特許第6402191号(P6402191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6402191コリンアルホスセラートを含有するフィルムコーティング錠剤およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402191
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】コリンアルホスセラートを含有するフィルムコーティング錠剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/6615 20060101AFI20181001BHJP
   A61K 9/32 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20181001BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20181001BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20181001BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   A61K31/6615
   A61K9/32
   A61K9/36
   A61K47/02
   A61K47/04
   A61K47/12
   A61K47/26
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61P25/18
   A61P25/28
   A61P43/00 111
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-540587(P2016-540587)
(86)(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公表番号】特表2017-504596(P2017-504596A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】KR2014012320
(87)【国際公開番号】WO2015093796
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年9月8日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0157198
(32)【優先日】2013年12月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】パク,サンハン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヒチョル
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102525992(CN,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0009906(KR,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1172699(KR,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0311692(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてコリンアルホスセラートを含有し、賦形剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する錠剤上に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む第1フィルムコーティング層およびポリビニルアルコールを含む第2フィルムコーティング層を含むフィルムコーティング錠剤。
【請求項2】
前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが、コリンアルホスセラート1重量部に対して、0.35ないし0.45重量部の含量で存在することを特徴とする請求項1に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項3】
前記第1フィルムコーティング層中のヒドロキシプロピルメチルセルロースが、コリンアルホスセラート1重量部に対して、0.02ないし0.1重量部の含量で存在することを特徴とする請求項1に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項4】
前記第2フィルムコーティング層中のポリビニルアルコールが、コリンアルホスセラート1重量部に対して、0.02ないし0.2重量部の含量で存在することを特徴とする請求項1に記載のフィルムコーティング錠剤。
【請求項5】
(a)コリンアルホスセラート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および薬学的に許容可能な添加剤の混合物を湿式顆粒化する工程、
(b)工程(a)で得られた顆粒を薬学的に許容可能な添加剤と混合した後、打錠することによって錠剤を形成する工程、
(c)工程(b)で得られた錠剤上に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む第1フィルムコーティング層を形成する工程、および
(d)工程(c)で得られたフィルムコーティング層上に、ポリビニルアルコールを含む第2フィルムコーティング層を形成する工程
を含むフィルムコーティング錠剤の製造方法。
【請求項6】
