(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のはんだ組成物は、以下説明するフラックス組成物と、以下説明する(E)はんだ粉末とを含有するものである。
【0012】
[フラックス組成物]
まず、本発明に用いるフラックス組成物について説明する。本発明に用いるフラックス組成物は、はんだ組成物におけるはんだ粉末以外の成分であり、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤および(D)チクソ剤を含有するものである。
【0013】
[(A)成分]
本発明に用いる(A)ロジン系樹脂としては、ロジン類およびロジン系変性樹脂が挙げられる。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。ロジン系変性樹脂としては、ディールス・アルダー反応の反応成分となり得る前記ロジン類の不飽和有機酸変性樹脂((メタ)アクリル酸などの脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸などのα,β−不飽和カルボン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸などの芳香族環を有する不飽和カルボン酸などの変性樹脂)およびアビエチン酸の変性樹脂、並びに、これらの変性物を主成分とするものなどが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
前記(A)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、25質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。(A)成分の配合量が前記下限未満では、はんだ付ランドの銅箔面の酸化を防止してその表面に溶融はんだを濡れやすくする、いわゆるはんだ付性が低下し、はんだボールが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フラックス残さ量が多くなる傾向にある。
【0015】
[(B)成分]
本発明に用いる(B)活性剤としては、有機酸、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤、およびアミン系活性剤などが挙げられる。これらの活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、これらの中でも、環境対策の観点や、はんだ付け部分での腐食を抑制するという観点からは、有機酸、アミン系活性剤(ハロゲンを含有しないもの)を用いることが好ましく、有機酸を用いることがより好ましい。
【0016】
前記有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸などの他に、その他の有機酸が挙げられる。
モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、およびグリコール酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、およびジグリコール酸などが挙げられる。
その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、およびピコリン酸などが挙げられる。
【0017】
前記非解離型活性剤としては、ハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物が挙げられる。このハロゲン化化合物としては、塩素化物、臭素化物、フッ化物のように塩素、臭素、フッ素の各単独元素の共有結合による化合物でもよいが、塩素、臭素およびフッ素の任意の2つまたは全部のそれぞれの共有結合を有する化合物でもよい。これらの化合物は、水性溶媒に対する溶解性を向上させるために、例えばハロゲン化アルコールやハロゲン化カルボキシル化合物のように水酸基やカルボキシル基などの極性基を有することが好ましい。ハロゲン化アルコールとしては、例えば2,3−ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモブタンジオール、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、およびトリブロモネオペンチルアルコールなどの臭素化アルコール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、および1,4−ジクロロ−2−ブタノールなどの塩素化アルコール、3−フルオロカテコールなどのフッ素化アルコール、並びに、その他これらに類する化合物が挙げられる。ハロゲン化カルボキシル化合物としては、2−ヨード安息香酸、3−ヨード安息香酸、2−ヨードプロピオン酸、5−ヨードサリチル酸、および5−ヨードアントラニル酸などのヨウ化カルボキシル化合物、2−クロロ安息香酸、および3−クロロプロピオン酸などの塩化カルボキシル化合物、2,3−ジブロモプロピオン酸、2,3−ジブロモコハク酸、および2−ブロモ安息香酸などの臭素化カルボキシル化合物、並びに、その他これらに類する化合物が挙げられる。
【0018】
