(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402197
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
F02M 61/16 20060101AFI20181001BHJP
F02M 61/14 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
F02M61/16 K
F02M61/14 320A
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-551312(P2016-551312)
(86)(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公表番号】特表2017-516008(P2017-516008A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】EP2014000969
(87)【国際公開番号】WO2015120867
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2017年4月3日
(31)【優先権主張番号】61/938,407
(32)【優先日】2014年2月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ,クレス
(72)【発明者】
【氏名】スバンベルク,トーマス
【審査官】
堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−041131(JP,A)
【文献】
特開平11−013565(JP,A)
【文献】
特開2003−003920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(30)のシリンダ内に燃料を供給するための燃料噴射システム(20)であって、
前記内燃機関(30)のシリンダ内に燃料を供給する燃料噴射装置(1)と、当該燃料噴射装置(1)を受容するように構成された開口(22)を有する筐体部(21)とを含み、
前記燃料噴射装置(1)は、前記開口(22)内に位置決めされており、
前記燃料噴射装置(1)は、燃料噴射器(11)と、前記燃料噴射器(11)の周縁を囲むように配置されたシールリング(2、102、202、302)と、を含み、
前記シールリングは、前記燃料噴射器の噴射器先端(4)の最も近くに位置する前記燃料噴射器の燃料入口及び燃料出口の少なくとも一方(3)と前記噴射器先端(4)との間に配置され、
前記シールリング(2、102、202、302)は、幅狭の端部(5、105、205、305)が前記噴射器先端(4)に向かって延在すると共に幅広の端部(6、106、206、306)が前記噴射器先端(4)から離れる方向に延在している非対称形の断面を有し、
前記幅広の端部(6、106、206、306)は、その間に空間を挟んだ状態で内側の第1の脚部と外側の第2の脚部とからなる2つの脚部(8、108、208、308、9、109、209、309)を形成する窪み(7、107、207、307)を有し、
前記2つの脚部のうち前記外側の第2の脚部は、前記2つの脚部のうち前記内側の第1の脚部に向かって移動可能となっており、
前記燃料噴射システム(20)は、前記筐体部(21)に加えて、前記噴射器先端(4)の近傍で前記燃料噴射器(11)の一部を受容すると共に前記開口(22)内に配置されたスリーブ(28)を含み、
前記2つの脚部のうち第2の脚部(8、108、208、308)は、前記筐体部(21)の内周面に対して半径方向で当接するように構成された自由端(31、131、231、331)を含むことを特徴とする、燃料噴射システム(20)。
【請求項2】
前記2つの脚部(8、108、208、308、9、109、209、309)は、前記幅狭の端部から前記幅広の端部に向かって広がるように構成された状態で延在していることを特徴とする、請求項1に記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項3】
前記2つの脚部のうち第1の脚部(9、109、209、309)は、前記燃料噴射器(11)の外周面に接触している略直線状の内周面(32、132、232、332)を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項4】
前記2つの脚部のうち第1の脚部(9、109、209、309)は、前記幅狭の端部(5、105、205、305)と前記幅広の端部(6、106、206、306)との間で、少なくとも部分的に略直線状の延在方向を有することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項5】
前記2つの脚部のうち第2の脚部(8、108、208、308)は、前記幅狭の端部(5、105、205、305)と前記幅広の端部(6、106、206、306)との間で、少なくとも部分的に略直線状の延在方向を有することを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項6】