工程(a)の前記混合物中のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムが、コリンアルホスセラート1重量部に対して、0.35ないし0.45重量部の含量で存在することを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
工程(a)の前記混合物が、コリンアルホスセラート1重量部に対して、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.35ないし0.45重量部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース0.01ないし0.04重量部、および微結晶セルロース0.1ないし0.4重量部で構成されることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
工程(a)の前記混合物が、前記フィルムコーティング錠剤1錠当たり、コリンアルホスセラート400mg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム170mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース10mg、および微結晶セルロース100mgで構成されることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
工程(a)の前記湿式顆粒化が、結合剤溶液としてヒドロキシプロピルセルロース溶を使用して行われることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項10】
工程(b)の前記薬学的に許容可能な添加剤が、ケイ化微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、およびクロスポビドンからなる群から選択される崩壊剤;微結晶セルロース、乳糖、およびマンニトールからなる群から選択される賦形剤;およびステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびタルクからなる群から選択される滑沢剤を含むことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項11】
工程(c)の前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、コリンアルホスセラート1重量部に対して、0.02ないし0.1重量部の含量で使用されることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項12】
前記工程(c)が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを無水エタノールおよび塩化メチレンの混合溶媒に溶解させて得られたフィルムコーティング溶液で、工程(b)で得られた錠剤をコーティングすることによって行われることを特徴とする請求項5または請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
工程(d)の前記ポリビニルアルコールが、コリンアルホスセラート1重量部に対して、0.02ないし0.2重量部の含量で使用されることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項14】
前記工程(d)が、ポリビニルアルコールを水に溶解させて得られたフィルムコーティング溶液で、工程(c)で得られたフィルムコーティング錠剤をコーティングすることによって行われることを特徴とする請求項5または請求項13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリンアルホスセラートを含有するフィルムコーティング錠剤およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、潮解性を有するコリンアルホスセラートとメタケイ酸アルミン酸マグネシウムとを湿式顆粒化して錠剤を形成した後、前記錠剤上に特定のフィルム形成剤の組み合わせで二重フィルムコーティング層を形成して得られたフィルムコーティング錠剤;およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセチルコリン前駆体であるコリンアルホスセラートは、不十分なアセチルコリンを補給して神経系の神経伝達を回復させ、損傷された神経細胞膜を修復して神経機能を正常化させる。また、コリンアルホスセラートは、シナプス後部の神経終末(post−synaptic nerve terminal)のアセチルコリン受容体の機能を正常化して神経伝達を促進することによって、脳血管欠損による二次症状並びに変性または退行性器質性脳症候群による症状を改善させる。したがって、コリンアルホスセラートは、記憶障害、精神錯乱、見当識障害、および注意欠陥のような老人性認識障害(senile hypermetamorphosis);情緒不安定および被刺激性のような感情および行動の変化;老人性仮性うつ病(senile pseudo-depression)などの治療に有用であると知られている。コリンアルホスセラートは、ソフトカプセルの形態で市販されていて、1日2回または3回、400mgの投与量で経口投与される。
【0003】
一方、コリンアルホスセラートは、周囲空気から水分を吸収することによって溶解され、その結果、潮解性および/または吸湿性を示す傾向がある。したがって、コリンアルホスセラートは、液相のコリンアルホスセラートをソフトゼラチンカプセルに充填することによって製造される、ソフトカプセル製剤の形態として市販される。しかし、ソフトカプセル形態の製剤においては、コリンアルホスセラートが、時間の経過によってソフトゼラチン被膜に移動する恐れがある。また、ソフトカプセル形態の製剤には微生物劣化(microorganism deterioration)の可能性も存在する。さらに、ソフトカプセル製剤は、湿気および熱に弱く、例えば、夏期保管時に、安定性の問題を引き起こす恐れがある。
