特許第6402203号(P6402203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6402203自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6402203
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/18 20060101AFI20181001BHJP
   F16H 59/08 20060101ALI20181001BHJP
   F16H 61/28 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   F16H61/18
   F16H59/08
   F16H61/28
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-573248(P2016-573248)
(86)(22)【出願日】2016年1月12日
(86)【国際出願番号】JP2016050635
(87)【国際公開番号】WO2016125538
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2017年8月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-21477(P2015-21477)
(32)【優先日】2015年2月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 定
(72)【発明者】
【氏名】山本 英晴
【審査官】 岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−049937(JP,A)
【文献】 特開2001−304396(JP,A)
【文献】 特開平05−223156(JP,A)
【文献】 特開2004−251327(JP,A)
【文献】 特開平11−287319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/18
F16H 59/08
F16H 61/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レンジ及び非走行レンジを含む自動変速機のレンジの選択に用いられる操作部と、
前記操作部による選択レンジを検出する検出部と、
油圧供給源と前記走行レンジの選択時に前記油圧供給源からの油圧の供給が可能になる複数の前進摩擦要素とを接続する油路に設けられ、前記操作部の動作に応じて駆動するバルブと、
前記油路に設けられ、前記複数の前進摩擦要素への供給油圧を制御する油圧制御部と、
が設けられた自動変速機の制御装置であって、
前記検出部が前記走行レンジを検出した場合に、前記複数の前進摩擦要素に油圧を供給するように前記油圧制御部を制御する制御部と、
前記検出部が前記走行レンジを検出した場合に判定を行う判定部であって、
前記複数の前進摩擦要素のうち全ての摩擦要素の作動が検出されないときに、前記操作部の操作位置が前記走行レンジに応じた位置と前記非走行レンジに応じた位置との中間位置にあると判定し、
前記複数の前進摩擦要素のうち一部の摩擦要素の作動が検出されないときに、前記油圧制御部に異常があると判定する判定部と、
を備える自動変速機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動変速機の制御装置であって、
前記制御部は、前記検出部が前記走行レンジを検出した場合に、前記複数の前進摩擦要素のうちいずれかの摩擦要素である一の摩擦要素に油圧を供給し、前記一の摩擦要素の作動検出が行われてから、前記複数の前進摩擦要素のうち前記一の摩擦要素以外の他の摩擦要素に油圧を供給するように前記油圧制御部を制御する、
自動変速機の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動変速機の制御装置であって、
前記制御部は、前記検出部が前記走行レンジを検出した場合に、前記複数の前進摩擦要素のうちいずれかの摩擦要素である一の摩擦要素に油圧を供給するとともに、前記一の摩擦要素の作動検出が行われる前に、前記複数の前進摩擦要素のうち前記一の摩擦要素以外の他の摩擦要素に油圧を供給するように前記油圧制御部を制御する、
自動変速機の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動変速機の制御装置であって、
前記制御部は、前記一部の摩擦要素の作動が検出されない場合に、前記複数の前進摩擦要素のうち前記一部の摩擦要素以外の他の摩擦要素で発進を行うように前記油圧制御部を制御する、
自動変速機の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動変速機の制御装置であって、
前記制御部は、所定期間が経過するまでの間、前記操作部の操作位置が前記中間位置にあると前記判定部が継続して判定した場合に、前記複数の前進摩擦要素のうちいずれかの摩擦要素である一の摩擦要素から前記一の摩擦要素以外の他の摩擦要素に発進で用いる摩擦要素を変更する、
自動変速機の制御装置。
【請求項6】
走行レンジ及び非走行レンジを含む自動変速機のレンジの選択に用いられる操作部と、
前記操作部による選択レンジを検出する検出部と、
油圧供給源と前記走行レンジの選択時に前記油圧供給源からの油圧の供給が可能になる複数の前進摩擦要素とを接続する油路に設けられ、前記操作部の動作に応じて駆動するバルブと、