前記2つの脚部のうち第2の脚部(8、108、308)は、前記幅狭の端部(5、105、305)において、前記2つの脚部のうち第1の脚部(9、109、309)の第1の端部から突出していることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項7】
前記シールリング(2、102)の前記非対称形の断面は、V字形状であることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項8】
前記2つの脚部のうち第2の脚部(208)は、前記2つの脚部のうち第1の脚部(209)の前記幅狭の端部(205)における第1の端部と前記幅広の端部(206)における第2の端部との間の位置から突出していることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項9】
前記シールリング(2、102、202、302)は、前記幅狭の端部(5、105、205)から前記幅広の端部(6、106、206)まで、前記シールリング(2、102、202、302)の全高(10、110、210)にわたって前記燃料噴射器(11)と接触していることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項10】
前記シールリング(2、102、202、302)の前記2つの脚部(8、108、208、308、9、109、209、309)の間の角度(α)は、25度から70度までの間であることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項11】
前記シールリング(2、102、202、302)は、弾性材料で形成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれか1つに記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項12】
前記弾性材料は、合成ゴム及び熱可塑性エラストマから選択されていることを特徴とする、請求項11に記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項13】
前記合成ゴムは、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリン、エチレンプロピレンゴム、フルオロエラストマ、ニトリルゴム、ペルフルオロエラストマ、ポリアクリレートゴム、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、多硫化ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、サニフルオール、及びシリコーンゴムから選択されていることを特徴とする、請求項12に記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項14】
前記熱可塑性エラストマは、スチレン系熱可塑性エラストマ、熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エーテルエステルエラストマコポリエステル、熱可塑性ポリアミド、溶融加工可能なゴム、及び熱可塑性硬質ゴムから選択されていることを特徴とする、請求項12に記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項15】
前記シールリング(2、102、202、302)は、2mm〜5mmの高さ(10、110、210、310)及び0.25mm〜4mmの幅(12、112、212、312)を有することを特徴とする、請求項1〜請求項14のいずれか1つに記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項16】
前記開口(22)は、前記燃料噴射器(11)の周りに燃料通路(25)の一部を形成する幅広の部分を含み、
前記シールリング(2、102、202、302)は、前記燃料通路(25)と前記噴射器先端(4)との間で前記燃料噴射器(11)の周りに位置決めされていることを特徴とする、請求項1〜請求項15のいずれか1つに記載の燃料噴射システム(20)。
【請求項17】
請求項1〜請求項16のいずれか1つに記載の燃料噴射システム(20)を含む、内燃機関(30)。
【請求項18】
請求項17に記載の内燃機関(30)を含む車両(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダ内に燃料を供給するための燃料噴射装置に関する。燃料噴射装置は、筐体部の開口内に挿入されて燃料噴射システムの一部を形成するように構成されている。前記燃料噴射装置又は前記燃料噴射システムは、ディーゼルエンジン等の内燃機関に用いられてもよく、前記内燃機関は、例えば、トラック、バス、建設機械等のいずれかの車両、又は発電セット(genset)等の固定電源装置で使用可能である。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射器は、内燃機関のシリンダ内に燃料を供給するために用いられる。あるエンジン構成の一例によれば、燃料分配経路(燃料通路(fuel gallery))は、複数の燃料噴射器に燃料を供給するために、筐体を横切るように配置されている。各燃料噴射器は、燃料通路への開口とスプレー先端を形成する噴射器先端の開口との間に延在する内部燃料経路の配列を有する。噴射のタイミングは、例えば、燃料噴射器のプランジャを介して、機械的に及び/又は電子的に制御され得る。