【0004】
コリンアルホスセラートの潮解性およびソフトカプセル製剤の欠点を解決するために、固体投与形態を有する製剤を開発するための多様な研究が行われている。例えば、韓国特許公開第10−2009−0088564号には、コリンアルホスセラートをコロイド状二酸化ケイ素に吸着させた、コリンアルホスセラート含有医薬製剤が開示されている。韓国特許第10−1172699号には、コリンアルホスセラートをケイ酸アルミン酸マグネシウムに、1:1ないし2:1の重量比で、吸着させることによって得られた吸着物を含む医薬製剤が開示されている。また、韓国特許第10−1257919号には、コリンアルホスセラート粒子を、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、メタクリル酸コポリマー、ポリエチレンオキシドなどのような水溶性高分子でコーティングすることによって得られるコーティングされた粒子を含む医薬組成物が開示されている。
【0005】
しかし、前記先行技術の製剤は、薬物それ自体(すなわち、コリンアルホスセラート)を添加剤に吸着させること(韓国特許公開第10−2009−0088564号、韓国特許第10−1172699)または粒子コーティング工程を行うこと(韓国特許第10−1257919)を必要とする。すなわち、先行技術の製剤は、吸着工程または粒子コーティング工程の遂行を必要とするから、製剤の製造工程が複雑になり、また特殊設備(例えば、流動層造粒機など)も必要とする。したがって、製造工程のコストが非常に高くなり、産業的大規模生産に適用することが困難である。さらに、韓国特許公開第10−2009−0088564にしたがって、コロイド状二酸化ケイ素に吸着されたコリンアルホスセラートを使用して錠剤を製造する場合、得られる錠剤のサイズが大きくなりすぎ、患者のコンプライアンス低下の問題を引き起こす。
【0006】
したがって、付加的な吸着および/または粒子コーティングの遂行をしなくても、通常の方法によって製造できる、コリンアルホスセラート含有錠剤を開発する必要がある。また、コリンアルホスセラートの潮解性および吸湿性を防止することができ、市販されているソフトカプセル製剤と同等の溶出パターンを示す、コリンアルホスセラート含有錠剤を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、通常の錠剤製造方法を適用することができる薬学的に両立可能な多様な賦形剤およびコリンアルホスセラートの潮解性を防止することができる多様なフィルム形成剤に対して、広範囲な研究を行った。その結果、本発明者らは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(多孔性物質の一種)を少量使用して通常の湿式顆粒法にしたがって錠剤を形成した後、特定のフィルム形成剤の組み合わせ(すなわち、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルアルコール)でフィルムコーティング層を形成してフィルムコーティング錠剤を製造する場合、通常の錠剤製造方法を適用することができ、コリンアルホスセラートの潮解性も防止することができることを見出した。さらに、得られたフィルムコーティング錠剤は、市販されているソフトカプセル製剤と同等の溶出パターンを示すように製剤化することができる。
【0008】
したがって、本発明はコリンアルホスセラートを活性成分として含有するフィルムコーティング錠剤およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によって、活性成分としてコリンアルホスセラートを含有し、賦形剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する錠剤上に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む第1フィルムコーティング層およびポリビニルアルコールを含む第2フィルムコーティング層を含むフィルムコーティング錠剤が提供される。
【0010】
本発明の別の一態様によって、(a)コリンアルホスセラート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および薬学的に許容可能な添加剤の混合物を湿式顆粒化する工程、(b)工程(a)で得られた顆粒を薬学的に許容可能な添加剤と混合した後、打錠することによって錠剤を形成する工程、(c)工程(b)で得られた錠剤上に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む第1フィルムコーティング層を形成する工程、および(d)工程(c)で得られたフィルムコーティング層上に、ポリビニルアルコールを含む第2フィルムコーティング層を形成する工程を含むフィルムコーティング錠剤の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるコリンアルホスセラート含有錠剤は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(多孔性物質の一つ)および特定のフィルム形成剤の組み合わせを使用して製剤化され、コリンアルホスセラートの潮解性および吸湿性を効果的に防止することができる。また、本発明の錠剤は、市販されているソフトカプセル製剤と同等の溶出パターンを示すように製剤化することができる。特に、本発明によるコリンアルホスセラート含有錠剤は、付加的な吸着および/または粒子コーティングの遂行がなくて、通常の錠剤製造方法(例えば、湿式顆粒法)にしたがって製造できる。したがって、この製造方法は、簡単であり、特殊設備を必要せず、低コストで遂行でき、産業的大規模生産に適用することができる。また、本発明の錠剤は、通常の錠剤製造方法にしたがって、少量の賦形剤(すなわち、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)を使用して製造することができる。したがって、望んだ溶出パターンを得るための崩壊剤、滑沢剤などのような添加剤の含量の制限が少なく、患者の服薬に適切なサイズを有する錠剤を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ヒドロキシプロピルメチルセルロースでフィルムコーティング層を形成して得られたフィルムコーティング錠剤を、室温条件(すなわち、25℃、60%相対湿度の条件)で72時間保管した後の外観を示す。