前記油路に設けられ、前記複数の前進摩擦要素への供給油圧を制御する油圧制御部と、
が設けられた自動変速機の制御方法であって、
前記検出部が前記走行レンジを検出した場合に、前記複数の前進摩擦要素に油圧を供給するように前記油圧制御部を制御し、
前記検出部が前記走行レンジを検出した場合に、前記複数の前進摩擦要素のうち全ての摩擦要素の作動が検出されないときに、前記操作部の操作位置が前記走行レンジに応じた位置と前記非走行レンジに応じた位置との中間位置にあると判定し、
前記検出部が前記走行レンジを検出した場合に、前記複数の前進摩擦要素のうち一部の摩擦要素の作動が検出されないときに、前記油圧制御部に異常があると判定する、
自動変速機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧供給源と複数の前進摩擦要素とを接続する油路に、セレクトレバーの動作に応じて駆動するマニュアル弁を設けた自動変速機が知られている。このような自動変速機では、選択レンジを検出するインヒビタスイッチからの信号が走行レンジの信号であっても、マニュアル弁の駆動位置が走行レンジ位置になっていないというレンジの不一致(以下、疑似Dと称す)が生じる場合がある。
【0003】
この場合、マニュアル弁の駆動位置が走行レンジ位置になっていないので、前進するために締結が必要な摩擦要素には、油圧が供給されない。ところがこの場合でも、インヒビタスイッチからの信号に基づき、走行レンジに応じた油圧制御は実施される。結果、摩擦要素を締結させるための油圧指令値と実油圧との間に差が生じてしまう。
【0004】
油圧指令値と実油圧との間に差が生じた状態で、マニュアル弁が適切な位置、すなわち走行レンジ位置に駆動されると、実油圧は油圧指令値になるようにして急激に上昇する。結果、摩擦要素が急激に締結されることで、運転者に不快なショックを与えてしまうことになる。
【0005】
JP2009−221986Aには、疑似D状態が所定時間継続された場合に、変速機に入力されるエンジンの出力を制限する技術が開示されている。
【発明の概要】
【0006】
走行レンジ検出時に摩擦要素に締結遅れが生じる要因としては、擬似D状態以外に、摩擦要素への供給油圧を制御するソレノイドバルブ等の油圧制御部の異常も考えられる。
【0007】
ところが、疑似D状態は、その後セレクトレバーが操作されることで、マニュアル弁が適切な位置に駆動されるまでは解消されない。換言すれば、疑似D状態が解消されるためには、セレクトレバーの操作を待たなければならない。
【0008】
このような特徴に着目した場合、走行レンジ検出時に摩擦要素が締結されない状態が十分に経過したところで、疑似D状態ではないとみなし、油圧制御部の異常を検出することになる。結果、判定時間の長期化を招くことで、車両のスムースな発進が妨げられる虞がある。
【0009】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、走行レンジ検出時に摩擦要素の締結遅れの要因を早期に検出することが可能な自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明のある態様の自動変速機の制御装置は、走行レンジ及び非走行レンジを含む自動変速機のレンジの選択に用いられる操作部と、前記操作部による選択レンジを検出する検出部と、油圧供給源と前記走行レンジの選択時に前記油圧供給源からの油圧の供給が可能になる複数の前進摩擦要素とを接続する油路に設けられ、前記操作部の動作に応じて駆動するバルブと、前記油路に設けられ、前記複数の前進摩擦要素への供給油圧を制御する油圧制御部と、を備える。また、この態様の自動変速機の制御装置は、前記検出部が前記走行レンジを検出した場合に、前記複数の前進摩擦要素に油圧を供給するように前記油圧制御部を制御する制御部と、前記検出部が前記走行レンジを検出した場合に判定を行う判定部と、を備える。判定部は、前記複数の前進摩擦要素のうち全ての摩擦要素の作動が検出されないときに、前記操作部の操作位置が前記走行レンジに応じた位置と前記非走行レンジに応じた位置との中間位置にあると判定する。また、判定部は、前記複数の前進摩擦要素のうち一部の摩擦要素の作動が検出されないときに、前記油圧制御部に異常があると判定する。
【0011】
本発明の別の態様によれば、走行レンジ及び非走行レンジを含む自動変速機のレンジの選択に用いられる操作部と、前記操作部による選択レンジを検出する検出部と、油圧供給源と前記走行レンジの選択時に前記油圧供給源からの油圧の供給が可能になる複数の前進摩擦要素とを接続する油路に設けられ、前記操作部の動作に応じて駆動するバルブと、前記油路に設けられ、前記複数の前進摩擦要素への供給油圧を制御する油圧制御部と、が設けられた自動変速機の制御方法であって、前記検出部が前記走行レンジを検出した場合に、前記複数の前進摩擦要素に油圧を供給するように前記油圧制御部を制御し、前記検出部が前記走行レンジを検出した場合に、前記複数の前進摩擦要素のうち全ての摩擦要素の作動が検出されないときに、前記操作部の操作位置が前記走行レンジに応じた位置と前記非走行レンジに応じた位置との中間位置にあると判定し、前記検出部が前記走行レンジを検出した場合に、前記複数の前進摩擦要素のうち一部の摩擦要素の作動が検出されないときに、前記油圧制御部に異常があると判定する、自動変速機の制御方法が提供される。
【0012】