前記アミン系活性剤としては、アミン類(エチレンジアミンなどのポリアミンなど)、アミン塩類(トリメチロールアミン、シクロヘキシルアミン、およびジエチルアミンなどのアミンやアミノアルコールなどの有機酸塩や無機酸塩(塩酸、硫酸、および臭化水素酸など))、アミノ酸類(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびバリンなど)、アミド系化合物などが挙げられる。具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩(塩酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、およびセバシン酸塩など)、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、並びに、これらのアミンの臭化水素酸塩などが挙げられる。
【0019】
前記(B)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。(B)成分の配合量が前記下限未満では、はんだボールが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、フラックス組成物の絶縁性が低下する傾向にある。
【0020】
[(C)成分]
本発明に用いる(C)溶剤は、(C1)イソボルニルシクロヘキサノール、および、(C2)20℃における粘度が10mPa・s以下であり、かつ沸点が220℃以上245℃以下である溶剤を含有することが必要である。(C1)成分と(C2)成分とを組み合わせて用いることにより、はんだ組成物の印刷面積が広い場合にも、大きな径のボイドを十分に抑制できる。
また、ボイドの更なる抑制の観点から、(C2)成分の20℃における粘度は、8mPa・s以下であることがより好ましく、5mPa・s以下であることが更により好ましく、2mPa・s以下であることが特に好ましい。(C2)成分の20℃における粘度の下限は、特に限定されないが、例えば0.01mPa・s以上であってもよい。なお、溶剤の粘度は、ブルックフィールド式回転粘度計で測定できる。
さらに、ボイドの更なる抑制の観点から、(C2)成分の沸点は、225℃以上245℃以下であることがより好ましく、230℃以上243℃以下であることが特に好ましい。なお、本明細書において、沸点とは、1013hPaにおける沸点のことをいう。
【0021】
前記(C2)成分としては、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:242℃、粘度:1mPa・s)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点:231℃、粘度:7.4mPa・s)、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(沸点:229℃、粘度:7.6mPa・s)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:231℃、粘度:6.5mPa・s)およびジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点:220℃、粘度:2.8mPa・s)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、括弧内に記載の粘度は、20℃における粘度である。
【0022】
前記(C2)成分の前記(C1)成分に対する質量比((C2)/(C1))は、ボイドの更なる抑制の観点から、1/5以上5以下であることが好ましく、1/3以上3以下であることがより好ましく、1/2以上2以下であることが更により好ましく、1/2以上1以下であることが特に好ましい。
【0023】
前記(C)成分は、さらに、(C3)沸点が255℃以上300℃以下である溶剤を含有することが好ましい。(C3)成分により、はんだ組成物の粘度を調整しやすくなり、印刷性とボイドの抑制とのバランスがとり易くなる。
また、印刷性とボイドの抑制とのバランスの観点から、(C3)成分の沸点は、260℃以上290℃以下であることがより好ましく、265℃以上280℃以下であることが更により好ましく、270℃以上275℃以下であることが特に好ましい。
なお、(C3)成分の20℃における粘度は、特に限定されないが、例えば2mPa・s以上60mPa・s以下であってもよく、3mPa・s以上30mPa・s以下であってもよく、5mPa・s以上15mPa・s以下であってもよい。
一方で、(C3)成分の20℃における粘度は、10mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以下であることがより好ましい。粘度が前記上限以下であれば、複数回のリフローに起因するボイドの巨大化を抑制できる。
【0024】
前記(C3)成分としては、ベンジルグリコール(沸点:256℃、粘度:12.6mPa・s)、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(沸点:272℃、粘度:10.4mPa・s)、トリプロピレングリコール(沸点:265℃、粘度:57.2mPa・s)、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(沸点:302℃、粘度:19.3mPa・s)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(沸点:259℃、粘度:8.6mPa・s)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:275℃、粘度:3.8mPa・s)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点:274℃、粘度:8.4mPa・s)、マレイン酸ジブチル(沸点:281℃、粘度:5.0mPa・s)およびジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点:255℃、粘度:2.4mPa・s)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、括弧内に記載の粘度は、20℃における粘度である。これらの中でも、複数回のリフローに起因するボイドの巨大化を抑制するという観点から、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが特に好ましい。