【0003】
シリンダの燃焼チャンバ内に燃料を噴射するとき、前記燃料の燃焼は高いガス圧を生じさせ、この圧力が噴射器先端に力を加え、更には燃料噴射器と噴射器スリーブ及び/又は噴射器を受容している筐体部との間の接触領域に力を加える。燃料噴射器と噴射器スリーブ及び/又は筐体部との間の接触領域は、ガス圧が生じる力に対抗する噴射器ヨークの締結力によって設けられ維持されている。
【0004】
噴射器のための燃焼ガスシールは、米国特許出願公開第2003/0178784(A1)号明細書において提案されている。前記シールは、エンジンのシリンダヘッダ上に搭載される噴射器に設けられた取り付け溝内に取り付けられており、シリンダヘッドと噴射器との間の環状の隙間を封止している。前記シールは、圧縮変形前において取り付け溝の外径よりも小さく設定された内径と、圧縮変形前においてシリンダヘッドのシール当接部の内径よりも大きく設定された外径と、を有する。燃焼ガス側のシールの端面全体は、燃焼ガスに曝されるように構成されている。このような構造では、シールの内径側及び外径側が噴射器及びシリンダヘッドのそれぞれに対して隙間なく接触すると共に、シールの端面全体が燃焼ガスに曝されるので、燃焼ガスによって生じる圧力が、シールを内径側及び外径側に向かって延出させ、表面の圧力は更に増大する。シールは、できる限り良好なシール性をもたらすように構成され配置されている。
【0005】
燃料噴射器とシリンダヘッド/噴射器スリーブとの間の接触領域において高い接触圧力を維持して、この接触領域を通過する燃焼ガスが大量に漏出することを防ぐことは重要である。このような漏出は、接触領域とシールとの間のキャビティに圧力を生じさせ、最終的には、シーリング力の低下させる力を生じさせることがある。シーリング力の低下は深刻な漏出を引き起こすおそれがあり、結果として燃料通路内の燃料の汚染を引き起こすおそれがある。
【0006】
接触領域に大きい接触圧力が存在し得たとしても、燃料ガスの微少な漏出(micro leakage)が生じる可能性がある。このような微少な漏出は、将来的に接触領域とシールとの間のキャビティに高い圧力を生じさせる結果、シーリング力を低減させ、大量の燃焼ガスを燃料システムに流入させてしまうおそれがある。燃焼ガスは大量の小粒子を一緒に運び、これらが燃料を汚染することになる。ディーゼル燃料が過度に汚染されると、ディーゼル燃料フィルタが早期に目詰まりしたり、重要な燃料噴射システムの部品が早期に摩耗したりしてしまう。更に、燃料内の燃焼ガスは、エンジンの回転ムラやエンジン始動性の課題を引き起こすおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、燃料ガスのシールの通過を制御して漏出が少量となる状態を作り出すことで、シールの噴射器先端側において燃料ガスの圧力が抑えきれずに上昇することを回避する燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の燃料噴射装置によって達成される。この燃料噴射装置は、燃料噴射器と、前記燃料噴射器の周縁を囲むように配置されたシールリングと、を含む。シールリングは、燃料噴射器の噴射器先端の最も近くに位置する燃料噴射器の燃料入口及び燃料出口の少なくとも一方と噴射器先端との間に配置されている。前記シールリングは、幅狭の端部が噴射器先端に向かって延在すると共に幅広の端部が噴射器先端から離れる方向に延在している非対称形の断面を有する。幅広の端部は、その間に空間を挟んだ状態で2つの脚部を形成する窪みを有する。
【0009】
この種のシールの適切な寸法決定及び設計は、噴射器先端から燃料入口及び/又は燃料出口までの方向における漏出が少量となるか、より具体的には極めて少量となる状態を作り出す。これにより、シールの噴射器先端側での圧力上昇の軽減を図ることができる。
【0010】
すでに述べたように、燃料通路は、複数の燃料噴射器同士を接続している。より具体的には、燃料通路は、燃料噴射器用の筐体の開口同士を接続する経路(channel)を形成する。燃料噴射器を受容する開口の部分であって、燃料通路の一部を形成する部分は、拡大された直径を有し得る。燃料通路を形成する開口の部分は、好ましくは、燃料噴射器の軸方向の長さ(extension)を有し、この長さは、前記燃料入口及び/又は燃料出口の長さと比較して十分に長い。好ましくは、燃料入口及び/又は燃料出口は燃料通路内に位置決めされている。
【0011】
シールリングの特定の設計は、エンジンの運転中に、燃料噴射器とこれを取り囲む筐体との間の密封を可能とする。エンジンの運転中、燃料通路内の圧力は0〜40バールの間で変動する可能性があり、ほとんどの場合は約5バールである。いったんエンジンがオフになると、燃料通路内の圧力はゆっくり低下して0バールに戻る。シールリングの下方において燃料噴射器と筐体との間にあるキャビティでは、エンジンの運転中に圧力が上昇する。この圧力は、通常、0〜5バールの間のいずれかである。いったんエンジンがオフになり、燃料通路内の圧力が低下すると、エンジン運転中にキャビティ内で上昇した圧力によりシールに対し下方から力が加えられる。このため、シールの窪みによってシールリングの第2の脚部は第1の脚部に向かってわずかに移動可能となる。したがって、微少な漏出が生じて、キャビティからシールリングの上方に位置する燃料通路内に燃焼ガスがゆっくりと放出される。キャビティから燃料通路内への燃焼ガスの微少な漏出は、0.001〜0.05ml/時のオーダーである。