これらの態様によれば、走行レンジ検出時に締結遅れの要因に応じて異なってくる複数の前進摩擦要素の作動状態に基づき判定を行うので、締結遅れの要因を早期に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態に係る自動変速機の制御装置を含む車両の要部を示す図である。
図2図2は、第1実施形態で行う制御の一例をフローチャートで示す図である。
図3図3は、疑似D対応制御の第1の説明図である。
図4図4は、疑似D対応制御の第2の説明図である。
図5図5は、検出レンジ位置とバルブ駆動位置との関係を示す図である。
図6図6は、第1のタイミングチャートを示す図である。
図7図7は、第2のタイミングチャートを示す図である。
図8図8は、第2実施形態で行う制御の一例をフローチャートで示す図である。
図9図9は、第3のタイミングチャートを示す図である。
図10図10は、自動変速機の制御装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る自動変速機の制御装置100(以下、単に制御装置100と称す)を含む車両の要部を示す図である。制御装置100は、自動変速機10とともに車両に搭載される。
【0016】
自動変速機10は、オイルポンプ11と、油路12と、第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14と、第1のソレノイドバルブ15及び第2のソレノイドバルブ16と、を備える。本実施形態において、自動変速機10はCVT、すなわち無段変速機である。以下では、ソレノイドバルブをSOLと称す。
【0017】
油路12は、オイルポンプ11と、第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14と、を接続する。油路12は、第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14に分岐して接続する。第1の分岐油路12aは、油路12のうち第1の摩擦要素13に分岐して接続する部分の油路であり、第2の分岐油路12bは、油路12のうち第2の摩擦要素14に分岐して接続する部分の油路である。
【0018】
第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14はともに、自動変速機10の走行レンジに対応する前進摩擦要素であり、油圧に応じて作動する。第1の摩擦要素13は、正常時に発進で用いる摩擦要素であり、第2の摩擦要素14は、第1の摩擦要素13よりも高いギヤ比で回転を伝達する摩擦要素である。本実施形態において、第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14は、自動変速機10の無段変速機構に対し、動力伝達経路において直列に設けられる有段の副変速機構を構成する。
【0019】
第1のSOL15及び第2のSOL16は、油路12に設けられる。具体的には、第1のSOL15は第1の分岐油路12aに設けられ、第2のSOL16は第2の分岐油路12bに設けられる。第1のSOL15及び第2のSOL16は、オイルポンプ11から第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14に供給される油圧を制御する。具体的には、第1のSOL15は、第1の摩擦要素13に供給される油圧を制御し、第2のSOL16は、第2の摩擦要素14に供給される油圧を制御する。第1のSOL15及び第2のSOL16は、自動変速機10及び制御装置100に共通の構成となっている。
【0020】
制御装置100は、第1のSOL15及び第2のSOL16のほか、セレクトレバー1と、インヒビタスイッチ2と、マニュアル弁3と、コントローラ50と、を備える。
【0021】
セレクトレバー1は、自動変速機10のレンジの選択に用いられる。自動変速機10のレンジは、走行レンジ及び非走行レンジを含む。走行レンジはDレンジすなわちドライブレンジであり、非走行レンジはPレンジすなわちパーキングレンジやNレンジすなわちニュートラルレンジである。自動変速機10のレンジはこのほかRレンジすなわちリバースレンジを含む。
【0022】
インヒビタスイッチ2は、セレクトレバー1による選択レンジを検出する。インヒビタスイッチ2は、セレクトレバー1の位置を検出することで選択レンジを検出し、検出した選択レンジに応じた信号を出力する。
【0023】
マニュアル弁3は、セレクトレバー1の動作に応じて駆動する。マニュアル弁3には、セレクトレバー1がリンク機構を介して接続される。マニュアル弁3は、油路12に設けられる。マニュアル弁3は、油路12において第1のSOL15及び第2のSOL16の上流に設けられる。
【0024】
マニュアル弁3は、選択レンジが走行レンジである場合に開弁し、選択レンジが非走行レンジである場合に閉弁する。マニュアル弁3には、オイルポンプ11から図示しない調圧弁を介して油圧が供給される。
【0025】
コントローラ50は、電子制御装置であり、コントローラ50には以下に示すような信号が入力される。例えば、コントローラ50には、インヒビタスイッチ2からの信号が入力される。また、第1の摩擦要素13への供給油圧を検出するための第1の油圧センサ21からの信号や、第2の摩擦要素14への供給油圧を検出するための第2の油圧センサ22からの信号が入力される。
【0026】
第1の摩擦要素13への供給油圧は、第1のSOL15によって制御され、第2の摩擦要素14への供給油圧は、第2のSOL16によって制御される。このため、第1の油圧センサ21は、第1の分岐油路12aにおいて第1のSOL15及び第1の摩擦要素13間に設けられる。また、第2の油圧センサ22は、第2の分岐油路12bにおいて第2のSOL16及び第2の摩擦要素14間に設けられる。
