特許第6402166号(P6402166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6402166-建築用パネル及びその施工方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402166
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】建築用パネル及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20181001BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20181001BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20181001BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   E04F13/08 A
   B32B27/36
   B32B15/20
   B32B17/10
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-253028(P2016-253028)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-105018(P2018-105018A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年2月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大悟
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−160908(JP,A)
【文献】 特開2016−144950(JP,A)
【文献】 特開平04−221162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
B32B 15/20
B32B 17/10
B32B 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状基材と、
上記板状基材の施工下地面側に設けられ、アルカリ成分の浸透を抑制する浸透抑制層とを備え
上記板状基材と上記浸透抑制層との間には、金属層が設けられ、
上記板状基材と上記金属層との間には、紙層が設けられていることを特徴とする建築用パネル。
【請求項2】
請求項1に記載された建築用パネルにおいて、
上記浸透抑制層は、樹脂フィルムからなることを特徴とする建築用パネル。
【請求項3】
請求項2に記載された建築用パネルにおいて、
上記樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする建築用パネル。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1つに記載された建築用パネルにおいて、
上記金属層は、アルミニウム箔からなることを特徴とする建築用パネル。
【請求項5】
請求項1〜の何れか1つに記載された建築用パネルにおいて、
上記板状基材は、無機材料からなることを特徴とする建築用パネル。
【請求項6】
請求項に記載された建築用パネルにおいて、
上記板状基材は、火山性ガラス質複層板からなることを特徴とする建築用パネル。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1つに記載された建築用パネルを上記浸透抑制層側から建築物のコンクリート面又はモルタル面の下地面に接着剤層を介して貼り付けることを特徴とする建築用パネルの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用パネル及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、不燃性化粧板は、火災時の延焼を防ぐために、例えば、建築物の天井や壁等の内装用の建材として、広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定範囲の透湿抵抗を有する無機質系基材と、無機質系基材の裏面に設けられた金属水和物混合樹脂層と、無機質系基材の表面に設けられた化粧加工層とを備えた不燃性化粧板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−76358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、建築物のコンクリート面やモルタル面等の下地に対して、シーラー等による下地処理を行うことなく、不燃性化粧板等の建築用パネルを直接的に施工することが要望されている。しかしながら、コンクリート面やモルタル面等の下地の表面には、アルカリ成分が発生し易いので、建築用パネルを構成する板状基材が侵されて変質するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アルカリ下地に起因する板状基材の変質を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、板状基材の施工下地面側にアルカリ成分の浸透を抑制する浸透抑制層を設けるようにしたものである。
【0008】
具体的に本発明に係る建築用パネルは、板状基材と、上記板状基材の施工下地面側に設けられ、アルカリ成分の浸透を抑制する浸透抑制層とを備え、上記板状基材と上記浸透抑制層との間には、金属層が設けられ、上記板状基材と上記金属層との間には、紙層が設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、板状基材の施工下地面側にアルカリ成分の浸透を抑制する浸透抑制層が設けられているので、例えば、コンクリート面やモルタル面等の下地の表面にアルカリ成分が発生しても、そのアルカリ成分の板状基材側への浸透を浸透抑制層により抑制することができる。これにより、板状基材がアルカリ成分に侵され難くなるので、アルカリ下地に起因する板状基材の変質を抑制することができる。
【0010】
ここで、上記板状基材と上記浸透抑制層との間には、金属層が設けられ、上記板状基材と上記金属層との間には、紙層が設けられている。
【0011】
上記の構成によれば、板状基材と浸透抑制層との間に可燃性ガスの遮断性の高い金属層が設けられているので、建築用パネルに不燃性を付与することができる。また、浸透抑制層及び金属層により、板状基材への水分やアルカリ成分の浸透を抑制することができるので、板状基材における反りの発生を抑制することができる。
【0012】
上記浸透抑制層は、樹脂フィルムからなってもよい。
【0013】
上記の構成によれば、浸透抑制層が樹脂フィルムにより構成されているので、アルカリ成分の板状基材側への浸透を具体的に抑制することができる。
【0014】
上記樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムであってもよい。
【0015】
上記の構成によれば、樹脂フィルムが汎用性の高いポリエチレンテレフタレートフィルムであるので、アルカリ成分の板状基材側への浸透を低コストで抑制することができる
【0016】
記金属層は、アルミニウム箔からなってもよい。
【0017】