【0025】
前記(C3)成分を用いる場合、前記(C3)成分の前記(C1)成分に対する質量比((C3)/(C1))は、印刷性とボイドの抑制とのバランスの観点から、1/5以上5以下であることが好ましく、1/3以上3以下であることがより好ましく、1/2以上2以下であることが更により好ましく1以上2以下であることが特に好ましい。
【0026】
前記(C)成分は、本発明の目的を達成できる範囲内において、前記(C1)成分、前記(C2)成分および前記(C3)成分以外の溶剤((C4)成分)を含有していてもよい。
前記(C4)成分としては、フェニルグリコール(沸点:245℃、粘度:30.5mPa・s)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(沸点:244℃、粘度:320mPa・s)およびジプロピレングリコールモノフェニルエーテル(沸点:243℃、粘度:23.2mPa・s)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、括弧内に記載の粘度は、20℃における粘度である。
【0027】
前記(C)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、25質量%以上55質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。溶剤の配合量が前記範囲内であれば、得られるはんだ組成物の粘度を適正な範囲に適宜調整できる。
【0028】
[(D)成分]
本発明に用いる(D)チクソ剤としては、硬化ひまし油、アミド類、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、およびガラスフリットなどが挙げられる。これらのチクソ剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
前記(D)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。配合量が前記下限未満では、チクソ性が得られず、ダレが生じやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、チクソ性が高すぎて、印刷不良となりやすい傾向にある。
【0030】
[他の成分]
本発明に用いるフラックス組成物には、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分の他に、必要に応じて、その他の添加剤、更には、その他の樹脂を加えることができる。その他の添加剤としては、消泡剤、酸化防止剤、改質剤、つや消し剤、および発泡剤などが挙げられる。その他の樹脂としては、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0031】
[はんだ組成物]
次に、本発明のはんだ組成物について説明する。本発明のはんだ組成物は、前記本発明のフラックス組成物と、以下説明する(E)はんだ粉末とを含有するものである。
前記フラックス組成物の配合量は、はんだ組成物100質量%に対して、5質量%以上35質量%以下であることが好ましく、7質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上12質量%以下であることが特に好ましい。フラックス組成物の配合量が5質量%未満の場合(はんだ粉末の配合量が95質量%を超える場合)には、バインダーとしてのフラックス組成物が足りないため、フラックス組成物とはんだ粉末とを混合しにくくなる傾向にあり、他方、フラックス組成物の配合量が35質量%を超える場合(はんだ粉末の配合量が65質量%未満の場合)には、得られるはんだ組成物を用いた場合に、十分なはんだ接合を形成できにくくなる傾向にある。
【0032】
[(E)成分]
本発明に用いる(E)はんだ粉末は、鉛フリーはんだ粉末のみからなることが好ましいが、有鉛のはんだ粉末であってもよい。このはんだ粉末におけるはんだ合金としては、スズ(Sn)を主成分とする合金が好ましい。また、この合金の第二元素としては、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)およびアンチモン(Sb)などが挙げられる。さらに、この合金には、必要に応じて他の元素(第三元素以降)を添加してもよい。他の元素としては、銅、銀、ビスマス、インジウム、アンチモン、およびアルミニウム(Al)などが挙げられる。
ここで、鉛フリーはんだ粉末とは、鉛を添加しないはんだ金属または合金の粉末のことをいう。ただし、鉛フリーはんだ粉末中に、不可避的不純物として鉛が存在することは許容されるが、この場合に、鉛の量は、300質量ppm以下であることが好ましい。
【0033】
鉛フリーはんだ粉末におけるはんだ合金としては、具体的には、Sn−Ag、Sn−Ag−Cu、Sn−Cu、Sn−Ag−Bi、Sn−Bi、Sn−Ag−Cu−Bi、Sn−Sb、Sn−Zn−Bi、Sn−Zn、Sn−Zn−Al、Sn−Ag−Bi−In、Sn−Ag−Cu−Bi−In−Sb、In−Agなどが挙げられる。これらの中でも、はんだ接合の強度の観点から、Sn−Ag−Cu系のはんだ合金が好ましく用いられている。そして、Sn−Ag−Cu系のはんだの融点は、通常200℃以上250℃以下である。なお、Sn−Ag−Cu系のはんだの中でも、銀含有量が低い系のはんだの融点は、210℃以上250℃以下(220℃以上240℃以下)である。
