルーフに近接させて配置することによってアンテナ10とアンテナ20とのアイソレーション特性が悪化することを本発明の発明者らは見出した。これは、送信側のアンテナ(例えばアンテナ10)が放射した電磁波を受信側のアンテナ(例えばアンテナ20)は、ルーフを介して受信するためである。
【0102】
したがって、アンテナ装置1のグランド層50とルーフとの間の距離を十分に確保することによって、このアイソレーション特性の悪化を抑制することができる。しかし、自動車に搭載する車載用アンテナ装置においては、コンパクト化が強く望まれている。車載用アンテナ装置が大きくなることに伴い、自動車の美観を損ねる、自動車の燃費を悪化させる、などの不都合が生じるためである。
【0103】
本搭載例においては、アンテナ装置1と導体板200との間に絶縁体製の底板110を介在させることによって、アンテナ装置1のグランド層50とルーフとの間の距離を確保している。以下において、アンテナ装置1と底板110とを備えたものを車載用アンテナ装置100と称する。
【0104】
底板110の形状は、(1)アンテナ10の前記根本(根本部511〜513)と底板110の下面との距離である第1の距離と(2)アンテナ20の根本(根本部521〜523)と底板110の下面との距離である第2の距離との和が実効波長λ
gの16分の1以上となるように、前記アンテナ装置を保持するように構成されていることが好ましい。
【0105】
たとえば、底板110の厚さ(
図4に図示したz軸方向に沿った長さ)が均一である場合、その厚さを実効波長λ
gの32分の1以上とすることによって、上記の要件を満たすことができる。
【0106】
上記の構成によれば、アンテナ装置1を導体板上に搭載する場合に、アンテナ装置1の高さ(
図4に図示したz軸方向に沿った長さ)を抑えつつ、アンテナ10とアンテナ20とのアイソレーション特性の悪化を抑制することができる。
【0107】
以上のように、アンテナ装置1は、自動車や電車などに代表される車両の外装パネルに搭載する車載用アンテナ装置として好適に利用することができる。
【0108】
〔実施例〕
図3は、
図1に示したアンテナ装置1の第1の実施例が備えているアンテナ10,20、グランド層50、及びU字型導体70の平面図である。アンテナ10とアンテナ20とは同一の構成であるため、
図3ではまとめて図示している。
【0109】
本実施例のアンテナ装置1が備えているアンテナ10,20、グランド層50、及びU字型導体70の各々は、
図3に示した形状にパターニングされている。なお、基板14,24,40,60の比誘電率ε
0は、ε
0=4.4であり、基板40の厚さは、1.6mmである。この場合、アンテナ10,20の動作帯域の下限周波数(698MHz)に対応する実効波長λ
gは、λ
g=215mmである。
【0110】
本変形例のアンテナ装置1において、アンテナ10とアンテナ20との間隔L
gapとしてL
gap=80mmを採用した。80mmは、実効波長λ
gの8分の3に対応する。また、本実施形態において、帯状導体526の長さは、根本部523の根本部521側の端部から帯状導体526の先端までの長さが44.5mm(実効波長λgの20.7%)となるように定めた。
【0111】
本実施例のアンテナ装置1を用いて、アンテナ10,20の放射特性、及び、アンテナ10とアンテナ20とにおけるアイソレーション特性を測定した。
図4の(a)は、この測定を実施するときに用いた構成の斜視図であり、
図4の(b)は、この測定に用いた測定系のブロック図である。
【0112】
図4の(a)に示すように、アンテナ装置1は、絶縁体製の底板110を介して、アルミニウム合金製の導体板200の中央に配置されている。導体板200のサイズは、縦×横が500mm×500mmである。ここでは、アンテナ装置1を自動車のルーフ上に搭載することを想定しており、導体板200は、自動車のルーフを模したものである。
【0113】
アンテナ10においては、放射素子11の一端11aに同軸ケーブル80の中心導体81が半田付けされ、放射素子12の一端12aに同軸ケーブル80の外側導体82が半田付けされている。アンテナ20においては、放射素子21の一端21aに同軸ケーブル90の中心導体91が半田付けされ、放射素子22の一端22aに同軸ケーブル90の外側導体92が半田付けされている。
【0114】
同軸ケーブル80のアンテナ10側と逆側の端部は、ネットワークアナライザの第1のポートであるポートP1に接続されている。また、同軸ケーブル90のアンテナ20側と逆側の端部は、ネットワークアナライザの第2のポートであるポートP2に接続されている。
【0115】
以上のような構成を用いて、アンテナ装置1におけるアンテナ10,20の放射特性、及び、アンテナ10とアンテナ20とのアイソレーション特性を測定した。
【0116】
図5の(a)は、本実施例のアンテナ装置1が備えているアンテナ10の利得の方位依存性を示すグラフである。
図5の(b)は、本実施例のアンテナ装置1が備えているアンテナ20の利得の方位依存性を示すグラフである。
図5には、アンテナ10,20の利得の代表的なものとして、698MHz、1427MHz、及び2690MHzにおける利得を示す。なお、