上記の構成によれば、金属層が汎用性の高いアルミニウム箔により構成されているので、建築用パネルに低コストで不燃性を付与することができる。
【0018】
上記板状基材は、無機材料からなってもよい。
【0019】
上記の構成によれば、板状基材が無機材料により構成されているので、アルカリ下地に起因する板状基材の腐食を浸透抑制層により抑制することができる。
【0020】
上記板状基材は、火山性ガラス質複層板からなってもよい。
【0021】
上記の構成によれば、板状基材が火山性ガラス質複層板により構成されているので、優れた防火性能を有し、高強度で軽量の建築用パネルを実現することができる。ここで、火山性ガラス質複層板は、セメント系やケイ酸カルシウム系の板材と比べて、割れが生じ難く、熱による収縮が小さくなる。なお、セメント系やケイ酸カルシウム系の基材は、自由水や結合水を含んでいるので、火災時にそれらの自由水や結合水が蒸発することにより、急速に収縮して、割れが発生し易い。
【0022】
上述した建築用パネルを上記浸透抑制層側から建築物のコンクリート面又はモルタル面の下地面に接着剤層を介して貼り付けてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、板状基材の一方の表面側にアルカリ成分の浸透を抑制する浸透抑制層が設けられているので、アルカリ下地に起因する板状基材の変質を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る建築用パネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
図1は、本実施形態に係る建築用パネル20の断面図である。
【0027】
建築用パネル20は、図1に示すように、浸透抑制層10と、浸透抑制層10上に第1接着層11を介して設けられた金属層12と、金属層12上に第2接着層13を介して設けられた紙層14と、紙層14上に第3接着層15を介して設けられた板状基材16とを備えている。
【0028】
浸透抑制層10は、例えば、厚さ12μm〜100μm程度のPET(polyethylene terephthalate)フィルム等の樹脂フィルムにより構成され、板状基材16へのアルカリ成分の浸透を抑制するようになっている。なお、本実施形態では、PETフィルムからなる浸透抑制層10を例示したが、浸透抑制層10は、板状基材16へのアルカリ成分の浸透が十分に抑制されるのであれば、例えば、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィン系の樹脂フィルムにより構成されていてもよい。
【0029】
第1接着層11は、例えば、2液型ウレタン系接着剤等の溶液系接着剤により構成されている。
【0030】
金属層12は、例えば、厚さ5μm〜50μm程度のアルミニウム箔等の金属箔により構成され、浸透抑制層10で可燃性ガスが発生しても、その可燃性ガスが板状基材16に到達し難くなっている。なお、本実施形態では、アルミニウム箔からなる金属層12を例示したが、金属層12は、例えば、鉄箔や銅箔等のその他の金属箔により構成されていてもよい。
【0031】
第2接着層13は、例えば、2液型ウレタン系接着剤等の溶液系接着剤により構成されている。
【0032】
紙層14は、例えば、坪量23g/m〜100g/m程度の和紙、洋紙、板紙等により構成され、金属層12及び板状基材16の貼り合わせを仲介するようになっている。
【0033】
第3接着層15は、例えば、酢酸ビニル系エマルジョン型接着剤、アクリル系エマルジョン型接着剤、ビニルウレタン系エマルジョン型接着剤等の水系接着剤、反応型ホットメルト接着剤等により構成されている。
【0034】
板状基材16は、無機材料からなり、例えば、密度0.5g/cm〜1.5g/cm程度で厚さ3mm〜9mm程度の火山性ガラス質複層板(例えば、大建工業株式会社製の商品名「ダイライト(登録商標)」)等により構成されている。なお、本実施形態では、火山性ガラス質複層板からなる板状基材16を例示したが、板状基材16は、例えば、ケイ酸カルシウム板、パルプセメント板、ロックウール板等のその他の不燃基材により構成されていてもよい。
【0035】
上記構成の建築用パネル20は、図1に示すように、例えば、建築物の内壁や天井等の下地材5の表面に施工用接着剤層6を介して貼り付けられる。ここで、下地材5は、例えば、表面にアルカリ成分が発生し易いコンクリートやモルタル等により構成されている。また、施工用接着剤層6は、例えば、ウレタン系接着剤や変性シリコーン系接着剤等により構成されている。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の建築用パネル20によれば、板状基材16の一方の表面側にアルカリ成分の浸透を抑制する浸透抑制層10が設けられているので、例えば、コンクリート面やモルタル面等の下地の表面にアルカリ成分が発生しても、そのアルカリ成分の板状基材16側への浸透を浸透抑制層10により抑制することができる。これにより、板状基材16がアルカリ成分に侵され難くなるので、アルカリ下地に起因する板状基材16の変質を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態の建築用パネル20によれば、浸透抑制層10を構成する樹脂フィルムが汎用性の高いPETフィルムであるので、アルカリ成分の板状基材16側への浸透を低コストで抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態の建築用パネル20によれば、板状基材16と浸透抑制層10との間に可燃性ガスの遮断性の高い金属層12が設けられているので、建築用パネル20に不燃性を付与することができる。また、浸透抑制層10及び金属層12により、板状基材16への水分やアルカリ成分の浸透を抑制することができるので、板状基材16における反りの発生を抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態の建築用パネル20によれば、金属層12が汎用性の高いアルミニウム箔により構成されているので、建築用パネル20に低コストで不燃性を付与することができる。
【0040】
また、本実施形態の建築用パネル20によれば、板状基材16が無機材料により構成されているので、アルカリ下地に起因する板状基材16の腐食を浸透抑制層10により抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態の建築用パネル20によれば、板状基材16が火山性ガラス質複層板により構成されているので、優れた防火性能を有し、高強度で軽量の建築用パネル20を実現することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、板状基材として不燃基材が設けられた建築用パネルを例示したが、本発明は、板状基材として、無垢材、合板、MDF(medium density fiberboard)等の木質基材が設けられた建築用パネル等にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明は、アルカリ下地に起因する板状基材の変質を抑制することができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0044】
10 浸透抑制層
12 金属層
16 板状基材
20 建築用パネル
図1