【0027】
コントローラ50にはこのほか、第1の摩擦要素13の入力側回転を検出するための第1の入力側回転センサ23、及び第1の摩擦要素13の出力側回転を検出するための第1の出力側回転センサ24からの信号が入力される。また、第2の摩擦要素14の入力側回転を検出するための第2の入力側回転センサ25、及び第2の摩擦要素14の出力側回転を検出するための第2の出力側回転センサ26からの信号が入力される。第1の入力側回転センサ23と第2の入力側回転センサ25とは、共通の回転センサで構成されてもよい。第1の出力側回転センサ24と第2の出力側回転センサ26とについても同様である。
【0028】
コントローラ50は、これらの信号に基づき、次に説明する制御を行うことで、走行レンジ検出時に締結すべき第1の摩擦要素13に締結遅れが生じた場合に、その要因を検出する。
【0029】
図2は、本実施形態で行う制御の一例をフローチャートで示す図である。ステップS1で、コントローラ50は、インヒビタスイッチ2が走行レンジを検出したか否かを判定する。インヒビタスイッチ2が走行レンジを検出したか否かは、インヒビタスイッチ2の出力に基づき判定することができる。ステップS1で否定判定であれば、本フローチャートの処理は一旦終了する。
【0030】
ステップS1で肯定判定であれば、コントローラ50は、ステップS2で第1の摩擦要素13に油圧を供給するように第1のSOL15を制御する。ステップS2で、コントローラ50は具体的には、第1の摩擦要素13への供給油圧を制御する第1の油圧制御を実行する。第1の油圧制御では、第1の摩擦要素13への供給油圧が、油圧指令値LB´になるように第1のSOL15を制御する。
【0031】
油圧指令値LB´は、第1の摩擦要素13への発進時の供給油圧の指令値が設定された第1の油圧指令値である。油圧指令値LB´は、実験等により第1の摩擦要素13での発進に適合した値に設定される。油圧指令値LB´は具体的には、無効ストロークを減少させるプリチャージ段階の指令値、同期を促進する締結進行段階の指令値、及び締結を完了させる締結段階の指令値で構成される。
【0032】
第1の油圧制御では、油圧指令値LB´を所定の手順に従ってプリチャージ段階の指令値、締結進行段階の指令値、及び締結段階の指令値に順次変更し、これにより第1のSOL15を制御する。ステップS2以降では、油圧指令値LB´を変更することで、第1のSOL15が制御される。
【0033】
ステップS3で、コントローラ50は、第1の摩擦要素13が作動したか否かを判定する。第1の摩擦要素13が作動したか否かは、第1の油圧センサ21からの信号に基づき、第1の摩擦要素13への供給油圧が上昇したか否かで判定することができる。ステップS3では、第1の摩擦要素13が作動したか否かを判定することで、第1の摩擦要素13の作動検出が行われる。
【0034】
ステップS3で肯定判定であれば、第1の摩擦要素13の作動が検出されたことになる。したがって、第1の摩擦要素13が正常であると判断することができる。この場合には、本フローチャートの処理を終了する。
【0035】
ステップS3で否定判定であれば、第1の摩擦要素13の作動が検出されなかったことになる。したがって、第1の摩擦要素13に締結遅れが発生していると判断することができる。この場合、処理はステップS4に進み、コントローラ50は、次に説明する疑似D対応制御を実行する。
【0036】
図3図4は、疑似D対応制御の説明図である。図3は、第1の摩擦要素13の締結遅れの要因が疑似D状態である場合を示す。図4は、第1の摩擦要素13の締結遅れの要因が第1のSOL15の異常である場合を示す。
【0037】
レバー操作位置L1は、セレクトレバー1の操作位置を示す。検出位置L2は、インヒビタスイッチ2の検出位置を示す。バルブ駆動位置L3は、マニュアル弁3の駆動位置を示す。換算入力側回転速度Einは、第1の摩擦要素13の入力側回転速度を出力側回転速度相当の回転速度にギヤ比換算した回転速度を示す。出力側回転速度Eoutは、第1の摩擦要素13の出力側回転速度を示す。実油圧LBは、第1の摩擦要素13への供給油圧の実油圧を示す。
【0038】
図3図4において、(a)、(b)はともに、実油圧LB及び油圧指令値LB´の変化を示す。(a)は疑似D対応制御を行わない場合の変化を示し、(b)は疑似D対応制御を行う場合の変化を示す。図3図4において、レバー操作位置L1、検出位置L2及びバルブ駆動位置L3は、レンジ位置すなわちレンジに応じた位置で示される。
【0039】
まず、図3について説明する。運転者は、セレクトレバー1をNレンジ位置からDレンジ位置に向かって操作するが、レバー操作位置L1は、タイミングT11でNレンジ位置とDレンジ位置との中間位置Mになる。
【0040】
このとき、バルブ駆動位置L3はDレンジ位置にはならず、Nレンジ位置のままである。換言すれば、マニュアル弁3の開弁位置にはならず、閉弁位置のままである。このため、このときにはマニュアル弁3は閉弁したままである。
【0041】
ところがこの場合でも、検出位置L2はNレンジ位置からDレンジ位置に変化する。これは、安全を考慮して検出位置L2とバルブ駆動位置L3との関係を次のように設定しているためである。
【0042】
図5は、検出位置L2とバルブ駆動位置L3との関係を示す図である。検出位置L2とバルブ駆動位置L3とは、検出位置L2がNレンジ位置である場合に、バルブ駆動位置L3が開弁位置になることがないように設定される。