【0013】
図2】ポリビニルアルコールでフィルムコーティング層を形成して得られたフィルムコーティング錠剤の外観を示す。
【0014】
図3】本発明によって得られたフィルムコーティング錠剤[すなわち、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むフィルムコーティング層およびポリビニルアルコールを含むフィルムコーティング層を有するフィルムコーティング錠剤(実施例2−3)]を、室温条件(すなわち、25℃、60%相対湿度の条件)で72時間保管した後の外観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、活性成分としてコリンアルホスセラートを含有し、賦形剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する錠剤上に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む第1フィルムコーティング層およびポリビニルアルコールを含む第2フィルムコーティング層を含むフィルムコーティング錠剤を提供する。
【0016】
本発明によるフィルムコーティング錠剤において、前記活性成分(すなわち、コリンアルホスセラート)は、治療有効量、例えば1錠当り200mg、400mgなどの含量で使用してもよいが、これらに限定されない。
【0017】
本発明で使用される非コーティング錠剤は、賦形剤の一つとしてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含む。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、コリンアルホスセラートと薬学的に両立可能な賦形剤であり、下記に説明する通り、湿式顆粒法のような通常の方法にしたがって錠剤製造ができるようにするものである。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、化学式Al・2Mg・3OSiを有する白色粉末であり、シロドラート(Silodrate)またはシマルドラート(Simaldrate)と呼ばれる。水不溶性であり、70%以上の相対湿度の条件下で吸湿性を有する。また、市販されているノイシリンTM(NeusilinTM、富士化学工業株式会社)を使用してもよい。
【0018】
前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、コリンアルホスセラート1重量部に対して、好ましくは0.35ないし0.45重量部、より好ましくは0.4ないし0.43重量部、さらに好ましくは約0.425重量部の含量で使用されてもよい。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが、コリンアルホスセラート1重量部に対して、0.3重量部以下の含量で使用される場合、打錠の時、スティッキング問題が発生する恐れがある。また、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが、コリンアルホスセラート1重量部に対して、0.5重量部以上の含量で使用される場合、得られる顆粒の容積密度が非常に低くなる。したがって、打錠の時、打錠ダイ(compression die)から有意な量の顆粒が漏れ、望んだ重量を有する錠剤を製造することが難しくなる恐れがある。
【0019】
本発明によるフィルムコーティング錠剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む第1フィルムコーティング層およびポリビニルアルコールを含む第2フィルムコーティング層を含む。前記第1フィルムコーティング層中のヒドロキシプロピルメチルセルロースは、コリンアルホスセラート1重量部に対して、好ましくは0.02ないし0.1重量部、より好ましくは0.03ないし0.05重量部の含量で存在してもよい。前記第2フィルムコーティング層中のポリビニルアルコールは、コリンアルホスセラート1重量部に対して、好ましくは0.02ないし0.2重量部、より好ましくは0.04ないし0.07重量部の含量で存在してもよい。
【0020】
本発明は、前記フィルムコーティング錠剤の製造方法をさらに提供する。すなわち、本発明は、(a)コリンアルホスセラート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および薬学的に許容可能な添加剤の混合物を湿式顆粒化する工程、(b)工程(a)で得られた顆粒を薬学的に許容可能な添加剤と混合した後、打錠することによって錠剤を形成する工程、(c)工程(b)で得られた錠剤上に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む第1フィルムコーティング層を形成する工程、および(d)工程(c)で得られたフィルムコーティング層上に、ポリビニルアルコールを含む第2フィルムコーティング層を形成する工程を含むフィルムコーティング錠剤の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の製造方法において、工程(a)の前記混合物中のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、コリンアルホスセラート1重量部に対して、好ましくは0.35ないし0.45重量部、より好ましくは0.4ないし0.43重量部、さらに好ましくは約0.425重量部の含量で使用されてもよい。