【0012】
エンジンをオフにするたびにキャビティ内の圧力が放出されると、そのたびに燃料内に放出される燃焼ガスは極めて少量になる。このような少量の燃焼ガスは燃料の質に影響を及ぼさないので、エンジンの回転ムラやエンジン始動性の課題などの問題を回避することができる。
【0013】
更に、シールの構造は、燃焼ガスがキャビティから燃料通路内にゆっくりと放出されることを可能とし、このためシールが障壁として機能すると共に、燃焼ガスと共に汚染粒子が燃料通路に流入するのを防ぐことができる。従って、シールは、燃料システムにおける厳しい清浄度の要件を満たすことを保証する。
【0014】
一実施形態によれば、前記シールリングの脚部は、前記幅狭の端部から前記幅広の端部に向かって広がるように構成された状態(in a diverging configuration)で延在している。この構成によって、シールリングの可撓性を高めることができると共に、特定の用途において必要な場合には、より幅広のシールを製造することが可能となる。更に、シールリングは、燃料噴射器が筐体内に位置決めされている場合に燃料噴射器をガイドするように調整して燃料噴射器の正確な配置を促進することもわかっている。
【0015】
一実施形態によれば、前記2つの脚部のうち第1の脚部は、前記燃料噴射器の外周面(radially outer surface)に接触しているほぼ直線状の内周面(radially inner surface)を含む。直線状の内周面の利点は、シールリングと燃料噴射器との接触性が向上するので、シールリングのこの側面において燃焼ガスの漏出が生じ得ないことである。
【0016】
一実施形態によれば、前記第1の脚部は、前記幅狭の端部と前記幅広の端部との間で、少なくとも部分的にほぼ直線状の延在方向(extension direction)を有する。第1の脚部が直線状に延在することによって、シールリングが燃料噴射器の外周面の溝内に正確に嵌め込まれることが可能となり、これにより、シールリングの正確な位置決めが保証される。
【0017】
一実施形態によれば、前記2つの脚部のうち第2の脚部は、燃料噴射器の筐体部の内周面に対して半径方向で当接するように構成された自由端を含む。噴射器を筐体内に挿入するとき、自由端は噴射器筐体の内周面をたどる。この自由端は、シールの幅を調整して筐体の内周面をたどることができるので、ある程度の調整を許容するように、筐体に対するシールリングの大きさの感度を低下させる。これによって、筐体の内周面上にでこぼこがある場合に、シールリングをある程度適合させて、これを埋め合わせることができる。
【0018】
一実施形態によれば、第2の脚部は、前記幅狭の端部と前記幅広の端部との間で、少なくとも部分的にほぼ直線状の延在方向を有する。この構造は、燃焼ガスの圧力によって生じる力が脚部の幅にわたって均一に分散されるという利点を有する。力の均一な分散は、シールリング脚部の特定の部位ごとに生じる力の推測を改善することができ、これによって、大きさ及び材料を考慮する際に最適なシールリングの構築が可能となる。更に、シールリングの脚部にわたって均一に力が分散されるので、燃料の高品質規格を維持するのに弊害となる制御不能な破壊が起こりにくい。
【0019】
一実施形態によれば、前記の2つの脚部のうち第2の脚部は、幅狭の端部において、前記の脚部の第1の脚部の第1の端部から突出している。この実施形態は、第2の脚部の長さが、極めて短いものから極めて長いものまで大きく変化し得、燃料噴射器と筐体との間の隙間の大きさに適合可能であるという利点を有する。
【0020】
一実施形態によれば、前記シールリングの非対称形の断面は、V字形状である。この実施形態は、シールリングを容易に製造することを可能とすると同時に最適化された安定性及びシーリング性を提供する安定した構造であるので、特に適切であると考えられる。
【0021】
一実施形態によれば、前記の2つの脚部のうち第2の脚部は、前記2つの脚部のうち第1の脚部の幅狭の端部における第1の端部と幅広の端部における第2の端部との間の位置から突出している。この構成を有するシールは、それほど広い幅で構成されないものの、構造的な安定性が維持されると共に燃料噴射器と筐体との間の強力なシールが確保されるものと考えられるので、燃料噴射器と筐体との間の隙間が極めて小さい場合に特に適しているものと考えられる。この構成の別の利点は、燃料通路からシールリング上に与えられ第2の脚部に生じる圧力により、燃料噴射器に接触している第1の脚部上に引張力及び押圧力の両方が生じるようになるので、摩擦力が増大し、前記のシールリングが燃料噴射器の表面上の溝内に配置されていない場合であってもシールリングのスリップの発生が抑制されることである。
【0022】