【0043】
これにより、検出位置L2とバルブ駆動位置L3とのばらつきによって、Nレンジ選択時に車両が発進する事態が発生することを防止することができる。そして、このように安全を考慮する代わりに、セレクトレバー1の操作次第では、検出位置L2がDレンジ位置であってもバルブ駆動位置L3が閉弁位置になり、疑似D状態が発生する。
【0044】
図3に戻り、タイミングT11で検出位置L2がDレンジ位置になると、第1の油圧制御が開始され、油圧指令値LB´が上昇する。油圧指令値LB´は、第1の油圧制御によって、タイミングT11及びタイミングT12間でプリチャージ段階の油圧指令値に、タイミングT12及びタイミングT13間で締結進行段階の油圧指令値に、タイミングT13から締結段階の油圧指令値にそれぞれ設定される。
【0045】
正常時には、実油圧はタイミングT11以降、油圧指令値LB´に応じて点線で示すように変化する。また、正常時には、換算入力回転速度EinはタイミングT12以降、点線で示すように変化する。
【0046】
ところが、(a)、(b)の場合ともに、実油圧LBは、油圧指令値LB´に応じて上昇していない。したがって、第1の摩擦要素13は作動していない。これは、マニュアル弁3が閉弁しているためである。第1の摩擦要素13が作動していないことは、換算入力回転速度EinがタイミングT12から出力回転速度Eoutに同期しようとしないことからもわかる。
【0047】
疑似D対応制御を行わない(a)の場合、油圧指令値LB´は、タイミングT13以降そのままである。そして、このままの状態でレバー操作位置L1及びバルブ駆動位置L3が、運転者のレバー操作によってタイミングT15でDレンジ位置になる。結果、換算入力側回転速度Einが実線で示すように変化し、点線で示す正常時よりも急な速度で出力側回転速度Eoutに同期される。すなわち、第1の摩擦要素13が急激に締結される。
【0048】
疑似D対応制御を行う(b)の場合、タイミングT14で疑似D対応制御が開始される。疑似D対応制御では、油圧指令値LB´を締結段階の油圧指令値よりも低下させることで、疑似Dに対応する。疑似D対応制御では具体的には、油圧指令値LB´を所定値まで低下させる。当該所定値は、実験等に基づき予め設定することができる。
【0049】
これにより、換算入力側回転速度EinはタイミングT15から破線で示すように変化し、点線で示す正常時よりも緩やかな速度で出力側回転速度Eoutに同期される。すなわち、第1の摩擦要素13の急激な締結が抑制される。
【0050】
図4の場合、レバー操作位置L1は、Nレンジ位置からDレンジ位置に正常に切り替えられる。そしてこれに応じて、検出位置L2がタイミングT11でDレンジ位置になる。結果、図3の場合と同様、第1の油圧制御が開始される。
【0051】
(a)、(b)の場合ともに、実油圧LBは、油圧指令値LB´に応じて上昇していない。したがって、第1の摩擦要素13は作動していない。但し、この例では、第1の摩擦要素13の締結遅れの要因は、第1のSOL15の異常であり、疑似D状態ではないので、タイミングT14で疑似D対応制御を開始しても、第1の摩擦要素13の締結遅れには対処できない。
【0052】
このため、第1の摩擦要素13の締結遅れに適切に対処するためにも、その要因を早期に検出することが必要となる。以下、このためにコントローラ50が行う制御について図2を用いてさらに説明する。
【0053】
ステップS5で、コントローラ50は、第2の摩擦要素14に油圧を供給するように第2のSOL16を制御する。ステップS5で、コントローラ50は具体的には、第2の摩擦要素14への供給油圧を制御する第2の油圧制御を実行する。第2の油圧制御では、第2の摩擦要素14への供給油圧が、油圧指令値HC´になるように第2のSOL16を制御する。
【0054】
油圧指令値HC´は、第2の摩擦要素14への発進時の供給油圧の指令値が設定された第2の油圧指令値である。油圧指令値HC´は、実験等により第2の摩擦要素14での発進に適合した値に設定される。油圧指令値HC´は、油圧指令値LB´と同様、プリチャージ段階の指令値、締結進行段階の指令値、及び締結段階の指令値で構成される。
【0055】
ステップS5では、第2の油圧制御として、油圧指令値HC´にプリチャージ段階の指令値を適用した油圧制御が実行される。言い換えれば、第2の油圧制御としてプリチャージ段階までの油圧制御が実行される。ステップS5以降では、油圧指令値HC´を変更することで、第2のSOL16が制御される。
【0056】
ステップS6で、コントローラ50は、第2の摩擦要素14が作動したか否かを判定する。第2の摩擦要素14が作動したか否かは、第2の油圧センサ22からの信号に基づき、第2の摩擦要素14への供給油圧が上昇したか否かで判定することができる。ステップS6では、第2の摩擦要素14が作動したか否かを判定することで、第2の摩擦要素14の作動検出が行われる。
【0057】
ステップS6で否定判定であれば、第2の摩擦要素14の作動が検出されなかったことになる。この場合、処理はステップS7に進み、コントローラ50は、疑似D状態であると判定する。これにより、レバー操作位置L1が中間位置Mにあると判定される。このとき、コントローラ50は具体的には、レバー操作位置L1が中間位置Mにある結果、バルブ駆動位置L3がNレンジ位置、すなわち非走行レンジ位置にあると判定する。
【0058】
ステップS8で、コントローラ50は、所定期間が経過したか否かを判定する。所定期間は、ステップS9やステップS10の処理を実行するにあたっての猶予期間であり、実験等に基づき予め設定することができる。ステップS8で否定判定であれば、処理はステップS2に戻る。