工程(a)の前記混合物は、顆粒の製造に通常使用される賦形剤、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、および微結晶セルロースなどを、さらに含んでもよいが、これらに限定されない。一実施形態において、工程(a)の前記混合物は、コリンアルホスセラート1重量部に対して、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム0.35ないし0.45重量部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース0.01ないし0.04重量部、および微結晶セルロース0.1ないし0.4重量部で構成されてもよい。別の一実施形態において、工程(a)の前記混合物は、フィルムコーティング錠剤の1錠当たり、コリンアルホスセラート400mg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム170mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース10mg、および微結晶セルロース25mgで構成されてもよい。
【0022】
工程(a)の湿式顆粒化は、当技術分野で通常使用される造粒機、例えば、高せん断ミキサーで行われてもよい。前記湿式顆粒化は、練合溶媒(例えば、水、エタノール、または水とエタノールとの混合物)のみを使用して行われてもよく、または溶媒に結合剤を溶解させて得られる結合剤溶液を使用して行われてもよい。一実施形態において、工程(a)の前記湿式顆粒化は、結合剤溶液としてヒドロキシプロピルセルロース溶液を使用して行われてもよい。例えば、前記結合剤溶液は、水または水とエタノールとの混合溶媒にヒドロキシプロピルセルロースを溶解させて得られてもよい。結合剤として使用されるヒドロキシプロピルセルロースは、コリンアルホスセラート1重量部に対して、0.05ないし0.08重量部の範囲の量で使用されてもよい。一実施形態において、コリンアルホスセラート400mgに対して、結合剤として、ヒドロキシプロピルセルロース約25mgを使用してもよい。得られる顆粒(すなわち、湿式顆粒)は、温水循環乾燥器または流動層乾燥器のような通常の乾燥器を使用して乾燥されてもよい。好ましくは、得られる顆粒は、1.0重量%ないし2.0重量%の範囲の含水率を有する。必要に応じて、均一なサイズ分布を有する顆粒を得るために、篩過工程をさらに行ってもよい。
【0023】
工程(b)は、工程(a)で得られた顆粒を薬学的に許容可能な添加剤と混合した後、打錠して錠剤を形成することによって行われる。工程(b)の前記薬学的に許容可能な添加剤は、ケイ化微結晶セルロース(ProsolvTM)、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、およびクロスポビドンからなる群から選択される崩壊剤;微結晶セルロース、乳糖、およびマンニトールからなる群から選択される賦形剤;およびステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびタルクからなる群から選択される滑沢剤を含んでもよいが、これらに限定されない。前記添加剤(崩壊剤、賦形剤のような)およびその含量は、市販されているソフトカプセル製剤と同等の溶出パターンを示すように適切に調整されてもよい。
【0024】
工程(c)は、工程(b)で得られた錠剤上に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む第1フィルムコーティング層を形成することによって行われる。工程(c)の前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、コリンアルホスセラート1重量部に対して、好ましくは0.02ないし0.1重量部、より好ましくは0.03ないし0.05重部の含量で使用されてもよい。また、第1フィルムコーティング層の形成のためのヒドロキシプロピルメチルセルロースにおいては、市販されているヒドロキシプロピルメチルセルロースをベースとした親水性マトリックスシステム(例えば、OpadrayTM 03B28796(Colorcon, Inc社製、米国))を使用してもよい。前記ヒドロキシプロピルメチルセルロース−フィルムコーティングは、薬学分野で通常使用される有機コーティング法にしたがって行われてもよい。一実施形態において、工程(c)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(またはOpadrayTM 03B28796)を無水エタノールおよび塩化メチレンの混合溶媒中で溶解させて得られたフィルムコーティング溶液で、工程(b)で得られた錠剤をコーティングすることによって行われる。
【0025】
工程(d)は、工程(c)で得られたフィルムコーティング層上に、ポリビニルアルコールを含む第2フィルムコーティング層を形成することによって行われる。前記ポリビニルアルコールは、コリンアルホスセラート1重量部に対して、好ましくは0.02ないし0.2重量部、より好ましくは0.04ないし0.07重量部の含量で行われてもよい。また、第2フィルムコーティング層の形成のためのポリビニルアルコールにおいては、市販されているポリ(ビニルアルコール)をベースとしたフィルム形成剤(例えば、OpadrayTM Yellow 85F92177(Colorcon, Inc社製、米国))を使用してもよい。前記ポリビニルアルコール−フィルムコーティングは、有機コーティング法または水性コーティング法にしたがって、行われてもよい。前記ポリビニルアルコール−フィルムコーティングは、環境に優しく、また優れた安定性が確保できる水性コーティング法にしたがって遂行できることが本発明により見出された。一実施形態において、工程(d)は、ポリビニルアルコール(またはOpadrayTM Yellow 85F92177)を水(例えば、精製水)に溶解させて得られたフィルムコーティング溶液で、工程(c)で得られたフィルムコーティング錠剤をコーティングすることによって行われてもよい。