【0034】
前記(E)成分の平均粒子径は、通常1μm以上40μm以下であるが、はんだ付けパッドのピッチが狭い電子基板にも対応するという観点から、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、2μm以上30μm以下であることがさらにより好ましく、3μm以上20μm以下であることが特に好ましい。なお、平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定できる。
【0035】
[はんだ組成物の製造方法]
本発明のはんだ組成物は、上記説明したフラックス組成物と上記説明した(E)はんだ粉末とを上記所定の割合で配合し、撹拌混合することで製造できる。
【0036】
[電子基板]
次に、本発明の電子基板について説明する。本発明の電子基板は、以上説明したはんだ組成物を用いたはんだ付け部を備えることを特徴とするものである。本発明の電子基板は、前記はんだ組成物を用いて電子部品を電子基板(プリント配線基板など)に実装することで製造できる。
前記本発明のはんだ組成物は、はんだ組成物の印刷面積が広い場合でも、大きな径のボイドを十分に抑制できる。そのため、電子部品としては、電極端子の面積が広い電子部品(例えば、パワートランジスタ)を用いてもよい。また、はんだ組成物の印刷面積は、例えば、20mm
2以上であってもよく、30mm
2以上であってもよく、40mm
2以上であってもよい。なお、印刷面積は、電子部品の電極端子の面積に対応する。
ここで用いる塗布装置としては、スクリーン印刷機、メタルマスク印刷機、ディスペンサー、およびジェットディスペンサーなどが挙げられる。
また、前記塗布装置にて塗布したはんだ組成物上に電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱して、前記電子部品をプリント配線基板に実装するリフロー工程により、電子部品を電子基板に実装できる。
【0037】
リフロー工程においては、前記はんだ組成物上に前記電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱する。このリフロー工程により、電子部品およびプリント配線基板の間に十分なはんだ接合を行うことができる。その結果、前記電子部品を前記プリント配線基板に実装することができる。
リフロー条件は、はんだの融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、Sn−Ag−Cu系のはんだ合金を用いる場合には、プリヒート温度を150〜200℃に設定し、プリヒート時間を60〜120秒間に設定し、ピーク温度を230〜270℃に設定すればよい。
【0038】
また、本発明のはんだ組成物および電子基板は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、前記電子基板では、リフロー工程により、プリント配線基板と電子部品とを接着しているが、これに限定されない。例えば、リフロー工程に代えて、レーザー光を用いてはんだ組成物を加熱する工程(レーザー加熱工程)により、プリント配線基板と電子部品とを接着してもよい。この場合、レーザー光源としては、特に限定されず、金属の吸収帯に合わせた波長に応じて適宜採用できる。レーザー光源としては、例えば、固体レーザー(ルビー、ガラス、YAGなど)、半導体レーザー(GaAs、およびInGaAsPなど)、液体レーザー(色素など)、並びに、気体レーザー(He−Ne、Ar、CO
2、およびエキシマーなど)が挙げられる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A)成分)
ロジン系樹脂:水添酸変性ロジン、商品名「パインクリスタルKE−604」、荒川化学工業社製
((B)成分)
活性剤A:マロン酸
活性剤B:ジブロモブテンジオール
((C1)成分)
溶剤A:イソボルニルシクロヘキサノール
((C2)成分)
溶剤B:トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:242℃、粘度:1mPa・s)
溶剤C:ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点:231℃、粘度:7.4mPa・s)
溶剤D:エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(沸点:229℃、粘度:7.6mPa・s)
((C3)成分)
溶剤E:ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(沸点:272℃、粘度:10.4mPa・s)
溶剤F:ベンジルグリコール(沸点:256℃、粘度:12.6mPa・s)
溶剤G:ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(沸点:259℃、粘度:8.6mPa・s)
溶剤H:テトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:275℃、粘度:3.8mPa・s)
((C4)成分)
溶剤I:フェニルグリコール(沸点:245℃、粘度:30.5mPa・s)
溶剤J:2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(沸点:244℃、粘度:320mPa・s)
((D)成分)
チクソ剤:商品名「スリパックスZHH」、日本化成社製
((E)成分)
はんだ粉末:合金組成はSn−3.0Ag−0.5Cu、粒子径分布は20〜38μm、はんだ融点は217〜220℃