【0059】
ステップS8で肯定判定であれば、所定期間が経過するまでの間、疑似D状態であると継続して判定したことになる。この場合、コントローラ50は、ステップS9で第2の油圧制御を中止する。具体的には、油圧指令値HC´をゼロにする。また、ステップS10で操作要求制御を行う。操作要求制御は、セレクトレバー1の操作を促すための制御であり、警告灯の点灯などによって行うことができる。ステップS10の後には、本フローチャートの処理を終了する。
【0060】
ステップS6で肯定判定であれば、第2の摩擦要素14の作動が検出されたことになる。この場合、処理はステップS11に進み、コントローラ50は、第1のSOL15に異常があると判定する。また、コントローラ50は、ステップS12で疑似D対応制御を中止する。具体的にはコントローラ50は、油圧指令値LB´をゼロにする。
【0061】
ステップS13で、コントローラ50は、第2の摩擦要素14で発進を行うように第2のSOL16を制御する。具体的にはコントローラ50は、油圧指令値HC´を締結進行段階の油圧指令値、更には締結段階の油圧指令値に変更する。すなわち、コントローラ50は、第2の油圧制御を締結段階まで実行する。結果、第2の摩擦要素14が締結される。ステップS13の後には、本フローチャートの処理を終了する。
【0062】
ステップS3で、コントローラ50は、第1の摩擦要素13の入力側回転と出力側回転とが同期したか否かで、第1の摩擦要素13が作動したか否かを判定してもよい。すなわち、第1の摩擦要素13が締結したか否かで、第1の摩擦要素13が作動したか否かを判定してもよい。第1の摩擦要素13が締結したか否かは、第1の入力側回転センサ23及び第1の出力側回転センサ24からの信号に基づき判定することができる。
【0063】
ステップS4で、コントローラ50は、疑似D対応制御とともに自動変速機10への入力トルクの制限を行ってもよい。これにより、疑似D状態の解消によって生じ得るショックをさらに緩和することができる。自動変速機10への入力トルクの制限は、入力トルクを発生させる動力源であるエンジンを制御することで行うことができ、疑似D対応制御の中止に応じて解除することができる。
【0064】
ステップS4で、コントローラ50は、疑似D対応制御を実行する代わりに、第1の油圧制御を中止してもよい。この場合、第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14に同時に油圧が作用することで、自動変速機10がインターロック状態になることを回避することができる。したがって、第2の入力側回転センサ25及び第2の出力側回転センサ26からの信号に基づき、第2の摩擦要素14が締結したか否かを判定することで、第2の摩擦要素14が作動したか否かを判定することもできる。
【0065】
ステップS9で、コントローラ50は、第2の油圧制御を中止する代わりに、第1の摩擦要素13から第2の摩擦要素14に発進制御を行う摩擦要素を変更してもよい。このような摩擦要素の変更は、ステップS12及びステップS13の処理と同様の処理によって行うことができる。この場合、コントローラ50は、ステップS10で操作要求制御を行わなくてもよい。
【0066】
図6は、第1のタイミングチャートを示す図である。図6では、コントローラ50の制御に応じた各種パラメータの変化であって、第1の摩擦要素13の締結遅れ要因が疑似D状態である場合の変化の一例を示す。第1のタイミングチャートは、図2に示すフローチャートのステップS6で否定判定される場合に対応する。図6では、図3図4と同様のパラメータに加えて、さらに実油圧HC及び油圧指令値HC´を示す。実油圧HCは、第2の摩擦要素14への供給油圧の実油圧を示す。
【0067】
タイミングT11からタイミングT13までの各種パラメータの変化は、図3の場合と同様である。このため、第1の油圧制御によって油圧指令値LB´は変化するが、実油圧LBや換算入力回転速度Einは変化しない。結果、第1の摩擦要素13は作動していないと判定される。
【0068】
タイミングT13後のタイミングT21では、疑似D対応制御が開始される。タイミングT21では、第2の油圧制御も開始される。結果、油圧指令値HC´が上昇する。このときの油圧指令値HC´には、プリチャージ段階の油圧指令値が適用される。
【0069】
実油圧HCは、油圧指令値HC´に応じて上昇していない。このため、第2の摩擦要素14は作動していないと判定される。タイミングT22では、第2の摩擦要素14が作動していないと判定されてから所定期間が経過する。結果、第2の油圧制御が中止され、油圧指令値HC´がゼロになる。タイミングT22では、操作要求制御も実行される。
【0070】
その後、セレクトレバー1の操作によって、レバー操作位置L1とバルブ駆動位置L3とはタイミングT23でDレンジ位置になる。結果、実油圧LBが上昇するとともに、換算入力側回転速度Einが出力側回転速度Eoutに同期される。
【0071】
図7は、第2のタイミングチャートを示す図である。図7では、コントローラ50の制御に応じた各種パラメータの変化であって、第1の摩擦要素13の締結遅れ要因が第1のSOL15の異常である場合の変化の一例を示す。第2のタイミングチャートは、図2に示すフローチャートのステップS6で肯定判定される場合に対応する。
【0072】