【0026】
必要に応じて、本発明による製造方法は、研磨特性の改善のために追加のフィルムコーティング層(第3フィルムコーティング層)の形成をさらに含んでもよい。OpadrayTM 97W19196(Colorcon, Inc社製、米国)を、コーティング剤として使用して第3フィルムコーティング層を形成してもよいが、これに限定されない。第3フィルムコーティング層の形成は、精製水にOpadrayTM 97W19196を溶解させて製造したコーティング溶液を使用して行われてもよい。
【0027】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明する。しかし、これら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲はこれらによって制限されるものではない。
【実施例】
【0028】
実施例1.賦形剤の選定および評価
コリンアルホスセラートと薬学的に両立可能な賦形剤として、通常の錠剤製造方法にしたがって錠剤を製造できるようにする、多様な添加剤を検討した。すなわち、多様な添加剤を使用して、湿式顆粒法を通じてコリンアルホスセラート含有錠剤を製造し、それぞれの打錠性(compressibility)を評価することによって、予備試験を行った。前記予備試験の結果から、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが、相対的に優れた打錠性を示すことを確認した。下記表1で示したような多様な含量で製造された錠剤に対して、追加の研究を行った。
【0029】
すなわち、コリンアルホスセラート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、および微結晶セルロースを24メッシュで篩過した後、混合した。精製水およびエタノールの混合溶媒にヒドロキシプロピルセルロースを溶解して、結合剤溶液を製造した。高せん断ミキサーの中で、前記結合剤溶液を前記混合物に加えて湿式顆粒を形成した後、流動層乾燥器を使用して乾燥した。得られた顆粒を24メッシュで篩過し、ケイ化微結晶セルロース(プロソルブTM(ProsolvTM))、クロスカルメロースナトリウム、微結晶セルロース、およびステアリン酸マグネシウムと混合した後、打錠して約20kpの硬度を有する錠剤を形成した。
【表1】
【0030】
実施例1−1ないし実施例1−3で製造した全ての錠剤は、適切な硬度範囲および溶出パターンを示した。しかし、実施例1−2の錠剤は、打錠の過程でスティッキング問題を示した。実施例1−3の錠剤は、打錠の過程で、顆粒の相当量が打錠ダイ(compression die)から漏れたことから、望んだ重量を有する錠剤を製造することにおいて、低すぎる容積密度を示した。したがって、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、コリンアルホスセラート1重量部に対して、好ましくは0.35ないし0.45重量部、より好ましくは0.4ないし0.43重量部、さらに好ましくは約0.425重量部で使用されることが分かる。
実施例2.コーティング剤の選定および評価
【0031】
実施例1−1ないし1−3の錠剤を25℃、60%相対湿度の条件で保管した時、全ての錠剤は、錠剤表面上に水分吸着のような、外観が悪化する現象(すなわち、潮解性および/または吸湿性)を示した。潮解性/吸湿性に対する潜在的阻害を評価するために、多様なフィルムコーティング剤について、適合性を評価した。得られたフィルムコーティング錠剤の外観の変化を評価し、環境に優しく、また優れた安定性を確保できる水性コーティング法の適用可能性をさらに評価した。
【0032】
(1)ヒドロキシプロピルメチルセルロース−フィルムコーティングの評価
溶媒として水を使用して、ヒドロキシプロピルメチルセルロース−フィルムコーティングを適用した。しかし、錠剤表面が水と直接接触すると溶解され、水性コーティングを遂行することが不可能であった。したがって、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むフィルムコーティング層を、下記表2で示した成分および含量にしたがった有機コーティング法により、実施例1−1で得られた錠剤の上に形成させた。すなわち、ヒドロキシプロピルメチルセルロースをベースとしたコーティング剤(OpadrayTM 03B28796(Colorcon, Inc社製,米国))を、無水エタノールおよび塩化メチレンの混合溶媒に溶解させてコーティング溶液を得た後、得られたコーティング溶液でフィルムコーティングして実施例1−1で得られた錠剤の上にフィルムコーティング層を形成させて、フィルムコーティング錠剤を製造した。
【表2】
【0033】
得られたフィルムコーティング錠剤を室温条件(25℃、60%相対湿度の条件)で保管した時、約8時間後にその外観が悪化した(図1)。得られたフィルムコーティング錠剤を加速条件(40℃、75%相対湿度の条件)で保管した時、1時間未満にその外観が悪化した(下記表5および表6参照)。
【0034】
(2)ポリビニルアルコール−フィルムコーティングの評価
溶媒として水を使用してポリビニルアルコール−フィルムコーティングを適用した。しかし、錠剤表面が水と直接接触すると溶解されたので、水性コーティングを遂行することが不可能であった。したがって、ポリビニルアルコールを含むフィルムコーティング層を、下記表3で示した成分および含量にしたがって有機コーティング法により、実施例1−1で得られた錠剤の上に形成させた。すなわち、ポリ(ビニルアルコール)をベースとしたコーティング剤(OpadrayTM Yellow 85F92177(Colorcon, Inc社製、米国))を、無水エタノールおよび塩化メチレンの混合溶媒に溶解させてコーティング溶液を得た後、得られたコーティング溶液でフィルムコーティングして実施例1−1で得られた錠剤の上にフィルムコーティング層を形成させて、フィルムコーティング錠剤を製造した。