一実施形態によれば、前記シールリングは、前記幅狭の端部から前記幅広の端部まで、前記シールリングの全高にわたって燃料噴出器と接触している。この実施形態は、燃料噴射器の周りのシールリングの密封が確保されるので、シールリングと燃料噴射器との間の接触領域において漏れが生じない。更に、シールリングと燃料噴射器との間の広い接触領域により大きな摩擦力が確保されるので、シールリングが燃料噴射器の溝内に配置されていない場合であってもシールリングのスリップが回避される。
【0023】
一実施形態によれば、前記シールリングの2つ脚部間の角度(α)は、25度から70度までの間である。角度をこの区間で選択することにより、エンジンの運転中の密封が保証されると共にエンジンがオフになったときに微少な漏出が生じるので、シールの最適な機能を確保することができる。更に、この角度を変更することによって、シールリングの2つの脚部の間の窪みの大きさを、対象となる用途向けに最適化することができる。
【0024】
一実施形態によれば、前記シールリングは、弾性材料で形成されている。弾性材料の大きな利点は、その収縮力によりシールリングと燃料噴射器との間の密封の実現が保証されることである。また、弾性材料は、可撓性を有しており、エンジンをオフにしたときに微少な漏出を生じさせることを可能とする。
【0025】
一実施形態によれば、前記弾性材料は、合成ゴム及び熱可塑性エラストマから選択されている。合成ゴムは、高弾性を有し、極めて大きく弾性変形し得るが、それでもなお最初の大きさに戻れるという利点がある。ゴムの弾性力によって燃料噴射器の半径方向中心に向かう内側への力が確保されるので、従って、合成ゴムは、シールリングと燃料噴射器との間に極めて強力な取り付けを提供するシールリングの製造を可能とする。熱可塑性材料は、成形が容易であるので、これを用いることによりシールリングの製造が容易になるという利点を有する。更に、これらはリサイクル可能であり、シールリングを新しいシールリングに取り替える場合には、その材料の再利用が可能となる。
【0026】
一実施形態によれば、前記合成ゴムは、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリン、エチレンプロピレンゴム、フルオロエラストマ、ニトリルゴム、ペルフルオロエラストマ、ポリアクリレートゴム、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、多硫化ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、サニフルオール(sanifluor)、及びシリコーンゴムから選択されている。これらの特定のゴムは、シールリングの材料として適切であると同時に、燃料及び燃焼ガスが引き起こす化学的環境によって材料品質が損なわれない特性を有するという利点がある。
【0027】
一実施形態によれば、前記熱可塑性エラストマは、スチレン系熱可塑性エラストマ、熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エーテルエステルエラストマコポリエステル、熱可塑性ポリアミド、溶融加工可能なゴム、及び熱可塑性硬質ゴムから選択されている。これらの特定の熱可塑性エラストマは、シールリングの材料として適切であると同時に、燃料及び燃焼ガスが引き起こす化学的環境によって材料品質が損なわれない特性を有するという利点がある。
【0028】
一実施形態によれば、前記シールリングは、2mmから5mmの高さ及び0.25mmから4mmの幅を有する。高さは、シールリングの幅狭の端部からシールリングの幅広の端部まで第1の脚部に沿って測定されるものである。幅は、燃料噴射器の表面から、燃料噴射器の表面から最も遠くに位置する第2の脚部の長さまでが測定されるものである。これらの寸法は、シールリングが燃料噴射器と筐体との間の密封を確保するのに最適な大きさとなるように選択されている。シールが大きすぎる場合には、燃料噴射器を筐体内に挿入することが困難となり、小さすぎる場合には、シールリングは燃料噴射器と筐体との間の隙間における密封を形成しない。
【0029】
本発明はまた、内燃機関のシリンダ内に燃料を供給するための燃料噴射システムに関する。燃料噴射システムは、請求項のいずれか1つに記載の前記燃料噴射装置を受容するように構成された開口を有する筐体部を含み、前記燃料噴射装置は、前記開口内に位置決めされている。燃料噴射装置が筐体内に挿入されている場合、シールリングは、エンジンの運転中に密封を提供するという利点を有し、いったんエンジンがオフになると微少な漏出が生じるので、シールリングの下方において燃料噴射器と筐体との間にあるキャビティで上昇した圧力が除去される。従って、この実施形態では、大量の燃焼ガス及び粒子が燃料内に流入せず、エンジンの円滑な動作が保証されて、エンジンの回転ムラやエンジン始動性の課題による顧客の苦情を防止することができる。
【0030】
一実施形態によれば、前記開口は、前記燃料噴射器の周りに前記燃料通路を形成する幅広の部分を含み、前記シールリングの第1のシールリングは、前記燃料通路と前記噴射器先端との間で前記燃料噴射器の周りに位置決めされている。燃料通路と燃料噴射器の噴射器先端との間にシールリングを配置することで、シールリングによって与えられる改良されたシーリングシステムの最適な性能が得られる。
【0031】