タイミングT11からタイミングT13までの各種パラメータの変化は、図4の場合と同様である。このため、第1の油圧制御によって油圧指令値LB´は変化するが、実油圧LBや換算入力回転速度Einは変化しない。結果、第1の摩擦要素13は作動していないと判定される。
【0073】
タイミングT21では、図6の場合と同様、疑似D対応制御と第2の油圧制御とが実行される。但しこの例では、第2のSOL16が正常であるため、第2の油圧制御によって油圧指令値HC´が上昇すると、これに応じて実油圧HCも上昇する。結果、第2の摩擦要素14が作動したと判定される。したがって、第1の摩擦要素13に異常があると判定される。
【0074】
タイミングT21後のタイミングT31では、上記判定結果に応じて、疑似D対応制御が中止される。タイミングT31からは、第2の油圧制御が締結段階まで実行される。結果、油圧指令値HC´は締結進行段階の油圧指令値を経て締結段階の油圧指令値になり、実油圧HCは油圧指令値HC´に応じて上昇する。
【0075】
次に、本実施形態の制御装置100の主な作用効果について説明する。
【0076】
制御装置100は、セレクトレバー1と、インヒビタスイッチ2と、マニュアル弁3と、第1のSOL15及び第2のSOL16と、コントローラ50と、を備える。
【0077】
コントローラ50は、インヒビタスイッチ2がDレンジを検出した場合に、第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14に油圧を供給するように第1のSOL15及び第2のSOL16を制御する。また、インヒビタスイッチ2がDレンジを検出した場合に次のように判定を行う。すなわち、第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14のうちすべての摩擦要素の作動が検出されない場合に、レバー操作位置L1が中間位置Mにあると判定する。また、第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14のうち一部の摩擦要素である第1の摩擦要素13の作動が検出されない場合に、第1のSOL15に異常があると判定する。
【0078】
このような構成の制御装置100によれば、走行レンジ検出時に締結遅れの要因に応じて異なってくる第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14の作動状態に基づき判定を行うので、締結遅れの要因を早期に検出することができる。
【0079】
コントローラ50は、インヒビタスイッチ2がDレンジを検出した場合に、第1の摩擦要素13に油圧を供給し、第1の摩擦要素13の作動検出が行われてから、第2の摩擦要素14に油圧を供給するように第1のSOL15及び第2のSOL16を制御する。
【0080】
これにより、第1の摩擦要素13の作動検出が行われるまでの間に、自動変速機10がインターロックされることがないので、第1の摩擦要素13に締結遅れがない場合に、第1の摩擦要素13を用いたスムースな発進を確保することができる。
【0081】
コントローラ50は、第1の摩擦要素13の作動が検出されない場合に、第2の摩擦要素14で発進を行うように第1のSOL15及び第2のSOL16を制御する。
【0082】
これにより、第1のSOL15に異常がある場合でも、発進遅れ等の違和感を運転者に与えることを抑制しつつ発進を行うことができるので、運転性の悪化を抑制することができる。
【0083】
コントローラ50は、所定期間が経過するまでの間、疑似D状態であると継続して判定した場合に、第1の摩擦要素13から第2の摩擦要素14に発進制御を行う摩擦要素を変更してもよい。
【0084】
この場合、疑似D状態が解消された際に正常時とは異なるギヤ比、具体的には正常時よりも高いギヤ比で発進が行われるようにすることができる。そして、このようなイレギュラーな発進によってセレクトレバー1の操作が不適切であったことを運転者に知らせることで、それ以降、操作が不適切にならないよう運転者に注意を促すことができる。
【0085】
(第2実施形態)
【0086】
本実施形態の制御装置100は、コントローラ50が以下で説明するように構成される点以外、第1実施形態の制御装置100と実質的に同一である。
【0087】
図8は、本実施形態で行う制御の一例をフローチャートで示す図である。本フローチャートは、以下で説明する点以外、図2に示すフローチャートと同じである。
【0088】
本実施形態において、コントローラ50は、ステップS2に続きステップS5の処理を行うことで、ステップS3より前にステップS5の処理を行う。これにより、インヒビタスイッチ2がDレンジを検出した場合に、第1の摩擦要素13に油圧を供給するとともに、第1の摩擦要素13の作動検出が行われる前に、第2の摩擦要素14に油圧を供給するように第1のSOL15及び第2のSOL16が制御される。ステップS5の処理はステップS2の処理と同時に行われてもよい。
【0089】
本実施形態ではさらに、ステップS8で肯定判定であった場合、コントローラ50は第2の油圧制御を中止せず、処理はステップS10に進んでさらにステップS2に戻る。そしてその後、ステップS3で肯定判定であった場合に、ステップS9の処理が行われる。
【0090】
したがって、本実施形態でコントローラ50は、ステップS7で疑似D状態であると判定した場合であっても、第1の摩擦要素13の作動が検出されるまでの間、第2の油圧制御を継続する。ステップS9の後には、本フローチャートの処理を終了する。
【0091】