【表3】
【0035】
得られたフィルムコーティング錠剤は、錠剤の表面上に粉末が付いている不適合な外観を示した(図2)。得られたフィルムコーティング錠剤を室温条件(25℃、60%相対湿度の条件)および加速条件(40℃、75%相対湿度の条件)で保管した時、その外観は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースをベースとしたコーティング剤含有フィルムコーティング錠剤より大きく悪化した(下記表5および表6参照)。すなわち、前記ポリビニルアルコールをベースとしたコーティング剤は、有機コーティング法に適用するのに不適切であった。
【0036】
(3)2層フィルムコーティングの評価
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むフィルムコーティング層およびポリビニルアルコールを含むフィルムコーティング層を、下記表4で示した成分および含量にしたがって、実施例1−1で得られた錠剤の上に形成させた。すなわち、OpadrayTM 03B28796 (Colorcon, Inc社製、米国)を無水エタノールおよび塩化メチレンの混合溶媒に溶解させて第1コーティング溶液を得た後、得られた第1コーティング溶液でフィルムコーティングして実施例1−1で得られた錠剤の上にフィルムコーティング層を形成させて第1フィルムコーティング層を有するフィルムコーティング錠剤を製造した。引き続いて、OpadrayTM Yellow 85F92177 (Colorcon, Inc社製、米国)を精製水に溶解させて第2コーティング溶液を得た後、得られた第2コーティング溶液でフィルムコーティングして、前記第1フィルムコーティング層を有する錠剤の上にフィルムコーティング層をさらに形成させて第2コーティング層を有するフィルムコーティング錠剤を製造した。
【表4】
【0037】
実施例1−1の錠剤(非コーティング錠剤)および上記で得られたフィルムコーティング錠剤(実施例2−1ないし実施例2−3)を室温条件(25℃、60%相対湿度の条件)または加速条件(40℃、75%相対湿度の条件)で空気中に露出させた。その外観の変化を下記表5および表6に示す。
【表5】
【表6】
【0038】
非コーティング錠剤(実施例1−1)は、室温条件で保管した時、6時間ないし12時間まで外観の変化を示さなかった。これに対して、HPMCをベースとしたコーティング剤のみを含有するフィルムコーティング錠剤(実施例2−1)およびPVAをベースとしたコーティング剤のみを含有するフィルムコーティング錠剤(実施例2−2)は、室温条件で保管した時、非コーティング錠剤と類似な安定性を示した。しかし、本発明による2つのコーティング層を有するフィルムコーティング錠剤(実施例2−3)は、72時間後も好ましい外観を維持した(図3)。また、加速条件での保管の時、本発明による2つのコーティング層を有するフィルムコーティング錠剤(実施例2−3)以外の全ての錠剤は、有意な外観の変化を示した。特に、実施例2−3での本発明のコーティング方法は、活性成分(コリンアルホスセラート)の潮解性および吸湿性にもかかわらず、錠剤の安定性を改善するための(水性コーティング法の適用を必要とする)PVAコーティング層の形成を可能にすることが分かる。
【0039】
実施例3.比較溶出試験
下記表7の成分および含量にしたがって、研磨特性を改善するために、実施例2−3で得られたフィルムコーティング錠剤の上に、追加のフィルムコーティング層を形成させた。すなわち、OpadrayTM 97W19196(Colorcon, Inc社製、米国)を精製水に溶解させて第3コーティング溶液を得た後、得られた第3コーティング溶液でフィルムコーティングして実施例2−3で得られた錠剤の上にフィルムコーティング層を追加に形成させて、3つのコーティング層を有するフィルムコーティング錠剤を製造した(すなわち、実施例3−1の錠剤)。実施例3−1のそれぞれのフィルムコーティング層の成分および含量を表7に示した。
【表7】
【0040】
実施例1−1の非コーティング錠剤(n=6)、実施例3−1のフィルムコーティング錠剤(n=6)および市販されているソフトカプセル製剤[グリアチリンソフトカプセル(Daewoong Pharmaceutical Co., Ltd社製)、コリンアルホスセラート400mg、比較例](n=6)について、比較溶出試験を行った。溶出媒として精製水を使用して、37℃およびパドル回転速度50rpmで溶出試験を行った。15、20、30、45、および60分に、溶出媒からアリコートを取って、分析のために濾過を行った。別々に、コリンアルホスセラート22mg(参考基準)を100mlメスフラスコに加えた後、水とアセトニトリルとの混合溶液(1:1、v/v)を(メスフラスコのマークまで)加えて、標準液を製造した。それぞれのアリコートを、下記の条件下でHPLCで分析した。
<HPLC分析条件>
カラム: Inertsil NH Column
移動相: 水:アセトニトリル=40:60(v/v)
検出器: 屈折率検出器
流速: 1.5ml/分
注入量: 50ul
【0041】
前記比較溶出試験の結果を下記表8に示す。
【表8】
【0042】
比較例(ソフトカプセル)は、15分の時点で100%以上の即時薬物放出を示した。また、2つの試験製剤(すなわち、実施例1−1および3−1)も、15分以内に即時薬物放出プロファイルを示した。表8の結果から、実施例1−1の非コーティング錠剤および実施例3−1のフィルムコーティング錠剤は、薬物放出プロファイルにおいて有意な差異を示さず、比較例(すなわち、市販されているソフトカプセル製剤)と同等の溶出パターンを示すことが分かる。
図1
図2
図3