本発明はまた、上述のような燃料噴射装置又は燃料噴射システムを含む内燃機関に関する。上述の燃料噴射装置又は燃料噴射システムを含む内燃機関は、内燃機関の円滑な運転を保証する。これは、顧客の苦情が少ないという利点だけでなく、燃料が粒子及び燃焼ガスにより汚染されないので、燃料噴射器、フィルタ、及び内燃機関の他の部品の摩耗及び損傷が減少するという利点を有する。更に、内燃機関の部品が汚染された燃料により目詰まりすることがないので、この内燃機関ではメンテナンスの必要性が低減される可能性がある。
【0032】
本発明はまた、上述のような内燃機関を含む車両に関する。上述したように、内燃機関は、燃料噴射装置又は燃料噴射システムから多くの利益を得る。これらは前記内燃機関の寿命を延ばし、そのメンテナンスを低減させるからである。この利点は、先に開示したような内燃機関を含む車両にも存在する。
【0033】
「燃料入口及び/又は燃料出口」という用語は、燃料が燃料噴射器内に流入すること又は燃料噴射器から流出することを可能とする燃料噴射器の開口を意味し、場合によっては、この開口は、流体が燃料噴射器内に流入すること及び燃料噴射器から流出することの両方を可能とする二重の機能を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
添付図面を参照して、本発明の例示的な実施形態の更に詳細な説明を以下に示す。
【0035】
【
図2】第1の実施形態による燃料噴射装置と第1の実施形態によるシールリングとを含む第1の実施形態による燃料噴射システムの側部断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の様々な実施形態を示す添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載する実施形態に限定されるものとして解釈されるものではない。これらの実施形態は、完全さ及び完璧さのために提供されるものであって、当業者に本発明の範囲を詳細に伝えるものである。
【0037】
図1はトラックの形態の車両40を示す。車両40は、トラックを前進させるためのディーゼルエンジンの形態の内燃機関30を含む。内燃機関30は、
図2に示す燃料噴射システム20を含む。燃焼噴射システム20は、
図2に示す燃料噴射装置1を含む。
【0038】
図2は、第1の実施形態による燃料噴射装置1を示す。燃料噴射装置1は、第1の実施形態による燃料噴射器11及びシールリング2を含む。燃料噴射器11は、細長い形状を有し、燃料をそのスプレー先端4に送出するための噴射器ケーシング及び内部燃料システムを含む。シールリング2は、燃料噴射器11の周縁を囲むように配置され、より具体的には、噴射器ケーシングの溝内に配置されている。シールリングは、噴射器先端4の最も近くに位置する燃料噴射器の燃料入口及び/又は燃料出口3と、燃料噴射器の噴射器先端4との間に位置している。シールリング2の断面は非対称形であって、幅狭の端部5が燃料噴射器11の噴射器先端4に向かって延在すると共に幅広の端部6が噴射器先端4から離れる方向に延在している。幅広の端部6には、窪み7が存在しており、これにより、2つの脚部8、9がその間に空間を挟んだ状態で形成される。
【0039】
溝は、シールリング2の高さ及び幅と実質的に一致する寸法を有する。より具体的には、溝は、平行な上部内面及び下部内面を有する。
【0040】
図2において、燃料噴射器11は、燃料入口及び/又は燃料出口3を1つのみ有するように図示されている。また、燃料噴射器11が2つ以上の燃料入口及び/又は燃料出口3を有し得ること、及びそれらが同一の機能を有するか又は異なる機能を有し得ることはよく知られている。このような燃料噴射器11では、噴射器先端4の最も近くに位置するシールリング2が本明細書に開示されるようなシールリング2である限り、それぞれの燃料入口及び/又は燃料出口3の間に2つ以上のシールリング2を用いることも可能である。
【0041】
燃料噴射システム20は、燃料噴射装置1を受容するように構成された細長い開口22を有する筐体部21を含む。燃料噴射装置1は開口22内に位置決めされている。燃料噴射システム20は、内燃機関30の少なくとも1つのシリンダ内に燃料を供給するように構成され配置されている。燃料噴射装置1が筐体部21の開口22内に位置決めされている場合、シールリング2は、燃料噴射器11と筐体部21との間の隙間のシールを提供するように構成されている。
【0042】
燃料通路25は、燃料噴射器11の燃料入口及び/又は燃料出口3と連通した状態で存在している。より具体的には、燃料噴射器11の燃料入口及び/又は燃料出口3は、燃料通路25で終端している。燃料通路25は、燃料噴射器11の軸方向を横断する方向に延在する燃料経路を形成し、好ましくは、エンジンの複数の燃料噴射器に燃料を分配するように構成されている。シールリング2は、燃料通路25と噴射器先端4との間に位置決めされている。
【0043】
燃料噴射器先端4の方向のシールリング2の下方において、燃料噴射器11と筐体21との間には、キャビティ24が形成されている。より具体的には、開口22の一部が、対応する噴射器部分の外径よりも大きい直径を有するように形成されており、この部分がキャビティを形成している。
【0044】