図9は、第3のタイミングチャートを示す図である。図9では、コントローラ50の制御に応じた各種パラメータの変化であって、第1の摩擦要素13の締結遅れ要因が疑似D状態である場合の変化の一例を示す。第3のタイミングチャートは、図8に示すフローチャートのステップS6で否定判定される場合に対応する。
【0092】
第1の油圧制御は、図6図7の場合と同様、タイミングT11で開始される。第2の油圧制御は、タイミングT11後、タイミングT12前のタイミングT11´で開始される。疑似D状態であるため、実油圧LB及び実油圧HCは、第1の油圧制御及び第2の油圧制御によって上昇しない。第1の摩擦要素13の作動検出は、タイミングT11´後、タイミングT21前に行われ、第1の摩擦要素13が作動していないと判定される。結果、タイミングT21で、疑似D対応制御が実行される。
【0093】
実油圧HCは、油圧指令値HC´に応じて上昇していない。このため、第2の摩擦要素14は作動していないと判定され、疑似D状態であると判定される。そして、判定から所定期間経過後のタイミングT22で操作要求制御が実行され、タイミングT23でレバー操作位置L1とバルブ駆動位置L3とがDレンジ位置になる。
【0094】
タイミングT23からは、実油圧LBが上昇するとともに、換算入力側回転速度Einが出力側回転速度Eoutに同期される。また、実油圧HCも上昇するが、第1の摩擦要素13が作動したと判定される結果、タイミングT23後のタイミングT41で第2の油圧制御が中止され、油圧指令値HC´がゼロになる。結果、これに応じて実油圧HCもゼロになる。
【0095】
次に本実施形態の制御装置100の主な作用効果について説明する。
【0096】
本実施形態の制御装置100では、コントローラ50は、インヒビタスイッチ2がDレンジを検出した場合に、第1の摩擦要素13に油圧を供給するとともに、第1の摩擦要素13の作動検出が行われる前に、第2の摩擦要素14に油圧を供給するように第1のSOL15及び第2のSOL16を制御する。
【0097】
このような構成の制御装置100によれば、第1の摩擦要素13の作動検出を待たずに第2の摩擦要素14への油圧供給を図ることで、その分、早期に第2の摩擦要素14の作動検出を行うことができる。したがって、その分、早期に第1の摩擦要素13の締結遅れの要因を検出することが可能になる。
【0098】
また、このような構成の制御装置100によれば、正常時に第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14に同時に油圧を作用させることで、自動変速機10をインターロックさせることができる。このため、登坂路での発進時に車両の後退を防止することができる。すなわち、登坂路での発進安全性を高めることができる。
【0099】
コントローラ50は、第1実施形態の場合と同様、所定期間が経過するまでの間、疑似D状態であると継続して判定した場合に、第1の摩擦要素13から第2の摩擦要素14に発進制御を行う摩擦要素を変更してもよい。これにより、第1実施形態で前述したように、操作が不適切にならないよう運転者に注意を促すことができる。
【0100】
このような摩擦要素の変更は、ステップS8の肯定判定に続き、ステップS12及びステップS13の処理と同様の処理を行うことでて行うことができる。この場合、ステップS10で操作要求制御を行わなくてもよい。この場合、ステップS13の処理と同様の処理を行った後に本フローチャートの処理を終了することができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0102】
上述した実施形態では、マニュアル弁3が、油路12において第1のSOL15及び第2のSOL16の上流に設けられた場合について説明した。しかしながら、マニュアル弁3は、図10に示すように、油路12において第1のSOL15及び第2のSOL16の下流に設けられてもよい。
【0103】
この場合、マニュアル弁3は第1の分岐油路12a及び第2の分岐油路12bに設けられる。また、第1の分岐油路12a及び第2の分岐油路12bを走行レンジ選択時に開放し、非走行レンジ選択時に遮断するように構成される。
【0104】
上述した実施形態では、第1の摩擦要素13が一の摩擦要素に相当する場合について説明した。これは、発進時の摩擦要素の締結遅れに対処する観点からは、上述した実施形態のように、第1の摩擦要素13の作動が検出されれば正常とみなし、第2の摩擦要素14の作動検出を省略することで、その分、発進性を向上させることができるためである。
【0105】
しかしながら、コントローラ50は、第1の摩擦要素13の作動が検出された場合に、第2の摩擦要素14の作動検出をさらに行ってもよい。また、一の摩擦要素として第2の摩擦要素14を適用してもよい。
【0106】
この場合でも、第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14の作動が検出されないときに、レバー操作位置L1が中間位置Mにあると判定することができる。また、第1の摩擦要素13及び第2の摩擦要素14のうちいずれかの摩擦要素の作動が検出されないときに、第1のSOL15及び第2のSOL16で構成される油圧制御部に異常があると判定することができる。
【0107】
本願は2015年2月5日に日本国特許庁に出願された特願2015−21477に基づく優先権を主張し、この出願のすべての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
図1
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