【0040】
[実施例1]
ロジン系樹脂42質量%、活性剤A2.1質量%、活性剤B2質量%、溶剤A13質量%、溶剤B8質量%、溶剤E20.9質量部およびチクソ剤12質量%を容器に投入し、プラネタリーミキサーを用いて混合してフラックス組成物を得た。
その後、得られたフラックス組成物10.2質量%およびはんだ粉末89.8質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、プラネタリーミキサーにて混合することではんだ組成物を調製した。
【0041】
[実施例2〜4]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
[比較例1〜7]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
【0042】
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の評価(粘度、印刷性、パワートランジスタでのボイド率、バンプでのボイド)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
(1)粘度
スパイラル方式の粘度計を用いて、次のように測定を行う。まず、はんだ組成物を25℃で2〜3時間放置する。はんだ組成物の容器の蓋をあけ、スパチュラで空気の混入を避けるようにして丁寧に1〜2分かき混ぜる。さらに、はんだ組成物の容器を恒温槽に入れる。その後、回転速度を10rpmに調節し、温度25℃に設定し、約3分後にローターに吸引されたペーストが排出口から現れていることを確認した後、ローター回転を停止させ、温度が一定になるまで待つ。温度が一定になった後、回転速度を10rpmに調節し、3分後の粘度値ηを読み取った。
(2)印刷性
直径0.3mmφおよび0.4mmφの開穴が、それぞれ49個設けられ、厚みが0.12mmの版を用い、はんだ組成物を基板上に、印刷速度50mm/sec、印圧0.2Nの条件で印刷した。そして、印刷後の版を目視にて観察して、穴抜けした箇所の比率(抜け率)を測定し、以下の基準に従って、印刷性を評価した。
○:抜け率が、60%以上である。
△:抜け率が40%以上60%未満である。
×:抜け率が40%未満である。
(3)パワートランジスタでのボイド率
パワートランジスタ(大きさ:5.5mm×6.5mm、厚み:2.3mm、ランド:スズめっき、ランドの面積:30mm
2)を実装できる電極を有する基板上に、対応するパターンを有するメタルマスクを用い、はんだ組成物を印刷した。その後、はんだ組成物上にパワートランジスタを搭載して、プリヒート150〜180℃を80秒間とピーク温度240℃で溶融時間を40秒間の条件でリフロー(窒素中、酸素濃度1000ppm以下)を行い、試験基板を作製した。得られた試験基板におけるはんだ接合部を、X線検査装置(「NLX−5000」、NAGOYA ELECTRIC WORKS社製)を用いて観察した。そして、1回目リフロー後のパワートランジスタでのボイド率[(ボイド面積/ランド面積)×100]を測定した。
また、実施例1、比較例5および比較例7については、はんだ接合部をX線検査装置により観察した画像を、それぞれ
図1、
図2および
図3に示す。
さらに、1回目リフロー後の試験基板に対し、1回目リフローと同じ条件で2回目リフローを行って、はんだ接合部を観察した。そして、2回目リフロー後のパワートランジスタでのボイド率[(ボイド面積/ランド面積)×100]を測定した。
(4)バンプでのボイド
直径270μmの電極パッドを複数有する基板上に、対応するパターンを有するメタルマスクを用い、はんだ組成物を印刷した。その後、プリヒート150〜180℃を80秒間とピーク温度240℃で溶融時間を40秒間の条件でリフロー(窒素中、酸素濃度1000ppm以下)を行い、バンプを有する試験基板を作製した。得られた試験基板におけるバンプを、X線検査装置(「NLX−5000」、NAGOYA ELECTRIC WORKS社製)を用いて観察した。500個のバンプを確認し、バンプの直径に対して1/3以上(直径が90μm以上)の大きさのボイドがある場合には、その個数を数えた。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示す結果からも明らかなように、(C1)成分および(C2)成分を含有する本
発明のはんだ組成物(実施例1〜4)を用いた場合には、粘度および印刷性が良好であり、パワートランジスタでのボイド率が低く、また、バンプでの大きな径のボイドも発生しないことが確認された。従って、本発明のはんだ組成物は、はんだ組成物の印刷面積が広い場合でも、大きな径のボイドを十分に抑制でき、しかも十分な印刷性を有することが確認された。
これに対し、(C1)成分および(C2)成分のいずれかを含有しないはんだ組成物(比較例1〜7)を用いた場合には、パワートランジスタでのボイド率が高いことが分かった。
また、(C1)成分および(C2)成分を含有し、さらに、(C3)成分としてテトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:275℃、粘度:3.8mPa・s)を含有する本発明のはんだ組成物(実施例4)を用いた場合には、実施例1〜3と比較しても、2回目リフロー後のパワートランジスタでのボイド率を低くできることが分かった。このことから、複数回のリフローに起因するボイドの巨大化を抑制できることが分かった。
また、実施例1、比較例5および比較例7の試験片について、はんだ接合部を、X線検査装置を用いて観察した画像を比較した(
図1〜
図3参照)。比較例5および比較例7の試験片では、巨大なボイドが観察されたが、実施例1の試験片では、巨大なボイドは観察されなかった。