図示された特定の実施形態では、筐体部21と組み合わせて噴射器スリーブ28を用いることで、燃料噴射器11を保持している。スリーブ28は、噴射器先端4の近傍で燃料噴射器11の一部を受容している。筐体部21において、その冷却のためにスリーブ28の周りには冷却経路が設けられている。噴射器スリーブ28は、筐体部21の開口22内に配置され、筐体部21と噴射器スリーブ28との間の嵌合を提供するようにシール29が用いられている。シール29は、スリーブ28の溝内に位置決めされており、燃料及び燃焼ガスに適合したものであればシーリング用のいかなる標準的なタイプのシールであってもよい。このシールの例としては、Oリング(o-ring)、金属シール、ポリマーシール、弾性シール、又はそれらの組み合わせが挙げられる。噴射器スリーブ28及び筐体部21は、燃料噴射器11を適切な位置に保持し位置合わせするのに役立つ。燃料噴射器11は、接触領域23にて噴射器スリーブ28に直接接触している。接触領域23における接触力は、噴射器先端4に対して噴射器の反対側にあるヨーク26によって促進される。ヨーク26は、筐体部21及び噴射器スリーブ28に向けて燃料噴射器11を押圧して、接触領域23での密封を確保するように構成されている。
【0045】
図2において、シリンダヘッド27は、噴射器スリーブ28が組み合わせられる筐体部21を有するように図示されている。また、噴射器スリーブ28を有さずに筐体部を有することも知られており、この場合、筐体部は、ヨーク26付近の筐体部の上部から燃料噴射器先端4に至るまで燃料噴射器11の側面に沿って延在する。その後、シリンダヘッド27の筐体部は、燃料噴射器11との接触領域23を形成する。
【0046】
ここで、シール2の構造に移る。脚部8、9は、幅狭の端部5から幅広の端部6に向かって広がるように構成された状態で延在している。第1の脚部9は、ほぼ直線状の内周面(radially inner surface)32を有する。内周面32は、溝内において燃料噴射器11の直線状の外周面(radially outer surface)に接触している。換言すると、溝は、前記内周面が噴射器11の軸方向に延在するように構成されている。
図2は、噴射器11の周囲に取り付けられた状態のシール2を示し、この場合、シール2の内周面32全体が溝内において燃料噴射器11の外周面に接触している。
【0047】
第1の脚部9は、シールリング2の幅狭の端部5と幅広の端部6との間で、少なくとも部分的にほぼ直線状の延在方向(extension direction)を有する。より具体的には、第1の脚部9は、シールリング2の幅狭の端部5と幅広の端部6との間で、直線状の延在方向を有する。
【0048】
第2の脚部8は、噴射器の筐体部21の内周面に対して半径方向で当接するように構成された自由端31を含む。第2の脚部8は、噴射器の筐体部21の開口22の内周面に対して傾斜した延在方向を有する。第2の脚部8は、燃料噴射器11の軸方向に対して傾斜した延在方向を有する。この構成により、第2の脚部8の自由端31は、比較的短い軸方向の距離に沿って開口22の内周面に接触している。より具体的には、開口22の内周面に対する第2の脚部8の接触面は、溝の内面に対する第1の脚部9の接触面よりもはるかに小さい。更に、第2の脚部8は、その自由端31が溝の上部境界面から軸方向においてある程度の距離をおいて位置決めされるような長さを有する。より具体的には、自由端31は、燃料噴射器11の軸方向において、溝の下部境界面よりも溝の上部境界面の近くに位置決めされている。
【0049】
第2の脚部8は、幅狭の端部5と幅広の端部6との間で、少なくとも部分的にほぼ直線状の延在方向を有する。第2の脚部8は、幅狭の端部5において、各脚部のうち第1の脚部9の第1の端部から突出する。シールリング2の非対称形の断面は、基本的にV字形状である。更に、噴射器先端4に対向するシール2の下部は正確なV字形状のように鋭角でなく、むしろ平坦であり、溝の下面の大部分にわたってこれに当接する。より具体的には、シール2は、溝の下面の半径方向の長さの少なくとも半分にわたり、この下面に沿って延在するように構成されている。
【0050】
シールリングは、高さ10及び幅12を有する。シールリング2は、幅狭の端部5から幅広の端部6までシールリング2の全高10にわたって燃料噴射器11に接触している。
【0051】
シールリング2は、燃料及び燃焼ガスを使用する環境で用いるのに適切と考えられる多種多様な材料のいずれかのタイプを用いて作成され得る。使用する材料は、ある程度の可撓性を持たなければならない。これは、燃料通路25において圧力が低下する際に、燃料噴射装置1と筐体21との間のキャビティ24内に捕捉された燃焼ガスを、微少な漏出として、ゆっくりとシールリング2を通過させて漏出させなければならないからである。ある程度の可撓性を有する材料の一例として弾性材料がある。しかしながら、当業者であれば、薄肉の第2の脚部8を有することで第2の脚部8に可撓性を持たせる金属製のシールリング2、弾性とは見なされないもののある程度の可撓性を有するポリマー材料、又はこれらの材料タイプの組み合わせなど、多くの材料を想起することができる。
【0052】
図3には、第2の実施形態によるシールリング102が示されている。シールリング102は、幅狭の端部105が燃料噴射器11の噴射器先端4に向かって延在すると共に幅広の端部106が噴射器先端4から離れる方向に延在している非対称形の断面を有する。幅広の端部106には窪み107が存在しており、これにより、2つの脚部108、109がその間に空間を挟んだ状態で形成される。窪み107の深さは、使用する材料に応じて変化し得る。これを用いることで、シールリング102に作用する力に耐えるのに十分な剛性を有しつつさらにある程度の可撓性を有することで微少な漏出を許容する構造を確保するように、シーリングシング102を最適化することができる。