図4の(a)に示した配置との対応を分かりやすくするために、
図5には、xy座標軸もあわせて明記した。
【0117】
図5の(a)を参照すれば、698MHzにおけるアンテナ10の利得は、円形状、すなわち等方的であることが分かった。
【0118】
それに対して、1427MHzにおけるアンテナ10の利得は、698MHzにおける利得と比較して、(1)90°(y軸負方向)を中心とする0°から180°の方向に対して低いものの、(2)270°(y軸正方向)を中心とする180°から360°の方向に対して高いことが分かった。その結果、1427MHzにおけるアンテナ10の平均利得は、698MHzにおけるアンテナ10の平均利得と同程度であることが分かった。なお、平均利得は、全方向(0°から360°の方向)の利得と平均することによって得られる。
【0119】
2690MHzにおけるアンテナ10の利得は、1427MHzにおけるアンテナ10の利得と同様の傾向を示すことが分かった。すなわち、2690MHzにおけるアンテナ10の平均利得は、698MHzにおけるアンテナ10の平均利得と同程度であることが分かった。
【0120】
図5の(b)を参照すれば、698MHzにおけるアンテナ20の利得は、円形状、すなわち等方的であることが分かった。
【0121】
それに対して、1427MHzにおけるアンテナ20の利得は、698MHzにおける利得と比較して、(1)270°(y軸正方向)を中心とする180°から360°の方向に対して低いものの、(2)90°(y軸負方向)を中心とする0°から180°の方向に対して高いことが分かった。その結果、1427MHzにおけるアンテナ20の平均利得は、698MHzにおけるアンテナ20の平均利得と同程度であることが分かった。
【0122】
2690MHzにおけるアンテナ20の利得は、1427MHzにおけるアンテナ20の利得と同様の傾向を示すことが分かった。すなわち、2690MHzにおけるアンテナ20の平均利得は、698MHzにおけるアンテナ20の平均利得と同程度であることが分かった。
【0123】
以上のように、アンテナ装置1は、アンテナ10とアンテナ20とを近接して配置する構成を採用している。しかし、アンテナ装置1は、698MHz、1427MHz及び2690MHzの何れの周波数においても、アンテナ10の平均利得及びアンテナ20の平均利得の双方に実用上問題となる平均利得の低下を生じさせないことが分かった。
【0124】
図6は、本実施例のアンテナ装置1のSパラメータS11,S21,S22の周波数依存性を示すグラフである。なお、SパラメータS12は、SパラメータS21と同じ周波数依存性を示すことから
図6には図示していない。
【0125】
図6のSパラメータS11,S22を参照すれば、アンテナ装置1が備えているアンテナ10,20の各々は、LTE用の周波数帯域の大部分において実用上問題とならないVSWRを示すことが分かった。
【0126】
また、
図6を参照すれば、LTE用の周波数帯域のうち1200MHz以上1300MHz以下を除いた周波数帯域において、SパラメータS21がよく抑制されていることがわかった。したがって、アンテナ装置1において、アンテナ10とアンテナ20との間におけるアイソレーション特性は、高いことが分かった。特に、500MHz以上1050MHz以下の周波数帯域、1500MHz以上1600MHz以下の周波数帯域、1730MHz以上2250MHz以下の周波数帯域、及び2500MHz以上3000MHz以下の周波数帯域の各々においては、SパラメータS21が−20dBを下回ることが分かった。したがって、これらの周波数帯域においては、アンテナ10とアンテナ20との間におけるアイソレーション特性が特に高いことが分かった。
【0127】
〔変形例〕
本発明の実施例のアンテナ装置1の変形例として、アンテナ10とアンテナ20の間隔L
gapを変化させたアンテナ装置を作成した。本発明の第1の変形例のアンテナ装置1は、本発明の実施例のアンテナ装置1における間隔L
gapをL
gap=80mmからL
gap=90mmに変更することによって得られた。本発明の第2の変形例のアンテナ装置1は、本発明の実施例のアンテナ装置1における間隔L
gapをL
gap=80mmからL
gap=100mmに変更することによって得られた。
【0128】
図7は、本発明の実施例、第1の変形例、及び第2の変形例のSパラメータS21の周波数依存性を測定した結果を示すグラフである。
【0129】
図7の(a)を参照してL
gap=80mm,90mm,100mmである各アンテナ装置1についてSパラメータS21を比較した場合、L
gap=80mmであるアンテナ装置1のSパラメータS21が最もバランスが取れていることが分かった。なぜなら、L
gap=90mmであるアンテナ装置1においては、(1)2000MHz近傍(およそ1900MHzから2100MHz)の周波数帯域におけるSパラメータS21が悪化しており、(2)L
gap=100mmであるアンテナ装置1においては、1500MHz近傍(およそ1400MHzから1700MHz)の周波数帯域におけるSパラメータS21が悪化しているためである。
【0130】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。