【0053】
脚部108、109は、幅狭の端部105から幅広の端部106に向かって広がるように構成された状態で延在している。第1の脚部109は、ほぼ直線状の内周面132を有し、これは燃料噴射器11の外周面に接触している。第1の脚部109は、シールリング102の幅狭の端部105と幅広の端部106との間で、少なくとも部分的にほぼ直線状の延在方向を有する。
【0054】
第2の脚部108は、燃料噴射器の筐体部の内周面に対して半径方向で当接するように構成された自由端131を含む。第2の脚部108は、幅狭の端部105と幅広の端部106との間で、少なくとも部分的にほぼ直線状の延在方向を有する。前記2つの脚部のうち第2の脚部108は、幅狭の端部105において、前記脚部のうち第1の脚部109の第1の端部から突出している。シールリング102の非対称形の断面はV字形状である。
【0055】
シールリングは、高さ110及び幅112を有する。シールリング102は、幅狭の端部105から幅広の端部106まで、シールリング102の全高110にわたって燃料噴出器1と接触している。シールリング102の脚部108、109の間には、角度αが形成されている。
【0056】
図4には、第3の実施形態によるシールリング202が示されている。シールリング202は、幅狭の端部205が燃料噴射器11の噴射器先端4に向かって延在すると共に幅広の端部206が噴射器先端4から離れる方向に延在している非対称形の断面を有する。幅広の端部206には窪み207が存在しており、これにより、2つの脚部208、209がその間に空間を挟んだ状態で形成される。
【0057】
脚部208、209は、幅狭の端部205から幅広の端部206に向かって広がるように構成された状態で延在している。第1の脚部209は、ほぼ直線状の内周面232を有し、これは燃料噴射器11の外周面に接触している。第1の脚部209は、シールリング202の幅狭の端部205と幅広の端部206との間で、少なくとも部分的にほぼ直線状の延在方向を有する。
【0058】
第2の脚部208は、燃料噴射器の筐体部の内周面に対して半径方向で当接するように構成された自由端231を含む。第2の脚部208は、幅狭の端部205と幅広の端部206との間で、少なくとも部分的にほぼ直線状の延在方向を有する。第2の脚部208は、前記複数の脚部のうち第1の脚部209の幅狭の端部205における第1の端部と幅広の端部206における第2の端部との間の位置から突出している。より具体的には、第2の脚部208は、第1の脚部209の幅狭の端部205における第1の端部と幅広の端部206における第2の端部との間のほぼ中間の位置から突出している。
【0059】
シールリング202は、高さ210及び幅212を有する。シールリング202は、幅狭の端部205から幅広の端部206までシールリング202の全高210にわたって燃料噴射器11と接触している。シールリング202の脚部208、209の間には、角度αが形成されている。
【0060】
図5には、第4の実施形態によるシールリング302が示されている。シールリング302は、幅狭の端部305が燃料噴射器11の噴射器先端4に向かって延在すると共に幅広の端部306が噴射器先端4から離れる方向に延在している非対称形の断面を有する。幅広の端部306には窪み307が存在しており、これにより、2つの脚部308、309がその間に空間を挟んだ状態で形成される。
【0061】
脚部308、309は、幅狭の端部305から幅広の端部306に向かって広がるように構成された状態で延在している。第1の脚部309は、ほぼ直線状の内周面332を有し、これは燃料噴射器11の外周面に接触している。第1の脚部309は、シールリング2の幅狭の端部305と幅広の端部306との間で、少なくとも部分的にほぼ直線状の延在方向を有する。
【0062】
第2の脚部308は、噴射器筐体部の内周面に対して半径方向で当接するように構成された自由端331を含む。第2の脚部308は、幅狭の端部305において、前記複数の脚部のうち第1の脚部309の第1の端部から突出している。脚部308、309は、わずかに湾曲した領域でつながっている。
シールリングは、高さ310及び幅312を有する。シールリング302の脚部308、309の間には、角度αが形成されている。
【0063】
更に、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することで、特許請求される本発明を実施する当業者によって、開示する例示的な実施形態の変形が理解され実施され得る。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という言葉は他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は複数を除外するものではない。相互に異なる従属クレームにおいて特定の大きさ(measures)が列挙されている事実は、有利な点を主張するためにこれらの大きさの組み合わせが使用できないということを示すわけではない。